説明

マルチワイヤソーによる切断方法

【課題】面方位<111>方向を結晶成長方向として製造した半導体結晶を、面方位(111)面より角度を持たせた面で、多数枚のウエハにワイヤで切断する際に、ワイヤの横振れを最小限に抑え、切断精度が良いマルチワイヤソーによる切断方法を提供する。
【解決手段】予め製造した半導体結晶を面方位(111)面より角度を持たせた面と平行な面またはそれに近い面で複数個の結晶ブロックに分割切断し、該複数個の分割切断結晶ブロックを前記多数のワイヤの走行方向に短くなるようにずらして載置あるいは貼り合わせることにある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルチワイヤソーによる切断方法に関するものである。更に詳述すれば本発明は、面方位<111>方向に成長させた半導体結晶を、面方位(111)面より角度を持った面でウエハ状にマルチワイヤソーにより切断加工する、マルチワーヤソーによる切断方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体技術産業の発展に伴い、半導体結晶を切断加工したウエハの需要が急増している。ここで、半導体結晶からウエハを切断加工する技術は重要であることは言うまでもない。
【0003】図4は、従来のマルチワイヤソーによる切断方法を示す斜視図である。3台の溝付きローラー10に、多数のワイヤ12が架けられており、ワイヤ12と3台の溝付きローラー10により形作られる3角形の下部1辺に、半導体結晶14が載置される。
【0004】多数のワイヤ12は3台の溝付きローラー10に沿って回転する。そして、ワイヤ12は半導体結晶14に押し付けられつつ、しゅう動しながら遊離砥粒を含む加工液がワイヤ押付け部に供給される。こうして、半導体結晶14はウエハ状に切断される。
【0005】図5は、図4を上部から見た図である。面方位<111>方向を結晶成長方向として製造された半導体結晶14が、図のように面方位(111)面16より角度を持った面でウエハ状に切断される。このように切断しようとする面とワイヤ12は平行であるが、面方位<111>方向とワイヤ12は所定の角度を成す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のマルチワイヤソーによる切断方法には次の問題点があった。
【0007】溝付きローラー10の軸方向と、結晶成長方向である<111>方向とが平行ではないため、半導体結晶14を切断するのに2台の溝付きローラー10の間隔を広く取らなければならない。そのために、ワイヤ12の横振れ、すなわち溝付きローラー10の軸方向の振れが大きくなり、切断精度が悪いという問題があった。
【0008】従って本発明の目的は、前記した従来技術の欠点を解消し、切断精度の良いマルチワイヤソーによる切断方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を実現するため、面方位<111>方向を結晶成長方向として製造された半導体結晶を、面方位(111)面より角度を持たせた面で、多数のワイヤにより多数枚のウエハ状に切断する際に、被切断結晶は前記半導体結晶を前記面方位(111)面より角度を持たせた面と平行な面またはそれに近い面で複数個の結晶ブロックに分割切断し、前記多数のワイヤの走行方向に短くなるようにずらして載置した。
【0010】また、前記の被切断結晶は、前記半導体結晶を前記面方位(111)面より角度を持たせた面と平行な面またはそれに近い面で複数個の結晶ブロックに分割切断し、前記多数のワイヤの走行方向に短くなるようにずらして貼り合わせたものであっても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のマルチワイヤソーによる切断方法の一実施例を示す斜視図である。3台の溝付きローラー1に、多数のワイヤ2が架けられており、ワイヤ2と3台の溝付きローラー1により形作られる3角形の下部1辺に、加工された半導体結晶7が載置される。多数のワイヤ2が加工された半導体結晶7をウエハ状に切断する方法は、従来と同じくワイヤ2が加工された半導体結晶7に押し付けられ、その部分に遊離砥粒を含む加工液を流しながらしゅう動させることにより行なう。
【0012】図2は、図1を上部から見た図である。切断加工されるべき半導体結晶が、加工された半導体結晶7のように加工、載置されているため、2台の溝付きローラー1の間隔を狭くすることが可能と成っている。
【0013】図3は、加工された半導体結晶7の作製方法を示す工程図である。(a)は面方位<111>方向を結晶成長方向として製造された半導体結晶を示す。(b)は製造された半導体結晶4を、切断しようとする面と平行またはその面に近い面で複数個の結晶ブロック3に分割切断した様子を示す。(c)は分割切断した結晶ブロック3を分割面5に平行にずらしながら貼り合わせた様子を示す。貼り合わせが完了して、加工した半導体結晶4が出来上がる。なお、必ずしも分割切断した結晶を貼り合わせる必要は無く、可能なら切断の際にずらして載置しただけでも良い。ここでは、ずらして載置したものも加工された半導体結晶7と称している。
【0014】以上のように、ワイヤを用いて結晶を切断することは従来と同じであるが、切断される結晶に加工・細工を施し、2台の溝付きローラー1の間隔を狭くしたところ、ワイヤ2の横振れ、すなわちワイヤ2の溝付きローラー1の軸方向の振れが小さくなり、切断精度は大幅に向上した。
【0015】
【発明の効果】本発明のマルチワイヤソーによる切断方法によれば、溝付きローラー間隔を狭くすることでワイヤの横振れを最小限に抑え、切断精度を大幅に向上することが可能と成り工業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチワイヤソーによる切断方法の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】図1の加工された半導体結晶の製作方法を示す工程図である。
【図4】従来のマルチワイヤソーによる切断方法を示す斜視図である。
【図5】図4の上面図である。
【符号の説明】
1、10 溝付きローラー
2、12 ワイヤ
3 結晶ブロック
4、14 半導体結晶
5 分割面
6 面方位(111)面
7 加工された半導体結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】面方位<111>方向を結晶成長方向として製造された半導体結晶を、面方位(111)面より角度を持たせた面で、多数のワイヤにより多数枚のウエハ状に切断する際に、被切断結晶は前記半導体結晶を前記面方位(111)面より角度を持たせた面と平行な面またはそれに近い面で複数個の結晶ブロックに分割切断し、前記多数のワイヤの走行方向に短くなるようにずらして載置したものであること特徴とするマルチワイヤソーによる切断方法。
【請求項2】被切断結晶は、前記半導体結晶を前記面方位(111)面より角度を持たせた面と平行な面またはそれに近い面で複数個の結晶ブロックに分割切断し、前記多数のワイヤの走行方向に短くなるようにずらして貼り合わせたものであることを特徴とする請求項1記載のマルチワーヤソーによる切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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