説明

マルチ型空気調和機

【課題】暖房運転において配管及び配線の組合せの判定を簡単に行うことができるようにする。
【解決手段】全ての膨張弁を開いて一斉に暖房運転を行い、第1の所定時間の経過の後に特定の1個の膨張弁を閉じ、さらに第2の所定時間の経過の後に、前記特定の1個の膨張弁を閉じてから前記第2の所定時間の経過時点までの期間の温度変化を前記各室内機に設けられた温度センサで検出して前記配線を経由して前記室外機の側に伝達し、該室外機に伝達された前記温度変化のうちの最も温度変化が大きかった室内機が、前記特定の1個の膨張弁に前記配管で接続された特定の1台の室内機であるとき、前記特定の1個の膨張弁に対応する端子と前記特定の1台の室内機の間の配線の接続の組合せが正しく、それ以外のときは誤りであると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台の室外機に対して複数台の室内機を接続した際の配管及び配線の組合せ判定を行うことができるようにしたマルチ型空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチ型空気調和機の配管と配線の組み合わせが正しいか否かの判定は、判定対象の室内機を他の室内機とは異なる状態にして、室外機を運転して行なっている(例えば、特許文献1参照)。通常では、各室内機の液管(別名「細管」)側に膨張弁が設けられるため、冷房運転においては、判定対象としての1個の室内機用の膨張弁のみを開いて冷媒をそこに流し、その室内機の熱交換器の温度変化を測定して、当該室内機に接続された配管と配線の組合せの良否を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−4798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、暖房運転の場合は、冷房運転とは冷媒の流れる方向が逆になるので、膨張弁の位置が室内機の冷媒の出口側の配管に位置することになり、判定対象の1台の室内機の膨張弁のみを開いて冷媒を流そうとしても、全部の室内機に冷媒が流れてしまい、各室内機の熱交換器の時間的な温度変化に差が生じ難くなり、配管と配線の組み合わせの正否を判定することができなかった。また、このときは、冷媒と一緒に流れる冷凍機油が室内機に溜まってしまい、圧縮機側の冷凍機油が少なくなる恐れがあった。
【0005】
本発明の目的は、暖房運転においても配管及び配線の組合せの判定を簡単に行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、1台の室外機と、少なくとも2台の室内機と、該室内機の数に対応した数の膨張弁とを備え、前記室外機と前記各室内機とが、少なくとも配線および1個の前記膨張弁が設けられた配管によって接続されたマルチ型空気調和機において、全ての前記膨張弁を開いて一斉に暖房運転を行い、第1の所定時間の経過の後に特定の1個の膨張弁を閉じ、さらに第2の所定時間の経過の後に、前記特定の1個の膨張弁を閉じてから前記第2の所定時間の経過時点までの期間の温度変化を前記各室内機に設けられた温度センサで検出して前記配線を経由して前記室外機の側に伝達し、該室外機に伝達された前記温度変化のうちの最も温度変化が大きかった室内機が、前記特定の1個の膨張弁に前記配管で接続された特定の1台の室内機であるとき、前記特定の1個の膨張弁に対応する端子と前記特定の1台の室内機の間の配線の接続の組合せが正しく、それ以外のときは誤りであると判定する判定運転手段を備えることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のマルチ型空気調和機において、前記判定運転手段は、前記特定の1個の膨張弁を変更して、前記膨張弁の数だけ、前記判定運転を順次繰り返すことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のマルチ型空気調和機において、前記各室内機に設けられた温度センサで検出する温度変化は、前記第2の所定時間の経過時点の前記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度と前記特定の1個の膨張弁を閉じる前に前記熱交換器温度センサで検出して記憶手段に記憶した温度との差分から求めることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1又は2に記載のマルチ型空気調和機において、前記各室内機に設けられた温度センサで検出する温度変化は、前記第2の所定時間の経過時点の前記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度と前記特定の1個の膨張弁を閉じる前に室内温度センサで検出して記憶手段に記憶した温度との差分から求めることを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項3又は4に記載のマルチ型空気調和機において、前記判定運転手段は、前記判定運転を順次繰り返すとき、前記記憶手段に記憶した前記温度として、前記特定の1個の膨張弁を閉じる前毎に記憶した温度を使用することを特徴とする。
請求項6にかかる発明は、請求項3又は4に記載のマルチ型空気調和機において、前記判定運転手段は、前記判定運転を順次繰り返すとき、前記記憶手段に記憶した前記温度として、1番最初の判定運転の際に前記記憶手段に記憶した温度を繰り返して使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、判定運転手段によって、全ての膨張弁を開いて一斉に暖房運転を行い、第1の所定時間の経過の後に特定の1個の膨張弁を閉じ、さらに第2の所定時間の経過の後に、前記特定の1個の膨張弁を閉じてから前記第2の所定時間の経過時点までの期間の温度変化を前記各室内機に設けられた温度センサで検出して前記配線を経由して前記室外機の側に伝達し、該室外機に伝達された前記温度変化のうちの最も温度変化が大きかった室内機が、前記特定の1個の膨張弁に前記配管で接続された特定の1台の室内機であるとき、前記特定の1個の膨張弁に対応する端子と前記特定の1台の室内機の間の配線の接続の組合せが正しく、それ以外のときは誤りであると判定するので、判定対象以外の室内機の熱交換器への冷媒の溜まり込みを防止し、暖房運転においても配管及び配線の組合せの判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施例のマルチ型空気調和機の構成図である。
【図2】同実施例のマルチ型空気調和機の冷凍サイクル図である。
【図3】同実施例の表示器の説明図である。
【図4】同実施例のマルチ型空気調和機の配線忘れ/外れの説明図である。
【図5】同実施例のマルチ型空気調和機のチェック運転のフローチャートである。
【図6】同実施例のマルチ型空気調和機の冷房運転によるチェック運転のフローチャートである。
【図7】同実施例のマルチ型空気調和機の配管なしの説明図である。
【図8】同実施例のマルチ型空気調和機の冷房運転による配管と配線の組合せのテーブルの説明図である。
【図9】同実施例のマルチ型空気調和機の配管と配線の組合せ間違いの説明図である。
【図10】同実施例のマルチ型空気調和機の暖房運転によるチェック運転のフローチャートである。
【図11】第2の実施例のマルチ型空気調和機の冷房運転によるチェック運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施例>
図1に本発明の第1の実施例のマルチ型空気調和機のシステムの構成図を、図2に冷凍サイクル図を示す。100は室外機であり、圧縮機101と、冷房運転と暖房運転で冷媒の流れる方向を切り替える四方弁102と、室外熱交換器103と、ファン104と、外気温度センサS1を備える。210A,210B,210C,220A,220B,220C,230A,230Bは室内機であり、それぞれは、室内熱交換器201、ファン202、熱交換器温度センサS2、および室内温度センサS3を備える。310,320,330は室外機100と室内機210A,210B,210C,220A,220B,220C,230A,230Bの間を接続する分岐ユニットである。そして、室外機100と分岐ユニット310,320,330の間、分岐ユニット310の分岐部A,B,Cと室内機210A,210B,210Cの間、分岐ユニット320の分岐部A,B,Cと室内機220A,220B,220Cの間、分岐ユニット330の分岐部A,Bと室内機230A,230Bの間は、配管400で、それぞれ接続されている。さらに、室外機100と分岐ユニット310との間、分岐ユニット310と分岐ユニット320,330の間、分岐ユニット310の分岐部A,B,Cと室内機210A,210B,210Cの間、分岐ユニット320の分岐部A,B,Cと室内機220A,220B,220Cの間、分岐ユニット330の分岐部A,Bと室内機230A,230Bの間は、ペアの電源線とペアのシリアル通信用の信号線を束ねた配線500で接続される。
【0010】
分岐ユニット310には、各分岐部A,B,Cの液管の側に、電磁膨張弁311A,311B,311Cと液管温度センサS41A,S41B,S41Cがそれぞれ取り付けられている。分岐ユニット320には、各分岐部A,B,Cの液管の側に、電磁膨張弁321A,321B,321Cと液管温度センサS42A,S42B,S42Cがそれぞれ取り付けられている。分岐ユニット330には、各分岐部A,B,Cの液管の側に、電磁膨張弁231A,231B,231Cと液管温度センサS43A,S43B,S43Cがそれぞれ取り付けられている。ただし、分岐ユニット330の分岐部Cには室内機は接続されていないので、配管はキャップ(図示せず)で閉じられている。
【0011】
また、室外機100には、操作部(図示せず)および、図3(a)に示すような表示器110が設けられている。図3(a)において、111,112は英数字を表示する7素子表示部である。
【0012】
さて、図1に示した構成において、室外機100にはCPU、メモリ等を有するコンピュータシステムを備え空気調和機全体を制御する制御部110が搭載されており、この制御部110に組み込まれた判定運転手段(図示せず)によって、室外機100と親分岐ユニット310の間の通信異常、親分岐ユニット310と子分岐ユニット320,330との間の配線極性間違い、分岐ユニット310〜330と各室内機との間の配線極性間違い等は、電源投入の段階において信号チェックを行うことで、室外機100の側で自動的にチェックできる。そして、これらが正常であれば、最終的に、図3の(b)に示すように、表示器110の7素子表示部111に分岐ユニットの台数「03」が表示され、7素子表示部112に室内機の台数「08」が表示される。なお、後記する配管接続判定で全ての配管が「正しい」と判定された場合において、例えば、図4に示すように、分岐ユニット330の分岐部Aと室外機230Aの間の配線忘れあるいは配線外れが発生しているときは、最終的に、図3(c)に示すように、表示器110において、7素子表示部111,112によって、「P>L」が表示される。これは、配管の数Pに比べて配線の数Lが少ないことを示している。
【0013】
次に、本発明による前記した判定運転手段を使用して行う配管および配線の接続の組合せの状況を確認するチェック運転は、冷房運転で行もまた暖房運転でも可能であるので、図5に示すフローチャートに従って、室外機100にセットされた外気温度センサS1の検出温度Taに応じて、運転モードを決定する(S100)。例えば、検出温度Taが18℃以上のときは冷房運転でチェック運転を行い(S200)、18℃未満のときは暖房運転でチェック運転を行う(S300)。このように、冷房運転および暖房運転のいれでもチェック運転ができるので、チェック運転が可能となる外気温度範囲が広くなる。
【0014】
冷房運転によるチェック運転(S200)では、図6に示すフローチャートのように、まず、配管接続の判定(S210)を行い、冷凍サイクルが安定してから(S220)、配管の配線の組合せ判定(S230)を行う。なお、ステップS211〜S215はステップS210での処理の詳細を示すステップ、ステップS231〜S234はステップS230での処理の詳細を示すステップである。
【0015】
配管接続の判定(S210)では、最初に各分岐ユニット310,320,330の室内機が接続された各分岐部A,B,Cの各液管温度センサS41A〜S41C,S42A〜S42C,S43A〜S43Bによって、それぞれの液管の温度T0をメモリしておき(S211)、次に、例えば「室温よりも15℃低い温度」を目標蒸発温度として、室外機100の圧縮機101を駆動し通常冷房運転を開始する(S212)。そして、分岐ユニット310,320,330の各分岐部A,B,Cの膨張弁311A,311B,311C,321A,321B,321C,331A,332B、つまり室内機が接続されている全部の膨張弁を開く(S213)。そして、時間ta(例えば、3分)が経過した後に、各液管温度センサS41A〜S41C,S42A〜S42C,S43A〜S43Bによって各分岐ユニット310,320,330の各液管の温度T1を取得する(S214)。膨張弁が開いていれば対応する液管に冷媒が流れるので液管温度センサで検出される当該液管の温度が低下する。そこで、各膨張弁側の液管温度センサの計測値について、判定運転手段によって、順次、液管温度差分「T1−T0」を演算し、例えば、5℃以上低下しているときは、当該膨張弁と室内機との間の「配管接続あり」と判定し、そうでないときは、「配管接続なし」と判定する(S215)。これにより、各分岐ユニット310,320,330の各分岐部A,B,Cの膨張弁から各室内機への配管の有無が判定される。
【0016】
図7に示すように、分岐ユニット330の分岐部Aと室内機230Aの間が「配管接続なし」の場合は、最終的に、図3(d)に示すように、表示器110の7素子表示部111,112により、「P<L」が表示される。これは、これは、配線の数Lに比べて配管の数Pが少ないことを示している。
【0017】
次に、図6に示すように、前記した判定運転手段を使用して行う配管と配線の組合せの判定(S230)判定では、1個の膨張弁、例えば、分岐ユニット310の分岐部Aの膨張弁311Aを開き、残りの膨張弁を全て閉じて(S231)、冷房運転を続け、他の膨張弁を閉じた時点から第3の所定時間tbの経過後、各室内機の熱交換器温度センサS2と室内温度センサS3で計測した温度の温度差分を配線を経由して室外機100の側で取得する(S232)。膨張弁を開いた室内機の熱交換器温度センサS2で検出される温度は低くなるが、その室内機の室内温度センサS3で検出される温度はそれよりも高い値を示す。そこで、その温度差分が最も大きい室内機と開いた膨張弁311Aとの関係を判定する(S233)。この判定で、例えば温度差分が最も大きい室内機が室内機210Aであれば、分岐ユニット310の分岐部Aの膨張弁311Aと室内機210Aの間の配管と端子の配線の組合せが「正しい」と判定され、それ以外の場合は、「誤り」であると判定される。以後、残りの各分岐ユニット310,320,330の分岐部A,B,Cの室内機が接続された膨張弁について、繰り返して同様の判定を行う。
【0018】
そして、判定された各組合せについて、図8に示すようなテーブルを作成する。このテーブルでは、膨張弁311A,311B,311Cの番号を1A,1B,1Cとし、膨張弁321A,321B,321Cの番号を2A,2B,2Cとし、膨張弁331A,33Bの番号を3A,3Bとした。また、分岐ユニット310の分岐部A,B,Cの端子番号を1A,1B,1Cとし、分岐ユニット320の分岐部A,B,Cの端子番号を2A,2B,1Cとし、分岐ユニット330の分岐部A,B,Cの端子番号を3A,3B,3Cとした。
【0019】
図8(a)のテーブルは、開いた膨張弁の番号とそのとき温度差分が最も大きかった室内機が接続された分岐部の端子番号の関係が全て「正しい」場合を示している。例えば、左端は、番号1Aの膨張弁を開いたとき、温度差分が最も大きかった室内機が端子番号1Aに接続された室内機であることを示している。なお、膨張弁331Cには室内機が接続されていないので、その膨張弁331Cの番号は空白となっている。図8(b)は、「誤り」が含まれたテーブルであり、図9に示すように、膨張弁321A(番号2A)が配管で接続されている室内機220Aの配線が、分岐ユニット320の分岐部C(端子番号2C)に誤って接続され、膨張弁321C(番号2C)が配管で接続されている室内機220Cの配線が、分岐ユニット320の分岐部A(端子番号2A)に誤って接続されている場合を示す。この「誤り」の場合は、最終的に、図3(e)に示すように、表示器110の7素子表示部111,112よって、分岐ユニット320の分岐部C(端子番号2C)の配線を分岐ユニット320の分岐部A(端子番号2A)に接続し直すことが指示され、次に、図3(f)に示すように、分岐ユニット320の分岐部A(端子番号2A)の配線を分岐ユニット320の分岐部C(端子番号2C)に接続し直すことが指示される。このように、表示器110の一方の7素子表示部111は配線が誤っている分岐ユニットの端子番号を示し、他方の7素子表示部112はその配線を接続し直すべき分岐ユニットの端子番号を示している。この結果、分岐ユニットにおける作業で、誤まった端子への配線を正しい端子への配線にし直すことができる。
【0020】
一方、暖房運転によるチェック運転(図5のS300)では、前記した判定運転手段を使用して、図10に示すフローチャートのように、配管と配線の組合せの判定を行う。なお、図10におけるステップS341〜S345はステップS340での処理の詳細を示すステップである。暖房運転では、冷媒の流れ方向が冷房運転における場合と逆になるため、配管が接続されていない場合は、冷媒の溜まり込みが発生し、その循環が停止してしまう。このため、暖房運転では、配管接続の判定は行わない(ただし、その配管接続の良否は後記の暖房運転による配管と配線の組合せ判定の結果でチェックできる)。また、冷房運転によるチェック運転と同様に、判定対象の1台の室内機に対応する膨張弁のみを開いて冷媒を流そうとしても、室内機の熱交換器の下流側に膨張弁があるため、全部の室内機に冷媒が流れてしまい、組合せを判定できない。さらに、室内温度センサS3が熱交換器201の上側に配置されているときは、暖房運転によるチェック運転では、そのその熱交換器201で発する熱が上方に行って室内温度センサS3で感知されるので、室内温度センサS3は使用できない。よって、以下のように行う。
【0021】
まず、例えば、「室温より15℃高い温度」を目標凝縮温度として、室外機100の圧縮機101を駆動し通常暖房運転(S310)を開始し、各分岐ユニット310,320,330の室内機が接続された全部の膨張弁を開いて(S320)から、各冷凍サイクルの安定(S330)を待ち、その後、配管と配線の組合せの判定(S340)を行う。
【0022】
この判定では、最初に全部の室内機の熱交換器温度センサS2によって検出した温度を記憶手段にメモリしておき(S341)、第1の所定時間tcの経過後に、1個の膨張弁、例えば分岐ユニット310の分岐部Aの膨張弁311Aを閉じ(S342)、残りの膨張弁は開いたままとし、暖房運転を続ける。これにより、膨張弁311Aを閉じた室内機210Aは、温度が低下する。そこで、膨張弁311Aを閉じた時点から第2の所定時間tdの経過した時点の各室内機の熱交換器温度センサS2で各室内機の熱交換器温度を検出し、この温度と前記記憶手段にメモリしておいた熱交換器温度センサS2で検出した対応する室内機の温度との差分を取得する(S343)。そして、その温度差分が最も大きい室内機と閉じた膨張弁311Aとの関係を判定する(S344)。この判定で、例えば温度差分が最も大きい室内機が室内機210Aであれば、分岐ユニット310の分岐部Aと室内機210Aの間の配管と配線の組み合わせが「正しい」と判定され、それ以外の場合は、その組み合わせが「誤り」であることが判定される。以後、残りの各分岐ユニット310,320,330の分岐部A,B,Cの膨張弁について、同様の判定を行う。
【0023】
以後、判定された各組合せについて、図8に示したようなテーブルを作成し、誤っている場合は、表示器110の7素子表示部111,112によって、配線が誤っている分岐ユニットの端子番号と、その配線を接続し直すべき分岐ユニットの端子番号を示し、接続し直すべき配線個所の指摘を行うことは、前述したのと同じである。
【0024】
<その他の実施例>
なお、前述の実施例では、複数の膨張弁とその膨張弁に対応する端子を有する独立した分岐ユニットを1個の室外機と複数の室内機の間に介在させた例で説明したが、室外機自体の内部で液管側を分岐して、各分岐液管にそれぞれ膨張弁とそれらの膨張弁に対応する配線用の端子を設けることで、分岐ユニットを省略した場合にも、同様に適用することができる。
【0025】
また、冷房運転における配管及び配線の組合せ判定では、特定の1つの膨張弁のみを開いてから時間tbが経過した後の当該膨張弁に対応する室内機の熱交換器温度センサS2で検出した温度と室内温度センサS3で検出した温度の差分が最も大きいとき、当該膨張弁とそれに対応する室内機の配管と配線の組合せが「正しい」と判定したが、これは、室温が大きく変化した場合でも誤判定が生じないようにしたものである。しかし、これに限られるものではない。
【0026】
例えば、図11のフローチャートに示すように、図6のフローチャートにおけるステップS211を、液管温度センサS4で取得した分岐ユニットの各液管温度を記憶手段にメモリすると同時に、各室内機の熱交換器温度センサS2で検出した温度も記憶手段にメモリするステップS214−2に置き換え、また、図6のフローチャートにおけるステップS232を、時間tbの経過後の各室内機について、現在の熱交換器温度センサS2の検出温度とステップS214−2で記憶手段にメモリした熱交換器温度の温度差分を取得するステップS232−2に置き換えることができる。これによっても、前述の実施例と同様に、開いた膨張弁に対応する室内機について、冷房運転による温度変化を検出することができる。
【0027】
また、暖房運転における配管及び配線の組合せ判定でも、図10におけるステップS345の内容を、残りの膨張弁について、ステップS342〜344を繰り替えす内容、つまり一旦全室内機の熱交換器温度を記憶手段にメモリした(S431)後は、メモリ内容の再度の更新を行わない内容に変更することもできる。
【0028】
また、前記の実施例では、暖房運転によるチェック運転において、室内温度センサS3の検出温度を使用しないで、熱交換器温度センサS2の検出温度のみを使用したが、室内温度センサS3が熱交換器の温度の影響を受けない場所、例えば空気の吸込口に設置されているような場合は、膨張弁を閉じる前に記憶手段にメモリする温度として、室内温度センサS3の検出温度を使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100:室外機、101:圧縮機、102:四方弁、103:室外機熱交換器、S1:室外温度センサ、194:ファン、110:表示器、111,112:7素子表示部
210A〜210C,220A〜220C,230A〜230B:室内機、201:室内機熱交換器、202:ファン、S2:熱交換器温度センサ、S3:室内温度センサ
310〜330:分岐ユニット、A,B,C:分岐部、311A〜311C,321A〜321C,331A〜331C:膨張弁、S41A〜S41C,S42A〜S42C,S43A〜S43C:液管温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の室外機と、少なくとも2台の室内機と、該室内機の数に対応した数の膨張弁とを備え、前記室外機と前記各室内機とが、少なくとも配線および1個の前記膨張弁が設けられた配管によって接続されたマルチ型空気調和機において、
全ての前記膨張弁を開いて一斉に暖房運転を行い、第1の所定時間の経過の後に特定の1個の膨張弁を閉じ、さらに第2の所定時間の経過の後に、前記特定の1個の膨張弁を閉じてから前記第2の所定時間の経過時点までの期間の温度変化を前記各室内機に設けられた温度センサで検出して前記配線を経由して前記室外機の側に伝達し、該室外機に伝達された前記温度変化のうちの最も温度変化が大きかった室内機が、前記特定の1個の膨張弁に前記配管で接続された特定の1台の室内機であるとき、前記特定の1個の膨張弁に対応する端子と前記特定の1台の室内機の間の配線の接続の組合せが正しく、それ以外のときは誤りであると判定する判定運転手段を備えることを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチ型空気調和機において、
前記判定運転手段は、前記特定の1個の膨張弁を変更して、前記膨張弁の数だけ、前記判定運転を順次繰り返すことを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマルチ型空気調和機において、
前記各室内機に設けられた温度センサで検出する温度変化は、前記第2の所定時間の経過時点の前記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度と前記特定の1個の膨張弁を閉じる前に前記熱交換器温度センサで検出して記憶手段に記憶した温度との差分から求めることを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のマルチ型空気調和機において、
前記各室内機に設けられた温度センサで検出する温度変化は、前記第2の所定時間の経過時点の前記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度と前記特定の1個の膨張弁を閉じる前に室内温度センサで検出して記憶手段に記憶した温度との差分から求めることを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のマルチ型空気調和機において、
前記判定運転手段は、前記判定運転を順次繰り返すとき、前記記憶手段に記憶した前記温度として、前記特定の1個の膨張弁を閉じる前毎に記憶した温度を使用することを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のマルチ型空気調和機において、
前記判定運転手段は、前記判定運転を順次繰り返すとき、前記記憶手段に記憶した前記温度として、1番最初の判定運転の際に前記記憶手段に記憶した温度を繰り返して使用することを特徴とするマルチ型空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−17886(P2012−17886A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154505(P2010−154505)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】