説明

マンコンベア用手摺ベルト案内装置

【課題】手摺ベルトと手摺ベルトフレームとが直接接しない構成とすることにより上記の摩擦音発生に対する対策とし、またローラ交換の作業性を向上させた手摺ベルト案内装置を提供する。
【解決手段】マンコンベア用手摺ベルト案内装置は、ローラー機構13を組み込んだ手摺ベルトフレーム12の外周に沿って無端状の手摺ベルト11を走行させるマンコンベア用手摺ベルト案内装置であって、前記ローラ機構13は手摺ベルト11の裏面に接して回転するローラ14と、前記ローラ14を軸支するローラピン15付きリンク16とから構成され、前記ローラピン15の端部15aは手摺ベルトフレーム12に設けられた切り欠き部12aに差し込み保持され、かつ、前記ローラピン15の端部15aが手摺ベルトフレーム12より突出させた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ又は動く歩道等のマンコンベアに使用される手摺ベルトの案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5、6は、従来の手摺ベルト案内装置を示す。乗客コンベアの両乗降口の曲線部の欄干においては、図5に示すように、手摺ベルトフレーム102を湾曲した形状に変形させることにより欄干を湾曲させ、この湾曲した欄干において手摺ベルト101は手摺ベルトフレーム102によりその外周を走行するように案内される。そこで、本来ならば直線状態になろうとする手摺ベルト101を湾曲した欄干形状に変形させて走行案内するので、曲線部では欄干に対して手摺ベルト101に走行抵抗が発生する。この走行抵抗を小さくする手段として、欄干の曲線部にローラ機構103を設け、ローラ機構103の内部のローラ104が手摺ベルト101の裏面に接触しながら回転する構造としている。さらに階高が高くなると傾斜直線部での手摺ベルト101の自重による走行抵抗が大きくなるので、その場合は傾斜直線部にも曲線部と同様のローラ機構103を設けている。
【0003】
図6に前記ローラ機構103の内部構造を表す断面図を示す。図6に示すように、ローラ機構103は、前記手摺ベルト101の裏面に接して回転するローラ104とローラ104を軸支するローラピン105付きのリンク106とを、図5に示すように、チェーン状に連結させたもので、前記ローラ機構103の両端部は手摺ベルトフレーム102の上面に配設された係止具107によって張設された構成となっている。背景技術の詳細は下記特許文献1に示される。
【0004】
なお、下記特許文献2には、ローラ取付軸を固定しているビスに滑り材を介在させた状態で前記ローラ取付軸と共に共締め固定して、手摺ベルトと手摺ベルトフレームとの摩擦抵抗を低減させる手摺ベルト案内装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−292278号公報
【特許文献2】特開平11−292444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のローラ機構103においては、手摺ベルト101と手摺ベルトフレーム102との間の隙間が大きいために手摺ベルト101の走行中にガタツキが発生する場合があり、その場合には手摺ベルト101の下方に湾曲したあご部の先端101aと手摺ベルトフレーム102の側面102aとが面接触することによりキーキーという摩擦音が発生し、かつ、この接触により走行抵抗が大となることがあった。この欠点を解消するために特許文献2に記載の装置が提案されたが、十分なものではなかった。
【0007】
また、ローラ故障などによりローラの交換が必要なった場合、従来構造ではローラチェーン一式を交換しなければならなかった。
【0008】
そこで、本発明は、手摺ベルトと手摺ベルトフレームとが直接接しない構成とすることにより上記の摩擦音発生に対する対策とし、またローラ交換の作業性を向上させた手摺ベルト案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマンコンベア用手摺ベルト案内装置は、ローラー機構を組み込んだ手摺ベルトフレームの外周に沿って無端状の手摺ベルトを走行させるマンコンベア用手摺ベルト案内装置であって、前記ローラ機構は手摺ベルトの裏面に接して回転するローラと、前記ローラを軸支するローラピン付きリンクとから構成され、前記ローラピンの端部は手摺ベルトフレームに設けられた切り欠き部に差し込み保持され、かつ、前記ローラピンの端部が手摺ベルトフレームより突出させた構成としたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係るマンコンベア用手摺ベルト案内装置は、ローラー機構を組み込んだ手摺ベルトフレームの外周に沿って無端状の手摺ベルトを走行させるマンコンベア用手摺ベルト案内装置であって、前記ローラ機構は手摺ベルトの裏面に接して回転するローラと、前記ローラを軸支するローラピン付きリンクとから構成され、前記ローラピンの端部は手摺ベルトフレームに設けられた開口部に差し込み保持され、かつ、前記ローラピンの端部が手摺ベルトフレームより突出させた構成としたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、上記の各構成に加え、ローラピンの端部を丸く湾出させた丸み部としてもよい。
【0012】
また、上記の構成に加え、ローラピン端部の丸み部を着脱可能にした構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明に係るマンコンベア用手摺ベルト案内装置よれば、摩擦音及び走行抵抗を低減し、またローラ交換を容易とすることによりローラ故障時のローラ取替などの作業性を向上させた手摺ベルト案内装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1の手摺ベルト案内装置を示し、(a)は幅方向の断面図であり、(b)は手摺ベルトフレームとローラピンとの係合部を示すB−B線部分拡大断面図である。
【図2】本発明の実施例2の手摺ベルト案内装置を示し、(a)は幅方向の断面図であり、(b)は手摺ベルトフレームとローラピンとの係合部を示すC−C線部分拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例3の手摺ベルト案内装置の幅方向の断面図である。
【図4】本発明の実施例4の手摺ベルト案内装置の幅方向の断面図である。
【図5】従来の手摺ベルト案内装置の長手方向の断面図である。
【図6】従来の手摺ベルト案内装置の幅方向のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るマンコンベア用手摺ベルト案内装置(以下、単に「手摺ベルト案内装置」という。)の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(a)(b)は本実施例の手摺ベルト案内装置の構造を示す。図1(a)(b)において、11はマンコンベアの欄干上部に配設され、踏段と共に同方向に動く無端状の手摺ベルトを示す。12は手摺ベルト11の裏面側内部に配設され、手摺ベルト11を案内する手摺ベルトフレームを示す。13は手摺ベルト11と手摺ベルトフレーム12との走行抵抗を小さくするためのローラ機構を示す。14はローラ機構13に組み込まれているローラを示す。15はローラ14を回転軸支するローラピンを示す。16はローラーピン15の中間部に位置し、チェーン状に連結されるリンクを示す。
【0017】
このように、本実施例における手摺ベルト案内装置は、無端状の手摺ベルト11がローラ機構13によって手摺ベルトフレーム12の外周を走行する手摺ベルト案内装置のうち、ローラ機構13は前記手摺ベルト11の裏面に接して回転するローラ14と該ローラ14を軸支するローラピン15付きリンク16をチェーン状に連結させたものである。なお前記ローラピン15付きリンク16はチェーン状ではなく単体としてもよい。
【0018】
したがって、本実施例における手摺ベルト案内装置において、無端状の手摺ベルト11は、その裏面がローラ機構13におけるローラ14に接しており、無端状の手摺ベルト11が手摺ベルトフレーム12の外周を走行する時には、無端状の手摺ベルト11は、その裏面に接するローラ14を回転させながら走行するようになっている。このように構成することにより、手摺ベルト11の走行時における手摺ベルト11と手摺ベルトフレーム12との摩擦が軽減される。
【0019】
そして、本実施例の特徴は、前記ローラピン15の端部15a、15aが手摺ベルトフレーム12に設けられた切り欠き部12a、12aに差し込み保持され、かつ、前記ローラピン15の端部15a、15aが手摺ベルトフレーム12より突出させた構成としたことにある。
【0020】
このように構成することにより、ローラピン15の端部15a、15aが手摺ベルトフレーム12より突出させたため、手摺ベルト11とローラピン15の端部15a、15aとの間の隙間が狭くなるので手摺ベルト11の走行中のガタツキ幅が減少して、かつ、手摺ベルト11の下方に湾曲したあご部の先端11aとローラピン15の端部15a、15aとが部分的な接触となるためキーキーという摩擦音が発生せず、この部分的な接触により手摺ベルト11の手摺ベルトフレーム12に対する走行抵抗が減少する作用を果たす。
【0021】
また、ローラ機構13が手摺ベルトフレーム12の切り欠き部12a、12aで両端支持されることになる。したがって、ローラ機構13が両端支持で保持されることによって、各リンク16が手摺ベルトフレーム12の切り欠き部12a、12aに保持されるので確実に固定されるほか、ローラリンク16単体で手摺ベルトフレーム12に固定することができるので、単体交換で対応できる。
【実施例2】
【0022】
図2(a)(b)は本実施例の手摺ベルト案内装置の構造を示す。本実施例は、次記する構成以外は、実施例1の構成と同様であるので、実施例1の構成と同様の部分については、実施例1と同一の符号を付し、その説明は本実施例においては省略し、実施例1の説明を援用する。
【0023】
すなわち、本実施例の特徴は、ローラピン15の端部15a、15aが手摺ベルトフレーム12に設けられたローラピン15の径とほぼ同一径の円形の開口部22a、22aに差し込み保持され、かつ、前記ローラピン15の端部15a、15aが手摺ベルトフレーム12より突出させた構成としたことにある。
【0024】
このように構成することにより、ローラピン15の端部15a、15aが手摺ベルトフレーム12より突出させたため、手摺ベルト11とローラピン15の端部15a、15aとの間の隙間が狭くなるので手摺ベルト11の走行中のガタツキ幅が減少して、かつ、手摺ベルト11の下方に湾曲したあご部の先端11aとローラピン15の端部15a、15aとが部分的な接触となるためキーキーという摩擦音が発生せず、この部分的な接触により手摺ベルト11の手摺ベルトフレーム12に対する走行抵抗が減少する作用を果たす。
【0025】
また、ローラ機構13が手摺ベルトフレーム12の開口部22a、22aで両端支持されることになる。したがって、ローラ機構13が両端支持で保持されることによって、各リンク16が手摺ベルトフレーム12の開口部22a、22aに保持されるので確実に固定されるほか、ローラリンク16単体で手摺ベルトフレーム12に固定することができるので、単体交換で対応できる。
【0026】
しかも、ローラ機構13が保持される箇所をローラピン15の径とほぼ同一径の円形の開口部22a、22aとすることで、ローラ機構13が走行時において上下に振動するおそれが無く、手摺ベルトフレーム12に組み込まれた各ローラ14の頂面は、これを結んだ面が常に一定高さの凹凸のない連続的な面となるので、手摺ベルト1を滑らかに走行させることができる。
【実施例3】
【0027】
図3は本実施例の手摺ベルト案内装置の構造を示す。本実施例は、次記する構成以外は、実施例1又は2の構成と同様であるので、実施例1又は構成と同様の部分については、実施例1と同一の符号を付し、その説明は本実施例においては省略し、実施例1の説明を援用する。なお、本実施例において、ローラピン15の端部15a、15aを差し込み保持する手摺ベルトフレーム12の構造は、切り欠き部12a、12a又は開口部22a、22aのいずれを採用してもよい。
【0028】
本実施例の特徴は、ローラピン15の端部15a、15aを丸く湾出させた丸み部35b、35bとし、この丸み部35b、35bを手摺ベルト11のあご部近傍まで手摺ベルトフレーム12から突出させたことにある。
【0029】
このように構成することにより、手摺ベルト11とローラピン15の端部15a、15aにおける丸み部35b、35bとの間の隙間がほとんどなくなるので手摺ベルト11の走行中のガタツキを抑制することができ、かつ、手摺ベルト11の下方に湾曲したあご部の先端11aとローラピン15の丸み部35b、35bとが点接触となるため摩擦音がほとんど発生せず、この点接触により手摺ベルト11の手摺ベルトフレーム12対する走行抵抗が著しく減少する作用を果たす。なお、ローラピン15の材料を樹脂材とするか、ローラピン先端の丸み部35b、35bを低摩擦材とすることで手摺ベルト11の走行抵抗をより一層低減する効果が期待される。
【実施例4】
【0030】
図3は本実施例の手摺ベルト案内装置の構造を示す。本実施例は、実施例3における構成の一部を変更する変更例である。
【0031】
すなわち、実施例3においては、ローラピン15の端部15a、15aにおける丸み部35b、35bはローラピン15と一体形成のものであるが、前記の一体形成の丸み部35b、35bに代えて、本実施例においては、ローラピン15の端部15a、15aに、別ピースの丸み形状部48を着脱自在に構成したものである。前記丸み形状部48は、そのローラピン15の端部15a、15aに当接する側に嵌入軸48aを形成し、ローラピン15の端部15a、15aには、前記嵌入軸48aに嵌合可能な嵌入溝45cを形成し、丸み形状部48の嵌入軸48aをローラピン15端部15a、15aの嵌入溝45cに嵌合又は螺合によりローラピン15の端部15a、15aに丸み形状部48を嵌入固定する。
【0032】
このように構成したことにより、実施例3による作用効果に加えて、丸み形状部48が摩耗した場合にローラ機構13を一式交換する必要がなく、ローラピン15の端部15a、15aに取り付けた先端部の丸み形状部48のみの交換でよくなるので先端部摩耗による交換コスト低減となる。
【0033】
なお、丸み形状部48に、手摺ベルト11が丸み形状部48に対して摺動する方向に回転するコロ軸受け又は360°回転するボール軸受けを埋め込むことにより、手摺ベルト11の手摺ベルトフレーム12に対する走行抵抗が全くなくなるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
11……手摺ベルト
11a…手摺ベルトのあご部の先端
12……手摺ベルトフレーム
12a…手摺ベルトフレームの切り欠き部
22a…手摺ベルトフレームの開口部
13……ローラ機構
14……ローラ
15……ローラピン
15a…ローラピンの端部
35b…ローラピン端部の丸み部
45c…ローラピンの端部の嵌入溝
16……ローラリンク
48……丸み形状部
48a…丸み形状部の嵌入軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー機構を組み込んだ手摺ベルトフレームの外周に沿って無端状の手摺ベルトを走行させるマンコンベア用手摺ベルト案内装置であって、前記ローラ機構は手摺ベルトの裏面に接して回転するローラと、前記ローラを軸支するローラピン付きリンクとから構成され、
前記ローラピンの端部は手摺ベルトフレームに設けられた切り欠き部に差し込み保持され、かつ、前記ローラピンの端部が手摺ベルトフレームより突出させた構成としたことを特徴とするマンコンベア用手摺ベルト案内装置。
【請求項2】
ローラー機構を組み込んだ手摺ベルトフレームの外周に沿って無端状の手摺ベルトを走行させるマンコンベア用手摺ベルト案内装置であって、前記ローラ機構は手摺ベルトの裏面に接して回転するローラと、前記ローラを軸支するローラピン付きリンクとから構成され、
前記ローラピンの端部は手摺ベルトフレームに設けられた開口部に差し込み保持され、かつ、前記ローラピンの端部が手摺ベルトフレームより突出させた構成としたことを特徴とするマンコンベア用手摺ベルト案内装置。
【請求項3】
ローラピンの端部を丸く湾出させた丸み部としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマンコンベア用手摺ベルト案内装置。
【請求項4】
ローラピン端部の丸み部を着脱可能にしたことを特徴とする請求項3記載のマンコンベア用手摺ベルト案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190011(P2011−190011A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55987(P2010−55987)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】