説明

マンコンベア

【課題】 特殊な構成部材や加工技術を必要とせず、省スペース化を図りながら安価かつ簡易な方法で一対の欄干パネル間の照射領域を照射させることができるマンコンベアを提供すること。
【解決手段】 マンコンベア10は、デッキ13a,13bの内部に設けられた照明源20a,20bと、このデッキ13a,13bの上面に設けられたレンズ21a,21bと、手摺案内体15a,15bの下面にそれぞれ取り付けられた反射鏡22a,22bとを備えている。レンズ21a,21bは、照明源20a,20bからの光をデッキ13a,13bの上方に照射するようになっている。反射鏡22a,22bは、照明源20a,20bからレンズ21a,21bを介して照射された光を一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域に反射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマンコンベアに係り、とりわけ一対の欄干パネル間の照射領域を照射することができるマンコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
動く歩道やエスカレータ等のマンコンベアは一般に、移動経路を形成する一対の対向するスカートガードと、この一対のスカートガード内の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段と、スカートガードの上方に設置された一対のデッキと、これらのデッキから上方にそれぞれ延びる一対の欄干パネルとを備えている。
【0003】
次に、図3によりこのような従来のマンコンベアの欄干パネルの構造を述べる。
前述のように、マンコンベアは一対の欄干パネル14aを有している。そして、図3に示すように、マンコンベアの各欄干パネル14aの上端には手摺案内体15cが取り付けられており、各手摺案内体15c上に、踏段の循環移動に対応して循環移動する無端状の移動手摺16aが設けられている。図3に示すように、手摺案内体15cの下面は通常は水平面となっている。
【0004】
このようなマンコンベアの一対の欄干パネル間の照射領域を照射する照明装置としては、例えば特許文献1乃至3に開示されるものが知られている。
【0005】
特許文献1には、各ガラスパネル(欄干パネル)の頂部と各手摺案内体との間に、複数の小形ランプを内部に有する角形チューブが挿入されることにより構成された照明装置が示されている。
また、特許文献2には、各ガラスパネル(欄干パネル)の上端に取り付けられ、下方に向かって凹となる凹面鏡と、デッキの内部に設けられ、ガラスパネルの内部を通過して凹面鏡に光を照射する照明源とを備えた照明装置が開示されている。
また、特許文献3には、欄干パネルの上端に取り付けられ、発光層を挟んだ電極間に電圧を印加し、電位差を利用して発光層を発光させる照明装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−97370号公報
【特許文献2】特開平10−167646号公報
【特許文献3】特開2001−328788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1乃至3に示す照明装置により一対の欄干パネル間の照射領域を照射するマンコンベアにおいては、当該照明装置を設置する際に特殊な構成部材や加工技術が必要となる。
例えば特許文献2に示す照明装置を設置する際には、手摺案内体は、凹面鏡が挿入可能な孔が下面に穿孔されたものを用いなければならず、さらに、ガラスパネルの上端部と凹面鏡とを密着させる必要があるので、ガラスパネルの上端部を凹面鏡の凹面に沿った凸面に加工しなければならない。
このように、従来の照明装置では、マンコンベアに当該照明装置を設置する際に特殊な構成部材や加工技術が必要となるので、マンコンベアの設置費用が高価となり、また設置工事が複雑になるという問題がある。
【0008】
また、上述の特許文献1や特許文献2に示す照明装置を用いる場合には、欄干パネルは光を通過させることができるガラスパネルから構成される必要があり、欄干パネルとしてガラスパネル以外の部材を用いることができず、マンコンベアの構成部材の選択幅を狭めてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、特殊な構成部材や加工技術を必要とせず、省スペース化を図りながら安価かつ簡易な方法で一対の欄干パネル間の照射領域を照射させることができるマンコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、移動経路を形成する一対の対向するスカートガードと、前記一対のスカートガード内の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段と、前記各スカートガードの上方に設置された一対のデッキと、前記各デッキから上方に延びる一対の欄干パネルと、前記各欄干パネルの上端に取り付けられた一対の手摺案内体と、前記各手摺案内体上に設けられ、前記踏段の循環移動に対応して循環移動する一対の無端状の移動手摺と、前記デッキの内部に設けられた照明源と、前記デッキの上面に設けられ、前記照明源からの光を当該デッキの上方に照射するレンズと、前記手摺案内体の近傍に取り付けられ、前記照明源から前記レンズを介して照射された光を前記一対の欄干パネル間の照射領域に反射させる反射鏡と、を備えたことを特徴とするマンコンベアである。
このようなマンコンベアによれば、一対の欄干パネル間の照射領域を照射するために用いられる照明源、レンズおよび反射鏡は汎用品を使用することができるので、特殊な構成部材や加工技術を必要とせず、安価かつ簡易な方法でマンコンベアの照射領域を照射させることができる。また、照明源をデッキの内部に設けているので、省スペース化を図ることができる。
【0011】
また、本発明のマンコンベアにおいては、前記反射鏡は、水平面に対してマンコンベアの中央側下方を向くよう傾斜していることが好ましい。
このようなマンコンベアによれば、照明源からレンズを介して照射された光を確実に一対の欄干パネル間の照射領域に反射させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマンコンベアによれば、一対の欄干パネル間の照射領域を照射するために用いられる照明源、レンズおよび反射鏡は汎用品を使用することができるので、特殊な構成部材や加工技術を必要とせず、安価かつ簡易な方法でマンコンベアの照射領域を照射させることができる。また、照明源をデッキの内部に設けているので、省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1および図2を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明のマンコンベアの実施の形態を示す断面図であり、図2は、本実施の形態によるマンコンベア(エスカレータ)の全体構成を示す概略前面図である。
【0014】
図1および図2に示すように、本発明によるマンコンベア10は、移動経路を形成する一対の対向するスカートガード11a,11bと、この一対のスカートガード11a,11b内の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段12と、それぞれのスカートガード11a,11bの上方に設置された一対のデッキ13a,13bと、これらのデッキ13a,13bから上方にそれぞれ延びる一対の欄干パネル14a,14bとを備えている。また、欄干パネル14a,14bの上端にはそれぞれ手摺案内体15a,15bが取り付けられており、これらの手摺案内体15a,15b上に、踏段12の循環移動に対応して循環移動する一対の無端状の移動手摺16a,16bが設けられている。
【0015】
図1に示すように、一対のデッキ13a,13bは、欄干パネル14a,14bよりも内側に設置され、各々一端がスカートガード11a,11bに取り付けられるとともに他端が欄干パネル14a,14bに取り付けられた内デッキ13c,13dと、欄干パネル14a,14bよりも外側に設置された外デッキ13e,13fとから構成されている。
【0016】
欄干パネル14a,14bは例えばガラスパネルからなり、それぞれデッキ13a,13bの内デッキ13c,13dと外デッキ13e,13fとの間から鉛直方向上方に延びている。また、欄干パネル14a,14bの上端にはそれぞれねじ受け部材17a,17bが取り付けられている。
【0017】
手摺案内体15a,15bは、ねじ18a,18bにより欄干パネル14a,14bの上端に設けられたねじ受け部材17a,17bにそれぞれ取り付けられている。また、図1に示すように、手摺案内体15a,15bの下面は、各々水平面に対してマンコンベア10の中央側下方を向くよう傾斜している。
【0018】
本実施の形態においては、図1に示すように、内デッキ13c,13dの内部に照明源20a,20bが設けられ、内デッキ13c,13dの上面には、照明源20,20からの光を当該内デッキ13c,13dの上方に照射するレンズ21a,21bが設置されている。さらに、手摺案内体15a,15bの傾斜した下面にそれぞれ反射鏡22a,22bが取り付けられている。この反射鏡22a,22bは、照明源20a,20bからレンズ21a,21bを介して照射された光を一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域に反射させるものである。
図1において、照明源20a,20bから照射された光の経路を一点鎖線で示す。
【0019】
照明源20a,20bは、蛍光灯等からなる照明灯20c,20dと、この照明灯20c,20dの下半分を覆うよう設けられた凹面鏡20e,20fとをそれぞれ有しており、各照明灯20c,20dから発せられた光の一部は直接上方のレンズ21a,21bに照射されるとともに、当該照明灯20c,20dから発せられた光の他の一部は下方にある凹面鏡20e,20fで一度反射してから上方のレンズ21a,21bに照射されるようになっている。このようにして、照明源20a,20bから発せられた光の大部分がレンズ21a,21bに照射される。なお、照明灯20c,20dおよび凹面鏡20e,20fは汎用品を使用することができる。
【0020】
レンズ21a,21bは図1に示すように例えば汎用品の両面凸レンズからなり、照明源20a,20bから照射された光を、手摺案内体15a,15bの下面近傍を焦点として収束させるようになっている。
【0021】
反射鏡22a,22bは図1に示すように例えば汎用品の凸面鏡からなり、前述の手摺案内体15a,15bの下面に取り付けられていることにより水平面に対してマンコンベア10の中央側下方を向くよう傾斜している。反射鏡22a,22bは、照射源20a,20bからレンズ21a,21bを介してそれぞれ照射された光を一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域に反射させるようになっている。
ここで、反射鏡22a,22bが凸面鏡からなることにより、照明源20a,20bから照射されレンズ21a,21bにより収束された光を図1の鎖線で示すように照射領域内で分散させることができ、この照射領域を幅広く照射することができる。
【0022】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図1に示すように、照明源20a,20bの各照明灯20c,20dから発せられた光の一部は直接上方のレンズ21a,21bに照射される。一方、当該照明灯20c,20dから発せられた光の他の一部は下方に設けられた凹面鏡20e,20fで一度反射してから上方のレンズ21a,21bに照射され、このようにして照明源20a,20bから発せられた光の大部分がレンズ21a,21bに照射される。
【0023】
次に、レンズ21a,21bにより、図1の鎖線で示すように、照明源20a,20bから照射された光が手摺案内体15a,15bの下面近傍を焦点として収束される。
次に、照明源20a,20bから照射されレンズ21a,21bにより収束された光が、反射鏡22a,22bにより反射され、一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域に分散される。
【0024】
以上のように本実施の形態のマンコンベア10によれば、一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域を照射するために用いられる照明源20a,20b、レンズ21a,21bおよび反射鏡22a,22bは汎用品を用いることができるので、特殊な構成部材や加工技術を必要とせず、安価かつ簡易な方法でマンコンベア10の照射領域を照射させることができる。また、照明源20a,20bを内デッキ13c,13dの内部に設けているので、省スペース化を図ることができる。
【0025】
また、反射鏡22a,22bは、水平面に対してマンコンベア10の中央側下方を向くよう傾斜しているので、照明源20a,20bからレンズ21a,21bを介して照射された光を確実に一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域に反射させることができる。
【0026】
なお、上記の実施の形態において、各反射鏡22a,22bが各手摺案内体15a,15bの下面に取り付けられている例について説明したが、他の変形例においては、レンズ21a,21bを介して照射された光を一対の欄干パネル14a,14b間の照射領域に反射させることができるのであれば反射鏡22a,22bを必ずしも手摺案内体15a,15bの下面に取り付ける必要はなく、例えば一対の欄干パネル14a,14bの上端近傍に反射鏡22a,22bをそれぞれ直接取り付けてもよい。また、さらに他の変形例においては、マンコンベア10として図2に示すエスカレータの他に例えば動く歩道等に対して用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のマンコンベアの実施の形態を示す断面図である。
【図2】本実施の形態によるマンコンベア(エスカレータ)の全体構成を示す前面図である。
【図3】従来のマンコンベアの欄干パネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 マンコンベア
11a,11b スカートガード
12 踏段
13a,13b デッキ
13c,13d 内デッキ
13e,13f 外デッキ
14a,14b 欄干パネル
15a,15b 手摺案内体
15c 従来の手摺案内体
16a,16b 移動手摺
17a,17b ねじ受け部材
18a,18b ねじ
20a,20b 照明源
20c,20d 照明灯
20e,20f 凹面鏡
21a,21b レンズ
22a,22b 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動経路を形成する一対の対向するスカートガードと、
前記一対のスカートガード内の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段と、
前記各スカートガードの上方に設置された一対のデッキと、
前記各デッキから上方に延びる一対の欄干パネルと、
前記各欄干パネルの上端に取り付けられた一対の手摺案内体と、
前記各手摺案内体上に設けられ、前記踏段の循環移動に対応して循環移動する一対の無端状の移動手摺と、
前記デッキの内部に設けられた照明源と、
前記デッキの上面に設けられ、前記照明源からの光を当該デッキの上方に照射するレンズと、
前記手摺案内体の近傍に取り付けられ、前記照明源から前記レンズを介して照射された光を前記一対の欄干パネル間の照射領域に反射させる反射鏡と、
を備えたことを特徴とするマンコンベア。
【請求項2】
前記反射鏡は、水平面に対してマンコンベアの中央側下方を向くよう傾斜していることを特徴とする請求項1記載のマンコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−176280(P2006−176280A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371635(P2004−371635)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】