説明

マンホール及びそのマンホールにて使用する遮水板

【課題】 垂直流路が組み込まれたマンホールにあって、内部に広い作業スペースを確保する。
【解決手段】 マンホール6内には、上り下りするためのステップ7が装備された内壁面と対向した内壁面における入水口8aより下の部分に、遮水板1を壁面に沿って垂直配置する。その遮水板1は、前記入水口8aに接続された入水パイプ8の延長上に蓋11を備えた点検窓を位置せしめると共に、下端をマンホール6の底から浮かせた状態にて取り付けられる。それによって、入水パイプ8から流入した水が、マンホール6の内壁面と遮水板1との隙間を垂直に落下し、底面を伝って排水パイプ9へと流れる流路10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落差のある入水路と出水路とを連絡する垂直落下型の流路を備えたマンホール、或いは連結された入水路から流入した水を一時的に溜め置き、随時ポンプにて排出するマンホール及びそれらのマンホールにて使用する遮水板に関する。
【背景技術】
【0002】
落差のある流路相互間では、高い位置にある流路と低い位置にある流路とを、流路により連結させることがある。
連結するための流路は一般に垂直落下型で、その流路は、水を垂直に落下させることからドロップシャフトと称されている。
ドロップシャフトは、土中に埋設されることもあるが、メンテナンスを考慮してマンホール内に配置されることが多く、そのドロップシャフトには塩化ビニル製などの汎用パイプが採用されている。
ただし、落差が10mを超える場合は、特許文献1に開示のように、内部に螺旋溝を有した二重管の利用が提案されている。
そしてマンホール内に配置されるドロップシャフトは、上端を高い位置にある流路に連結し、下端をマンホールの底に対して解放することで、高い位置にある流路から流入した水をマンホールの底に排出し、マンホール内に溜まった水を、側面下部に接続された低い位置にある流路へと送り出したり、一時的に溜め置いた水を随時ポンプにて排出するすようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−122283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マンホール内では、ドロップシャフトが内壁面から出っ張って配置されるためデッドスペースが生まれ、マンホール内への設置やメンテナンス作業がしずらく、配管の内部を観察することすらできない。
又、エルボなどを介して接続されたパイプは、そのエルボ部分に詰まった異物を取り出せず、パイプごと交換しなくてはならないこともある。
一方、地中埋設タイプでは、マンホール内の空間がパイプによって占拠されることはないが、異物の詰まりに対しては、パイプ自体を掘り起こさなくてはならないので、作業性が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、デッドスペースを殆ど無くすことによって作業性の向上を図ったマンホールに関する技術であって、その構成は、内壁面の高い位置に入水口を備えたマンホールにあって、前記入水口より下の部分に、遮水板を垂直配置することによって、その遮水板と前記内壁面とで挟まれ、前記入水口に連通した垂直流路を形成したマンホール、及びマンホール内に垂直配置し、マンホールの内壁面と組み合わせて垂直流路を形成する遮水板にあって、水平断面において、中央がマンホールの内壁に対する取り付け面と反対側に膨出し、両サイドに止着翼を備えた遮水板とにある。
【0006】
そして前記遮水板は、上下方向に連結する複数枚のプレートにて構成することができ、上部には点検窓を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
遮水板がマンホール内壁面に張り付くよう取り付けられるので、ドロップシャフトのように邪魔にならず、マンホール内のスペース占有率が少ないので、広い作業空間が確保される。
垂直流路は、マンホールの内壁面を有効利用して形成されるので、設置やメンテナンスは容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るマンホール及び遮水板を図面に基づいて説明する。
先ず、流路形成用として利用される遮水板1を図1に基づいて説明すると、この実施例では図1の(a)に示すように、上下に3枚のプレート1a,1b,1cを連結して構成されている。
各プレート1a,1b,1cは合成樹脂製で、その水平断面は、中央が手前(マンホールの内壁に対する取り付け面の反対側)に向けて台形に出っ張った形状を呈しており、両サイドには側縁に沿って止着翼2,2が延設されている。
各止着翼2、2・・にはねじ穴3,3・・が穿設され、止着翼2を除いた部分には水平方向に複数条の補強リブ4、4・・が等間隔にて設けられている。
プレート1a,1b,1cには2つのタイプが用意されており、大きな円形の点検窓5を有した窓付きタイプのプレート1aは一番上に、その下には窓なしタイプのプレート1b、1cが順に連結される。
前記プレート1a,1b,1cは、図1の(b)に示すように、下側に配置されるプレートの上端縁を、上側に配置されるプレートの下端縁表面に重ね、ねじ穴が互いに合致するよう連結される。
【0009】
尚、各プレートの上端縁と下端縁とには、重ねた際、互いに合致して嵌り合う段部を形成しておくことが望ましい。
各プレートは同じ高さである必要はなく、複数の高さのプレートを組み合わせ、所望の高さに調整することが可能であって、実施例の場合も、長さが足りなけれ継ぎ足しをすることができるし、外したり切断することもできる。
両サイドにある止着翼2,2は、マンホール内壁の湾曲形状になじみやすくするため若干手前に反るよう角度が付けられているが、角形のマンホール用であればその必要はない。
【0010】
図2の(a)、(b)は、前記本発明の遮水板1が取り付けられたマンホールを示したもので、マンホール6は真上に出入り口6aが開口し、内壁面には足掛け用のステップ7,7・・が装備されている。
ステップ7が装備されている面は、前記出入り口6aの内周縁から真下に延びているが、その他の内壁面は出入り口6a際から外方へ膨らんでいて、マンホール6の全体がボトル形状を呈し、底面は出入り口6aの開口面積より大きくなっている。
【0011】
ステップ7が装備されている面に対向する内壁の高い位置に形成された流入口8aには、高い位置にある流路を構成する入水パイプ8が接続され、ステップ7が装備されている内壁面の下部に形成された流出口9aには、低い位置にある流路を構成する流水パイプ9が接続される。
そしてステップ7が装備されている面に対向する内壁には、遮水板1が取り付けられる。
遮水板1は、入水パイプ8の延長上に点検窓を位置せしめると共に、下端をマンホール6の底から浮かせた状態となるようにして、流入口8aの下方に垂直配置し、両サイドの止着翼2、2・・を、ベルトなどの止着部材1d、1d・・を介して壁面にねじ止めによって固定される。
それによってマンホール6内には、入水パイプ8から流入した水が、マンホール6の内壁面と遮水板1との隙間を垂直に落下し、そのまま底面を伝って排水パイプ9へと一気に流れ出る流路10が形成される。
【0012】
遮水板1は、点検窓に開閉蓋を取り付けることによって、入水パイプから流れ込んだ水の噴き出し防止が図られる。
開閉蓋は、例えば図3に示すように、点検窓5を閉塞する板状の蓋体11を、点検窓5における開口縁の一カ所に設けた支点軸11aを中心に回動自在ならしめて取り付け、必要に応じ、摘み11bを持って開けば、入水パイプ8内の様子を観察できるようになっている。
遮水板1は壁面に張り付くように設置されるから、マンホール6内に出っ張り物のない広い作業空間を確保でき、上面が解放されたままであれば、異物が詰まった場合でも容易に除去できる。
【0013】
前記実施例では、遮水板が複数のプレートを連結する構成になっているので、分割されたプレートの状態でマンホール内へ搬入しやすく、設置作業をスムーズに行えるが、一枚板で形成することもできるし、上下スライド式の点検窓を採用したり、点検窓の位置を変えたり、点検窓を省略することもできる。
又、遮水板は原則として入水口より下に垂直配置されるが、実施例のように入水口の延長上までカバーしておけば、水が勢いよく流入しても遮水板の外に飛び散ることを防止できるので、入水口の上方までカバーするよう設置しても実質的に同一と見なす。
【0014】
尚、実施例の遮水板は、水平断面が台形に出っ張っているが、弓形に湾曲させたり縦方向に末広がりのテーパを付与することもできる。
そして遮水板の材質は、合成樹脂以外、例えば金属製とすることができるし、取り付け手段もねじ止め以外に、接着させたり、或いは予めマンホールの内壁面にスライド式のホルダを設けておいて、そのホルダに止着翼を差し込んで取り付けるなど適宜変更して差し支えない。
又、本発明の遮水板は、落差のある入水路と出水路とを連絡する垂直落下型の流路を備えたマンホールのみならず、連結された入水路から流入した水を一時的に溜め置き、随時ポンプにて排出するタイプのマンホールにも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a),(b)は本発明に係る遮水板の実施例を示した説明図である。
【図2】(a),(b)は遮水板を利用した流路を有するマンホールを示す説明図である。
【図3】蓋付きの点検窓を示した説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1・・遮水板、1a,1b,1c・・プレート、1d・・止着部材、2・・止着翼、3・・ねじ孔、4・・リブ、5・・点検窓、6・・マンホール、6a・・出入り口、7・・ステップ、8、入水パイプ、8a・・流入口、9・・流水パイプ、9a・・流出口、10・・流路、11・・蓋体、11a・・支点軸、11b・・摘み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面の高い位置に入水口を備えたマンホールにあって、前記入水口より下の部分に、遮水板を垂直配置することによって、その遮水板と前記内壁面とで挟まれ、前記入水口に連通した垂直流路を形成したマンホール。
【請求項2】
マンホール内に垂直配置し、マンホールの内壁面と組み合わせて垂直流路を形成する遮水板であって、水平断面において、中央がマンホールの内壁に対する取り付け面と反対側に膨出し、両サイドに止着翼を備えた遮水板。
【請求項3】
上下方向に連結する複数枚のプレートにて構成される請求項2に記載の遮水板。
【請求項4】
上部に点検窓が設けられた請求項2又は3に記載の遮水板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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