説明

マンホール用ライニングシート及びマンホールライニング構造並びにマンホールのライニング施工方法

【課題】斜壁管内にてリブを充填材に埋入することを可能とするマンホール用ライニングシート及びマンホールライニング構造を得るとともに、高強度なライニング施工を充填材の良好な充填性を確保しながら実現するマンホールのライニング施工方法を得る。
【解決手段】上端円形開口23より下端円形開口25が大きい略円錐台形筒状に形成され且つ平面視で各開口23,25の内側一点で接するように垂直部26を有する偏芯した斜壁筒10を形成するマンホール用ライニングシート100であって、垂直部26となる一辺部27同士がジョイント材にて接続されるとともに、他辺部29同士が溶接接合されて斜壁面となる斜壁筒10とされ、複数のシート材より連結構成されており、斜壁筒10の外周面には一辺部27と平行に延在する複数のリブ19が所定間隔で突設され且つリブ19の他辺部29側の端部が他辺部から一定距離で除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道・通信・電力コンクリート人孔に用いて好適なマンホール用ライニングシート及びマンホールライニング構造並びにマンホールのライニング施工方法に関し、さらに詳しくは、高強度なライニング施工を充填材の良好な充填性を確保しながら実現する改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道などの構築物の一部であるマンホールは、経時劣化(下水によるものや、 交通による外圧など)で腐食、亀裂、損傷などを起こす。また、これを修復するために、道路閉鎖などを行って掘り起こし、交換する作業は、多大な時間・労力を要し、施工困難であった。
【0003】
例えば、セラミックス・エポキシ・FRP等の塗布更生や、分割した樹脂厚板プレートを組み立て、隙間にモルタルを注入する更生、管更生工法による方法等がある。ところが、塗布工法は、老朽化した人孔に塗布する方法であり接着力を得るために、止水及び表面乾燥が必要であり、表面乾燥できなければ接着力は低下する。また、分割厚板樹脂パネルを組み立て、隙間にモルタルを注入し更生する工法は、既設人孔の内径が縮小され、また厚板樹脂パネルとモルタルの付着力に限界がある。さらに管更生工法は、設備等が大掛かりなものとなりコストが高くなった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1に開示される下水道における既設人孔の補修方法は、ライニング材を上下に分割して製作するとともに、上下ライニング材分割体の高さの合計が数種の既設人孔の内部高さを越えるようにし、老朽化が進んだ補修すべき既設人孔の高さの実測値に応じて、両ライニング材分割体のいずれかの縁部を切断除去したのち、接続して、合体ライニング材をつくり、既設人孔の内壁を補修することで、既設人孔に応じた様々のサイズを有する合成樹脂製ライニング材を用意する必要がなく、これを製造するための成形型も少なくてすみ、製造設備費及びライニング材自体のコスト低減を図っている。
【0005】
また、特許文献2に開示されるマンホールの補修構造は、端部内周面に繊維マットを半溶着させたポリエチレン、ポリプロピレンその他の熱可塑性合成樹脂製の筒体を、マンホールの内壁面に沿って積上げ、上下に隣接する半溶着繊維マットに接合用繊維マットを内側から重ね、硬化性樹脂を接合用繊維マット及び半溶着繊維マットに含浸させて硬化させたマンホールの補修構造とし、筒体とマンホールの内壁面との間にグラウト材を注入することで、筒体が接着性に劣るポリエチレン等からなるものであっても、強固に接合して補修を可能にすることを図っている。
【特許文献1】特開平7−127084号公報
【特許文献2】特開2006−97368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、合体ライニング材や熱可塑性合成樹脂製の筒体を、マンホール(既設管)の内壁面に沿って設け、合体ライニング材や筒体とマンホールの内壁面との間にグラウト材(充填材)を注入する場合、充填材と筒体等との強固な接合が必要となる。これに対し、繊維マット等をライニングシートに溶着させれば、シート厚が増大し、薄厚のライニング構造の実現が困難となる。また、充填材に埋入される複数の平行な直線状リブをライニングシートの表面に突設することも考えられるが、既設管が斜壁である場合、単一の展開シートで斜壁筒を形成すると、上方からの充填材の流下方向に対してリブが略直交方向で交差してしまう配置構造となり、充填材の充填効率を著しく低下させ、ライニング強度を低下させる虞があった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブを設けた場合に発生する、上端円形開口からの充填材流下方向に対してリブが略直交方向で交差してしまう配置構造が防止できるマンホール用ライニングシート及びマンホールライニング構造並びにマンホールのライニング施工方法を提供し、もって、リブを充填材に埋入する高強度なライニング施工を、充填材の良好な充填性を確保しながら実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のマンホール用ライニングシートは、外周面に、互いに平行となるリブ119(61)を備え、上端円形開口123より下端円形開口125が大きい略円錐台形筒状の斜壁筒110よりなるマンホール用ライニングシートであって、
前記斜壁筒110は、
平面視で前記上端円形開口123と下端円形開口125とが、その開口中心を略一致するように垂直配置されて同芯状の斜壁筒110とされ、
所定幅長の複数のシート材15a〜15d,17a〜17dを、幅方向両縁の前記リブ61が隣り合うよう配置し、該リブ61同士にジョイント材121を介して互いに連結して、内周面を連続面とし、且つ、各リブ119(61)が前記上端円形開口123の周縁から下端円形開口125の周縁に延在するように形成するとともに、
前記リブ61同士が隣り合わない部分は、その接続端縁を、該端縁から一定距離dで前記リブ119,61を除去し、該接続端縁同士が接合されて互いを連結して、
前記各リブ119,61間の両端が開放形成されていることを特徴とする。
【0009】
なお、上記の構成において、前記シート材同士のジョイント材121による接続部分は、斜壁筒110として少なくとも2カ所とされ、また、端縁から一定距離dを除去し、これら端縁同士を接合する部分としては、少なくとも2カ所で構成され、各位置の周方向での間隔は、ジョイント材121による接続部分を対向位置とし、これらの接続部分の間に接合部分を位置させ、それぞれおよそ90度毎の略等間隔が好ましい。
【0010】
このマンホール用ライニングシートでは、仮に一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブ119を設けた場合に発生する、上端円形開口123からの充填材流下方向に対してリブ119が略直交方向で交差してしまう配置構造が防止される。これにより、全てのリブ119同士間隙が、上端円形開口123、及び他辺部リブ119を一定距離d除去して形成した充填路31を介し、下り勾配で配設可能となる。また、このマンホール用ライニングシートでは、所定幅長の複数のシート材15a〜15d,17a〜17dで構成されており、それぞれをそれぞれの両端縁でジョイント材121にて接続する構造であり、この接続部分にて容易に組み立てることができる。
【0011】
本発明の請求項2記載のマンホール用ライニングシートは、外周面に、互いに平行となるリブ19を備え、上端円形開口23より下端円形開口25が大きい略円錐台形筒状の斜壁筒10よりなるマンホール用ライニングシートであって、
前記斜壁筒10は、
平面視で前記上端円形開口23と下端円形開口25とが、その開口中心を偏芯させ筒壁面の一部が略垂直部26を形成するように垂直配置された偏芯状の斜壁筒10とされ、
所定幅長の複数のシート材15a〜15d,17a〜17dを、前記略垂直部26の位置を基準に、幅方向両縁の前記リブ61が隣り合うよう配置し、該リブ61同士にジョイント材21を介して互いに連結して、内周面を連続面とし、且つ、各リブ19が前記上端円形開口23の周縁から下端円形開口25の周縁に延在するように形成するとともに、
前記リブ61同士が隣り合わない部分は、その接続端縁を、該端縁から一定距離dで前記リブ19を除去し、該接続端縁同士が接合されて互いを連結して、
前記各リブ19間の両端が開放形成されていることを特徴とする。
【0012】
なお、上記の構成において、、前記シート材15a〜15d,17a〜17d同士のジョイント材21による接続部分は、斜壁筒10として少なくとも1カ所とされ、好ましくは前記略垂直部26の位置とされており、また、端縁から一定距離dを除去し、これら端縁同士を接合する部分としては、少なくとも1カ所で構成され、好ましくは、前記略垂直部26のジョイント材21の位置から180度となる真向かい位置近傍とする。
【0013】
このマンホール用ライニングシートでは、仮に一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブ19を設けた場合に発生する、上端円形開口23からの充填材流下方向に対してリブ19が略直交方向で交差してしまう配置構造が防止される。これにより、全てのリブ19同士間隙が、上端円形開口23、及び他辺部リブ19を一定距離d除去して形成した充填路31を介し、下り勾配で配設可能となる。また、このマンホール用ライニングシートでは、大面積の素材シート(原反)を使用せずに、小面積の素材シートであるシート材15a〜15d,17a〜17dを複数連結して製作でき、大規模な原反製造設備が不要になる。
【0014】
請求項3記載のマンホール用ライニングシートは、既設管の内壁面と前記斜壁筒10(110)の外周面との間に間隙を形成するスペーサ材57(57A)が、前記リブ19(119)に係合されたことを特徴とする。
【0015】
このマンホール用ライニングシートでは、施工時にセパレータを設けずに、充填材59の充填間隙が容易な作業で且つ高精度に設定される。また、セパレータを使用しないので、シート自体に穿孔がなく、そのシート面に対する閉塞構造、閉塞作業工程が不要となる。
【0016】
請求項4記載のマンホールライニング構造は、請求項3に記載のマンホール用ライニングシート100(200)を用いたマンホールライニング構造であって、
前記斜壁筒10(110)のリブ19(119)に係合されるスペーサ材57を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材59を充填することで前記既設管の内側に前記斜壁筒10(110)を固着したことを特徴とする。
【0017】
このマンホールライニング構造では、全てのリブ19(119)同士間隙が、上端円形開口23(123)、及びリブ19(119)を除去して形成した充填路31(131)を介し急な下り勾配で配設され、充填材59の良好な充填が可能となり、各リブ19が充填材59に埋入されて高強度なライニング構造が構築される。
【0018】
請求項5記載のマンホールのライニング施工方法は、請求項3に記載のマンホール用ライニングシートを用いたマンホールのライニング施工方法であって、
前記斜壁筒10(110)の外周面に突出する所定の前記リブ19(119)にスペーサ材57を係着し、
該スペーサ材57と共に前記斜壁筒10(110)を折り畳んで既設管の内側に搬入し、
該折り畳んだ前記斜壁筒10(110)を拡げて元の斜壁筒形状に復元し、
該復元した前記斜壁筒10(110)の内側を内型枠で支持し、
前記スペーサ材57を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材59を充填することで前記既設管の内側に前記斜壁筒10を固着することを特徴とする。
【0019】
このマンホールのライニング施工方法では、斜壁筒10(110)を工場やマンホールの外部で完成させることができ、マンホール内の現場作業で斜壁筒10(110)を製作する手間が省け、時間、労力が削減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る請求項1記載のマンホール用ライニングシートによれば、略円錐台形筒状に形成されて、上端円形開口と下端円形開口とが、その開口中心を略一致するように垂直配置される斜壁筒を形成し、所定幅長の複数のシート材を、幅方向両縁のリブ同士にジョイント材を介して互いに連結することで、内周面を連続面とし、且つ、各リブが前記上端円形開口の周縁から下端円形開口の周縁に延在するように形成され、リブ同士が隣り合わない部分は、その接続端縁を、端縁から一定距離でリブを除去し、接続端縁同士が接合されて互いを連結する構成としているので、仮に一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブを設けた場合に発生する、上端円形開口からの充填材流下方向に対してリブが略直交方向で交差してしまう配置構造が防止できる。これにより、全てのリブ同士の間隙が、上端円形開口、及びリブ端部を一定距離除去して形成した充填路を介し、下り勾配で配設可能となる。この結果、各リブを充填材に全て埋入する高強度なライニング施工を、充填材の良好な充填性を確保しながら実現することができる。また、このマンホール用ライニングシートでは、複数のシート材で構成されており、それぞれをそれぞれの両端縁でジョイント材にて接続する構造であり、この接続部分にて容易に組み立てることができる。また、このマンホール用ライニングシートによれば、複数のシート材からなり、これらシート材の端縁部同士が、係合リブ同士にてジョイント材を係合して連結されたので、大面積の素材シート(原反)を使用せずに、小面積の素材シートを複数連結して製作でき、大規模な原反製造設備が不要になることから製品コストを低減することができる。
【0021】
本発明に係る請求項2記載のマンホール用ライニングシートによれば、上端円形開口と下端円形開口とが偏芯した斜壁筒を形成し、所定幅長の複数のシート材を、略垂直部の位置を基準に、幅方向両縁のリブが隣り合うよう配置してジョイント材を介して互いに連結し、内周面を連続面とするとともに、各リブが上端円形開口の周縁から下端円形開口の周縁に延在するように形成し、リブ同士が隣り合わない部分は、その接続端縁から一定距離でリブを除去し、接続端縁同士が接合されて互いを連結する構成としているので、仮に一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブを設けた場合に発生する、上端円形開口からの充填材流下方向に対してリブが略直交方向で交差してしまう配置構造を防止でき、全てのリブ同士間隙を、上端円形開口、及びリブ端部を一定距離除去して形成した充填路を介し、下り勾配で配設することができる。この結果、各リブを充填材に全て埋入する高強度なライニング施工を、充填材の良好な充填性を確保しながら実現することができる。
【0022】
請求項3記載のマンホール用ライニングシートによれば、既設管の内壁面と斜壁筒の外周面との間に間隙を形成するスペーサ材が、リブに係合されたので、セパレータを設けずに、充填材の充填間隙を容易な作業で且つ高精度に設定できる。また、セパレータを使用しないので、シート本体に穿孔がなく、その閉塞構造、閉塞工程を不要にして施工時間,施工コスト及び部材コストを低減することができる。
【0023】
請求項4記載のマンホールライニング構造によれば、請求項3記載のマンホール用ライニングシートを用いたマンホールライニング構造であって、斜壁筒のリブに係合されるスペーサ材を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材を充填することで既設管の内側に斜壁筒を固着したので、全てのリブ同士の間隙を、上端円形開口、及びリブを除去して形成した充填路を介し急な下り勾配で配設し、充填材の良好な充填が実現することから、薄厚且つ高強度なライニング構造を構築することができる。
【0024】
請求項5記載のマンホールのライニング施工方法によれば、請求項3記載のマンホール用ライニングシートを用いたマンホールのライニング施工方法であって、斜壁筒のリブにスペーサ材を係着し、スペーサと共に斜壁筒を折り畳んで既設管の内側に搬入し、元の形状に復元した斜壁筒の内側を内型枠で支持し、スペーサ材を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材を充填することで既設管の内側に斜壁筒を固着するので、斜壁筒を工場やマンホール外部で完成させることができ、マンホール内の現場作業で斜壁筒を製作する手間が省け、時間、労力を削減してライニング施工を効率良く且つ安価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るマンホール用ライニングシート及びマンホールライニング構造並びにマンホールのライニング施工方法の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るマンホール用ライニングシートの斜視図、図2は本発明に係るマンホールライニング構造を有したマンホールの断面図、図3は図2に示した上端円形開口近傍の横断面図、図4は図1に示したマンホール用ライニングシートの展開図、図5はジョイント部の斜視図、図6は他辺部の接合前の斜視図、図7は他辺部の接合後の斜視図である。
マンホール用ライニングシート100は、上端円形開口23より下端円形開口25が大きい略円錐台形筒状に形成される。平面視では、上端円形開口23が下端円形開口25の内側一点で接するように偏芯し、この一点の位置で垂直部26となる斜壁筒10を形成する。内側一点となる垂直部26とは、図1に示す一辺部27を平面視したときの点と一致する。
【0026】
マンホール用ライニングシート100は、この一点で一辺部27同士が接続されるとともに、この一辺部27とは反対な位置となる端縁部分である他辺部29同士が斜壁面で接続され、この他辺部29を中央線とする境に線対称となる少なくとも二枚の展開シート11,13からなる。斜壁筒10の外周面となる展開シート11,13の表面となる一方の面には、図4に示すように、一辺部27と平行に延在する複数のリブ19が所定間隔で突設されている。
【0027】
リブ19は、図5に示すように、脚壁19aの上端から左右に張出部19b,19bを張り出した略逆T字状の断面形状に形成される。このリブ19の他辺部29側の端部は、図6に示すように、他辺部29の端縁から一定距離dで除去されている。リブ19の他辺部29が一定距離dで除去された展開シート11,13の他辺部29同士は、接続端縁を構成し、互いに接合、例えば溶接、溶着、接着などの方法で接合され、図7に示すように、溶着部65となる。本実施の形態では、端縁を突き合わせた状態でV字状溝が形成されるよう切削加工等を施し、溶接棒を用いてこれら端縁同士を溶接している。これにより、展開シート11,13の他辺部29には、リブ19の無い空間となって他辺部29に沿う溝状の充填路31が形成される。
【0028】
上記展開シート11,13のそれぞれは、所定幅長の複数のシート材である分割シートを連結して構成される。本実施の形態において、展開シート11は、分割シート15a,15b,15c,15dを連結してなる。また、展開シート13は、分割シート17a,17b,17c,17dを連結してなる。分割シート15a,15b,15c,15d、及び分割シート17a,17b,17c,17dの幅方向両縁の端辺部同士は、図5に示す端辺部33に形成されたリブ19と平行な先端鉤状の係合リブ61,61同士に、断面略コ字状のジョイント材21を係合して連結される。
【0029】
このように、展開シート11,13が、押出成形などで容易に得ることのできる所定幅長の複数の分割シート15a,15b,15c,15d、分割シート17a,17b,17c,17dからなり、この分割シートの端辺部33同士が、ジョイント材21を係合して連結されたので、大面積の素材シート(原反)を使用せずに、小面積のシート材を所望の数で複数連結して製作でき、大規模な原反製造設備が不要になることから製品コストを低減することができる。また、連結数の増減で、所望の幅長の展開シート11,13を構成でき、内径の異なる既設管への対応が可能となる。すなわち、斜壁筒10を構成する際のリブ19の延在状態が、上端円形開口23から下端円形開口25にかけて、リブ19同士の間に間隙を形成しない箇所が、溶接などの接合箇所となり、この接合箇所以外においては、リブ同士が隣り合い、ジョイント材21で連結できることとなる。
【0030】
このようにマンホール用ライニングシート100から作られた斜壁筒10は、図2に示す既設管に使用される。既設管は、例えば、ふた35を備えた受枠37と、この受枠37の下方にモルタル41で接続される調整リング43と。調整リング43の下方に接続される斜壁管39と、直壁45と、管取付け壁47と、下水管49と、底板51と、基礎53とからなる。なお、図中、55は垂直壁部分に固定された梯子を表す。本実施の形態によるマンホール用ライニングシート100は、上記した斜壁管39の内壁面に間隙を有して設けられる。
【0031】
図8はスペーサ材の拡大図である。
既設管(斜壁管39)の内壁面と斜壁筒10の外周面との間には、間隙を形成するためのスペーサ材57がリブ19に係合して取り付けられる。スペーサ材57は、ゴム、合成樹脂材等の弾性材料からなり、図8(a)に示すように、断面円形状のチューブ状に形成され、断面略半円状の中空部67と、リブ19との嵌着溝69を有する。また、図8(b)に示すように、スペーサ材57Aは、中空部71を有する断面Ω状に形成し、隣接するリブ19,19同士の間隙に挿入することで、脚部73,73をリブ19の張出部19b,19bに係止して嵌着する構成としてもよい。
【0032】
このように、既設管の内壁面と斜壁筒10の外周面との間に間隙を形成するためのスペーサ材57を、リブ19に係合したので、セパレータを設けずに、図3に示す充填材59の充填間隙を容易な作業で且つ高精度に設定できる。また、セパレータを使用しないので、穿孔がなく、その閉塞構造、閉塞工程を不要にして施工コスト及び部材コストを低減することができる。
【0033】
このマンホール用ライニングシートでは、仮に一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブ19を設けた場合に発生する、上端円形開口23からの充填材流下方向に対してリブ19が略直交方向で交差してしまう配置構造が防止される。これにより、図1に示すように、全てのリブ19同士の間隙が、上端円形開口23、及び他辺部29のリブ19を一定距離d除去して形成した充填路31を介し、急な下り勾配で配設可能となる。
【0034】
次に、上記マンホール用ライニングシートを用いたマンホールのライニング施工方法を説明する。
図9はライニング補修前のマンホールの断面図、図10は折り畳んだ状態のマンホール用ライニングシートの斜視図である。
上記マンホール用ライニングシート100を用いてマンホールのライニング施工を行うには、先ず、斜壁筒10の外周面に突出する所定のリブ19、好ましくは一定間隔となるように、スペーサ材57を係着する。
【0035】
次いで、このスペーサ材57と共に斜壁筒10を、図10に示すように、U字状に折り畳んで、外形状を受枠37の内径よりも小さい外径となるように変形させ、図9に示す斜壁管39の内側に搬入する。
【0036】
次いで、折り畳んだ斜壁筒10を拡げて元の斜壁筒形状に復元し、復元した斜壁筒10の内側を不図示の内型枠で支持する。次いで、各スペーサ材57を斜壁管39の内壁面に当接して形成した間隙に、充填材59を充填することで斜壁管39の内側に斜壁筒10を固着する。この際、斜壁筒10の外周斜壁面では、充填路31から流れ落ちる充填材59が、左右のリブ19に沿って振り分けられて流れ、未充填部分の生じない確実な充填が行われることとなる。
【0037】
このマンホールのライニング施工方法によって施工されるマンホールライニング構造は、斜壁筒10のリブ19に係合されたスペーサ材57を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材59を充填することで、既設管の内側に斜壁筒10を固着したので、全てのリブ19同士間隙を、上端円形開口23、及びリブ19を除去して形成した充填路31を介し急な下り勾配で配設し、充填材59の良好な充填が実現することから、薄厚且つ高強度なライニング構造を構築することができる。
【0038】
また、上記したマンホール用ライニングシートによれば、上端円形開口23と下端円形開口25とが偏芯した斜壁筒10を形成し、他辺部29同士が斜壁面で接続され他辺部29を境に線対称となる少なくとも二枚の展開シート11,13からなり、展開シート11,13の表面となる一方の面には一辺部27と平行に延在する複数のリブ19が所定間隔で突設され且つリブ19の他辺部29側の端部が他辺部29の端縁から一定距離dで除去されたので、仮に一枚の展開シート11,13の全ての表面に平行な同一方向のリブ19を設けた場合に発生する、上端円形開口23からの充填材流下方向に対してリブ19が略直交方向で交差してしまう配置構造を防止でき、全てのリブ19同士間隙を、上端円形開口23、及び充填路31を介し、急な下り勾配で配設することができる。この結果、リブ19を充填材59に埋入する高強度なライニング施工を、充填材59の良好な充填性を確保しながら実現することができる。また、薄型リブシートにより既設人孔内径の縮径を最小限に抑えることができる。
【0039】
また、マンホールのライニング施工方法によれば、斜壁筒10のリブ19にスペーサ材57を係着し、スペーサ材57と共に斜壁筒10を折り畳んで既設管である斜壁管39の内側に搬入し、元の形状に復元した斜壁筒10の内側を内型枠で支持し、スペーサ材57を斜壁管39の内壁面に当接して形成した間隙に充填材59を充填することで斜壁管39の内側に斜壁筒10を固着するので、斜壁筒10を工場やマンホールの外部で完成させることができ、マンホール内の現場作業で斜壁筒10を製作する手間が省け、時間、労力を削減してライニング施工を効率良く且つ安価に行うことができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態では、斜壁筒として、垂直部26を有した構成の例について述べたが、図11に示すように、末広がり形状となるように、平面視で上端円形開口123と下端円形開口125とが、その開口中心を略一致するように垂直配置となり、周面の傾斜角が周方向で略一定な円錐台形筒状に形成される斜壁筒110として構成してもよい。
この場合、斜壁筒110は、図13の展開分解図に示すように、2つのシート体114A,114Bで構成し、これらを長手方向でそれぞれ連結して略環状とし、すなわち2等分に分割構成とするとともに、それぞれのシート体114A,114Bは、周方向両端縁となる一辺部同士がジョイント材121で連結される構成となる。
【0041】
シート体114A,114Bは、上述した展開シート11,13と同様で、中央となる他辺部同士129A,129A,129B,129Bを溶接接合して構成されており、溶着部165A,165Bとされ、また、この溶着部165A,165Bの箇所が、一定距離をリブ119が除去され、他片部129A,129Bに沿う溝状の充填路131が形成される。
【0042】
この斜壁筒110においても、上述した実施の形態の斜壁筒10と同様に、各展開シート111A,111B,113A,113Bは、分割シート15a,15b,15c,17a,17b,17cが連結してなり、断面コ字状のジョイント材121にて連結構成される。
【0043】
そして、図12に示すように、各シート体114A,114Bの各一辺部127A,127Bをジョイント材121で連結するとともに、他端に位置する各一辺部127A,127Bをジョイント材121で連結することで、図11に示すように略環状となり、すなわち、上端円形開口123より下端円形開口125が大きい略円錐台形筒状に形成され、且つ平面視で上端円形開口123と下端円形開口125とが、その開口中心を略一致するように垂直配置される斜壁筒110を形成するマンホール用ライニングシート200となる。また、斜壁筒110の外周面となる展開シート111A,111B,113A,113Bの一方の面には一辺部127A,127Bと平行に延在する複数のリブ119が所定間隔で突設され、且つ溶着部165A,165Bの2カ所に充填路131が形成される。
【0044】
このマンホール用ライニングシート200では、仮に一枚の展開シートの全ての表面に平行な同一方向のリブ119を設けた場合に発生する、上端円形開口123からの充填材流下方向に対してリブ119が略直交方向で交差してしまう配置構造が防止される。これにより、全てのリブ119同士間隙が、上端円形開口123、及び他辺部リブ119を一定距離d除去して形成した充填路131を介し、下り勾配で配設可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るマンホール用ライニングシートの斜視図である。
【図2】本発明に係るマンホールライニング構造を有したマンホールの断面図である。
【図3】図2に示した上端円形開口近傍の横断面図である。
【図4】図1に示したマンホール用ライニングシートの展開図である。
【図5】ジョイント部の斜視図である。
【図6】他辺部の接合前の斜視図である。
【図7】他辺部の接合後の斜視図である。
【図8】スペーサ材の拡大図である。
【図9】ライニング補修前のマンホールの断面図である。
【図10】折り畳んだ状態のマンホール用ライニングシートの斜視図である。
【図11】他の実施の形態のマンホール用ライニングシートの斜視図である。
【図12】図11に示したマンホール用ライニングシートの展開図である。
【図13】図11に示したマンホール用ライニングシートの展開分解図である。
【符号の説明】
【0046】
10,110…斜壁筒
15a,15b,15c,15d,17a,17b,17c,17d…シート材(分割シート)
19,119…リブ
21,121…ジョイント材
23,123…上端円形開口
25,125…下端円形開口
26…垂直部
39…既設管(斜壁管)
57…スペーサ材
59…充填材
61…係合リブ
100,200…マンホール用ライニングシート
d…他辺部から一定距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に、互いに平行となるリブを備え、上端円形開口より下端円形開口が大きい略円錐台形筒状の斜壁筒よりなるマンホール用ライニングシートであって、
前記斜壁筒は、
平面視で前記上端円形開口と下端円形開口とが、その開口中心を略一致するように垂直配置されて同芯状の斜壁筒とされ、
所定幅長の複数のシート材を、幅方向両縁の前記リブが隣り合うよう配置し、該リブ同士にジョイント部材を介して互いに連結して、内周面を連続面とし、且つ、各リブが前記上端円形開口の周縁から下端円形開口の周縁に延在するように形成するとともに、
前記リブ同士が隣り合わない部分は、その接続端縁を、該端縁から一定距離で前記リブを除去し、該接続端縁同士が接合されて互いを連結して、
前記各リブ間の両端が開放形成されていることを特徴とするマンホール用ライニングシート。
【請求項2】
外周面に、互いに平行となるリブを備え、上端円形開口より下端円形開口が大きい略円錐台形筒状の斜壁筒よりなるマンホール用ライニングシートであって、
前記斜壁筒は、
平面視で前記上端円形開口と下端円形開口とが、その開口中心を偏芯させ筒壁面の一部が略垂直部を形成するように垂直配置された偏芯状の斜壁筒とされ、
所定幅長の複数のシート材を、前記略垂直部の位置を基準に、幅方向両縁の前記リブが隣り合うよう配置し、該リブ同士にジョイント部材を介して互いに連結して、内周面を連続面とし、且つ、各リブが前記上端円形開口の周縁から下端円形開口の周縁に延在するように形成するとともに、
前記リブ同士が隣り合わない部分は、その接続端縁を、該端縁から一定距離で前記リブを除去し、該接続端縁同士が接合されて互いを連結して、
前記各リブ間の両端が開放形成されていることを特徴とするマンホール用ライニングシート。
【請求項3】
既設管の内壁面と前記斜壁筒の外周面との間に間隙を形成するスペーサ材が、前記リブに係合されたことを特徴とする請求項1又は2記載のマンホール用ライニングシート。
【請求項4】
請求項3に記載のマンホール用ライニングシートを用いたマンホールライニング構造であって、
前記斜壁筒のリブに係合されるスペーサ材を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材を充填することで前記既設管の内側に前記斜壁筒を固着したことを特徴とするマンホールライニング構造。
【請求項5】
請求項3に記載のマンホール用ライニングシートを用いたマンホールのライニング施工方法であって、
前記斜壁筒の外周面に突出する所定の前記リブにスペーサ材を係着し、
該スペーサ材と共に前記斜壁筒を折り畳んで既設管の内側に搬入し、
該折り畳んだ前記斜壁筒を拡げて元の斜壁筒形状に復元し、
該復元した前記斜壁筒の内側を内型枠で支持し、
前記スペーサ材を既設管の内壁面に当接して形成した間隙に充填材を充填することで前記既設管の内側に前記斜壁筒を固着することを特徴とするマンホールのライニング施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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