説明

マンホール用可とう継手の拡張バンド及び接続構造

【課題】マンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続において、マンホールの壁厚や削孔径等によらないで、安定した接続状態を提供できる拡張バンドを得る。
【解決手段】マンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続に用いる拡張バンド1を提供する。拡張バンド1は、断面が略円形の棒状体2Aにより形成される環状部材2と、環状部材2を拡径する拡径手段3とを具えてなる。環状部材2は、少なくとも1ヶ所に切断部2Bを有する。環状部材2は、マンホールの削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有する。拡張バンド1は、拡径手段3によって、環状部材2の切断部2Bの隙間が拡大し、環状部材2が拡径される。拡張バンド1は、拡径の際には、剛性ガイド3A内の環状部材2の切断部2B間にストッパー3Bが嵌込され、拡張状態が固定され、平面Cに対して上側に湾曲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続に用いる拡張バンド、及びかかる拡張バンドを用いるマンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続構造に関し、更に詳しくは、可とう継手をマンホール、特に、薄壁構造型マンホールの削孔部に固定するために用いる拡張バンド又はマンホール径に比して削孔径が大きく、通常の拡張バンドが適用できない場合に用いられる拡張バンド、及びかかる拡張バンドを用いて得られるマンホールと管との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールと下水管等の管との接続部に対しては、コンクリートを打設し巻き立てる工法が行われていた。しかし、地盤沈下や地震等の地盤の歪で、管とマンホールの相対的位置が変位すると、コンクリート巻き立て部がひび割れしたり、破壊したりして、不明水の浸入や下水の漏水等が発生する欠点があった。
【0003】
最近では、マンホールと本管の相対的位置が変位しても、その変位を吸収し、止水性も維持できる、ゴム製可とう継手が多く用いられるようになった(例えば、特許文献1参照)。また、薄壁構造形のマンホール等の側面孔用の可とう継手が考案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平7−4547号公報
【特許文献2】特開2003−20666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1では、可とう継手は、マンホール削孔部に平面の拡張バンドで固定されている。他の従来の拡張バンドも、拡張方法や拡張状態を固定する方法は異なるが、押圧面が平面の帯状バンドを拡張するのが一般的である。図10は、従来の1例のマンホールの接続構造の断面図である。図11は、従来の1例の拡張バンドの断面図である。
【0005】
図10に示すように、マンホール接続構造101では、拡張バンドとしての拡張金具102によって、マンホール103の削孔部103Aに、可とう継手104の取付けが行われる。また、図11に示すように、拡径金具102は、平面リング状であり、削孔断面空間内で、折り曲げ金具102Aを押し拡げ、可とう継手103を削孔部12Aに圧着固定する。かかる手法は、マンホールの壁厚が大きいか、削孔径が小さい場合、平面リング状の拡張バンドが削孔断面空間内よりはみ出すことなく、可とう継手を削孔面に拡張圧着し固定でき、安定した止水構造をとる。
【0006】
しかしながら、マンホールの壁厚が薄い場合や、マンホール径に比して削孔径が大きい場合においては、平面リング状の拡張バンドが削孔断面空間内よりはみ出すため、拡張力がはみ出し部において抜け、また、可とう継手の圧着もできなくなる。よって、安定した止水構造がとれず、拡張バンドを安定した状態で適用できない。
【0007】
特許文献2では、薄壁構造型マンホール等において、中筒を有する取付板を側面孔の内側に当て付けて、中筒を側面孔外に突出させ、中筒の外側より無端のリング状ワッシャー体を嵌付け、側面孔壁を取付板とワッシャー体とで挟みつけて取付板を固定し、中筒の先端部に、可とう継手を締め付けバンドで取り付けて、可とう性構造をとる。図12はこの例のマンホール構造の断面図である。
【0008】
なお、特許文献2のものは、特許文献1のような平面拡張バンドを用いないもので、特許文献1のような平面リング状バンドが使用できない場合、例えば、上述のように特許文献1の平面拡張バンドの欠点が現れる場合、すなわち、平面拡張バンドがマンホール削孔断面空間内に納まらず、はみ出し、拡張時にバンドが抜け出るような場合、特に、薄壁構造型マンホール等において顕著になるかかる平面拡張バンドの欠点を排除する場合に、有用なものである。つまり、特許文献2のものは、図12に示すように、薄壁構造形マンホール201に、中筒205を有する取付板204を、側面孔206の内側に当て付け、中筒205を側面孔206外に突出させ、中筒205の外側よりワッシャー体207を嵌付けて、側面孔206の壁を、取付板204とワッシャー体207にて挟みつけ、取付板204を固定し、中筒205の先端部に可とう継手203を取付け、管202と薄壁構造形マンホール201間の止水可とう継手構造をとる。
【0009】
特許文献2では、マンホール201の内面空間を取付板204が侵すため、設計流下量の見直しが必要であり、取付けも、マンホールの内側と外側とで作業することが必要で、煩雑であり、部品の複雑な加工を要し、コスト高になる欠点がある。
【0010】
本発明の課題は、マンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続において、マンホールの壁厚や削孔径等によらないで、安定した接続状態を提供できる拡張バンドを得ることである。
また、本発明の課題は、マンホールの削孔部と筒状可とう継手とが拡張バンドによって接続されている接続構造において、マンホールの壁厚や削孔径等によらないで、安定した接続状態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続に用いる拡張バンドにおいて、断面が略円形の棒状体により形成される環状部材と、前記環状部材を拡径する拡径手段とを具えてなり、前記環状部材が、少なくとも1ヶ所に切断部を有し、前記削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有し、前記拡径手段によって、前記環状部材の前記切断部の隙間が拡大し、前記環状部材が拡径される、拡張バンド及びかかる拡張バンドを用いる接続構造に係るものである。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するために開発したもので、拡張バンドが、断面略円形の棒状体より形成される所定の湾曲形状を有する環状部材を具えてなり、マンホールの削孔部と可とう継手との接続において、マンホールの壁厚や削孔径等によらないで、安定した接続状態を提供できるという知見に基づくものである。すなわち、本発明は、所定の拡張バンドが、可とう継手を、マンホール、特に、薄壁構造型マンホールの削孔部に固定するのに適し、また、マンホール径に比して削孔径が大きく通常の拡張バンドが適用できない場合等に用いるのにも適しているという知見に基づく。
【発明の効果】
【0013】
本発明の拡張バンドは、断面略円形の棒状体より形成される所定の湾曲形状の環状部材を具えてなるので、マンホール径に比して大きな径の削孔部や薄壁構造型マンホールの削孔部においても、筒状可とう継手を安定した接続状態で固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施をする形態について説明する。
(1)(マンホール)
マンホールは、特に制限されず、種々の形状、材質等のものが包含される。マンホールは、代表的には、筒状のものである。筒状とは、外周の壁部とその壁部に囲まれた内部空間とを有する形状をいう。筒状のマンホールには、外形又は内形の少なくとも1方において、断面が、楕円形、矩形、多角形等のものや、これらの組合せのものも包含される。筒状には、円筒が含まれる。
【0015】
筒状のマンホールは、主として、その外周の壁部が、外形及び内形において、断面で見て、略円形のものである。かかるマンホールを略円形マンホールと称する。略円形としては、円形の他、楕円形等が包含され、場合によっては、円に近似する形状で、矩形、多角形等や、これらの組合せの形状も包含される。
【0016】
マンホールには、マンホール径に比して大きな径の削孔部を有するマンホールや薄壁構造型マンホールが包含される。マンホールは、代表的に、コンクリート製やレジンコンクリート製である。
【0017】
(2)(削孔部)
削孔部は、マンホールの種々の位置に設けることができる。削孔部は、孔の大きさ、形状、形成手段等、特に制限されない。削孔部は、代表的に、略円形の孔として形成される。略円形には、上述のように、円形、楕円形等、円に近似する形状も包含される。削孔部は種々の方法によって作製することができる。
【0018】
削孔部は、主として、マンホールを管と連通させるものである。連通させる管が下水道等の管の場合、削孔部はマンホールの側壁に開けられることが多い。断面が略円形のマンホールの側壁に削孔部が設けられる場合、削孔部の内面は、マンホールの側壁の湾曲に沿って3次元的に湾曲する。
【0019】
(3)(管)
管は、特に制限されず、種々の種類、口径や形状、材質等からなるものが包含される。管は、主として、断面が略円形のものである。略円形には、上述の楕円形等、円に近似する形状のものが包含される。通常、マンホールの削孔部は、かかる管の外形に応じて設計される。管は、代表的に、下水道管である。
【0020】
(4)(可とう継手)
可とう継手はマンホールと接続すべき管との接続部、主として、マンホールの削孔部の内面と接続すべき管との間に設けられる。マンホールは、削孔部において管と接続されるが、削孔部と管との間には、通常、可とう性や止水性等が要求されるため、止水可とう継手が用いられる。可とう継手は、従来から用いられる種々の継手でよい。
【0021】
可とう継手は、代表的に、筒状である。かかる可とう継手を筒状可とう継手と称する。筒状とは、外周の壁部とその壁部に囲まれた内部空間を有する形状をいう。外周の壁部は、主として、外形及び内形において、断面で見て、略円形のものを指す。筒状には、円筒が含まれる。筒状可とう継手は、一端が削孔部の内面に固定され、他端は管の外面に固定される。
【0022】
筒状可とう継手は、削孔側筒状部等を具えることができる。削孔側筒状部は、拡張バンドによって、マンホールの削孔部の内面に接続される。また、筒状可とう継手は、管側筒状部等を具えることができる。管側筒状部は、締結バンド等の接続具によって、管の外面に接続される。
【0023】
締結バンドは、剛性体の材質からなることができ、剛性材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、防錆メッキ鋼、防錆被覆鋼材等の金属や、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET又はPETP)等の硬質プラスチック、繊維強化プラスチック(FRP)等の繊維補強プラスチック等からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの各材料は、腐食し難いので望ましい。
【0024】
削孔側筒状部には、鍔部を設けることができる。鍔部は、可とう継手と削孔部との間の水密性を高めるのに用いることができる。鍔部は、複数設けることができ、マンホールの削孔部壁の内面側及び外面側の少なくとも1方に設けることができるが、好ましくは、マンホール内の流体の流れを妨げないように、削孔部壁の外面において設け、削孔部壁に接触させることができる。
【0025】
削孔側筒状部は、削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有することができる。かかる削孔側筒状部は、マンホール内の流体の流れ等を、妨げることなく、円滑にすることができる。
【0026】
削孔側筒状部には、その内面に溝部を設けることができる。溝部は、断面が半円形等、拡張バンドを位置決めできるような形状を有することができる。溝部は、削孔側筒状部の内面の全周にわたって設けることができ、その際、全周にわたって、削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有することができる。
【0027】
拡張バンドは、少なくとも1部が溝部内に位置決めされた状態で拡径することができる。拡張バンドを溝部内で拡径させることができれば、拡張バンドが可とう継手上を無制限に滑る等の危険性を抑えることができ、また、削孔側筒状部をより一層安定した状態で削孔部の内面に接続し固定することができる。
【0028】
筒状可とう継手は、削孔側筒状部と管側筒状部とを繋ぐ連結部等を具えることができる。連結部には、伸縮をより一層高める伸縮部を設けることができる。筒状可とう継手は、削孔側筒状部、管側筒状部及び連結部等を一体にして一体成形することができる。
【0029】
可とう継手は、種々の材料から形成することができる。可とう継手は、代表的に、弾性体製、特に、ゴム製のものである。可とう継手の本体は、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、天然ゴム、及び軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることができる。
【0030】
(5)(拡張バンド)
拡張バンドは、マンホールの削孔部と可とう継手との接続に用いる。拡張バンドは、可とう継手の内面に配置され、拡径によって可とう継手を削孔部の内面に圧着させ、固定することができる。拡張バンドは、断面が略円形の棒状体により形成される環状部材と、この環状部材を拡径する拡径手段とを具えてなる。
【0031】
(5−1)(環状部材)
環状部材において、環状とは、環のような形のことをいい、輪、螺旋等、それらの複合形状が含まれる。かかる形状は、可とう継手をマンホールの削孔部に密着性よく固定できる形状であればよい。環状部材は、少なくとも1ヶ所に切断部を有している。環状部材の切断部は、拡径手段によって、その隙間が拡大され、環状部材が拡径される。
【0032】
環状部材は複数の切断部を有することができる。かかる場合、環状部材は複数のセグメントからなり、各セグメントを組み合せたものが、全体として、環状部材となる。かかる場合、環状部材の各セグメントの端部間の隙間を拡大して、環状部材を拡径することができる。
【0033】
環状部材は、マンホールの削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有する。かかる形状は、3次元的に湾曲した形状を包含する。かかる形状は、拡張バンドによって、可とう継手を削孔部の内面に安定した状態で接続するのに必要である。かかる形状は、予め、拡径前の環状部材が有するものでよく、拡径後に、削孔部の内面に沿うような形状となり、可とう継手を削孔部の内面に安定した状態で接続できるものでもよい。
【0034】
円筒形等のマンホールの側壁に削孔部を形成する場合、その削孔部の内面は、平坦なコンクリート壁に孔を開けたような形態ではなく、円筒の左右部分と上下部分とで削孔部の内面が前後にずれる形状となる。かかる削孔部内面の形状は、マンホール径に比して大きな径の削孔部を有するマンホールにおいて顕著となる。かかる場合には、マンホールの削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有する環状部材の利点が有効に働く。従来のように、拡張バンドが真円に近い2次元的な形状でしかない場合、マンホール削孔断面空間内に納まらず、はみ出し、拡張時及び拡張後等においては、バンドが抜け出ることがある。また、かかる拡張バンドの欠点は、薄壁構造型マンホール等においても顕著である。
【0035】
(5−2)(棒状体)
環状部材は、断面が略円形の棒状体により形成される。断面が略円形は、主として、断面、特に、その外形が円形であることを指す。断面の外形は、円形の他、楕円形等が包含され、場合によっては、円に近似する形状で、矩形、多角形等や、これらの組合せの形状も包含される。棒状体は、例えば、中実構造のものであるが、管のような中空構造、多層構造等であってもよい。中空構造等の棒状体の場合には、その外形が断面略円形であればよい。
【0036】
断面が略円形の棒状体は、環状部材を拡径して、可とう継手をマンホールの削孔部に接続する際、可とう継手を削孔部の内面に安定した状態で接続することができる。かかる棒状体は、環状部材の拡径によってねじれることが少なく、また、ねじれたとしても、断面が略円形の状態を保持し、安定した状態で拡径することができる。
【0037】
また、かかる棒状体は、環状部材の拡径によってねじれたとしても、断面が略円形の棒状体として、安定した状態で、削孔部の内面に沿うことができ、また、可とう継手を削孔部の内面に沿って接続し、固定することができる。従来のように押圧面が平面の平板状のバンドでは、拡径の際、拡径によってねじれた場合等、可とう継手との接触部が平面でない部分が生じ、押圧面が平面である部分と平面でない部分とにおいて、拡張バンドの拡張力が不均一になって漏水等が発生したり、また、可とう継手に加わる応力の不均一によって、可とう性継手が破断したり、耐久性に問題が生じたりする。
【0038】
棒状体は、前述したような、剛性材料、特に、硬質樹脂、硬質プラスチック、繊維補強プラスチック、腐食し難い金属類等から形成することができる。
【0039】
(5−3)(拡径手段)
拡径手段は、環状部材の切断部の隙間を拡大し環状部材を拡径するものである。かかる拡径手段には、種々の拡張方法が包含され、環状部材の拡径状態を固定する手段も包含される。
【0040】
拡径手段においては、特に制限されず、種々の拡張治具を用いることができる。拡張治具としては、例えば、拡張爪等の拡張部分を有するジャッキ等の拡張装置を用いることができる。かかる場合、環状部材の切断部の両端部には、拡張治具の拡張部分と係合する拡張用突起を設けることができる。
【0041】
拡径手段としては、剛性ガイドを用いることができる。剛性ガイドは、環状部材の切断部の両端部を収め、拡張バンドの拡径の際、剛性ガイド内での各端部のしゅう動を可能にする。また、剛性ガイドは、環状部材の外周の欠落部分、特に、切断端部間の周線の欠落をその外周によって補うことができ、拡張バンドが所望の形状の状態に拡径するのを可能とし、拡張バンドの半径方向外側へのほぼ均一な拡張を可能とし、可とう継手をマンホールの削孔部に高い密着性で固定させることができる。
【0042】
剛性ガイドは筒状体でよい。筒状は、上述したように、外周の壁部とその壁部に囲まれた内部空間を有する形状をいい、外周の壁部には、外面又は内面の少なくとも1方において、断面が、楕円形、矩形、多角形等のものや、これらの組合せのもの等が包含される。
【0043】
剛性ガイドには、窓を設けることができ、かかる窓には、環状部材の切断部の両端部の隙間を拡大するための拡張治具を挿入することができる。かかる窓は、剛性ガイドの側面に設けることができ、かかる剛性ガイドは断面略U状のものでよい。断面略U字状とは、剛性ガイド自体は筒状体であり、その側面が帯状に欠落した形状である。断面略U字状には、断面が四角形の剛性ガイドの場合は、4つの側面のうち1つの側面が欠如した形態も含む。
【0044】
拡径によって開いた環状部材の切断部の両端部は、特に制限されないが、適切な固定手段によって固定することができ、環状部材の拡径状態が保持される。固定手段としては、例えば、環状部材の切断部の両端部等に設けられる突起部等の固定部と、剛性ガイドに設けられる係止部とによる係合や、環状部材の切断部の両端部等に設けられる固定具用留め部とストッパー等のような固定具との組合せ等が挙げられる。
【0045】
好ましくは、固定手段は、環状部材の切断部の両端部を固定具用留め部とし、各固定具用留め部の間の隙間にストッパー等のような固定具を挿入することである。この際、前述の剛性ガイドの窓を固定具挿入用に用いることができる。
【0046】
上述の環状部材の拡張突起、剛性ガイド及び固定手段は、前述したような、剛性材料、特に、硬質樹脂、硬質プラスチック、繊維補強プラスチック、腐食し難い金属類等から形成することができる。
【0047】
(6)(削孔部と可とう継手との接続)
上述の可とう継手は、上述の拡張バンド及び拡張手段によって、マンホールの壁厚や削孔径等に応じて、マンホールの削孔部の内面に接続される。
【0048】
拡張バンドにおいて、環状部材は少なくとも1本からなることができ、複数本の環状部材を用いることもできる。複数本の環状部材を用いる場合、各環状部材を同時にか、又は別々に拡径することができ、各々の拡径状態を一体でか、又は別個に固定することができる。
【0049】
図面を参照して、本発明をより一層詳細に説明する。
図1は本発明の1例の拡張バンドを示す斜視図である。図2(a)は図1の拡張バンドをA方向から見た平面図である。図2(b)は図1の拡張バンドをB−B線で切断して見た正面図である。図2(c)は図1の拡張バンドを図2(a)のD−D線で切断して見た断面図である。図3は本発明の1例の接続構造の縦断面図である。図4は図3の接続構造の横断面図である。図5は図4の接続構造の拡大図である。
【0050】
図6(a)は1例の可とう継手の正面図である。図6(b)は図6(a)の可とう継手の断面図である。図7は拡張前の拡張バンドと拡張冶具とを示す1例の図である。図8は拡張バンドを拡張する際の状態を示す1例の図である。図9は本発明の他の例の接続構造の横断面図である。
【0051】
図1及び図2に示すように、1例の拡張バンド1は、断面が略円形の棒状体2Aにより形成される環状部材2と、環状部材2を拡径する拡径手段3とを具えてなる。環状部材2は、少なくとも1ヶ所に切断部2Bを有する。環状部材2は、マンホールの削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有する。拡張バンド1は、拡径手段3によって、環状部材2の切断部2Bの隙間が拡大し、環状部材2が拡径される。図1及び2では、拡張バンド1は、拡径の際には、剛性ガイド3A内の環状部材2の切断部2B間にストッパー3Bが嵌込され、拡張状態が固定され、平面Cに対して上側に湾曲する。
【0052】
拡張バンド1は、図1及び図2に示すように、環状部材2の切断部2Bの両端部に、拡張係止突起2Cを有することができ、拡張係止突起2Cの間が拡大することによって、環状部材2の切断部2Bの両端部が拡大され、環状部材2が拡径される。環状部材2の拡径状態は、環状部材2の切断部2Bの両端部の間のストッパー3Bによって保持することができる。
【0053】
図3〜図5に示すように、1例の接続構造11では、拡張バンド1は、円形マンホール12の削孔部12Aの内面12Bに、筒状可とう継手13を固定する。また、筒状可とう継手13は管14と接続される。環状部材の棒状体2Aは断面円形であり、かつ、環状部材2は、削孔部内面12Bに沿った湾曲形状を有する。
【0054】
この例の筒状可とう継手13は、図5及び図6に詳細に示すように、削孔側円筒部13Aと管側円筒部13Bとそれらを繋ぐ連結部13Cを有する。また、削孔側円筒部13Aは、削孔部12Aの内面12Bに沿った湾曲形状を有する。さらに、削孔側円筒部13Aは、環状部材2の形状と同形状のバンド受け半円形溝部13Dを有する。拡張バンド1は、図5に示すように、半円形溝部13D内で拡張固定することができる。
【0055】
図1、図2、図4及び図5に示すように、この例の拡張バンド1には、環状部材2の切断部2Bの両端部に、断面略U字状の剛性ガイド3Aを設ける。剛性ガイド3A内で、少なくとも1本の環状部材2の切断部2Bの両端部が拡張され、拡張した切断部2Bの間にストッパー3Bが挿入され、拡張状態が固定される。
【0056】
図3は、本発明の1実施例で、マンホール12の削孔部12Aに、本発明の1例の拡張バンド1を用いて、筒状可とう継手13を介して、取り付け管14を接続した状態の縦断面図である。図4は、図3の横断面図を示すもので、筒状可とう継手13が、断面が円形で、削孔部12Aの内面12Bに沿った湾曲形状を有する拡張バンド1で拡張固定されている。
【0057】
図5は、図4の横断面図の取付け部を拡大したもので、筒状可とう継手13は、削孔側円筒部13Aと管側円筒部13Bとこれらを繋ぐ連結部13Cとを有しており、拡張バンド1は、断面が円形の棒状体2Aの環状部材2からなり、マンホール12の削孔部の内面12Bに沿った湾曲形状を有し、筒状可とう継手13の削孔側円筒部13Aは、拡張バンド1の拡張により、削孔部の内面12Bに圧着され、拡張バンド1の切断部2B間にストッパー3Bが嵌込され、固定されている。管14は、筒状可とう継手13の管側円筒部13B内に挿入され、締結バンド15で締め付け固定されている。連結部13Cには、伸縮部13Eを設け、削孔側円筒部13Aには、鍔部13Fを設け、管側円筒部13Bには、締結バンド用鍔部を設けることができる。
【0058】
図6は、筒状可とう継手13の本体を示すもので、削孔側円筒部13Aには、拡張バンド1の環状部材2と同形状のバンド受け半円形溝部13Dを有する。本発明の湾曲拡張バンドは、筒状可とう継手13との接触点が拡張に伴い動くため、断面円形形状の棒状体から形成される環状部材からなる拡張バンドは、接触点が変化しても、拡張力が接触点に集中できるため、筒状可とう継手13を均一に圧着し、安定した止水状態を得ることができる。また、筒状可とう継手13の拡張バンドで圧着する削孔側円筒部13Aは、拡張バンドの接触点が拡張により変化しても、拡張バンドの断面形状と同形状のバンド受け半円形溝部13Dが形成されておれば、拡張力を面で受けることができ、安定した拡張状態を維持できる。
【0059】
図7は、拡張前の拡張バンド1とそれに適切な拡張冶具16とを示す。拡張バンド1は、環状部材2の切断部2Bを中央部にし、その近傍部に、拡張係止突起2Cを有しており、断面U字状の剛性ガイド3Aが、それらをしゅう動可能な状態で収容している。拡張冶具16は、拡張係止突起2Cを係止する拡張ツメ16Aと拡張ツメ16Aを駆動させるためのジャッキ16Bとを具える。
【0060】
図8は、筒状可とう継手13をマンホール12の削孔部の内面12Bに据え付け、図7に示すような拡張冶具16で、拡張バンド1を拡張する前の状態を示す。筒状可とう継手13の管側円筒部13Cは、拡張冶具16での拡張バンド1の取付作業ができ易いように、マンホール12の内側に反転される。
【0061】
図9は、他の例の接続構造21を示すもので、筒状可とう継手23の削孔側円筒部23Aが、2本の環状部材24,25を具える拡張バンド27によって、マンホール12の削孔部の内面12Bに拡張固定されている状態を示す。環状部材を2本にすることで、より一層優れた止水性能を発揮することができる。拡径手段26としては、双方の環状部材24,25を収容する剛性ガイド26Aと、双方の環状部材24,25を同時に拡張状態に保持するストッパー26Bとを用いることができる。削孔側円筒部23Aには、各環状部材24,25を位置決めするための溝部23Dを有することができる。
【0062】
以上の説明から明らかなように、マンホールの削孔部に管を接続する際に、マンホールの壁厚が小さい場合や削孔径がマンホール径に比して大きい場合等には、通常の平面拡張バンドは適用できないが、本発明のように、断面形状が円形の棒状体で形成され、削孔面に沿った湾曲形状を有する環状部材を具える拡張バンドを使用すれば、安定した止水状態が得られる。また、筒状可とう継手の削孔側円筒部に、拡張バンドの断面と同形状のバンド受け円形溝部を形成すれば拡張状態が安定し優れた止水状態を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の拡張バンドは、マンホールの壁厚が小さい場合やマンホール径に比して削孔径が大きい場合等、通常の拡張バンドが適用できない場合等の他、通常の拡張バンドが適用できる場合にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の1例の拡張バンドを示す斜視図である。
【図2】(a)は図1の拡張バンドをA方向から見た平面図であり、(b)は図1の拡張バンドをB−B線で切断して見た正面図であり、(c)は図1の拡張バンドを(a)のD−D線で切断して見た断面図である。
【図3】本発明の1例の接続構造の縦断面図である。
【図4】図3の接続構造の横断面図である。
【図5】図4の接続構造の拡大図である。
【図6】(a)は1例の可とう継手の正面図である。(b)は(a)の可とう継手の断面図である。
【図7】拡張前の拡張バンドと拡張冶具とを示す1例の図である。
【図8】拡張バンドを拡張する際の状態を示す1例の図である。
【図9】本発明の他の例の接続構造の横断面図である。
【図10】従来の1例のマンホールの構造の断面図である。
【図11】従来の1例の拡張バンドの断面図である。
【図12】従来の他の例のマンホール構造の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1,27 拡張バンド
2,24,25 環状部材
2A 棒状体
2B 切断部
2C 拡張係止突起
3,26 拡径手段
3A,26A 剛性ガイド
3B,26B ストッパー
11,21 接続構造
12 円形マンホール
12A 削孔部
12B 削孔部の内面
13,23 筒状可とう継手
13A,23A 削孔側円筒部
13B 管側円筒部
13C 連結部
13D,23D 半円形溝部
13E 伸縮部
13F 鍔部
14 管
15 締結バンド
16 拡張冶具
16A 拡張ツメ
16B ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの削孔部と筒状可とう継手との接続に用いる拡張バンドにおいて、
断面が略円形の棒状体により形成される環状部材と、前記環状部材を拡径する拡径手段とを具えてなり、前記環状部材が、少なくとも1ヶ所に切断部を有し、前記削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有し、前記拡径手段によって、前記環状部材の前記切断部の隙間が拡大し、前記環状部材が拡径される、拡張バンド。
【請求項2】
前記拡径手段が剛性ガイド及びストッパーを備え、前記剛性ガイドが断面略U字状であり、少なくとも1本の前記環状部材が拡径される際、前記ストッパーが、前記剛性ガイド内の前記環状部材の切断部の両端部の間に挿入され、前記環状部材の拡径状態が保持される、請求項1記載の拡張バンド。
【請求項3】
マンホールの削孔部と筒状可とう継手とが拡張バンドによって接続されている接続構造において、
拡張バンドが、断面が略円形の棒状体により形成される環状部材と、前記環状部材を拡径する拡径手段とを具えてなり、前記環状部材が、少なくとも1ヶ所に切断部を有し、前記削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有し、前記拡径手段によって、前記環状部材の前記切断部の隙間が拡大され、前記環状部材が拡径され、筒状可とう継手が前記削孔部の内面に固定されている、接続構造。
【請求項4】
前記筒状可とう継手が削孔側筒状部を備えており、前記削孔側筒状部の内面に溝部が設けられており、前記溝部が、前記削孔部の内面に沿うような湾曲形状を有しており、前記拡張バンドが前記溝部内で固定されている、請求項3記載の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−152653(P2006−152653A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343955(P2004−343955)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】