説明

ミエリン会合糖タンパク質(MAG)およびそのインヒビターを用いた組成物および方法

【課題】神経再生が問題である神経系創傷を有する患者を処置するために、ミエリンにおいて軸索再生の強力なインヒビターである分子を同定し、神経系におけるMAG活性のレベルをブロックまたは操作するための組成物および方法を提供すること。
【解決手段】薬学的に受容可能なキャリアーおよび治療有効量の少なくとも1つのMAGのインヒビターを含有する組成物であって、1つの好ましい実施態様では、MAGインヒビターは、小さなシアル酸を有するオリゴサッカライド(糖)を含み、これは、必要に応じてシアリダーゼの競合的なインヒビターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、神経再生の強力なインヒビターとしてのミエリン会合糖タンパク質(「MAG」)の新規同定に関する。より詳細には、本発明は、中枢神経系および末梢神経系における神経再生の阻害を逆転させるのに有用である組成物および方法に関する。神経再生におけるMAGの効果をモニターするため、および神経成長におけるMAGの阻害効果をブロックするかまたは促進する因子を同定するためのアッセイが提供される。このような因子を同定するためのスクリーニング方法がまた提供される。本発明はまた、神経再生におけるMAGの阻害効果を逆転し得る因子を用いた組成物および方法に関する。本発明の組成物の少なくとも1つを投与する工程を含む、神経系における神経成長または再生を調節および促進するための方法、神経組織またはニューロンに対する創傷または損傷を処置する方法、および障害または疾患に関連した神経の傷害を処置する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
軸索(神経)の成長を促進(encourage)/促進(promote)する多くの分子が存在するという事実にも関わらず、哺乳動物の神経系は創傷の後に再生しない。再生の欠失は、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)における、活性に再生を防止/阻害する分子の存在によって引き起こされると考えられている。従って、成体哺乳動物CNSが創傷後に再生できないという十分に考証された不能は、阻害分子の優性から生じると考えられている。
【0003】
ニューロンがCNSの組織切片に伸びる場合、それらは白質である、ミエリンの領域に突起を伸長できないことが実証されている。ミエリン特異的阻害分子がCNS再生の欠失をほとんど説明し得、そしてそれらの同定が創傷後の再成長を促進する治療法の設計に役立つと考えられている。この阻害の原因となる正確な分子は、これまで分からないままであった。これらの阻害分子を同定および阻害することができれば、神経の再生は促進され得る。
【0004】
Schwabおよび共同研究者は、約35kDおよび250kDの範囲の分子量の、CNSミエリン中の2つの成分を同定した。これらは、軸索の成長を阻止する。これらの2つのタンパク質画分の阻害作用を支持する最も説得力のある観察は、CNSミエリンタンパク質の分離後のポリアクリルアミドゲルのこれらの領域から溶出されたタンパク質に対して惹起された抗体が、インビトロでミエリンの阻害効果を特異的に逆転し、そして切除された神経にインビボで適用された場合、限定された脊髄の再生を許容するということである(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。これらの2つのタンパク質の性質およびそれらがどのように作用するかはまだ記載されていないが、それらがこの組織の阻害効果の重要な一因であることは一般に認められている。しかし、筆者らに認識されているように、これらの2つのタンパク質に対して指向される抗体の存在下でさえも、他の因子がCNSミエリンによる阻害に貢献しているようであり、インビボで大多数の軸索は再生し得ない(非特許文献4;非特許文献5)。
【0005】
ミエリン中の阻害分子に加えて、別のファミリーのタンパク質が最近同定されている。そのメンバーは軸索再生を阻害する。これらの分子はコラプシンと呼ばれる(非特許文献6)。しかし、コラプシンは、神経系を通して遍在して見い出されており、そして軸索が成長する神経系の領域(すなわち、灰白質)で見出されるので、創傷後の神経再生の欠失に有意に寄与しているようではない。そのかわり、コラプシンは発生の間に成長する軸索をガイドすることにおいて役割を演じるようである。
【0006】
Igスーパーファミリーの分子の多くのメンバーと同様に、MAGは、この場合、2日齢のラット由来の後根神経節(DRG)ニューロンからの神経突起成長を促進し得る(13)。本発明者らはまた、出生後3日までのラット由来のDRGニューロンに対する同様の効果を観察したが、この年齢以降のMAGは反対の効果を有していた(すなわち、神経突起成長を阻害した)(非特許文献7)。さらに、本発明者らは、MAGが、成体までの全ての年齢のラット由来の小脳ニューロンからの神経突起成長を劇的に阻害することを見出した。MAGに対して指向されるポリクローナル抗体は、神経突起成長におけるMAGの刺激効果および阻害効果の両方を特異的にブロックし得る。MAGは、それ故、ニューロンの年齢およびタイプに依存して、神経突起成長を促進し得るかまたは阻害し得るかのいずれかである。MAGの阻害効果における本発明者の報告の後に、別のグループが、異なる相補的アプローチを用いて、MAGが軸索成長のインヒビターであることを実証した(非特許文献8;特許文献1(1995年8月24日));これらは参考として本明細書中に援用される)。
【0007】
神経再生が問題である神経系創傷を有する患者を処置するために軸索再生のインヒビターをブロックすることは有用である。ミエリンにおいて軸索再生の強力なインヒビターである分子は同定されていない。Schwabおよび共同研究者らは、阻害性であるミエリン中の成分を同定したが、これらの成分の正確な性質は同定されていない(すなわち、それらはクローン化もされていないし、それらのタンパク質も精製されていない)。さらに、推定上の阻害分子が再成長を防止するように相互作用するニューロンにおけるこの成分に利用できる情報はなかった。阻害分子も相互作用する分子も正確に同定されていなかったので、不可能ではなくとも、これらの分子が神経の再生を阻害することをブロックおよび防止し得るストラテジーを論理的に設計することは困難であった。
【特許文献1】国際公開第95/22344号パンフレット
【非特許文献1】Caroni,P.およびSchwab,M.E.,Neuron,(1988a)1,pp.85−96
【非特許文献2】J.Cell Biol.,(1988b)106,pp.1281−88
【非特許文献3】Schnell,L.およびSchwab,M.E.,Nature,(1990)343,pp.269−72
【非特許文献4】Schnell,L.およびSchwab,M.E.,Nature,(1990)343,pp.269−72
【非特許文献5】Schnellら、Nature,(1993)367,pp.170−73
【非特許文献6】Luoら、Cell,(1993)75,pp.217−27
【非特許文献7】Mukhopadhyayら、Neuron,(1994)13,pp.757−67
【非特許文献8】McKerracherら、Neuron,(1994)13 pp.805−811
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)における軸索再生の強力なインヒビターとしてMAGを同定することにより、上記で言及する問題を解決する。本発明は、神経系におけるMAG活性のレベルをブロックまたは操作するための組成物および方法を提供する。
【0009】
1つの実施態様では、それらの組成物は、薬学的に受容可能なキャリアーおよび治療有効量の少なくとも1つのMAGのインヒビターを含有する。MAGのインヒビターとしては、抗MAG抗体、変化した生物学的活性によって特徴付けられる、変化および/または変異した形態のMAG、遊離したシアル酸を有する糖、糖に付着したシアル酸の修飾された誘導体、タンパク質または脂質キャリアー分子に付着されたシアル酸を有する糖、タンパク質または脂質キャリアー分子に付着された修飾されたシアル酸を有する糖、およびシアル酸糖ペプチドが挙げられるが、それらに限定されない。
【0010】
1つの好ましい実施態様では、MAGインヒビターは、小さなシアル酸を有するオリゴサッカライド(糖)を含み、これは、必要に応じてシアリダーゼの競合的なインヒビターである。より好ましくは、シアル酸アナログは、シアロ2,3−αラクトース(2,3−SL)または2,3−ジデオキシシアル酸(DD−NANA)である。
【0011】
別の好ましい実施態様では、MAGインヒビターは、変化および/または変異した形態のMAGを含み、これはCNSまたはPNSにおいてニューロンへの内因性MAGの結合を阻害し得る。変化した形態のMAGは、好ましくは、そのキメラタンパク質に可溶性を付与する別の分子に融合されたMAGの細胞外ドメインの全てまたは一部分を含む。1つのこのような好ましい可溶性MAGキメラタンパク質は、ヒト免疫グロブリン分子(例えば、IgG)のFcドメインに融合されたMAGの5つのIg様ドメイン(「MAG−Fc」))を含む。
【0012】
好ましい変化/変異形態のMAGは、MAG分子中に1つ以上の変異を保有する可溶性分子である。この変異は、内因性MAGまたはMAG−Fcと比較して、神経突起の成長を阻害または促進する能力を減少または除去するが、ニューロン表面への変化または変異した形態のMAGの結合を有意に減少させない。最も好ましい変化/変異形態のMAGは、免疫グロブリンFcドメインに融合したMAGの5つの細胞外Ig様ドメインの内の最初の3つからなる短縮形態のMAG−Fc(「MAG(dl−3)−Fc」)を含む。
【0013】
別の実施態様では、これらの組成物は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAc(3−O)構造(PNSまたはCNSにおいてニューロン表面へのMAGの酵素を媒介する)を有するシアル酸残基を変化または除去し得る治療有効量の酵素を含む可溶性分子である。この実施態様の好ましい組成物は、シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)およびシアリルトランスフェラーゼを含み、これらはNeu5Acα2→3Galβ1→3GalNAc(「3−O」)シアリル化グリカンの構造を変化させるか、そして/またはその有効濃度を低下させる。
【0014】
本発明はまた、神経系における神経の成長または再生を調節および促進する方法、神経組織またはニューロンに対する創傷または損傷を処置する方法、および障害または疾患に関する神経の変性を処置する方法を提供し、これらは本発明の薬学的組成物の少なくとも1つを投与する工程を含む。
【0015】
本発明は、特定の年齢の特定のタイプのニューロンからの神経突起の成長がMAG(またはMAG誘導体)の存在下で刺激または阻害されるかどうかを決定するためのアッセイを提供する。1つの実施態様では、この方法は以下の工程を含む:
a)MAGの非存在下にて成長許容基材上で選択されたニューロン細胞タイプの第1のサンプルを培養する工程;
b)結合したMAGを含む成長許容基材上で選択されたニューロン細胞タイプの第2のサンプルを培養する工程;
c)a)およびb)の培養細胞における神経突起成長の相対量を比較する工程;ここで、a)の培養細胞における神経突起の相対的な成長がb)よりも大きい場合、ニューロン細胞はMAGの存在によって阻害されており、そしてa)の培養細胞における神経突起の相対的な成長がb)よりも小さい場合、ニューロン細胞はMAGの存在によって刺激されている。
【0016】
好ましい実施態様では、MAGの非存在下での成長許容基材は、細胞表面MAGを発現しない哺乳動物細胞の単層を含み、そして結合したMAGを含む成長許容基材は、細胞表面MAGを発現するように操作された等価な哺乳動物細胞の単層を含有する。好ましくは、哺乳動物細胞は、細胞表面MAGを発現するように操作されたCHO細胞(例えば、CHO−MAG2細胞)である。
【0017】
本発明はまた、MAG依存性神経突起成長変化因子(すなわち、MAGの非存在下と比較してMAGの存在下で、選択されたニューロン細胞タイプまたは混合した細胞タイプの集団からの神経突起の成長を変化させる因子)を同定するための方法を提供する。
【0018】
1つの実施態様では、この方法は以下の工程を含む:
a)MAGの非存在下にて成長許容基材上で選択されたニューロン細胞タイプの第1のサンプルを培養する工程;
b)成長許容基材上で選択されたニューロン細胞タイプの第2のサンプルを培養する工程であって、その基材はMAGの非存在下で培養された細胞の第1のサンプルと比較してその細胞からの神経突起の成長を変化させるのに十分な量の結合したMAGを含む、工程;
c)神経突起成長を可能にするのに十分な時間、既知の相対濃度の試験因子とともにa)およびb)の細胞培養物をインキュベートする工程;および
d)a)およびb)の培養細胞における神経突起成長の相対量を比較する工程;ここでa)およびb)の培養細胞における神経突起の相対成長を変化する因子は、MAG依存性神経突起成長変化因子として同定される。
【0019】
好ましい実施態様では、MAGの非存在下での成長許容基材は、細胞表面MAGを発現しない哺乳動物細胞の単層を含み、そして結合したMAGを含む成長許容基材は、細胞表面MAGを発現するように操作された等価な哺乳動物細胞の単層を含有する。好ましくは、哺乳動物細胞は、細胞表面MAGを発現するように操作されたCHO細胞(例えば、CHO−MAG2細胞)である。
【0020】
本発明の別の実施態様では、MAG依存性神経突起成長変化因子を同定するための方法は、以下の工程を含む:
a)MAGを欠失する成長許容基材上で選択されたニューロン細胞タイプの個々のサンプルを培養する工程;
b)既知の濃度の追跡可能な可溶性形態のMAGとともにa)の第1のサンプルを培養する工程;
c)既知の濃度のMAG活性を欠失した、追跡可能な可溶性形態のコントロールタンパク質とともにa)の第2のサンプルを培養する工程;
d)神経突起成長を可能にするのに十分な時間の間、既知の相対濃度の試験因子とともにb)およびc)の細胞培養物をインキュベートする工程;および
e)c)およびd)の培養細胞における神経突起成長の相対量を比較する工程;ここでc)およびd)の培養細胞における神経突起の相対成長を変化させる因子は、MAG依存性神経突起成長変化因子として同定される。
【0021】
1つの好ましい実施態様では、MAGを欠失した成長許容基材は、細胞表面MAGを発現しない哺乳動物細胞(例えば、COSまたはNIH 3T3細胞)の単層を含む。別の好ましい実施態様では、MAGを欠失した成長許容基材は、精製された、成長促進因子の固定化された単層を含む。単層に固定化され得る1つの最も好ましいニューロン成長促進因子はL1糖タンパク質である。
【0022】
好ましい実施態様では、可溶性形態のMAGは、MAG−Fc融合タンパク質であり、そしてMAG活性を欠失した可溶性コントロールタンパク質はMUC 18−Fc融合タンパク質である。好ましい追跡可能な融合タンパク質は、放射標識または蛍光標識されている。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1) 薬学的に受容可能なキャリアーと、治療有効量の少なくとも1つのMAGのインヒビターとを含有する、薬学的組成物。
【0023】
・(項目2) 上記MAGインヒビターは、変化した生物学的活性により特徴付けられる変化形態または変異形態のMAG、遊離のシアル酸保有糖、糖に付着したシアル酸の改変された誘導体、タンパク質または脂質キャリア分子に付着したシアル酸保有糖、タンパク質または脂質キャリア分子に付着した改変されたシアル酸保有糖、およびシアル酸糖ペプチドからなる群より選択される、上記の薬学的組成物。
【0024】
・(項目3) 上記MAGインヒビターは、シアル酸保有糖である、上記の薬学的組成物。
【0025】
・(項目4) 上記シアル酸がシアロ2,3−αラクトースまたは2,3−ジデオキシシアル酸である、上記の薬学的組成物。
【0026】
・(項目5) 上記MAGインヒビターが、中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)においてニューロンへの内因性MAGの結合を阻害し得る変化形態のMAGを含む、上記の薬学的組成物。
【0027】
・(項目6) 上記変化形態のMAGは、内因性MAGまたは可溶性MAGと比較して神経突起(neurite)成長をそのMAGが阻害または促進する能力を減少または除去するが、ニューロン表面への当該変化形態のMAGの結合を有意には減少させない、1つ以上の変異をMAG分子内に保有する可溶性キメラタンパク質である、上記の薬学的組成物。
【0028】
・(項目7) 上記変化形態のMAGが、MAGの細胞外Ig様ドメイン1〜細胞外Ig様ドメイン3を含有する可溶性キメラタンパク質である、上記の薬学的組成物。
【0029】
・(項目8) 上記変化形態のMAGが、MAG(d1−3)−Fcである、上記の薬学的組成物。
【0030】
・(項目9) 上記変化形態のMAGが、MAGの細胞外Ig様ドメイン1〜細胞外Ig様ドメイン5を含有する可溶性キメラタンパク質である、上記の薬学的組成物。
【0031】
・(項目10) 上記変化形態のMAGが、MAG(d1−5)−Fcである、上記の薬学的組成物。
【0032】
・(項目11) 上記MAGインヒビターは、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAc(3−O)構造を有するシアル酸残基を含むニューロン表面上のシアリル化(sialylated)グリカンを変化または除去し得る酵素である、上記の薬学的組成物。
【0033】
・(項目12) 上記酵素はシアリダーゼである、上記の薬学的組成物。
【0034】
・(項目13) 神経系における神経の成長または再生を調節するための方法であって、当該方法は、
上記の薬学的組成物を投与する工程;
を包含する、方法。
【0035】
・(項目14) 神経系における神経の成長または再生を調節するための方法であって、当該方法は、
上記の薬学的組成物を投与する工程;
を包含する、方法。
【0036】
・(項目15) 神経の成長または再生が促進される、上記の方法。
【0037】
・(項目16) 神経組織またはニューロンに対する傷害(injury)または損傷(damage)を処置するための方法であって、当該方法は、
上記の薬学的組成物を投与する工程;
を包含する、方法。
【0038】
・(項目17) 障害または疾患に関する神経変性を処置するための方法であって、当該方法は、
上記の薬学的組成物を投与する工程;
を包含する、方法。
【0039】
・(項目18) 特定の年齢における特定のタイプのニューロンからの神経突起(neurite)の成長(outgrowth)が、MAGまたはMAG誘導体の存在下で刺激されるか阻害されるかを決定するための方法であって、当該方法は、
a)MAGの非存在下での成長許容基材上で、選択されたニューロン細胞タイプの第一のサンプルを培養する工程;
b)結合したMAGを含む成長許容基材上で、当該選択されたニューロン細胞タイプの第二のサンプルを培養する工程;ならびに
c)a)およびb)の培養細胞における神経突起の成長の相対量を比較する工程、
を包含し、
a)の培養細胞における神経突起の相対的成長が、b)の培養細胞における神経突起の相対的成長よりも大きい場合、当該ニューロン細胞は、MAGの存在によって阻害されており、
a)の培養細胞における神経突起の相対的成長が、b)の培養細胞における神経突起の相対的成長よりも小さい場合、当該ニューロン細胞は、MAGの存在によって刺激されている、方法。
【0040】
・(項目19) 上記MAGの非存在下での成長許容基材が、細胞表面MAGを発現しない哺乳動物細胞の単層を含み、上記結合したMAGを含む成長許容基材が、細胞表面MAGを発現するように操作された等価な哺乳動物細胞の単層を含む、上記の方法。
【0041】
・(項目20) 上記哺乳動物細胞が、細胞表面MAGを発現するように操作されたCHO細胞である、上記の方法。
【0042】
・(項目21) 上記哺乳動物細胞がCHO−MAG2細胞である、上記の方法。
【0043】
・(項目22) 選択されたニューロン細胞タイプについてMAG依存性神経突起成長変化因子を同定するための方法であって、当該方法は、
a)MAGの非存在下にて成長許容基材上で、選択されたニューロン細胞タイプの第1のサンプルを培養する工程;
b)成長許容基材上で、当該選択されたニューロン細胞タイプの第2のサンプルを培養する工程であって、当該基材は、当該細胞からの神経突起の成長を、MAGの非存在下で培養された細胞の当該第1のサンプルと比較して変化させるのに十分な量の結合したMAGを含む、工程;
c)神経突起成長を可能にするのに十分な時間、既知の相対濃度の試験因子とともにa)およびb)の細胞培養物をインキュベートする工程;ならびに
d)a)およびb)の培養細胞における神経突起成長の相対量を比較する工程;
を包含し、
a)およびb)の培養細胞における神経突起の相対成長を変化させる因子は、MAG依存性神経突起成長変化因子として同定される、方法。
【0044】
・(項目23) 上記MAGの非存在下での成長許容基材は、細胞表面MAGを発現しない哺乳動物細胞の単層を含み、上記結合したMAGを含む成長許容基材は、細胞表面MAGを発現するように操作された等価な哺乳動物細胞の単層を含有する、上記の方法。
【0045】
・(項目24) 上記哺乳動物細胞が、細胞表面MAGを発現するように操作されたCHO細胞である、上記の方法。
【0046】
・(項目25) 上記哺乳動物細胞がCHO−MAG2細胞である、上記の方法。
【0047】
・(項目26) 選択されたニューロン細胞タイプについてMAG依存性神経突起成長変化因子を同定するための方法であって、当該方法は、
a)MAGを欠く成長許容基材上で、選択されたニューロン細胞タイプの個々のサンプルを培養する工程;
b)既知の濃度の追跡可能な可溶性形態のMAGとともにa)の第1のサンプルを培養する工程;
c)既知の濃度の追跡可能な可溶性形態のMAG活性を欠くコントロールタンパク質とともにa)の第2のサンプルを培養する工程;
d)神経突起成長を可能にするのに十分な時間の間、既知の相対濃度の試験因子とともにb)およびc)の培養物をインキュベートする工程;および
e)c)およびd)の培養細胞における神経突起成長の相対量を比較する工程;
を包含し、
c)およびd)の培養細胞における神経突起の相対成長を変化させる因子は、MAG依存性神経突起成長変化因子として同定される、方法。
【0048】
・(項目27) 上記MAGを欠く成長許容基材は、細胞表面MAGを発現しない哺乳動物細胞の単層を含む、上記の方法。
【0049】
・(項目28) 上記MAGを欠く成長許容基材は、精製された成長促進因子の、固定化された単層を含む、上記の方法。
【0050】
・(項目29) 上記成長促進因子はL1糖タンパク質を含む、上記の方法。
【0051】
・(項目30) 上記可溶性形態のMAGは、MAG−Fcキメラタンパク質であり、上記MAG活性を欠く可溶性コントロールタンパク質はMUC18−Fcキメラタンパク質である、上記の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載される本発明が完全に理解され得るために、以下の詳細な説明を示す。
【0053】
用語「MAG誘導体」は、少なくとも1つのMAG細胞外ドメインを含有する分子をいう。ここで、MAG分子は、(例えば、MAG分子に融合された他の分子の部分とキメラを形成させるための組換えDNA技術、または化学的または酵素的改変によって)変化されているか、または変異(例えば、内部欠失、挿入、転移および点変異)されている。MAG誘導体は、他に注記されない限り、MAG活性を保持する。
【0054】
用語「MAG生物活性」および「MAG生物学的活性」は、本明細書に記載される神経突起成長アッセイのような神経突起成長アッセイにおいて検出されるような、定性的に細胞表面MAGまたは可溶性MAGと同じ方向に、特定の齢の選択されたニューロン細胞タイプの神経突起成長を阻害または促進する分子の能力、特に変化形態または変異形態のMAGの能力をいう。
【0055】
用語「MAG結合活性」は、本明細書に記載されるアッセイのようなアッセイにおいてシアル酸依存性ニューロン結合に関して細胞表面MAGまたは可溶性MAGと競合する分子の能力、特に変化形態または変異形態のMAGの能力をいう。例えば、好ましいMAGのインヒビターは、MAG結合活性を保持するが、MAG生物活性を減少または欠失している。
【0056】
用語「MAG活性」は、一般に、上記のMAG生物活性および結合活性をいう。
【0057】
用語「シアル酸の改変された誘導体」は、特に、その分子の反応位置上に化学基または側鎖を添加または変換するように化学的または酵素的に改変されているシアル酸残基をいう。シアル酸は、ノイラミン酸の誘導体であり、そしてしばしば細胞表面炭水化物の終端である9個のカルボン酸糖のファミリーである。「NeuAc」はN−アセチルノイラミン酸を表す;「GalNAc」はN−アセチルガラクトサミンを表す。
【0058】
(MAGは神経突起成長の強力なインヒビターである)
上記のように、MAGは特定のタイプのニューロンから神経突起伸長を促進することが以前に示されている。さらに、MAGは、ミエリン形成の開始に関与すると考えられている。本発明は、軸索成長、それ故、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)における神経再生のインヒビターとしてのMAGの新規の役割を実証する。
【0059】
選択されたニューロン細胞タイプは、実施例1に記載される手順に従って、出生後日数(PND)において漸増時間で動物から単離され得る。単一細胞タイプを表すニューロンが単離されそして単独で試験され得るか、または所望であれば、非ニューロン細胞の存在下または非存在下で1つ以上のニューロン細胞タイプを含む細胞の混合された集団もまた試験され得る。
【0060】
本発明は、特定の齢の特定のタイプのニューロンからの神経突起成長がMAGの存在下で刺激または阻害されるかどうかを決定するためのインビトロアッセイを提供する。選択した単離されたニューロンは、結合したMAGの存在下または非存在下で、成長許容基剤を含有する単層上で培養され得、そして相対的な神経突起成長が測定され得る。好ましくは、成長許容基剤は、それらの細胞表面上にMAGを発現するように操作された哺乳動物の線維芽細胞を含有する。MAG発現細胞は、実施例2に記載の手順を用いて操作され得る。次いで、MAG発現細胞における神経突起成長は、細胞表面MAGを発現しないコントロール細胞における神経突起成長と比較され得る。
【0061】
図1に示されるように、MAGは、新生児から成体にわたる、試験した全ての齢のラット由来の小脳ニューロン由来の軸索成長の強力なインヒビターである。このことは、MAGを発現するトランスフェクトチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)上でニューロンを共培養し、そして伸長した神経突起の長さを、MAGを発現しないコントロールのトランスフェクトされたCHO細胞上で伸長した神経突起の長さと比較することにより決定された(実施例2を参照のこと)。4つの異なるMAG発現細胞株を用い、そして各々は同じ効果を有し、そして試験した全ての年齢でコントロール細胞と比較して少なくとも70%まで神経突起成長を阻害した(図1;Mukhopadhyayら、Neuron,13,757−67頁(1994)もまた参照のこと)。抗MAG抗体による神経突起成長阻害の逆転、および神経突起成長における別のミエリンタンパク質である、Poを発現するCHO細胞の効果の欠失は、この阻害がMAGに対して特異的であることを実証している(Mukhopadhyayら、前出)。しかし、上記で考察したように、MAGは新生児DRGニューロンからの神経突起成長を促進することが以前に報告されていた(Johnsonら、Neuron,3,377−385頁(1989))。
【0062】
この明白な矛盾を明らかにするために、1日〜20日齢のラット由来の後根神経節(DRG)ニューロンを、実施例2に記載のようにCHO細胞における神経突起成長アッセイにおいて試験した。図2に示されるように、MAGは2日齢のラット由来のDRGニューロンの神経突起成長を増強した;神経突起は、MAG発現細胞においてコントロール細胞と比較してほぼ2倍の長さであった。他方で、成体ラット由来のDRGニューロンを試験した場合、MAGは約40%まで神経突起成長を阻害した。異なる齢のDRGニューロンからの神経突起成長におけるMAGの効果のより詳細な時間経過は、促進から阻害への遷移が出生後約4日目に起こることを明らかにした(図2)。従って、ニューロンの齢およびタイプに依存して、MAGは神経突起成長を促進または阻害し得る。
【0063】
(MAGは多くのタイプのニューロンからの軸索成長を阻害する)
種々のニューロン集団におけるMAGの効果の特徴付けは、神経系の種々の領域における創傷の後の増強された再生に対する必要条件を規定することを援助する。他のニューロンの集団がMAGに応答してどのように挙動するかを確立するために、種々の異なるニューロン細胞タイプを、実施例1に記載のように1日齢のラット(PND1)から単離した。単離された網膜神経節(RG)、海馬(HN)、運動ニューロン(MN)および上頸神経節(SCG)を、実施例2に記載したようにCHO細胞神経突起成長アッセイにおいて試験した。図3に示したように、MAGは、試験した全ての細胞タイプにおいて神経突起成長の強力なインヒビターである。従って、MAGは、今日まで試験した神経系の全ての領域における神経再生の欠失において重要な役割を演じるようである。
【0064】
これらの結果は、実施例2に記載したトランスフェクト哺乳動物細胞アッセイが有効なアッセイであり、それによってMAGによる神経突起成長の阻害および促進の両方がモニターおよび特徴付けされ得ることを示す。このアッセイをまた用いて、MAG生物活性をブロック(または増強)し得る因子をスクリーニングおよび同定し得、それによって神経系における軸索成長の阻害または刺激を変化させる(実施例3)。このような因子は、本明細書中では「MAG依存性神経突起成長変化因子」と呼ばれる。
【0065】
(MAGは、ニューロン上のシアル酸を有する糖タンパク質に結合することにより軸索成長を阻害する)
MAGは、シアル酸依存性様式で試験した全てのタイプのニューロンに結合する(Kelmら、Curr.Biol.,4,965−72頁(1994))。図4は、水性MAG−Fcニューロン結合アッセイの結果を示す。これは本質的にはKelmらに記載されるように行われた。この実験は、単離されたPDN1小脳ニューロン(その成長がMAGにより阻害される)へのMAGの結合が、抗MAGモノクローナル抗体513の含有または結合反応前のニューロンのシアリダーゼ処理のいずれかによって無効にされることを確認する。シアリダーゼは、複合糖質からシアル酸を除去する酵素である。同様に、単離されたPDN1 DRGニューロン(その成長がMAGにより促進される)へのMAGの結合は、抗MAGモノクローナル抗体513の含有、およびより少ない程度までシアリダーゼ処理によって阻害される。
【0066】
ニューロンへのMAGのシアル酸依存性結合が、軸索の成長および再生の阻害または促進を合図する事象であるかを決定するために、単離されたニューロンをシアリダーゼで処理した後に実施例2に記載のアッセイのような神経突起成長アッセイを行った(実施例7)。PND2小脳ニューロンを脱シアル化した場合、軸索再生の阻害は約50%まで逆転された(図5)。同様に、新生児(PND1)DRGニューロンを脱シアル化した場合、MAGによる軸索成長の促進は完全に無効になった(図6)。
【0067】
実施例2に記載のアッセイのような軸索成長アッセイをまた、小さな遊離シアル酸を有する糖の存在下で行った。これらの糖は、MAG結合に関してニューロン表面のシアル酸成分と競合し得、それによってMAGによる神経突起成長の阻害をブロック(表1)または促進(表2)する。増加する濃度の小さなシアル酸を有する糖2,3−ジデオキシシアル酸(DD−NANA)またはシアロ2,3−αラクトース(SL)のいずれかを含有することにより、MAGによる軸索成長の阻害が40〜56%の間で逆転し(表1)、そしてMAGによる神経突起成長の促進が完全に無効となった(表2)。
【0068】
【表1】

神経突起成長を、実施例3に記載するようなMAG発現CHO細胞およびコントロールCHO細胞上で成長したPND2動物由来の小脳ニューロンについて比較した。
【0069】
【表2】

神経突起成長を、実施例3に記載するようなMAG発現CHO細胞およびコントロールCHO細胞上で成長したPND2動物由来のDRGニューロンについて比較した。
【0070】
上記の実験は、通常、MAG生物学的活性が、ニューロンの表面上のシアル酸を有する成分に結合するMAGの能力に依存することを実証している。従って、このシアル酸を有する成分に結合するMAGの能力を中断させ得る種々の因子がMAGインヒビターとしてインビボで機能し、従ってCNSおよびPNSにおけるニューロン成長を制御(特に促進)するのに有用であることが予想される。
【0071】
MAG結合活性のインヒビターとしては、抗MAG抗体、遊離シアル酸を有する糖、糖に付着したシアル酸の改変誘導体、タンパク質または脂質キャリア分子に付着したシアル酸を有する糖、タンパク質または脂質キャリア分子に付着した改変シアル酸を有する糖およびシアル酸糖ペプチドまたは糖タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
上記で示したように、MAG結合活性のインヒビターとしてはまた、シアル酸残基(特に、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAc(3−O)構造(これはPNSまたはCNSにおけるニューロン表面へのMAG結合を媒介する))を変化または除去し得る酵素が挙げられる。本実施態様の好ましい組成物は、その構造を変化および/またはNeu5Acα2→3Galβ1→3GalNAc(” 3−O”)シアリル化グリカンの有効濃度を低下するシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)およびシアリルトランスフェラーゼを含む。
【0073】
(MAG依存性成長調節因子の同定)
推定上の新規MAG依存性神経突起成長調節因子を、実施例3に記載の手順を用いて試験し得る。試験因子は、それがMAGによって阻害される細胞タイプからの神経突起成長を促進するか、またはMAGによって刺激される細胞タイプからの神経突起成長を阻害する場合、MAGインヒビターとして同定される。同様に、それがMAGによって刺激される細胞タイプからの神経突起成長を促進するか、またはMAGによって阻害される細胞タイプからの神経突起成長を阻害する場合、因子はMAGアゴニストである。
【0074】
(可溶性MAGは軸索再生の強力なインヒビターである)
本発明は、軸索成長におけるMAGの効果をアッセイし、そしてMAG依存性神経突起成長変化因子を同定する第2の方法を提供する。本方法は、選択されたニューロン細胞タイプのサンプルを、既知濃度の追跡可能な、可溶形態のMAGまたはMAG活性を欠失したコントロールタンパク質のいずれかの存在下で、MAGを欠失した成長許容基剤上で培養する工程を含む。次いで、ニューロン培養物を、神経突起成長を許容するに十分な時間、既知の相対濃度の試験因子とともにインキュベートし、そして可溶性MAGの存在下または非存在下で培養した細胞における神経突起成長の量が比較される(実施例5)。可溶性MAGの存在下および非存在下で培養された細胞からの神経突起の相対的な成長を変化させる因子は、MAG依存性神経突起成長変化因子として同定される。
【0075】
好ましい実施態様では、MAGを欠失した成長許容基剤は、細胞表面MAG(例えば、COS細胞またはNIH 3T3細胞)を発現しない哺乳動物細胞の単層を含む。広範な種々の哺乳動物細胞株(例えば、線維芽細胞および上皮細胞)が用いられ得、そして当業者に周知である。本発明は、結合したMAGを含有しないこのような成長許容単層を作製するために用いられ得る細胞タイプにより限定されない。
【0076】
別の好ましい実施態様では、MAGを欠失した成長許容基剤は、精製された成長促進因子の固定化された単層を含有する。ニューロン細胞が、コラーゲンまたはフィブロネクチンを含有する成長促進単層上で培養され得る。単層上に固定化され得る本発明の好ましいニューロン成長促進因子は、L1糖タンパク質である。
【0077】
本方法の好ましい実施態様では、可溶性形態のMAGはMAG−Fc融合タンパク質であり、MAG活性を欠失した可溶性コントロールタンパク質はMUC18−Fc融合タンパク質である(実施例4)。好ましい追跡可能な融合タンパク質は、市販の試薬および当該分野で周知の方法を用いて放射標識または蛍光標識される。
【0078】
図7aは、実施例4に記載の手順に従って行われたアッセイの結果を示す。このアッセイでは、ニューロンは、「L1」と称される精製された成長促進分子を含有する基剤上で成長させられた。IgGのFc領域に融合したMAGの細胞外ドメインからなる可溶形態のMAG(MAG−Fc)を、成長するニューロンに添加した(MAG−Fc;実施例4)。MAG−Fcの濃度が増大するにつれ、神経突起成長の阻害は増大したが、一方、コントロールキメラである、MUC18−Fcは、同じ濃度で効果を有さなかった(図7a)。さらに、MAG−Fcによる軸索再生の阻害は、MAGに指向するモノクローナル抗体を添加すること、またはアッセイの前に単離されたニューロンを脱シアル化することのいずれかによって逆転され得た。可溶性MAG−Fcはまた、線維芽細胞の単層上で成長した小脳ニューロンからの軸索再生を阻害し得る(図7c)。
【0079】
重要なことに、このアッセイを用いて、軸索再生を阻害することなくニューロンに結合し得そして野生型MAGの阻害効果を逆転し得るMAG活性のインヒビター:小脳ニューロンに特異的に結合した(図8a)IgG Fcドメインに融合したMAGの正常な5つのIg様細胞外ドメインよりも最初の3つのIg様細胞外ドメインからなる短縮型のMAG−Fc(「MAG(d1−3)−Fc」;実施例4)を同定した。図8aは、MAGの5つ全て(「MAG(d1−5)」)または最初の3つ(「MAG(d1−3)」)のIg様ドメインからなる可溶性Fcキメラが、抗MAGモノクローナル抗体の存在によって完全に阻害された反応において、PND2ラット由来の小脳ニューロンに結合し得たことを示す。コントロールFcキメラタンパク質(MUC18)は、抗MAG抗体の存在下または非存在下のいずれでもニューロンに結合しなかった。
【0080】
しかし、L1の単層基剤上で成長したニューロンに添加した場合、正常なMAG−Fcキメラとは異なり、MAG(d1−3)−Fcキメラは軸索再生において効果を有さなかった(図8b)。従って、MAG(d1−3)−Fcは、ニューロンへの結合に関して全長MAGと競合し得るようである。なぜなら、50μg/mlの濃度のMAG(d1−3)−Fcは、CHO細胞によって発現される全長MAGによる軸索再生の阻害を約40%まで逆転し得るからである(図8c)。
【0081】
上記の実験は、MAG分子中に1つ以上の変異(神経突起成長を阻害または促進する能力を減少または除去するが、ニューロン表面への変化または変異形態のMAGの結合を有意に減少させない)を有する変化および/または変異形態の可溶性MAGが、インビボで投与された場合MAG活性の有用なインヒビターであり得ることを実証する(実施例8)。本発明の最も好ましい変化/変異形態のMAGは、免疫グロブリンFcドメインに融合したMAGの5つの細胞外Ig様ドメインの最初の3つからなるMAG−Fcの短縮型を含有する可溶性分子(「MAG(d1−3)−Fc」)である。
【0082】
ニューロン表面への変異形態のMAGの結合を有意に減少させることなく神経突起成長を阻害または促進する能力をまた減少または除去する他のより特異的な変異(特に、点変異または小さな内部欠損)が、MAG Ig様ドメインに作製され得ることが想像される。変異的分析は、神経突起成長調節を媒介することに関与する下流の細胞シグナルを活性化するのに必要とされる局在化した「MAG神経突起成長シグナル伝達部位」の同定を導くようである。MAG(d1−3)−Fcキメラタンパク質中で欠損される第4および第5のドメイン、および/またはMAG中のIg様ドメイン3と4との間の接合部に特異的に標的化された所定の変異は、この点に関して有用であることが想像される。
【0083】
(MAG誘導体およびインヒビターを用いた薬学的組成物および処置)
本発明のMAG依存性神経突起成長調節因子は、薬学的組成物中に処方され得、そして所定の特定の臨床状態を処置するのに有効な用量でインビボにて投与され得る。本発明の1つ以上の薬学的組成物の投与は、神経系において神経の成長または再生を調節および促進するのに、神経組織またはニューロンへの創傷または損傷を処置するのに、そして神経系への外傷、障害または疾患に関与する神経の変性を処置するのに有用である。このような外傷、疾患または障害としては以下が挙げられるがそれらに限定されない:動脈瘤、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、クールー、ハンチントン舞踊病、多系統変性症、筋萎縮性側索硬化症(ルー−ゲーリッヒ病)、および進行性核上性麻痺。
【0084】
一定の適用に対する好ましい薬学処方物および治療的に有効な用量レジメの決定は、例えば、患者の状態および体重、所望の処置の程度および処置に対する患者の耐性を考慮に入れて、当該分野の技術内にある。
【0085】
本発明のMAG誘導体およびインヒビター(単離および精製形態、それらの塩またはそれらの薬学的に受容可能な誘導体を含む)の投与は、神経の創傷または障害を処置するのに用いられる因子の投与の慣習的に受容されている任意の様式を用いて達成され得る。
【0086】
本明細書に記載されるような可溶性の変化および変異形態のMAGは、これらの形態のMAGのcDNAをコードする発現プラスミドでトランスフェクトされた、トランスフェクト細胞(例えば、COS細胞(線維芽細胞))の培養培地から調製される(実施例4)。MAG−Fcのような可溶性MAG分子は、これらの細胞によって分泌される。抗体を分泌するハイブリドーマ細胞に対して実施されたように(Schnell,L.およびSchwab,M.E.,Nature,343,pp.269−72 (1990);Schnellら、Nature,367,pp.170−73 (1993))、可溶性MAG−Fcキメラを分泌するCOS細胞または他のトランスフェクト物は、損傷した脊髄中に移植され得ることが予想される。この細胞は、変化または変異したMAG−FcのMAG阻害形態を分泌し、これは内因性MAGがニューロン表面と相互作用することを防止し、それ故、内因性MAGによる軸索の成長および再生の阻害を防止する。
【0087】
約2×10個のトランスフェクトCOS細胞は、5日間にわたって約1mgのMAG−Fcを分泌する。50μg/mlの濃度の変異したMAG−Fcは、野生型MAGの阻害効果を効率的に逆転する。最後に、成体ラット脊髄の神経周膜内は、約0.5mlの容積である。それ故、2×10個の変異または変化したMAG−Fc分泌COS細胞が創傷した脊髄中に移植され、次いでMAG−Fcの濃度は約400μg/ml(すなわち、培養細胞において有効であると本明細書中で示された濃度よりも8倍以上濃縮されている)に維持されるはずである。最後に、処置されるべき被験体と比較した成体ラット脊髄の神経周膜の容積間の差異を補正する計算は、当業者によって行われ得る。他の「逆転させる」変異形態のMAGまたはMAG「ブロック」ペプチドを分泌するトランスフェクト細胞は、同様の様式でニューロンの創傷または変性の部位に投与され得る、
同様に、本発明の他のMAGインヒビターおよびレギュレーター(例えば、シアリダーゼおよびシアリルトランスフェラーゼ、遊離タンパク質または脂質付着シアル酸を有する糖、糖ペプチドまたは糖タンパク質)はまた、本発明のMAG調節因子を分泌するように遺伝子操作された細胞の脊髄移植(例えば、髄液へ)によって送達され得る。この因子の細胞分泌速度は、細胞培養において測定され、次いで推定される。
【0088】
必要に応じて、MAG調節因子を分泌するトランスフェクト細胞は、当業者に公知である利用可能な方法を用いて、免疫絶縁カプセルまたはチャンバーにカプセル化され得、そして脳または脊髄領域に移植され得る。例えば、WO 89/04655;WO 92/19195;WO 93/00127;EP 127,989;米国特許第4,298,002号;米国特許第4,670,014号;米国特許第5,487,739号およびそれらに引用される参考文献を参照のこと。それらの全てが本明細書中に参考として援用される。
【0089】
トランスフェクト細胞によって分泌され得ないMAG調節因子のために、ポンプおよびカテーテル様デバイスが創傷の部位に移植されて、適時にそして所望の濃度で因子が投与される。これは当業者によって選択され、そして経験的に改変される。このような薬学的送達システムは当業者に公知である。例えば、米国特許第4,578,057号およびそれに引用される参考文献を参照のこと。これらは本明細書中に参考として援用される。
【0090】
本発明の薬学的組成物は種々の形態であり得る。これらは投与の好ましい形態に従って選択され得る。これらは、例えば、固体、半流動体および液体投与形態(例えば、錠剤、丸剤、散剤、液体溶液または懸濁物、坐剤ならびに注射可能および注入可能な溶液)を含む。好ましい形態は、投与および治療適用の意図される様式に依存する。投与の様式は、経口投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、病巣内投与、または局所投与を含み得る。
【0091】
本発明のMAG誘導体およびインヒビターは、例えば、取り込みまたは安定性を刺激するコファクターを有するかまたは有しない無菌の等張性処方物中に配置される。この処方物は、好ましくは液体であり、あるいは凍結乾燥散剤であり得る。例えば、MAG誘導体およびインヒビターは、5.0mg/mlクエン酸一水和物、2.7mg/mlクエン酸三ナトリウム、41mg/mlマンニトール、1mg/mlグリシンおよび1mg/mlポリソルベート20を含有する処方緩衝液で希釈され得る。この溶液は、凍結乾燥され得、冷蔵下で保存され得、そして注射用の滅菌水(USP)で投与の前に再構築され得る。
【0092】
組成物はまた、好ましくは、当該分野で周知の従来の薬学的に受容可能なキャリアを含有する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16版、1980、Mac Publishing Companyを参照のこと)。このような薬学的に受容可能なキャリアは、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物のような、他の薬用因子、キャリア、遺伝的キャリア、アジュバント、賦形剤などを含み得る。これらの組成物は、好ましくは単位用量の形態であり、そして通常1日に1回以上投与される。
【0093】
本発明の薬学的組成物はまた、罹患した組織あるいは血流内、その近傍、またはそれと連絡するように配置されたミクロスフェア、リポソーム、他の微小粒子送達系または持続性放出処方物を用いて投与され得る。持続性放出キャリアの適切な例としては、坐薬またはマイクロカプセルのような形成商品の形態の半透性のポリマーマトリックスが挙げられる。移植可能なまたはマイクロカプセルの持続性放出マトリックスとしては、ポリ乳酸(米国特許第3,773,319;EP 58,481)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidmanら、Biopolymers,22,pp.547−56 (1985));ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸塩)またはエチレンビニルアセテート(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.,15,pp.167−277 (1981);Langer,Chem.Tech.,12,pp.98−105 (1982))が挙げられる。
【0094】
MAG誘導体およびインヒビターを含有するリポソームは、周知の方法により調製され得る(例えば、DE 3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,82,pp.3688−92 (1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,77,pp.4030−34 (1980);米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号を参照のこと)。通常、リポソームは、小さな(約200〜800オングストローム)単層タイプであり、ここで脂質含量は約30mol.%コレステロールよりも大きい。コレステロールの比率は、MAG誘導体およびインヒビター放出の至適速度を制御するように選択される。
【0095】
本発明のMAG誘導体およびインヒビターはまたリポソームに付着され得る。これは、必要に応じて、所望の処置部位への組成物の標的化または投与を援助する他の因子を含有し得る。MAG誘導体およびインヒビターのリポソームへの付着は、任意の公知の架橋因子(例えば、標的化送達のために毒素または化学療法因子を抗体に結合させるのに広範に用いられているヘテロ二官能性架橋因子)によって達成され得る。リポソームへの結合はまた、炭水化物指向架橋試薬4−(4−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)を用いて達成され得る(Duzgunesら、J.Cell.Biochem.Abst.Suppl.16E 77 (1992))。
【0096】
(MAG誘導体およびインヒビターの有用性)
MAGが軸索再生の強力なインヒビターであるという発見は、神経系創傷−−末梢および中枢神経系−−の状況および特にCNS創傷に対して潜在的な臨床使用を有する。哺乳動物の中枢神経系の両方は、神経を成長するように促進および促進する多くの分子が存在するにも関わらず、創傷の後には再生しない。この結果は麻痺または脳損傷である。神経が再生することを活性に妨げる分子が成体CNSに存在することが示されている。これらの阻害分子がまず同定され、続いてブロックされ得れば、次いで再生を許容する環境が操作され得ることが予測される。
第1の工程は、阻害分子がどのようなものであるかを同定することである。MAGは、ミエリン中で同定されるべき第1のこのような分子である。MAGの阻害効果をモニターするための本明細書中で確立されたアッセイ系を用いて、ストラテジーが、ここで、その阻害機能がブロックされるように標的としてMAGで設計され得る。次いで、このような因子は損傷した神経に投与され得、インビボでMAGの阻害効果を逆転し、そして神経再生を進行させる。
本発明のアッセイは、MAGによる神経再生の阻害を逆転させるような因子を同定するのに有用である。本明細書中に記載のアッセイ系を用いて、MAGの阻害効果が示されて、シアリダーゼまたは小さなシアル酸を有する糖のような因子による、および可溶性の、変異形態のMAGによる機能からブロック/防止される。これらの因子、またはこれらの因子の改変形態(MAGまたはそのレセプターに対するそれらの親和性を増大させ得るか、または減少させ得るかのいずれか)は、損傷した神経に投与されて、インビボでのMAGの阻害効果を逆転し、そして再生を進行させ得る。
【0097】
さらに、ネガティブなガイダンス合図としてのMAGの特性が、再生する軸索をそれらの正しい標的にガイドし、そしてそれらを正しい経路上に維持するのに用いられ得る。この目的のために、MAG、またはMAGの異なるドメインは、再生する神経組織の正確な領域に投与され得て正確な経路に沿った成長を含む。
【0098】
本明細書中に示されるように、MAGはニューロン上のシアル酸を有する糖タンパク質に結合し、広範な種々のニューロン細胞タイプにおいて神経の成長および再生の阻害をもたらす。また本明細書中に示されるように、ニューロンのシアル酸残基がシアリダーゼと称される酵素で除去される場合、MAGのこれらの阻害効果は逆転される。同様に、小さなシアル酸を有する糖およびその誘導体はMAGに結合し、それがニューロン上のシアル酸糖タンパク質と相互作用することを防止し、そして軸索再生の阻害を防止し得る。インビボで、創傷後、MAGインヒビター(例えば、シアリダーゼ、遊離した小さなシアル酸を有する糖または他の糖に付着したシアル酸の改変体、タンパク質キャリア分子または脂質に共有結合した小さなシアル酸を有する糖、あるいは小さなシアル酸糖タンパク質または糖ペプチド、個々のまたは種々の組み合わせのいずれか)は、MAGおよび/またはシアル酸を有するレセプターを介して作用する他の阻害分子の阻害効果をブロックし、そして軸索再生が起きるように促進することが予期される。同様に、MAGの小さなペプチドまたはペプチドフラグメント、変異および変化形態のMAG、ならびにMAGに対する抗体は、ニューロンとの内因性MAGの相互作用をブロックし、そして神経再生を可能にし得る。
【0099】
本明細書中に示すように、変異した、可溶性形態のMAGはニューロンに結合し得るが、それ自身は軸索成長を阻害しない。重要なことに、この変異形態のMAGは野生型MAGの阻害効果を逆転し得る。最後に、MAG、MAG誘導体、およびMAGインヒビターが、再生する神経系の正確な領域でガイダンス合図として用いられ得、正しい経路上で軸索を成長させ、そして正しい標的に向かって移動させ続けることが想像される。
【0100】
本明細書中に引用される全ての参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【0101】
以下は、MAG依存性神経突起成長変化因子を同定するために用いられる本発明の方法、そのような因子を含む本発明の組成物、およびそれらの組成物の投与を含む方法を説明する実施例である。これらの実施例は、限定するものとして解釈されるべきではない:これらの実施例は例示の目的のみのために含まれ、そして本発明は請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0102】
(実施例1)
異なるニューロン細胞タイプの同定
ニューロンを、本質的には、Dohertyら、Nature,343,pp.464−66 (1990);Neuron,5,pp.209−19 (1990);およびKleitmanら、Culturing Nerve Cells,pp.337−78,MIT Press,Cambridge,MA/London,England (G.BankerおよびK.Goslin,編)(1991)に記載のように単離した。簡単には、9日齢までの動物に関して、小脳、網膜、海馬、および脊髄を2体の動物から取り出した。同様の組織を、組み合わせて、5mlの0.025%トリプシンを含有するPBS中に置き、摩砕し、そしてさらに37℃にてさらに10分間インキュベートした。トリプシン処理を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有する5ml DMEMの添加によって停止し、そして細胞を800rpmで6分間遠心分離した。この細胞を、2% FCSを含有する2mlのSATOで単一細胞懸濁物に再懸濁した。DRGおよびSCGニューロンについては、神経節を2体の動物から取り出し、0.025%トリプシンおよび0.3% I型コラゲナーゼ(Worthington)を含有する5mlのL15培地中で37℃にて30分間インキュベートした。この神経節を、先端熱加工したパスツールピペットで摩砕した。トリプシン処理を、10%FCSを含有する5ml DMEMの添加によって停止し、800rpmで6分間遠心分離し、そして2% FCSを含有する2mlのSATO中に再懸濁した。細胞をCoulterカウンターで計数した。
【0103】
(実施例2)
(トランスフェクトCHO細胞における神経突起成長アッセイ)
(トランスフェクトCHO細胞によるMAGの発現)
ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(UrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,pp.4216−20 (1980))を、dhfr遺伝子および5’−3’方向またはコントロールとして3’−5’方向のいずれかでL−MAG cDNAを有するMAG−cDNA発現プラスミドでトランスフェクトし、複数コピーのdhfrを有する細胞を、漸増濃度のメトトレキセート中で増殖させることにより選択し、そして個々のトランスフェクトCHO細胞株によるMAGの発現を、Mukhopadhyayら、Neuron,13,pp.757−67 (1994)(これは本明細書中に参考として援用される)に記載されるように特徴付けた。トランスフェクト細胞を、10%の透析したFCS、プロリン(40mg/リットル)、チミジン(0.73mg/リットル)、およびグリシン(7.5mg/リットル)を補充したDMEM中で37℃にて5% CO下で維持した。
【0104】
その出版物中にMAG2として記載されるMAG発現トランスフェクトCHO細胞株(「CHO−MAG2」)を、ブダペスト条約の規定に従って1996年6月27日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Rockville,MD)に寄託した。これは、[CRL−12145]と命名されたATCC受託番号を割り当てられた。上記ATCC寄託の公衆への利用における全ての制限は、本出願における特許の付与において取り消し不能に除去される。
【0105】
(神経突起成長アッセイ)
コントロールCHO細胞およびMAG発現CHO細胞のコンフルエントな単層を、8ウェル組織培養スライド(Lab−Tek)の個々のチャンバーで24時間(h)にわたって確立した。約5000個の小脳の、後根神経節(DRG)および上頸神経節(SCG)ニューロンならびに10,000個の網膜、海馬および脊髄細胞をCHO単層に添加することにより、共培養を以前に記載されたように確立した(Dohertyら、Nature,343,pp.464−66 (1990);Neuron,5,pp.209−19 (1990);Mukhopadhyayら、Neuron,13,pp.757−67 (1994))。培養培地は2%FCSを含有するSATOであった。指示された場合には、20mUのVCSを培養の期間を通して含ませるか(実施例4を参照のこと)、またはニューロン細胞懸濁物を添加する前の1時間の間、単層を小さなオリゴサッカライドとともにインキュベートし、そして共培養の期間を通して含ませた。指示された時間の期間の後、共培養物を、4%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、そして氷冷メタノールで2分間透化処理した。次いで、この細胞を、10% FCSを含有するDMEMで30分間ブロックし、ニューロンマーカーGAP43(1:4000)に対するウサギポリクローナル抗体とともに2時間インキュベートした。細胞を、PBS−BSA(2%)で3回洗浄し、次いでビオチン標識ロバ抗ウサギIg(1:300,Amersham)とともに室温で30分間インキュベートし、3回洗浄し、そしてストレプトアビジン結合テキサスレッド(1:300,Amersham)とともに30分間インキュベートした。3回以上の洗浄の後、これらのスライドをPermfluor(Baxter)にマウントし、Zeiss蛍光顕微鏡で観察した。各々のGAP43ポジティブニューロンに関する最も長い神経突起の長さを、Biological Detection System画像分析プログラム(Pittsburgh)を用いて決定した。
【0106】
あるいは、抗神経フィラメントモノクローナル抗体のような他のニューロン特異的抗体(これらは市販されている(例えば、Boehringer Mannheim,Sigma Immunochemicals))が、製造業者によって推奨される希釈度で開始して用いられ得る。次いで、適切な種特異的ビオチン標識抗Ig二次抗体が、一次抗神経抗体が産生された種に従って選択される。さらに、神経突起を染色する種々の生体染料(例えば、Molecular Probes,Oregon)が、蛍光神経特異的抗体のかわりにこのアッセイで用いられ得る。
【0107】
(実施例3)
(推定上のMAG依存性神経突起成長変化因子を試験するためのCHO細胞を用いた神経突起成長アッセイ)
実施例2に記載のトランスフェクトCHO細胞アッセイはまた、MAG依存性様式で特定のニューロン細胞タイプおよび年齢の神経突起成長特性を変化する因子をスクリーニングおよび同定するのに用いられ得る。神経突起成長を、実施例2に記載のようなMAG発現CHO細胞およびコントロールCHO細胞上で成長させたPND 2動物由来の小脳ニューロン(表1)およびDRGニューロン(表2)について比較した。指示される場合、小さなシアル酸を有する糖を漸増濃度で共培養物に含ませた。100%阻害を、コントロールCHO細胞およびMAG発現CHO細胞上の神経突起の長さの差異として取った。結果は、少なくとも2つの実験の平均値であり、各々の実験に対して少なくとも150個のニューロンを測定した。DD−NANA=2,3−ジデオキシシアル酸;SL=シアロ2,3−αラクトース。
【0108】
このアッセイは、共培養物中に他の推定上のMAG依存性神経突起成長調節因子を含ませることにより、そして小さなシアル酸を有する糖に関して上述のような細胞表面MAGの存在下および非存在下におけるそれらの効果を測定することにより、他の推定上のMAG依存性神経突起成長調節因子を試験するために用いられ得る。
【0109】
(実施例4)
(ニューロンへの可溶性MAG−Fcキメラの結合)
(免疫グロブリンFcキメラタンパク質の産生)
種々の形態のMAG−Fc(例えば、本明細書中でMAG[d1−5]−Fc、MAG[d1−3]−FcおよびコントロールFcキメラタンパク質MUC 18−Fcと称されるようなMAG−Fc)をコードする発現プラスミドを、Kelmら、Current Biol.,4,pp.965−72 (1994)およびそこに記載される参考文献に記載されるように調製した。考察および可溶性組換え接着分子を作製するための一般的なプロトコルについては、D.L.Simmons,「Cloning Cell surface molecules by transient expression in mammalian cells,」、Cellular Interactions in Development − A Practical Approach,pp.118−125,IRL Press,Oxford (編 D.A.Hartley)(1993);Development (補充),pp.193−203 (1993);およびP.R.CrockerおよびS.Kelm,「Methods for studying the cellular binding properties of lectin−like receptors」、Handbook of Expermental Immunology,pp.1−30 (1995)を参照のこと。これらは本明細書中に参考として援用される。
【0110】
Kelmら(前出)に記載されるMAG[d1−5]−Fc、MAG[d1−3]−FcおよびMUC18−Fcキメラタンパク質を発現するプラスミドでトランスフェクトしたE.coli細胞サンプルを、ブダペスト条約の規定に従って1996年6月27日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Rockville,MD)に寄託した。これは、以下に示されるように称されるATCC受託番号を割り当てられた:
細胞株 ATCC受託番号
a)MAG[1−3]−Fc 98089
b)MAG[1−5]−Fc 98090
a)MUC18−Fc 98088
上記ATCC寄託の公衆への利用における全ての制限は、本出願における特許の付与において取り消し不能に除去される。
【0111】
(ニューロンへのFcキメラの結合)
MAG−Fc、MAG[d1−3]−FcおよびMUC 18−Fcをコードするプラスミドを、COS細胞中にトランスフェクトし、Fc−キメラタンパク質をKelmら、Current Biol.,4,pp.965−72 (1994)およびP.R.CrockerおよびS.Kelm,「Methods for studying the cellular binding properties of lectin−like receptors」、Handbook of Experimental Immunology,pp.1−30 (1995)に記載されるような培地から精製した。ニューロン結合アッセイを、本質的に、Debellardら、Mol.Cell.Neuroscience,7,pp.89−101 (1996)(これは本明細書中に参考として援用される)に記載のように行った。Fcキメラタンパク質を、0.1M炭酸水素塩緩衝液、pH 9.6中で15μg/mlの抗ヒトIgGで37℃にて2時間コートしたマイクロタイタープレートのウェルに37℃にて3時間吸収させた。結合アッセイの前に、ニューロンを、5mlのPBS中の10μMのcalcein AM中で2×10個のニューロンを、37℃で15分間インキュベートすることにより、蛍光染料calcein AM(Molecular Probes)で生きた組織を標識し、その後PBSで洗浄および再懸濁した。指示される場合、MAGに指向するモノクローナル抗体(Boehringer Mannheim)を、10μg/mlの濃度でアッセイに含ませ、そして指示される場合、ニューロンを使用する前に脱シアル化した。1〜2×10個の細胞を含有する100μlの生きた組織を標識したニューロンの懸濁物を、各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートさせた。これらのプレートを、重力下で各ウェルに適用したPBSで3回洗浄し、そして蛍光をFluorImager(Molecular Dynamics)で測定した。
【0112】
(実施例5)
(MAG−Fcキメラの存在下および非存在下での成長許容基剤における
神経突起成長アッセイ)
(L1−Fcキメラを含有する成長許容基剤)
L1糖タンパク質は、広範な種々の哺乳動物のニューロン細胞タイプの表面に発現される細胞接着分子(CAM)であり、これは神経突起成長を刺激する。可溶性L1−Fcキメラは、当業者に公知の手順(実施例3に引用されるような手順;Dohertyら、Neuron,pp.57−66 (1995)、これは参考として本明細書中で援用される)を用いて構築され得る。可溶性L1−Fcキメラは、ニューロンに向けられた場合、正常細胞表面会合L1と同様に神経突起成長を促進することにおいて効果的である(Dohertyら、前出、およびそこに記載される参考文献、これらは本明細書中に参考として援用される)。Dohertyらに記載されるように、L1−Fcキメラは、線維芽細胞3T3細胞、あるいはポリリジン/コラーゲンまたはポリリジン/フィブロネクチンコート基剤の表面と安定に会合し得る。
【0113】
8つのチャンバー組織培養プラスチックスライド(Lab−Tak,Nuc.Inc.)の個々のウェルを、無菌条件下で少なくとも1時間0.3mlの滅菌水中の16.6μg/mlのポリ−1−リジンとともにインキュベートした。個々のウェルを、400μlの0.1M重炭酸水素ナトリウム溶液、pH 9.6で2回洗浄し、次いで15μg/mlのヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)モノクローナル抗体(Sigma)を含有する0.3mlの0.1M重炭酸水素ナトリウム溶液,pH 9.6を加えた。これらのウェルを37℃にて2時間インキュベートし、そして0.4mlの氷冷DMEMで3回洗浄した。次いで、各ウェルに40μg/mlのL1−Fcを含有する0.3mlのDMEMを加え、37℃で2〜4時間インキュベートした。これらのウェルをDMEMで2回洗浄した。
【0114】
(L1−Fc基剤上での神経突起成長:)
(可溶性MAG−Fc結合アッセイ)
解離したニューロンを2%の透析したFBSを含有する5mlのSATO培地に再懸濁した以外は実施例1に記載するようなトリプシン処理により、小脳ニューロン(出生後2〜7日)を解離させた。上記のようなL1−Fcの単層でコートした個々のウェルに、5.0×10個の小脳ニューロンを添加し、続いて実験に応じて、単一の濃度(約50μg/ml)または漸増濃度(例えば、0〜30μg/ml)のMAG−FcまたはMUC18−Fcキメラ可溶性タンパク質を加えた。ニューロンを37℃で一晩(約16時間)培養し、次いで本質的に実施例2に記載のように固定化し、そして染色した。
【0115】
(実施例6)
(MAG依存性神経突起成長変化因子を同定するための
可溶性MAGを用いた神経突起成長アッセイ)
実施例5に記載の可溶性MAG−Fcを用いた神経突起成長結合アッセイはまた、MAG依存性様式で特定のニューロン細胞タイプおよび年齢の神経突起成長特性を変化させる新規の因子をスクリーニングおよび同定するための競合ニューロン結合/成長実験を行うために用いられ得る。1つ以上の濃度の試験因子を、実施例5の共培養物中に含ませ、そして可溶性MAGの存在下および非存在下でその試験因子の効果を評価した。
【0116】
(実施例7)
(脱シアル化したニューロンを用いた神経突起成長アッセイ)
種々の出生後齢の異なるニューロンの単一細胞懸濁物を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、再懸濁した。約2×10個の細胞を、0.5mlの最終容量中で50mUのVibrio choleraシアリダーゼ(VCS,Calbiochem)(ノイラミニダーゼ)とともに37℃で2時間インキュベートした。ニューロンをPBSで洗浄し、そして神経突起成長実験のために2% FCSを含有するSATO培地中に再懸濁するか、または神経突起結合アッセイのためにPBS中に再懸濁した。
【0117】
この手順は、炭水化物構造を消化するかそうでなければ改変するシアリダーゼ以外の酵素を用いることによって改変される(例えば、Kelmら、Carbohydr.Res.,149,pp.59−64 (1986)を参照のこと。これは本明細書中に参考として援用される)。例えば、シアリルトランスフェラーゼを用いてMAGが結合するNeu5Acα2→3Galβ1→3GalNAc(3−O)構造を有するシアル酸残基を含有するニューロン表面上のシアル化グリカンを変化または除去し得る。
【0118】
(実施例8)
(MAG依存性神経突起変化因子のインビボ送達)
MAG(d1−3)−Fcをコードする発現プラスミドでトランスフェクトしたCOS細胞を培養し、そして培養物をMAG(d1−3)−Fc分泌の速度についてアッセイした。約2×10個細胞−−約1mgのMAG(d1−3)−Fcを5日間にわたって分泌する−−が、修復を必要とする神経損傷の近傍で損傷した被験体の脊髄を取り囲む脳脊髄液中に移植した。必要に応じて、反復投与が行われる。この細胞はMAG(d1−3)−Fcを分泌する。これは移植部位のミエリンにおける内因性MAG活性を阻害し得、そして神経再生が刺激される。
【0119】
【化1】

【0120】
【化2】

【0121】
【化3】

【0122】
【化4】

【0123】
【化5】

【0124】
【化6】

【0125】
【化7】

【0126】
【化8】

【0127】
【化9】

【0128】
【化10】

【0129】
【化11】

【0130】
【化12】

【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】MAGによる小脳ニューロン由来の神経突起の成長の阻害。出生後(PND)1、4および7日目由来の小脳ニューロンを、MAG発現細胞(白棒)またはコントロールトランスフェクトCHO細胞(斜線の棒)の単層上で一晩成長させた。ニューロンを、GAP−43抗原について染色し、そして神経突起の長さを測定し、そして平均の長さを、少なくとも150個(+/− SEM)の測定値から計算した。
【図2】異なる齢のDRGニューロン由来の神経突起の成長におけるMAGの効果。DRGニューロンを、PND 1からPND 20までの動物から単離し、そしてMAG発現CHO細胞またはコントロールCHO細胞上で成長させ、そして神経突起の長さを、図1に記載のように計算した。
【図3】異なるニューロン細胞タイプ由来の神経突起の成長におけるMAGの効果。PND1動物から種々のニューロンを単離し、そしてMAG発現CHO細胞(斜線)またはコントロールCHO細胞(明るい斜線平行線)上で一晩成長させた。平均の神経突起の長さを、図1に記載のように計算した。RG=網膜神経節;HN=海馬;MN=運動性;およびSCG=上頸神経節ニューロン。
【図4】小脳ニューロンおよびDRGニューロンへのMAGのシアル酸依存性結合。放射標識MAG−Fc(黒棒)を、PND1の小脳ニューロンおよびDRGニューロンに結合させた。インキュベーションをまた、5μg/mlのMAG 513モノクローナル抗体の存在下(暗い斜線の棒)または脱シアル化(desialylated)したニューロン(斑点の棒)とともに行った。各々の実験を4連で行った。結果は3回の実験の平均値である。
【図5】ニューロンの脱シアル化は、MAGによる神経突起の成長の阻害をブロックする。アッセイの前にニューロンの脱シアル化ありおよび脱シアル化なしで、MAG発現CHO細胞ならびにコントロールCHO細胞についてのPND 2動物由来の小脳ニューロンについて、神経突起成長を図1に記載のように比較した。C=コントロールCHO細胞上で成長したニューロン;MAG=MAG発現CHO細胞上で成長したニューロン;+=ニューロンをアッセイの前に脱シアル化した;++=ニューロンをアッセイの前に脱シアル化し、デシアリダーゼを、培養物中に含ませた。結果は、少なくとも150個のニューロン+/− SEMからの平均の神経突起の長さ(μm)を示す。
【図6】ニューロンの脱シアル化は、MAGによる神経突起成長の促進をブロックする。アッセイの前にニューロンの脱シアル化あり(MAGシアリダーゼ)および脱シアル化なしで、MAG発現(MAG)CHO細胞ならびにコントロールCHO細胞(コントロール)上のPND 1動物由来のDRGニューロンについて、神経突起成長を図1に記載のように比較した。結果は、少なくとも150個のニューロン+/− SEMからの平均神経突起の長さ(μm)を示す。
【図7】図7a。可溶性MAG−Fcは、濃度依存様式で、L1上で成長した小脳ニューロンの軸索再生を阻害する。L1−Fcを固定化し、そして単離されたPND2小脳ニューロンを示したような種々の濃度のMAG−Fc(菱形)またはMUC−Fc(四角)の存在下で一晩成長させた。ニューロンを固定化し、染色し、そして神経突起の長さを図1に記載のように測定した。結果は、平均の神経突起の長さ(μm)+/− SEMを示す。図7b。MAG−Fcは特異的なシアル酸依存性様式で軸索成長を阻害する。小脳ニューロンを、基材としての固定化されたL1上で成長させた。MAG−Fc(カラム1)またはMUC−Fc(カラム2)を50μg/mlの濃度で添加した。抗MAG 513モノクローナル抗体を、5μg/ml(カラム3)の濃度で含ませるかまたは脱シアル化ニューロンを用いた(カラム4)。神経突起の長さ(μm)を図1に記載のように測定した。結果は、平均神経突起の長さ(μm)+/− SEMを示す。図7c。 MAG−Fcは、線維芽細胞上で成長したニューロンからの軸索成長を阻害する。単離されたPND 2小脳ニューロンを、50μg/mlのMAG−Fc(カラム1、MAG)、50μg/mlのMUC18−Fc(カラム2、MUC 18)の存在下で、または5μg/mlの抗MAG 513モノクローナル抗体(カラム3、抗MAG)の存在下で線維芽細胞(3T3細胞)の基材上で成長させた。神経突起の長さ(μm)を図1に記載のように測定した。結果は、平均の神経突起の長さ(μm)+/− SEMを示す。
【図8】図8a。MAG(d1−3)−Fcは、特異的なシアル酸依存性様式でニューロンに結合する。フルオレセインで生きた組織を標識した小脳(PND2)ニューロンを、抗MAGモノクローナル抗体の存在下(+抗MAG)または非存在下(−Ab)で、固定化されたMAG(d1−5)−Fc(黒棒)、MAG(d1−3)−Fc(斜線の棒)またはMUC18−Fc(斑点の棒)に結合させた。結果は、結合したFc−キメラの量(ng)を示す。図8b。 MAG(d1−3)−Fcは、軸索再生を阻害しない。小脳ニューロンを、50μg/ml MAG(d1−5)−Fc、Muc18−Fc、またはMAG(d1−3)−Fcの存在下で、固定化したL1−Fc上にて成長させた。神経突起の長さ(μm)を図1に記載のように測定した。結果は、平均の神経突起の長さ(μm)+/− SEMを示す。図8c。 MAG(d1−3)−Fcは、CHO細胞によって発現される野生型MAGによる軸索再生の阻害を逆転する。小脳ニューロン(PND2)を、MAG(d1−3)−Fcの存在下(+MAG1−3)または非存在下で、MAG発現CHO細胞(MAG細胞)またはコントロール(c)CHO細胞上で成長させた。神経突起の長さ(μm)を図1に記載のように測定した。結果は平均の神経突起の長さ(μm)+/− SEMを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるような、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−73845(P2009−73845A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272034(P2008−272034)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【分割の表示】特願平9−504589の分割
【原出願日】平成8年6月27日(1996.6.27)
【出願人】(508286614)リサーチ ファウンデーション オブ シーユーエヌワイ, ハンター カレッジ (1)
【Fターム(参考)】