説明

ミキサ回路

【課題】Low−IF方式の受信器の低消費電力化を可能にするミキサ回路を提供する。
【解決手段】信号LO1と、信号LO1と逆相の信号LOB1とを入力信号Vinとミキシングする初段ブロックBAや2段目ブロックBBを複数直列に接続し、初段ブロックBAによってミキシングされた信号が後段の2段目ブロックBBに送られて信号LO2、逆相の信号LOB2とミキシングされることによって入力信号Vinを複数回にわたってダウンコンバートする多重位相ミキサ部Bと、ダウンコンバートされた信号をローカル信号LLI、LLIB及びローカル信号LLQ、LLQBとそれぞれミキシングして出力信号を生成するI/Q生成部Cと、を含むミキサ回路本体1を含むミキサ回路1を備えるミキサ回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、RF信号をLow−IF信号にダウンコンバージョンする受信器に好適なミキサ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサ回路は、周波数が異なる複数の信号を混合して1つの伝送路に出力する回路であって、様々な用途に使用されている。
図10は、従来のミキサ回路を説明するための図である。図示したミキサ回路は、ギルバートセルと呼ばれる構成を有している。ギルバートセルは、入力信号Vinを入力するMOSトランジスタM1、M2でなるMOSトランジスタ対と、MOSトランジスタM1、M2のドレイン側に接続され、ローカル信号Vloを入力するMOSトランジスタM3、M4でなるMOSトランジスタ対及びMOSトランジスタM5、M6でなるMOSトランジスタ対と、各MOSトランジスタ対に電流を供給する定電流源S1と、2つの負荷抵抗素子R0と、を備えている。そして、入力信号Vinとローカル信号Vloをミキシングし、出力信号Voutを出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アナログCMOS集積回路の設計、Behzad Razavi著/黒田忠広 監訳、基礎編、p156ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載されたミキサ回路に入力信号Vinを入力した場合、ミキサ回路から出力される出力信号Voutの周波数Foutは、以下のように表される。
Fout=Fin±Flo
上記した式においてFinは入力信号Vinの周波数、Floはローカル信号Vloの周波数である。
【0005】
ところで、ミキサ回路には、出力信号(IF信号)の周波数Foutを低く抑えるLow−IF方式がある。Low−IF方式では、入力信号Vinの周波数Finとローカル信号Vloの周波数が等しくなる。つまり、ローカル信号Vloの周波数Floを、入力信号(RF信号)の高周波数とほぼ同じ周波数にする必要がある。
周波数Floが高まると、ローカル信号Vloを生成するPLL回路やVCOは、高い周波数で動作することが必要になる。高周波数での動作は、PLL回路やVCOを含む受信器全体としての消費電力を高める。このことから、Low−IF方式の受信器には、消費電力をより低減することが要求されている。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであって、Low−IF方式の受信器の低消費電力化を可能にするミキサ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明のミキサ回路は、第1信号(例えば図1に示した信号LO1)と、当該第1信号と逆相の第1逆相信号(例えば図1に示した信号LOB1)とを入力された信号とミキシングするミキサ部(例えば図2に示した初段ブロックBA、2段目ブロックBB等)を複数直列に接続し、該複数のミキサ部のうち、前段のミキサ部によってミキシングされた信号が後段のミキサ部に送られて前記第1信号及び前記第1逆相信号とミキシングされることによって初段の前記ミキサ回路に入力された入力信号を複数回にわたってダウンコンバートする多重位相ミキサ部(例えば図2に示した多重位相ミキサ部B)と、前記多重位相ミキサ部においてダウンコンバートされた信号を、I信号(例えば図1に示したローカル信号LLI、LLIB)及びQ信号(例えば図1に示したローカル信号LLQ、LLQB)とそれぞれミキシングして出力信号を生成するI/Q信号生成部(例えば図2に示したI/Q生成部C)と、を含むミキサ回路本体(例えば図1に示したミキサ回路本体1)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のミキサ回路は、上記した発明において、前記第1信号及び前記逆相信号を生成するリングオシレータ(例えば図1に示したリングオシレータ2)をさらに含むことが望ましい。
また、本発明のミキサ回路は、上記した発明において、前記第1信号を分周して前記I信号及び前記Q信号を生成する分周器(例えば図1に示した分周器3)をさらに含むことが望ましい。
【0008】
また、本発明のミキサ回路は、上記した発明において、複数の前記第1信号を生成し、前記第1信号の各々を前記複数のミキサ部の各々に入力し、複数の前記第1信号のうち、一の前記第1信号を分周することなく前記I信号とし、他の前記第1信号を分周することなく前記Q信号として使用する場合、前記入力信号の周波数をX(Xは任意の周波数)前記多重位相ミキサ部によって前記入力信号がダウンコンバートされる回数をN(Nは2以上の整数)前記I信号及び前記Q信号の周波数をFloとしたとき、前記ミキサ回路本体によりダウンコンバートされた信号の周波数Fsubは式(1)で表され、前記分周器の分周比をM(Mは2以上の整数)としたとき、前記I信号及びQ信号の周波数FIFは、式(2)で表されることが望ましい。
Fsub=X−N×Flo …式(1)
FIF=Fsub±Flo/M
=X−N×Flo±Flo/M
=X−(N±1/M)×Flo …式(2)
【0009】
また、本発明のミキサ回路は、上記した発明において、複数の前記第1信号のうち、前段の前記ミキサ部に入力される前記第1信号の位相は、前記前段の直後の段のミキサ部に入力される前記第1信号の位相よりも180/N度遅れることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明によれば、複数のミキサ部が複数段階に入力信号をダウンコンバートするので、第1信号に高い周波数の信号を用いる必要がないため、第1信号を生成する機器が高い周波数で動作する必要がなくなって、消費電力を小さくすることができる。また、従前のPLL回路やVCOより回路面積や消費電力の少ないリングオシレータを使って第1信号を生成することができるので、消費電力が小さく、より小型化に有利なミキサ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1のミキサ回路を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態1のミキサ回路本体の回路構成を説明するための回路図である。
【図3】本発明の実施形態1のリングオシレータの構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態1の信号LO1と信号LO2との関係を示すための図である。
【図5】本発明の実施形態2のミキサ回路を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態2のミキサ回路本体の回路構成を説明するための回路図である。
【図7】本発明の実施形態2の信号LO1、信号LO2、信号LO3の関係を示すための図である。
【図8】本発明の実施形態2のリングオシレータを説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態3のミキサ回路を説明するための図である。
【図10】従来のミキサ回路を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態1、実施形態2、実施形態3について図面を参照して説明する。
[実施形態1]
・全体構成
図1は、実施形態1のミキサ回路を説明するための図である。図示したミキサ回路は、ミキサ回路本体1と、リングオシレータ2と、分周器3とによって構成されている。このようなミキサ回路は、例えば、受信器に利用されている。
【0013】
リングオシレータ2は、周波数660MHzの信号LO1、LO2、LOB1、LOB2を生成する。分周器3は、例えば信号LO1を入力して4分周し、周波数165MHzのローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBを生成する。ローカル信号LLIとLLQ、ローカル信号LLIBとLLQBとは、各々が互いに直交するベースバンド信号(後にI(in-phase)ローカル信号とQ(quadrature)ローカル信号と記す)になる。
【0014】
リングオシレータ2によって生成された信号LO1、LO2、LOB1、LOB2、分周器3によって生成されたローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBは、ミキサ回路本体1に入力される。
ミキサ回路本体1には、信号LO1、LO2、LOB1、LOB2、ローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBの他、周波数1500MHzのRF信号Vinが入力される。ミキサ回路本体1は、入力された信号から、周波数15MHzのI/Q信号(Low−IF信号)のVIO、VQOを生成する。
【0015】
このように、実施形態1は、ミキサ部1を設けることによって周波数165MHzのローカル信号の周波数を15MHzにまで低減することができる。このため、分周器3においてローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBを生成する図示しないPLLやVCOを高い周波数で動作させる必要がなくなり、受信器全体としての消費電流を低減することができる。
【0016】
(構成)
・ミキサ回路本体
図2は、実施形態1のミキサ回路本体1の回路構成を説明するための回路図である。なお、図示したミキサ回路本体1は、図1に示した入力信号Vin(RF信号)の周波数Finが1500MHzの受信回路のミキサ回路の本体として機能する。また、メインクロックの周波数は22.5MHzを想定している。
【0017】
ミキサ回路本体1は、V/I変換部Aと、多重位相ミキサ部Bと、I/Q生成部Cと、I/V変換部Dと、から構成されている。V/I変換部Aは、V/I変換回路51、2つの容量素子61、62、2つの抵抗素子71、72を含んでいる。
多重位相ミキサ部Bは、信号LO1と、信号LO1と逆相の信号LOB1とを入力された信号Vinとミキシングする初段ブロックBA、信号LO2と逆相の信号LOB2とを入力された信号とミキシングする2段目ブロックBBを複数直列に接続し、複数のブロックのうち、初段ブロックBAによってミキシングされた信号が後段の2段目ブロックBBに送られて信号LO2、信号LOB2とミキシングされることによって入力信号Vinを複数回にわたってダウンコンバートする。
【0018】
初段ブロックBAは、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ21、22と、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ23、24の2対のMOSトランジスタ対と、MOSトランジスタ22、23のゲート端子と接続されているバッファ41、MOSトランジスタ21、24のゲート端子と接続されている42とを含んでいる。
2段目ブロックBBは、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ25、26と、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ27、28の2対のMOSトランジスタ対と、MOSトランジスタ26、27のゲート端子に接続されたバッファ43、MOSトランジスタ25、28のゲート端子と接続されたバッファ44とを含んでいる。
【0019】
初段ブロックBAには図1に示したリングオシレータ2から信号LO1、LOB1が入力される。信号LO1は、MOSトランジスタ22、23のゲート端子に入力され、信号LOB1は、MOSトランジスタ21、24のゲート端子に入力される。また、2段目ブロックBBにはリングオシレータ2から信号LO2、LOB2が入力される。信号LO2は、MOSトランジスタ26、27のゲート端子に入力され、信号LOB2は、MOSトランジスタ25、28のゲート端子に入力される。
【0020】
本実施形態では、初段ブロックBA、2段目ブロックBBの各々が、信号LO1、LOB1また信号LO2、LOB2と入力信号Vinとをミキシングする多重位相ミキサ部を構成する。
I/Q生成部Cは、多重位相ミキサ部Bにおいてダウンコンバートされた信号を、ローカル信号LLI、LLIB及びローカル信号LLQ、LLQBとそれぞれミキシングして出力信号を生成する。
【0021】
すなわち、I/Q生成部Cは、第1I/Q生成部CA、第2I/Q生成部CBから構成されている。第1I/Q生成部CAは、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ29、30と、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ31、32の2対のMOSトランジスタ対と、MOSトランジスタ30、31のゲート端子と接続されているバッファ47、MOSトランジスタ29、32のゲート端子と接続されているバッファ48を含んでいる。
【0022】
第2I/Q生成部CBは、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ33、34と、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ35、36の2対のMOSトランジスタ対と、MOSトランジスタ34、35のゲート端子と接続されているバッファ49、MOSトランジスタ33、36のゲート端子と接続されているバッファ50を含んでいる。
I/V変換部Dは、第1I/Q生成部CAと接続される第1I/V変換部DAと、第2I/Q生成部CBと接続される第2I/V変換部DBとから構成されている。第1I/V変換部DAは、容量素子63及びI/V変換回路52を含んでいる。また、第2I/V変換部DBは、容量素子64及びI/V変換回路53を含んでいる。
【0023】
・リングオシレータ
図3は、リングオシレータ2の構成を説明するための図である。リングオシレータ2は、2段に接続された増幅器301a、301bと、増幅器302a、302bとを直列に2組接続して構成されている。図4は、信号LO1と信号LO2との関係を示すための図である。図3に示した構成により、実施形態1のリングオシレータ2は、180度をミキサ回路本体1によってダウンコンバートされる回数Nで割って得られる位相分ずつずれた複数の信号を生成する。
【0024】
すなわち、ミキサ回路本体1によって入力信号Vinを2回ダウンコンバートする実施形態1では、信号LO1と、信号LO1よりも90度進んだ位相を有する信号LO2とを生成してミキサ回路に入力する。信号LO1は前段の初段ブロックBAに入力され、信号LO2は初段ブロックBAの直後の2段目ブロックBBに入力される。
【0025】
(動作)
V/I変換回路51には、RF信号である入力信号Vinが入力される。入力信号Vinは、V/I変換回路51によって電圧−電流変換され、容量素子61、62によってDC成分がカットされた後、多重位相ミキサ部Bに入力される。なお、多重位相ミキサ部Bへ入力されるRF信号は、抵抗素子71、72によってバイアスされている。
【0026】
初段ブロックBAには、信号LO1と、信号LO1と180度位相の異なる信号LOB1とが入力される。2段目ブロックBBには、信号LO2と、信号LO2と180度位相が異なる信号LOB2とが入力される。図4に示したように、信号LO2の位相は信号LO1よりも90度進んでいる。
信号LO1、LO2、信号LOB1、LOB2の周波数はいずれも660MHz(=22.5MHz×2/3×44)である。つまり、多重位相ミキサ部Bに入力される信号の周波数は、入力信号Vinの周波数1500MHzと比較して十分低いものになる。
【0027】
初段ブロックBAは、信号LO1、信号LOB1を使って入力信号Vinをダウンコンバートする。2段目ブロックBBは、信号LO2、信号LOB2を使って初段ブロックBAによってダウンコンバートされた入力信号Vinを、さらにダウンコンバートする。
すなわち、周波数1500MHzの入力信号Vinは、初段ブロックBAと、2段目ブロックBBとにおいて2段階にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた入力信号Vinの周波数は、最終的に1500MHz−660MHz×2=180MHzとなる。
【0028】
周波数180MHzの信号は、I/Q生成部Cに入力される。I/Q生成部CのうちのIQ生成部CAには、ローカル信号LLI及びLLIB(両者を総称してIローカル信号とも記す)が入力される。IQ生成部CAにおいて、周波数180MHzの信号はローカル信号LLI及びLLIB(両者を総称してQローカル信号とも記す)によってLow−IF信号(I/Q信号)に変換される。また、IQ生成部CBには、ローカル信号LLQ及びLLQBが入力される。IQ生成部CBにおいて、周波数180MHzの信号はローカル信号LLQ及びLLQBによってI/Q信号に変換される。
【0029】
より具体的には、Iローカル信号、Qローカル信号は、例えば信号LO1(周波数660MHz)を取り出して図1に示した分周器3によって4分周することによって生成される。したがって、I/Q生成部Cによって生成されるI/Q信号の周波数は、
180MHz−660MHz/4
=180MHz−165MHz
=15MHz
となる。
【0030】
I/Q生成部Cから出力されたI/Q信号は、I/V変換回路DA、DBにそれぞれ入力される。I/V変換回路DAでは、容量素子63によってI/Q信号の高周波成分が減衰された後、I/Q信号から電圧信号VIOが取り出される。また、I/V変換回路DBでは、容量素子64によってI/Q信号の高周波成分が減衰された後、I/Q信号から電圧信号VQOが取り出される。
【0031】
以上説明したように、実施形態1によれば、多重位相ミキサ部Bによって周波数の低い信号LO1、LO2を使って入力信号Vinの周波数をダウンコンバートすることができる。このため、Low−IF信号の生成に使用されるローカル信号の周波数を従来技術よりも低くすることができる。このことにより、実施形態1は、従来技術のようにI/Q信号を生成するために高い周波数のローカル信号を生成する必要がなくなる。
【0032】
このことから、実施形態1は、従来技術でローカル信号の生成に使用されていたアナログ分周器を用いたPLL回路やLC共振回路を用いたVCOに代えて、リングオシレータを使ってローカル信号を生成することができる。高周波数のローカル信号を生成するアナログ分周器の消費電力が大きく、また、その素子面積も大きいものであった。さらに、VCOは、LC共振回にインダクタ素子が内蔵されることによって素子面積が大きかった。
【0033】
一方、リングオシレータは、PLL回路やVCOをリングオシレータよりも消費電力が小さく、素子面積が小規模である。このことから、PLL回路やVCOをリングオシレータに代えることができる実施形態1は、ミキサ回路を含む受信器の消費電力を低減することができる。さらに、素子面積を小さくし、受信器をより小型化することに有利なミキサ回路を提供することができる。
【0034】
なお、実施形態1では、信号LO1を4分周することによってI/Q生成部に入力されるローカル信号LLI〜LLQBを生成している。しかし、実施形態1では、信号LO1を4分周するものに限定されるものでなく、2分周するものでもよい。
【0035】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2を説明する。
図5は、実施形態2のミキサ回路を説明するための図である。実施形態2は、ミキサ回路の多重位相ミキサ部の段数が3段である点で実施形態1と相違する。なお、実施形態2では、実施形態1において図1、図2に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
【0036】
図示したミキサ回路は、ミキサ回路本体501と、リングオシレータ502と、分周器3とによって構成されている。ミキサ回路本体501には、周波数1500MHzのRF信号である入力信号Vinと、周波数540MHzの信号LO1、LO2、LO3、信号LOB1、LOB2、LOB3、周波数135MHzのローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBが入力される。ミキサ回路本体501では、以上の信号を使って周波数15MHzのI/Q信号(Low−IF信号)VIO、VQOを生成する。
リングオシレータ502は、周波数540MHzの信号LO1、LO2、LO3、B1、LOB2、LOB3を生成する。分周器3は、例えば信号LO1を入力し、4分周して周波数135MHzのローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBを生成する。
【0037】
(構成)
・ミキサ回路
図6は、実施形態2のミキサ回路本体501の回路構成を説明するための回路図である。なお、図示したミキサ回路本体501は、入力信号Vin(RF信号)の周波数Finが1500MHzの受信回路のミキサ回路である。また、メインクロックの周波数は22.5MHzを想定している。
【0038】
ミキサ回路本体501は、V/I変換部Aと、多重位相ミキサ部Bと、I/Q生成部Cと、I/V変換部Dと、から構成されている。
多重位相ミキサ部Bは、初段ブロックBA、2段目ブロックBB、3段目ブロックBCから構成されている。3段目ブロックBCは、実施形態1で説明した2段目ブロックBBの後段に設けられたブロックである。3段目ブロックBCは、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ629、630と、ソース同士が接続されたMOSトランジスタ631、632の2対のMOSトランジスタ対と、MOSトランジスタ630、631のゲート端子に接続されたバッファ45、MOSトランジスタ629、632のゲート端子と接続されたバッファ46とを含んでいる。
【0039】
3段目ブロックBCには、図5に示したリングオシレータ502から信号LO3と、信号LO3に対して180度位相の異なるLOB3が入力される。信号LO3は、MOSトランジスタ630、631のゲート端子に入力され、信号LOB3は、MOSトランジスタ629、632のゲート端子に入力される。また、実施形態1と同様に、初段ブロックBAには信号LO1、LOB1が入力され、2段目ブロックBBには信号LO2、LOB2が入力される。信号LO1〜LO3、LOB1〜LOB3の周波数は全て540MHz(22.5MHz×2/3×36)である。
【0040】
図7は、信号LO1、LO2、LO3の関係を説明するための図である。図示したように、信号LO2の位相は信号LO1よりも60度進んでいる。また、信号LO3の位相は信号LO2よりも60度進んでいる。
多重位相ミキサ部Bに入力した周波数1500MHzの入力信号Vinは、初段ブロックBAと、2段目ブロックBBと、3段目ブロックBCとにおいて3段階にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた入力信号Vinの周波数は、最終的に1500MHz−540MHz×3=−120MHzとなる。
【0041】
3段目ブロックBCを出た信号はI/Q生成部Cに入力され、I/Q生成部Cに入力されるI/Qローカル信号(図6ではLLI、LLIB、LLQ、LLQB)によってLow−IF信号であるI/Q信号に変換される。I/Q生成部に入力されるIローカル信号(LLI、LLIB)と、Qローカル信号(LLQ、LLQB)とは、上記の540MHzの信号(例えば、LO1)を取り出して図1に示した分周器3によって4分周することで生成される。ここで、Iローカル信号とQローカル信号の周波数は、RF信号Vinの周波数1500MHzと比較して十分低い周波数である。I/Q生成部Cによって生成されるI/Q信号の周波数は、
120MHz−540MHz/4
=120MHz−135MHz
=−15MHzとなる。
【0042】
I/Q生成部Cから出力されたI/Q信号は、I/V変換回路DA、DBにそれぞれ入力される。I/V変換回路DAでは、容量素子63によってI/Q信号の高周波成分が減衰された後、I/Q信号から電圧信号VIOが取り出される。また、I/V変換回路DBでは、容量素子64によってI/Q信号の高周波成分が減衰された後、I/Q信号から電圧信号VQOが取り出される。
【0043】
以上説明した実施形態2においても、前記した実施形態1と同様に、PLL回路やVCOに代えて、リングオシレータを使ってローカル信号を生成することができる。このことから、実施形態2は、ミキサ回路を含む受信器の消費電力を低減することができる。さらに、素子面積を小さくし、受信器をより小型化することに有利なミキサ回路を提供することができる。
【0044】
図8は、実施形態2のリングオシレータを説明するための図である。図5に示した実施形態2のリングオシレータ502は、2段に接続された増幅器301a、301bと、増幅器302a、302bと、増幅器303a、303bとを直列に3組接続して構成されている。リングオシレータ502は、3つの増幅器を用いることで、図7に示した60度ずつ位相がずれた信号LO1〜LO3を生成してミキサ回路本体501に入力する。
【0045】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3は、多重位相ミキサ回路の段数がN(Nは2以上の整数)段であって、分周器が不要となる点で実施形態1、2と相違する。
図9は、実施形態3のミキサ回路を説明するための図である。図示したミキサ回路は、ミキサ回路本体901と、リングオシレータ902とによって構成されている。ミキサ回路本体901には、周波数1500MHzのRF信号Vinが入力される。
実施形態3のリングオシレータ902は、周波数495MHzの信号LO1、LO2、LOB1、LOB2を生成する。また、信号LO1をローカル信号LLI、信号LOB1をローカル信号LLIB、信号LO2をローカル信号LLQ、信号LOB2をローカル信号LLQBとしてそれぞれ使用する。ミキサ回路本体901によれば、周波数15MHzのI/Q信号(Low−IF信号)VIO、VQOが生成される。
【0046】
より具体的には、ローカル信号の周波数をFloとすると、多重位相ミキサ部の最後段の周波数Fsubは、式(1)によって与えられる。
Fsub=1500MHz−N×Flo …式(1)
ローカル信号LLI、LLIB、LLQ、LLQBは、ローカル信号をM分周(Mは2以上の整数)したものなので、最終的なI/Q信号の周波数FIFは、式(2)によって与えられる。
FIF=Fsub±Flo/M
=1500MHz−N×Flo±Flo/M
=1500MHz−(N±1/M)×Flo …式(2)
【0047】
実施形態3では、式(2)で表される周波数FIFが所望の周波数になるようにM、N、Floを設定する。例えば、M=4、N=2、Flo=660MHzとしたのが実施形態1であり、M=4、N=3、Flo=540MHzとしたのが実施形態2である。
また、特にN=2とした場合、図9に示したリングオシレータ902で生成されるローカル信号の位相が90度ずれているので、信号LO1、LOB2の周波数によっては分周器によって信号LO1、LO2を分周しなくてよい場合がある。
具体的には、信号LO1〜LOB2の周波数を、図9に示したように495MHz(22.5MHz×2/3×33)の場合、信号LO1、LOB2をローカル信号としても使うことにより、最終的なI/Q信号の周波数は、
1500MHz−495MHz×3=15MHzとなる。
【0048】
以上の実施形態3によれば、分周器も不要となるため、回路面積をより小型化し、消費電力もいっそう低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明は、消費電力の低減が望まれるミキサ回路に特に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1、501、901 ミキサ回路
2、502、902 リングオシレータ
21〜36、629〜631 MOSトランジスタ
41〜50 バッファ
51 V/I変換回路
52、53 I/V変換回路
61〜64 容量素子
71、72 抵抗素子
301a〜303a、301b〜303b 増幅器
A V/I変換部
B 多重位相ミキサ部
C I/Q生成部
D I/V変換部
BA 初段ブロック
BB 2段目ブロック
BC 3段目ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号と、当該第1信号と逆相の第1逆相信号とを入力された信号とミキシングするミキサ部を複数直列に接続し、該複数のミキサ部のうち、前段のミキサ部によってミキシングされた信号が後段のミキサ部に送られて前記第1信号及び前記第1逆相信号とミキシングされることによって初段の前記ミキサ回路に入力された入力信号を複数回にわたってダウンコンバートする多重位相ミキサ部と、
前記多重位相ミキサ部においてダウンコンバートされた信号を、I信号及びQ信号とそれぞれミキシングして出力信号を生成するI/Q信号生成部と、
を含むミキサ回路本体を備えることを特徴とするミキサ回路。
【請求項2】
前記第1信号及び前記第1逆相信号を生成するリングオシレータをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のミキサ回路。
【請求項3】
前記第1信号を分周して前記I信号及び前記Q信号を生成する分周器をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のミキサ回路。
【請求項4】
前記リングオシレータは、
複数の前記第1信号を生成し、前記第1信号の各々を前記複数のミキサ部の各々に入力し、
複数の前記第1信号のうち、一の前記第1信号を分周することなく前記I信号とし、他の前記第1信号を分周することなく前記Q信号として使用する場合、
前記入力信号の周波数をX(Xは任意の周波数)
前記多重位相ミキサ部によって前記入力信号がダウンコンバートされる回数をN(Nは2以上の整数)
前記I信号及び前記Q信号の周波数をFloとしたとき、
前記ミキサ回路本体によりダウンコンバートされた信号の周波数Fsubは式(1)で表され、
前記分周器の分周比をM(Mは2以上の整数)としたとき、前記I信号及びQ信号の周波数FIFは、式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載のミキサ回路。
Fsub=X−N×Flo …式(1)
FIF=Fsub±Flo/M
=X−N×Flo±Flo/M
=X−(N±1/M)×Flo …式(2)
【請求項5】
複数の前記第1信号のうち、前段の前記ミキサ部に入力される前記第1信号の位相は、前記前段の直後の段のミキサ部に入力される前記第1信号の位相よりも180/N度遅れることを特徴とする請求項4に記載のミキサ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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