説明

ミキシングヘッド装置及びこれを用いた成形方法

【課題】 混合液の高撹拌と吐出口からの混合液のスムースフローを向上させ、しかも、低コストにして生産性にも優れるミキシングヘッド装置及びこれを用いた成形方法を提供する。
【解決手段】 化学的に反応する二種類の液状配合原料5をチャンバ側壁11にそれぞれ設けた細孔からチャンバ内10に噴射し、両配合原料5を衝突させて混合するミキシングヘッド装置において、前記両配合原料5のうち少なくとも一方の配合原料に係る前記細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、さらに該二個〜四個のうち二個以上の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差し、その中心軸線が交差する細孔30から噴射する前記配合原料の噴射液50が、他方の配合原料との衝突に先立ち、チャンバ内10で自己衝突する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム等の化学的に反応する二種類の配合原料を撹拌混合するミキシングヘッド装置及びこれを用いた成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリウレタンフォームを成形する場合、高圧タイプのミキシングヘッド装置が使用されることがあり、従来装置には図12に示すような固定ノズル方式のミキシングヘッド装置が存在した。図13に図12の下部詳細図を示す。図12,図13のミキシング装置では、化学的に反応する二種類の配合原料5a,5bに係る一の配合原料5aと他の配合原料5bとをチャンバ1の対向する側壁11にそれぞれ設けたノズル孔80からチャンバ内10にプランジャーを用いて、高い圧力で噴射し、両配合原料5a,5bを衝突させて混合する。符号Wはその衝突地点、符号8はノズル部材、符号2は注入ピストン、符号OLは注入ピストン用のオイルを示す。二種類の配合原料5が混合した混合液6(混合液状体)は、装置下の吐出部13から図示しない成形型内に吐出し、そのまま成形される。
従って、ミキシングヘッド装置に対しては、(1)混合液6が高撹拌されていること、(2)吐出口14からの混合液6が、吐出開始時に飛び散る等、散乱することなく、計量した混合比率で均一になめらかに吐出すること(以下、スムースフローという。)が要求されてきた。そこで、高撹拌された混合液たる原料を得るためにノズル通過時のスピードを上げることが行われてきたが、そうするとポンプの圧力が高くなり、装置への負荷が大きくなる。またポンプ圧にも限界があり、さらに高撹拌を得ようとするとスムースフローに難が出る。ミキシングヘッド装置の吐出口14より混合液6が吐出する時、この混合液6に余分なエネルギが残存していると、混合液6のスムースフローが得難くなる。
こうしたことから、斯かる問題を解決するために、これまで図14、図15に示す装置や、発明名称「樹脂発泡原液注入装置」たる改良装置の提案がなされてきた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−299939公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図14、図15の装置には次のような問題があった。図14の装置はチャンバ内10の下流にバッフルピン91を設け、両配合原料5a,5bの衝突後の混合液6が該バッフルピンを通過する間に混合度を高め、且つスムースフローを確保せんとするが、複雑な機構を取り入れなければならなかった。高粘性配合原料5を扱うポリウレタンフォームの製造にあっては、両配合原料5a,5bを衝突させて混合し吐出した後、注入ピストン2を下降させ、チャンバ内壁11を洗浄する必要があった。したがって、その都度、バッフルピン91を後退させねばならず、装置がコスト高となった。加えて、製造工程が図12の一工程のものと比較して二工程になり生産性にも影響を及ぼした。
図15の装置は、両配合原料5a,5bが衝突する衝突地点Wから水平横方向に向かう流速流れを内壁面Qで衝突させて、二次撹拌を促すと共に運動エネルギを奪いスムースフローを確保せんとするが、これも構造が複雑化して装置のコスト高を招いた。製造工程でも、注入ピストン2の作動とクリーニング部材92の作動をリンクさせ、加えて、ロッド921による内壁の洗浄が必要となり、生産性にも影響を及ぼした。
上記特許文献1の発明技術は、「樹脂発泡原液を混合するヘッド部と、このヘッド部の先端側に接続され前記樹脂発泡原液を吐出するノズルとを備え、このノズルから吐出される前記樹脂発泡原液が、前記ノズルに設けられた衝突部に衝突されるようになっている樹脂発泡原液注入装置」であるが、混合が不十分になる虞があった。衝突部に衝突させて二次撹拌を促すと共に、運動エネルギを奪いスムースフローを確保せんとするが、その衝突構造が簡略化されているため混合が不十分になる虞があった。
図16は一試験法による製品外形の概略図を示す。ミキシングヘッド装置の吐出部13の下方に水平移動するベルトを置き、この上に両配合原料5a,5bの衝突後、吐出部13から流出する混合液6(混合液状体)を流し、硬化した製品の外形、すなわち最初に吐出された頭の部分から胴を経て終了時の尾の部分までの外形を概略図示するものである。ちなみに、図17は図12の従来装置を使ってできた製品外形である。衝突による混合が不十分であったり混合後の混合液6のスムースフローが不十分であったりすると、図17に示すごとく製品には、吐出開始部の頭の部分(図17では右側の部分が該当)にはみ出し不良がみられたり、ボイドが現れたりするなどの品質不良を招いていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するもので、混合液の高撹拌と吐出口からの混合液のスムースフローを向上させ、しかも、低コストにして生産性にも優れるミキシングヘッド装置及びこれを用いた成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、化学的に反応する二種類の液状配合原料をチャンバ側壁にそれぞれ設けた細孔からチャンバ内に噴射し、両配合原料を衝突させて混合するミキシングヘッド装置において、前記両配合原料のうち少なくとも一方の配合原料に係る前記細孔が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、さらに該二個〜四個のうち二個以上の細孔の中心軸線がチャンバ内で交差し、その中心軸線が交差する細孔から噴射する前記配合原料の噴射液が、他方の配合原料との衝突に先立ち、チャンバ内で自己衝突することを特徴とするミキシングヘッド装置にある。ここで、「チャンバ」とは配合原料が噴射され、混合撹拌される空間の全てをいう。「自己衝突」とは、一種類の液状配合原料が二個以上の細孔から噴射液として噴射され、これらの噴射液同士が交差により衝突することをいう。
請求項2の発明たるミキシングヘッド装置は、請求項1で、チャンバの側壁に設けた壁孔箇所にノズル部品が着脱自在に固定され、且つ該ノズル部品に前記細孔が形成されることを特徴とする。請求項3の発明たるミキシングヘッド装置は、請求項2で、ノズル部品に細孔を二個形成し、且つ両細孔の中心軸線が交差する交差角度(θ)を30°〜90°の範囲内とすることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の要旨は、化学的に反応する二種類の液状配合原料に係る一方の配合原料と他方の配合原料とをチャンバ側壁にそれぞれ設けた細孔からチャンバ内へ噴射し、両配合原料を衝突させて混合するミキシングヘッド装置であって、前記両配合原料のうち少なくとも一方の前記配合原料に係る細孔が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、且つ該二個〜四個のうち二個以上の細孔の中心軸線がチャンバ内で交差し、その中心軸線が交差する細孔から噴射する前記配合原料の噴射液がチャンバ内で自己衝突するミキシングヘッド装置を用いて、前記両配合原料のうち一方の配合原料の噴射液を自己衝突させ、次いで、他方の配合原料と衝突させて両配合原料を混合した後、これを成形型内に吐出し硬化させることにより成形することを特徴とするミキシングヘッド装置を用いた成形方法にある。請求項5の発明たるミキシングヘッド装置を用いた成形方法は、請求項4で化学的に反応する二種類の配合原料が、2液性ポリウレタン樹脂用のポリオール成分を含む配合原料とイソシアネート成分を含む配合原料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のミキシングヘッド装置及びこれを用いた成形方法によれば、両配合原料のうちの少なくとも一方の細孔を二個〜四個の範囲内で設け、さらにそのうちの少なくとも二個の細孔の中心軸線をチャンバ内で交差させるだけで、たやすくしかも確実に、混合液の高撹拌と吐出口からの混合液のスムースフローを達成できるようになり、低コストにして生産性向上,品質向上等に優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るミキシングヘッド装置及びをこれ用いた成形方法の実施形態について詳述する。図1〜図11は本発明のミキシングヘッド装置(以下、「混合装置」という。)及びこれ用いた成形方法の一形態を示したもので、図1は混合装置下部の概略縦断面図、図2は(イ)が図1のノズル部品の縦断面図で、(ロ)が(イ)と右側面図である。図3は図1のチャンバの壁孔にノズル部品及びノズルホルダーが装着される様子を示す分解説明図、図4は図2(イ)のノズル部品の部分拡大図、図5は図2のノズル部品とは別態様のノズル部品の縦断面図(イ)と右側面図(ロ)、図6は混合装置のチャンバの対向する側壁に取り付けられたノズル部品の位置関係を示す説明図、図7は図6のノズル部品の細孔から噴射する両配合原料の噴射液が衝突してできるその衝突面の概略形状で、図6のIV-IV線矢視図である。図8は混合装置のチャンバの対向する側壁に取り付けられたノズル部品の位置関係を示す説明図で、図6とは異なる別態様図、図9〜図11は本ミキシングヘッド装置を用いた試験製品の外観画像処理図である。尚、図3は図面を分かり易くするため、ノズル部品の断面を示すハッチングを省略する。
【0009】
本発明の混合装置の基本構造は図12、図13に示す従来の混合装置とほぼ同じである。化学的に反応する二種類の液状配合原料5に係る一の配合原料5aと他の配合原料5bとをチャンバ1の対向する側壁11にそれぞれ設けた細孔30からチャンバ内10に噴射し、両配合原料5a,5bを衝突させて混合する混合装置になっている。この高圧タイプの混合装置は、溶剤による洗浄に頼らず、図12に示すような注入ピストン2による機械的洗浄法を採用する。図1は図12の混合装置の下部拡大縦断面図に相当するが、図12と同様、注入ピストン2を設ける。両配合原料5a,5bをチャンバ内10で衝突,混合させた混合液6は吐出口14から成形型7内へと吐出され、次いで、ピストンが上下動して両配合原料5a,5bが衝突,混合した後のチャンバ内壁11を、注入ピストン2のロッド部21がクリーニングする。
【0010】
ここで、前記細孔30からの両配合原料5a,5bの噴射による混合にあたって、従来の混合装置は、混合度合を高めるべく両配合原料5a,5bのスピードを上げこれに高エネルギを与えて衝突させ両者の撹拌,混合を行わせていた。スピードを上げ高エネルギを与えるべく、従来の混合装置では、チャンバ1の対向する側壁
11に設けられる一の配合原料用細孔30及び他の配合原料用細孔30はそれぞれ一個であった。図12、図13の混合装置の細孔用ノズル孔80でも、また図14の混合装置や図15の混合装置でも、対向側壁に設けられる一の配合原料用ノズル孔80及び他の配合原料用ノズル孔80はそれぞれ一個であった。両配合原料がプランジャー等の高圧力による高い吐出エネルギをもって両ノズル孔80から噴射し、両者がぶつかり合って撹拌,混合することを企図していた。
【0011】
しかるに、本発明者等は、混合液6のスムースフローの実現と混合性能を高めるために、発想を転換し、化学的に反応する二種類の配合原料5を衝突させ混合するには、図12〜図15のごとく両樹脂原料5a,5bが点で当たるよりも面で当たるようにする方が混合度合を向上させるのではないかと考え、その開発に取り組んだ。そして、混合装置及びこれを用いた成形方法の本発明に至った。両配合原料5a,5bの混合度合が高まり、且つ混合液6のスムースフローの効果が得られるのを実験確認した。
【0012】
本混合装置では、両配合原料5a,5bのうちの少なくとも一方の細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられる。且つ該二個〜四個のうち二個以上の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する。すなわち、二個,三個,又は四個の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する。また、その中心軸線35が交差する細孔30から噴射する前記配合原料5aの噴射液が、他方の配合原料5bとの衝突に先立ち、チャンバ内10で交差し自己衝突するよう設定する。さらに、前記二個〜四個のうち、二個以上の前記細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する地点Rを、平面視又は側面視でチャンバ1の中心よりも該細孔30側のチャンバ内壁11寄りの地点として、他方の配合原料5との衝突に先立ち、チャンバ内10での自己衝突を確実なものとする。他方の配合原料5との衝突に先立ち、一方の配合原料5がチャンバ内10で交差し自己衝突することにより一方の配合原料5が分散状態になる。少なくとも一方の配合原料5がこの面状に広がる分散状態後に他方の配合原料5と衝突することで、チャンバ内10で対向噴射される両配合原料5a,5bの混合度合を一段と高めることになる。と同時に、両配合原料5a,5bの混合度合が増すことによって、配合原料5の有していたエネルギが失われ、混合液6のスムースフローを実現させる。
ここで、「細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設ける」に限定するのは、四個を越えると細孔30の口径を小さくしなければならず、その分、不純物や凝集物によってノズルが詰まり易くなるからである。各配合原料用に設けられる好ましい細孔30の数は二個である。本発明でいう上記「二個〜四個のうち二個以上の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する」で、例えば「二個の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する」は、細孔30の中心軸線35が幾何学的な三次元の空間で、二個の細孔30の中心軸線35が確実に交差するものだけでなく、両中心軸線35がチャンバ内10で僅かにズレて交差しなくても、二個の該細孔30から噴射する配合原料5の噴射液が交差し実質的に自己衝突するような状態であれば、二個の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差するとみなす。細孔30から噴射される高粘性原料樹脂を含んだ液状配合原料5は細い流れの線状,ビーム状になるが、両配合原料5a,5bの噴射液50が交差し自己衝突すれば、これも上記効果と同様の効果が得られるからである。両配合原料5a,5bの混合度合の高まり、すなわち高撹拌がなされると共にスムースフローが実現されるからである。
【0013】
具体的には、図12〜図15の従来装置で両配合原料5a,5bが点で当たっていたのを、例えば、少なくとも一方の配合原料用細孔30を二個設けて、且つその二個の細孔30の中心軸線35をチャンバ内10で交差させることにより、両細孔30から噴射する一方の配合原料に係る二つの噴射液50を、他方の配合原料5との衝突に先立ち、チャンバ内10で交差させて自己衝突させる。これにより、他方の配合原料5と衝突する地点では、一方の配合原料5が面状に広がっているので高混合を得ることになる。両方の配合原料5の細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、さらに複数個設けられたうちの少なくとも二個の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差するようにすれば、両配合原料5a,5bが衝突する地点では、双方の配合原料5が面状に広がっており、より高い高混合を得ることになる。また、化学的に反応する二種類の配合原料5a,5bが、2液性ポリウレタン樹脂用のポリオール成分を含む配合原料とイソシアネート成分を含む配合原料である場合は、イソシアネート成分を含む配合原料用の細孔30のみが二個〜四個の範囲内で複数個設けられるだけでもよい。イソシアネート成分側の細孔30のみであっても、双方の配合原料用細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられた場合と同等の高い高混合が得られる。
図1,図6の混合装置では、チャンバ1の対向する両側壁11に設けた両壁孔12に、図2のノズル部品3がそれぞれ着脱自在に一個固定され、且つ両ノズル部品3にそれぞれ二個の細孔30を形成する。
【0014】
本実施形態の前記ノズル部品3は、図2に示すごとく円盤状体の主部31にチャンバ内10に面する表側から反対の裏側へ貫通するように細孔30が二個設けられる。軸孔からなるストレートの両細孔30はその両中心軸線35が交差してできる内角の交差角度θを30°〜90°の範囲内とする。さらに、両細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する地点Rが、図1のごとく側面視(又は平面視)でチャンバ1の中心(ここでは中心軸19)よりも該細孔側のチャンバ内壁11寄りの地点となるよう両細孔30が配設される。細孔30から噴射する配合原料5の噴射液50に直進性が得られるよう軸孔の長さlが決められ、噴射液50の必要スピードが得られるよう細孔30の口径dが設定される(図4)。本実施形態は、ノズル部品3の表側に円錐状凹み32を設け、上記噴射液50の直進性及び必要スピードの二条件が満たされるように、この凹み面から裏面側へ垂直貫通する細孔30が上下方向に所定間隔をとって二個設けられる。「両中心軸線35が交差する交差角度θを30°〜90°の範囲内とする」のは、30°未満になると両配合原料5a,5bの衝突後の広がり(拡散)が不十分になるからである。一方、90°を越えると、上記二条件が満たされた細孔30をノズル部品3に形成するのが難しく且つ拡散も不十分になるからである。
また、ノズル部品3の裏面側には鍋底33を設ける。壁孔箇所12にノズル部品3が着脱自在に固定されて、詳しくは、図3のごとく壁孔12周りの内壁11にノズル部品3入りノズルホルダー4及びナット4bが螺着固定されて、細孔30から配合原料5がチャンバ内10に噴射するよう設定されるが、該鍋底の形成によって、配合原料5がチャンバ1に設けた導孔16(又は導孔15)を通って細孔30へ円滑に導かれる。図3はノズル部品3がノズルホルダー4の窪み40に装着され、これが壁孔箇所12に固定される様子を示す。壁孔12の周縁突起部にノズル部品3入りノズルホルダー4の先端が係止されて、ノズルホルダー4が導孔16をつくるチャンバ壁に螺着固定される。こうして、配合原料5が導孔16、さらにノズルホルダー4の取込口43から縦通孔42を通って先端へと向かい、ノズル部品3の細孔30から配合原料5の噴射液50がチャンバ内10に噴射することとなる。符号34はリング溝を示す。
【0015】
図5は図1〜図3の細孔30を二個設けたノズル部品3とは別態様のノズル部品3を示す。図5のノズル部品3は、図2のノズル部品3で細孔30を上下方向に所定間隔をとって二個設けたが、これに加え、細孔30を左右水平方向に所定間隔をとって二個設ける。円錐凹み32の円錐頂点周りの凹み面に90°間隔で細孔30を四個設けたノズル部品3である。尚、図示を省略するが、細孔30が三個の場合は、円錐凹み32の円錐頂点周りの凹み面に120°間隔で細孔30を三個設けたノズル部品3になる。
【0016】
前記ノズル部品3は、例えば図2のものであれば、二個の細孔30を上下にしてチャンバ1の壁孔12に図1,図6のように取り付けられる。二個の細孔30が上下方向に取り付けられることによって、自己衝突した後、両配合原料5a,5bが面状に広がって衝突するが、その衝突面は図7のような楕円形になる。垂直方向長さYが水平方向長さXよりも長くなっており、例えば二個の細孔30の位置が楕円の焦点になるような楕円になる。二個の細孔30を上下方向に取り付けた方が、水平方向に取り付けるよりも、チャンバ内壁11に邪魔されずにその楕円面積を大きくでき、混合に対して一層の効果を上げる。
【0017】
次に、本混合装置を用いた成形方法について説明する。化学的に反応する二種類の液状配合原料5a,5bに係る一方の配合原料5aと他方の配合原料5bとをチャンバ側壁11にそれぞれ設けた細孔30からチャンバ内10へ噴射し、両配合原料5a,5bを衝突させて混合する混合装置であって、前記両配合原料5a,5bのうち少なくとも一方の配合原料5aに係る細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、且つ該二個〜四個のうち二個以上の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差し、その中心軸線35が交差する細孔30から噴射する前記配合原料5aの噴射液50がチャンバ内10で自己衝突する混合装置を用いる。この混合装置を用いて、両配合原料5a,5bのうち一方の配合原料5aの噴射液を自己衝突させ、次いで、他方の配合原料5bと衝突させて両配合原料5a,5bを混合した後、これを成形型7内に吐出し硬化させることにより成形する。化学的に反応する二種類の配合原料5が、2液性ポリウレタン樹脂用のポリオール成分を含む配合原料とイソシアネート成分を含む配合原料であれば、本混合装置を使用することによって、混合液6の高撹拌と吐出口14からの混合液6のスムースフローを向上させて高品質の成形品を製造できるようになる。二個〜四個のうち二個以上の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差する地点Rを、平面視又は側面視でチャンバの中心よりも該細孔側のチャンバ内壁11寄りの地点とすると、混合液6の高撹拌とスムースフローがより高い精度で実現できるようになり、高品質の成形品を造るうえで一層好ましくなる。
【0018】
以下、本混合装置を使用して性能比較試験を実施し、良好な結果を得たので、それについて説明する。
[性能比較試験1]
表1は本混合装置を用いて実験し、その結果をまとめたものである。ノズル部品3に設ける細孔30の数や交差角度θを変化させて、一の配合原料5aと他の配合原料5bとがそれぞれ自己衝突した後、両配合原料5a,5bが面状に広がって衝突した衝突面の形状を調べた。さらに混合後、吐出部13から混合液6が吐出するが、その吐出開始時の未反応液の飛散や吐出開始部の発泡体の状態について調べた。
【0019】
【表1】

【0020】
表1で用いた化学的に反応する二種類の配合原料5は、2液性ポリウレタン樹脂用のポリオール成分を含む配合原料とイソシアネート成分を含む配合原料である。イソシアネート側配合原料は、トルエンジイソシアネート・TDI−80(粘度、3cps@25℃)と、ポリメリックMDI(粘度、100〜3000@25℃)のブレンド品を用いた。ポリオール側配合原料は、ポリエーテルポリオールとグラフトポリオールのブレンド品を用いた。
表1ではイソシアネート側配合原料とポリオール側配合原料のそれぞれに設けた細孔30の個数を「ノズルの数」として示す。例えば、実施例1の「ノズルの数」が2で且つ「本発明のノズル」の欄にポリオール/イソシアネートとあるのは、イソシアネート側配合原料用の細孔30個数が2で、ポリオール側配合原料用の細孔30個数が2であることを示す。実施例5の「ノズルの数」が4で且つ「本発明のノズル」の欄にポリオールとある場合は、ポリオール側のノズル(すなわち細孔)の個数だけが4となることを示す。イソシアネート側の細孔30の数は1となる。ノズルの数が4とあるのは、図5のごとく円錐凹み32の円錐頂点周りの凹み面で、上下左右に90°間隔で細孔30を四個設けるものである。また、表1の吐出孔の角度は、上側細孔30の中心軸線35が下側細孔30の中心軸線35と交差するが、その交差地点Rを通る水平線から上側細孔30の中心軸線35までの仰角を示しており、交差角度θの1/2の値に該当する。表1では両配合原料の衝突面での形状を「噴霧の形状」として示す。「噴霧の形状」はチャンバ内10に透明のアクリル樹脂レンズを設けてビデオ撮影して観察した。
「ノズルの数」、すなわち細孔30の数が2又は4で、これらの細孔から噴射する配合原料の噴射液が他方の配合原料との衝突に先立ち、チャンバ内で自己衝突することが、吐出開始時の未反応液の飛散や吐出開始部の発泡体の不具合を改善し、さらに「吐出孔の角度」が15°〜45°、すなわち交差角度θが30°〜90°の範囲の混合装置に良好な結果を得た。
【0021】
[性能比較試験2]
先の図16の説明内容と同じように、混合装置の吐出部13の下方に水平移動するベルトを置き、これにチャンバ吐出部13から流出する混合液6を流し、硬化した製品の外観性状を調べた(図9〜図11)。化学的に反応する二種類の配合原料5は、実施例1と同じく、2液性ポリウレタン樹脂用のポリオール成分を含む配合原料とイソシアネート成分を含む配合原料を使用した。図9の混合装置ではイソシアネート成分を含む配合原料用細孔30のみが二個設けられ、ポリオール成分を含む配合原料用細孔30は一個にしている。図10,図11の混合装置ではイソシアネート成分を含む配合原料用細孔30、ポリオール成分を含む配合原料用細孔30がそれぞれ二個設けられている。二個の細孔30を設けたところでは、両細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差し、該細孔30から噴射する配合原料5の噴射液が、他方の配合原料5との衝突に先立ち、チャンバ内10で自己衝突するよう設定している。図9〜図11に係る両細孔30の中心軸線35が交差する交差角度θは全て60°とした。図10では、イソシアネート用とポリオール用の各二個の細孔30を共に上下方向に配したが、図11ではイソシアネート用の二個の細孔30を水平方向に設置した。尚、図9〜図11は、図17と同様、原料の流し方向が図の右側から左側方向になっていて図16と逆方向であり、図面の右側部分が頭で、図面の左側部分が尾になっている。
図9〜図11、図17の試験において、細孔30から噴射する前記配合原料5の噴射液50の流量及び圧力はほぼ同じである。図17の従来の混合装置ではイソシアネート成分を含む配合原料用細孔30、ポリオール成分を含む配合原料用細孔30の数がそれぞれ一個設けられている。図17の製品にはみ出し不良やボイド不良がみられるのに対し、図9〜図11の製品はこうした不良がなく品質的に優れた外観を得た。(1)混合液6が高撹拌されていること、(2)吐出口14からの混合液6がスムースフローであることが確認できた。
【0022】
このように構成した混合装置及びこれを用いた成形方法は、両配合原料5a,5bのうちの少なくとも一方の細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、さらに複数個設けられたうちの少なくとも二個の細孔30の中心軸線35をチャンバ内10で交差するよう設定するだけで、混合液6の高撹拌と吐出口14からの混合液6のスムースフローを向上させることができ、極めて有益となる。その構造がシンプルであることから、図14,図15といった従来装置に比べて、その装置コストを大幅にダウンできる。しかも、既存の混合装置であっても、ノズル部材8と互換性のある本ノズル部品3に置き換えるだけで簡単に上記混合液6の高撹拌と吐出口14からの混合液6のスムースフローを向上させることができる。加えて、図14,図15のようなバッフルピン91の出し入れやクリーニング部材92の余分な作動工程が加わることがなく、生産性にも優れた装置になっている。勿論、図15,図16の従来装置に本発明構成を加えれば、さらなる高攪拌とスムースフローが実現する。特に金型成形品(モールド成形品)の製造においては、吐出開始から吐出停止までの全ての吐出状態で、均一に混合撹拌された混合反応液が供給されることから、成形品の欠肉,底あがり等の不良が低減できる。
【0023】
尚、本発明においては、前記実施例に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。チャンバ1,注入ピストン2,ノズル部品3,ノズルホルダー4,成形型7等の形状,大きさ,個数などは用途に応じて適宜選択できる。例えば、化学的に反応する二種類の液状配合原料をチャンバ側壁11にそれぞれ設けた細孔30からチャンバ内10に噴射する他に、反応に関与しない整泡剤,触媒などの配合助剤を、前記二種類の配合原料用細孔3とは別の細孔からチャンバ内10に噴射する場合がある。こうした場合も、前記二種類の配合原料のうち少なくとも一方の配合原料に係る前記細孔30が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、さらに該二個〜四個のうち二個以上の細孔30の中心軸線35がチャンバ内10で交差し、その中心軸線が交差する細孔30から噴射する前記配合原料の噴射液50が他方の配合原料との衝突に先立ちチャンバ内10で自己衝突すれば、本発明の範囲内になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のミキシングヘッド装置の一形態を示したもので、その装置下部の概略縦断面図である。
【図2】(イ)が図1のノズル部品の縦断面図、(ロ)が(イ)の右側面図である。
【図3】図1のチャンバの壁孔にノズル部品及びノズルホルダーが装着される様子を示す分解説明図である。
【図4】図2(イ)のノズル部品の部分拡大図である。
【図5】(イ)が図2のノズル部品とは別態様のノズル部品の縦断面図、(ロ)が (イ)の右側面図(ロ)である。
【図6】ミキシングヘッド装置のチャンバの対向する側壁に取り付けられたノズル部品の位置関係を示す説明図である。
【図7】図6のノズル部品の細孔から噴射する両配合原料の噴射液が衝突してできるその衝突面の概略形状で、図6のIV-IV線矢視図である。
【図8】混合装置のチャンバの対向する側壁に取り付けられたノズル部品の位置関係を示す説明図で、図6とは異なる別態様図である。
【図9】実施例2の試験で、吐出部から混合液を移動ベルト上に流して硬化させた製品の外観画像処理図である。
【図10】実施例2の試験で、図9のものと条件を変えて、吐出部から混合液を移動ベルト上に流して硬化させた製品の外観画像処理図である。
【図11】実施例2の試験で、図9,図10のものと条件を変えて、吐出部から混合液を移動ベルト上に流して硬化させた製品の外観画像処理図である。
【図12】従来技術の説明断面図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】従来技術の説明断面図である。
【図15】従来技術の説明断面図である。
【図16】吐出部から混合液を移動ベルト上に流して硬化させた製品を得る説明図である。
【図17】従来技術のミキシングヘッド装置を用いて、図16に示す製品に対応して得た製品の外観画像処理図である。
【符号の説明】
【0025】
1 チャンバ
10 チャンバ内
11 側壁
18 中心
19 中心軸(中心)
3 ノズル部品
30 細孔
5 配合原料
5a 一の配合原料
5b 他の配合原料
7 成形型(金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的に反応する二種類の液状配合原料をチャンバ側壁にそれぞれ設けた細孔からチャンバ内に噴射し、両配合原料を衝突させて混合するミキシングヘッド装置において、
前記両配合原料のうち少なくとも一方の配合原料に係る前記細孔が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、さらに該二個〜四個のうち二個以上の細孔の中心軸線がチャンバ内で交差し、その中心軸線が交差する細孔から噴射する前記配合原料の噴射液が、他方の配合原料との衝突に先立ち、チャンバ内で自己衝突することを特徴とするミキシングヘッド装置。
【請求項2】
前記チャンバの側壁に設けた壁孔箇所にノズル部品が着脱自在に固定され、且つ該ノズル部品に前記細孔が形成される請求項1記載のミキシングヘッド装置。
【請求項3】
前記ノズル部品に細孔を二個形成し、且つ両細孔の中心軸線が交差する交差角度(θ)を30°〜90°の範囲内とする請求項2記載のミキシングヘッド装置。
【請求項4】
化学的に反応する二種類の液状配合原料に係る一方の配合原料と他方の配合原料とをチャンバ側壁にそれぞれ設けた細孔からチャンバ内へ噴射し、両配合原料を衝突させて混合するミキシングヘッド装置であって、前記両配合原料のうち少なくとも一方の前記配合原料に係る細孔が二個〜四個の範囲内で複数個設けられ、且つ該二個〜四個のうち二個以上の細孔の中心軸線がチャンバ内で交差し、その中心軸線が交差する細孔から噴射する前記配合原料の噴射液がチャンバ内で自己衝突するミキシングヘッド装置を用いて、前記両配合原料のうち一方の配合原料の噴射液を自己衝突させ、次いで、他方の配合原料と衝突させて両配合原料を混合した後、これを成形型内に吐出し硬化させることにより成形することを特徴とするミキシングヘッド装置を用いた成形方法。
【請求項5】
化学的に反応する二種類の配合原料が、2液性ポリウレタン樹脂用のポリオール成分を含む配合原料とイソシアネート成分を含む配合原料である請求項5記載のミキシングヘッド装置を用いた成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−307721(P2008−307721A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155714(P2007−155714)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】