説明

ミクログリア促進アミロイド形成のアッセイ

本発明は、ミクログリア又はマクロファージ系統の細胞によって媒介される、脳におけるアミロイド蓄積を予防又は治療する化合物を同定する方法を記載する。本発明は、更に、そのような化合物を含有する組成物、そのような組成物を製造する方法及びそのような組成物を使用する方法を記載する。前記組成物は、細胞媒介アミロイド形成に起因する又は関連する疾患の治療又は予防に有用であり、アルツハイマー病及びウシ海綿状脳症のような神経変性疾患の治療又は予防において特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病を包含する神経変性疾患、並びに人及びウシ海綿状脳症及びクロイツフェルト・ヤコブ病を包含するプリオン媒介疾患の治療又は予防に有用な薬学的に有効な化合物を同定する新規方法及びアッセイに関する。本発明の方法及びアッセイは、ハイスループット・スクリーニングに特に適合性がある。本発明の実施によって同定される医薬化合物は、脳におけるアミロイドタンパク質の形成及び蓄積を予防又は治療するのに有用である。
【0002】
本発明は、更に、そのような化合物を含有する医薬組成物、並びにそのような化合物を製造する方法及び投与する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、重篤な認識障害を惹き起こす、進行性で、変性性の神経疾患である。それは西洋諸国において高齢者の痴呆の最も代表的な原因である。
【0004】
初期段階において、ADは、軽度の記憶喪失及び認知的問題によって明らかになる。疾患が進行するにつれて、認知的問題が増加し、日常の活動を妨げ始める。ADに罹患した一定の患者は、失認、不安及び欲求不満にも罹る。前記疾患の中期段階において、患者は、仕事に対する能力を失い始め、日常の監視が必要となってくる。多くの患者は、また、言語の欠損、判断力、思考力の消失、及び重篤な行動変化にかかる。前記疾患の進行が続くと、ADに罹患した患者は、しばしば、硬直し、口が利けなくなり、失禁を起こし、寝たきりとなり、自身の世話ができなくなる。疾患の進行についてのより詳しい考察は、Harrison's Principles of Internal Medicine, 15th edition, McGraw Hill, New York, 2001に見られる。
【0005】
その症状のせいで、ADは、また、患者の家族や介護者に対する重い感情的犠牲を要求する。現在では、米国だけでもADに罹患した人々は、およそ3乃至4百万人存在する。加えて、65才以上の人々の数は増え続けているので、ADの社会的及び経済的影響は、また非常に重大になってきている。
【0006】
ADの臨床的に観察できる徴候又は症状の発現に先だって、ADのリスクがある人の脳には神経病理学的マーカーが出現し、そのようなマーカー状態は、症状の臨床的発現に至るまで、成人の脳に数十年間進行し続けることができる。初期の又は進行したマーカー「病理」さえも呈する人の全てが、臨床的に認められるADへと最終的に進行するものではないものの、ある種のマーカーの存在、特に高レベルでの存在は、最終的な疾患の発症と相関すると予測できる(例えば、H. Soares, workshop presentation, “Diagnostic Accuracy of Cerebrospinal Fluid A-beta 1-42, Total Tau and Phosphotau in Alzheimer's Disease”, Molecular Diagnostics, New Applications and Technologies Accelerating Drug Development, February 7-8, 2005 at Princeton, NJ, concerning disease correlations with (1) elevated levels of phosphorylated tau and (2) decreased levels of circulating A-beta peptide 42-mer, as assayed from preserved samples of cerebrospinal fluid from patients enrolled in long period National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA clinical evaluationsを参照)。
【0007】
臨床的なADに進行し、且つ認識し得る疾患状態の発症と強く相関する重要な病理学的マーカーは、脳のニューロン自体の内部の細胞質性神経原線維のもつれの蓄積である。特に海馬及び大脳皮質においてよく見られるそのようなもつれは、タウとして知られるタンパク質から構成されるものであり、それはしばしばリン酸化され、更に予測可能な疾患のマーカーになる(Herrmann et al. European J. Neurology, v. 42, pp. 205-210, 1999を参照)。タウタンパク質は、正常細胞において微小管の集合に関与すると考えられている(Weingarten et al., Proc. Natl. Acad. Sci., v. 72, pp. 1858-1862, 1962)。しかしながら、タウタンパク質の異常(又は過剰)なリン酸化は、神経原線維のもつれと他の細胞成分との集合を惹き起す。細胞質性神経原線維のタウのもつれは、ニューロン自体の内部に形成されるので、それらは細胞機能に非常に破壊的であり、充分に蓄積すると、細胞機能不全及び死に至ることになる(Terry et al., Ann. Neorol., v. 10, pp. 184-192, 1981)。驚くほどのことではないが、タウのもつれの進行的蓄積が、AD、並びにヒト及びウシ海綿状脳症を含む脳アミロイド血管症(CAA)及びプリオン媒介疾患のような、他の神経変性疾患と関連しているというかなりの証拠がある(Sasaki et al., Am. J. Pathol. v. 153, pp 1149-1155, 1998; Ghetti et al. Proc Natl Acad Sci, v.93, pp. 744-748, 1998; Kunzi et al., J. Neuroscience, v.22, pp.7471-7477, 2002)。
【0008】
臨床的なADに進行し、且つ認識し得る疾患状態の発病に強く相関する他の主要な病理学的マーカーは、神経炎性老人斑の蓄積である。老人斑は、不溶性で、タンパク質及び非タンパク質成分からなる細胞外凝集体の形態をとる。老人斑の蓄積はニューロン自体に対して細胞外であるが、凝集体は、正常なニューロン機能に対して最終的に非常に障害となり、最終的に細胞死にも至る(Selkoe, D.J. Cold Spring Harbor Symposium on Quantitative Biology, v. 61, pp.587-596, 1996)。それ故、老人斑の形成の予防又は除去は、AD及び同様な神経変性疾患の治療及び予防の両者に必須の工程のようである。
【0009】
老人斑は、種々の形態を有しているが、それらは、分岐していない繊維状タンパク質で、交差β−プリーツシート配座に配列していると定義される、アミロイドとして知られる凝集タンパク質塊から主に構成されている。更なる成分として、例えば、タンパク質のアポリポタンパク質E及びプロテオグリカン、並びに/又はα1−アンチキモトリプシン及びP成分のような非タンパク質成分も挙げることができる。
【0010】
AD関連アミロイドの主要な成分は、典型的には長さが39〜43アミノ酸残基のペプチド(エキソペプチダーゼ修飾変異体を含む、他の特定の長さのものは当業者によく知られており、その使用も、本発明の実施の範囲内である)であり、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から生成される、A−βペプチドである。APPタンパク質は、一般的に脳のニューロン間の細胞間隙に分布している。APP及びAPP様タンパク質は、全身に見出されており、調節及び細胞接着タンパク質として機能しているのであろう(Herzog et al., Eur. J. Cell Biol., v.83, pp. 613-614, 2004を参照)。成熟APPタンパク質自体は、典型的には、長さ695、750又は751アミノ酸残基(種々のスプライス変異及び切断が起こる)であり、そしてアルツハイマー病に対する遺伝的素因を示す家族からの患者でしばしば変異している(例えば、671位及び717位、A.M. Goate, Cell Mol Life Sci, v. 54, pp. 897-901, 1998; Armstrong et al., neurosci. Lett., v. 370, pp.241-143, 2004; and Rosenberg et al., Acta Neuropathol., v. 100, pp. 145-152, 2000を参照)。APPポリペプチド(およそその残基671〜713からなるA−βペプチドを有する)のアミノ酸配列内からのA−βペプチドの切断は、ニューロン外で作用するプロテアーゼであるβ−セクレターゼ及びγ−セクレターゼによって達成されるのが、おそらく最も一般的であり、そしてこれら酵素の阻害は、アルツハイマー病及び他の神経変性疾患の予防及び治療への治療的アプローチを提供することもできる(β−セクレターゼ切断部位は、671Mと672Dの間のKM−DAである)。これらセクレターゼ酵素の特異性における軽度の変異のため、39残基、40残基、41残基、42残基、及び43残基のA−βペプチドが生じ得る。APPに対するセクレターゼの作用は、細胞外で、又はオルガネラ内を含む細胞内で起こり得る。
【0011】
A−βペプチドの正確な長さは、そのAD病理への関与、又は病理的イベントに関与する正確なタイミングに対して、重要であると考えられてきた。更に、40残基及び42残基のペプチドは、斑に存在する最も普通の種類であり、これらの種類は、家族性AD、即ち家族の一員が本疾患にかかる素因があることが知られている場合、脳液試料に存在している(R. Vassar, Subcell. Biochem. v.38, pp. 79-103, 2005を参照)。更に、患者の疾患状態の進行に従って患者から採取され注意深く保存された脳脊髄液中(前記H. Soaresを参照)において、42残基のペプチド(しかし、非凝集状態の)の濃度は、疾患が進行するにつれてますます減少することが示された。
【0012】
A−βペプチドは、ヒト脳に数十年にわたって、拡散した、可溶性の、そして非アミロイドの状態で、臨床的に測定し得る神経変性の症状を起こすことなく、細胞外的に蓄積することができるということを理解することが重要である。事実、A−βペプチドがアミロイド斑の緻密な線維状配列構造(ここではA−βペプチドはβ−シート配座をとる)をとらない限り、A−βペプチドの凝集体であっても、臨床症状に至ることがないであろう。拡散した又は可溶性のA−βの不溶性斑への凝集は、疾患状態の重症度に相関し、臨床的に測定可能な症状におそらく必要であると考えられている。A−βペプチドは、イン・ビトロで、中程度の溶液濃度で、バッファー溶液に非常に難溶性となるようであるが、他の健康な成人の脳組織中では、拡散状態で、驚くほど安定で且つ可溶性のままであり、悪影響なしに数十年間蓄積する。それ故、A−βペプチドのタンパク質分解による形成の予防(例えば、APPに対するβ−又はγ−セクレターゼ作用の阻害により)は、AD治療への有望なアプローチとして広く認識されているが、既に蓄積したA−βペプチドの凝集への引き金を引くプロセスを理解すること、及び成人期の脳における(成熟した病的線維形成としての)凝集を予防することが非常に重要なこととして残されている。これは、種々の理由により、成人患者における治療介入が、家族性素因が疑われる場合、又は成人生活(及びA−β蓄積)の数十年が予防的又は治癒的治療が開始される前に既に経過している場合にしか、提供されないという状況では特にそうである。
【0013】
哺乳類の脳におけるA−βの沈着は、アミロイド前駆体タンパク質の天然型又は変異型が、神経プロモーターを使って過剰発現された多くのトランスジェニックマウスモデルで実現されている(Higgins, et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., v.695, pp. 224-227, 1993;Quon et al. Nature v.352,pp.239-241,1991)。 いくつかのこれらモデルで起こっているA−β沈着の進行及び病理は、いくつかの様式でヒトのAD罹患脳でのA−β沈着に類似している:(1)拡散したA−β沈着の形成がアミロイド含有斑沈着の形成に先行すること;(2)アミロイド含有沈着が、拡散したA−β沈着よりも、脳においてより限定された分布をする傾向があり、学習及び記憶に重要であることが知られている領域に最も頻繁に生じること;及び(3)アミロイド含有沈着が、しばしばMHCクラスII陽性ミクログリア及び異栄養軸索を伴なうが、一方拡散したA−β沈着はそうではない(Pazmany et al., Brain Res., v.835, pp.21-223, 1999; H. Nakanishi, MOI. Neuriobiol. v. 27, pp. 163-176, 2003; Perlmutter et al., J. Neurosci res., v.33, pp.549-558, 1992)。
【0014】
これらの動物モデルで見られ、そしてヒトの組織病理試料からも証拠づけられるものとして注目すべき特徴の1つは、最も小さいアミロイド含有沈着においてさえもミクログリア細胞が存在することである。ミクログリアは、一般的に脳全体に拡散分布し、中枢神経系の微小環境内で恒常性を維持する機能をする、マクロファージ系統の、免疫系細胞である。特に、ミクログリア細胞は、ニューロンの損傷又は細胞死後の破片を除去するスカベンジャーとして作用することが知られている。そのような細胞は、脳細胞の塊の実質的な部分を構成しており、しばしばMHCクラスII糖タンパク質に陽性である。AD研究における従来の観点は、可溶性、拡散状態から凝集アミロイド状態へのA−βペプチドの凝集は自然発生的イベントであろうというものであり(Orpiszewski et al., J. Mol. Biol., v. 289, pp. 413-428, 1999; Chen et al. Front Biosci., v.4, A9-A15, 1999)、ミクログリア細胞は、アミロイド沈着が生成した後にアミロイド沈着に引きつけられるというものであった。更に、「自然発生的凝集」理論は、溶液中に混合され、広範な適切な条件下に撹拌されたA−βペプチドが、それ自体でアミロイド構造をとることができることを立証しているイン・ビトロモデルの存在に基づいている。しかし、自己凝集モデルは、(1)アミロイド形成は、しばしば、認知機能に強く関連している大脳皮質及び海馬領域に特に最も高いが、他では起こることはまれであること、及び(2)アミロイド形成は、脳内におけるA−β沈着の出現に続いて数十年遅れるであろうこと、及び(3)特定の成人個体に多かれ少なかれ起こること、という観察と調和させるのが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、少なくとも部分的には、ミクログリア細胞が、成人の脳において拡散したA−βペプチド分子に通常接触し及び/又はそれを処理していること、及びミクログリア細胞のある種の分子生物学的経路がそのような相互作用及び処理に寄与していること、という発見に基づいている。ミクログリア細胞によるこの作用の1つの結果は、脳組織の細胞間隙からA−βペプチドを取り込む又は貪食するものと考えられているが、この処理の不幸な結果は、A−βペプチドのアミロイドへの凝集及び組立てもまた促進され得ることである。従って、多くの神経変性疾患の予防及び治療は、アミロイド及びプリオン前駆体に対するミクログリア細胞の作用を調節することによって提供することができる。
【0016】
本発明は、一部分において、脳内の適切な細胞間環境を維持するために、ミクログリア細胞が、A−βペプチド分子並びに他の蓄積したタンパク質及びペプチド分子の拡散沈着を日常的に処理しているという認識に関する。多数の細胞内及び細胞間シグナル伝達系は、A−βペプチドに対する、並びに他の蓄積した又は失活したペプチド及びタンパク質に対するミクログリア細胞の作用に寄与している。本発明は、アルツハイマー病の実際の症状の出現を予防する又は遅らせるために、及び一旦医学的に認識できる症状が発生した場合は、疾患の進行を逆転させる又は症状の重症化を防止するように疾患を治療するために、これらシグナル伝達系に影響を与えることを目的とするものである。
【0017】
そのようなシグナル伝達系の1つは、外部のシグナル伝達分子がミクログリア細胞の表面受容体に結合して、ミクログリア細胞内のサイクリックアデノシン一リン酸(「cAMP」、重要な細胞内シグナル伝達化合物)のような、サイクリックヌクレオチドの有効濃度の増加又は減少を導くことができる、多くの生物学的機構を含む。
【0018】
本発明の実施において有用な他のシグナル伝達経路は、ミクログリア細胞の全般的な挙動及び表現型に影響する。以下に詳しく述べるように、成熟したミクログリア細胞は、最終的に、MHCタイプII細胞表面抗原の発現の増加に典型的に関連している、「アミロイド処理表現型」を発現する。そのような細胞の表現型の挙動を修飾することは、脳アミロイドの生成を予防することに非常に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
典型的な実施態様において、本発明は、それ故、細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制するのに有用な化合物を同定する方法であって、細胞を候補化合物に接触させ、アミロイド形成ペプチド又はタンパク質を加え、候補化合物の存在下及び非存在下での細胞により媒介されるアミロイド形成のレベルを比較することを含む方法を提供する。好ましい実施例において、標的細胞は、ミクログリア細胞であり、アミロイド形成ペプチドは、アルツハイマー病に関連したA−βペプチドである。
【0020】
本発明の実施において、アミロイド形成の抑制に関して使用される用語「化合物」は、「薬学的に又は生物学的に活性な物質」と同等であり、即ち、前記用語は、低分子量(典型的には、1,000ダルトン未満)の有機化合物;合成物であれ天然物であれ、それらから組み立てられたオリゴヌクレオチド、及び一般的に核酸分子を包含するヌクレオチド及びヌクレオシド;限定はされないが、サイトカイン及びホルモンのようなペプチド、及びこれらのペプチド断片;有機高分子;並びに抗体、及び抗体の断片又は抗体ドメインをモデルとした及び/又は1つ若しくはそれ以上の抗体様機能を有する、合成タンパク質又はペプチド;を包含する。
【0021】
それ故に、本発明の実施において有用な化合物は、以下を包含する:
(1)ジブチルcAMP、及び8−ブロモcAMPのような細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)のレベルを増加させる化合物;又は潜在的なcAMP自体;
(2)限定されないが、PDE4、PDE7及びPDE10のようなホスホジエステラーゼ種又は基の例を包含する、細胞内cAMP特異的ホスホジエステラーゼの加水分解作用を阻害する化合物;
(3A)脳ミクログリア細胞の細胞表面受容体と、正に相互作用する化合物(換言すれば、作動薬)であって、天然のリガンド又は作動化合物による受容体の活性化が、直接的に又は間接的に、細胞内cAMPの上昇をもたらす化合物。例としては、E2受容体で作用する(天然のリガンドとして)プロスタグランジンE2が挙げられ、そしてE2受容体のサブタイプEP1、EP2及びEP4、最も好ましくはEP2及びEP4に結合する作動薬が挙げられ、その例はブタプロストである;
(3B)なお更なる、区分(3)の付加的例は、アルブテロール、テルブタリン、メタプロテレノール、及びノルエピネフリン(β2に選択的ではないが)のような、(ノル)アドレナリンβ2受容体で作動薬として作用する化合物である;そして
(4)受容体と相互作用を行う医薬物質であってこの受容体の活性化が、直接的であれば又は間接的であれ細胞内cAMPの減少をもたらすそのような受容体を阻害する(そのような受容体の拮抗薬である)医薬品。この関連で、cAMP及びcGMPの生物学的効果はしばしば相反するもので、cAMP受容体等に対してとられるであろうアプローチと比べて反対に、cGMP受容体(又はcGMP作用性ホスホジエステラーゼ、又はcGNP相互作用タンパク質)に直接的に影響させることも可能で、そして本発明の実施においてなお同等の結果が達成されることはまた当業者によって認識されるところであろう。
更なる化合物のカテゴリーには以下を包含する:
(5)上記したように、cAMP媒介機構を通して作用するであろう又はしないであろう化合物であって、例えば、グルココルチコイド、グルココルチコイド受容体で作用する非グルココルチコイド化合物、及びグルココルチコイド受容体の解離作動薬(「DAGR」、米国特許第6506766号参照)を包含する脳ミクログリア細胞内の核内受容体と正に相互作用する化合物(即ち核内受容体に対する作動薬);及び
(6)上記したように、cAMP媒介機構を通して作用するであろう又はしないであろう化合物の付加的なクラスであって、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)及びTGF−βサイトカインスーパーファミリーのメンバー、及びインターロイキン10受容体、又は他のTh2タイプサイトカイン受容体の作動薬も包含するミクログリア細胞の種々の細胞表面受容体で作用するタンパク質又は化合物を包含する。本発明の実施における有用な例としては、インターロイキン4(IL−4)である。
【0022】
ここで、本発明の実施における「受容体」は、従って、細胞表面巨大分子(典型的には、タンパク質及び糖タンパク質)のみならず、酵素、又は細胞膜若しくはオルガネラの膜内に埋め込まれた酵素、のような細胞内タンパク質であって、本明細書に定義された「化合物」が結合すると、直接的又は間接的に、ミクログリア細胞の状態に変化をもたらすシグナルを生じるものもまた含む。
【0023】
従って、本発明の実施により予防又は治療することができる疾患は、アルツハイマー病;乾癬、ブドウ膜炎及び慢性疼痛のような慢性炎症性疾患;家族性地中海熱;家族性アイルランド熱(familial hibernion fever);長期血液透析;遺伝性非神経障害性アミロイド症;及び家族性アミロイドポリニューロパシー(FAP)、脳アミロイド血管症、及びプリオン媒介疾患を含む他の神経変性疾患;を含む。プリオン媒介疾患は、海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトライスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールー及びアルパース症候群を更に含む。上記疾患の予防及び治療の両者とも、本発明の実施により特に意図されていることを強調しなければならない。アミロイド沈着に対する時間系列はしばしば非常に長いこと、及び神経機能の改善で、たとえ疾患の病態が既に存在していたとしても有益性を提供することができることを考えれば、アミロイドが関与する疾患の予防を達成できること、即ち患者における臨床的に関連した症状の出現を予防できることは、当業者にとって直ちに明らかであろう。同様に、脳におけるミクログリア細胞の表現型に作用することによって、アミロイド関連疾患であると既に診断された疾患の治療が、患者のプロフィルの更なる悪化を予防するだけでなく、健康な成人の神経学的状態に向けた症状の改善を含めて達成することができる。
【0024】
本発明の更なる側面は、それ故に、そのような有用な化合物を検出するために設計されたアッセイ法によって表され、細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する化合物を同定する方法であって、
(a)アミロイド形成ペプチドからアミロイド形成を媒介することができる、少なくとも1つの細胞を調製すること;
(b)前記細胞を、有効量の候補化合物及びアミロイド形成ペプチドと混合すること;
(c)前記混合物を、アミロイド形成が可能になるまで充分な時間インキュベートすること;
(d)アミロイド形成のレベルを測定すること;そして
(e)前記アミロイド形成のレベルを候補化合物の非存在下におけるレベルと比較すること;
の工程を含む方法を含む。
【0025】
本発明は、また、特にミクログリア細胞の作用を修飾することによって、細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する化合物を含有する医薬組成物、及びその製造法を提供するものである。
【0026】
図1A及び図1Bは、ラット初代ミクログリア(primary microglia)によって媒介される、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示する。アミロイド凝集は、チオフラビンSで染色し(明領域は矢印で示される)、ラット初代ミクログリアは、ミクログリアのマーカーOX−42で輪郭を示し、細胞核は、DAPIで染色した(星印で示した)。
図2は、ミクログリアによって媒介された、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示する。(A及びD)ラット初代ミクログリア、(B及びE)ラット初代ニューロン、及び(C及びF)いずれの細胞もなし。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光で染色し(A、B及びCの明領域)、可溶性Aβ(1−42)ペプチドは、Aβペプチドに特異的な抗体4G8で染色した(D、E及びFの明領域)。
図3は、可溶性Aβ(1−42)ペプチドをラット初代ミクログリアに加えたのに続いて、ラット初代ミクログリアによって媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成の時間的経過を図示したものである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(明領域)。
図4は、異なった濃度の可溶性Aβ(1−42)ペプチドを、ラット初代ミクログリアに加えた場合の、ラット初代ミクログリアによって媒介されたアミロイド形成を図示した棒グラフである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(緑色)。
図5A、Bは、(A)種々の型の単球様細胞系統存在下における、及び(B)ラット器官型海馬切片中における、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示したものである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(明領域)。
図6は、(A)未分化胚幹細胞の存在下対(B)マクロファージ分化胚幹細胞の存在下での、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示したものである。アミロイド凝集体はチオフラビンS蛍光(明領域)で染色し、胚幹細胞は、マクロファージ抗体Mac3及び細胞核マーカーDAPIによるバックグランド中で同定した。
図7A、Bは、電子顕微鏡レベルで、ラット初代ミクログリアにおける、(A)クラスリン被覆頭部でしばしば終了する長い細胞質「管」に加えた可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド凝集体の発生(矢印)、及び(B)ラット初代ミクログリアにより媒介される加えられた可溶性Aβ(1−42)ペプチドからの細胞外(星印)及び細胞内(矢印)アミロイド凝集体を図示する。アミロイド凝集体は、電気顕微鏡レベルの分解能で、それらの特徴的な繊維状の外観により同定した。
図8Aは、ラット初代ミクログリアにより媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成の、ジブチリル−cAMP(db−cAMP)阻害を図示する棒グラフである。ミクログリアによるアミロイド形成に対するdb−cAMPの阻害効果は、濃度依存性である。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
図8Bは、ラット初代ミクログリアにより媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成の8−ブロモ−cAMPによる阻害及びミクログリアによって媒介されるアミロイド形成に対する8−ブロモ−cAMPの阻害効果を図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
図9Aは、ラット初代ミクログリアにより媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成に対する、プロスタグランジンEP2サブタイプの相対的阻害効果を図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
図9Bは、プロスタグランジンサブタイプEP2が、ラット初代ミクログリアで細胞内cAMPレベルを増加する相対的な程度を図示する棒グラフである。
図10は、EP2プロスタグランジン受容体の選択的作動薬であるブタプロスト、及びEP3プロスタグランジン受容体の選択的作動薬であるスルプロストンが、ラット初代ミクログリアによって媒介される可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を阻害することを図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
図11は、プロスタグランジンE2受容体の選択的作動薬が、ラット初代ミクログリアによって媒介される可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を阻害することを図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
図12は、種々のホスホジエステラーゼの選択的阻害剤が、ラット初代ミクログリアによって媒介される、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を阻害すること、及び阻害効果が濃度依存性であることを示す棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
【0027】
ミクログリア及びマクロファージ系統の細胞は、乾癬、ブドウ膜炎、I型糖尿病、敗血症性ショック、疼痛、片頭痛、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性大腸炎、ぜんそく、免疫複合体病、多発性硬化症、虚血性脳浮腫、毒素ショック症候群、心不全、潰瘍性大腸炎、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎、パジェット病及び骨粗鬆症、ウイルス感染の炎症性続発後遺症、オキシダント誘発肺損傷、湿疹、急性同種移植片拒絶反応、及び侵襲性微生物に起因する感染症を包含する多くの疾患又は状態、特に多くの炎症性疾患の病理発生に関係している。
【0028】
ミクログリア細胞は、天然のリガンド又は受容体のリガンド結合部位に結合する医薬化合物を受容することができる、多くの受容体、典型的には細胞表面タンパク質を有している。受容体に結合する薬学的活性化合物は、(天然のリガンドと類似の役割を有する)作動薬として、又は(天然のリガンドの機能に拮抗する)拮抗薬として作用するであろうし、そして別の医薬活性化合物及び天然のシグナル伝達分子(小分子量化合物か又は他のタンパク質)もまた、受容体の別の部位、又は隣接する細胞表面巨大分子に結合することができ、生ずるシグナルの性質又は強度のいずれかを調節する。リガンド結合部位ではない、そのような結合部位自体は、しばしば、アロステリック部位と称される。殆どの細胞表面受容体は、膜貫通タンパク質であるか、又は、イオンチャンネルを含む膜貫通タンパク質と結合しているので、リガンドの結合は、通常、膜貫通タンパク質のコンホメーション又は触媒的挙動の変化、特に細胞内部(細胞質)に入っているその部分に関して変化を惹き起こし、それによって細胞内環境における変化の引き金を引く。そのようなイベントは、1つ又はそれ以上の細胞質タンパク質に対する触媒活性の開始、又は更なるシグナル伝達分子の放出であり得る。その性質が本発明の実施に従って有用であるミクログリア細胞表面受容体の例は、以下に考察される。シグナル伝達経路の注目すべきグルーブの一つは、外部のシグナル伝達分子が、ミクログリア細胞の表面受容体に結合したとき、ミクログリア細胞内cAMPのようなサイクリックヌクレオチドの有効濃度を増加又は減少するように命令することができる、多くの生物学的機構を含むものである。別のシグナル伝達経路は、ミクログリア細胞の全般的な挙動に影響するものである。
【0029】
上記のように、本発明は、ミクログリア細胞が、脳の適切な細胞内環境を維持するために、A−βペプチド分子、及び他の蓄積されたタンパク質及びペプチド分子の拡散した沈着を、日常的に処理することの認識に関する。多くの細胞内及び細胞間シグナル伝達経路が、A−βペプチドに対する、及び他の蓄積した又は変性したペプチド及びタンパク質に対するミクログリア細胞の作用に寄与している。本発明は、アルツハイマー病の実際の症状の出現を予防するため、及び一旦医学的に認識し得る症状が発生した疾患を治療するようために、疾患の経過を逆転するため又は症状の重症化を予防するために、脳におけるそれらのシグナル伝達経路に影響を及ぼすことを対象としている。本発明は、それ故に、ミクログリア細胞がアルツハイマー病の病理の一因となるプロセスを変更することを対象としている。
【0030】
A−βペプチド(APPタンパク質にもともと由来する、以下を参照)は、最初は、周辺の神経網(脳細胞)に殆ど悪影響を及ぼさず、認知又は行動に殆ど明白な効果を示さない拡散性非繊維物質として、ヒトの脳に沈着する。しかしながら、通常徐々に沈着して平均20年又はそれ以上の遅延後に、アルツハイマー病は、臨床的に徴候が現れ、周辺の神経網と劇的にコンプロマイズする益々多くのミクログリア積載のアミロイドを含有する沈着物を伴なう。これらの「老人斑」において、アミロイドコアと直接接触するようになった神経細胞突起が膨張し始め、オルガネラ及びリン酸化マイクロフィラメントの両方の異常な蓄積を示す。アミロイド標識剤によって認識されるアミロイドコンホメーションへのA−βペプチドのリフォールディングの防止が、神経機能をコンプロマイズするであろう異常な表現型をとることからの周辺のアミロイド沈着の神経過程を阻止することでなされることがここに開示される。
【0031】
本発明者らが開発した培養モデルは、脳のミクログリア細胞が可溶性A−β(又はA−β非繊維性凝集体)をアミロイドコンホメーションに変換しており、アミロイド斑形成が活性な細胞媒介プロセスであることを示唆するものであることを示している。細胞媒介アミロイド形成の下に敷かれた分子機構は当該技術分野では未知であるが、そのプロセスはおそらくA−βペプチドが相互作用するミクログリアの細胞表面分子の増大した発現が関与するものであると本発明者らは信じている。更に、関与するミクログリア細胞の表現型を参照すると、多くの免疫系マクロファージマーカーの発現は、若い脳では低いかまたは存在しないが、年齢を重ねた脳では増加しており、アルツハイマー病患者の脳ではおびただしいものである。更に、抗原提示、例えば、MHCクラスII糖タンパク質に関連した分子のアルツハイマーの脳での増加した発現は、アミロイド形成ペプチドが結合する「スカフォールド部位」を提供し、これらの結合部位は、A−βペプチドのアミロイド立体構造への望ましくないリフォールディングを促進するものと本発明者らは推論した。従って、本発明の更なる態様は、患者のミクログリア細胞における非適切な表現型を抑制することを含む。
【0032】
また、イン・ビトロ実験に関しては、脳からのミクログリアを培養するプロセスは、免疫抑制分子が、免疫系マクロファージマーカー及び表現型の挙動を低い発現に維持している環境からミクログリアを除くようである。例えば、補体系受容体CR3は、培養ミクログリアによって発現するが(図1で、抗体OX−42によって可視化されている)、しかし健康な脳ではミクログリアに対するこのマーカーの構成的発現は低い。また、正常脳でミクログリアに対する免疫系マーカーの抑制を維持するための候補分子は、ノルエピネフリンである。ノルエピネフリンは、細胞媒介アミロイド形成をブロックするが、本発明者らが追録した効果はβ−2−アドレナリン作動性レセプターに特異的な作動薬を用いる、このレセプターの活性化である。ノルエピネフリンは、文献で、免疫系にTh2の偏り(bias)を促進することが知られており、その効果はまたβ2アドレナリン作動性レセプターにおける作動薬活性に関連している。それ故、アルツハイマー病との関連で、青斑核(LC)の変性を通して脳のノルアドレナリン作動性神経刺激の消失は、顕著な障害であり、ミクログリアにおける、そうでなければアルツハイマー病に冒された脳における、免疫系マーカーの増大した発現の主な原因であり得る。ラット脳におけるLC障害がミクログリア活性化を促進するのはこの結論を支持するものである。従って、適切な表現型に脳ミクログリア細胞を維持することは、アミロイド形成の防止を助長するものである。
【0033】
細胞媒介アミロイド形成が開始する細胞の部位は未知であるが、しかし、電子顕微鏡写真は、細胞膜のクラスリン関連部分がおそらく関与していることを示唆している。これは、ミクログリアに「管」を含有するアミロイドは、しばしば、クラスリン被覆「頭部」で終了するという観察に基づいている。クラスリン被覆ピットは、典型的には細胞のエンドサイテックイベントに関連しているから、本発明者らが明らかにしたプロフィルは、膜からのクラスリン被覆小胞の形成がクラスリン「ピット」でアミロイド形成の播種によって防止され、不成功に終わったエンドサイトーシスを示唆するもので、このイベントは、膜からのアルスリン被覆小胞の「つまみとり(pinching off)」を物理的に阻止し、その結果、細胞の細胞質中に伸長する、長い、膜で囲まれたアミロイド含有管の形成をもたらす。
【0034】
アミロイド形成に起因する又はアミロイド形成を示す疾患又は身体状態を治療又は予防する方法
本発明は、(1)細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)類縁体のようなcAMP、及びcAMP特異的ホスホジエステラーゼの一定の阻害剤のレベルを増加させる化合物、;及び(2)受容体の活性化又は不活性化が細胞内cAMPの上昇をもたらすような受容体と相互作用するプロスタグランジン受容体、及びβ−2(ノル)アドレナリン作動薬受容体のような化合物からなる群から選択された化合物を使用する、アミロイド形成に起因する又はアミロイド形成を示す疾患又は身体状態を治療又は予防する方法を規定するものである。
【0035】
アミロイド形成は、限定はされないが、以下を含む種々の疾患及び身体状態に関わっている:慢性炎症性疾患、家族性地中海熱、家族性アイルランド熱、長期血液透析、遺伝性非神経障害性アミロイド症及びADを包含するある種の神経変性疾患、家族性アミロイドポリニューロパシー(FAP)、脳アミロイド血管症、及びプリオン媒介疾患。プリオン媒介疾患は更に、海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールー及びアルパース症候群を含む。特に、プリオン媒介疾患は、狂牛病としても知られている、ウシ海綿状脳症を包含する。それ故、本発明の一実施態様は、上記の治療又は予防を必要とする対象において、疾患又は身体状態を治療又は予防する方法であって、前記疾患又は身体状態が細胞媒介アミロイド形成を示す又はそれに起因する、ミクログリア又はマクロファージ系統の細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制又は阻害する、少なくとも1つの化合物の有効量を対象に投与することを含む方法である。アミロイド形成ペプチドは、自然発生的に又は細胞媒介プロセスのいずれかによって、凝集してアミロイドを形成するペプチドをいう。
【0036】
本発明の一つの好ましい実施態様は、治療又は予防を必要とする哺乳類において、神経変性疾患を治療又は予防する方法であって、前記哺乳類に、細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法である。なお更に好ましい実施態様は、治療又は予防を必要とする哺乳類、好ましくはヒトにおいて、ADを治療又は予防する方法であって、前記哺乳類に、アミロイド形成を抑制又は阻害する化合物の有効量を投与することを含む方法である。別の好ましい実施態様は、治療又は予防を必要とする哺乳類において、プリオン媒介疾患を治療又は予防する方法であって、前記哺乳類に、細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する少なくとも1つの化合物の有効量を投与することを含む方法である。
【0037】
細胞媒介アミロイド形成に影響する化合物を同定する方法
本発明は、更に、アミロイド形成ペプチドからの細胞媒介アミロイド形成に影響する化合物を同定する方法を記載する。特に、本発明は、細胞媒介アミロイド形成、特にミクログリア又はマクロファージ系統の細胞により媒介されるアミロイド形成を抑制、阻害又は予防する化合物を同定する方法を記載する。これらの方法は、アミロイド形成ペプチドからのアミロイド形成を媒介することができる細胞を候補化合物と接触させること、候補化合物の存在下又は非存在下でアミロイド形成のレベルを比較又は測定することの工程を含む。
【0038】
更に具体的には、本発明は、細胞媒介アミロイド形成を抑制、阻害又は予防する化合物を同定する方法であって、アミロイド形成を媒介することができる、少なくとも1つの細胞を取得すること、前記細胞と、少なくとも1つの候補化合物の有効量及びアミロイド形成ペプチドとを混合すること、混合物をインキュベートすること、アミロイド形成を検出すること、そして前記アミロイド形成のレベルを候補化合物の存在下又は非存在下に比較又は測定することを含む方法を記載する。
【0039】
本明細書に記載された方法は、アミロイド形成ペプチドからのアミロイド形成を促進する又は増加する化合物の同定に使用することもできる。それ故、本発明の別の実施態様は、アミロイド形成ペプチドからの細胞媒介アミロイド形成を促進する又は増加する化合物を同定する方法である。
【0040】
上記の方法は、多数の化合物を同定又は選別するのに使用することもできる。それ故、本発明の別の実施態様において、細胞媒介アミロイド形成に影響する少なくとも1つの化合物を同定するために、多数の化合物が選別される。この方法は、多数の候補化合物を選択すること、各候補化合物をアミロイド形成を媒介する少なくとも1つの細胞と接触させること、そして各候補化合物の存在下及び非存在下でそのような細胞によって媒介されるアミロイド形成のレベルを測定又は比較することを含む。
【0041】
本発明に記載される方法は、多数の化合物について細胞媒介アミロイド形成に影響する能力を比較するための便利なアプローチを提供する。従って、好ましい実施態様は、細胞媒介アミロイド形成を抑制、阻害又は予防する1つ又は多数の化合物を同定するためのハイスループット・スクリーニング・アッセイであって、各候補化合物をアミロイド形成を媒介する細胞と接触させること、細胞媒介アミロイド形成に影響する各候補化合物の能力、特に細胞媒介アミロイド形成を抑制、阻害又は予防するその能力を比較することを含むハイスループット・スクニーニング・アッセイである。更に、より好ましい実施態様は、オートメーション化したハイスループット・スクニーニング・アッセイである。
【0042】
上に記載したように、アミロイド媒介細胞は、イン・ビボ又はイン・ビトロでアミロイド形成に影響することが可能となる種々の細胞を包含する。これらの細胞の例としては、ミクログリア及びマクロファージ系統の細胞、好ましくは哺乳類の脳又は中枢神経系由来のものを包含するが、これらに限定されない。マクロファージ系統の細胞は、更に、マクロファージ分化胚性幹細胞、ミクログリア又はマクロファージ細胞株、腹腔マクロファージ、星状細胞、及び単球を包含するが、これらに限定されない。いくつかの好ましい細胞は、ミクログリア及びマクロファージ分化胚性幹細胞である。
【0043】
本発明のアッセイに使用するために、アミロイド形成を媒介する細胞は、American Tissue Culture Collection(本明細書では、「ATCC」と称する)のような分譲元から商品として入手することができる。或いはまた、ミクログリア及び腹腔マクロファージのような細胞は、それらの天然源から単離又は入手することができる(Whittemore et al., Int. J. Dev. Neurosci. 11: 755-64 (1993); Kluve-Beckerman et al., Am. J. Pathol. 155: 123-133 (1999)を参照)。例えば、細胞は、好ましくは哺乳類又は鳥類であってもよい、動物の組織又は器官、好ましくは脳及び中枢神経系から単離することができる。そのようにして得られた細胞は、この分野で日常的に実施されているイン・ビトロ組織培養を介して増殖及び収穫することができる(Bernice M. Martin, Tissue Culture Techniques (Birkhauser Verlag AG, 1994)を参照)。
【0044】
本明細書に記載された細胞は、単離することができ、又はイン・ビボ、例えば、動物中に存在することができる。単離された細胞は、純粋な形態であることもでき、他の成分と混合されていてもよい。一つの実施態様は、動物から得られる、又は好ましくは哺乳類の脳から得られる、単離された組織若しくは器官、又はそのような組織若しくは器官の断片若しくは部分に含有されている細胞である。
【0045】
細胞に加えて、本発明は、細胞媒介アミロイド形成に影響する化合物を同定するために、組織又は器官の断片又は部分を使用してもよい。好ましくは、そのような組織若しくは器官の断片、断片の一部、又は一部は、そのような組織又は器官がアミロイド形成を媒介する能力を有する限り哺乳類の脳又は神経系から得られる。そのような組織又は器官の例としては、哺乳類からの脳の切片であるが、これに限定されない。
【0046】
本発明の実施における使用のために、好ましいペプチドは、「Aβペプチド」として知られるアミロイド前駆体タンパク質(「APP」)に由来するものである(Small et al., Ann. N Y Acad Sci. 695:169-74 (1993)を参照)。Aβペプチドは、変異体が細胞媒介アミロイド形成に影響しない限りそれらが含有するアミノ酸の数において変動し得る。より好ましい実施態様のいくつかは、少なくとも17個のそして43個までのアミノ酸を有するAβペプチドである。より好ましい実施態様は、1−42、1−40又は1−17アミノ酸を有するAβペプチドである。別のアミロイド形成ペプチドは、血清アミロイドAタンパク質(SAA)、プリオンタンパク質、それらの誘導体、及び類似の性質を有する他のペプチドを包含するが、これらに限定されない(Prusiner Crit Rev Biochem Mol Biol. 26: 397-438 (1991); Kluve-Beckerman et al., Biochem Biophys Res Commun 181: 1097-102 (1991)を参照)。
【0047】
更に、アミロイド形成ペプチド中の1つ又はそれ以上のアミノ酸の、他のアミノ酸による、又はそのようなアミノ酸の類縁体又は誘導体による、付加、欠失又は置換は、細胞媒介アミロイド形成プロセスと干渉しないかぎり、かかる付加、欠失又は置換がなされていてもよい。Aβペプチドについて、1つ又はそれ以上のアミノ酸が欠失してもよく、又は非天然アミノ酸であるが、好ましくは類似の性質を有するアミノ酸を包含する他のアミノ酸によって置換されていてもよい。このペプチド中の一定のアミノ酸は、そのようなアミノ酸をこれらに限定するものではないが、蛍光マーカー、抗体結合に特異的なマーカー、特異親和性を有する配列、放射性物質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質及びその他の適切なマーカーを包含する標識剤で共有結合することによって標識されていてもよい。
【0048】
アミロイド形成ペプチドは、Americal Peptides of Sunnyvale, CAのような発売元を含む種々の公知の供給源から入手することができる。アミロイド形成ペプチドは、この分野において日常的に実施されている方法を用いて化学的に合成することができる(例えば、Stewart et al. Solid Phase Peptide Synthesis (Pierce Chemical Co 1984)を参照)。それらは、細菌、酵母又は哺乳類発現系のような、発現系の使用により得ることもできる(例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning (Cold Spring Harbor Press 1989)を参照;また、 Kluve-Beckerman et al., Am. J. Pathol. 155: 123-133 (1999)を参照)。それらはまた、ペプチドを得るためにこの分野において日常的に採用されている標準的方法を使用して単離及び精製することによって、天然源から得ることもできる(例えば、Scopes et al. Protein Purification Principles and Practices (1996)を参照)。例えば、アミロイド形成ペプチドは、平滑筋細胞、好ましくは血管平滑筋細胞のような別の細胞によって生産してもよい。従って、本発明に記載されたアミロイド形成ペプチドは、アミロイド形成ペプチドを産生し、分泌することができる平滑筋細胞のような、第二の型の細胞の存在下において記載されたアッセイを実行することによって入手してもよい。好ましい実施態様において、平滑筋細胞は、脳から得られた又は脳に由来の血管平滑筋細胞である。
【0049】
アミロイドは、限定しないが、顕微鏡、標識剤及び当業者によく知られた他の技術を含む種々の方法によって検出することができる。アミロイド用の標識剤は、アミロイドを印づける又は標識する1つ又はそれ以上の化学物質である。好ましくは、そのような標識剤は、アミロイド形成を定量的に測定するのに使用することができる。標識剤は、アミロイド形成ペプチド又はそれらの誘導体に対するポリクローナル又はモノクローナル抗体、標識抗体、チオフラビンS及びコンゴーレッドを含むことができるが、これらに限定されない。また、他の標識剤は、限定しないが、アミロイド凝集体に特異的な抗体を包含する、本発明における使用のために入手されるものである(Miller et al., Biochemistry 42: 11682-11692 (2003); O'Nuallain and Wetzl, PNAS 99:1485-1490 (2002)を参照)。アミロイド形成用の好ましい標識剤は、チオフラビンSである。他の方法をアミロイド形成の検出又は測定に使用してもよい。これらの方法は、限定しないが、X線回折及び結晶化(米国特許第6,600,017号に記載されているように)、及び原子間力顕微鏡、光化学架橋、電子顕微鏡、円偏光二色性、質量分析、準弾性光散乱、イン・ビボでの斑のMRI、及びチオフラビン色素多光子顕微鏡のイン・ビボ画像処理を含む。
【実施例】
【0050】
〔実施例1〕
ラット初代ミクログリアの調製
ラット脳初代ミクログリアを得るために、1〜3日令又は新生Sprague-Dawleyラットを使用した。これらのラットは、大きなはさみで断頭した。頭部をDulbeccoリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)(Sigma, St. Louis, MO (catalog No. D8537)より入手)に保存し、150mmの皿に置いた。頭部を切開し、脳を露出し、鉗子で取り出し、新しく調製したDPBSに貯蔵した。
【0051】
新しく調製したラット脳の両脳半球から髄膜を除去した。小脳及び脳幹も除去した。一旦脳から髄膜を除去した後、残りの脳半球をDPBSに保存し、100mmの皿(Corning, Inc., Corning, NYから入手)に置いた。残りの脳半球は、滅菌した手術用メスの刃又は滅菌片刃カミソリで細かく切った。10mg/mlのトリプシン原液(Sigma, St. Louis, MO (catalog No. T-7309)より入手)(1ml)を細分化した脳試料に加えた。混合物を37℃インキュベーターで15分間インキュベートした。インキュベートした後、1mg/mlのDNAse(1ml)を混合物に加え、この混合物を、およそ1分間、混合物が均一にそして塊がなくなるまで摩砕した。
【0052】
前記混合物を50mlチューブに移し、10%のウシ胎仔血清、0.1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び200mMのL−グルタミンを加えた、Dulbeccos改変Eagle培地(DMEM)(Carlsbad Invitrogen, CAから入手(カタログNo. 1195-065))を混合物に加え、総容積を50mlとした。混合物をDMEMで希釈して、混合物の最終濃度を、混合物50ml当たりおよそ1ラット脳とした。希釈した混合物を、1フラスコ当たり50mlとなるよう培養フラスコに入れた。混合物を、酸素95%及び炭酸ガス5%で37℃にてインキュベートした。24時間後、培地を新鮮培地50mlと交換し、非接着細胞を捨てた。フラスコを、酸素95%及び炭酸ガス5%の、37℃インキュベーターに置いた。培地を、約1週間インキュベートした後、再び置換した。
【0053】
およそ10日後、ミクログリアがグリア細胞層に付着しており、そして培地中に浮遊しているのが観察された。ミクログリアを収穫するために、フラスコのキャップとネックをパラフィルムできつく包み、フラスコを、4時間から一夜、37℃でシェーカー・インキュベーターに置いた。インキュベートした後、ミクログリアを遠心分離により集めた。
【0054】
更にミクログリアを収穫するため、10%のウシ胎仔血清、0.1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び200mMのL−グルタミンを加えた、新鮮なDMEMをフラスコに加え、フラスコを、酸素95%及び炭酸ガス5%の、37℃インキュベーターに再び置いた。ミクログリアを、3週間まで毎週、上記のようにして収穫した。
【0055】
〔実施例2〕
マウス腹腔マクロファージの調製
マウス腹腔マクロファージを得るため、マウスに6%カゼイン(Sigma, St. Louis, MO (catalog No. C8654)より入手)(1ml)を静注した。注射後4日目に、マウスをCO2で窒息死させ、それらの胃を70%エタノールで洗滌した。腹部基底部で切開を行い、皮膚を腹部領域から取り除いた。各マウスに、1%FBS混合滅菌DPBS(15ml)を腹腔内で注射し、注射した培地をゆるやかに混合した。液体を、10ml注射器を使用して除き、氷上に貯蔵した。液体試料を集め、1,000rpmで5分間遠心分離した。ペレットをマクロファージ無血清培地(MSFM、Carlsbad Invitrogen, CAから入手)に再懸濁し、96ウエル黒色/透明プレートに、1ウエル当たり200,000細胞濃度で入れた。細胞を、マクロファージがプレートに付着するように、4〜5時間インキュベートした。培地を更なるインキュベーション及び収穫のため時々交換した。
【0056】
〔実施例3〕
ヒト単球の調製
ヒト単球を調製するために、血液(100ml)を、ヘパリン(30単位/ml)(1.5ml)含有注射器を使用して、ドナーから集めた。血液を、マクロファージ無血清培地(MSFM、Carlsbad Invitrogen, CAから入手、カタログNo.12065)(0.1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有)(20ml)で希釈した。希釈血液(30ml)を、リンパ球分離培地(LSM)(ICN Biomedical Inc. of Costa Mesa, CAから入手)(15ml)上に置いた。30分間、1,400rpm、室温で遠心分離した後には、単核層は、プラズマficoll/hypaqueインターフェースにあった。
【0057】
上層の大部分を、その単層を乱さないようにして減圧で除去した。次いで単層を取り出し、LSM(15ml)を含有する50ml円錐管に入れた。全ての層を除去した後、最終容積を50mlに調節した。管を、8分間、1,400rpmで遠心分離し、上清を除去した。次いで細胞をMSFMに懸濁し、2回洗滌した。細胞ペレットをMSFM(10ml)に懸濁し、細胞を血球計算板で数えた。次いで、細胞を約200,000細胞/ウエルの濃度となるように、96ウエル黒色/透明プレートに入れた。2時間インキュベートした後、上清を除去し、細胞をMSFM(100μl)で再び洗滌し、非接着細胞を取り除いた。
【0058】
〔実施例4〕
胚性幹細胞由来のマクロファージ/ミクログリアの調製
胚性幹(ES)細胞由来のマクロファージ/ミクログリアを調製するため、以下を含む4つのマウスES細胞株を使用した。(i)Roach et al., Exp. Cell Res. 221: 520-525 (1995)に記載の方法に従って調製したDBA/1 Lac J近交系マウス系統由来のマウスDBA−252ES細胞;(ii)Trebino et al., PNAS 100: 9044-9049 (2003) に記載の方法に従った、DBA−252ES細胞でPGES−1遺伝子を欠失している標的ホモ接合変異を有するマウスDBA−PGES1−22F細胞株;(iii)Allen et al., J. Exp. Med. 191: 859-70 (2000)に記載の、DBA−252ES細胞でp38遺伝子を欠失している標的ホモ接合変異を有するマウスDBA−p38−C69細胞株;及び(iv)Mortensen et al., Mol. Cell. Biol. 12: 2391-2395 (1992)に記載された、βラクタマーゼ遺伝子により置換されたIL−10遺伝子のホモ接合変異を有するDBA−IL10−75PES細胞株。
【0059】
細胞を、マイトマイシンCで処理した初代胎児線維芽細胞(PEF)上においた。前記細胞を、ES細胞専用の15%のウシ胎仔血清(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 10430-024)から入手)、0.1mMの2−メルカプトエタノール、0.2mMのL−グルタミン、0.1mMの非必須アミノ酸MEM(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 11140-050)から入手)、1,000u/mlの組換えネズミ白血病抑制因子(LIF、Chemicon of Temecula, CA (カタログNo. ESG-1107)から入手)、及び50μg/mlのゲンタマイシンを補った、ノックアウトD−MEM(Invitrogen Life Technologies Inc. of Carisbad, CA (カタログNo. 10829-018)から入手した)を含有する幹細胞培地(SCML)中に保持した。
【0060】
標的ES細胞株を得るために、1.5×107DBA−252ES細胞を400μlのSCMLに懸濁し、線状にした25μgのPGESノックアウト標的ベクターとBTS Electro Cell Manipulator 600を用いて電気穿孔を行った。電気穿孔を行った後、細胞をSCMLに懸濁し、マイトマイシンC処理PEF支持細胞層上に塗布した。電気穿孔を行った24時間後に、175μg/mlのG418(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 10131-035)から入手)及び2μMのガンシクロビルをSCMLに加えた。7〜9日後、G418耐性コロニーをとり、24ウエル組織培養皿の個々のウエルに塗布し、クローン性ES細胞株に広げた。相同的組み換えを含有する形質転換ES細胞選択株をサザン分析により同定した。
【0061】
マクロファージ/ミクログリアを作成するために、ES細胞株をPEF支持細胞層から除き、ES細胞専用の15%のウシ胎仔血清(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 10430-024)から入手)、0.1mMの2−メルカプトエタノール、0.2mMのL−グルタミン、0.1mMの非必須アミノ酸MEM(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 11140-050)から入手)、1,000u/mlの組換えネズミ白血病抑制因子(LIF、Chemiconから入手)、及び50μg/mlのゲンタマイシンを補った、基本培地IscoveのMDM(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 31980-030)から入手)、を含有した、I−SCMLの2日間ゼラチン被覆した組織培養皿に塗布した。塗布したES細胞を、懸濁液で6日間増殖させ、細胞集合体(胚様体(EB)として知られる)を形成させた。
【0062】
EBを分離し、10%のFBS、5%のPFHM−II(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 12040-093)から入手)、2mMのL−グルタミン、3ng/mlのM−CSF(R&D Systems, Minneapolis, MN (カタログNo. 416-ML-050)から入手)、1ng/mlのIL−3(R&D Systems(カタログNo. 403-ML-010)から入手)、及び50μg/mlのゲンタマイシンを補った、上記の基本培地IscoveのMDMを含有した、MacI培地の組織培養皿に塗布した。細胞集団が集密的になったとき、マクロファージ前駆体を、第14日目から第30日目まで、一日おきに非付着塊として収穫した。
【0063】
マクロファージ前駆体の非付着塊を遠心分離により培地から収穫した。細胞ペレットを、10%のFBS、5%のPFHM−II(Invitrogen Life Technologies Inc. (カタログNo. 12040-093)から入手)、2mMのL−グルタミン、3ng/mlのM−CSF、及び50μg/mlのゲンタマイシンを補った、基本培地IscoveのMDMを含有するMacII培地に再懸濁した。FACSアッセイを使用して、Mac3+及びF4/80+を80%又はそれ以上有する細胞を収穫し、MacII培地の組織培養皿又はマルチウエルディッシュに塗布し、さらなる分析のために5〜7日成熟させた。
【0064】
〔実施例5〕
ラット器官型海馬切片の調製
10から12日令、新生ラットを、海馬切片の組織ドナーとして使用した。切片を、Stoppini et al., J. Neurosci. Methods 37: 173-182 (1991)に記載の界面法を使用して培養した。切片を約400μにカットし、室温にて60分又はそれ以上、0.4μ細胞培養インサートに取り付ける前に、インキュベートした。切片を、0.5%のグルコース、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、及び1.5%のファンギゾン(登録商標)(GibcoBRL, Rockville, MDから入手)を含有するGeyの溶液で、pH7.2にてインキュベートした。切片は、フィルター当たり6個、培養プレート当たり6フィルター置いた。培養皿を、最小必須培地(MEM)(GibcoBRL of Rockville, MD (カタログNo. 12360)より入手)(1cc)、グルタミン(50cc)、ウマ血清(GibcoBRL of Rockville, MD (カタログNo. 26050-088)より入手)(25cc)、ハンクスBSS(25cc)、0.5%のグルコース、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、及びファンギゾン(登録商標)(これは1週間後には中止)を満たした。支持培地を24時間後に交換し、その後1週間に2回変えた。実験培地は、グルタミン含有無血清MEM、ハンクスBSS、0.5%のグルコース、及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び2μMのヨウ化プロピジウムである。実験は、最低2週間培養した切片で行った。全ての切片は、Zeiss倒立顕微鏡及びローダミンフィルターで予備実験的に蛍光について試験した。蛍光切片を含有していたウエルは破棄した。全ての切片を使用前に最低2週間培養した。画像をデジタルカメラ及びPCを使用して捕捉し、評価するために保存した。画像を平均蛍光について評価した。興奮毒及び拮抗薬を、ハンクスBSSを媒体として用いてlow I volumesで実験的インキュベーション培地に加えた。
【0065】
〔実施例6〕
ミクログリア促進アミロイド形成アッセイ
以下のアッセイ、及び本発明の実施において有用な別のアッセイは、発症機序に関係なく、アミロイド形成プロセスに対してミクログリア細胞の効果を妨げる、又は修飾する化合物を検出するのに有用である。従って、本発明の実施は、ミクログリア細胞がA−βペプチドに対して作用する発症機序に関する理論について限定されることはなく、そして有用な化合物は、機序に関し限定されることなく、本発明の医学的実施のために選択することができる。
【0066】
実施例1に記載したようにして調製された初代ラット脳ミクログリアを、1ウエル当たり2×105細胞の濃度でFalcon黒色/透明96ウエルプレートに塗布した。ミクログリアを、37℃で、数時間から一夜インキュベートした後、細胞壁に付着させた。10%のウシ胎仔血清、0.1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び200mMのL−グルタミンを有する新鮮なDMEMを古培地と交換するのに使用し、細胞を穏やかに洗滌して破片及び死細胞を除去した。
【0067】
細胞を、候補化合物で、1ウエル当たり化合物100μMの濃度で、1時間前に処理した(前処理工程は任意)。前処理後、候補化合物及びAβ(1−42)ペプチドを、前処理細胞に加えた。Aβ(1−42)ペプチドの最終濃度は10μMであった。対照として、1試料には、Aβ(1−42)ペプチドのみ濃度10μMで、そして別の試料は、培地だけであった。各ウエルの最終容量は、約100μM/ウエルであった。
【0068】
Aβ(1−42)ペプチド及びAβ(1−40)ペプチド(American Peptides of Sunnyvale, CAから入手)を−20℃で保存した。使用前に、Aβ(1−42)ペプチドを、室温に15分間温めた。Aβ(1−42)ペプチドを溶解するため、滅菌水(200μl)をペプチドに加えた。ペプチドの各試料を、ペプチドを溶解するためボルテックスした。次いで、各試料を、MSFM(19ml)で希釈した。Aβ(1−42)ペプチドの最終濃度は10μMであった。
【0069】
ラット脳初代ミクログリア、Aβ(1−42)ペプチド、及び候補化合物の混合物を、37℃にて24時間インキュベートした。インキュベートした後、ミクログリアを、直接培地中に注いだエタノール95%及び酢酸5%の混合物(100μl)で固定し、次いで5分間インキュベートした。培地を流し出し、別の新鮮な固定液(エタノール95%及び酢酸5%含有)(100μl)をミクログリアに10分間加えた。
【0070】
固定細胞を、チオフラビンS溶液(Sigma of St Louis, MOから入手)(100μl)で、およそ3〜5分間染色した。チオフラビンS溶液は、40%エタノール中0.125mg/mlで、使用前に#1Whatman濾紙で濾過した。
【0071】
細胞を、70%エタノール(100μl)で、5分ずつ、2回洗滌した。洗浄後、細胞を、蛍光顕微鏡下で、FITCフィルターを使用して調べた。各ウエルについて、3画像を集め、画像をZeiss Axiovert 100Mを用い、対物10×で、デジタルCCDカメラを使用し、MicroMax(Roper Instruments of Tuscon, AZから入手)を使用して捕捉した。各処理条件は、1ウエル当たり採集した3画像で、3連で行い、まばらな細胞増殖及び破片の領域は除外した。比蛍光強度を測定した。
【0072】
上記アッセイ(及び本明細書に記載した全ての他のアッセイ)の操作に関連して、読者は、リガンドの受容体への結合の結果を検出することに関与する殆どのアッセイが、関与する成分の性質に依存して、(例えば、(1)成分の不安定性又は可溶性、又は(2)全細胞が使用されるのか、それとも膜断片のみが使用されるのか、又は(3)96ウエルプレートのような、アッセイの物理的支援が行われるのかどうか、そして、それはどのように行われるのか、また結合及び結合媒介イベントの両方を、全て乃至は大部分効率的に検出することが、オートマチックに、又はハイスループットモードで行われるのかどうか、そしてそれはどのように行われるのか、を考慮して)多くのモードで行われ得ることに直ちに気づくであろう。従って、本発明のアッセイが、直接結合アッセイとしてではなく、競合アッセイとして、例えば、先ず阻害化合物を結合させ、次いで、例えば、天然のリガンド又はアゴニスト化合物によりその標的を競合的に外すアッセイとして行うことがより効果的であり得る。アッセイを実行することができる典型的なモードは、以下に記載される。
【0073】
更に、本実施例はチオフラビンS蛍光体の繊維状タンパク質配列に対するよく知られた反応を採用しているが、アミロイド沈着の独特の物理的性質は、X線回折及び結晶化、及び原子間力顕微鏡、光化学架橋、電子顕微鏡、円偏光二色性、質量分析法、準弾性光散乱、イン・ビボでの斑のMRI、及びチオフラビン色素多光子顕微鏡のイン・ビボでのイメージング、のような化学的技術及び物理的技術を含む多くの別の手段を経て検出及び定量することができる。更に、チオフラビンに加えて、代わりの色素及びその他の発色団も、当技術分野でよく知られた偏光コンゴーレッド等のように、使用することができる。
【0074】
〔実施例7〕
ミクログリア媒介アミロイド形成の可視化
ラット脳初代ミクログリアを実施例1に記載のプロトコールに従って調製した。そのようにして調製されたミクログリアを、実施例6に記載した方法に従ってミクログリアによって媒介されるアミロイド形成の効果を測定するために使用した。
【0075】
結果を図1に示す。図1のパネルAは、比較的低密度でのミクログリアの存在下に、Aβ(1−42)ペプチドの18時間インキュベーション後のアミロイド形成を表す。パネルAは、チオフラビンS陽性アミロイド沈着の存在を示す。これらの沈着は、細胞外チオフラビンS陽性物質が同様に観察されたものの(矢じり型で示された明物質)、優先的に、ミクログリア(矢印で示す明構造体)内、又はミクログリアと密接に関連して形成した。OX−42を、ミクログリアの輪郭を示すためにバックグランドマーカーとして使用した。OX−42は、CR3抗原を認識するミクログリア/マクロファージマーカーであり、Abcam Ltd of Cambridge, UKから入手した。ミクログリアの核は、核染色DAP(星印でマークした)で同定した。
【0076】
図1のパネルBは、単一ミクログリア細胞を表示し、ミクログリア細胞内及び周辺にチオフラビンSで染色された(矢印で強調されている)かすかな、伸びたアミロイド形成の存在を表示している。図1のパネルBは、ミクログリア細胞の内部及び周辺でのアミロイド形成を示しており、ミクログリア細胞により媒介されたアミロイド形成の典型的なパターンを示している。
【0077】
〔実施例8〕
細胞媒介されるアミロイド形成と自然発生アミロイド形成の差
本実施例では、細胞媒介されるアミロイド形成を、自然発生アミロイド形成と比較した。条件は既に確立されていて、その条件下では、アミロイド形成ペプチドのアミロイドコンホメーションへの自然変換がイン・ビトロで起こった。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載の方法に従って調製した。ミクログリア媒介アミロイド形成を実施例6に記載の方法を用いて測定した。更に、アミロイド形成を、どのようなミクログリアも非存在下で、又はニューロン、非マクロファージ系統の細胞の存在下で、測定した。Aβ(1−42)ペプチドをアミロイド形成の測定に使用した。
【0078】
パネルA〜Fは、細胞の存在下又は非存在下に、18時間、MSFM培地で培養した新しく可溶化したAβ(1−42)ペプチドを示す。試料を、2つのマーカーで固定し、可視化した。チオフラビンSを、アミロイドコンホメーション内にAβ(1−42)を標識するのに使用し(パネルA〜C)、抗体4G8を、アミロイド又は非アミロイドコンホメーションのいずれかの沈澱Aβ(1−42)ペプチドを標識するのに使用した(パネルD〜F)。
【0079】
図2において、パネルAの明領域は、ミクログリア存在下でのアミロイド形成を図示している。パネルDでの明領域の存在は、Aβ(1−42)ペプチドが溶液から沈殿し、続いて4G8抗体で標識され得たことを示している。この沈殿Aβ(1−42)ペプチドは、次いで、ミクログリアによって媒介されるプロセスでアミロイド(パネルAでチオフラビンSにより標識された)に広範囲に変換された。培養されたミクログリアよりもむしろ培養されたニューロンが、図2パネルB及びEで、可溶性Aβ(1−42)ペプチドとインキュベートされた。パネルEは、添加したAβ(1−42)ペプチドも培養したニューロンの存在下で溶液外に沈殿することを示している。しかし、パネルBは、より低いチオフラビンSの標識化で判断して培養したニューロンの存在下では、Aβ(1−42)ペプチドのアミロイドへの変換はより少なかったことを示している。図2は、ミクログリアが、アミロイド形成の媒介又は促進に重要な役割を演じていること、細胞媒介アミロイド形成は、全ての細胞について同様な様式で起こるものではないことを示している。
【0080】
別の試料は、どのような細胞もなしに、Aβ(1−42)ペプチドを含有していた。結果を図2のパネルC及びFに示す。抗体4G8は、いずれの細胞も非存在下で、Aβ(1−42)ペプチドが溶液外へ沈殿することを実証している(パネルF)。これらのAβ(1−42)ペプチドが10μMで溶液から沈殿した後、プラスチック上に沈着し、固定され、抗体4G8で染色することができた。しかし、図2のパネルCに示すように、何れの細胞も非存在下での自然のアミロイド形成の程度は、同じ条件下でのミクログリアの存在下でのアミロイド形成(パネルA)と比較すると極く少なかった。
【0081】
〔実施例9〕
ミクログリア媒介アミロイド形成の時点
アミロイド形成に必要な時間を試験するため、10μM濃度のAβ(1−42)ペプチド及びラット初代ミクログリアを使用した。ラット初代ミクログリアは、実施例1に記載の方法に従って得られた。アッセイ条件は、実施例6に記載の通りであった。各時点用として、試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合したミクログリアを含有して調製した。試料を、4、8時間から最大22時間インキュベートした後の異なった時点で採取した。図3に示すように、10μMのAβ(1−42)ペプチドの存在下で、チオフラビンS染色によって示されるように、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成は出現し始め、インキュベーション8時間後にはより急速に進展し、22時間のインキュベーション後、最大レベルに達した。
【0082】
〔実施例10〕
ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成に対するAβ(1−42)ペプチド濃度の効果
ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を、種々の濃度のAβ(1−42)ペプチドを用いて試験した。ラット初代ミクログリアを、実施例1に記載の方法に従って調製した。アッセイは、いずれの候補化合物も使用せず、前処理の工程なしに、実施例6に記載した方法に従って実行した。種々の濃度のAβ(1−42)ペプチドをミクログリアに加え、37℃で18時間インキュベートした。細胞を固定し、チオフラビンSで染色した。図4に示すように、アミロイド形成のレベルは、チオフラビンS蛍光シグナルによって示されるように、Aβ(1−42)ペプチドの濃度の増加と共に増加した。
【0083】
〔実施例11〕
マクロファージ系統の種々の細胞によって媒介されるアミロイド形成
アミロイド形成が、マクロファージ系統の種々の細胞によって媒介されることが示された。試験した細胞は、実施例1に記載の方法を使用して調製したラット初代ミクログリア、実施例2に記載の方法を使用して調製したマウス初代腹腔マクロファージ、ヒトミクログリア細胞株SVC4、実施例3に記載の方法に従って得られたヒト初代血中単球、Blasi et al., J. Neuroimmunol. 27:229-37 (1990)に記載の方法に従って得られたマウスミクログリアBV2細胞株、及びマクロファージ分化マウス幹細胞を含んだ。アッセイ条件は、候補化合物を使用しなかったこと、及び細胞の前処理を行わなかったことを除き、実施例6に記載された通りであった。細胞を、Aβ(1−42)ペプチドと、10μMの濃度で混合し、37℃にて一夜インキュベートした。チオフラビンS染色(明標識)を、アミロイド形成を示すために使用した。図5Aに示すように、試験した細胞の各型は、アミロイド形成を媒介することができた。
【0084】
また、細胞媒介アミロイド形成を、ラット器官型海馬切片を使用して測定した。ラット器官型海馬切片は、実施例5に記載の方法に従って調製した。細胞媒介アミロイド形成を実施例6に記載の方法に従って、候補化合物を使用しないで、アッセイした。ラット器官型海馬切片を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、37℃で一夜インキュベートした。アミロイド形成を、チオフラビンS染色で測定した。図5Bに示したように、ラット器官型海馬切片は、アミロイド形成を、特に切片の周辺のミクログリアの豊富な領域で促進した。
【0085】
また、細胞媒介アミロイド形成を、分化した及び未分化の胚性幹細胞を使用して測定した。胚性幹細胞(ES細胞)は、上記実施例4に記載したようにして得られた。細胞媒介アミロイド形成を、候補化合物を使用しないで、そして前処理工程をしないで、実施例6に記載の方法に従ってアッセイした。分化した及び未分化のES細胞を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合した。各混合物を、37℃で一夜インキュベートした。アミロイド形成を、チオフラビンS染色によって測定した。図6に示すように、マクロファージ分化ES細胞は、アミロイド形成を促進した。未分化ES細胞によって媒介されるアミロイド形成のレベルは、よりはるかに低かった。
【0086】
〔実施例12〕
細胞媒介アミロイド凝集体の性質
ラット初代ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を、超微細構造レベルで試験した。ラット初代ミクログリアを、実施例1に記載の方法に従って調製した。ラット初代ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を、候補化合物の使用及び候補化合物での前処理工程無しで、実施例6に記載の方法に従って行った。ラット初代ミクログリア及びAβ(1−42)ペプチドを、濃度10μMで、37℃で18時間インキュベートした。試料を透過電子顕微鏡を使用して試験した。
【0087】
図7A及び7Bに示すように、ラット初代ミクログリアの存在下で、Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド原線維が細胞外(星印)及び細胞内(矢印)切片の両方で形成され観察された。更に、これらの電子顕微鏡写真は、AD脳、及びアミロイド前駆体タンパク質を過剰発現したトランスジェニック動物の脳の両方に形成する老人斑に存在するアミロイド含有膜包み込み構造を連想させる、ミクログリア細胞質全体のアミロイド含有「管」のネットワークの存在を示していた。図7A及び7Bに描かれた電子顕微鏡写真における原線維構造の存在は、原線維アミロイドがミクログリア及びマクロファージの存在下で生成されつつある光学顕微鏡像(例えば、図1)におけるチオフラビンS染色の存在を裏付けている。
【0088】
〔実施例13〕
細胞内cAMPのエンハンサーによるミクログリア媒介アミロイド形成の阻害
実施例6に記載の方法を使用して、細胞媒介アミロイド形成に対するcAMP及びその類縁体の効果を試験した。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載の方法を使用して調製した。ラット初代ミクログリアの一試料を、8〜80μMの濃度のジブチル−cAMP(db−cAMP)で処理し、そしてラット初代ミクログリアの別の試料を、25〜250μMの濃度の8−ブロモ−cAMP(8−Br cAMP)で処理し、これらの処理は、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチドを加える1時間前に開始した。陽性対照として、前処理なしのミクログリアを含有する試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、基準線対照として、第2の試料に、Aβ(1−42)ペプチドなしのミクログリアを含有させた。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色によって測定した。
【0089】
図8Aに示すように、db−cAMPは、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を阻害した。図8Bに示すように、8−ブロモcAMPは、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を阻害した。ミクログリアによって媒介される、アミロイド形成に対するdb−cAMP又は8−ブロモcAMPのいずれの阻害効果も、db−cAMP又は8−ブロモcAMPのレベルが増加するにつれて増加した。ミクログリアの生存能力を、Trevigen Inc. of Gaithersbur, MDによって提供された方法を使用して、テトラゾリウム塩 3、[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム・ブロミド(MTT)反応生成物のレベルを測定することによって定量した。結果は、db−cAMP及び8−ブロモcAMPのどちらも、ミクログリアの生存能力に対して何の作用も有しないこと示した。
【0090】
〔実施例14〕
プロスタグランジンによる細胞媒介アミロイド形成の阻害
実施例6に記載の方法を使用して、細胞媒介アミロイド形成に対するプロスタグランジンの効果を調べた。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載の方法を使用して調製した。プロスタグランジンE2(PEG2)は、Calbiochem LaJolla, CA (カタログNo. 538904)から入手し、チオフラビンS染色によって測定して、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成に影響する能力を試験した。アミロイド形成に対する効果は、2つの異なった濃度、0.32μM及び3.2μMで測定した。
【0091】
PGE2によるアミロイド形成に対する効果を測定するために、ラット初代ミクログリアを、10μMのAβ(1−42)ペプチドを加える1時間前に、プロスタグランジン処理を、濃度0.32μM又は3.2μMで開始した。陽性対照として、前処理なしのミクログリアを含有する試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、そして基準線対照として、第2の試料に、Aβ(1−42)ペプチドなしのミクログリアを含有させた。各混合物を、37℃で18時間インキュベートした。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色により測定した。
【0092】
図9Aに示すように、PGE2は、ラット初代ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を減少させることができた。
【0093】
PGE2によるミクログリアにおける細胞内cAMPのレベルに対する効果も、調べた。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載の方法を使用して調製し、濃度1μMのPGE2に、約20分間曝露した。図9Bに示すように、PGE2は、ミクログリアにおける細胞内cAMPのレベルを有意に増加させた。ミクログリアの生存能力は、ミクログリアにおけるMTT反応生成物を測定することによって調べた。PGE2への曝露は、ミクログリアの生存能力にどのような減少ももたらさなかった。
【0094】
〔実施例15〕
プロスタグランジンE2受容体の作動薬による細胞媒介アミロイド形成の阻害
実施例6に記載の方法を使用して、細胞媒介アミロイド形成に対するプロスタグランジンE2受容体の作動薬の効果を試験した。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載のようにして調製した。ラット初代ミクログリアの一試料を、プロスタグランジンE2受容体EP2サブタイプでの選択的作動薬である、ブタプロストで、32nM〜10μMの濃度で処理し、ラット初代ミクログリアの別の試料を、プロスタグランジンE2受容体EP3サブタイプでの選択的作動薬である、スルプロストンで、32nM〜10μMの濃度で処理した。処理は、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチドを加える1時間前に開始した。陽性対照として、前処理なしのミクログリアを含有する試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、そして基準線対照として、第2の試料に、Aβ(1−42)ペプチドなしのミクログリアを含有させた。各混合物を、37℃で18時間インキュベートした。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色により測定した。
【0095】
図10に示すように、ブタプロストは、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を濃度依存的に阻害した。スルプロストンは、対照的に、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成に対する明確な効果を有さなかった。ミクログリアの生存能力を、Trevigen Inc. of Gaithersbur, MDによって記載された方法を使用する、テトラゾリウム塩 3、[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム・ブロミド(MTT)反応生成物のレベルを測定することによって定量した。結果は、ブタプロスト及びスルプロストンのどちらもミクログリアの生存能力に対する作用を有しないことを示した。
【0096】
実施例2に記載した方法を使用して、細胞媒介アミロイド形成に対するプロスタグランジンE2受容体のいくつかの更なる選択的作動薬の効果を試験した。ラット初代ミクログリアは、実施例1に記載の方法を使用して調製した。ラット初代ミクログリアの試料を、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチドを加える1時間前に、32nM〜10μMの濃度で、ブタプロスト、化合物I又は化合物II、プロスタグランジンE2受容体の選択的作動薬で処理した。陽性対照として、前処理なしのミクログリアを含有する試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、そして基準線対照として、第2の試料に、Aβ(1−42)ペプチドなしのミクログリアを含有させた。各混合物を、37℃で18時間インキュベートした。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色により測定した。
【0097】
図11に示すように、ブタプロスト、化合物I又は化合物IIは、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を濃度依存的に阻害した。ミクログリアの生存能力を、Trevigen Inc. of Gaithersbur, MDによって記載された方法を使用して、テトラゾリウム塩 3、[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム・ブロミド(MTT)反応生成物のレベルを測定することによって定量した。結果は、ブタプロスト及びスルプロストンのどちらもミクログリアの生存能力に対して作用を有しないことを示した。
【0098】
〔実施例16〕
一定のホスホジエステラーゼの阻害剤による細胞媒介アミロイド形成の阻害
実施例6に記載の方法を使用して、細胞媒介アミロイド形成に対するホスホジエステラーゼの阻害剤の効果を試験した。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載のようにして調製した。種々のホスホジエステラーゼ(PDE)の3つの異なった選択的阻害剤を使用した。即ち、これらは、PDE10の阻害剤である、パパベリン(Sigma of St. Louis, MOより入手);PDE7サブタイプa及びサブタイプbの選択的阻害剤である、化合物III(1−[4−(8’−クロロ−2’,3’−ジヒドロ−2’−オキソスピロ[シクロヘキサン−1,4’(1’H)−キナゾリン]−6’−イル)ベンゾイル] −4−メチル−ピペラジン(国際特許出願公開02/076953号及び同02/074754号に記載の方法に従って調製);及び、PDE4サブタイプb及びサブタイプdの選択的阻害剤である、ロリプラム(Sigma Chemical Companyより入手)を含んだ。
ラット初代ミクログリアを、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチドを加える1時間前に、上記のPDE阻害剤で処理した。陽性対照として、前処理なしのミクログリアを含有する試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、そして基準線対照として、第2の試料に、Aβ(1−42)ペプチドなしのミクログリアを含有させた。各混合物を、37℃で18時間インキュベートした。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色により測定した。
各選択的PDE阻害剤に対して、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成に対する効果を20nM〜20μMの範囲の濃度で測定した。図12に示すように、選択的PDE阻害剤の各々は、チオフラビンS染色のレベルの減少によって示されるように、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を阻害した。
【0099】
〔実施例17〕
細胞媒介アミロイド形成の阻害剤の同定
細胞媒介アミロイド形成を阻害する化合物を同定するため、一定の所望の性質を有する候補化合物を選択した。初代ラットミクログリアを、実施例1に記載のようにして調製した。アッセイは、実施例6に記載の方法に従って実行された。初代ラットミクログリアの一部分を、10μMの化合物Aで、37℃で1時間前処理した。前処理後、初代ラットミクログリアを、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチド、及び濃度1pMから1Mの化合物Aと混合した。化合物Aの正確な濃度は、最適の効果を達成するために修正される状態にある。対照として、前処理なしのラット初代ミクログリアの一部分を10μMのAβ(1−42)ペプチド単独と混合し、一方、別の試料は、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチドのみと、0.01μMから1Mに相当する濃度の化合物Aを含有した。各混合物を37℃で18時間インキュベートした。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色により測定した。ミクログリアの生存能力に対する化合物Aの作用も測定した。ミクログリアの生存能力は、ミクログリアによって生成するMTT反応生成物を測定することによって定量した。
【0100】
〔実施例18〕
プロスタグランジンE2受容体サブタイプEP4の選択的作動薬による細胞媒介アミロイド形成の阻害
実施例6に記載の方法を使用して、細胞媒介アミロイド形成に対するプロスタグランジンE2受容体サブタイプEP4の選択的作動薬の効果を試験した。ラット初代ミクログリアを実施例1に記載のようにして調製した。1つ又はそれ以上のプロスタグランジンE2受容体サブタイプEP4の選択的作動薬を、米国特許第6,642,266号及び同第6,552,067号に記載された方法を用いて得た。ラット初代ミクログリアを、濃度10μMのAβ(1−42)ペプチドを加える1時間前に、プロスタグランジンE2受容体サブタイプEP4の選択的作動薬で処理した。陽性対照として、前処理なしのミクログリアを含有する試料を10μMのAβ(1−42)ペプチドと混合し、そして基準線対照として、第2の試料に、Aβ(1−42)ペプチドなしのミクログリアを含有させた。各混合物を、37℃で18時間インキュベートした。各試料のアミロイド形成を、チオフラビンS染色により測定した。
【0101】
〔実施例19〕
細胞媒介アミロイド形成に対する候補化合物の効果
ADに罹患している患者における細胞媒介アミロイド形成に対する、本明細書に記載の方法を用いて同定した候補化合物の効果を定量するために、以下のプロトコールを使用した。
無作為二重盲検プラセボ比較臨床試験を行った。男性及び女性、年齢50才と80才の間で、ADの初期又は中期と診断された、およそ100名の患者を、治験に参画させるために採用した。
患者を、0.1mg/日から1,000mg/日の量の候補化合物、又はプラセボで、12週間、治療するために無作為に割り付けた。無作為化に先だって、米国心理学会の心理学者の倫理原則及び行動規範(APA、1992)に規定された評価ガイドラインを使用して、痴呆について患者を評価した。主要評価項目は、治療群とプラセボ群間の比較である。
【0102】
〔実施例20〕
追加のアッセイ方法及び選択
本明細書に記載されている一次スクリーニングアッセイは、ミクログリア細胞の細胞表面受容体に結合する、及び前記細胞内のcAMPの内部濃度に影響する、又は他の細胞内シグナル伝達効果をもたらす、用語が定義されているような「化合物」を検出するように設計される。結合アッセイにおいて、特定の化合物の効果は、しばしば天然のリガンドのそれと比較され、試験化合物は、たとえ、天然のリガンドによって生成されるようには、産生された効果が強くなくても、作動薬であり得る。以下に詳細に記載するように、そのようなアッセイは、ハイスループット・スクリーニング方法論に適合することができる。
【0103】
結合アッセイは、直接結合アッセイとして又は競合的結合アッセイとしてのいずれかで実行することができる。直接結合アッセイにおいて、試験化合物は、標的受容体へ結合するか、又は標的受容体のリガンドへ結合するかを試験される。他方、競合的結合アッセイは、標的受容体に結合するリガンド又は他の試験化合物と競合する試験化合物の能力をアッセイする。
【0104】
直接結合アッセイにおいて、天然のリガンド又は受容体(又は酵素)は、試験化合物がリガンド又は受容体と結合できるような条件下で試験化合物と接触させる。結合は、溶液内又は固体表面上で行ってもよい。好ましくは、試験化合物は、検出のために前もって標識される。標識のためには、いかなる検出可能なグループを使用してもよく、例えば、限定はされないが、発光体、蛍光体、又は放射性同位体又はそれを含有する基、又は酵素若しくは色素のような非放射性標識体である。結合が起こるのに充分なインキュベーション期間の後に、反応物を、過剰な、又は非特異的な結合試験化合物を除去する条件及び操作に曝す。典型的には、これは、適切なバッファーでの洗滌を含む。最後に、リガンド−試験化合物複合体又は受容体−試験化合物複合体の存在を検出する。
【0105】
競合的結合アッセイにおいては、試験化合物は、リガンドの受容体への結合を崩壊させる又は増強する能力がアッセイされる。標識リガンドは、受容体を発現している細胞と、又は例えばその膜断片と混合してもよく、そしてそれらの間の相互作用が通常起こるはずの条件下、試験化合物を添加して又は添加なしで置かれる。受容体と結合する標識リガンドの量は、試験化合物の存在下又は非存在下で結合する量と比較できる。
【0106】
親和結合アッセイは、固体支持体に固定化されたミクログリア細胞又は膜断片を使用して実行することができる。典型的には、結合反応の非固定化成分が検出可能に標識される。種々の標識方法が、利用可能であり、例えば、発光体、色原体、蛍光体、若しくは放射性同位体又は基の検出、又は酵素若しくは色素のような非同位体標識の検出に使用できる。好ましい一実施態様において、試験化合物は、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC、Sigma Chemicals, St. Louisから入手可能)のような発蛍光団で標識される。次いで、標識試験化合物、又はリガンドプラス試験化合物を、特異的結合を起こさせる条件下で、固体支持体と接触させる。結合反応が起こった後、非結合及び非特異的結合試験化合物は、表面洗滌によって分離される。結合パートナーの固体相への付着は、当業者に公知の種々の方法で達成することができ、それらは、限定はされないが、化学的架橋、プラスチック表面への非特異的接着、固相へ付着した抗体との相互作用、結合パートナー(例えばビオチン)に付着したリガンドと固相に付着したリガンド結合タンパク質(例えばアビジン又はストレプトアビジン)の間の相互作用、その他を含む。
【0107】
最後に、固体表面に残留する標識は、当技術分野で知られたいずれかの検出方法によって検出され得る。例えば、もし試験化合物が発蛍光団で標識されているならば、蛍光光度計が複合体を検出するのに使用できる。
【0108】
標識リガンドは、受容体を発現する細胞と混合してもよく、又は、好ましくはないが、そのような細胞から得られた粗抽出物と混合してもよく、試験化合物を添加することができる。単離された膜を、受容体と相互作用する化合物を同定するために使用してもよい。例えば、単離された膜を使用する典型的な実験においては、細胞を、特定の受容体を過剰発現するように遺伝子操作してもよい。膜は標準的技術によって収穫することができ、イン・ビトロ結合アッセイにおいて使用される。標識リガンド(例えば、125I−標識SLC)は、膜に結合し、比活性がアッセイされ;そして特異的結合が、過剰の非標識(コールド)リガンドの存在下で実行された結合アッセイと比較することによって、定量される。
【0109】
本発明のこの側面の別の特定の実施態様において、固体支持体は、マイクロタイターディッシュについた適切な受容体を含有する膜である。試験化合物、例えば、ライブラリーメンバーを発現する細胞は、マイクロタイターディッシュにおいてライブラリーメンバーの発現を可能にする条件下で培養される。タンパク質(又は核酸若しくは誘導体)に結合するライブラリーメンバーが収穫される。そのような方法は、Parmley & Smith, 1988, Gene 73:305-318; Fowlkes et al., 1992, Bio Techniques 13:422-427; PCT公開WO 94/18318;及び本明細書に引用されている他の文献、に一例として記載されている。
【0110】
更に、受容体へのリガンドの結合は、動物モデルにおいて、無傷細胞でアッセイしてもよい。例えば、標識リガンドが、試験化合物あり又はなしで動物に直接投与される。リガンドの取り込みは、試験化合物の存在下及び非存在下で測定される。これらのアッセイのために、試験化合物が加えられていた宿主細胞は、一過性に、誘導又は構成的に、又は安定的に、受容体及び/又はリガンドを発現するように遺伝子工学処理してもよい。本発明の方法のスクリーニングの目的のために、広範な種類の宿主細胞が、限定されないが、組織培養細胞、哺乳類細胞、酵母細胞及び細菌を含めて、使用することができる。それ故、本発明の結合アッセイは、動態研究及び測定も含む。
【0111】
走化性アッセイもまた一次アッセイとして使用してもよい。ミクログリア受容体と誘引物質の間の相互作用の一生物学的効果は、走化性として知られるプロセスであって、特定の誘引物質に向かって受容体を発現する細胞の方向性のある移動の誘発である。本明細書に記載された走化性アッセイは、受容体と天然のリガンド/誘引物質の相互作用を妨害する化合物を選別するのに使用され得る。そのような走化性アッセイは、ハイスループット・スクリーニング法に適合可能であり、それ故有用な化合物を同定する一次アッセイとして使用することができる。多くの技術が、走化性移動をアッセイするために開発されている(例えば、“Measurement of α and β Chemokines”, in Current Protocol in Immunology, 6.12.1-6.12.28, Ed. Coligan et al., John Wiley& Sons, Inc. 1995を参照)。
【0112】
本発明の方法は、多数の試験化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループット方法において、日常的に実行することができる。特に、そのような方法において使用される細胞系は、限定はされないが、マイクロタイター・プレート、寒天平板へのスポッティング、寒天ウエル、チップへのスポッティング、その他を含む、当業者に公知の任意のマルチプルコピーフォーマットにおいて発現及びアッセイすることができる。同様に、限定はされないが、ロボット操作技術を含む標準的マルチプル操作技術は、多数沈着の細胞及び/又は試験化合物に利用可能である。
【0113】
リガンドと受容体との相互作用を調節する試験化合物の同定後に、二次スクリーニングアッセイが、生物学的活性に対する効果について試験化合物を更に特徴付けるために使用できるであろう。種々のアッセイを、二次スクリーニングとして使用するために適合させることができる。
【0114】
小分子量の試験化合物を含めて、試験化合物の様々なライブラリーが使用可能である。例えば、ライブラリーは、Specs and BioScecs B.V. (Rijswijk, The Netherlands), Chembridge Corporation (San Diego, CA), Contract Service Company (Dolgoprudny, Moscow Region, Russia), Comgenex USA Inc. (Princeton, NJ), Maybridge Chemicals Ltd. (Cornwall PL34 OHW, United Kingdom)及びAsinex (Moscow, Russia)から市販されている。
【0115】
更にまた、当技術分野で知られているコンビナトリアルライブラリー法が、限定はされないが、生物ライブラリー;空間的にアドレス可能なパラレル固相又は溶液相ライブラリー;デコンボリューションを要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及びアフィニティ・クロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法、を含んで利用することができる。生物ライブラリーアプローチの例としては、好ましくはペプチドライブラリーが挙げられるが、これに対して他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに適用し得る(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145)。小分子試験化合物を含む試験化合物のコンビナトリアルライブラリーは、使用することができ、例えば、Eichler & Houghten, 1995, Mol. Med. Today, 1:174-180; Dolle, 1997, Mol. Divers. 2:223-236; and Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145-167に記載されているように、作り出すことができる。
【0116】
分子ライブラリーの合成方法の例としては、文献に見出すことができ、例えば、DeWitt et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909; Erb et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422; Zuckermann et al., 1994, J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al., 1993, Science 261:1303; Carrell et al., 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al., 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061; and Gallop et al., 1994, J. Med. Chem. 37:1223に見られる。
【0117】
化合物のライブラリーは、溶液から(例えば、Houghten, 1992, Bio/Techniques 13:412-421)、又はビーズ上(Lam, 1991, Nature 354:82-84)、チップ(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌(米国特許番号5,223,409)、胞子(特許番号5,571,698; 5,403,484; 及び5,223,409)、プラスミド(Cull et al., 1992, Proc. Natl. Acd. Sci. USA 89:1865-1869)又はファージ(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin, 1990, Science 249:404-406; Cwiria et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382; and Felici, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310)から提示することができる。
【0118】
ライブラリーをスクリーニングすることは、種々の一般的に知られた方法のいずれかによって達成することができる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する、以下の文献を参照されたい:Parmley & Smith, 1989, Adv. Exp. Med. Biol. 251:215-218; Scott & Smith, 1990, Science 249:386-390; Fowlkes et al., 1992; Bio Techniques 13:422-427; Oldenburg et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5393-6397; Yu et al., 1994, Cell 76:933-945; Staudt et al., 1988, Science 241:577-580; Bock et al., 1992, Nature 355:564-566; Tuerk et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA89:6988-6992; Ellington et al., 1992, Nature 355:850-852; 米国特許号5,096,815, 米国特許5,223,409, 及び米国特許5,198,346, all to Ladner et al.; Rebar & Pabo, 1993, Science 263:671-673; 及びPCT公開 WO 94/18318。
【0119】
関心がある細胞表面受容体の相互作用を調節する化合物の同定には、そのような化合物を、更に、アレルギー性又は炎症性反応を変える能力について試験をするために調べることができる。特に、例えば、本発明方法を経て同定された化合物は、更に、容認された動物モデルを用いてイン・ビボで試験することができる。
【0120】
コンピューターモデリング及び検索技術は、相互作用受容体相互作用を調節することができる化合物の同定、又は既に同定された化合物の改良を可能にする。そのような化合物又は組成物が同定されると、結合部位又は領域が同定される。結合部位は、例えば、ペプチドのアミノ酸配列から、核酸のヌクレオチド配列から、又はその天然のリガンドとの関連する化合物又は組成物の複合体の研究から、を含めて当技術分野で公知の方法を用いて同定することができる。後者の場合において、化学的又はX線結晶学的方法を使用して、標的上のどこに複合体リガンドが見出されるかを発見することによって結合部位を見出すことができる。次に、結合部位の三次元幾何構造が決定される。これは、完全な分子構造を決定することができる、X線結晶学を含む、公知の方法によって行うことができる。一方、固相又は液相NMRを、一定の分子内距離を決定するために使用することができる。構造決定の他のいかなる実験的方法も、部分的又は完全な幾何構造を得るために使用することができる。幾何構造は、天然又は人工の、複合体化リガンドで測定することができ、これは決定される結合部位構造の正確性を高めることができる。
【0121】
もし正確さの不完全な又は不十分な構造が決定された場合は、コンピューターベースの数値モデリングを、構造を完全にするため又はその正確性を改善するために使用することができる。任意の認められたモデリング方法が使用され、これらは、タンパク質又は核酸のような特定の生体高分子に特異的なパラメーター化モデル、分子運動を計算することに基づく分子力学モデル、熱的集合体を基礎とする統計力学モデル、又は組合せモデルを
含む。殆どの型のモデルに対して、構成原子と基の間の力を示す標準分子力場が必要であり、そして物理化学で知られている力場から選択することができる。不完全又は正確さに劣る実験的構造は、これらのモデリング方法によって計算された、完全で、より正確な構造に対するコンストレイント(constraint)として機能することができる。
【0122】
最後に、結合部位の構造が、実験的に、モデリングによって、又はこれらの組合せによって決定されたなら、候補の調節化合物を、それらの分子構造に関する情報に沿って、化合物を含むデータベースを検索することによって同定することができる。そのような検索は、決定された結合部位構造とマッチし、そして活性部位を規定する基と相互作用する構造を有する化合物を探し出す。そのような検索は、用手法で行うことができるが、好ましくは、コンピューター支援である。この検索から見出されたこれらの化合物は、潜在的に有用な化合物である。
【0123】
代わりに、これらの方法は、公知の調節化合物又はリガンドから改善された薬学的に活性な化合物を同定するのに使用することができる。公知の化合物の組成を修飾することができ、修飾の構造効果を、新組成に適用した上記の実験的及びコンピューターモデリング方法を用いて決定することができる。次いで、変更した構造は、改善された適合又は相互作用が得られているかどうかを決定するため、既に公知の化合物の結合部位の構造と比較する。このようにして、例えば側鎖を変えること等による、組成の体系的変化は迅速に評価され、改善された特異性又は活性を有する修飾した調節化合物又はリガンドを得ることができる。
【0124】
結合部位の同定に基づいて、調節化合物を同定するのに有用な、更なる実験的及びコンピューターモデリング法は、当業者に明白であろう。分子モデリング系の例としては、CHARMm及びQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, MA)である。CHARMmは、エネルギー最小化及び分子動態関数を実行する。QUANTAは、構造、グラフィックモデリング、及び分子構造解析を実行する。QUANTAは、互いの分子挙動の相互作用構造、修飾、可視化、及び解析を行うことができる。
【0125】
特異的タンパク質と薬物の相互作用のコンピューターモデリングについて多くの総説があり、例えば、Rotivinen et al., (1988, Acta Pharmaceuticl Fennica 97:159-165); Ripka (1988 New Scientist 54-57); McKinaly and Rossmann (1989, Annu. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29:111-122); Penny and Davies, OSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design pp. 189-193 Alan R. Liss, Inc. 1989; Lewis and Dean (1989, Proc. R. Soc. Lond.236:125-140 and 141-162)があり、そして核酸成分のモデル受容体に関しては、Askew, et al., (1989, J. Am. Chem. Soc. 111:1082-1090)がある。化合物をスクリーニングし、グラフ描写する他のコンピュータープログラムは、BioDesign Inc. (Pasadena, CA), Allelix, Inc. (Mississauga, Ontario, Canada)、 及びHypercube, Inc. (Cambridge, Ontario)のような会社から入手できる。これらは、特定のタンパク質に特異的な薬物に応用するように主としてデザインされているが、一旦DNAやRNAの領域が決まれば、その領域に特異的な薬物の設計に適合させることもできる。
【0126】
標的受容体の1つ又はそれ以上のエピトープを特異的に認識する抗体もまた、本発明の実施に有用である。そのような抗体は、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化又はキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab発現ライブラリーにより産生される断片、抗イディオタイプ(anti-id)抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片を包含する。
【0127】
アミロイド形成を抑制、阻害又は予防するのに有用な化合物
細胞内cAMPエンハンサー
以下に記載の化合物は、アミロイド形成を抑制、阻害又は予防するのに有用である。これら化合物のいくつかは、細胞の細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)のレベルを促進、又は増加させる。それ故、本発明の別の実施態様は、細胞を、細胞において、細胞内cAMPのレベルを促進又は増加する化合物と接触させることによって、細胞媒介アミロイド形成を抑制、阻害又は予防する方法である。好ましい実施態様において、本発明は、ミクログリアによって媒介されるアミロイド形成を抑制、阻害又は予防する方法であって、ミクログリアを細胞内cAMPのエンハンサーの有効量と接触させることを含む方法を提供する。なお別の好ましい実施態様は、マクロファージ系統の細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制、阻害又は予防する方法であって、細胞を細胞内cAMPの少なくとも1つのエンハンサーの有効量と接触させることを含む方法を含む。典型的な場合において、これらの方法は、アルツハイマー病を予防又は治療するために成功裏に実施される。
【0128】
細胞内cAMPのエンハンサーは、エンハンサーが存在しない場合に、現われる場合のレベル以上に細胞内cAMPのレベルを増加させる化合物を一般的にいうものとする。細胞内cAMPのエンハンサーの例としては、限定はされないが、フォルスコリン、ロリプラム、8−ブロモcAMP、ジブチリルcAMP、及びそれらの他の類縁体又は誘導体を包含する。それ故、本発明の別の実施態様は、細胞を、フォルスコリン、ロリプラム、8−ブロモcAMP、ジブチリルcAMP、cAMP及びそれらの類縁体又は誘導体の1つからなる群から選択された少なくとも1つの化合物の有効量と接触させることによって、細胞媒介アミロイド形成を予防する方法である。本発明のなお別の実施態様は、ミクログリア細胞又はマクロファージ系統の細胞の活性を抑制、阻害又は予防する方法であって、ミクログリア細胞又はマクロファージ系統の細胞を、フォルスコリン、ロリプラム、8−ブロモcAMP、cAMP、ジブチリルcAMP、cAMP及びこれらの類縁体又は誘導体の1つからなる群から選択された化合物と接触させることを含む方法である。
【0129】
細胞内cAMPのエンハンサーはまた、細胞内cAMPの代謝を防止することによって細胞内cAMPのレベルを増加させることができる。細胞内cAMPのそのようなエンハンサーの例としては、限定はされないが、cAMPホスホジエステラーゼの阻害剤を含む。それ故、本発明の一実施態様は、細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制、予防又は阻害する方法であって、細胞を、cAMPホスホジエステラーゼの阻害剤の有効量と接触させることを含む方法である。本発明の好ましい実施態様は、ミクログリア細胞又はマクロファージ系統の細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制、予防又は阻害する方法であって、ミクログリア細胞又はマクロファージ系統の細胞をcAMPホスホジエステラーゼの阻害剤の有効量と接触させることを含む方法である。
【0130】
多くのホスホジエステラーゼ(PDEとしても知られている)が明らかにされている。PDE1型(サブタイプa、b及びcを含む)、2a型、3型(サブタイプa及びbを含む)、4型(サブタイプa、b、c及びdを含む)、7型(サブタイプa及びbを含む)、8型(サブタイプa及びbを含む)、10型、及び11型の活性は、細胞内cAMPのレベルを減少させることが示されている。
【0131】
従って、本発明の一実施態様は、PDE1、PDE2、PED3、PED4、PED7、PED8、PED10、PED11、それらのそれぞれのサブタイプ、及びそれらの誘導体又は類縁体からなる群から選択されたcAMPホスホジエステラーゼの阻害剤である。より好ましい実施態様において、cAMPホスホジエステラーゼの阻害剤は、PED4、PED7又はPED10の阻害剤である。なおより好ましい実施態様において、cAMPホスホジエステラーゼの阻害剤は、PED4a、PED4b、PED4c又はPED4dの阻害剤である。
【0132】
PDEの阻害剤は、当業者に通常知られた種々の方法によって得ることができる。PDEの阻害剤は、これまでに報告されている。例えば、米国特許第6,649,640号、同第6,649,633号及び同第6,649,631号は、PDE4の阻害剤の例を提供する。PDE4の阻害剤の更なる例としては、米国特許出願公開番号第20030104974号において見出すことができる。PDE10の阻害剤の例としては、パパベリンを含み、そして更なる例は、米国特許第6,538,029号、米国特許出願公開第20030008806号、同第20030018047号、及び同第20030032579号に見出すことができる。PDE7の阻害剤の例としては、米国特許出願公開第2002198198号及び国際特許出願公開第02/076953号、同第02/074754号に見出すことができる。なお更に、当業者は、米国特許第6,350,603号、同第6,635,436号、及び同第6,368,815号に記載された方法を使用して、追加的な化合物を同定することができるであろう。
【0133】
本発明の一実施態様は、対象において、好ましくは哺乳類において、ミクログリア細胞又はマクロファージ系統の細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制、阻害又は予防する方法であって、そのような対象に、PDEの阻害剤の有効量を投与することを含む方法である。PDEの1つの好ましい阻害剤は、ロリプラムのような、PDE4の阻害剤であり、そしてPDEの別の好ましい阻害剤は、PDE10の阻害剤である。
【0134】
プロスタグランジンE2受容体の作動薬
本発明の別の側面は、プロスタグランジンE2(PGE2)受容体の作動薬の使用に関する。プロスタグランジンE2受容体は、いくつかのサブタイプを有し、それらは、限定はされないが、サブタイプ1、2、3及び4(EP1、EP2、EP3,及びEP4としても、それぞれ知られている)を包含する。本発明によれば、プロスタグランジンE2受容体の作動薬である化合物は、細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制、阻害又は予防するのに有用である。特に、本発明によれば、サブタイプEP2及びEP4の作動薬は、細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制、阻害又は予防するのに特に有用である。
【0135】
プロスタグランジンE2受容体サブタイプEP1の作動薬の例としては、米国特許第6,448,290号及び国際特許出願公開第96/06822号、同第96/11902号及び欧州特許出願公開第752421−A1号に見出すことができる。追加的な化合物は、米国特許第6,440,680号に記載された方法に従って同定することができる。プロスタグランジンE2受容体の作動薬を調製すること、合成すること、使用すること及び/又は投与することは、米国特許第6,610,719号、同第6,642,266号、同第6,649,657号、同第6,492,412号、同第6,426,359号及び同第6,288,120号、米国特許出願公開第2003/0216445号、PCT出願、国際特許出願公開第03/064391号、同第03/045351号及び同第99/19300号に更に記載されている。これら文献の各々は、参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
【0136】
プロスタグランジンEP4受容体の作動薬の例としては、米国特許第6,642,266号、同第6,610,719号、同第6,552,067号に見出すことができ、これらの全ては、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0137】
プロスタグランジンE2受容体の作動薬の例としては、米国特許第6,649,657号、同第6,426,359号、同第6,492,412号に見出すことができ、これらの全ては、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0138】
従って、本発明の実施に有用な化合物の詳細な実例、特に、プロスタグランジンE2受容体の作動薬の実例が提供され、それらは、例えば、式I:
【化1】

で表すことができる化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくはそのプロドラッグを含むが、それらに限定されない:
【0139】
上記式中、
(i):
Bは、Nであり;
Aは、(C1−C6)アルキルスルホニル、(C3−C7)シクロアルキルスルホニル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C6)アルキルスルホニルであり、該A部分は、場合により、炭素上で独立に、ヒドロキシ、(C1−C4)アルキル又はハロで、一、二又は三置換され;
Qは、−(C2−C6)アルキレン−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C3−C8)アルキレン−、ここで該−(C3−C8)アルキレン−は、場合により、フルオロ又は(C1−C4)アルキルから独立に選択される4つまでの置換基で置換される;−X−(C1−C5)アルキレン−、−(C1−C5)アルキレン−X−、−(C1−C3)アルキレン−X−(C1−C3)アルキレン−、−(C2−C4)アルキレン−W−X−(C0−C3)アルキレン−、−(C2−C4)アルキレン−X−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C2−C5)アルキレン−W−X−W−(C1−C3)アルキレン−、ここで、2つのWの存在は、互いに独立である;−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C1−C4)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C0−C2)アルキレン−X−(C0−C5)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C0−C2)アルキレン−X−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エチニレン−(C1−C4)アルキレン−、又は−(C1−C4)アルキレン−エチニレン−X−(C0−C3)アルキレン−であり;
Wは、オキシ、チオ、スルフィノ、スルホニル、アミノスルホニル−、−モノ−N−(C1−C4)アルキレンアミノスルホニル−、スルホニルアミノ、N−(C1−C4)アルキレンスルホニルアミノ、カルボキサミド、N−(C1−C4)アルキレンカルボキサミド、カルボキサミドオキシ、N−(C1−C4)アルキレンカルボキサミドオキシ、カルバモイル、−モノ−N−(C1−C4)アルキレンカルバモイル、カルバモイルオキシ、又は−モノ−N−(C1−C4)アルキレンカルバモイルオキシであり、ここで、該Wアルキル基は、場合により、炭素上で1〜3個のフッ素で置換され;
Xは、場合により、酸素、窒素及び硫黄から独立に選択される、1個又は2個のヘテロ原子を有する5又は6員環の芳香族環であり;該環は、場合により、ハロ、(C1−C3)アルキル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、ヒドロキシル、(C1−C4)アルコキシ、又はカルバモイルで、独立に一又は二置換され;
Zは、カルボキシル、(C1−C6)アルコキシカルボニル、テトラゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾリル、(C1−C4)アルキルスルホニルカルバモイル、又はフェニルスルホニルカルバモイルであり;
Kは、結合、(C1−C8)アルキレン、チオ(C1−C4)アルキレン、又はオキシ(C1−C4)アルキレンであり、ここで、該(C1−C8)アルキレンは、場合により、モノ不飽和であり、ここで、Kは、場合により、フルオロ、メチル又はクロロにより、独立に、一、二又は三置換され;
Mは、−Ar、−Ar1−V−Ar2、−Ar1−S−Ar2、又は−Ar1−O−Ar2であり、ここで、Ar、Ar1及びAr2は、互いに独立に、部分飽和、完全飽和又は完全不飽和の5〜8員環であり、この環は、場合により、酸素、硫黄及び窒素から独立に選択される1個〜4個のヘテロ原子を有し、又は、2つの縮合した部分飽和、完全飽和若しくは完全不飽和の5員環若しくは6員環から成るビシクロ環であり、この環は、場合により、独立に、窒素、硫黄、及び、酸素から選択される1個〜4個へテロ原子を有し;
該Ar、Ar1及びAr2部分は、その部分が単環である場合1つの環上で、又はその部分がビシクロ環の場合、1つ若しくは両方の環上で、場合により、R1、R2 及びR3から独立に選択される3個までの置換基により、炭素上で置換され、ここで、R1、R2、及びR3は、ヒドロキシ、ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシカルボニル、(C1−C7)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルカノイル、ホルミル、(C1−C8)アルカノイル、(C1−C6)アルカノイル(C1−C6)アルキル、(C1−C4)アルカノイルアミノ、(C1−C4)アルコキシカルボニルアミノ、スルホンアミド、(C1−C4)アルキルスルホンアミド、アミノ、モノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルカルバモイル、シアノ、チオール、(C1−C6)アルキルチオ、(C1−C6)アルキルスルフィニル、(C1−C4)アルキルスルホニル又はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルアミノスルフィニルであり;
1、R2及びR3は、場合により、独立に、ハロ又はヒドロキシで、炭素上で一、二又は三置換され;
Vは、結合、又は場合により、ヒドロキシ若しくはフルオロにより、独立に一若しくは二置換された(C1−C3)アルキレンであり;
但し、Kが(C2−C4)アルキレンであり、MがArであり、そしてArが、シクロペンタ−1−イル、シクロヘキサ−1−イル、シクロヘプタ−1−イル又はシクロオクタ−1−イルである場合、該(C5−C8)シクロアルキル置換基は、その1つの位置において、ヒドロキシで置換されない;又は
【0140】
(ii):
BはNであり;
Aは、(C1−C6)アルカノイル又は(C3−C7)シクロアルキル(C1−C6)アルカノイルであり、該A部分は、場合により、ヒドロキシ又はハロにより、炭素上で、独立に、一、二又は三置換され;
Qは、−(C2−C6)アルキレン−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C4−C8)アルキレン−、ここで、該−(C4−C8)アルキレン−は、場合により、フルオロ又は(C1−C4)アルキルから独立に選択される4個までの置換基で置換される;−X−(C2−C5)アルキレン−、−(C1−C5)アルキレン−X−、−(C1−C3)アルキレン−X−(C1−C3)アルキレン−、−(C2−C4)アルキレン−W−X−(C0−C3)アルキレン−、−(C0−C4)アルキレン−X−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C2−C5)アルキレン−W−X−W−(C1−C3)アルキレン−、ここで、2つのWの存在は、互いに独立である;−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C1−C4)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C0−C2)アルキレン−X−(C0−C5)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C0−C2)アルキレン−X−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エチニレン−(C1−C4)アルキレン−、又は−(C1−C4)アルキレン−エチニレン−X−(C0−C3)アルキレン−であり;
Wは、オキシ、チオ、スルフィノ、スルホニル、アミノスルホニル−、−モノ−N−(C1−C4)アルキレンアミノスルホニル−、スルホニルアミノ、N−(C1−C4)アルキレンスルホニルアミノ、カルボキサミド、N−(C1−C4)アルキレンカルボキサミド、カルボキサミドオキシ、N−(C1−C4)アルキレンカルボキサミドオキシ、カルバモイル、−モノ−N−(C1−C4)アルキレンカルバモイル、カルバモイルオキシ、又は−モノ−N−(C1−C4)アルキレンカルバモイルオキシであり、ここで、該Wアルキル基は、場合により、炭素上で、1個〜3個のフッ素で置換され;
Xは、場合により、酸素、窒素及び硫黄から独立に選択される、1個又は2個のヘテロ原子を有する、5又は6員環の芳香族環であり、該環は、場合により、ハロ、(C1−C3)アルキル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、ヒドロキシル、(C1−C4)アルコキシ、又はカルバモイルで、独立に、一又は二置換され;
Zは、カルボキシル、(C1−C6)アルコキシカルボニル、テトラゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾリル、(C1−C4)アルキルスルホニルカルバモイル又はフェニルスルホニルカルバモイルであり;
Kは、(C1−C8)アルキレン、チオ(C1−C4)アルキレン又はオキシ(C1−C4)アルキレンであり、ここで、該(C1−C8)アルキレンは、場合により、モノ不飽和であり、ここで、Kは、場合により、フルオロ、メチル又はクロロにより、独立に、一、二又は三置換され;
Mは、−Ar、−Ar1−V−Ar、−Ar1−S−Ar2又は−Ar1−O−Ar2であり、ここで、Ar、Ar1及びAr2は、互いに独立に、部分飽和、完全飽和又は完全不飽和の5〜8員環であり、その環は、場合により、酸素、硫黄及び窒素から独立に選択される1個〜4個のヘテロ原子を有し、又は、2つの縮合した、部分飽和、完全飽和又は完全不飽和の5又は6員環から成るビシクロ環であり、その環は、場合により、独立に、窒素、硫黄及び酸素から選択される1個〜4個へテロ原子を有し;
該Ar、Ar1及びAr2部分は、その部分が単環である場合1つの環上で、又はその部分がビシクロ環の場合1つ若しくは両方の環上で、場合により、R1、R2及びR3から独立に選択される3個までの置換基により、炭素上で置換され、 ここで、R1、R2、及びR3は、H、ヒドロキシ、ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシカルボニル、(C1−C7)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルカノイル、ホルミル、(C1−C8)アルカノイル、(C1−C6)アルカノイル(C1−C6)アルキル、(C1−C4)アルカノイルアミノ、(C1−C4)アルコキシカルボニルアミノ、スルホンアミド、(C1−C4)アルキルスルホンアミド、アミノ、モノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルカルバモイル、シアノ、チオール、(C1−C6)アルキルチオ、(C1−C6)アルキルスルフィニル、(C1−C4)アルキルスルホニル、又はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルアミノスルフィニルであり;
1、R2及びR3は、場合により、独立に、ハロ又はヒドロキシにより、炭素上で、一、二又は三置換され;そして
Vは、結合、又は場合により、ヒドロキシ若しくはフルオロにより、独立に一若しくは二置換された(C1−C3)アルキレンであり;
但し、Kが(C2−C4)アルキレンであり、MがArであり、そしてArがシクロペンタ−1−イル、シクロヘキサ−1−イル、シクロヘプタ−1−イル、又はシクロオクタ−1−イルである場合、該(C5−C8)シクロアルキル置換基は、その1つの位置で、ヒドロキシで置換されず;
更に、6−[(3−フェニル−プロピル)−(2−プロピル−ペンタノイル)−アミノ]−ヘキサン酸及びそのエチルエステルを含まない;又は
【0141】
(iii):
Bは、C(H)であり;
Aは、(C1−C6)アルカノイル又は(C3−C7)シクロアルキル(C1−C6)アルカノイルであり、該A部分は、場合により、炭素上で、独立に、ヒドロキシ又はハロで、一、二又は三置換され;
Qは、−(C2−C6)アルキレン−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C4−C8)アルキレン−、ここで該−(C4−C8)アルキレン−は、場合により、フルオロ又は(C1−C4)アルキルから独立に選択される4個までの置換基で置換される;−X−(C1−C5)アルキレン−、−(C1−C5)アルキレン−X−、−(C1−C3)アルキレン−X−(C1−C3)アルキレン−、−(C2−C4)アルキレン−W−X−(C0−C3)アルキレン−、−(C0−C4)アルキレン−X−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C2−C5)アルキレン−W−X−W−(C1−C3)アルキレン−、ここで、2つのWの存在は、互いに独立であり;−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C1−C4)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C0−C2)アルキレン−X−(C0−C5)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エテニレン−(C0−C2)アルキレン−X−W−(C1−C3)アルキレン−、−(C1−C4)アルキレン−エチニレン−(C4−C8)アルキレン−、又は−(C1−C4)アルキレン−エチニレン−X−(C0−C3)アルキレン−であり;
Wは、オキシ、チオ、スルフィノ、スルホニル、アミノスルホニル−、−モノ−N−(C1−C4)アルキレンアミノスルホニル−、スルホニルアミノ、N−(C1−C4)アルキレンスルホニルアミノ、カルボキサミド、N−(C1−C4)アルキレンカルボキサミド、カルボキサミドオキシ、N−(C1−C4)アルキレンカルボキサミドオキシ、カルバモイル、−モノ−N−(C1−C4)アルキレンカルバモイル、カルバモイルオキシ、又は−モノ−N−(C1−C4)アルキレンカルバモイルオキシであり、ここで、該アルキル基は、場合により、炭素上で、1個〜3個のフッ素で置換され;
Xは、場合により、酸素、窒素及び硫黄から独立に選択される、1個又は2個のヘテロ原子を有する5又は6員環の芳香族環であり、該環は、場合により、ハロ、(C1−C3)アルキル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、ヒドロキシル、(C1−C4)アルコキシ、又はカルバモイルで、独立に、一又は二置換され;
Zは、カルボキシル、(C1−C6)アルコキシカルボニル、テトラゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾリル、(C1−C4)アルキルスルホニルカルバモイル、又はフェニルスルホニルカルバモイルであり;
Kは、結合、(C1−C8)アルキレン、チオ(C1−C4)アルキレン、(C4−C7)シクロアルキル(C1−C6)アルキレン、又はオキシ(C1−C4)アルキレンであり、該(C1−C8)アルキレンは、場合により、モノ不飽和であり、ここで、Kは、場合により、フルオロ、メチル又はクロロにより、独立に、一、二又は三置換され;
Mは、−Ar、−Ar1−V−Ar2、−Ar1−S−Ar2、又は−Ar1−O−Ar2であり、ここで、Ar、Ar1及びAr2は、互いに独立に、部分飽和、完全飽和又は完全不飽和の5〜8員環であり、この環は、場合により、酸素、硫黄及び窒素から独立に選択される1個〜4個のヘテロ原子を有し;又は、2つの縮合した、部分飽和、完全飽和又は完全不飽和の5又は6員環から成るビシクロ環であり、この環は、場合により、独立に、窒素、硫黄及び酸素から選択される1個〜4個のへテロ原子を有し;
該Ar、Ar1及びAr2部分は、その部分が単環である場合、1つの環上で、その部分がビシクロ環の場合、1つ若しくは両方の環上で、場合により、R1、R2及びR3から独立に選択される3個までの置換基により、炭素上で置換され、ここで、R1、R2、及びR3は、H、ヒドロキシ、ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシカルボニル、(C1−C7)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルキル、(C3−C7)シクロアルキル(C1−C4)アルカノイル、ホルミル、(C1−C8)アルカノイル、(C1−C6)アルカノイル(C1−C6)アルキル、(C1−C4)アルカノイルアミノ、(C1−C4)アルコキシカルボニルアミノ、スルホンアミド、(C1−C4)アルキルスルホンアミド、アミノ、モノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルカルバモイル、シアノ、チオール、(C1−C6)アルキルチオ、(C1−C6)アルキルスルフィニル、(C1−C4)アルキルスルホニル、又はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C1−C4)アルキルアミノスルフィニルであり;
1、R2及びR3は、場合により、独立に、ハロ又はヒドロキシにより、炭素上で、一、二又は三置換され;
Vは、結合、又は場合により、ヒドロキシ若しくはフルオロにより、独立に一又は二置換された(C1−C3)アルキレンであり;
但し、Kが(C2−C4)アルキレンであり、MがArであり、そしてArが、シクロペンタ−1−イル、シクロヘキサ−1−イル、シクロヘプタ−1−イル又はシクロオクタ−1−イルである場合、該(C5−C8)シクロアルキル置換基は、その1つの位置において、ヒドロキシで置換されない;
のいずれかである。
【0142】
好ましい化合物としては、以下の化合物:
【化2】

(3−{[(4−tert−ブチル−ベンジル)−(ピリジン−3−スルホニル)−アミノ]−メチル}−フェノキシ)−酢酸、及び、
【化3】

が挙げられる。
【0143】
記載したcAMP媒介機構以外で有効である化合物
(5)上述のように、脳ミクログリア細胞の核受容体と正に相互作用する(即ち、核受容体に対する作動薬である)化合物は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン)、グルココルチコイド受容体で作動薬として作用する非グルココルチコイド化合物、及びグルココルチコイド受容体の解離した作動薬(「DAGR」、米国特許第6,506,766号を参照)を含む。アミロイド形成を抑制、阻害又は予防するのに有用な特定の化合物は、グルココルチコイド受容体に結合し、完全に活性化する(即ち、グルココルチコイド受容体に対する作動薬である)、例えば、コルチコステロン及びその他のグルココルチコイドを含む。その他の有用な化合物は、グルココルチコイド類縁体又は模倣体で、これらは、グルココルチコイド受容体のコンホメーションをリガンド依存的に変更せしめ、その結果、アミロイド形成の抑制、阻害又は予防の能力を保持し、例えば、骨及び糖尿病性の副作用を最小化する。
【0144】
本発明の全ての側面において有用な化合物の追加的なクラスは、HMGCoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)によって代表され、MFAアッセイで非常にはっきりと陽性を示し、典型的な例としては、アトルバスタチン、メバスタチン、及びロバスタチンがある。
【0145】
医薬組成物及びそれらの使用
本発明の別の側面は、細胞によって媒介されるアミロイド形成に起因する又はアミロイド形成を示す疾患又は身体状態、又はミクログリア又はマクロファージ系統の細胞の活性に起因する又は関連する、疾患又は身体状態を治療又は予防するのに有用な医薬組成物を調製する又は投与する方法である。
【0146】
本発明の医薬組成物は、上記の化合物又は医薬として許容されるその塩の、任意の1つ又はそれ以上を、当業者によく知られているような担体の性質及び予期された性能の、医薬として許容される担体と共に含む。
【0147】
本明細書で使用される、用語「担体」は、最終医薬組成物に好ましい性質を与えるために、許容される賦形剤、添加剤、佐剤、ビヒクル、溶解補助剤、粘性調節剤、保存剤、及び当業者に周知のその他の剤を包含する。
【0148】
アミロイド形成を示す、形成に起因する又は関連する疾患又は身体状態、又はミクログリア又はマクロファージ系統の細胞の活性に起因する、活性を示す又は関連する疾患又は身体状態を治療又は予防するのに効果的な、本発明で確認された化合物の投与量及び用量の割合は、阻害剤の性質、患者の大きさ、治療の到達目標、治療しようする病理の性質、使用される特定の医薬組成物、及び主治医の観察及び結論のような種々の因子に依存することになる。
【0149】
例えば、剤形が経口剤、例えば、錠剤又はカプセル剤の場合は、適切な投与レベルは、有効成分につき、1日当たり、約0.1μg/kgと約50.0mg/kg体重の間、好ましくは1日当たり、約1.0μg/kgと約5.0mg/kg体重の間、より好ましくは1日当たり、約10.0μg/kgと約1.0mg/kg体重の間、及び最も好ましくは、1日当たり、約20.0μg/kgと約0.5mg/kg体重の間である。
【0150】
上記したように使用することが可能となるエアゾール局所投与の一日当りの範囲を例示するために、代表的な体重10kgと100kgを用いると、本発明において特定された化合物の適切な投与レベルは、有効成分につき、1日当たり約1.0〜10.0μgと500.0〜5000.0mgの間であり、好ましくは、1日当たり約5.0〜50.0μgと約5.0〜50.0mgの間であり、より好ましくは、1日当たり約100.0〜1000.0μgと10.0〜100.0mgの間であり、最も好ましくは1日当たり、約200.0〜2000.0μgと約5.0〜50.0mgの間である。これらの投与量範囲は、投与される患者に対して1日当たりの有効成分の総投与量を表している。用量が投与される1日当たりの回数は、治療効果を必要とする患者において到達する有効成分の最小及び至適血漿レベル又は他の体液レベルと同様、有効成分の異化率及びクリアランス率を反映する有効成分の半減期のような薬理学的要因及び薬物動態学的要因に依存することになる。
【0151】
1日当たりの投与回数や、投与される1投与当たりの有効成分の量を決定するに際して、多くの別の要因も考慮しなければならない。そのような別の要因よりも重要な問題は、治療されている患者の個々の反応である。それ故、例えば、有効成分を局所的に、エアゾール吸入によって肺へと投与する場合、計量分配調剤装置の先端(acuations)換言すれば吸入器の吹き出しからなる1回乃至4回の投与を、毎日投与する場合の各投与量は、有効成分約50.0μgから約10.0mgであろう。
【0152】
更なる詳細情報は、以下の通りである。
【0153】
薬物
式Iの化合物の薬学的に許容される塩としては、その酸付加塩及び塩基塩が挙げられる。
【0154】
好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。実例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、及びキシノホエート(xinofoate)塩が挙げられる。
【0155】
好適な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から成形される。その実例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオールアミン(diolamine)、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基の半塩(hemisalt)、例えば、ヘミスルファート及びヘミカルシウム塩もまた、形成することができる。好適な塩の総説としては、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, 2002)を参照されたい。式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、以下の3つの方法:
(i)式Iの化合物を所望の酸又は塩基と反応させること;
(ii)式Iの化合物の好適な前駆体から、酸又は塩基に感受性のある保護基を除去すること、又は好適な環状前駆体、例えば、ラクトン又はラクタムを、所望の酸又は塩基を用いて開環すること;又は
(iii)式Iの化合物のある塩を、適切な酸若しくは塩基との反応により、又は好適なイオン交換カラムにより、別の塩に転換すること;
の内の1つ又はそれ以上によって製造することができる。
【0156】
これら3つの反応の全ては、典型的には溶液中で行われる。得られた塩は沈殿し、濾過で集めることができ、又は溶媒の蒸発により回収することができる。得られた塩のイオン化度は、完全イオン化からほぼ非イオン化まで変化し得る。
【0157】
本発明の化合物は、完全に非晶性から完全に結晶性に至る固体状態の連続体として存在し得る。用語「非晶性」は、物質が、分子レベルで長距離秩序を欠き、そして温度に依存して、固体又は液体の物性を示し得る状態を意味する。典型的には、その様な物質は、明確なX線回折パターンを示さず、固体の特性を示すけれども、より正式には、液体状態といわれる。加熱により、固体から液体への特性の変化が起こり、それは、状態の変化、典型的には二次の変化(「ガラス転移」)により特徴付けられる。用語「結晶性」は、物質が、分子レベルで規則的な秩序を有する内部構造を有する固相を意味し、定義されたピークを有する明確なX線回折パターンを示す。その様な物質も、十分に加熱されると、液体の特性を示すことになる。しかし、固体から液体への変化は、相変化、典型的には、一次(「融点」)で特徴付けられる。
【0158】
本発明の化合物は、また、非溶媒和の形態で、及び溶媒和の形態で存在し得る。用語「溶媒和」は、本発明の化合物及び1つ若しくはそれ以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えば、エタノールを含む分子錯体を説明するために、本明細書で使われる。用語「水和物」は、該溶媒が水である場合に用いられる。有機化合物の水和物に対して現在受け入れられている分類系は、孤立サイト、チャンネル又は金属イオン配位の水和物を定義するものである(Polymorphism in Pharmaceutical Solids by K. R. Morris (Ed. H. G. Brittain, Marcel Dekker, 1995) を参照)。孤立サイト水和物は、水分子が有機分子の間に介在することにより、互いに直接接触することから隔離された水和物である。チャンネル水和物においては、水分子が別の水分子に接する格子チャンネルに存在している。金属イオン配位水和物においては、水分子が金属イオンと結合している。
【0159】
溶媒又は水が緊密に結合している場合、錯体は、湿度には依存しない明確に定義された化学量論を有する。しかしながら、溶媒又は水が、チャンネル水和物及び吸湿性化合物における様に弱く結合している場合、水/溶媒の含有量は、湿度及び乾燥条件に依存するであろう。その様な場合、非化学量論が普通である。
【0160】
また、多成分錯体(塩及び溶媒和物以外の)であって、薬物及び少なくとも1つの他の成分が、化学量論量で又は非化学量論量で存在する錯体も、本発明の範囲内に含まれる。この種の錯体としては、包接体(ドラッグ−ホスト包接錯体)及び共結晶体が挙げられる。後者は、典型的には、非共有結合性相互作用を通して互いに結合している中性分子成分の結晶性錯体として定義されるが、しかし、また、中性分子と塩との錯体でもあり得る。共結晶は、溶融結晶化、溶媒からの再結晶、又は両成分を一緒に物理的に粉砕することにより製造できる(Chem Commun, 17, 1889-1896, by O. Almarsson and M. J. Zaworotko (2004) を参照)。多成分錯体の一般総説としては、J Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288, by Haleblian (August 1975)を参照されたい。
【0161】
本発明の化合物は、また、好適な条件に曝された場合、中間状態(中間相、又は液晶)として存在することもできる。中間状態とは、真の結晶状態及び真の液体状態(溶融又は溶液のいずれであれ)の間の中間的な状態である。温度変化の結果として生成する中間状態は、「サーモトロピック」としていわれ、水又は別の溶媒の様な第二成分を添加することにより生成するものは、「リオトロピック」といわれる。リオトロピック・中間相を形成する可能性のある化合物は、「両親媒性」といわれ、イオン性(−COO-Na+、−COO-+、又は−SO3-Na+等の)、又は非イオン性(−N-+(CH33)の極性頭部基を有する分子から成り立っている(Crystals and the Polarizing Microscope by N. H. Hartshorne and A. Stuart, 4th Edition (Edward Arnold, 1970) を参照)。
【0162】
以下、式Iの化合物の全ての言及には、その塩、溶媒和物、多成分錯体及び液晶、並びにその塩の溶媒和物、多成分錯体及び液晶も含まれる。本発明の化合物としては、前に定義した式Iの化合物が挙げられ、それらのすべての多形、晶癖・晶相、後で定義されるようなそれらのプロドラッグ及び異性体(光学、幾何及び互変異性体を含む)、及び同位体で標識化された式Iの化合物が含まれる。
【0163】
既に示唆したように、式Iの化合物のいわゆる「プロドラッグ」もまた、本発明の範囲内である。それ故、それ自体、薬理学的活性が殆ど無いか又は全く無い式Iの化合物の特定の誘導体は、体内へ、又は身体上へ投与された場合、所望の活性を有する式Iの化合物へ、例えば、加水分解による開裂により、転換することができる。その様な誘導体は「プロドラッグ」と呼ばれる。プロドラッグの使用に関する更なる情報は、Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, ACS Symposium Series (T. Higuchi and W. Stella)及びBioreversible Carriers in Drug Design, Pergamon Press, 1987 (Ed. E. B. Roche, American Pharmaceutical Association)において見出すことができる。
【0164】
本発明に従うプロドラッグは、例えば、式Iの化合物中に存在する適切な官能基を、例えば、Design of Prodrugs by H. Bundgaard (Elsevier, 1985)に記載されているような「プロ部分」として当業者に公知の特定の部分で、置換することにより製造される。本発明に従うプロドラッグの幾つかの実例としては:
(i)式Iの化合物が、カルボン酸官能基(−COOH)を含む場合、そのエステル、例えば、式Iの化合物のカルボン酸官能基の水素が(C1−C8)アルキルで置換された化合物;
(ii)式Iの化合物が、アルコール官能基(−OH)を含む場合、そのエーテル、例えば、式Iの化合物のアルコール性水素が、(C1−C6)アルカノイルオキシメチルで置換された化合物;
(iii)式Iの化合物が、第一級、第二級アミノ官能基(−NH2又は−NHR、ここで、R≠Hである)を含む場合、そのアミド基、例えば、場合により、式Iの化合物のアミノ官能基の1つ又は両方の水素が、(C1−C10)アルカノイルにより置換された化合物;
が挙げられる。
【0165】
上記の実例に従う置換基の更なる例及び他の型のプロドラッグの実例としては、前記の文献において見出すことができる。更に、式Iの特定の化合物は、それ自体、式Iの別の化合物のプロドラッグとして機能する場合もあり得る。
【0166】
また、式Iの化合物の代謝物、即ち、薬物投与により生体内で生成する化合物も、本発明の範囲内に含まれる。本発明に従う代謝物のいくつかの実例としては:
(i)式Iの化合物がメチル基を含む場合、そのヒドロキシメチル誘導体(−CH3 → −CH2OH);
(ii)式Iの化合物がアルコキシ基を含む場合、そのヒドロキシ誘導体(−OR → −OH);
(iii)式Iの化合物が第三級アミノ基を含む場合、その第二級アミノ誘導体(−NR12 → −NHR1又は−NHR2);
(iv)式Iの化合物が第二級アミノ基を含む場合、その第一級アミノ誘導体である(−NHR1 → −NH2);
(v)式Iの化合物がフェニル部分を含む場合、そのフェノール誘導体(−Ph → −PhOH);
(vi)式Iの化合物がアミド基を含む場合、そのカルボン酸誘導体(−CONH2 → COOH);
が挙げられる。
【0167】
1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を有する式Iの化合物は、2つ又はそれ以上の立体異性体として存在し得る。式Iの化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含む場合、幾何学的な、シス/トランス(又は、Z/E)異性体が可能である。構造異性体が、低エネルギー障壁を介して相互に転換可能である場合、互変的異性(互変異性)が起こり得る。これは、例えば、イミノ、ケト又はオキシム基を有する式Iの化合物におけるプロトン互変異性の形態、又は芳香族部分を有する化合物における、いわゆる原子価互変異性の形態をとることができる。従って、単一の化合物が、1種以上の異性型を示すことができるということになる。
【0168】
一種以上の異性型を示す化合物、及び一種又はそれ以上のそれらの混合物を含む、式Iの化合物の全ての立体異性体、幾何異性体、及び互変異性体は、本発明の範囲内に含まれる。また、酸付加塩又は塩基塩であって、その対イオンが光学的に活性である、例えば、d−乳酸塩若しくはl−リシン、又はラセミ体、例えば、dl−酒石酸塩若しくはdl‐アルギニンの場合も含まれる。
【0169】
シス/トランス異性体は、当業者に公知の通常の技術で、例えば、クロマトグラフィー及び分別結晶で分離することができる。
【0170】
個々のエナンチオマーの製造/単離に関する従来の技術としては、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた、ラセミ体(又は塩若しくは誘導体のラセミ体)分割が挙げられる。
【0171】
或いは、ラセミ体(又は、ラセミ体の前駆体)は、好適な光学的に活性な化合物、例えば、アルコールと反応させてもよく、又は式Iの化合物が酸性又は塩基性部分を含む場合は、1−フェニルエチルアミン又は酒石酸などの塩基又は酸と反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶により分離することができ、そして、1つ又は両方のジアステレオマーを、当業者に公知の方法により、対応する光学的に純粋なエナンチオマーに転換することができる。
【0172】
本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、クロマトグラフィー、典型的には、HPLCを用いて、不斉樹脂上で、炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンから成り、0〜50容量%の、典型的には2%〜20%のイソプロパノール、及び0〜5容量%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含む移動相を用いて、エナンチオマー的に富化された形態で得ることができる。溶出液を濃縮することにより、富化された混合物を得ることができる。
【0173】
いかなるラセミ体も結晶化する場合、二種類の異なったタイプの結晶が生じ得る。第一のタイプは、上記のラセミ化合物(真のラセミ体)であり、ここでは、等モル量の両エナンチオマーを含有する均一な形体の結晶が生成される。第二のタイプは、ラセミ混合物又は集合体であり、ここでは、それぞれが単一のエナンチオマーを含む2つの形体の結晶が、等モル量づつ生成される。
【0174】
ラセミ混合物中において存在する両者の結晶形態は、同一の物理的性質を有しているものの、真のラセミ体と比較して、異なった物理的性質を有する可能性がある。ラセミ混合物は、当業者に公知の従来技術で分離できる(例えば、Stereochemistry of Organic Compounds by E. L. Eliel and S. H. Wilen (Wiley, 1994) を参照)。
【0175】
本発明は、全ての薬学的に許容される式Iの同位体標識化合物を含み、この場合、1つ又はそれ以上の原子が、同一の原子番号であるが、自然界に主として存在する原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換されている。
【0176】
本発明の化合物に包含される好適な同位体の実例としては、2H及び3Hの様な水素同位体、11C、13C及び14Cの様な炭素同位体、36Clの様な塩素同位体、18Fの様なフッ素同位体、123I及び125Iの様なヨウ素同位体、13N及び15Nの様な窒素同位体、15O、17O及び18Oの様な酸素同位体、32Pの様なリン同位体、35Sの様な硫黄同位体が挙げられる。
【0177】
式Iの一定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を導入したものは、薬物、及び/又は基質組織分布の研究に有用である。放射性同位体トリチウム、即ち、3H、及び炭素−14、即ち、14Cは、導入が容易であること、及び、即時の手段で検出できることの観点より、この目的に対して特に有用である。
【0178】
重水素、即ち、2Hの様な、より重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、生体内半減期の増大、又は必要投与量の減少から生ずる、ある種の治療上の利点を与えることができ、それ故、ある環境下においては好ましいものであり得る。11C、18F、15O及び13Nの様な陽電子放出同位体による置換は、基質の受容体占有度を検討するための陽電子放出断層撮影法(PET)の研究において、有用であり得る。
【0179】
式Iの同位体標識化合物は、一般には、当業者に公知の従来の技術で製造することができ、又は明細書の実施例及び製造例に記載されている方法と類似の方法により、上で使用された非標識化合物の代わりに適切な同位体標識化合物を用いて、製造することができる。
【0180】
本発明の薬学的に許容される溶媒和物としては、結晶化の溶媒が同位体、例えば、D2O、d6−アセトン、d6−DMSOで置換された溶媒和物が含まれる。
【0181】
既に定義した式IIの中間体化合物、それらの全ての塩、溶媒和物及び錯体、並びに式Iの化合物に対して既に定義した全ての塩の溶媒和物及び錯体もまた、本発明の範囲内である。本発明は、前記の化学種の全ての多形体及びその晶癖・晶相を含む。
【0182】
本発明に基づいて式Iの化合物を製造する場合、本目的のための特徴の最良の組合せを提供する式IIの化合物の形態を選択することは、当業者にとっては日常的にできる。その様な特徴としては、融点、溶解性、加工性及び中間体の収率、及びその結果もたらされる生成物を単離して純度を上げる容易性が挙げられる。
【0183】
製剤
式Iの化合物は、提案した適応症の治療のための、最も適切な投与形態及び投与ルートを選択するために、溶解性、溶液の安定性(全pHを通しての)、透過性等の生物薬剤学的特性を評価する必要がある。医薬用途を対象とする本発明の化合物は、結晶性又は
非晶性の製品として投与してもよい。それらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥又はスプレー乾燥又は蒸発乾燥の様な方法により、例えば、固体プラグ、粉末、又はフィルムとして得られる。
【0184】
それらは、単独で、又は1つ若しくはそれ以上の本発明の他の化合物との組合せで、又は1つ若しくはそれ以上の他の薬物との組合せで(又は、それらの任意の組合せとして)、投与してよい。一般的に、それらは、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される添加剤と共に製剤処方として投与されるであろう。用語「添加剤」は、本発明の化合物以外の全ての成分を表現するために、本明細書において用いられる。添加剤の選択は、投与の特定の方法、添加剤の溶解性、安定性に及ぼす影響、投与形態の性質の様な因子に大体において依存する。本発明の化合物の送達に対して好適な医薬組成物、及びその製造方法は、当業者には容易に明らかであろう。その様な組成物及びその製造方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)において見出すことができる。
【0185】
経口投与
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下すること及び/又は化合物が口腔から直接血流に入る口腔投与、舌投与、若しくは舌下投与を含む。経口投与に適した剤形は、錠剤、マルチ又はナノ粒子を含有するソフト又はハードカプセル剤、液剤又は散剤、トローチ剤(液体を充填したものを含む)、チュアブル剤、ゲル剤、速分散性投与形態、フィルム剤、膣坐剤、スプレー剤、及び舌/粘膜接着パッチ剤のような、固形、半固形及び液体系を包含する。液体製剤は、懸濁剤、液剤、シロップ剤及びエリキシル剤を包含する。そのような剤形は、(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから作られた)ソフト又はハードカプセル中の充填剤として採用され、そして、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適切なオイル、及び1つ又はそれ以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含む。液体製剤は、例えば、サシェからの固体の再構成によって調製してもよい。本発明の化合物は、Expert Opinion in Therapeutic Patents, 11(6), 981-986, by Liang and Chen (2001)に記載されているような、速溶解性、速崩壊性投与形態において使用することもできる。
【0186】
錠剤の投与形態には、投与量に依存して、薬物は、投与形態の1質量%から80質量%、より典型的には、投与形態の5質量%から60質量%から作られる。薬物に加えて、錠剤は一般的に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、カルボキシルメチル・セルロース・カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、及びアルギン酸ナトリウムを包含する。一般的に、崩壊剤は、投与形態の1質量%から25質量%、好ましくは5質量%から20質量%を含む。結合剤は、一般的に、錠剤処方に凝集性を与えるために使用される。適切な結合剤は、微結晶セルロース、ゼラチン、ショ糖、ポリエチレングリコール、天然及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。錠剤は、また、乳糖(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプン及び第二リン酸カルシウム二水和物のような賦形剤を含有してもよい。
【0187】
錠剤は、場合によって、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80のような界面活性剤、及び二酸化ケイ素及びタルクのような流動促進剤を含んでもよい。含有する場合は、界面活性剤は、錠剤の0.2質量%から5質量%を含み、流動促進剤は、錠剤の0.2質量%から1質量%を含む。錠剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物のような滑沢剤を一般的に含有する。滑沢剤は、一般的に、錠剤の0.25質量%から10質量%、好ましくは0.5質量%から3質量%を含む。他の可能性のある成分として、抗酸化剤、着色料、着香料、保存料及び味のマスキング剤を含有する。
【0188】
例示的な錠剤としては、約80%までの薬物、約10質量%から約90質量%の結合剤、約0質量%から約85質量%の賦形剤、約2質量%から約10質量%の崩壊剤、及び約0.25質量%から約10質量%の滑沢剤を含有している。錠剤のブレンドは、直接又はローラーで圧縮して錠剤を形成する。或いは、錠剤ブレンド又はブレンドの一部は、湿式、乾式、又は溶融造粒、溶融凝固、又は押し出しを行った後打錠してもよい。最終的製剤は、1つ又はそれ以上の層を含んでいてもよく、そして被覆されていても、されていなくともよく、なおカプセル化されていてもよい。錠剤の処方は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1, by H. Lieberman and L. Lachman (Marcel Dekker, New York, 1980)に、考察されている。
【0189】
ヒト又は動物用の摂取可能な経口フィルム剤は、典型的には、しなやかな水可溶性又は水膨潤性の薄いフィルムで、速溶性がある又は粘膜接着性がある投与形態であり、典型的には、式Iの化合物、フィルム形成性ポリマー、結合剤、溶媒、保湿剤、可塑剤、安定剤又は乳化剤、粘度調節剤及び溶媒を含む。処方のいくつかの成分は、1つを越える機能を果してもよい。
【0190】
式Iの化合物は水可溶性又は不溶性であってもよい。水可溶性化合物は、典型的には、溶質1質量%から80質量%、より典型的には、20質量%から50質量%を含む。低い溶解性の化合物は、組成物の大きな割合、典型的には溶質の88質量%までを含んでいる。代わりに、式Iの化合物は、多粒子ビーズの形態であってもよい。フィルム形成性ポリマーは、天然の多糖類、タンパク質、又は合成親水コロイドから選択することができ、典型的には、0.01から99質量%の範囲、より典型的には、30から80質量%の範囲である。他の可能性がある成分は、抗酸化剤、着色料、着香料及び着香エンハンサー、保存料、唾液分泌刺激剤、清涼剤、共溶媒(油を包含する)、皮膚軟化剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤及び味マスキング剤を包含する。
【0191】
本発明によるフィルム剤は、典型的には、剥離し得る裏打ち支持体又は紙に被覆した、薄い水性フィルムを蒸発乾燥することによって調製される。これは、乾燥オーブン又はトンネル、典型的には、複合被覆乾燥機、又は凍結乾燥又は真空処理で行われる。
【0192】
経口投与用の固形製剤は、即時及び/又は調節制御放出になるよう処方される。制御放出製剤は、遅延−、持続−、パルス−、制御−、又は標的及びプログラム化放出(programmed release)を包含する。本発明の目的のために好適な調節放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散及び浸透圧性及び被覆粒子のような好適な放出技術の詳細は、Pharmaceutical Technology On-line, 25(2), 1-14, by Verma et al. (2001)に見出すことができる。制御放出を達成するためのチューインガムの使用は、国際特許出願公開第00/35298号に記載されている。
【0193】
薬物投与
本発明の化合物は、血流中に、筋肉内に、又は内部器官に直接投与することもできる。非経口投与に適した手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内及び皮下を包含する。非経口投与に適した装置は、針(マイクロニードルを包含する)注射、無針注射、及び注入技術を包含する。
【0194】
無針注射の例としては、好適な技術の例を提供するパウダージェットである。製剤は、典型的には、塩、糖質及び緩衝剤(好ましくは、3から9のpH)のような添加剤を含有する水性液剤であるが、しかし、いくつかの適用のためには、滅菌した非水性溶液又は滅菌し発熱性物質のない水のような好適なビヒクルと共に使用される粉末乾燥形態として、より好適に処方される。
【0195】
滅菌条件下、例えば、凍結乾燥による非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的製薬技術を使用して容易に達成できる。非経口液剤の調製に使用される式Iの化合物の溶解度は、溶解性増強剤の組み込みのような適切な製剤技術を使って向上させることができる。無針注射投与を使用するための製剤は、滅菌し発熱物質のない水のような好適なビヒクルと共に使用される粉末形態の本発明の化合物を含む。
【0196】
非経口投与製剤は、即時及び/又は調節制御放出であるように製剤化してもよい。制御放出製剤は、遅延−、持続−、パルス−、制御−、又は標的及びプログラム化放出を包含する。それ故、本発明の化合物は、懸濁液として、又は固体として、半固体として、又は活性化合物の調節放出を提供する埋め込みデポーとして投与するためのチキソトロピック液として処方される。そのような処方の例は、薬物担持−dl乳酸グリコール酸共重合体(PGLA)マイクロスフェアを含む、薬物被覆ステント剤及び半固体剤及び懸濁剤を包含する。
【0197】
本発明の化合物は、また、局所、皮膚(内)、又は経皮的に皮膚又は粘膜に投与できる。この目的のための典型的な製剤は、ゲル剤、ハイドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布用粉剤、ドレッシング、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、ウエハー剤、インプラント、スポンジ剤、ファイバー、バンデージ、及びマイクロエマルジョン剤を包含する。リポソーム剤を使用してもよい。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールを包含する。浸透増強剤も使用可能である(例えば、J. Pharm. Sci. 88(10), 955-958, by Finnin and Morgan (October 1999)を参照)。
【0198】
局所投与の別の手段は、電気穿孔、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシス及びマイクロニードル又は無針(例えば、PowderjectTM、 BiojectTM等)注射を包含する。局所投与は、経皮イオントフォレーシスパッチのようなパッチを使用して達成することもできる。局所投与用の製剤は、即時及び/又は調節制御放出であるように処方してもよい。制御放出製剤は、遅延−、持続−、パルス−、制御−、又は標的及びプログラム化放出を包含する。
【0199】
本発明の化合物は、典型的には、乾燥粉末吸入器から、乾燥粉末の形態(単独で、例えば乳糖との乾燥ブレンドの混合物としてか、又は、例えばホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合した混合成分粒子としてのいずれか)で、加圧コンテナー、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、微細ミストを作り出す電気流体力学を用いたアトマイザー)又はネブライザーからのエアゾールスプレーとして、1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンのような、好適な噴射剤を使用するか又は使用しないで、経鼻的に又は吸入によって、又は点鼻薬として、投与することもできる。鼻腔内での使用のために、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサン又はシクロデキストリンを含んでいてもよい。加圧コンテナ、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又はネブライザーは、本発明の化合物の溶液又は懸濁液を含有しており、これらは、例えば、エタノール、エタノール水溶液、又は有効成分の分散、可溶化、又は放出遅延のための好適な代替剤、溶媒としての噴射剤、及びソルビタントリオレエート、オレイン酸又はオリゴ乳酸のような任意の界面活性剤を含む。
【0200】
乾燥粉末製剤又は懸濁液製剤で使用する前に、医薬製品を、吸入による送達に適した大きさに微粉化する(典型的には、5ミクロン未満)。これは、スパイラルジェットミル、液床ジェットミル、ナノ粒子形成用超臨界液処理、高圧ホモジナイズ、又はスプレードライのような適切な微粉化方法によって達成される。
【0201】
吸入器(inhaler)又は吹入器(insufflator)で使うためのカプセル(例えば、ゼラチン製、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース製)、ブリスター及びカートリッジは、本発明の化合物の粉末ミックス、乳糖又はデンプンのような好適な粉末基剤、及びL−ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウムのような性能調節剤を含有するよう処方することができる。乳糖は、無水物でも、一水和物の形態でもよいが、好ましくは後者である。他の好適な添加剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース及びトレハロースを包含する。
【0202】
微細ミストを発生するための電気水力学を用いたアトマイザーで使用するための好適な溶液製剤は、一駆動当たり本発明の化合物1μgから20mgを含有してもよく、そして駆動容積は、1μlから100μlと変化し得る。典型的な処方は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、及び塩化ナトリウムを含む。プロピレングリコールに代って使用してもよい代替溶媒は、グリセリン及びポリエチレングリコールである。
【0203】
好適な着香料、例えばメントール及びレボメントール、又は甘味料、例えば、サッカリン又はサッカリンナトリウムは、吸入/鼻腔内投与を対象とする本発明の処方に加えてもよい。
【0204】
吸入/鼻腔内投与用の処方は、例えば、PGLAを使用する即時及び/又は制御放出であるように処方され得る。制御放出製剤は、遅延−、持続−、パルス−、制御−、又は標的及びプログラム化放出を包含する。
【0205】
乾燥粉末吸入剤及びエアゾール剤の場合、投与単位は、定量を送達するバルブ手段によって決定される。本発明によるユニットは、典型的には、式Iの化合物を含有する、計測投与量又は「パフ」を投与するようにアレンジされる。一日の全用量は、典型的には、50μgから2,000mgであり、これは単回投与で、又はより一般的には、一日を通しての分割投与で投与すればよい。
【0206】
本発明の化合物は、前記の投与方法の何れかを使用して、溶解性、溶出速度、味のマスク、生物学的利用能、及び/又は安定性を改善するために、シクロデキストリン及び好適な誘導体又はプロピレングリコール含有ポリマーのような、可溶性高分子物質と組み合わせてもよい。例えば、薬物・シクロデキストリン錯体は、殆どの剤形及び投与経路用にも一般的に有用であることが判っている。包接又は非包接錯体の両者が使用可能である。薬物との直接錯体化の代わりとして、シクロデキストリンは、補助添加物として、即ち担体、希釈剤、又は可溶化剤として使用することもできる。これらの目的に最も普通に使用されるものは、α−、β−及びγ−シクロデキストリンであり、その例は、国際特許出願公開第91/11172号、同第94/02518号及び同第98/55148号に見出すことができる。
【0207】
例えば、特定の疾患又は身体状態を治療する目的に、有効成分の組合せを投与するのが望ましいので、2つ又はそれ以上の医薬組成物であって、少なくともその1つが本発明の化合物を含有する医薬粗製物が、組成物の共投与に適したキットの形態で便利に組み合わせられ得るものも、本発明の範囲内である。それ故に、本発明のキットは、2つ又はそれ以上の別個の医薬組成物であって少なくともその1つが本発明による式Iの化合物である医薬組成物と、コンテナ、分割されたボトル、又は分割されたホイルパケットのような前記組成物を分離して保持する手段を含む。そのようなキットの例としては、錠剤、カプセルその他の包装に使用される普通のブリスターパックである。
【0208】
本発明のキットは、別々の組成物を異なった投与間隔で投与する、又は、お互いに対して別々の組成物を滴定するために、異なった剤形、例えば、経口剤と非経口剤を投与するのに、特に適している。コンプライアンスを補助するために、キットは、投与の指示を含んでおり、そしていわゆる記憶補助付きで提供してもよい。
【0209】
ヒトの患者に投与するために、本発明の化合物の1日の総投与量は、典型的には、もちろん投与方法に依存するが、0.001mgから2,000mgの範囲である。これらの用量は、体重約60kgから70kgの平均的ヒト対象に基づいている。医師は、肥満や高齢者のような、この範囲から外れる体重の対象への用量を、容易に決定することができる。
【0210】
本明細書に関して、本明細書に引用した全ての特許及び刊行物は、あたかも本明細書の一部であるかのように、参照によって組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】A及びBは、ラット初代ミクログリアによって媒介される、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示する。アミロイド凝集は、チオフラビンSで染色し(明領域は矢印で示される)、ラット初代ミクログリアは、ミクログリアのマーカーOX−42で輪郭を示し、細胞核は、DAPIで染色した(星印で示した)。
【図2】ミクログリアによって媒介された、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示する。(A及びD)ラット初代ミクログリア、(B及びE)ラット初代ニューロン、及び(C及びF)いずれの細胞もなし。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光で染色し(A、B及びCの明領域)、可溶性Aβ(1−42)ペプチドは、Aβペプチドに特異的な抗体4G8で染色した(D、E及びFの明領域)。
【図3】可溶性Aβ(1−42)ペプチドをラット初代ミクログリアに加えたのに続いて、ラット初代ミクログリアによって媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成の時間的経過を図示したものである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(明領域)。
【図4】異なった濃度の可溶性Aβ(1−42)ペプチドを、ラット初代ミクログリアに加えた場合の、ラット初代ミクログリアによって媒介されたアミロイド形成を図示した棒グラフである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(緑色)。
【図5A】種々の型の単球様細胞系統存在下における、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示したものである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(明領域)。
【図5B】ラット器官型海馬切片中における、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示したものである。アミロイド凝集は、チオフラビンS蛍光によって標識した(明領域)。
【図6】(A)未分化胚幹細胞の存在下対(B)マクロファージ分化胚幹細胞の存在下での、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を図示したものである。アミロイド凝集体はチオフラビンS蛍光(明領域)で染色し、胚幹細胞は、マクロファージ抗体Mac3及び細胞核マーカーDAPIによるバックグランド中で同定した。
【図7A】電子顕微鏡レベルで、ラット初代ミクログリアにおける、クラスリン被覆頭部でしばしば終了する長い細胞質「管」に加えた可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド凝集体の発生(矢印)を図示する。アミロイド凝集体は、電気顕微鏡レベルの分解能で、それらの特徴的な繊維状の外観により同定した。
【図7B】電子顕微鏡レベルで、ラット初代ミクログリアにおける、ラット初代ミクログリアにより媒介される加えられた可溶性Aβ(1−42)ペプチドからの細胞外(星印)及び細胞内(矢印)アミロイド凝集体を図示する。アミロイド凝集体は、電気顕微鏡レベルの分解能で、それらの特徴的な繊維状の外観により同定した。
【図8A】ラット初代ミクログリアにより媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成の、ジブチリル−cAMP(db−cAMP)阻害を図示する棒グラフである。ミクログリアによるアミロイド形成に対するdb−cAMPの阻害効果は、濃度依存性である。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
【図8B】ラット初代ミクログリアにより媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成の8−ブロモ−cAMPによる阻害及びミクログリアによって媒介されるアミロイド形成に対する8−ブロモ−cAMPの阻害効果を図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
【図9A】ラット初代ミクログリアにより媒介された可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成に対する、プロスタグランジンEP2サブタイプの相対的阻害効果を図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
【図9B】プロスタグランジンサブタイプEP2が、ラット初代ミクログリアで細胞内cAMPレベルを増加する相対的な程度を図示する棒グラフである。
【図10】EP2プロスタグランジン受容体の選択的作動薬であるブタプロスト、及びEP3プロスタグランジン受容体の選択的作動薬であるスルプロストンが、ラット初代ミクログリアによって媒介される可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を阻害することを図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
【図11】プロスタグランジンE2受容体の選択的作動薬が、ラット初代ミクログリアによって媒介される可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を阻害することを図示する棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。
【図12】種々のホスホジエステラーゼの選択的阻害剤が、ラット初代ミクログリアによって媒介される、可溶性Aβ(1−42)ペプチドからのアミロイド形成を阻害すること、及び阻害効果が濃度依存性であることを示す棒グラフである。アミロイド凝集の程度は、チオフラビンS蛍光染色によって定量化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞によって媒介されるアミロイド形成を抑制するのに有用な化合物を同定する方法であって、細胞を候補化合物に接触させ;アミロイド形成ペプチドを加え;候補化合物の存在下及び非存在下での細胞により媒介されるアミロイド形成のレベルを比較する;ことを含む方法。
【請求項2】
細胞がミクログリア細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞がマクロファージ系統のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞が哺乳類の脳に由来するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞が哺乳類の脳に由来するミクログリア細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アミロイド形成ペプチドがアミロイド前駆体タンパク質に由来するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アミロイド形成ペプチドが、Aβ(1−43)ペプチド、Aβ(1−42)ペプチド、Aβ(1−40)ペプチド及びAβ(1−17)ペプチドからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
平滑筋細胞も存在し、且つアミロイド形成ペプチドが平滑筋細胞から押し出される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
平滑筋細胞が血管平滑筋細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する化合物を同定する方法であって、
(a)アミロイド形成ペプチドからアミロイド形成を媒介することができる、少なくとも1つの細胞を調製し;
(b)上記細胞を、候補化合物の有効量及びアミロイド形成ペプチドと混合し;
(c)上記混合物を、アミロイド形成が可能になるまで充分な時間インキュベートし;
(d)アミロイド形成のレベルを測定し;そして
(e)上記アミロイド形成のレベルを候補化合物の非存在下におけるレベルと比較する;
ことを含む方法。
【請求項11】
細胞がミクログリア細胞又はマクロファージ系統の細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞が哺乳類の脳又は神経系に由来するものである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
細胞が哺乳類の脳に由来するミクログリア細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
方法が平滑筋細胞の存在下で実施され、且つアミロイド形成ペプチドが平滑筋細胞によって提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
アミロイド形成ペプチドが、Aβ(1−43)ペプチド、Aβ(1−42)ペプチド、Aβ(1−40)ペプチド及びAβ(1−17)ペプチドからなる群から選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アミロイド形成ペプチドがプリオンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
標識薬剤がアミロイド形成のレベルを測定するのに使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
標識薬剤がチオフラビンS又はコンゴーレッドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
標識薬剤がアミロイド凝集体を認識する抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害することを必要とする対象において、細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する方法であって、細胞内cAMPのエンハンサー、cAMP特異的ホスホジエステラーゼの阻害剤、及びプロスタグランジンE2受容体の作動薬からなる群から選択された、少なくとも1つの化合物の有効量を、該対象に投与することを含む方法。
【請求項21】
細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害することを必要とする対象において、細胞媒介アミロイド形成を抑制又は阻害する方法であって、少なくとも1つの細胞内cAMPエンハンサーの有効量を、該対象に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−530999(P2008−530999A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556413(P2007−556413)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/006203
【国際公開番号】WO2006/091637
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】