ミクロセル及びミクロセルホルダ
【課題】本発明の目的は、より少量の試料であっても、効率的に分析することのできるミクロセルを提供することにある。
【解決手段】切り欠き22を入れた形状の小穴24が設けられた板状のスペーサ12と、該スペーサ12を間に挟んで対向配置され、測定光Lを透過する材質で構成された窓板14と、該窓板14を間に挟んで対向配置され、スペーサ12と窓板14とを密着させる窓押え16と、を備え、該スペーサ12の該小穴24と該窓板14間とによって囲まれた空間をセル内室30として液体試料が入れられ、該スペーサ12に該小穴24を複数設けることにより該セル内室30を複数設け、また液体試料の量に基づき定められた該小穴24の寸法D2及びスペーサ12の厚さを有し且つ該切り欠き22と該小穴24との連通部分25の寸法D1を該小穴24の寸法D2よりも小としたことを特徴とするミクロセル10。
【解決手段】切り欠き22を入れた形状の小穴24が設けられた板状のスペーサ12と、該スペーサ12を間に挟んで対向配置され、測定光Lを透過する材質で構成された窓板14と、該窓板14を間に挟んで対向配置され、スペーサ12と窓板14とを密着させる窓押え16と、を備え、該スペーサ12の該小穴24と該窓板14間とによって囲まれた空間をセル内室30として液体試料が入れられ、該スペーサ12に該小穴24を複数設けることにより該セル内室30を複数設け、また液体試料の量に基づき定められた該小穴24の寸法D2及びスペーサ12の厚さを有し且つ該切り欠き22と該小穴24との連通部分25の寸法D1を該小穴24の寸法D2よりも小としたことを特徴とするミクロセル10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミクロセル及びミクロセルホルダ、特に適切な分析を行うのに必要な試料量の少量化及びセルの多連化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体試料中の成分の定性や定量分析を行うため、分析装置が用いられている。
従来、分析装置で5μリットルレベルの少量の液体試料を分析する際には、V字型の
ミクロセル(例えば、特許文献1参照)や、光ファイバを用いることが考えられる。
【0003】
前記V字型ミクロセルを用いた分析では、セルの内部をV字型の溝状とし、試料部分の容量を小さくすることで、液体試料が微量の場合の分析を可能としており、分析装置からの測定光を溝の底部に貯留した微量の液体試料に透過させる。これを検知器に導き、その強度を測定する。
【0004】
前記光ファイバを用いた分析では、鏡面の上に液体試料を置き、液体試料に光ファイバの一端を接触させ、かつ鏡面との間を適切な距離に保つ。そして、光ファイバの他端から測定光を導入すると、測定光は液体試料に接触している光ファイバの一端から出て液体試料を透過し、鏡面で反射して再度光ファイバの一端に入る。これを取り出して検知器に導き、その強度を測定する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−228580号公報(図6(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の分野では、より少量の液体試料であっても分析を適切に行えることが要求されており、また、分析を効率的に行うためセルの多連化も要求されている。
しかしながら、前記従来方式にあっても、更なる試料量の少量化とセルの多連化との両立に関しては、改善の余地が残されていた。
【0007】
すなわち、前記V字型ミクロセルを用いたのでは、セル幅が1mm程度を薄く、しかもセル上端からセル内室まで少なくとも10mm以上の距離があって、ここに微量の試料を的確に入れることは困難である。この問題は、特に複数個のV字型ミクロセルを用いたのでは、深刻な問題となる。
またV字型ミクロセルを複数、ミクロセルホルダに並べて連続測定するもことも考えられるが、ミクロセルホルダにV字型ミクロセルをセットしたときの位置再現性の悪さから、測定結果の再現性が十分でないという問題点がある。
【0008】
また、前記光ファイバを用いたものでは、多連に構成することは、ほとんど不可能であった。
前記光ファイバを用いると、試料量を少なくすることができるが、光ファイバに光を入れるときに効率が悪く、通常90%程度失われるのが普通である。前記光ファイバを用いたものは、この過程を、2回繰り返すので、光の利用効率は1%程度にしかならない。この問題は、扱う試料量が少ないので試料から得られる光情報も弱いミクロセルを用いた分析では、より深刻となる。
【0009】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、より少量の試料であっても効率的に分析することのできるミクロセル及びミクロセルホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<ミクロセル>
前記目的を達成するために本発明にかかるミクロセルは、微量の液体試料を分析する際に用いられるミクロセルにおいて、板状のスペーサと、窓板と、を備えることが好適である。
ここで、前記スペーサは、側壁の試料注入口へ向かって切り欠きを入れた形状の小穴が複数設けられた板状のものとする。
また、前記窓板は、前記小穴を正面及び背面から覆うように、前記スペーサを間に挟んで対向配置され、測定光を透過する材質で構成されたものとする。
そして、本発明にかかるミクロセルは、前記スペーサ小穴と前記窓板間とによって囲まれた空間をセル内室として液体試料が入れられ、前記スペーサに前記小穴を複数設けることにより前記セル内室を複数設け、
また、前記液体試料の量に基づき定められた前記小穴の寸法及び前記スペーサの厚さを有し、且つ前記切り欠きと前記小穴との連通部分の寸法を前記小穴の寸法よりも小とすることが好適である。
【0011】
なお、本発明にかかるミクロセルにおいては、さらに窓押えを備えることが好適である。ここで、前記窓押えは、前記窓板を間に挟んで対向配置され、前記スペーサと該窓板と
を機械的に密着させるものとする。
また、本発明にかかるミクロセルにおいては、前記板状スペーサと前記窓板とを溶着することが、特に好適である。
【0012】
<ミクロセルホルダ>
また、前記目的を達成するために本発明にかかるミクロセルホルダは、本発明にかかるミクロセルを分析装置の中での光路上に保持するミクロセルホルダであって、セル切替機構を備えたことを特徴とする。
ここで、前記セル切替機構は、所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、前記ミクロセルを運動自在に保持する。
【0013】
なお、本発明において、前記セル切替機構は、略円盤状のミクロセルを保持し、保持手段と、回転手段と、を備えることが好適である。
ここで、前記保持手段は、前記ミクロセルを回転し、所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、該ミクロセルを回転自在に保持する。
また、前記回転手段は、前記ミクロセルを保持する前記保持手段を回転し、所望のセル内室を前記分析装置の中での光路上に挿入するためのものとする。
【0014】
また、本発明においては、さらに、マスクを備えることが好適である。
ここで、前記マスクは、前記ミクロセルのすぐ直前に設けられ、前段よりの測定光を絞って所望のセル内室に入れられた液体試料に入射させる。
【0015】
また、本発明においては、前記ミクロセルを、前記マスクの反対側から着脱自在とすることが好適である。
【0016】
さらに、本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、マスク位置調整手段を備えることが好適である。
ここで、前記マスク位置調整手段は、前記分析装置の中での光路と直交する平面内において、前記アパーチャの光軸位置を調節自在なものとする。
【発明の効果】
【0017】
<ミクロセル>
本発明にかかるミクロセルによれば、前述した手段を備えることとしたので、より少量の試料であっても、効率的に分析することができる。
本発明にかかるミクロセルにおいては、前記板状スペーサと窓板との間を溶着することにより、該板状スペーサと窓板との固定を、より確実なものとすることができるので、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
【0018】
<ミクロセルホルダ>
また、本発明にかかるミクロセルホルダによれば、前述した手段を備えることとしたので、より少量の試料であっても、効率的に分析することができる。
本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、セル切替機構により、円盤状のミクロセルを回転自在に保持し、所望のセル内室を順次に光路上に挿入することにより、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
【0019】
本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、前記ミクロセルのすぐ直前に前記マスクを設けることにより、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
本発明においては、前記ミクロセルを、前記マスクの反対側から着脱自在とすることにより、前記微量試料の効率的な分析を、より容易に行うことができる。
【0020】
本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、マスクの光軸位置を調節自在なマスク位置調整手段を備えることにより、前段よりの測定光を所望のセル内室に入れられた液体試料に確実に入射することができるので、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<ミクロセル>
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかるミクロセルの概略構成が示されている。同図(A)は該ミクロセルを光入射側より見た図、同図(B)は該ミクロセルの縦断面図、同図(C)は該ミクロセルの要部拡大図、同図(D)はセル内室の要部拡大図、同図(E)は該ミクロセルを上方より見た図である。
本発明において特徴的なことは、より少量の液体試料であっても分析を効率的に行うため、適切な分析を行うことのできる液体試料量を更に少量化し、かつセルを多連化したことである。このために、本発明にかかるミクロセルは、以下のように構成されている。
【0022】
同図に示すミクロセル10は、円形板(板状のスペーサ)12と、窓板14と、を備え、円盤状のものとしている。
ここで、円形板12は、耐溶媒性を有する材質(樹脂等)で構成されている。円形板12は、外周壁の試料注入口20へ向かって幅が次第に小から大となる切り欠き22を入れた形状の小円穴(小穴)24が複数設けられる。小円穴24は、各小円穴24の中心が円形板12の外周縁寄り円周上に等間隔で位置するように設けられている。
また、窓板14は、測定光Lを透過する材質(溶融石英板等)で構成されたドーナツ板状のものとしている。窓板14は、円形板12の小円穴24を光入射側及び光出射側から塞ぐ(覆う)ように、円形板12を間に挟んで対向配置される。
【0023】
本実施形態においては、液体試料が漏れないように円形板12と窓板14とを溶着している。
そして、円形板12の小円穴24と窓板14とによって囲まれた空間をセル内室30として液体試料が入れられる。
本実施形態において、ミクロセル10は、円形板12に8個(複数個)の小円穴24が設けられ、各小円穴24が窓板14間で塞がれることにより、8個(複数個)のセル内室30が設けられている。
【0024】
ミクロセル10は、液体試料の量に基づき定められた小円穴24の直径(寸法)及び円形板12の厚さを有する。ミクロセル10は、切り欠き22と小円穴24との連通部分25の内側寸法D1を、小円穴24の内径(内側寸法)D2よりも小としている。
なお、本実施形態においては、ミクロセル10が、さらに入射側外枠40及び出射側外枠42を備える。入射側外枠40及び出射側外枠42は、円形板12を間に挟んで対向配置されている。
【0025】
本実施形態にかかるミクロセル10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
すなわち、本実施形態にかかるミクロセル10は、用意することのできる液体試料の量に応じて、円形板12の厚さないし小円穴24の直径D2を調節することにより、極微量しか用意することができない液体試料であっても分析を適切に行えるの内容積を持つセル内室30を構成することができる。例えば円形板12の厚さを1mm、小円穴24の直径D2を2mmとすることにより、3μlの内容積を持つセル内室30を構成することができる。
【0026】
本実施形態においては、複数個のセル内室30を容易、確実に構成することができるので、ミクロセル10の多連化を容易、確実に実現することができる。本実施形態においては、各セル内室30内の液体試料は、その表面張力で保持されるので、前記ミクロセル10の多連化を、より容易、確実に実現することができる。
さらに、本実施形態においては、円形板12と窓板14とを溶着することにより、窓押え、ネジ等による機械的な密着方式に比較し、極めて高い液漏れ防止効果が得られるので、セル内室の液体試料が漏れるのを確実に防止することができる。
【0027】
前記作用について、より具体的に説明する。
分析を行う際には、マイクロシリンジなどを用い、ミクロセル10の試料注入口20から液体試料を注入する。
ここで、ミクロセル10は、円形板12の外周縁近くに小円穴24を有し、小円穴24から試料注入口20に向かって幅が次第に小から大となる切り欠き22を入れた形状の小円穴24を有している。
【0028】
このため切り欠き22の幅(内側寸法)は、試料注入口20で最大となっているので、試料注入口20へのマイクロピペット等の出し入れが容易となり、液体試料のセル内室30への注入を効率的に行うことができる。
また、小円穴24、切り欠き22は、円形板12の外周縁寄り円周上に位置するので、一般的なV字型ミクロセルに比較し、セル外壁からセル内室までの距離を短くすることができるので、セル室30内に液体試料をより的確に入れることが容易となり、液体試料の注入を、より効率的に行うことができる。
【0029】
また切り欠き22の内側寸法(幅)D1は、小円穴24との連通部分25(境界)において最小となり、セルに蓋をしなくても、セル内室30に注入された液体試料は、表面張力でセル内室30にしっかり保持されるように設計されている。
すなわち、ミクロセル10は、液体試料が表面張力でセル内室30に保持されるように、切り欠き22と小円穴24との連通部分25の内側寸法D1を、小円穴24の内径D2よりも小としている。
したがって、本実施形態は、蓋を必要とする一般的なセルに比較し、液体試料のセル内室30への準備が効率的に行え、またミクロセルの多連化が容易となる。
【0030】
このようにして本実施形態にかかるミクロセル10を構成することにより、極微量しか用意することができない試料であっても、確実な連続測定が行えるので、分析の効率が飛躍的に向上する。
液体試料の準備後、ミクロセル10を分析装置にセットして、各セル内室の液体試料を分析する。
ここで、本実施形態においては、ミクロセル10の連続測定を適切、効率的に行うため、以下のミクロセルホルダを用いることが好ましい。
【0031】
<ミクロセルホルダ>
図2には本実施形態にかかるミクロセル10がミクロセルホルダにセットされた状態が示されている。なお、同図は該ミクロセルホルダを上方より見た図である。
同図に示すミクロセルホルダ50は、セル台52と、セル切替機構54と、を備える。
ここで、セル台52は、紫外可視分光光度計(分析装置)本体の試料室56のベース58に設けられる。
また、セル切替機構54は、セル台52に設けられ、ミクロセル10を回転自在に保持し、所望のセル内室30を、試料室56の中での光路X上に挿入するためのものとする。
【0032】
セル切替機構54は、本発明の保持手段及び回転手段として、セル受け59と、出力側セル切替軸60と、出力側セル切替軸受け62と、出力側カサ歯車64と、入力側カサ歯車66と、入力側セル切替軸68と、入力側セル切替軸受け70と、セル切替ツマミ72と、を備える。
ここで、セル受け59は、光軸Xと窓板14とが直交するように、ミクロセル10を回転自在に保持する。
また、出力側セル切替軸60は、光軸Xの平行方向を中心にセル受け59を回転する。 出力側セル切替軸受け62は、出力側セル切替軸60を回転自在に保持する。
入力側セル切替軸68は、光軸Xの直交方向を中心に回転する。
入力側セル切替軸受け70は、入力側セル切替軸68を回転自在に保持する。
セル切替ツマミ72は、入力側セル切替軸68を回転する。
【0033】
なお、本実施形態において、ミクロセルホルダ50は、前段からの測定光Lをセル内室30の液体試料に集光させるレンズ80と、測定光Lを絞るためのマスク81と、セル内室30の液体試料を透過した測定光Lを平行光とするレンズ82と、を備える。
また、本実施形態においては、ミクロセル10との比較のための対照側ミクロセルを保持可能な対照側ミクロセルホルダ86を配置している。
【0034】
本実施形態にかかるミクロセルホルダ50は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
ミクロセル10の連続測定を行う際には、ミクロセル10をミクロセルホルダ50にセットし、紫外可視分光光度計本体の中での測定光Lを所望のセル内室30の液体試料に透過させ、その透過光の測定を行う。
ここで、本実施形態においては、セル切替機構54により、所望のセル内室30を順次、光路X上に挿入することが、確実、容易に行えるので、ミクロセル10の各セル内室30の液体試料の連続測定を確実、効率的に行うことができる。
【0035】
前記作用について、より具体的に説明する。
本実施形態においては、所望のセル窓、つまり所望のセル内室30を構成するところの窓板14に対し測定光Lが垂直に透過するように、液体試料の入れられたミクロセル10を、試料室56のミクロセルホルダ50にセットする。
【0036】
前記セット後、測定光Lは、レンズ80によって集光され、さらに、マスク81によって絞られて所望のセル内室30の液体試料に照射される。セル内室30の液体試料を透過した光は、後段のレンズ82によって平行光束Lに近くなるように戻され、後段に導かれ、分析に用いられる。
ここで、本実施形態においては、窓板14を介して測定光Lを液体試料に入射させ、その透過光Lを得ているので、光ファイバを用いて測定を行うものに比較し、測定光の利用効率に優れているので、少量の液体試料であっても、分析を適切に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態においては、ミクロセル10のすぐ直前にマスク81を設けている。
そして、マスク81により、前段よりの測定光Lを絞って、ミクロセル10の所望のセル内室30に入射させている。
この結果、本実施形態においては、ミクロセル10の所望のセル内室30に確実に測定光Lを入射させることができる。
【0038】
そして、本実施形態においては、セル切替機構54により、ミクロセル10を回転させることにより、各セル内室30の液体試料を順次、測定することができる。
すなわち、操作者は、図3(A)に示されるように、セル内室30に対し測定光Lが垂直に透過するように、ミクロセル10をミクロセルホルダ50にセットした状態で、同図(B)に示されるようなセル切替ツマミ72を回転することにより、ミクロセル10を同図(C)に示されるように回転し、所望のセル内室30を順次、試料室の光路X上に確実に及び容易に挿入することができる。
このように本実施形態においては、セル切替機構54により、ミクロセル10の所望セル内室30を順次、光路X上に挿入することが確実に及び容易に行えるので、ミクロセル10の各セル内室30の液体試料の連続測定を適切に及び効率的に行うことができる。
【0039】
ここで、同図(B)に示されるように、セル切替ツマミ72には、光路X上に位置するセル内室30を指示する番号が設けられているので、操作者は、これを見るだけで、現在、光路X上に挿入されているセル内室30を確実に特定することができるので、所望のセル内室30を確実に、容易に光路上に挿入して測定することができる。
また、測定後、セル内室30の液体試料は、マイクロシリンジ等により容易に回収することができる。回収後、セル内室30に水等を入れて洗浄することもできる。
【0040】
このように本実施形態においては、ミクロセルホルダ50が、セル切替機構54を備えている。したがって、本実施形態においては、多連のミクロセル10を順次、光路X上に適切に挿入することが容易にできる。
これにより、極微量しか用意することができない試料であっても、ミクロセル10を用いることで、適切に及び効率的に行うことができる。しかも、ミクロセル10の各セル内室30の連続測定を、適切に及び効率的に行うことができる。
したがって、本実施形態においては、従来、極めて困難であった数μリットルという少量の試料の分析であっても、その効率が飛躍的に向上する。
【0041】
ところで、本実施形態においては、前記分析を、確実に及び効率的に行うため、ミクロセルホルダに対するミクロセルのセットを、容易に及び確実に行うことも非常に重要である。
このために本実施形態においては、図4に示されるようなセル着脱機構を設けることも非常に好ましい。なお、同図(A)はミクロセル及びミクロセルホルダの一部の縦断面図、同図(B)はセル着脱機構(ミクロセル側)を入射側から見た図、同図(C)はセル着脱機構(ミクロセルホルダ側)を出射側から見た図である。
【0042】
同図に示すセル着脱機構90は、セル受け59と、位置決めピン92及びくぼみ94と、を備える。
セル受け59はミクロセルホルダ側に設けられ、出力側セル切替軸60と共に回転し、ミクロセル10を受ける。
また、位置決めピン92は、ミクロセル10の入射側外枠40に設けられ、くぼみ94はセル受け59に設けられる。
位置決めピン92及びくぼみ94は、ミクロセル10とミクロセルホルダ50との位置決めを行うためのものとする。
【0043】
このように本実施形態においては、ミクロセル10及びミクロセルホルダ50が、位置決めピン92及びくぼみ94を備える。
この結果、本実施形態においては、分光分析の際、くぼみ94に位置決めピン92が嵌るように、ミクロセルホルダ50のセル受け59に対しミクロセル10をセットするだけで、ミクロセル10の、ミクロセルホルダ50の所定位置への配置が容易に及び確実に行うことができる。これにより、本実施形態においては、ミクロセルホルダ50に対するミクロセル10の位置再現性が向上するので、多連のミクロセル10の連続測定が、より容易、確実となる。
【0044】
また、本実施形態においては、前記分析を、より効率的に行うため、ミクロセル10の入射側外枠40ないしミクロセルホルダ50のセル受け59(保持手段及び回転手段)は、これらの取り付け部分にマグネット96を含み、ミクロセルホルダ50のセル受け59に対しミクロセル10を、マグネット96の磁力を利用して、容易に着脱自在とすることも好適である。
【0045】
<セル着脱方向>
また、本実施形態においては、ミクロセル10を、マスク81の反対側から着脱自在とすることが特に好ましい。
すなわち、ミクロセル10をマスク側から着脱自在に構成すると、ミクロセル10の直前に設けたマスク81が邪魔となって、ミクロセル10の着脱が困難となる。
一方、ミクロセル10の着脱を容易に行うため、マスク81をミクロセル10よりも離隔して配置すると、本発明のマスク81の効果、つまり前段よりの測定光Lを絞って確実に所望のセル内室30に入射させる効果が十分に得られないことがあるからである。
【0046】
<セル位置決め機構>
また、本実施形態においては、前記分析を、より適切に及び効率的に行うため、所望のセル内室30が、確実に光路X上に位置するようにミクロセル10を回転するセル位置決め機構を備えることも非常に重要である。
そこで、本発明においては、ミクロセル10又はミクロセル10との一体化部分に、セル位置決め機構を設けることが好ましい。このミクロセル10又はミクロセル10との一体化部分としては、例えばミクロセル10の円盤面上又はミクロセル10の円周壁(側壁)上が、特に好ましい。
【0047】
図5にはセル位置決め機構の概略構成が示されている。同図(A)はセル位置決め機構近傍を側方より見た縦断面図、同図(B)はセル位置決め機構のミクロセル側を前段側から見た図である。
同図に示すセル位置決め機構98は、固定部材99aと、可動部材99bと、くぼみ100と、バネ102と、ネジ103と、ボール104と、を備える。
【0048】
固定部材99aは、ミクロセルホルダ50に固定され、ミクロセル10の円盤面、つまり可動部材99bに対し対向配置されている。
ミクロセル10の円盤面には可動部材99bが設けられ、可動部材99bは固定部材99aに対し回転する。この可動部材99bには、ミクロセル10のセル内室30の個数に応じた数だけくぼみ100が設けられ、本実施形態においてはくぼみ100が8個、可動部材99bの円盤面上に等間隔に設けられている。
ボール104は、くぼみ100に嵌り、くぼみ100の方向に、ばね102で押圧された状態で、可動部材99bに設けられたネジ103に保持されている。
【0049】
そして、操作者が、セル切替ツマミ72を回転すると、セル位置決め機構98の固定部材99aに対しミクロセル10の可動部材99bが回転し、所定の回転角毎に、つまりセル内室30が光路上に位置する毎に、ボール104とくぼみ100とがはまって引っ掛かりが生じる。操作者は、この時にセル内室30が光路上に確実に挿入されたものと判断することができる。
したがって、本実施形態においては、複数のセル内室30の光路上への順次、位置決めが、容易、確実に行えるので、セル内室30の位置再現性が向上し、多連のミクロセル10の連続測定が、容易に及び適切に行える。
本実施形態においては、位置決め機構98を、ミクロセル10又はミクロセル10との一体化部分、本実施形態においては可動部材99bに設けている。したがって、位置決め機構98をミクロセル10よりも離隔した他の部分に設けたものに比較し、伝達軸等の運動誤差による位置ずれの影響を確実に回避することができるで、より確実にセル内室30の位置決めを行うことができる。
【0050】
図6には前記図5に示したセル位置決め機構の変形例が示されている。同図(A)は位置決め機構を側方より見た図、同図(B)は該位置決め機構を円盤面側から見た縦断面図である。
同図に示すセル位置決め機構98は、ミクロセル10の側壁に対向配置されている。
ミクロセルホルダ50に固定されている固定部材99aは、ミクロセル10の側壁の上方に対向配置されている。
そして、可動部材99bのくぼみ100は、可動部材99bの円周壁(側壁)上に等間隔に設けられている。
同図に示されるようなセル位置決め機構98を構成しても、前記図5に示したセル位置決め機構98と同様の作用効果が得られる。
【0051】
<マスク位置調節手段>
また、本実施形態においては、ミクロセル10の所望のセル内室30に、より確実に測定光を入射させるためには、ミクロセル10の直前に設けられたマスク81の位置調整を行うことも非常に重要である
例えば、セル内室30の内径は、例えば約1、6mmと非常に小さいが、マスク81のアパーチャ81aの口径は、約1.0mmというように非常に小さいため、マスク81の光軸の位置調整を行うためのマスク位置調整手段108を備えることも好ましい。
図7に示されるようにマスク位置調整手段108は、紫外可視分光光度計本体の中での
光路Xと直交する平面内において、本実施形態においては、横方向(図中、矢印i方向)、上下方向(図中、矢印j方向)にマスク81の光軸位置、つまりアパーチャ81aの位置を移動自在としている。
このようなマスク位置調整手段108を設けることにより、マスク81の光軸位置を調整することができるので、ミクロセル10の非常に小さなセル内室30に対しても、より確実に測定光Lを入射させることができる。
【0052】
なお、前記構成では、8個のセル内室30を備えたミクロセル10を用いた例について説明したが、本発明は、前記個数のものに限定されるものでなく、任意の個数のものに適用することができる。
また、前記構成では、光路X上に挿入されているセル内室30の切替を、操作者が試料室56の外部からセル切替ツマミ72を手動で回転して行った例について説明したが、各セル内室30の切替を自動で行うこともできる。例えばモータからの駆動力を入力側セル切替軸68に伝達し、入力側セル切替軸68の回転をコンピュータ制御することで、光路X上に挿入されているセル内室30の切替を自動に行うこともできる。
【0053】
前記構成では、前記板状スペーサと前記窓板とを溶着することが特に好ましい。すなわち、前記板状スペーサと前記窓板とを溶着したセルは、窓押え、ネジ等による機械的な密着方式に比較し、極めて高い、液漏れ防止効果が得られるので、セル内室の液体試料が漏れるのを確実に防止することができるからである。
しかしながら、ミクロセル10の円形板(板状スペーサ)12と窓板14との間を、機械的な密着、例えば窓押え、ネジ等により固定したミクロセルにも適応することができる。
【0054】
図8には本実施形態にかかるミクロセルの変形例が示されている。同図(A)は該ミクロセルを光入射側より見た図、同図(B)は該ミクロセルの縦断面図、同図(C)は該ミクロセルの要部拡大図、同図(D)は該ミクロセルを上方より見た図である。
前記構成では、窓板14として、ドーナツ板状の窓板を用いた例について説明したが、同図では、複数対の円板状窓板14を用いている。このような対の円板状の窓板14をそれぞれ対応するセル内室30に配置している。
また同図に示すミクロセル10は、窓押え16を備えている。
ここで、窓押え16は、剛性を有する金属等の板で構成され、窓板14を円形板12に向けて、ネジ等で締め付けるように、窓板14を間に挟んで対向配置され、液体試料が漏れないように、円形板12と窓板14とを密着させている。窓押え16は、測定光26を窓板14に通過させるための光通過穴28が設けられている。
また、本実施形態においては、小円穴24が各窓板14間で塞がれることにより、8個(複数個)のセル内室30が設けられている。
本実施形態においては、入射側外枠40、及び出射側外枠42が、窓押え16を間に挟んで対向配置されている。
【0055】
<直動セル>
前述のようにミクロセル10は、複数個のセル内室30を円形板12の円周上に等間隔に配置したものが特に好ましいが、図9に示されるような長尺板(板状のスペーサ)110上の長手方向に一直線状に複数個のセル内室30を配置することも好ましい。
この場合は、ミクロセルホルダのセル切替機構として、前記回転手段に代えて、ミクロセル10を光軸直交方向(図中、矢印I方向)に直線移動することで、光路X上に挿入されるセル内室30を切り替える直動手段112を用いることが好ましい。
【0056】
このように窓板とスペーサ間は特に溶着されたミクロセルが好ましいが、前記セルのように、セル押えを用いて窓板とスペーサ間を密着させたセルを構成することもできる。
この結果、前記窓板とスペーサ間を溶着したミクロセルと同様、蓋をしなくても、液体試料は表面張力でセル内室30にしっかり保持されるので、セルの多連化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態にかかるミクロセルの概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるミクロセルがセットされた状態のミクロセルホルダの概略構成の説明図である。
【図3A】本発明の一実施形態にかかるミクロセルがセットされた状態のミクロセルホルダを光軸直交方向より見た図である。
【図3B】前記図3Aに示したミクロセルホルダのセル切替ツマミの拡大図である。
【図3C】前記図3Aに示したミクロセルホルダを光軸方向より見た図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるミクロセルホルダに好適なセル着脱機構の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるミクロセルホルダに好適なセル位置決め機構の説明図である。
【図6】図5に示したセル位置決め機構の変形例である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるミクロセルホルダに好適なマスク位置調整手段の説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかるミクロセル(機械的密着方式)の説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態にかかる直動ミクロセルの概略構成の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ミクロセル
12 円形板(板状スペーサ)
14 窓板
20 試料注入口
22 切り欠き
24 小円穴(小穴)
30 セル内室
50 ミクロセルホルダ
【技術分野】
【0001】
本発明はミクロセル及びミクロセルホルダ、特に適切な分析を行うのに必要な試料量の少量化及びセルの多連化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体試料中の成分の定性や定量分析を行うため、分析装置が用いられている。
従来、分析装置で5μリットルレベルの少量の液体試料を分析する際には、V字型の
ミクロセル(例えば、特許文献1参照)や、光ファイバを用いることが考えられる。
【0003】
前記V字型ミクロセルを用いた分析では、セルの内部をV字型の溝状とし、試料部分の容量を小さくすることで、液体試料が微量の場合の分析を可能としており、分析装置からの測定光を溝の底部に貯留した微量の液体試料に透過させる。これを検知器に導き、その強度を測定する。
【0004】
前記光ファイバを用いた分析では、鏡面の上に液体試料を置き、液体試料に光ファイバの一端を接触させ、かつ鏡面との間を適切な距離に保つ。そして、光ファイバの他端から測定光を導入すると、測定光は液体試料に接触している光ファイバの一端から出て液体試料を透過し、鏡面で反射して再度光ファイバの一端に入る。これを取り出して検知器に導き、その強度を測定する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−228580号公報(図6(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の分野では、より少量の液体試料であっても分析を適切に行えることが要求されており、また、分析を効率的に行うためセルの多連化も要求されている。
しかしながら、前記従来方式にあっても、更なる試料量の少量化とセルの多連化との両立に関しては、改善の余地が残されていた。
【0007】
すなわち、前記V字型ミクロセルを用いたのでは、セル幅が1mm程度を薄く、しかもセル上端からセル内室まで少なくとも10mm以上の距離があって、ここに微量の試料を的確に入れることは困難である。この問題は、特に複数個のV字型ミクロセルを用いたのでは、深刻な問題となる。
またV字型ミクロセルを複数、ミクロセルホルダに並べて連続測定するもことも考えられるが、ミクロセルホルダにV字型ミクロセルをセットしたときの位置再現性の悪さから、測定結果の再現性が十分でないという問題点がある。
【0008】
また、前記光ファイバを用いたものでは、多連に構成することは、ほとんど不可能であった。
前記光ファイバを用いると、試料量を少なくすることができるが、光ファイバに光を入れるときに効率が悪く、通常90%程度失われるのが普通である。前記光ファイバを用いたものは、この過程を、2回繰り返すので、光の利用効率は1%程度にしかならない。この問題は、扱う試料量が少ないので試料から得られる光情報も弱いミクロセルを用いた分析では、より深刻となる。
【0009】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、より少量の試料であっても効率的に分析することのできるミクロセル及びミクロセルホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<ミクロセル>
前記目的を達成するために本発明にかかるミクロセルは、微量の液体試料を分析する際に用いられるミクロセルにおいて、板状のスペーサと、窓板と、を備えることが好適である。
ここで、前記スペーサは、側壁の試料注入口へ向かって切り欠きを入れた形状の小穴が複数設けられた板状のものとする。
また、前記窓板は、前記小穴を正面及び背面から覆うように、前記スペーサを間に挟んで対向配置され、測定光を透過する材質で構成されたものとする。
そして、本発明にかかるミクロセルは、前記スペーサ小穴と前記窓板間とによって囲まれた空間をセル内室として液体試料が入れられ、前記スペーサに前記小穴を複数設けることにより前記セル内室を複数設け、
また、前記液体試料の量に基づき定められた前記小穴の寸法及び前記スペーサの厚さを有し、且つ前記切り欠きと前記小穴との連通部分の寸法を前記小穴の寸法よりも小とすることが好適である。
【0011】
なお、本発明にかかるミクロセルにおいては、さらに窓押えを備えることが好適である。ここで、前記窓押えは、前記窓板を間に挟んで対向配置され、前記スペーサと該窓板と
を機械的に密着させるものとする。
また、本発明にかかるミクロセルにおいては、前記板状スペーサと前記窓板とを溶着することが、特に好適である。
【0012】
<ミクロセルホルダ>
また、前記目的を達成するために本発明にかかるミクロセルホルダは、本発明にかかるミクロセルを分析装置の中での光路上に保持するミクロセルホルダであって、セル切替機構を備えたことを特徴とする。
ここで、前記セル切替機構は、所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、前記ミクロセルを運動自在に保持する。
【0013】
なお、本発明において、前記セル切替機構は、略円盤状のミクロセルを保持し、保持手段と、回転手段と、を備えることが好適である。
ここで、前記保持手段は、前記ミクロセルを回転し、所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、該ミクロセルを回転自在に保持する。
また、前記回転手段は、前記ミクロセルを保持する前記保持手段を回転し、所望のセル内室を前記分析装置の中での光路上に挿入するためのものとする。
【0014】
また、本発明においては、さらに、マスクを備えることが好適である。
ここで、前記マスクは、前記ミクロセルのすぐ直前に設けられ、前段よりの測定光を絞って所望のセル内室に入れられた液体試料に入射させる。
【0015】
また、本発明においては、前記ミクロセルを、前記マスクの反対側から着脱自在とすることが好適である。
【0016】
さらに、本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、マスク位置調整手段を備えることが好適である。
ここで、前記マスク位置調整手段は、前記分析装置の中での光路と直交する平面内において、前記アパーチャの光軸位置を調節自在なものとする。
【発明の効果】
【0017】
<ミクロセル>
本発明にかかるミクロセルによれば、前述した手段を備えることとしたので、より少量の試料であっても、効率的に分析することができる。
本発明にかかるミクロセルにおいては、前記板状スペーサと窓板との間を溶着することにより、該板状スペーサと窓板との固定を、より確実なものとすることができるので、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
【0018】
<ミクロセルホルダ>
また、本発明にかかるミクロセルホルダによれば、前述した手段を備えることとしたので、より少量の試料であっても、効率的に分析することができる。
本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、セル切替機構により、円盤状のミクロセルを回転自在に保持し、所望のセル内室を順次に光路上に挿入することにより、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
【0019】
本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、前記ミクロセルのすぐ直前に前記マスクを設けることにより、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
本発明においては、前記ミクロセルを、前記マスクの反対側から着脱自在とすることにより、前記微量試料の効率的な分析を、より容易に行うことができる。
【0020】
本発明にかかるミクロセルホルダにおいては、マスクの光軸位置を調節自在なマスク位置調整手段を備えることにより、前段よりの測定光を所望のセル内室に入れられた液体試料に確実に入射することができるので、前記微量試料の効率的な分析を、より確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<ミクロセル>
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかるミクロセルの概略構成が示されている。同図(A)は該ミクロセルを光入射側より見た図、同図(B)は該ミクロセルの縦断面図、同図(C)は該ミクロセルの要部拡大図、同図(D)はセル内室の要部拡大図、同図(E)は該ミクロセルを上方より見た図である。
本発明において特徴的なことは、より少量の液体試料であっても分析を効率的に行うため、適切な分析を行うことのできる液体試料量を更に少量化し、かつセルを多連化したことである。このために、本発明にかかるミクロセルは、以下のように構成されている。
【0022】
同図に示すミクロセル10は、円形板(板状のスペーサ)12と、窓板14と、を備え、円盤状のものとしている。
ここで、円形板12は、耐溶媒性を有する材質(樹脂等)で構成されている。円形板12は、外周壁の試料注入口20へ向かって幅が次第に小から大となる切り欠き22を入れた形状の小円穴(小穴)24が複数設けられる。小円穴24は、各小円穴24の中心が円形板12の外周縁寄り円周上に等間隔で位置するように設けられている。
また、窓板14は、測定光Lを透過する材質(溶融石英板等)で構成されたドーナツ板状のものとしている。窓板14は、円形板12の小円穴24を光入射側及び光出射側から塞ぐ(覆う)ように、円形板12を間に挟んで対向配置される。
【0023】
本実施形態においては、液体試料が漏れないように円形板12と窓板14とを溶着している。
そして、円形板12の小円穴24と窓板14とによって囲まれた空間をセル内室30として液体試料が入れられる。
本実施形態において、ミクロセル10は、円形板12に8個(複数個)の小円穴24が設けられ、各小円穴24が窓板14間で塞がれることにより、8個(複数個)のセル内室30が設けられている。
【0024】
ミクロセル10は、液体試料の量に基づき定められた小円穴24の直径(寸法)及び円形板12の厚さを有する。ミクロセル10は、切り欠き22と小円穴24との連通部分25の内側寸法D1を、小円穴24の内径(内側寸法)D2よりも小としている。
なお、本実施形態においては、ミクロセル10が、さらに入射側外枠40及び出射側外枠42を備える。入射側外枠40及び出射側外枠42は、円形板12を間に挟んで対向配置されている。
【0025】
本実施形態にかかるミクロセル10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
すなわち、本実施形態にかかるミクロセル10は、用意することのできる液体試料の量に応じて、円形板12の厚さないし小円穴24の直径D2を調節することにより、極微量しか用意することができない液体試料であっても分析を適切に行えるの内容積を持つセル内室30を構成することができる。例えば円形板12の厚さを1mm、小円穴24の直径D2を2mmとすることにより、3μlの内容積を持つセル内室30を構成することができる。
【0026】
本実施形態においては、複数個のセル内室30を容易、確実に構成することができるので、ミクロセル10の多連化を容易、確実に実現することができる。本実施形態においては、各セル内室30内の液体試料は、その表面張力で保持されるので、前記ミクロセル10の多連化を、より容易、確実に実現することができる。
さらに、本実施形態においては、円形板12と窓板14とを溶着することにより、窓押え、ネジ等による機械的な密着方式に比較し、極めて高い液漏れ防止効果が得られるので、セル内室の液体試料が漏れるのを確実に防止することができる。
【0027】
前記作用について、より具体的に説明する。
分析を行う際には、マイクロシリンジなどを用い、ミクロセル10の試料注入口20から液体試料を注入する。
ここで、ミクロセル10は、円形板12の外周縁近くに小円穴24を有し、小円穴24から試料注入口20に向かって幅が次第に小から大となる切り欠き22を入れた形状の小円穴24を有している。
【0028】
このため切り欠き22の幅(内側寸法)は、試料注入口20で最大となっているので、試料注入口20へのマイクロピペット等の出し入れが容易となり、液体試料のセル内室30への注入を効率的に行うことができる。
また、小円穴24、切り欠き22は、円形板12の外周縁寄り円周上に位置するので、一般的なV字型ミクロセルに比較し、セル外壁からセル内室までの距離を短くすることができるので、セル室30内に液体試料をより的確に入れることが容易となり、液体試料の注入を、より効率的に行うことができる。
【0029】
また切り欠き22の内側寸法(幅)D1は、小円穴24との連通部分25(境界)において最小となり、セルに蓋をしなくても、セル内室30に注入された液体試料は、表面張力でセル内室30にしっかり保持されるように設計されている。
すなわち、ミクロセル10は、液体試料が表面張力でセル内室30に保持されるように、切り欠き22と小円穴24との連通部分25の内側寸法D1を、小円穴24の内径D2よりも小としている。
したがって、本実施形態は、蓋を必要とする一般的なセルに比較し、液体試料のセル内室30への準備が効率的に行え、またミクロセルの多連化が容易となる。
【0030】
このようにして本実施形態にかかるミクロセル10を構成することにより、極微量しか用意することができない試料であっても、確実な連続測定が行えるので、分析の効率が飛躍的に向上する。
液体試料の準備後、ミクロセル10を分析装置にセットして、各セル内室の液体試料を分析する。
ここで、本実施形態においては、ミクロセル10の連続測定を適切、効率的に行うため、以下のミクロセルホルダを用いることが好ましい。
【0031】
<ミクロセルホルダ>
図2には本実施形態にかかるミクロセル10がミクロセルホルダにセットされた状態が示されている。なお、同図は該ミクロセルホルダを上方より見た図である。
同図に示すミクロセルホルダ50は、セル台52と、セル切替機構54と、を備える。
ここで、セル台52は、紫外可視分光光度計(分析装置)本体の試料室56のベース58に設けられる。
また、セル切替機構54は、セル台52に設けられ、ミクロセル10を回転自在に保持し、所望のセル内室30を、試料室56の中での光路X上に挿入するためのものとする。
【0032】
セル切替機構54は、本発明の保持手段及び回転手段として、セル受け59と、出力側セル切替軸60と、出力側セル切替軸受け62と、出力側カサ歯車64と、入力側カサ歯車66と、入力側セル切替軸68と、入力側セル切替軸受け70と、セル切替ツマミ72と、を備える。
ここで、セル受け59は、光軸Xと窓板14とが直交するように、ミクロセル10を回転自在に保持する。
また、出力側セル切替軸60は、光軸Xの平行方向を中心にセル受け59を回転する。 出力側セル切替軸受け62は、出力側セル切替軸60を回転自在に保持する。
入力側セル切替軸68は、光軸Xの直交方向を中心に回転する。
入力側セル切替軸受け70は、入力側セル切替軸68を回転自在に保持する。
セル切替ツマミ72は、入力側セル切替軸68を回転する。
【0033】
なお、本実施形態において、ミクロセルホルダ50は、前段からの測定光Lをセル内室30の液体試料に集光させるレンズ80と、測定光Lを絞るためのマスク81と、セル内室30の液体試料を透過した測定光Lを平行光とするレンズ82と、を備える。
また、本実施形態においては、ミクロセル10との比較のための対照側ミクロセルを保持可能な対照側ミクロセルホルダ86を配置している。
【0034】
本実施形態にかかるミクロセルホルダ50は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
ミクロセル10の連続測定を行う際には、ミクロセル10をミクロセルホルダ50にセットし、紫外可視分光光度計本体の中での測定光Lを所望のセル内室30の液体試料に透過させ、その透過光の測定を行う。
ここで、本実施形態においては、セル切替機構54により、所望のセル内室30を順次、光路X上に挿入することが、確実、容易に行えるので、ミクロセル10の各セル内室30の液体試料の連続測定を確実、効率的に行うことができる。
【0035】
前記作用について、より具体的に説明する。
本実施形態においては、所望のセル窓、つまり所望のセル内室30を構成するところの窓板14に対し測定光Lが垂直に透過するように、液体試料の入れられたミクロセル10を、試料室56のミクロセルホルダ50にセットする。
【0036】
前記セット後、測定光Lは、レンズ80によって集光され、さらに、マスク81によって絞られて所望のセル内室30の液体試料に照射される。セル内室30の液体試料を透過した光は、後段のレンズ82によって平行光束Lに近くなるように戻され、後段に導かれ、分析に用いられる。
ここで、本実施形態においては、窓板14を介して測定光Lを液体試料に入射させ、その透過光Lを得ているので、光ファイバを用いて測定を行うものに比較し、測定光の利用効率に優れているので、少量の液体試料であっても、分析を適切に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態においては、ミクロセル10のすぐ直前にマスク81を設けている。
そして、マスク81により、前段よりの測定光Lを絞って、ミクロセル10の所望のセル内室30に入射させている。
この結果、本実施形態においては、ミクロセル10の所望のセル内室30に確実に測定光Lを入射させることができる。
【0038】
そして、本実施形態においては、セル切替機構54により、ミクロセル10を回転させることにより、各セル内室30の液体試料を順次、測定することができる。
すなわち、操作者は、図3(A)に示されるように、セル内室30に対し測定光Lが垂直に透過するように、ミクロセル10をミクロセルホルダ50にセットした状態で、同図(B)に示されるようなセル切替ツマミ72を回転することにより、ミクロセル10を同図(C)に示されるように回転し、所望のセル内室30を順次、試料室の光路X上に確実に及び容易に挿入することができる。
このように本実施形態においては、セル切替機構54により、ミクロセル10の所望セル内室30を順次、光路X上に挿入することが確実に及び容易に行えるので、ミクロセル10の各セル内室30の液体試料の連続測定を適切に及び効率的に行うことができる。
【0039】
ここで、同図(B)に示されるように、セル切替ツマミ72には、光路X上に位置するセル内室30を指示する番号が設けられているので、操作者は、これを見るだけで、現在、光路X上に挿入されているセル内室30を確実に特定することができるので、所望のセル内室30を確実に、容易に光路上に挿入して測定することができる。
また、測定後、セル内室30の液体試料は、マイクロシリンジ等により容易に回収することができる。回収後、セル内室30に水等を入れて洗浄することもできる。
【0040】
このように本実施形態においては、ミクロセルホルダ50が、セル切替機構54を備えている。したがって、本実施形態においては、多連のミクロセル10を順次、光路X上に適切に挿入することが容易にできる。
これにより、極微量しか用意することができない試料であっても、ミクロセル10を用いることで、適切に及び効率的に行うことができる。しかも、ミクロセル10の各セル内室30の連続測定を、適切に及び効率的に行うことができる。
したがって、本実施形態においては、従来、極めて困難であった数μリットルという少量の試料の分析であっても、その効率が飛躍的に向上する。
【0041】
ところで、本実施形態においては、前記分析を、確実に及び効率的に行うため、ミクロセルホルダに対するミクロセルのセットを、容易に及び確実に行うことも非常に重要である。
このために本実施形態においては、図4に示されるようなセル着脱機構を設けることも非常に好ましい。なお、同図(A)はミクロセル及びミクロセルホルダの一部の縦断面図、同図(B)はセル着脱機構(ミクロセル側)を入射側から見た図、同図(C)はセル着脱機構(ミクロセルホルダ側)を出射側から見た図である。
【0042】
同図に示すセル着脱機構90は、セル受け59と、位置決めピン92及びくぼみ94と、を備える。
セル受け59はミクロセルホルダ側に設けられ、出力側セル切替軸60と共に回転し、ミクロセル10を受ける。
また、位置決めピン92は、ミクロセル10の入射側外枠40に設けられ、くぼみ94はセル受け59に設けられる。
位置決めピン92及びくぼみ94は、ミクロセル10とミクロセルホルダ50との位置決めを行うためのものとする。
【0043】
このように本実施形態においては、ミクロセル10及びミクロセルホルダ50が、位置決めピン92及びくぼみ94を備える。
この結果、本実施形態においては、分光分析の際、くぼみ94に位置決めピン92が嵌るように、ミクロセルホルダ50のセル受け59に対しミクロセル10をセットするだけで、ミクロセル10の、ミクロセルホルダ50の所定位置への配置が容易に及び確実に行うことができる。これにより、本実施形態においては、ミクロセルホルダ50に対するミクロセル10の位置再現性が向上するので、多連のミクロセル10の連続測定が、より容易、確実となる。
【0044】
また、本実施形態においては、前記分析を、より効率的に行うため、ミクロセル10の入射側外枠40ないしミクロセルホルダ50のセル受け59(保持手段及び回転手段)は、これらの取り付け部分にマグネット96を含み、ミクロセルホルダ50のセル受け59に対しミクロセル10を、マグネット96の磁力を利用して、容易に着脱自在とすることも好適である。
【0045】
<セル着脱方向>
また、本実施形態においては、ミクロセル10を、マスク81の反対側から着脱自在とすることが特に好ましい。
すなわち、ミクロセル10をマスク側から着脱自在に構成すると、ミクロセル10の直前に設けたマスク81が邪魔となって、ミクロセル10の着脱が困難となる。
一方、ミクロセル10の着脱を容易に行うため、マスク81をミクロセル10よりも離隔して配置すると、本発明のマスク81の効果、つまり前段よりの測定光Lを絞って確実に所望のセル内室30に入射させる効果が十分に得られないことがあるからである。
【0046】
<セル位置決め機構>
また、本実施形態においては、前記分析を、より適切に及び効率的に行うため、所望のセル内室30が、確実に光路X上に位置するようにミクロセル10を回転するセル位置決め機構を備えることも非常に重要である。
そこで、本発明においては、ミクロセル10又はミクロセル10との一体化部分に、セル位置決め機構を設けることが好ましい。このミクロセル10又はミクロセル10との一体化部分としては、例えばミクロセル10の円盤面上又はミクロセル10の円周壁(側壁)上が、特に好ましい。
【0047】
図5にはセル位置決め機構の概略構成が示されている。同図(A)はセル位置決め機構近傍を側方より見た縦断面図、同図(B)はセル位置決め機構のミクロセル側を前段側から見た図である。
同図に示すセル位置決め機構98は、固定部材99aと、可動部材99bと、くぼみ100と、バネ102と、ネジ103と、ボール104と、を備える。
【0048】
固定部材99aは、ミクロセルホルダ50に固定され、ミクロセル10の円盤面、つまり可動部材99bに対し対向配置されている。
ミクロセル10の円盤面には可動部材99bが設けられ、可動部材99bは固定部材99aに対し回転する。この可動部材99bには、ミクロセル10のセル内室30の個数に応じた数だけくぼみ100が設けられ、本実施形態においてはくぼみ100が8個、可動部材99bの円盤面上に等間隔に設けられている。
ボール104は、くぼみ100に嵌り、くぼみ100の方向に、ばね102で押圧された状態で、可動部材99bに設けられたネジ103に保持されている。
【0049】
そして、操作者が、セル切替ツマミ72を回転すると、セル位置決め機構98の固定部材99aに対しミクロセル10の可動部材99bが回転し、所定の回転角毎に、つまりセル内室30が光路上に位置する毎に、ボール104とくぼみ100とがはまって引っ掛かりが生じる。操作者は、この時にセル内室30が光路上に確実に挿入されたものと判断することができる。
したがって、本実施形態においては、複数のセル内室30の光路上への順次、位置決めが、容易、確実に行えるので、セル内室30の位置再現性が向上し、多連のミクロセル10の連続測定が、容易に及び適切に行える。
本実施形態においては、位置決め機構98を、ミクロセル10又はミクロセル10との一体化部分、本実施形態においては可動部材99bに設けている。したがって、位置決め機構98をミクロセル10よりも離隔した他の部分に設けたものに比較し、伝達軸等の運動誤差による位置ずれの影響を確実に回避することができるで、より確実にセル内室30の位置決めを行うことができる。
【0050】
図6には前記図5に示したセル位置決め機構の変形例が示されている。同図(A)は位置決め機構を側方より見た図、同図(B)は該位置決め機構を円盤面側から見た縦断面図である。
同図に示すセル位置決め機構98は、ミクロセル10の側壁に対向配置されている。
ミクロセルホルダ50に固定されている固定部材99aは、ミクロセル10の側壁の上方に対向配置されている。
そして、可動部材99bのくぼみ100は、可動部材99bの円周壁(側壁)上に等間隔に設けられている。
同図に示されるようなセル位置決め機構98を構成しても、前記図5に示したセル位置決め機構98と同様の作用効果が得られる。
【0051】
<マスク位置調節手段>
また、本実施形態においては、ミクロセル10の所望のセル内室30に、より確実に測定光を入射させるためには、ミクロセル10の直前に設けられたマスク81の位置調整を行うことも非常に重要である
例えば、セル内室30の内径は、例えば約1、6mmと非常に小さいが、マスク81のアパーチャ81aの口径は、約1.0mmというように非常に小さいため、マスク81の光軸の位置調整を行うためのマスク位置調整手段108を備えることも好ましい。
図7に示されるようにマスク位置調整手段108は、紫外可視分光光度計本体の中での
光路Xと直交する平面内において、本実施形態においては、横方向(図中、矢印i方向)、上下方向(図中、矢印j方向)にマスク81の光軸位置、つまりアパーチャ81aの位置を移動自在としている。
このようなマスク位置調整手段108を設けることにより、マスク81の光軸位置を調整することができるので、ミクロセル10の非常に小さなセル内室30に対しても、より確実に測定光Lを入射させることができる。
【0052】
なお、前記構成では、8個のセル内室30を備えたミクロセル10を用いた例について説明したが、本発明は、前記個数のものに限定されるものでなく、任意の個数のものに適用することができる。
また、前記構成では、光路X上に挿入されているセル内室30の切替を、操作者が試料室56の外部からセル切替ツマミ72を手動で回転して行った例について説明したが、各セル内室30の切替を自動で行うこともできる。例えばモータからの駆動力を入力側セル切替軸68に伝達し、入力側セル切替軸68の回転をコンピュータ制御することで、光路X上に挿入されているセル内室30の切替を自動に行うこともできる。
【0053】
前記構成では、前記板状スペーサと前記窓板とを溶着することが特に好ましい。すなわち、前記板状スペーサと前記窓板とを溶着したセルは、窓押え、ネジ等による機械的な密着方式に比較し、極めて高い、液漏れ防止効果が得られるので、セル内室の液体試料が漏れるのを確実に防止することができるからである。
しかしながら、ミクロセル10の円形板(板状スペーサ)12と窓板14との間を、機械的な密着、例えば窓押え、ネジ等により固定したミクロセルにも適応することができる。
【0054】
図8には本実施形態にかかるミクロセルの変形例が示されている。同図(A)は該ミクロセルを光入射側より見た図、同図(B)は該ミクロセルの縦断面図、同図(C)は該ミクロセルの要部拡大図、同図(D)は該ミクロセルを上方より見た図である。
前記構成では、窓板14として、ドーナツ板状の窓板を用いた例について説明したが、同図では、複数対の円板状窓板14を用いている。このような対の円板状の窓板14をそれぞれ対応するセル内室30に配置している。
また同図に示すミクロセル10は、窓押え16を備えている。
ここで、窓押え16は、剛性を有する金属等の板で構成され、窓板14を円形板12に向けて、ネジ等で締め付けるように、窓板14を間に挟んで対向配置され、液体試料が漏れないように、円形板12と窓板14とを密着させている。窓押え16は、測定光26を窓板14に通過させるための光通過穴28が設けられている。
また、本実施形態においては、小円穴24が各窓板14間で塞がれることにより、8個(複数個)のセル内室30が設けられている。
本実施形態においては、入射側外枠40、及び出射側外枠42が、窓押え16を間に挟んで対向配置されている。
【0055】
<直動セル>
前述のようにミクロセル10は、複数個のセル内室30を円形板12の円周上に等間隔に配置したものが特に好ましいが、図9に示されるような長尺板(板状のスペーサ)110上の長手方向に一直線状に複数個のセル内室30を配置することも好ましい。
この場合は、ミクロセルホルダのセル切替機構として、前記回転手段に代えて、ミクロセル10を光軸直交方向(図中、矢印I方向)に直線移動することで、光路X上に挿入されるセル内室30を切り替える直動手段112を用いることが好ましい。
【0056】
このように窓板とスペーサ間は特に溶着されたミクロセルが好ましいが、前記セルのように、セル押えを用いて窓板とスペーサ間を密着させたセルを構成することもできる。
この結果、前記窓板とスペーサ間を溶着したミクロセルと同様、蓋をしなくても、液体試料は表面張力でセル内室30にしっかり保持されるので、セルの多連化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態にかかるミクロセルの概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるミクロセルがセットされた状態のミクロセルホルダの概略構成の説明図である。
【図3A】本発明の一実施形態にかかるミクロセルがセットされた状態のミクロセルホルダを光軸直交方向より見た図である。
【図3B】前記図3Aに示したミクロセルホルダのセル切替ツマミの拡大図である。
【図3C】前記図3Aに示したミクロセルホルダを光軸方向より見た図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるミクロセルホルダに好適なセル着脱機構の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるミクロセルホルダに好適なセル位置決め機構の説明図である。
【図6】図5に示したセル位置決め機構の変形例である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるミクロセルホルダに好適なマスク位置調整手段の説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかるミクロセル(機械的密着方式)の説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態にかかる直動ミクロセルの概略構成の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ミクロセル
12 円形板(板状スペーサ)
14 窓板
20 試料注入口
22 切り欠き
24 小円穴(小穴)
30 セル内室
50 ミクロセルホルダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量の液体試料を分析する際に用いられるミクロセルにおいて、
側壁の試料注入口へ向かって切り欠きを入れた形状の小穴が複数設けられた板状のスペーサと、
前記小穴を正面及び背面から覆うように、前記スペーサを間に挟んで対向配置され、測定光を透過する材質で構成された窓板と、
を備え、前記スペーサの小穴と前記窓板間とによって囲まれた空間をセル内室として前記液体試料が入れられ、前記スペーサに前記小穴を複数設けることにより前記セル内室を複数設け、
また、前記液体試料の量に基づき定められた前記小穴の寸法及び前記スペーサの厚さを有し、かつ前記切り欠きと前記小穴との連通部分の寸法を、前記小穴の寸法よりも小としたことを特徴とするミクロセル。
【請求項2】
請求項1記載のミクロセルにおいて、
さらに、前記窓板を間に挟んで対向配置され、前記スペーサと該窓板とを機械的に密着させる窓押えを備えたことを特徴とするミクロセル。
【請求項3】
請求項1記載のミクロセルにおいて、
前記板状スペーサと前記窓板とを溶着したことを特徴とするミクロセル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のミクロセルを、分析装置の中での光路上に保持するミクロセルホルダであって、
所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、前記ミクロセルを運動自在に保持するセル切替機構を備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項5】
請求項4記載のミクロセルホルダにおいて、
前記セル切替機構は、略円盤状のミクロセルを保持し、
前記ミクロセルを回転し、所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、該ミクロセルを回転自在に保持する保持手段と、
前記ミクロセルを保持する前記保持手段を回転し、所望のセル内室を前記分析装置の中での光路上に挿入するための回転手段と、
を備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項6】
請求項4又は5記載のミクロセルホルダにおいて、
前記ミクロセルのすぐ直前に設けられ、前段よりの測定光を絞って所望のセル内室に入れられた液体試料に入射させるマスクを備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項7】
請求項6記載のミクロセルホルダにおいて、
前記ミクロセルを、前記マスクの反対側から着脱自在としたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項8】
請求項6又は7記載のミクロセルホルダにおいて、
前記分析装置の中での光路に対する前記マスクの光軸位置を、該光路と直交する平面内
において調節自在とするマスク位置調整手段を備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項1】
微量の液体試料を分析する際に用いられるミクロセルにおいて、
側壁の試料注入口へ向かって切り欠きを入れた形状の小穴が複数設けられた板状のスペーサと、
前記小穴を正面及び背面から覆うように、前記スペーサを間に挟んで対向配置され、測定光を透過する材質で構成された窓板と、
を備え、前記スペーサの小穴と前記窓板間とによって囲まれた空間をセル内室として前記液体試料が入れられ、前記スペーサに前記小穴を複数設けることにより前記セル内室を複数設け、
また、前記液体試料の量に基づき定められた前記小穴の寸法及び前記スペーサの厚さを有し、かつ前記切り欠きと前記小穴との連通部分の寸法を、前記小穴の寸法よりも小としたことを特徴とするミクロセル。
【請求項2】
請求項1記載のミクロセルにおいて、
さらに、前記窓板を間に挟んで対向配置され、前記スペーサと該窓板とを機械的に密着させる窓押えを備えたことを特徴とするミクロセル。
【請求項3】
請求項1記載のミクロセルにおいて、
前記板状スペーサと前記窓板とを溶着したことを特徴とするミクロセル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のミクロセルを、分析装置の中での光路上に保持するミクロセルホルダであって、
所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、前記ミクロセルを運動自在に保持するセル切替機構を備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項5】
請求項4記載のミクロセルホルダにおいて、
前記セル切替機構は、略円盤状のミクロセルを保持し、
前記ミクロセルを回転し、所望のセル内室が前記分析装置の中での光路上に挿入されるように、該ミクロセルを回転自在に保持する保持手段と、
前記ミクロセルを保持する前記保持手段を回転し、所望のセル内室を前記分析装置の中での光路上に挿入するための回転手段と、
を備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項6】
請求項4又は5記載のミクロセルホルダにおいて、
前記ミクロセルのすぐ直前に設けられ、前段よりの測定光を絞って所望のセル内室に入れられた液体試料に入射させるマスクを備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項7】
請求項6記載のミクロセルホルダにおいて、
前記ミクロセルを、前記マスクの反対側から着脱自在としたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【請求項8】
請求項6又は7記載のミクロセルホルダにおいて、
前記分析装置の中での光路に対する前記マスクの光軸位置を、該光路と直交する平面内
において調節自在とするマスク位置調整手段を備えたことを特徴とするミクロセルホルダ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−327759(P2007−327759A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156843(P2006−156843)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]