説明

ミシンの押え装置及びミシン

【課題】押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときに、押え足が急激に移動することを防止する。
【解決手段】押え上げレバー23の上方にロータリダンパ32を配置し、押え上げレバー23が上昇位置から下降位置に移動するときには、ロータリダンパ32が抵抗力を発生し、押え上げレバー23の移動速度を遅くする一方、押え上げレバー23が下降位置から上昇位置に移動するときには、ロータリダンパ32が抵抗力を発生しないので、押え上げレバー23の操作力を重くさせることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押え棒の下端部に設けられた押え足を、押え上げレバーにより昇降するミシンの押え装置、及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンには、押え棒と、押え足と、押えバネと、押え上げレバーとを備える押え装置が設けられている。押え棒は、ミシンの頭部に昇降可能に支持されている。押え棒の下端部には、加工布を押圧するための押え足が装着されている。押えバネは圧縮バネであり、押え棒に外装されている。押えバネは、加工布に押え足を押圧するように弾性付勢している。押え上げレバーは押え足を昇降させるためのレバーであり、ミシンの頭部に回動可能に設けられている。押え上げレバーは、上昇位置と下降位置との間で回動(移動)する。この押え装置は、ユーザ(作業者)が押え上げレバーを回動操作することにより、押え足が押え棒と共に昇降される構成となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−112325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、押え棒には、押えバネによって押え足を押圧方向(下方向)へ弾性付勢するバネ力が作用している。そのため、ユーザが、押え上げレバーを上昇位置から下降位置に急激に回動(移動)させると、押え足が急激に移動(落下)して加工布又は針板に衝突する。その結果、大きな衝突音が発生する問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、押え上げレバーを上昇位置から下降位置に急激に回動(移動)させたとしても、押え足が急激に移動することを防止することができるミシンの押え装置、及びミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のミシンの押え装置は、ミシン頭部に昇降可能に支持された押え棒と、前記押え棒の下端部に設けられた押え足と、前記押え足を下方へ弾性付勢する押えバネと、前記押え足を昇降させるために上昇位置と下降位置との間で移動する押え上げレバーと、を備えたミシンの押え装置において、抵抗力を発生することで前記押え上げレバーが昇降するときの移動速度を抑制可能な移動速度抑制手段と、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、前記移動速度抑制手段が抵抗力を発生することで前記押え上げレバーの移動速度を抑制し、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、前記移動速度抑制手段が抵抗力を発生しないことで前記押え上げレバーの移動速度を抑制しない速度抑制切替機構とを備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成のミシンの押え装置によれば、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、移動速度抑制手段が抵抗力を発生することで、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動する移動速度を抑制し、移動速度を遅くすることができる。従って、押え足は、加工布又は針板に緩やかに衝突する。つまり、大きな衝突音の発生を防止することができる。一方、押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、移動速度抑制手段が抵抗力を発生しないので、押え上げレバーの操作力が重くならず、滑らかに移動させることができる。従って、押え上げレバーを良好に操作することができる。
【0008】
請求項2に記載のミシンの押え装置は、請求項1に記載のミシンの押え装置において、前記速度抑制切替機構は、前記押え上げレバーに連動して回転する第1回転部材と、前記移動速度抑制手段に設けられ前記第1回転部材と係合して回転可能であって前記抵抗力により回転速度が抑制される第2回転部材とを備え、前記第2回転部材は、前記第1回転部材と係合する係合位置と係合しない非係合位置との間を移動可能であり、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、係合位置に位置し、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、非係合位置に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のミシンの押え装置は、請求項2に記載のミシンの押え装置において、前記第1回転部材は、前記押え上げレバーに設けられた第1ギヤであり、前記第2回転部材は、前記第1回転部材と噛合して回転可能な第2ギヤであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のミシンの押え装置は、請求項3に記載のミシンの押え装置において、前記第2ギヤは、前記第1ギヤよりも上方に位置し、前記頭部に固定された支持軸に前記移動速度抑制手段の自重により揺動可能に支持され、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、自重により係合位置に位置し、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、自重に抗して非係合位置に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のミシンの押え装置は、請求項4に記載のミシンの押え装置において、前記押え上げレバーは、前記頭部に固定されたレバー軸に揺動可能に支持され、前記支持軸、前記レバー軸、前記第1ギヤ、及び前記第2ギヤは、前記支持軸の軸中心と前記第2ギヤの回転中心との間の距離に前記第2ギヤのピッチ円半径を加算した値が、前記支持軸の軸中心と前記レバー軸の軸中心との間の距離から前記第1ギヤのピッチ円半径を減算した値よりも大となる条件を満たすように配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載のミシンの押え装置は、請求項3から5の何れかに記載のミシンの押え装置において、前記第1ギヤは、ピッチ円中心が前記レバー軸の軸中心から所定距離だけ偏心した位置に設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載のミシンの押え装置は、請求項3から6の何れかに記載のミシンの押え装置において、前記第1ギヤは、前記押え上げレバーに設けられた主ギヤと、前記主ギヤの回転力を前記第2ギヤに伝達する少なくとも1つの副ギヤとを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載のミシンの押え装置は、請求項1に記載のミシンの押え装置において、前記速度抑制切替機構は、前記押え上げレバーに連動して回転する第3回転部材と、前記移動速度抑制手段に設けられ前記第3回転部材と係合して移動可能であって前記抵抗力により移動速度が抑制される移動部材とを備え、前記移動部材は、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、移動速度が抑制され、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、移動速度が抑制されないことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載のミシンの押え装置は、請求項8に記載のミシンの押え装置において、前記第3回転部材は、前記押え上げレバーに設けられた第3ギヤであり、前記移動部材は、前記第3ギヤと噛合して移動可能な第4ギヤであることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載のミシンは、請求項1から9の何れかに記載のミシンの押え装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載のミシンの押え装置によれば、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、移動速度抑制手段が抵抗力を発生することで、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動する移動速度を抑制し、移動速度を遅くすることができる。従って、押え足は、加工布又は針板に緩やかに衝突する。よって、大きな衝突音の発生を防止することができる。一方、押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、移動速度抑制手段が抵抗力を発生しないので、押え上げレバーの操作力が重くならず、滑らかに移動させることができる。従って、押え上げレバーを良好に操作することができる。
【0018】
請求項2に記載のミシンの押え装置によれば、請求項1に記載の発明に加え、速度抑制切替機構を、押え上げレバーに連動して回転する第1回転部材と、移動速度抑制手段に設けられ第1回転部材と係合して回転可能であって抵抗力により回転速度が抑制される第2回転部材とを備え、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、第2回転部材が第1回転部材と係合する係合位置に位置し、押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、第2回転部材が第1回転部材と係合しない非係合位置に位置するように構成したので、速度抑制切替機構を簡単な構成で且つ安価に実現することができる。
【0019】
請求項3に記載のミシンの押え装置によれば、請求項2に記載の発明に加え、第1回転部材を、押え上げレバーに設けられた第1ギヤにより構成し、第2回転部材を、第1回転部材と噛合して回転可能な第2ギヤにより構成したので、第1回転部材及び第2回転部材を更に簡単な構成で且つ安価に実現することができる。
【0020】
請求項4に記載のミシンの押え装置によれば、請求項3に記載の発明に加え、第2ギヤを、第1ギヤよりも上方に位置し、頭部に固定された支持軸に移動速度抑制手段の自重により揺動可能に支持され、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、自重により係合位置に位置し、押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、自重に抗して非係合位置に位置するように構成したので、移動速度抑制手段の自重を利用した簡単な構成にすることができる。
【0021】
請求項5に記載のミシンの押え装置によれば、請求項4に記載の発明に加え、押え上げレバーを、頭部に固定されたレバー軸に揺動可能に支持され、支持軸、レバー軸、第1ギヤ、及び第2ギヤを、支持軸の軸中心と第2ギヤの回転中心との間の距離に第2ギヤのピッチ円半径を加算した値が、支持軸の軸中心とレバー軸の軸中心との間の距離から第1ギヤのピッチ円半径を減算した値よりも大となる条件を満たすように配置したので、移動速度抑制手段の自重をより有効的に利用することができる。
【0022】
請求項6に記載のミシンの押え装置によれば、請求項3から5の何れかに記載の発明に加え、第1ギヤを、ピッチ円中心がレバー軸の軸中心から所定距離だけ偏心した位置に設定したので、押え上げレバーの位置に応じて移動速度制御手段が押え上げレバーに作用する抵抗力を調整することができる。即ち、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するのに伴って、前記抵抗力を徐々に小さくすることができる。従って、押え上げレバーを、滑らかに移動させることができる。
【0023】
請求項7に記載のミシンの押え装置によれば、請求項3から6の何れかに記載の発明に加え、第1ギヤを、押え上げレバーに設けられた主ギヤと、主ギヤの回転力を第2ギヤに伝達する少なくとも1つの副ギヤとを含むように構成したので、移動速度抑制手段が発生する抵抗力が副ギヤにより増大されて主ギヤに伝達される。従って、移動速度抑制手段が発生する抵抗力を小さくすることができる。ひいては、移動速度制御手段を小型化することができる。
【0024】
請求項8に記載のミシンの押え装置によれば、請求項1に記載の発明に加え、速度抑制切替機構を、押え上げレバーに連動して回転する第3回転部材と、移動速度抑制手段に設けられ第3回転部材と係合して移動可能であって抵抗力により移動速度が抑制される移動部材とを備え、移動部材を、押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、移動速度が抑制され、押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、移動速度が抑制されないように構成したので、速度抑制切替機構を簡単な構成で且つ安価に実現することができる。
【0025】
請求項9に記載のミシンの押え装置は、請求項8に記載の発明に加え、第3回転部材を、押え上げレバーに設けられた第3ギヤにより構成し、移動部材を、第3ギヤと噛合して移動可能な第4ギヤにより構成したので、第3回転部材及び移動部材を簡単な構成で且つ安価に実現することができる。
【0026】
請求項10に記載のミシンは、請求項1から9の何れかに記載のミシンの押え装置を備えたので、上記した請求項1から9までの発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るミシンの外観を示す正面図
【図2】押え上げレバーが上昇位置に位置しているときの押え装置、押え棒、押え足を示す正面図
【図3】押え上げレバーが下降位置に位置しているときの押え装置、押え棒、押え足を示すものであり、(a)は側面図、(b)は正面図
【図4】ロータリダンパを示すものであり、(a)は正面図、(b)は側面図
【図5】速度抑制切替機構を示すものであり、押え上げレバーが異なる位置にあるときの正面図
【図6】本発明の第2実施形態を示す図5相当図
【図7】本発明の第3実施形態を示すものであり、押え上げレバーが下降位置に位置しているときの押え装置、押え棒、押え足の正面図
【図8】本発明の第4実施形態を示す図5相当図
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、本発明をミシンに適用した第1実施形態について、図1から図5を参照しながら説明する。図1に示すミシンMは、一般的な家庭用のミシンであり、ベッド部1と、ベッド部1の右端部に上方に延びるように立設された脚柱部2と、脚柱部2の上部に左方に延びるように突設されてベッド部1に対向するアーム部3と、アーム部3の左部に配置された頭部4とを一体に有する。脚柱部2の前面には、液晶ディスプレイ5が配設されている。アーム部3と頭部4の前面には、種々の操作スイッチ類6が配設されている。ミシンMは、図1における紙面手前側を前方、頭部4及びアーム部3がある方を上方、ベッド部1がある方を下方、アーム部3が左右方向に延びる方向を左右方向として説明する。
【0029】
アーム部3には、ミシン主軸(図示略)が左右方向に延びるように配設されていると共に、ミシン主軸を回転させるミシンモータ(図示略)が配設されている。又、アーム部3には、ミシン主軸をユーザの手動操作により回転可能とするハンドプーリ7が配設されている。頭部4には、針棒8が配設されており、針棒8の下端部には、縫針9が装着されている。針棒8は、ミシン主軸の回転により針棒駆動機構(図示略)を介して上下動される。頭部4には、針棒8を布送り方向と直交する左右方向に針振り揺動させる針振り機構(図示略)、天秤(図示略)を針棒8の上下動に調時して上下動させる天秤駆動機構(図示略)等が配設されている。又、ベッド部1には、送り歯(図示略)を上下方向及び前後方向に移動させる布送り機構(図示略)、縫針9と協働して縫目を形成する水平回転釜(図示略)等が配設されている。頭部4には、押え棒10が上下動可能(昇降可能)に配設されている。図2に示すように、押え棒10の下端部には、押えホルダ11が固定されており、この押えホルダ11に押え足12が装着されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、押え棒10の上部には、押え足上下動機構13が配設されている。押え足上下動機構13は、押え圧調整用モータ14、駆動ギヤ15、押え圧調整ギヤ16、押え圧調整ピニオン17、押え圧調整ラック18等を有する。押え圧調整用モータ14は、モータホルダ19を介して頭部4に固定されている。駆動ギヤ15は、押え圧調整用モータ14の出力軸に固定されており、押え圧調整用モータ14の出力軸と一体的に回転する。駆動ギヤ15と押え圧調整ギヤ16とは噛合しており、駆動ギヤ15が回転することに追従して押え圧調整ギヤ16が回転する。押え圧調整ピニオン17は、押え圧調整ギヤ16と一体的に形成されている。押え圧調整ピニオン17と押え圧調整ラック18とは噛合しており、押え圧調整ピニオン17が回転することに追従して押え圧調整ラック18が上下動(昇降)する。押え圧調整ラック18の上下動により、押え棒10を上下動(昇降)させることができる。
【0031】
押え棒10の高さ方向の中段部には、押え棒抱き20が固定されている。押え棒10のうち、押え圧調整ラック18と押え棒抱き20との間には、圧縮バネ21(押えバネ)が外装されている。圧縮バネ21は、押え棒抱き20の上端面に当接し、押え棒10を押圧方向(下方向)へ弾性付勢している。このため、後述する押え上げレバーが下降位置に位置しているときには、押え足12は、ベッド部1の上面に設けられた針板(図示略)又は針板に載置される加工布(図示略)に当接して押圧する状態になっている。
【0032】
又、頭部4には、押え装置22が配設されている。押え装置22は、押え足12の昇降操作に用いられる押え上げレバー23を有する。押え上げレバー23は、略クランク形状に形成されている。押え上げレバー23の基端部には、頭部4に固定されたレバー軸24に挿通される筒部25と、押え上げカム26とが一体的に形成されている。一方、先端部には、ユーザが手動操作するための操作部27が形成されている。押え上げカム26は、筒部25の外径寸法が徐々に大きくなるように隆起した形状をなす。これら筒部25と押え上げカム26の外周面は、押え棒抱き20の右方に突出する腕部28の下面部が当接するカム面29とされている。
【0033】
押え上げレバー23は、レバー軸24を回動中心として、上昇位置(図2に示す位置)と下降位置(図3に示す位置)との間で回動可能に支持されている。ユーザが押え上げレバー23を回動操作することで、上記した押え足上下動機構13により押え棒10が昇降することとは独立して、押え棒10が昇降することを可能とする。つまり、押え上げレバー23が回動することに追従して押え棒10が昇降すると共に、押え棒10の下端部に装着された押え足12も昇降する。
【0034】
図2に示すように、押え上げレバー23が上昇位置に位置しているときには、圧縮バネ21の弾性力により、押え棒抱き20の腕部28の下面部が押え上げレバー23のカム面29に圧接される。このとき、腕部28とカム面29の接触点は、レバー軸24の軸中心(「O1」で示す)の略鉛直上方にある。このため、押え上げレバー23には、時計回り方向又は反時計回り方向に回転させる力は作用せず、この位置(上昇位置)にて係止された状態になる。
【0035】
押え上げレバー23には、半円形状の第1ギヤ31(第1回転部材)が一体的に形成されている。第1ギヤ31のピッチ円中心とレバー軸24の軸中心「O1」とは同一である。押え上げレバー23の上方には、ロータリダンパ32(移動速度抑制手段)が配置されている。図4に示すように、ロータリダンパ32は、ダンパ本体33に、第2ギヤ34(第2回転部材)と挿通穴35とを有している。ロータリダンパ32は、挿通穴35が頭部4に固定された支持軸36に挿通され、支持軸36を中心として自重により揺動可能に支持されている。ダンパ本体33内には、高粘度のグリス(図示略)が封入されており、第2ギヤ34が回転するときに、グリスによって回転方向とは逆方向の抵抗力が発生する。又、第2ギヤ34は、第1ギヤ31と噛合して回転可能である。
【0036】
図2、図3及び図5に示すように、レバー軸24の軸中心「O1」を通る鉛直方向の仮想直線上に、ロータリダンパ32の揺動中心である支持軸36の軸中心(「O2」で示す)が位置するように設定されている。又、第2ギヤ34の回転中心(「O3」で示す)は、前記仮想直線から左方向にずれた位置にあるように配設されている。換言すれば、支持軸36の軸中心「O2」と第2ギヤ34の回転中心「O3」との間の距離に第2ギヤ34のピッチ円半径を加算した距離(図5(a)の「A」にて示す)は、支持軸36の軸中心「O2」とレバー軸24の軸中心「O1」との間の距離から第1ギヤ31のピッチ円半径を減算した距離(図5(a)の「B」にて示す)よりも大きく設定されている。ここで、第1ギヤ31及び第2ギヤ34のピッチ円は仮想円であるので、説明の都合上、図5(a)では、上記の距離「A」、「B」は、第1ギヤ31及び第2ギヤ34の歯先円の位置にて示している。押え上げレバー23の第1ギヤ31と、ロータリダンパ32の第2ギヤ34とにより速度抑制切替機構37が構成される。
【0037】
次に、上記構成の押え装置22の作用について説明する。
押え上げレバー23が上昇位置に位置しているときには、押え棒10及び押え足12は上昇位置にある。この状態から、ユーザが、押え上げレバー23を時計回り方向(図2及び図5にて矢印「D3」で示す方向)に回動操作する。つまり、押え上げレバー23を上昇位置から下降位置に回動させる。このとき、押え上げレバー23のカム面29が押え棒抱き20の腕部28の下面部を摺動しながら、押え棒抱き20が圧縮バネ21のバネ力により下方へ移動する。これによって、押え棒10と共に押え足12も下方へ移動する。又、押え上げレバー23が時計回り方向に回動することによって、第1ギヤ31も時計回り方向に回転する。このとき、第1ギヤ31とロータリダンパ32の第2ギヤ34とが噛合して、第1ギヤ31の回転力が第2ギヤ34に伝達されるが、以下、これを詳しく説明する。
【0038】
第1ギヤ31の時計回り方向の回転力は、第2ギヤ34を反時計回り方向に回転させる力と、第2ギヤ34自体、即ち、ロータリダンパ32自体を右方向に移動(揺動)させようとする力の、両方の力として作用する。ここで、上記の距離「A」が上記の距離「B」よりも大きく設定されているので、ロータリダンパ32は、第1ギヤ31によって右方向の力を受けて、第2ギヤ34が第1ギヤ31と噛合する位置に維持される(係合位置に位置する)。そして、この位置にて、第1ギヤ31の時計回り方向の回転によって、第2ギヤ34が反時計回り方向に回転する。このとき、ロータリダンパ32が、第2ギヤ34の回転に対する抵抗力を発生する。このようにして、押え上げレバー23を上昇位置から下降位置に回動させると、ロータリダンパ32が、第2ギヤ34の反時計回り方向への回転に対する抵抗力を発生する。その抵抗力が第1ギヤ31に伝達され、その結果、押え上げレバー23が上昇位置から下降位置に移動するときの移動速度を抑制する。つまり、押え上げレバー23の移動速度を遅くすることができる。
【0039】
一方、押え上げレバー23が下降位置に位置しているときには、押え棒10及び押え足12は下降位置にある。このとき、押え足12は、図示しない加工布又は針板に当接している。この状態から、ユーザが、押え上げレバー23を反時計回り方向(図3及び図5にて「D4」で示す方向)に回動操作する。つまり、押え上げレバー23を下降位置から上昇位置に回動させる。このとき、押え上げレバー23のカム面29が押え棒抱き20の腕部28の下面部を摺動しながら、押え棒抱き20が圧縮バネ21のバネ力に抗して上方へ移動する。これによって、押え棒10と共に押え足12も上方へ移動する。又、押え上げレバー23が反時計回り方向に回動することによって、第1ギヤ31も反時計回り方向に回転する。このとき、第1ギヤ31の反時計回り方向の回転力は、第2ギヤ34を時計回り方向に回転させる力と、第2ギヤ34自体、即ち、ロータリダンパ32自体を左方向に移動(揺動)させようとする力の、両方の力として作用する。
【0040】
しかしながら、上記したように、ロータリダンパ32が支持軸36を中心として自重で揺動可能に支持されているので、第1ギヤの回転力は、第2ギヤ34を回転させることなく、ロータリダンパ32を自重に抗して左方向(左斜め上方)へ移動させる(持上げる)力として作用する。即ち、ロータリダンパ32の自重は、第2ギヤ34が発生する抵抗力よりも小さく設定されているので、第2ギヤ34は、第1ギヤ31と噛合しない位置(非係合位置)に移動させられる。従って、第2ギヤ34は回転しない。このようにして、押え上げレバー23を下降位置から上昇位置に回動させると、第2ギヤ34は第1ギヤ31と噛合しないので、第2ギヤは回転せず、ロータリダンパ32は抵抗力を発生しない。従って、押え上げレバー23を軽い操作力で滑らかに移動させることができる。
【0041】
ところで、上記の距離「A」及び距離「B」の関係について説明する。距離「B」はそのままで距離「A」を長くすると、支持軸36の軸中心「O2」と第2ギヤ34の回転中心「O3」とを結ぶ仮想直線の傾斜角度が緩やかになる。この場合、第1ギヤ31が時計回り方向に回転したときに、ロータリダンパ32が自重に抗して斜め左方向に移動(揺動)して、第2ギヤ34が第1ギヤ31と噛合せずに、第1ギヤ31が空転してしまう虞がある。これは、ロータリダンパ32が発生する抵抗力と自重との関係、及び第1ギヤ31と第2ギヤ34のギヤ比にもよるが、距離「A」は、距離「B」に近い値である方が望ましい。しかしながら、距離「A」と距離「B」を略等しい値とした場合には、各部品の寸法のばらつきや、ギヤ間のバックラッシュ等により、第2ギヤの回転中心「O3」が、レバー軸24の軸中心「O1」と支持軸36の軸中心「O2」を結ぶ仮想直線よりも右方に移動してしまう虞がある。このようになってしまうと、速度抑制切替機構37が正常に機能しないのは明らかである。以上のことを考慮して、距離「A」及び距離「B」を適切に設定する必要がある。
【0042】
又、本実施形態では、ロータリダンパ32が自重で揺動する構成であったが、部品点数は増加するが、ロータリダンパ32を反時計回り方向へ常時付勢するバネ部材を設けるようにしてもよい。ロータリダンパ32の自重を利用する場合には、ロータリダンパ32の自重が作用する方向(重力方向)を考慮して各部品を配置しなければならないという制約がある。しかし、バネ部材を設けることで、そのような制約を受けることなく、各部品を配置する自由度を高めることができる。又、速度抑制切替機構37をより確実に機能させることができる。
【0043】
以上に説明したように第1実施形態における押え装置によれば、押え上げレバー23が上昇位置から下降位置に回動するときには、ロータリダンパ32が抵抗力を発生することで、押え上げレバー23の移動速度を抑制するように構成したので、押え上げレバー23が上昇位置から下降位置に移動する移動速度を遅くすることができる。従って、押え足12が急激に移動して加工布又は針板に激しく衝突することを防止することができる。一方、押え上げレバー23が下降位置から上昇位置に回動するときには、ロータリダンパ32が抵抗力を発生しないので、押え上げレバー23の操作力が重くならず、滑らかに移動させることができる。
【0044】
ロータリダンパ32が抵抗力を発生する状態と発生しない状態とを、押え上げレバー23の第1ギヤ31とロータリダンパ32の第2ギヤ34との位置関係により切替えるように構成したので、簡単な構成で且つ安価に実現することができる。第2ギヤ34を第1ギヤ31よりも上方に位置し、ロータリダンパ32を自重により揺動可能に支持されるように構成したので、ロータリダンパ32の自重を利用した簡単な構成にすることができる。
【0045】
支持軸36の軸中心と第2ギヤ34の回転中心との間の距離に第2ギヤ34のピッチ円半径を加算した距離が、支持軸36の軸中心とレバー軸24の軸中心との間の距離から第1ギヤ31のピッチ円半径を減算した距離よりも大となる条件を満たすように配置したので、ロータリダンパ32の自重をより有効的に利用することができる。又、押え上げレバー23に抵抗力を作用させる構成であるので、縫製中における押え棒10の作動に何ら影響を与えることはない。
【0046】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。第2実施形態は、押え上げレバーの第1ギヤのピッチ円中心がレバー軸24の軸中心から所定距離だけ偏心した位置に設定されている。
【0047】
即ち、押え上げレバー71には、半円形状の第1ギヤ72(第1回転部材)が一体的に形成されている。しかし、第1ギヤ72のピッチ円中心(図6にて「O4」で示す)はレバー軸24の軸中心(図6にて「O1」で示す)からずれている。この場合、押え上げレバー71が下降することに追従し、レバー軸24の軸中心「O1」から第1ギヤ72と第2ギヤ34とが噛合する位置(点)までの距離は小さくなる(図6にて「R1」<「R2」<「R3」)。このため、ロータリダンパ32が発生する抵抗力が第2ギヤ34を介して第1ギヤ72に伝達されるとき、第1ギヤ72にとっては、抵抗力が徐々に小さくなるように伝達されることになる。つまり、押え上げレバー71が上昇位置から下降位置に移動するのに伴って、押えバネ21のバネ力も徐々に弱くなるので、これに応じて、第1ギヤ72、即ち、押え上げレバー71が受ける抵抗力も徐々に弱くなる。このため、上記抵抗力が一定であるときに比べ、押え上げレバー71を滑らかに移動させることができる。
【0048】
以上に説明したように第2実施形態によれば、第1ギヤ72のピッチ円中心「O4」をレバー軸24の軸中心「O1」から所定距離だけ偏心した位置に設定したので、押え上げレバー71の位置に応じて、ロータリダンパ32が押え上げレバー71に作用する抵抗力を調整することができる。よって、押え上げレバー71が上昇位置から下降位置に移動させるときに、押え上げレバー71を滑らかに移動させることができる。又、レバー軸24の軸中心「O1」と第1ギヤ72のピッチ円中心「O4」との距離(偏心量)、或いは、レバー軸24の軸中心「O1」に対する第1ギヤ72のピッチ円中心「O4」の相対的な位置(偏心位置)を変更することにより、ロータリダンパ32が押え上げレバー71に作用する抵抗力を適宜調整することができる。
【0049】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。第3実施形態は、押え上げレバーの第1ギヤとロータリダンパの第2ギヤとの間に中間ギヤが設けられており、第1ギヤの回転力は中間ギヤを介して第2ギヤに伝達される。
【0050】
即ち、押え上げレバー81は、第1実施形態で説明した押え上げレバー23と同等の構成であり、レバー軸24を回動中心として、上昇位置と下降位置との間で回動可能に支持されている。押え上げレバー81には、半円形状の第1ギヤ82(主ギヤ)が一体的に形成されている。第1ギヤ82のピッチ円中心とレバー軸24の軸中心(図7にて「O5」で示す)とは同一である。
【0051】
押え上げレバー81の上方には、中間ギヤ83(副ギヤ)が、頭部4に固定された支持軸(図示略)に対して回転可能に設けられている。中間ギヤ83の上方には、ロータリダンパ84が、頭部に固定された支持軸36に対して揺動可能に配置されている。中間ギヤ83は、小ギヤ85と大ギヤ86とを一体的に有する。ロータリダンパ84は、第2ギヤ87を有している。
【0052】
押え上げレバー81の第1ギヤ82と中間ギヤ83の小ギヤ85とは噛合して回転可能である。ロータリダンパ84の第2ギヤ87と中間ギヤ83の大ギヤ86とは噛合して回転可能である。ロータリダンパ84の揺動中心である支持軸36の軸中心(図7にて「O6」で示す)と中間ギヤ83の回転中心(図7にて「O7」で示す)は、レバー軸24の軸中心「O5」を通る鉛直方向の仮想直線上に位置するように設定される。そして、第2ギヤ87の回転中心(図7にて「O8」にて示す)は、上記の鉛直方向の仮想直線からは右方向にずれた位置になるように配設されている。
【0053】
本発明の第3実施形態は上記のように構成されており、第1ギヤ82の回転力は、中間ギヤ83を介して第2ギヤ87に伝達される。このとき、第1実施形態と同様に、押え上げレバー81を下降させるときには、大ギヤ86と第2ギヤ87とが噛合してロータリダンパ84が抵抗力を発生させる。一方、押え上げレバー81を上昇させるときには、大ギヤ86と第2ギヤ87とは噛合せずに、ロータリダンパ84は抵抗力を発生しない。ところで、中間ギヤ83があることにより、第1実施形態の構成と比べて、第1ギヤ82の揺動角度に対する第2ギヤの回動角度を大きくすることができる。これより、ロータリダンパ84が発生する抵抗力は、第1実施形態の構成と比べて小さくてもよい。ここで、押え上げレバー81の第1ギヤ82と、中間ギヤ83と、ロータリダンパ84の第2ギヤ87とにより速度抑制切替機構88が構成される。
【0054】
以上に説明したように第3実施形態によれば、第1ギヤ82の回転力が中間ギヤ83介して第2ギヤ87に伝達されるように構成したので、ロータリダンパ84が発生する抵抗力を小さくすることができる。ひいては、ロータリダンパ84を小型化することができ、省スペース化を図ることができる。又、支持軸36の軸中心「O6」と中間ギヤ83の回転中心「O7」は、必ずしも、レバー軸24の軸中心「O5」を通る鉛直方向の仮想直線上にある必要はない。よって、中間ギヤ83及びロータリダンパ84を配置する自由度を高めることができる。
【0055】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。第4実施形態は、ロータリダンパに代えてリニアダンパが採用されている。
【0056】
押え上げレバー91は、第1実施形態で説明した押え上げレバー23と同等の構成であり、レバー軸24を回動中心として、上昇位置と下降位置との間で回動可能に支持されている。押え上げレバー91には、半円形状の第3ギヤ92(第3回転部材)が一体的に形成されている。第3ギヤ92のピッチ円中心とレバー軸24の軸中心(図8にて「O9」で示す)とは同一である。
【0057】
押え上げレバー91の右上方には、リニアダンパ93が配設されている。リニアダンパ93は、頭部4に固定されたダンパ本体94と、ダンパ本体94に対して上下方向に伸縮可能(移動可能)に支持されるダンパ軸95と、ダンパ軸95をダンパ本体94に対して下方に伸長した位置に保持するための圧縮バネ(図示略)とを有する。そして、ダンパ本体94内には、高粘度のグリス(図示略)が封入され、ダンパ軸95の移動方向とは逆方向に抵抗力を発生する。
【0058】
又、頭部4には、ラック摺動軸96が上下方向に延びるように固定されている。そして、ラック摺動軸96には、ラック97(移動部材、第4ギヤ)が上下方向に移動可能に支持されている。ラック97は、押え上げレバー91の第3ギヤ92と噛合しており、押え上げレバー91の回動に伴って上下方向に移動する。つまり、押え上げレバー91を上昇させたときにはラック97は下方に移動し、押え上げレバー91を降下させたときにはラック97は上方に移動する。ここで、ラック97が下方から上方に移動するときには、ラック97の上端部がダンパ軸95の下端部と当接して、ダンパ軸95を上方に移動させる(縮ませる)。このとき、ダンパ本体94が抵抗力を発生する。一方、ラック97が上方から下方に移動するときには、圧縮バネのバネ力により、ダンパ軸95も下方に移動する(伸長する)。このとき、ダンパ軸95には常に移動方向とは逆方向の抵抗力を受けるので、ラック97の移動速度よりも遅い速度で移動する。つまり、ラック97が上方から下方に先に移動し、その後、少し遅れてダンパ軸95が上方から下方に移動する。押え上げレバー91の第3ギヤ92と、リニアダンパ93のラック97とにより速度抑制切替機構98が構成される。
【0059】
以上に説明したように第4実施形態によれば、押え上げレバー91が上昇位置から下降位置に回動するときには、第3ギヤ92の回転に伴ってラック97及びダンパ軸95が上方に移動し、リニアダンパ93が抵抗力を発生する。従って、押え上げレバー91が上昇位置から下降位置に移動する移動速度が抑制され、移動速度を遅くすることができる。よって、押え足12が急激に移動して針板に激しく衝突することを防止することができる。一方、押え上げレバー91が下降位置から上昇位置に回動するときには、第3ギヤ92の回転に伴ってラック97がダンパ軸95よりも先に下方に移動する。従って、リニアダンパ93の抵抗力は押え上げレバー91に作用しない。従って、ユーザは、押え上げレバー91の操作力が重くならず、滑らかに移動させることができる。
【0060】
<その他の実施形態>
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な拡張又は変更が可能である。
(1)押え足上下動機構13が配設されていないミシンの押え装置に適用しても良い。
(2)第1実施形態において、ロータリダンパ32の揺動中心である支持軸36の軸中心「O2」は、押え上げレバー23の回動中心であるレバー軸24の軸中心「O1」を通る鉛直方向の仮想直線上からずれた位置にあっても良い。
(3)ロータリダンパ32及びリニアダンパ93を、移動方向の一方向にのみ抵抗力が発生する所謂ワンウエイダンパである構成にすることもできる。この場合には、ロータリダンパ32を揺動可能に支持する必要はなく、頭部4に固定すればよい。
【符号の説明】
【0061】
M ミシン
4 頭部
10 押え棒
12 押え足
21 圧縮バネ(押えバネ)
22 押え装置
23 押え上げレバー
24 レバー軸
31 第1ギヤ(第1回転部材)
32 ロータリダンパ(移動速度抑制手段)
34 第2ギヤ(第2回転部材)
36 支持軸
37 速度抑制切替機構
82 第1ギヤ82(主ギヤ)
83 中間ギヤ(副ギヤ)
92 第3ギヤ(第3回転部材)
96 ラック(移動部材、第4ギヤ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン頭部に昇降可能に支持された押え棒と、前記押え棒の下端部に設けられた押え足と、前記押え足を下方へ弾性付勢する押えバネと、前記押え足を昇降させるために上昇位置と下降位置との間で移動する押え上げレバーと、を備えたミシンの押え装置において、
抵抗力を発生することで前記押え上げレバーが昇降するときの移動速度を抑制可能な移動速度抑制手段と、
前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、前記移動速度抑制手段が抵抗力を発生することで前記押え上げレバーの移動速度を抑制し、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、前記移動速度抑制手段が抵抗力を発生しないことで前記押え上げレバーの移動速度を抑制しない速度抑制切替機構とを備えたことを特徴とするミシンの押え装置。
【請求項2】
前記速度抑制切替機構は、前記押え上げレバーに連動して回転する第1回転部材と、前記移動速度抑制手段に設けられ前記第1回転部材と係合して回転可能であって前記抵抗力により回転速度が抑制される第2回転部材とを備え、
前記第2回転部材は、前記第1回転部材と係合する係合位置と係合しない非係合位置との間を移動可能であり、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、係合位置に位置し、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、非係合位置に位置することを特徴とする請求項1に記載のミシンの押え装置。
【請求項3】
前記第1回転部材は、前記押え上げレバーに設けられた第1ギヤであり、
前記第2回転部材は、前記第1回転部材と噛合して回転可能な第2ギヤであることを特徴とする請求項2に記載のミシンの押え装置。
【請求項4】
前記第2ギヤは、前記第1ギヤよりも上方に位置し、前記頭部に固定された支持軸に前記移動速度抑制手段の自重により揺動可能に支持され、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、自重により係合位置に位置し、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、自重に抗して非係合位置に位置することを特徴とする請求項3に記載のミシンの押え装置。
【請求項5】
前記押え上げレバーは、前記頭部に固定されたレバー軸に揺動可能に支持され、
前記支持軸、前記レバー軸、前記第1ギヤ、及び前記第2ギヤは、前記支持軸の軸中心と前記第2ギヤの回転中心との間の距離に前記第2ギヤのピッチ円半径を加算した値が、前記支持軸の軸中心と前記レバー軸の軸中心との間の距離から前記第1ギヤのピッチ円半径を減算した値よりも大となる条件を満たすように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のミシンの押え装置。
【請求項6】
前記第1ギヤは、ピッチ円中心が前記レバー軸の軸中心から所定距離だけ偏心した位置に設定されていることを特徴とする請求項3から5の何れかに記載のミシンの押え装置。
【請求項7】
前記第1ギヤは、前記押え上げレバーに設けられた主ギヤと、前記主ギヤの回転力を前記第2ギヤに伝達する少なくとも1つの副ギヤとを含むことを特徴とする請求項3から6の何れかに記載のミシンの押え装置。
【請求項8】
前記速度抑制切替機構は、前記押え上げレバーに連動して回転する第3回転部材と、前記移動速度抑制手段に設けられ前記第3回転部材と係合して移動可能であって前記抵抗力により移動速度が抑制される移動部材とを備え、
前記移動部材は、前記押え上げレバーが上昇位置から下降位置に移動するときには、移動速度が抑制され、前記押え上げレバーが下降位置から上昇位置に移動するときには、移動速度が抑制されないことを特徴とする請求項1に記載のミシンの押え装置。
【請求項9】
前記第3回転部材は、前記押え上げレバーに設けられた第3ギヤであり、
前記移動部材は、前記第3ギヤと噛合して移動可能な第4ギヤであることを特徴とする請求項8に記載のミシンの押え装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載のミシンの押え装置を備えたことを特徴とするミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24185(P2012−24185A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163786(P2010−163786)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】