説明

ミシン及びミシンの油タンク

【課題】ベッド部の外周に付着した潤滑油を油タンクによって受けることができるミシン及びミシンの油タンクを提供する。
【解決手段】ミシン1は、油タンク10の側壁1012、1014の上縁部がベッド部21のベッド壁部211下端よりも上方に位置する。油タンク10は、側壁1012、1014がベッド壁部211より外側に位置する。油タンク10は、側壁1012、1014の上縁部がベッド壁部211下端よりも上方に位置するので、ミシン1の駆動によって脚柱部22内に飛散する潤滑油を確実に受けることができる。油タンク10は、側壁1012、1014がベッド壁部211より外側に位置するので、ベッド壁部211に付着した潤滑油が落下した場合に、確実に受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン本体に固定され、潤滑油を貯留する油タンクを備えたミシン及びミシンの油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシン本体に固定され、ミシンを駆動する各駆動機構に供給するための潤滑油を収容する油タンクを備えたミシンがある。
【0003】
特許文献1のミシンは、起立位置と、起立位置から傾倒した傾倒位置とを切替可能である。ミシンの油タンクは、潤滑油を貯留可能な油受け部と、ミシンを起立位置から傾倒位置に切り替えた場合に、油受け部に貯留した全ての潤滑油を収納可能な油溜め部とを備えている。油タンクは、ベッド部の下方に設けてある。油タンクは、ミシンを起立位置から傾倒位置に切り替えた場合に、油タンクから潤滑油が漏れることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4135136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のミシンは、油タンクがベッド部の外周を覆っていない。それ故、油タンクは、駆動機構に供給する潤滑油が飛散してベッド部の外周に付着した場合、落下する潤滑油を油受け部で受けることができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ベッド部の外周に付着した潤滑油を油タンクによって受けることができるミシン及びミシンの油タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のミシンは、ベッド部と、前記ベッド部の下方に一体に設け、潤滑油を収納可能な油タンクとを備えたミシンにおいて、前記ベッド部は、下方に延びる壁部を備え、前記油タンクは、開口部を形成する外周壁を備え、前記外周壁と前記壁部とで前記潤滑油が前記油タンクから流出するのを防ぐシール手段を形成することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明のミシンは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記シール手段は、前記外周壁の上縁部が前記壁部の下端部よりも上方、且つ前記壁部の外側に位置するように構成していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明のミシンは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記油タンクは、前記開口部に対向する底部と、前記外周壁の内側において、前記開口部と前記底部との間、且つ前記底部と離間した位置に設けた、前記底部に対向する壁部である対向壁と、前記対向壁を前記開口部から前記底部に向かう方向に貫通する穴部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明のミシンは、請求項1から3の何れかに記載の発明の構成に加え、前記油タンクの前記対向壁の上面は、前記外周壁から前記穴部に向かって、前記底部の方向に傾斜した傾斜部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明のミシンの油タンクは、ミシンのベッド部の下方に一体に設け、潤滑油を収納可能なミシンの油タンクにおいて、開口部を形成する外周壁を備え、前記外周壁は、前記ミシンの前記ベッド部から下方に延びる壁部との間で前記潤滑油が前記油タンクから流出するのを防ぐシール手段を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のミシンでは、油タンクは、開口部を形成する外周壁を備える。ベッド部は、下方に延びる壁部を備える。ミシンは、外周壁と壁部とでシール手段を形成しているので、潤滑油が油タンクから流出するのを防ぐことができる。油タンクは、ミシンを駆動することによって飛散する潤滑油を外部に流出することなく受けることができる。
【0013】
請求項2のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加え、油タンクは、外周壁の上縁部がベッド部の壁部の下端部よりも上方、且つ壁部の外側に位置する。油タンクは、ベッド部の壁部に付着した潤滑油を確実に受けることができる。従って、ミシンは、潤滑油が油タンクの外部に漏れることを防止できる。
【0014】
請求項3のミシンでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、油タンクは、底部と対向壁との間の空間に、ミシンの機構の潤滑用の潤滑油を収納可能である。潤滑に使用されてミシン内部から落下する潤滑油は、開口部を通って対向壁に落下する。対向壁に落下した潤滑油は、穴部を通って、底部と対向壁との間の空間に溜まる。ミシンが振動した場合、対向壁によって潤滑油は開口部から外部に漏れない。従って、ミシンは、潤滑油が油タンクの外部に漏れることを防止することができる。
【0015】
請求項4のミシンでは、請求項1から3の何れかに記載の発明の効果に加え、潤滑に使用されてミシン内部から落下する潤滑油は、対向壁に落下する。対向壁に落下した潤滑油は、傾斜部に沿って穴部に向けて流れる。潤滑油は、穴部を通って、底壁と対向壁との間の空間に溜まる。傾斜部は、潤滑油を確実に穴部に向けて導くことができる。故に、ミシンは、確実に潤滑油を底壁と対向壁との間の空間に溜めることができる。
【0016】
請求項5のミシンの油タンクでは、開口部を形成する外周壁を備える。油タンクは、外周壁とベッド部から下方に延びる壁部とでシール手段を形成しているので、潤滑油が流出するのを防ぐことができる。油タンクは、ミシンを駆動することによって飛散する潤滑油を外部に流出することなく受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ミシン1の正面図である。
【図2】ミシン1の縦断面図である。
【図3】ミシン1の外観、及びベッド部21の内部構成を示す斜視図である。
【図4】ミシン1内部の駆動機構を示す斜視図である。
【図5】ベッド部21の底面図である。
【図6】油タンク10の外観を示す斜視図である。
【図7】油タンク10の外観を示す斜視図である。
【図8】油タンク10の平面図である。
【図9】図8のII−II線における矢視方向断面図である。
【図10】図8のIII−III線における矢視方向断面図である。
【図11】ミシン1が起立位置である場合の、図5のI−I線における矢視方向断面図である。
【図12】図11に示すミシン1が、傾倒位置に移動した場合の要部拡大図である。
【図13】油タンク10、板部72、及び流出防止部材71の外観を示す斜視図である。
【図14】油タンク10を取り外した状態のベッド部21の底面図である。
【図15】板部72の斜視図である。
【図16】(A)〜(E)は、変形例の油タンク及びベッド部21の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、図1の紙面上側、下側、右側、左側、紙面表面側、紙面背面側を、夫々ミシン1の上側、下側、右側、左側、前側、後側とする。
【0019】
図1〜図5を参照して、ミシン1について説明する。図2に示すように、ミシン1は、ミシンテーブル15に配置している。ミシンテーブル15は、略中央に矩形穴151を備えている。ミシン1は、矩形穴151の内側に設けてある。ミシン1は、ベッド部21と、脚柱部22と、アーム部23とを備えている。
【0020】
ベッド部21は、下方の外周を覆うベッド壁部211(図11参照)を備えている。ベッド部21は、油タンク10、油溜め部70(図12参照)、下回転軸36、軸受部50、及び全回転釜46等を内部に備えている。油タンク10は、潤滑油を収容する。油タンク10は、脚柱部22の下方に設けてある。油溜め部70は、ミシン1が傾倒位置にある場合に、脚柱部22内部の後部を伝って落下する油を溜める(図12参照)。油タンク10、油溜め部70、下回転軸36、軸受部50、及び全回転釜46等については、後述する。
【0021】
脚柱部22は、ベッド部21の右端から上方に延びている。アーム部23は、脚柱部22の上端から左方に延びている。アーム部23は、ベッド部21に対向している。
【0022】
アーム部23の左端部は、針棒43(図1参照)を下方に備えている。針棒43は、ミシンモータ(図示略)の駆動に基づいて上下に往復移動する。アーム部23は、左端の前側にスリット92(図3参照)を設けている。スリット92は、上下方向に延びている。天秤91(図3参照)は、スリット92から外部に突出している。天秤91は、針棒43の上下動に伴い、スリット92に沿って上下動する。
【0023】
図4を参照し、ミシン1の駆動機構について説明する。図4に示すように、ミシン1は、上回転軸31、連結回転軸33、下回転軸36等を備えている。上回転軸31は、アーム部23(図1参照)内を左右方向に延びている。連結回転軸33は、脚柱部22(図1参照)内を上下方向に延びている。下回転軸36は、ベッド部21(図1参照)内を左右方向に延びている。
【0024】
上回転軸31は、右端にミシンモータ(図示略)を設けている。上回転軸31は、ミシンモータの駆動によって回転する。上回転軸31は、その左右方向略中央部分に軸受部47を設けている。軸受部47は、上回転軸31を受けている。軸受部47は、円筒形である。軸受部47は、前側に設けた穴から潤滑油を取り込む。後述する第二供給路82は、軸受部47の穴に接続している。
【0025】
上回転軸31は、軸受部47の右側に、傘状の歯車32を備えている。上回転軸31の左端には、針棒上下動機構41が設けてある。針棒上下動機構41は、アーム部23(図1参照)内を上下方向に延びる針棒43を支持している。針棒43は、下端に縫針42を備えている。上回転軸31は、ミシンモータの駆動によって回転する。針棒上下動機構41は、上回転軸31の回転によって駆動し、縫針42は上下動する。
【0026】
連結回転軸33は、上端に傘状の歯車34を備えている。歯車34は、歯車32と噛み合っている。連結回転軸33は、上回転軸31の回転によって回転する。連結回転軸33は、下端に傘状の歯車35を備えている。連結回転軸33は、ミシンモータによって回転する上回転軸31の回転駆動力を後述する下回転軸36に伝達する。
【0027】
下回転軸36は、右端に傘状の歯車37を備えている。歯車37は、歯車35と噛み合っている。下回転軸36は、連結回転軸33の回転に伴い回転する。下回転軸36は、左端に全回転釜46(図3参照)を備えている。全回転釜46は、下回転軸36の回転によって回転する。全回転釜46は、縫針42の上下動と同期して回転する。下回転軸36のうち全回転釜46の右側に設けた軸受部50は、下回転軸36を受けている。軸受部50は円筒形である。下回転軸36は、軸受部50を前後方向に貫通する穴を通っている。軸受部50は、プランジャーポンプ(図示略)を内部に備えている。前記プランジャーポンプは、後述する油タンク10に収容した潤滑油を、第一供給路81を介して吸い込む。前記プランジャーポンプは、吸い込んだ潤滑油を第二供給路82に送り出す。
【0028】
第二供給路82は、ベッド部21内を軸受部50から右方に延び、上方に曲折する。第二供給路82は、脚柱部22(図1参照)内を上方に向かって延び、軸受部47の前側の穴に繋がっている。前記プランジャーポンプが送り出した潤滑油は、第二供給路82を介して軸受部47内に流れ込む。
【0029】
図6〜図10を参照して、油タンク10について説明する。油タンク10は、半透明の樹脂で形成し、脚柱部22の下方のベッド部21に固定してある。
【0030】
油タンク10は、底壁102(図9参照)、底壁102の縁から略鉛直方向に立ち上がる外周壁101、外周壁101と接続した第一対向壁113、第二対向壁114で主に形成している。
【0031】
底壁102は、ベッド部21の前後方向全域に渡って形成した略矩形状の第一底壁1021と、第一底壁1021の左側後端部分から左方に突出した第二底壁1022とで形成している。
【0032】
第一底壁1021の左端は、前後方向略中央部分が他の左端部分よりも右端側に窪む凹部1213を有している。第一底壁1021は、第一底壁1021の凹部1213後側下面に、第一底壁1021の下面から上方に窪む矩形状の底壁凹部1212を有している。底壁凹部1212は、油タンク10の外側から磁石を嵌めることで、後述する潤滑油収容部12内の潤滑油に含まれる埃、屑、鉄粉等を底壁凹部1212付近に吸着することができる。第一底壁1021の右側前端及び後端は、角部を取り除いた形状となっている。
【0033】
第二底壁1022は、左右方向に長い略矩形状である。尚、第二底壁1022の右端は、第一底壁1021の後左端と接続している。第一底壁1021、第二底壁1022の外周縁には、略鉛直方向に立ち上がる外周壁101が接続している。
【0034】
外周壁101は、第一底壁1021右端に接続した側壁1011、第一底壁1021前端に接続した側壁1012、第一底壁1021左端に接続した側壁1013、第一底壁1021後端及び第二底壁1022後端に接続した側壁1014、第二底壁1022前端に接続した側壁1015、第二底壁1022左端に接続した側壁1016を備えている。側壁1011、1012、1014の高さは、略同一である。側壁1013、1015、1016の高さは略同一且つ側壁1011、1012、1014の高さの略1/2である。側壁1013は、第一底壁1021を鉛直方向に伸ばした形状であり凹部1213を形成している。図7に示すように、側壁1012は、高さ方向の中間部から上端が左方に突出している。側壁1016の側壁1014と接続する部分は、側壁1014と同一高さである。側壁1016は、前後方向中央部より前側において側壁1015と略同一高さとなっている。
【0035】
図11に示すように、側壁1012、1014は、その上縁部がベッド部21のベッド壁部211(図11参照)下端よりも上方に位置する。側壁1012、1014は、ベッド壁部211よりも外側に位置する。油タンク10は、側壁1012、1014の上縁部がベッド壁部211下端よりも上方に位置するので、ミシン1の駆動によって脚柱部22内に飛散する潤滑油を確実に受けることができる。油タンク10は、側壁1012、1014がベッド壁部211より外側に位置するので、ベッド壁部211に付着した潤滑油が落下した場合に、確実に受けることができる。
【0036】
図6〜図10に示すように、油タンク10は、側壁1011、1012、1014の高さ方向で略中間位置に第一底壁1021と略平行であり、平面視略矩形状である第一対向壁113を有している。油タンク10は、第一対向壁113の左端から鉛直方向に伸びる側壁1017を有している。側壁1017の前後方向の長さは、第一対向壁113の前後方の長さよりも短い。側壁1017の前後端は、側壁1012、側壁1014と接続していない。第一対向壁113は、側壁1013の上端と接続している。
【0037】
第一対向壁113は、前後方向中央より前側且つ左右方向中央より右側に収容穴部1131を設けている。収容穴部1131は、外周壁101から離間した位置にある。収容穴部1131は第一対向壁113を貫通している。第一対向壁113は、側壁1012から収容穴部1131側に向かって下方に傾斜する第一傾斜部1132を備えている。第一傾斜部1132は、第一対向壁113の上面に落下した潤滑油を収容穴部1131に導く。第一対向壁113は、収容穴部1131の周囲に収容穴部1131に沿った溝部1133を設けている。溝部1133は、第一対向壁113の上面から下方に向けて設けてある溝である。潤滑油が収容穴部1131を通って第一底壁1021に移動する際、溝部1133は潤滑油に含まれる埃、糸屑等の異物を取り除く。作業者は、溝部1133を利用して、フィルタ(図示略)を取り付けることができる。
【0038】
第一対向壁113は、後部の左右2箇所に窪み部1135を設けている。窪み部1135は、後述する板部72を固定するネジ722(図14参照)の頭部と、第一対向壁113とが接触するのを防ぐための逃げ部である。
【0039】
第一対向壁113は、左側前方に土台部112を有している。側壁1013の左側、即ち凹部1213形成部上方に位置する土台部112は、上向に立設する円筒部60を設けている。円筒部60は、円筒部60の内側を上下方向に貫通する穴である円筒穴601を有する。円筒穴601は、レバー部材98(図2参照)が挿通してある。円筒部60の高さは、側壁1011、1012、1014、1017の高さと略同一である。
【0040】
油タンク10は、第二底壁1022の上方に第二対向壁114を有している。第二対向壁114は、側壁1015、側壁1016、側壁1014、第一対向壁113と接続している。図9に示すように、第二対向壁114の略前側半分は、上方に膨らんだ形状となっている。第二対向壁114の略後側半分は、平坦且つ左端よりも右端が低くなる第二傾斜部1141(図10参照)を形成している。第二対向壁114の右端は、第一対向壁113と接続している。
【0041】
油タンク10は、第一底壁1021、第二底壁1022、第一対向壁113、第二対向壁114、側壁1011、1012、1013、1014、1015、1016で囲まれた潤滑油収容部12を有する。油タンク10は、第一対向壁113、第二対向壁114、側壁1011、1012、1014、1015、1016、1017で囲まれた潤滑油受部11を有する。潤滑油受部11は、側壁1011、1012、1014、1015、1016、1017の上端で形成したタンク開口部103を介して脚柱部22内から垂れ落ちた潤滑油を受ける。収容穴部1131は第一対向壁113を貫通し、潤滑油受部11側と潤滑油収容部12側を連通する。
【0042】
潤滑油受部11は、第二供給路82及び軸受部47を介して歯車32(図4参照)に供給した潤滑油が、脚柱部22(図1参照)内を下方に垂れ落ちた場合に、垂れ落ちた潤滑油を受けることができる。潤滑油を供給した歯車32が歯車34と共に回転した場合、潤滑油は霧状となって周囲に放出する場合がある。放出した霧状の潤滑油は、脚柱部22内に飛散する。潤滑油受部11は、脚柱部22内に飛散した霧状の潤滑油が滴下して下方に垂れ落ちた場合に、垂れ落ちた潤滑油を受けることができる。
【0043】
ミシン駆動部に供給した潤滑油は、潤滑油受部11の第一対向壁113上面に設けた第一傾斜部1132及び収容穴部1131を通って、潤滑油収容部12に溜まる。
【0044】
潤滑油収容部12を形成する側壁1012は、側壁1013と接続している部分に側壁1012を貫通する前面穴1211を有している。油タンク10に外部から潤滑油を供給する場合、作業者はミシン1を傾倒位置に切り替え、潤滑油供給用のホース(図示略)を前面穴1211に挿入して潤滑油を供給する。
【0045】
油タンク10は、第二底壁1022の右側前端から側壁1015に渡って傾斜部1221を形成している。ミシン1を傾倒位置に切り替えた場合、傾斜部1221は、油タンク10が膝操作機構(図示略)と干渉するのを防止する。
【0046】
油タンク10は、側壁1016に左方に延びる円筒部1223を有している。円筒部1223は、その内側に潤滑油収容部12の内部に貫通する穴を形成している。円筒部1223は、第一供給路81と接続している。前記プランジャーポンプは、第一供給路81を介して潤滑油収容部12の内部の潤滑油を吸い上げる。
【0047】
油タンク10は、3箇所のネジ止め部61を備えている。側壁1011は、その上端において前後方向中央より後部に、右向にネジ止め部61が突出している。側壁1017は、その上端において前後方向の中央より後部及び前部に、左向にネジ止め部61が突出している。各ネジ止め部61は、ネジ62(図5参照)の軸部を通すためのネジ用穴611を設けている。ベッド部21は、ネジ用穴611に対応する位置にネジ用穴(図示略)を設けている。作業者は、ネジ止め部61の下方からネジ62の軸部をネジ用穴611に挿入することで、油タンク10をベッド部21に固定する(図5参照)。作業者は、ネジ62を取り外すことによって、油タンク10をベッド部21から取り外すことができる。
【0048】
以上のように、油タンク10は、脚柱部22の下側を潤滑油受部11が覆っているので、歯車32に供給した潤滑油を潤滑油受部11によって受けることができる。故に、油タンク10は、歯車32に供給した潤滑油を確実に回収することができる。油タンク10は、第一対向壁113、第二対向壁114上に溜まった潤滑油を、収容穴部1131を介して潤滑油収容部12に収容することができる。ミシン1が振動すると、潤滑油収容部12内に収容した潤滑油に対して振動が加わる。しかしながら、油タンク10は第一対向壁113、第二対向壁114を設けているので、潤滑油が振動しても潤滑油は潤滑油収容部12の外部に漏れることがない。
【0049】
図11及び図12を参照して、ミシン1の起立位置(図11参照)と、起立位置から傾倒した傾倒位置(図12参照)との間の切り換えについて説明する。
【0050】
ベッド部21は、その後部とミシンテーブル15の矩形穴151の後部とを、2箇所のヒンジ機構27を介して連結している。ヒンジ機構27は、水平軸271と回動部材272とを備えている。ミシンテーブル15は、矩形穴151に面した凹部152を設けている。水平軸271は、ベッド部21の後端部側に、アーム部23と平行に設けてある。ミシンテーブル15は、水平軸271の左右方向の端部を支持する。回動部材272は、その一端が水平軸271の周囲に沿って曲がっている。回動部材272は、水平軸271の周囲を回動可能である。回動部材272は、その他端がベッド部21の後部と連結してある。故に、ミシン1は、起立位置と傾倒位置との間で、水平軸271を中心に回動可能である。
【0051】
ミシン1が起立位置にある場合、ベッド部21の上面とミシンテーブル15の上面とは同一の高さ位置になる。ミシンテーブル15は、ミシン1の後方に、角柱153を備えている。角柱153は、傾倒位置であるミシン1を支持する。作業者は、ミシン1を傾倒位置にして保守作業を行う。
【0052】
図11〜図14を参照し、油溜め部70について説明する。油溜め部70は、ミシン1が傾倒位置にある場合、脚柱部22内部の後部を伝って落下する潤滑油を溜める。油溜め部70は、ベッド壁部211、流出防止部材71、及び板部72で形成してある空間である(図12参照)。
【0053】
図12に示すように、ベッド壁部211は、後側の下端に流出防止部材71と板部72とが設けてある。流出防止部材71及び板部72は、油タンク10のタンク開口部103の内側、且つ第一対向壁113の上方に位置している。流出防止部材71は、凹状に形成してある(図13参照)。流出防止部材71は、板部72とベッド壁部211との間に隙間が発生することを防止する。流出防止部材71は、例えばゴム等の樹脂である。板部72は、ベッド部21を下端側から覆う(図12、図14参照)。
【0054】
図15を参照して、板部72について説明する。板部72は、矩形部723と、第一突出部724と、第二突出部725とを備える。矩形部723は、ベッド部21を覆う略矩形状の部分である。第一突出部724は、矩形部723の前部中央の左側から前方に向けて突出する。第二突出部725は、矩形部723の右前部から前方に向けて突出する。第二突出部725は、その前方への突出長さが第一突出部724の突出長さよりも長い。第二突出部725は、その先端部の左右方向の長さが矩形部723側の端部の左右方向の長さより短い。
【0055】
板部72は、第一突出部724と第二突出部725とに、4箇所のガイド部726、727、728、729が設けてある。ガイド部726、727、728、729は、第二供給路82等を案内する部分である。
【0056】
ガイド部726は、第一突出部724に設けたガイド穴部7262と第一突出部724の端に設けた凹部7261とで構成している。ガイド部727は、第二突出部725に設けたガイド穴部7272と第二突出部725の端に設けた凹部7271とで構成している。ガイド部728は、第二突出部725に設けたガイド穴部7282と第二突出部725の端に設けた凹部7281とで構成している。ガイド部729は、第二突出部725に設けたガイド穴部7282と第二突出部725の端に設けた凹部7291とで構成している。
【0057】
図13に示すように、作業者は、各ガイド部726、727、728、729の凹部7261、7272、7281、7291とガイド穴部7262、7272、7282に固定部材85を通し、第二供給路82等に巻き付けて固定する。ガイド部726、727、728、729は、第二供給路82等を案内する。固定部材85は、例えば可撓性のある金属、樹脂、紐等である。
【0058】
図12を参照して、油溜め部70に潤滑油が溜まる場合について説明する。図12に示す傾倒位置にミシン1を長時間保持した場合、潤滑油は、ミシン1の各駆動機構の潤滑に使用された後、ミシン1の内部の後部を伝って落下する。落下する潤滑油は、経路75を通って、油溜め部70に溜まる。
【0059】
ミシン1が傾倒位置から起立位置(図11参照)に回動すると、油溜め部70に溜まった潤滑油は、板部72の前方の端部から油タンク10の潤滑油受部11に落下する。潤滑油受部11に落下した潤滑油は、収容穴部1131を通って、潤滑油収容部12に落下する。油タンク10は、板部72から落下した潤滑油を、潤滑油収容部12に溜めることができる。
【0060】
以上説明したように、ミシン1は、油タンク10の側壁1012、1014の上縁部がベッド部21のベッド壁部211下端よりも上方に位置する。油タンク10は、側壁1012、1014がベッド壁部211より外側に位置する。油タンク10は、側壁1012、1014の上縁部がベッド壁部211下端よりも上方に位置するので、ミシン1の駆動によって脚柱部22内に飛散する潤滑油を確実に受けることができる。油タンク10は、側壁1012、1014がベッド壁部211より外側に位置するので、ベッド壁部211に付着した潤滑油が落下した場合に、確実に受けることができる。
【0061】
油タンク10は、底壁102と第一対向壁113との間の潤滑油収容部12に、潤滑油を収納可能である。ミシン1が移動して振動した場合、潤滑油収容部12に収容する潤滑油は、ミシン1からの振動が加わる。油タンク10は、第一対向壁113を設けているので、潤滑油が振動しても潤滑油収容部12の外部に漏れない。
【0062】
水平軸271を中心にミシン1が起立位置から傾倒位置に回動した場合、潤滑油は、潤滑油収容部12の後部に溜まる。水平軸271がミシン1の後側にあるので、潤滑油は、潤滑油収容部12の水平軸271側に溜まる。収容穴部1131は、第一対向壁113における水平軸271側の端部である第一端部1136から離間した位置にある。従って、潤滑油は、ミシン1が傾倒位置にある場合、第一対向壁113の収容穴部1131より下に溜まる。故に、油タンク10は、収容穴部1131から潤滑油が潤滑油収容部12の外部に漏れることを防止することができる。
【0063】
尚、ベッド壁部211は、本発明の「壁部」に相当する。収容穴部1131は、本発明の「穴部」に相当する。タンク開口部103は、本発明の「開口部」に相当する。底壁102は、本発明の「底部」に相当する。側壁1012、1014は、本発明の「シール手段」に相当する。
【0064】
本発明は前述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。前述の実施形態では、油タンク10は、側壁1012、1014の上縁部がベッド部21のベッド壁部211下端よりも上方に、且つベッド壁部211より外側に位置する。本発明は、上記形状に限らない。図16(A)〜(E)を参照して、本発明の変形例について説明する。
【0065】
図16(A)に示すように、油タンク10は、側壁1012の上縁部がベッド部21のベッド壁部211下面に設けた当接部材2111と接する。当接部材2111は、例えば、ゴム等の樹脂である。油タンク10は、側壁1012の上縁部が当接部材2111と接するので、潤滑油が流出するのを防ぐことができる。
【0066】
図16(B)に示すように、油タンク501は、第一側壁5011と第一側壁5011の外側に設けた第二側壁5012とを備える。ベッド部21は、ベッド壁部212下面に第一溝部2121と第二溝部2122とを備える。油タンク501は、第一側壁5011が第一溝部2121と嵌合し、第二側壁5012が第二溝部2122と嵌合する。故に、油タンク501は、ベッド壁部212とラビリンス構造を形成し、潤滑油が流出するのを防ぐことができる。
【0067】
図16(C)に示すように、ベッド部21は、ベッド壁部213下面に凸部2131を備える。油タンク501は、第一側壁5011と第二側壁5012との間に凸部2131が嵌合する。故に、油タンク501は、ベッド壁部213とラビリンス構造を形成し、潤滑油が流出するのを防ぐことができる。
【0068】
図16(D)に示すように、ベッド部21は、ベッド壁部214外側面に油タンク502側に凹む凹部2141を備える。油タンク502は、側壁5021上部に正面視コ字状の係合部5022を備えている。油タンク502は、係合部5022がベッド壁部214の凹部2141に係合する。故に、油タンク502は、ベッド壁部214とラビリンス構造を形成し、潤滑油が流出するのを防ぐことができる。
【0069】
図16(E)に示すように、ベッド部21は、ベッド壁部215内側面に油タンク503の外側に凹む凹部2151を備える。凹部2151は、上下方向に2箇所設けてある。油タンク503は、側壁5031上部に油タンク503の外側に向けて突出する係合部5032を備えている。係合部5032は、上下方向に2箇所設けてある。油タンク503は、係合部5032がベッド壁部215の凹部2151と係合する。故に、油タンク503は、ベッド壁部215とラビリンス構造を形成し、潤滑油が流出するのを防ぐことができる。
【0070】
前述の実施形態では、油タンク10は、側壁1011、1012、1014の高さ方向で略中間位置に第一底壁1021と略平行であり、平面視略矩形状である第一対向壁113を設けた。例えば、油タンク10は、第一対向壁113を設けなくてもよい。
【0071】
前述の実施形態では、油タンク10は、第一底壁1021の左側後端部分から左方に突出した第二底壁1022を設けていた。油タンク10は、上記形状に限らない。例えば、油タンク10は、第二底壁1022を備えていなくてもよい。この場合、油タンク10は、第一底壁1021と、第一底壁1021の縁から略鉛直方向に立ち上がる外周壁101、外周壁101と接続した第一対向壁113で形成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ミシン
10 油タンク
11 潤滑油受部
12 潤滑油収容部
21 ベッド部
22 脚柱部
23 アーム部
31 上回転軸
81 第一供給路
82 第二供給路
101 外周壁
102 底壁
103 タンク開口部
113 第一対向壁
211 ベッド壁部
1131 収容穴部
1132 第一傾斜部
1221 傾斜部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド部と、
前記ベッド部の下方に一体に設け、潤滑油を収納可能な油タンクとを備えたミシンにおいて、
前記ベッド部は、下方に延びる壁部を備え、
前記油タンクは、開口部を形成する外周壁を備え、
前記外周壁と前記壁部とで前記潤滑油が前記油タンクから流出するのを防ぐシール手段を形成することを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記シール手段は、
前記外周壁の上縁部が前記壁部の下端部よりも上方、且つ前記壁部の外側に位置するように構成していることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記油タンクは、
前記開口部に対向する底部と、
前記外周壁の内側において、前記開口部と前記底部との間、且つ前記底部と離間した位置に設けた、前記底部に対向する壁部である対向壁と、
前記対向壁を前記開口部から前記底部に向かう方向に貫通する穴部と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記油タンクの前記対向壁の上面は、前記外周壁から前記穴部に向かって、前記底部の方向に傾斜した傾斜部を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のミシン。
【請求項5】
ミシンのベッド部の下方に一体に設け、潤滑油を収納可能なミシンの油タンクにおいて、
開口部を形成する外周壁を備え、
前記外周壁は、前記ミシンの前記ベッド部から下方に延びる壁部との間で前記潤滑油が前記油タンクから流出するのを防ぐシール手段を形成することを特徴とするミシンの油タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−135417(P2012−135417A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289456(P2010−289456)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】