説明

ミシン用ボビンの糸止めリング

【課題】 ミシンの下糸に使うボビンに巻いた糸がほつれないように、糸をボビンに固定しておくためのミシン用ボビンの糸止め具を提供する。

【解決手段】 ボビン軸部のフランジ間に入る幅と、ボビンの外周長に相当する長さを持つ軟質樹脂等の弾性復元力を利用して糸を押さえる。両端に指がかりを設けて容易に着脱できるようにする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン用ボビンの糸止めリングに関する。

【背景技術】
【0002】
ミシンを使う人は、種類(色、大きさ、素材等)の違う複数の糸を使い分けているので、
それらを複数のボビンに巻いて保管している。これらのボビン内の糸は、ほっておくと糸が
緩んでほどけたり、他のボビンの糸と絡まってもつれたりして、いざ使おうとする時に糸を
巻き直したり、糸を切ったりしなければならないという事が起こる。それでは、すぐに縫製
作業に入れないので、保管時にはボビンに巻かれた糸を止め、使用時には取り外す事が出来
る各種のボビン用糸止め具が提案されている。

【特許文献1】特開2007-54567
【特許文献2】特開2006-271502
【0003】
特許文献1のボビン用糸止め具は、止め具本体と止め部からなり、止め具本体のカギ固定
部に止め部の固定用カギを引っ掛けて糸を固定し、固定カギを外すと止め具全体がボビンか
ら外れるというものであるが、この一連の動作を、直径20ミリ、高さ10ミリという小さな
サイズのボビンで行うのは容易ではない。
さらに、止め具本体が有する複数の固定穴から最適な穴を選んで止めるのであるが、多く
の場合糸に緩みが生じることになる。

【0004】
一方、特許文献2のミシン用糸解れ防止用の保持具は、略C環状のパイプ部材をボビンの
フランジ部分に取り付けて糸の繰り出し端部を保持するというものであるが、ボビンのフラ
ンジの外周部にC型のパイプ部材の保持具を装着させるので、ボビンを使う時は外し、保管
する時はまた着けるという脱着作業は煩雑である。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、糸の最大残量の時から最小残量の時まで、ボビンに巻かれた糸の量に応じて、
糸を緩み無く止めることができるボビン用の糸止め具を提供することを目的とする。
またさらに本発明は、ワンタッチで着脱できるボビン用の糸止め具を提供することを目
的とする。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のミシン用ボビンの糸止め具(以下、糸止めリングと呼ぶ)は、軟質樹脂等の弾性を持つ素材の特性を生かし、その形状を、ゼンマイ形、楕円形等に成形する事によって、糸の残量の最大から最小まで緩み無くボビンに糸を止めることが出来、かつボビンへの着脱も容易に出来る。


【0007】
また本発明の、糸止めリングの両端に有る凸状の指がかりに指を当てて押し広げると、一段と着脱が容易になることを特徴としている。

【発明の効果】
【0008】
本発明は一の部品で構成されているため、金型もひとつであり、軟質樹脂等の持つ柔軟に
変形する特性を有する素材で成形されているので、装着時には両端を押し広げて装着出来、
装着後には素材の持つ弾性で、巻かれた糸全体を軸部に押し、ボビンに糸を止めることができる。

【0009】
またこの糸止めリングを、空のボビンに巻き付けた状態にセットして販売することができるため、ボビンを求める人にボビンに巻いた糸をワンタッチで止めることが出来る本発明の利便性を広く周知させることが出来る。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の糸止めリングは、軟質樹脂、はがね等の、弾性変形をもって初期の形状を維持する特性を生かし、一の部品で、糸の最小残量から最大残量まで緩みなくボビンに糸を止めることができ、またボビンへの着脱も容易にできるようにしたものである。

【0011】
具体的に図面を示しながら説明する。図1はボビンの断面図であり、ミシンで使う下糸
(3)はボビンの軸部(2)の周りに、またフランジ(1)の間に巻き付けられる。
そのため、糸の最小残量時には軸の周径と同じかそれより小さい周径を持つリングを糸
の周り全体に巻き付ければ糸を止めることが出来る。
また糸の最大残量時にはフランジ(1)の周径より小さい周径を持つリングを糸の周り
全体に巻き付ければ、糸をボビンに止めることが出来る。
しかし糸の残量は徐々に変化するものであるからその都度、糸の残量に合った大きさの
リングを用意するわけにはいかない。

【0012】
本発明は、ひとつのリングで糸の最小残量時から最大残量時まで、ボビンにまかれた糸を止めることを目的とする。そのためには、ボビンに巻かれた糸の全部を、常に完全におおう 必要はなく、また糸の端緒が確実に押さえられていなければ糸がほどけてしまうというわけでもない。
巻かれた糸の外周面の一部をボビン軸(中心)に向かって押さえる力が働けば、巻かれた
糸の外周面を保持することが出来、ボビンに糸を止めることができる。

【0013】
ミシン縫製時には使っている糸を交換したり、新しい糸を巻いた予備のボビンを保管
したり、縫製作業を中断してやらなければならないことが発生するので、小さな部品が
一つ見つからないとボビンを片付けることが出来ないようでは意味がない、
本発明は簡単で使いやすい、一部品のみの構成であることを特徴としている。

【0014】
また、糸の端緒を止めることによって糸を繰り出し易くなり作業性が良くなるからと
言って、直径20ミリ高さ10ミリ程度の大きさのボビンに取り付けて、糸の端緒を穴に
入れなければならかったり、溝部に挟み込ませるなどということをしなければならない
のでは、初めのうちは便利に感じて使ってみても、いずれ使われなくなってしまう。

【0015】
本発明は、糸をボビンに止めるために複雑な構造を持たせることなく、ボビンに巻かれた
糸がほどけずに、ミシンを使おうと思った時にすぐに作業に入る事が出来ることを優先して考えたものである。

【0016】
本糸止めリングは、いずれの形状のものも、糸の最大残量時にはボビンの両フランジの外周と同じ、一の切れ目を持つ円状になる。
そのため取り外す時には両端にある指がかりを押し広げれば、簡単にボビンから外すこと
が出来、ミシンにボビンを装着できる。

【0017】
ゼンマイ形の糸止めリングは、最大周径がボビンフランジの外周径と同じなので、リングの端部が軸側に入り込むことが無く、糸の最小残量時でもリングの終端が、つまみ易く取りはずし易い。(図2、図3、図6、図7)

【0018】
また楕円形の場合には、糸の最小残量時には長軸方向の円弧が、ボビンのフランジから
はみ出すので、その円弧部分を両サイドから押せば簡単にボビンから取り外すことが出来る。
(図4、図5、図8、図9)

【0019】
本発明の糸止めリングは、幅が8ミリであるので、外周部先端に指がかりの凸部を持たせるだけでなく、外周全体に凹凸をつけることでボビンをつまみやすくし、そのパターンを工夫すれは、糸の分類を手触りで確認することが出来、糸を選ぶ時や、分類・整理する時に便利である。

【0020】
また素材を透明な樹脂等で成形すれば、使いたい色の糸が巻かれたボビンを見つけやす
い。透明樹脂でも暖色系、寒色系等に着色すれば糸の分類が出来、使いたい糸を見付けや
すくすることが出来る。

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は成形された状態で、何の力も作用していない時は小さい円弧を持つゼンマイ形、
あるいは短い軸長を持つ楕円形によって、円柱状のも(でその円の大きさが変化するようなもの、例えば指、腕など)に巻き付けることが出来る。医療において、接着剤にアレルギーが有る人がけがをした場合など、薬を塗った腕をおおう包帯を止める時に、本発明のリングを
大きく成形したものであれば、直接肌に触れずに腕の周りに包帯を止めておくことが出来、包帯を替える時も簡単に取り外すことが出来る。

【0022】
また、道路の電柱や室内の円柱に掲示する紙を止めることが出来、接着剤の跡を残すこともなく貼ったり、外したりが簡単に出来る。

【0023】
また選挙ポスター等一定期間掲示され必ず取り除かなければならず、風雪に耐えなけ
ればならないような場合には、全面がおおわれる程の大きさにすれば雨や雪にぬれても
シワになることもなく、取り外すことも容易である。

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】糸が巻かれているボビンの(A−A’)断面図
【図2】糸の残量が少ない時の渦巻き形の糸止めリング装着断面図
【図3】糸の残量が多い時の渦巻き形の糸止めリング装着断面図
【図4】糸の残量が少ない時の楕円形の糸止めリング装着断面図
【図5】糸の残量が多いときの楕円形の糸止めリング装着断面図
【図6】渦巻き形の糸止めリング斜視図
【図7】糸が巻かれたボビンに装着された渦巻き形の糸止めリング断面斜視図
【図8】楕円形の糸止めリング斜視図
【図9】糸が巻かれたボビンに装着された楕円形の糸止めリング断面斜視図
【符号の説明】
【0025】
(1)フランジ
(2)軸部
(3)糸
(4)糸止めリング

(5)指がかり
▲は指がかりを押す方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン用ボビンに巻かれた糸を係止するため、ボビン軸部のフランジ間に入る幅と、ボビンの外周長に相当する長さを持つ弾性板状体であり、その形状をゼンマイ状とし両端に指がかり(凸部)を設けたミシン用ボビンの糸止めリング。

【請求項2】
請求項1の弾性板状体の形状が楕円形であるミシン用ボビンの糸止めリング。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−12016(P2010−12016A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174405(P2008−174405)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(708003101)
【Fターム(参考)】