説明

ミシン

【課題】膝上げレバーに付着して下方に垂れる潤滑油を油タンクによって受けることができるミシン及びミシンの油タンクを提供する。
【解決手段】油タンク10は、押え上下動機構を駆動するレバー部材98を挿通する円筒穴601を、凹部1213上側の土台部112から上方向に立設するボス形状の円筒部60に設けている。レバー部材98は、円筒穴601を設けた円筒部60を上方から覆う被覆部材981を固定している。ミシンは、脚柱部内でレバー部材98に付着した潤滑油が、レバー部材98を伝って落下した場合に円筒穴601から外部に漏れるのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン本体に固定され、潤滑油を収容する油タンクを備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンは、油タンクを備えている。油タンクは、ミシンを駆動する各駆動機構に供給するための潤滑油を収容する。油タンクは、ミシン本体に固定してある。
【0003】
特許文献1のミシンは、起立位置と、起立位置から傾倒した傾倒位置とを切替可能である。ミシンの油タンクは、潤滑油を貯留可能な油受け部と、ミシンを起立位置から傾倒位置に切り替えた場合に、油受け部に貯留した全ての潤滑油を収納可能な油溜め部とを備えている。油タンクは、ベッド部の下方に設けてある。油タンクは、ミシンを起立位置から傾倒位置に切り替えた場合に、油タンクから潤滑油が漏れることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4135136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のミシンは、ミシン本体の下方に設けた膝上げレバー等に連動して上下動する布押えを備えている。布押えは、加工布を押える。布押えは、布押え上下動機構によって上下動する。ミシンは、本体内に膝上げレバーと布押え上下動機構とを連結する膝上げ機構を備えている。ミシンの各駆動機構に供給した潤滑油は、膝上げ機構に付着して下方に垂れる場合がある。特許文献1に記載のミシンの油タンクは、膝上げ機構に付着して下方に垂れる潤滑油を油受け部で受けることができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、膝上げ機構に付着して下方に垂れる潤滑油を油タンクによって受けることができるミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のミシンは、加工布を押える布押え機構と、前記布押え機構を上下動する押え上下動機構と、鉛直方向に延びるレバー部材を有し前記押え上下動機構を駆動する膝上げ機構とを備えたミシンにおいて、潤滑油を収納可能な油タンクと、前記油タンクに設け前記膝上げ機構の前記レバー部材を貫通可能な貫通穴と、前記膝上げ機構に設け、前記貫通穴を覆うカバー部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明のミシンは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記油タンクは、鉛直方向に突出部を形成し、前記貫通穴は、前記突出部に突出方向と平行に形成され、前記カバー部材は、前記貫通穴を覆う第1カバーと、前記突出部の前記突出方向に沿って前記突出部の側面全周を覆う第2カバーとを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明のミシンは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記油タンクは、上方に開口する開口部を形成する外周壁と、底壁と、前記外周壁の内側に形成し、前記開口部と前記底壁との間、且つ前記底壁と離間した位置に設けた、前記底壁に対向する壁部である対向壁と、前記対向壁の前記開口部側と前記底壁側とを連通する穴部とを備え、前記外周壁と前記対向壁とで前記開口部から落下する潤滑油を受ける油受部を形成し、前記外周壁と前記対向壁と前記底壁とで前記油受部で受けた潤滑油を前記穴部から回収する油収容部を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明のミシンは、請求項3に記載の発明の構成に加え、前記油収容部の前記外周壁の一部が、対向する外周壁側に凹み、前記対向壁の前記底壁側を露出する凹部と、前記油受部の対向壁の内、前記凹部から露出する凹部上壁とを更に備え、前記突出部を、前記凹部上壁に設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明のミシンは、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記突出部は、前記凹部上壁から前記開口部まで突出し、前記第2カバーは前記突出部の前記凹部上壁から前記突出部の突出端までを覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のミシンでは、油タンクは、鉛直方向に延びるレバー部材を有し押え上下動機構を駆動する膝上げ機構のレバー部材を貫通可能な貫通穴を設けている。膝上げ機構は、貫通穴を覆うカバー部材を固定している。従って、ミシンは、カバー部材によってミシンの各機構を潤滑する潤滑油が膝上げ機構を伝って貫通穴から油タンクの外部へ漏れるのを防ぐことができる。
【0013】
請求項2のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加え、油タンクは、鉛直方向に突出部を設ける。貫通穴は、突出部の突出する位置に突出方向と平行に形成してある。カバー部材は、第2カバーが突出部の側面全周を覆う。従って、ミシンは、膝上げ機構を駆動しても油タンク内部の潤滑油が貫通穴から外部へ漏れるのを確実に防ぐことができる。
【0014】
請求項3のミシンでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、油タンクは、外周壁と対向壁と底壁とで形成した油収容部に、ミシンの機構の潤滑用の潤滑油を収納可能である。潤滑に使用されてミシン内部から落下する潤滑油は、外周壁と対向壁とで開口部から形成した油受部で受ける。油受部で受けた潤滑油は、穴部を通って、油収容部に溜まる。ミシンが振動した場合、対向壁によって潤滑油は開口部から外部に漏れない。従って、ミシンは、潤滑油が油タンクの外部に漏れることを防止することができる。
【0015】
請求項4のミシンでは、請求項3に記載の発明の効果に加え、油タンクは、油収容部の外周壁の一部が、対向する外周壁側に凹み、対向壁の底壁側を露出する凹部を備える。油受部の対向壁は、凹部から露出する凹部上壁を備える。突出部の貫通穴を通る膝上げ機構は、凹部上壁の下方の凹部を通る。故に、膝上げ機構は油収容部の内部を通ることがない。従って、ミシンは、油タンク内部に収容する潤滑油が膝上げ機構を伝って外部へ漏れるのを更に確実に防ぐことができる。
【0016】
請求項5のミシンでは、請求項4に記載の発明の効果に加え、突出部は、凹部上壁から開口部まで突出し、第2カバーは突出部の凹部上壁からの突出部の突出端まで延びている。故に、膝上げ機構を駆動したときにカバー部材が、突出部を覆う範囲が大きくなり、ミシンは、油タンク内部に収容する潤滑油が貫通穴から外部へ漏れるのを更に確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ミシン1の正面図である。
【図2】ミシン1の縦断面図である。
【図3】ミシン1内部の駆動機構を示す斜視図である。
【図4】ミシン1のベッド部21内を下方から見た図である。
【図5】油タンク10の外観を示す斜視図である。
【図6】油タンク10の外観を示す斜視図である。
【図7】油タンク10の平面図である。
【図8】図7のII−II線における矢視方向断面図である。
【図9】図7のIII−III線における矢視方向断面図である。
【図10】図4のI−I線における矢視方向断面図である。
【図11】張力解放機構63及び押え上下動機構64を示す斜視図である。
【図12】油タンク10及びレバー部材98を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、図1の紙面表面側、背面側を、夫々ミシン1の前側、後側とする。
【0019】
図1、図2を参照して、ミシン1の全体構造について説明する。図1に示すように、ミシン1は、ベッド部21、脚柱部22、アーム部23を備えている。ベッド部21は、図示しないテーブル上に設けてある。脚柱部22は、ベッド部21の右端から上方に延びている。アーム部23は、脚柱部22の上端から左方に延びている。アーム部23は、ベッド部21に対向している。
【0020】
ベッド部21は内部に、油タンク10、下回転軸36、軸受部51、全回転釜46等を備えている。油タンク10は、潤滑油を収容する。油タンク10は、脚柱部22の下方に設けてある。下回転軸36、軸受部51の詳細は後述する。
【0021】
アーム部23は、左端下方に押え足48及び縫針42を設けている。アーム部23の左端内部は、押え棒44、バネ45、張力解放機構63、押え上下動機構64を設けている。押え棒44は、アーム部23内を上下方向に延びている。押え棒44の下端は、アーム部23の下端から下方に突出している。押え棒44は、下端に押え足48を有している。押え棒44は、上端にバネ45が接続してある。アーム部23の上端に設けた摘み50は、バネ45の上端を固定している。バネ45は、押え棒44を下方に付勢する。押え上下動機構64は、押え棒44を駆動して押え足48を上下動する。張力解放機構63は、糸調子器(図示略)を駆動して上糸の張力を調整する。
【0022】
ミシン1は、その内部且つ脚柱部22とアーム部23とが接続する部分に仕切り壁15を設けている。仕切り壁15は、脚柱部22内の空間とアーム部23内の空間とを仕切る。
【0023】
図3を参照し、ミシン1の駆動機構について説明する。図3に示すように、ミシン1は、上回転軸31、連結回転軸33、下回転軸36等を備えている。上回転軸31は、アーム部23(図2参照)内を左右方向に延びている。連結回転軸33は、脚柱部22(図2参照)内を上下方向に延びている。下回転軸36は、ベッド部21(図2参照)内を左右方向に延びている。
【0024】
上回転軸31は、右端にミシンモータ(図示略)を設けている。上回転軸31は、ミシンモータの駆動によって回転する。上回転軸31は、左右方向略中央部分において軸受部47に支持されている。軸受部47は、円筒形である。軸受部47は、前側に設けた穴から潤滑油を取り込む。後述する第二供給路82は、軸受部47の穴に接続している。上回転軸31は、軸受部47の右方に傘状の歯車32を備えている。
【0025】
上回転軸31は、左端に針棒上下動機構41を設けている。針棒上下動機構41は、アーム部23(図2参照)内を上下方向に延びる針棒43を支持している。針棒43は、下端に縫針42を備えている。針棒上下動機構41は、前記ミシンモータによる上回転軸31の回転によって駆動する。針棒上下動機構41の駆動によって、針棒43は上下動する。
【0026】
連結回転軸33は、上端に傘状の歯車34を備えている。歯車34は、歯車32と噛み合っている。連結回転軸33は、上回転軸31の回転に伴い回転する。連結回転軸33は、下端に傘状の歯車35を備えている。連結回転軸33は、前記ミシンモータによって回転する上回転軸31の回転駆動力を下回転軸36に伝達する。
【0027】
下回転軸36は、右端に傘状の歯車37を備えている。歯車37は、歯車35と噛み合っている。下回転軸36は、連結回転軸33の回転に伴い回転する。下回転軸36は、左端に全回転釜46(図2参照)を備えている。全回転釜46は、下回転軸36の回転によって回転する。全回転釜46は、縫針42の上下動と同期して回転する。
【0028】
軸受部51は、下回転軸36のうち全回転釜46の右側に設けてある。軸受部51は、下回転軸36を支持している。軸受部51は、プランジャーポンプ(図示略)を内部に備えている。前記プランジャーポンプは、後述する油タンク10に収容した潤滑油を、第一供給路81を介して吸い込む。前記プランジャーポンプは、吸い込んだ潤滑油を第二供給路82に送り出す。排出路83は、プランジャーポンプから漏れ出た潤滑油を油タンク10に排出する。
【0029】
第二供給路82は、ベッド部21内を軸受部51から右方に延び、油タンク10の上側で上方に曲折する。第二供給路82は、脚柱部22(図2参照)内を上方に向かって延び、軸受部47の前側の穴に繋がっている。上回転軸31は、軸受部47の前記穴と対向する位置に軸穴(図示略)を有している。該軸穴は、上回転軸31の内部に形成した貫通穴(図示略)と連通している。上回転軸31は、歯車32を固定した付近に前記貫通穴と連通する穴を有している。前記プランジャーポンプが送り出した潤滑油は、第二供給路82を介して軸受部47内に流れ込む。第二供給路82を介して軸受部47に流れ込んだ潤滑油は、上回転軸31に形成した前記軸穴、貫通穴、歯車付近の穴を介して歯車32に供給することができる。歯車32に供給した潤滑油は、歯車32が歯車34と共に回転した場合の摩擦による発熱を抑え、焼き付き現象を防止することができる。
【0030】
潤滑油を供給した歯車32が歯車34と共に回転すると、潤滑油は霧状になり脚柱部22内に飛散する。仕切り壁15は、霧状の潤滑油を遮断できるので潤滑油はアーム部23内に進入しない。
【0031】
図5〜図9を参照して、油タンク10について説明する。油タンク10は、半透明の樹脂で形成し、脚柱部22の下方のベッド部21に固定してある。
【0032】
油タンク10は、底壁102、底壁102の縁から略鉛直方向に立ち上がる外周壁101、外周壁101と接続した第一対向壁113、第二対向壁114で主に形成している。
【0033】
底壁102は、ベッド部21の前後方向全域に渡って形成した略矩形状の第一底壁1021と、第一底壁1021の左側後端部分から左方に突出した第二底壁1022とで形成している。
【0034】
第一底壁1021の左端は、前後方向略中央部分が他の左端部分よりも右端側に窪む凹部1213を有している。第一底壁1021は、第一底壁1021の凹部1213後側下面に、第一底壁1021の下面から上方に窪む矩形状の底壁凹部1212を有している。底壁凹部1212は、油タンク10の外側から磁石を嵌めることで、潤滑油収容部12内の潤滑油に含まれる埃、屑等を底壁凹部1212付近に吸着することができる。第一底壁1021の右側前端及び後端は、角部が取り除いた形状となっている。
【0035】
第二底壁1022は、左右方向に長い略矩形状である。尚、第二底壁1022の右端は、第一底壁1021の後左端と接続している。第一底壁1021、第二底壁1022の外周縁には、略鉛直方向に立ち上がる外周壁101が接続している。
【0036】
外周壁101は、第一底壁1021右端に接続した側壁1011、第一底壁1021前端に接続した側壁1012、第一底壁1021左端に接続した側壁1013、第一底壁1021後端及び第二底壁1022後端に接続した側壁1014、第二底壁1022前端に接続した側壁1015、第二底壁1022左端に接続した側壁1016を備えている。側壁1011、1012、1014の高さは、略同一である。側壁1013、1015、1016の高さは略同一且つ側壁1011、1012、1014の高さの略1/2である。側壁1013は、第一底壁1021を鉛直方向に伸ばした形状であり凹部1213を形成している。図6に示すように、側壁1012は、高さ方向の中間部から上端が左方に突出している。側壁1016の側壁1014と接続する部分は、側壁1014と同一高さである。側壁1016は、前後方向中央部より前側において側壁1015と略同一高さとなっている。
【0037】
油タンク10は、側壁1011、1012、1014の高さ方向で略中間位置に第一底壁1021と略平行であり、平面視略矩形状である第一対向壁113を有している。油タンク10は、第一対向壁113の左端から鉛直方向に伸びる側壁1017を有している。側壁1017の前後方向の長さは、第一対向壁113の前後方の長さよりも短い。側壁1017の前後端は、側壁1012、側壁1014と接続していない。第一対向壁113は、側壁1013の上端と接続している。
【0038】
第一対向壁113は、前後方向中央より前側且つ左右方向中央より右側に収容穴部1131を設けている。収容穴部1131は、外周壁101から離間した位置にある。収容穴部1131は第一対向壁113を貫通している。第一対向壁113は、側壁1012から収容穴部1131側に向かって下方に傾斜する第一傾斜部1132を備えている。第一傾斜部1132は、第一対向壁113の上面に落下した潤滑油を収容穴部1131に導く。第一対向壁113は、収容穴部1131の周囲に収容穴部1131に沿った溝部1133を設けている。溝部1133は、第一対向壁113の上面から下方に向けて設けてある溝である。潤滑油が収容穴部1131を通って第一底壁1021に移動する際、溝部1133は潤滑油に含まれる埃、糸屑等の異物を取り除く。作業者は、溝部1133を利用して、フィルタ(図示略)を取り付けることができる。
【0039】
第一対向壁113は、左側前方に土台部112を有している。側壁1013の左側、即ち凹部1213形成部上方に位置する土台部112は、上向に立設する円筒部60を設けている。円筒部60は、円筒部60の内側を上下方向に貫通する穴である円筒穴601を有する。円筒穴601は、後述するレバー部材98が挿通してある。円筒部60の高さは、側壁1011、1012、1014、1017の高さと略同一である。
【0040】
油タンク10は、第二底壁1022の上方に第二対向壁114を有している。第二対向壁114は、側壁1015、側壁1016、側壁1014、第一対向壁113と接続している。図8に示すように、第二対向壁114の略前側半分は、上方に膨らんだ形状となっている。第二対向壁114の略後側半分は、平坦且つ左端よりも右端が低くなる第二傾斜部1141(図9参照)を形成している。第二対向壁114の右端は、第一対向壁113と接続している。
【0041】
油タンク10は、第一底壁1021、第二底壁1022、第一対向壁113、第二対向壁114、側壁1011、1012、1013、1014、1015、1016で囲まれた潤滑油収容部12を有する。油タンク10は、第一対向壁113、第二対向壁114、側壁1011、1012、1014、1015、1016、1017で囲まれた潤滑油受部11を有する。潤滑油受部11は、側壁1011、1012、1014、1015、1016、1017の上端で形成したタンク開口部103介して脚柱部22内から垂れ落ちた潤滑油を受ける。収容穴部1131は第一対向壁113を貫通し、潤滑油受部側と潤滑油収容部側を連通する。
【0042】
ミシン駆動部に供給した潤滑油は、潤滑油受部の第一対向壁113上面に設けた第一傾斜部1132及び収容穴部1131を通って、潤滑油収容部12に溜まる。
【0043】
潤滑油収容部12を形成する側壁1012は、側壁1013と接続している部分に側壁1012を貫通する前面穴1211を有している。油タンク10に外部から潤滑油を供給する場合、作業者はミシン1を傾倒位置に切り替え、潤滑油供給用のホース(図示略)を前面穴1211に挿入して潤滑油を供給する。
【0044】
油タンク10は、第二底壁1022の右側前端から側壁1015に渡って傾斜部1221を形成している。ミシン1を傾倒位置に切り替えた場合、傾斜部1221は、油タンク10が膝操作機構99(図2参照)と干渉するのを防止する。
【0045】
油タンク10は、側壁1016に左方に延びる円筒部1223を有している。円筒部1223は、その内側に潤滑油収容部12の内部に貫通する穴を形成している。円筒部1223は、第一供給路81と接続している。前記プランジャーポンプは、第一供給路81を介して潤滑油収容部12の内部の潤滑油を吸い上げる。
【0046】
以上のように、油タンク10は、脚柱部22の下側を潤滑油受部11が覆っているので、歯車32に供給した潤滑油を潤滑油受部11によって受けることができる。故に、油タンク10は、歯車32に供給した潤滑油を確実に回収することができる。油タンク10は、第一対向壁113、第二対向壁114上に溜まった潤滑油を、収容穴部1131を介して潤滑油収容部12に収容することができる。ミシン1が振動すると、潤滑油収容部12内に収容した潤滑油に対して振動が加わる。しかしながら、油タンク10は第一対向壁113、第二対向壁114を設けているので、潤滑油が振動しても潤滑油は潤滑油収容部12の外部に漏れることがない。
【0047】
図11を参照して、押え上下動機構64について説明する。押え上下動機構64は、クランク部材71、軸72、係止部材73、押え上げレバー74を備えている。押え棒44は、その上下方向略中央部分に係止部材73を設けている。係止部材73は棒状であり、前後方向に延びている。係止部材73の前側は、押え棒44に螺子で固定してある。
【0048】
クランク部材71は、係止部材73の下側及び右側に設けてある。クランク部材71は曲折した板材である。クランク部材71は、係止部材73の下方から右方に延び、右端において上方に直角に曲折して上方に延びている。軸72は、クランク部材71の曲折部分を揺動可能に支持している。クランク部材71は、後側に押え上げレバー74を設けている。押え上げレバー74は、作業者が直接手動で押え足48を上下動するものである。
【0049】
図12を参照して膝上げ機構について説明する。膝上げ機構は、クランク部材71の上端部に一端が接続した連竿62、クランク部材65、レバー部材98を主に備えている。連竿62は、クランク部材71から右方に延び、仕切り壁15を貫通して、仕切り壁15の右側に設けたクランク部材65に他端が接続している。図2に示すように、連竿62は、アーム部23の先端側から脚柱部22側に向けて下方に傾斜している。
【0050】
クランク部材65は、曲折した部材である。クランク部材65は、仕切り壁15の右側を上方に延び、上端において右方に直角に曲折している。軸66は、クランク部材65の曲折部分を揺動可能に支持している。連竿62は、クランク部材65のうち下方に延びた部分の下端部に接続している。クランク部材65は、右方に延びている部分の右端部がレバー部材98の上端と接続している。クランク部材65は、レバー部材98の上下動によって軸66を中心に揺動可能である。
【0051】
レバー部材98は、脚柱部22(図2参照)内を上下方向に延びる。レバー部材98は、その下端が油タンク10の下方の膝操作機構99(図2参照)に接続している。膝操作機構99は、ベッド部21の下方を覆うアンダーカバー(図示略)に固定した軸支持部(図示略)と、軸991と、軸991によって回動可能に支持された操作部992とを備えている。アンダーカバーはミシンテーブルに取り付けており、ミシン1をテーブルに載せたときにベッド部21の下方を覆う。ミシン1をテーブルに載せたときに操作部992は、先端にレバー部材98と係合可能な係合部を有している。操作部992は、作業者が操作可能な膝操作レバー97(図1参照)と接続している。作業者は、膝を使って膝操作レバー97を操作する。作業者が膝操作レバー97を操作すると、操作部992は回動する。操作部992が回動すると、係合部はレバー部材98の下端を上下に移動させる。
【0052】
レバー部材98は、上下方向中央より下方で油タンク10の円筒穴601に挿通している。レバー部材98は、円筒部60を上方から覆う被覆部材981を固定している。被覆部材981は、例えばゴム等の樹脂である。被覆部材981は、円筒部60の上面を覆う第1被覆部9811と、円筒部60の側面を覆う第2被覆部9812とからなる。被覆部材981は、脚柱部22内でレバー部材98に付着した潤滑油が、レバー部材98を伝って落下した場合に円筒穴601から油タンク10外部に漏れるのを防ぐ。
【0053】
被覆部材981は、レバー部材98が最も下方に位置する場合、第2被覆部9812が円筒部60の側面全周を覆う。被覆部材981は、レバー部材98が最も上方に位置する場合、第2被覆部9812の下端が円筒部60の上端より下方に位置する。故に、被覆部材981は、膝操作機構99によってレバー部材98が上下動しても、レバー部材98を伝って落下する潤滑油が円筒穴601から油タンク10外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0054】
押え上下動機構64の駆動原理について説明する。押え足48を下方に移動する場合、作業者は膝操作レバー97から膝を離す。膝操作レバー97から膝を離すと、操作部992は時計回り方向に(図12において)回動する。操作部992が回動することで、係合部は下方に移動し、レバー部材98は下方に移動する。レバー部材98が下方に移動すると、クランク部材65は、軸66を中心として時計回り方向(図11において)に揺動する。クランク部材65の揺動によって、連竿62は左方に移動する。連竿62の移動によって、押え上下動機構64のクランク部材71は、軸72を中心として反時計回り方向(図11において)に揺動する。クランク部材71は、揺動によって左方に延びる部分が下方に移動する。バネ45の付勢力によって、係止部材73及び押え棒44は下方に移動する。故に、押え棒44に接続した押え足48は下方に移動する。
【0055】
押え足48を上方に移動する場合、作業者は膝操作レバー97を膝で押す。膝操作レバー97を膝で押すと、操作部992は反時計回り方向に(図12において)回動する。操作部992が回動することで、係合部は上方に移動し、レバー部材98は上方に移動する。レバー部材98が上方に移動すると、クランク部材65は、軸66を中心として反時計回り方向(図11において)に揺動する。クランク部材65の揺動によって、連竿62は右方に移動する。連竿62の移動によって、押え上下動機構64のクランク部材71は、軸72を中心として時計回り方向(図11において)に揺動する。クランク部材71は、揺動によって左方に延びる部分が上方に移動する。クランク部材71の移動によって、係止部材73及び押え棒44は上方に移動する。故に、押え棒44に接続した押え足48は、上方に移動する。
【0056】
張力解放機構63について説明する。張力解放機構63は、糸緩め板75を備えている。糸緩め板75は、上下方向に延びる板状の部材である。糸緩め板75は、下端を軸として揺動可能である。糸緩め板75は、糸調子器(図示略)に接続している。糸緩め板75は、反時計回り方向に揺動した場合、糸調子器を駆動して上糸に張力を加えることができる。糸緩め板75は、時計回り方向に揺動した場合、糸調子器を駆動して上糸を緩めることができる。
【0057】
張力解放機構63の駆動原理について説明する。上糸に張力を加える場合、作業者がスイッチ(図示略)を操作することで、ソレノイド70(図3参照)はワイヤ61を緩める。ワイヤ61は、チューブ67内を通ってソレノイド70に接続している。ワイヤ61の左端に設けた糸緩め板75は、反時計回り方向に揺動する。糸緩め板75は糸調子器を駆動して上糸に張力を加える。上糸を緩める場合、作業者がスイッチを操作することで、ソレノイド70はワイヤ61を引っ張る。ワイヤ61の左端に設けた糸緩め板75は、時計回り方向に揺動する。糸緩め板75は糸調子器を駆動して上糸を緩める。
【0058】
図2に示すように、ワイヤ61及び連竿62は、常にアーム部23の先端側から脚柱部22側に向けて下方に傾斜するように設けてある。尚、傾斜角は、例えば水平方向に対して1〜3度となっている。
【0059】
脚柱部22内には、歯車32(図3参照)に供給した潤滑油が歯車32の回転によって霧状となって飛散する。霧状の潤滑油は、脚柱部22内で、ワイヤ61及び連竿62に付着する場合がある。ワイヤ61及び連竿62は、アーム部23の先端側から脚柱部22側に向けて常に下方に傾斜している。故に、ワイヤ61及び連竿62に付着した潤滑油は、重力によって、ワイヤ61及び連竿62を伝って脚柱部22内に向かって移動する。ワイヤ61及び連竿62に付着した潤滑油は脚柱部22内に伝わり、アーム部23の先端側に伝わらない。故に、ミシン1は、アーム部23の先端に潤滑油が溜まらないので、潤滑油がアーム部23の先端から落下して被縫製物及び糸を汚すことを防止できる。ミシン1は、アーム部23の先端に潤滑油が溜まらないので、アーム部23の先端に溜まった潤滑油を回収する回収機構(ポンプ等)を設ける必要がない。
【0060】
ワイヤ61及び連竿62を伝って脚柱部22内に移動した潤滑油は、下方に垂れ落ちる。脚柱部22の下方に設けた油タンク10の潤滑油受部11は、ワイヤ61及び連竿62から垂れ落ちた潤滑油を受ける。潤滑油受部11が受けた潤滑油は、収容穴部1131を通り、潤滑油収容部12は潤滑油を収容する。潤滑油収容部12に溜まった潤滑油は、第一供給路81を介して軸受部51内のプランジャーポンプ(図示略)に流れ込む。前記プランジャーポンプは、第二供給路82を介して、再び歯車32(図3参照)に潤滑油を送り出す。ミシン1は、ワイヤ61及び連竿62に付着した潤滑油を油タンク10によって回収した後、再び歯車32に供給する潤滑油として再利用することができる。
【0061】
以上説明したように、ミシン1は、押え上下動機構64を駆動するレバー部材98を挿通する円筒穴601を、油タンク10の凹部1213から露出する土台部112に上向に立設する円筒部60に設けている。レバー部材98は、円筒穴601を設けた円筒部60を上方から覆う被覆部材981を固定している。故に、ミシン1は、脚柱部22内でレバー部材98に付着した潤滑油が、レバー部材98を伝って落下した場合に円筒穴601から油タンク10外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0062】
被覆部材981は、レバー部材98が最も下方に位置する場合、第2被覆部9812が円筒部60の全周を覆う。被覆部材981は、レバー部材98が最も上方に位置する場合、第2被覆部9812の下端が円筒部60の上端より下方に位置する。故に、ミシン1は、膝操作機構99によってレバー部材98が上下動しても、レバー部材98を伝って落下する潤滑油が円筒穴601から油タンク10外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0063】
油タンク10は、第一底壁1021、第二底壁1022、第一対向壁113、第二対向壁114、側壁1011、1012、1013、1014、1015、1016で囲まれた潤滑油収容部12に、潤滑油を収納可能である。ミシン1が移動して振動した場合、潤滑油収容部12に収容する潤滑油は、ミシン1からの振動が加わる。油タンク10は、第一対向壁113を設けているので、潤滑油が振動しても潤滑油収容部12の外部に漏れない。
【0064】
尚、押え足48は、本発明の「布押え機構」に相当する。レバー部材98は、本発明の「膝上げ機構」に相当する。被覆部材981は、本発明の「カバー部材」に相当する。円筒部60は、本発明の「突出部」に相当する。第1被覆部9811は、本発明の「第1カバー」に相当する。第2被覆部9812は、本発明の「第2カバー」に相当する。円筒穴601は、本発明の「貫通穴」に相当する。タンク開口部103は、本発明の「開口部」に相当する。底壁102は、本発明の「底部」に相当する。収容穴部1131は、本発明の「穴部」に相当する。凹部1213は、本発明の「凹部」に相当する。土台部112は、本発明の「凹部上壁」に相当する。
【0065】
本発明は前述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。前述の実施形態では、油タンク10は、土台部112から上向に立設する円筒部60に円筒穴601を設けた。油タンク10は、円筒部60を設けず、土台部112に直接、レバー部材98が挿通可能な穴を形成してもよい。
【0066】
前述の実施形態では、円筒部60は、その上端部がタンク開口部103に位置した。円筒部60は、上記形状に限らない。例えば、円筒部60は、その上端部がタンク開口部103と土台部112との間に位置してもよい。
【0067】
前述の実施形態では、被覆部材981は、円筒部60の全周を覆った。被覆部材981は、上記形状に限らない。例えば、被覆部材981は、円筒部60の上端部のみを覆っていてもよい。
【0068】
前述の実施形態では、油タンク10は、側壁1011、1012、1014の高さ方向で略中間位置に第一底壁1021と略平行であり、平面視略矩形状である第一対向壁113を設けた。例えば、油タンク10は、第一対向壁113を設けなくてもよい。
【0069】
前述の実施形態では、油タンク10は、第一底壁1021の左側後端部分から左方に突出した第二底壁1022を設けていた。油タンク10は、上記形状に限らない。例えば、油タンク10は、第二底壁1022を備えていなくてもよい。この場合、油タンク10は、第一底壁1021と、第一底壁1021の縁から略鉛直方向に立ち上がる外周壁101、外周壁101と接続した第一対向壁113で形成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 ミシン
10 油タンク
11 潤滑油受部
12 潤滑油収容部
21 ベッド部
22 脚柱部
23 アーム部
48 押え足
60 円筒部
64 押え上下動機構
98 レバー部材
99 膝操作機構
101 外周壁
102 底壁
103 タンク開口部
112 土台部
113 第一対向壁
114 第二対向壁
601 円筒穴
981 被覆部材
1131 収容穴部
1132 第一傾斜部
1213 凹部
9811 第1被覆部
9812 第2被覆部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工布を押える布押え機構と、
前記布押え機構を上下動する押え上下動機構と、
鉛直方向に延びるレバー部材を有し前記押え上下動機構を駆動する膝上げ機構とを備えたミシンにおいて、
潤滑油を収納可能な油タンクと、
前記油タンクに設け前記膝上げ機構の前記レバー部材を貫通可能な貫通穴と、
前記膝上げ機構に設け、前記貫通穴を覆うカバー部材とを備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記油タンクは、鉛直方向に突出部を形成し、
前記貫通穴は、前記突出部に突出方向と平行に形成され、
前記カバー部材は、前記貫通穴を覆う第1カバーと、前記突出部の前記突出方向に沿って前記突出部の側面全周を覆う第2カバーとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記油タンクは、
上方に開口する開口部を形成する外周壁と、
底壁と、
前記外周壁の内側に形成し、前記開口部と前記底壁との間、且つ前記底壁と離間した位置に設けた、前記底壁に対向する壁部である対向壁と、
前記対向壁の前記開口部側と前記底壁側とを連通する穴部とを備え、
前記外周壁と前記対向壁とで前記開口部から落下する潤滑油を受ける油受部を形成し、
前記外周壁と前記対向壁と前記底壁とで前記油受部で受けた潤滑油を前記穴部から回収する油収容部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記油収容部の前記外周壁の一部が、対向する外周壁側に凹み、前記対向壁の前記底壁側を露出する凹部と、
前記油受部の対向壁の内、前記凹部から露出する凹部上壁とを更に備え、
前記突出部は、前記凹部上壁に設けたことを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記突出部は、前記凹部上壁から前記開口部まで突出し、前記第2カバーは前記突出部の前記凹部上壁から前記突出部の突出端までを覆うことを特徴とする請求項4に記載のミシン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−135419(P2012−135419A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289458(P2010−289458)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】