説明

ミストリップ防止用カバーおよび実遮断試験方法

【課題】原子力発電所や火力発電所における自動復旧装置又は送電保護装置の保守点検を行う際にミストリップを防止するための機械的インターロックを提供する。
【解決手段】絶縁材からなるカバー本体2と、盤20上にカバー本体2を掛止させる掛止部4と、この掛止部4に連続して形成され,テストプラグ挿入口を被覆してテストプラグの挿入を妨げる被覆部4とを有し、掛止部3には,盤20に立設されるトリップロック用端子6及び投入ロック用端子7を挿通させるための貫通孔が形成され、カバー本体2を盤20上に装着した際に,掛止部3を形成するカバー本体2は、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7とを連結して短絡させる短絡片8と盤20との間に介挿可能に配置されると共に,短絡片8を取り付けた状態でカバー本体2を取り外せないように短絡片8を跨設可能な引抜防止部23を有することを特徴とするミストリップ防止用カバー1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所や火力発電所等において自動復旧装置又は送電保護装置における点検作業時に人為的な誤操作により全停遮断が起こるのを防止するための機械的インターロック及びそれを用いた実遮断試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所や原子力発電所における自動復旧装置又は送電保護装置に対して定期的に実遮断試験(点検作業)を行っているが、その際に、実際に全停遮断(トリップ)が起ってしまわないようトリップロック回路を設けて、全停遮断を直前で回避している。
他方、通常運転時には、送電系統に重大なトラブルが生じた際に、速やかに全停遮断する必要あるため、上述のトリップロック回路はショートされて機能しないように設定されている。そして、自動復旧装置又は送電保護装置に係る盤上において、トリップロック回路のONとOFFはそれに接続されるトリップロック用端子への短絡片の取り外しと取り付けにより制御されている。
このため、自動復旧装置又は送電保護装置の実遮断試験を行う際には、必ず、盤上のトリップロック用端子から短絡片を取り外す必要があるが、作業員のミスにより、上述のトリップロック用端子と投入ロック用端子から短絡片を取り外さないまま実遮断試験が行われてしまい、電力供給が断状態(トリップ)になってしまい停電事故が発生する場合があった。
このように人為的な誤操作によって発生した停電事故は一般に「ミストリップ」と呼ばれ、このミストリップを防止するための技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には「トリップロック回路」という名称で、電力系統の全停電検出時の全停遮断回路に用いるトリップロック回路に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示されるトリップロック回路は、全停検出時のしゃ断回路に用いる電圧回路用テストプラグの誤挿入を防止するために、機械的インターロックを備えたことを特徴とするものである。
より具体的には、特許文献1に開示されるトリップロック回路は、文献中の第3図に示されるように、トリップロック用テスト端子12に取り付ける短絡片12Bに、電圧回路テスト端子8のテストプラグ挿入口の少なくとも一部を被覆する被覆片を取り付けておいたり、又は、短絡片12C自体によりテストプラグ挿入口の少なくとも一部を被覆できる構造になっており、短絡片12B,12Cを取り外さないと、電圧回路テスト端子8に電圧回路開放用テストプラグ8Aを挿入できないよう構成されている。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、点検作業時に作業員が短絡片12B,12Cを取り外さないで電圧回路開放用テストプラグ8Aを電圧回路テスト端子8に挿入しようとても、短絡片12B又は12Cが邪魔になって電圧回路開放用テストプラグ8Aを挿入できないので、作業員は短絡片12B又は12Cを取り外さざるをえず、結果的として、短絡片12B又は12Cを装着したまま電圧回路テスト端子8に電圧回路開放用テストプラグ8Aを挿入してしまうことによるミストリップの発生を防止することができる。
【0004】
特許文献2には「接続プラグおよび接続端子用カバー」という名称で、主として機器前面パネルに設けられた端子台のボルト軸を電気的に接続するための接続プラグ(例えばトリップロック端子用の接続プラグ)および端子台および接続プラグに被せられる接続端子用カバーに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、短冊板状の接続プラグ(10)の上端には上側のボルト軸(16a)を通すためのU字穴(18a)が形成されるとともに、接続プラグの中央部には下側のボルト軸(16b)を貫通するための長穴(18b)が形成されており、端子台(14)に取り付けた接続プラグをスライド移動させて、長穴の下端部に下側のボルト軸を位置させるとU字穴が上側のボルト軸と接続し、長穴の上端部に下側のボルト軸を位置させるとU字穴が上側のボルト軸から離隔される。また仕切り板(26)によって上側空間(28a)と下側空間(28b)とに分割された接続端子用カバー(30)を用い、対をなすボルト軸が開路の場合には、上側のボルト軸を上側空間内に収容し、下側のボルト軸および接続プラグを下側空間に収容することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される発明によれば、機器の前面パネルから突出して設けられた既存の端子台の一対のボルト軸間を電気的に開閉する接続プラグを、下側のボルト軸を貫通させた状態でスライド移動可能なものとすることで、端子台自体の改変を要することなく回路の接続・切断を容易かつ確実に行うことが可能となる。また接続プラグは下側のボルト軸を貫通した状態で取り付けられているため、ボルト軸間を接続プラグが通電していない場合でも、接続プラグが下側のボルト軸に保持され、その紛失を防ぐことができる。なお本発明の接続プラグは、主として短冊板状の金属板に穴を形成しただけの単純かつ小型な構造であるため、その製造コストが低廉であるといったメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−170415号公報
【特許文献2】特開2009−199969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示される発明の場合、短絡片12A又は12Bと、電圧回路テスト端子8のテストプラグ挿入口を被覆するパーツが一体となっているので、電圧回路テスト端子8が盤上に突出している場合には、トリップロック用テスト端子12に短絡片12A又は12Bを取り付けた際に、短絡片12A又は12Bを盤上に押し上げるような力が作用して、この力で、トリップロック用テスト端子12を盤から浮き上がったり,引き抜かれてしまい、短絡片12A又は12Bを取り付けていたとしても、トリップロック回路がOFFの状態にならず、通常運転時の全停遮断が必要な場合に、全停遮断できない恐れがあった。
また、模擬入力による実遮断試験を行う場合には、別の短絡片が必要になり、作業性が悪いという課題もあった。
【0007】
特許文献2に開示される発明は、盤上に立設される接続端子のカバーに関するものであるが、電圧又は電流回路テスト端子のテストプラグ挿入口を被覆するカバー構造を備えるものではない。
したがって、特許文献2に開示される発明を、点検作業時のミストリップを防止するための機械的インターロックとして機能させることはできなかった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、トリップロック用端子に装着される短絡片と別体に構成され、簡単な構造でかつ取扱が容易であり、点検作業開始時のミストリップの発生を確実に防止することのできるミストリップ防止用カバーおよびそれを用いた実遮断試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明であるミストリップ防止用カバーは、自動復旧装置又は送電保護装置における点検作業時に人為的な誤操作によりミストリップが起こるのを防止するためにテストプラグ挿入口を被覆するミストリップ防止用カバーであって、このミストリップ防止用カバーは、絶縁材からなるカバー本体と、盤上にカバー本体を掛止させる掛止部と、この掛止部に連続して形成され,テストプラグ挿入口を被覆してテストプラグの挿入を妨げる被覆部とを有し、掛止部には,盤に立設されるトリップロック用端子及び投入ロック用端子を挿通させるための貫通孔が形成され、カバー本体を盤上に装着した際に,掛止部を形成するカバー本体は、トリップロック用端子と投入ロック用端子とを連結して短絡させる短絡片と盤との間に介挿可能に配置されると共に,短絡片を取り付けた状態でカバー本体を取り外せないように短絡片を跨設可能な引抜防止部を有することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、カバー本体を絶縁体により構成することで、トリップロック用端子や投入ロック用端子にカバー体が接触している時に、これらが意図せず短絡するのを妨げるという作用を有する。また、カバー本体における掛止部は、トリップロック用端子及び投入ロック用端子を挿通させるための貫通孔を備えて、この貫通孔にトリップロック用端子及び投入ロック用端子を挿通させることで盤上にカバー本体を保持させるという作用を有する。また、カバー本体において掛止部と連続して形成される被覆部は、盤状においてカバー本体がトリップロック用端子又は投入ロック用端子に掛止される場合に、テスト端子のテストプラグ挿入口を被覆してテストプラグの装着を妨げるという作用を有する。また、カバー本体が短絡片と盤との間に介挿され,かつ,このカバー本体が引抜防止部を有することで、トリップロック用端子に短絡片が取り付けられた状態での、カバー本体が取り外しをできなくするという作用を有する。
【0010】
請求項2記載の発明であるミストリップ防止用カバーは、請求項1記載のミストリップ防止用カバーであって、カバー本体の鉛直方向断面形状は段状をなし、被覆部を構成するカバー本体は、掛止部を構成するカバー本体よりも盤から離れた位置に配置されて,テストプラグ挿入口に装着されたテストプラグを被覆可能であり、テストプラグの頭部の少なくとも一部を露出可能な第2の貫通孔を備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、カバー本体の鉛直方向断面形状が段状をなすことで、テスト端子(テストプラグ挿入口)にテストプラグを装着した状態での請求項2に係るミストリップ防止用カバーの装着を可能にするという作用を有する。
また、カバー本体の被覆部に形成される第2の貫通孔は、テストプラグの頭部の少なくとも一部を露出させるという作用を有する。これにより、点検作業中にテストプラグのテスト端子への装着の有無を、請求項2に係るミストリップ防止用カバーの外から目視により確認可能にするという作用を有する。
【0011】
請求項3記載の発明であるミストリップ防止用カバーは、請求項1又は請求項2記載のミストリップ防止用カバーであって、盤上において隣り合う異なるラインのテストプラグ挿入口を被覆するミストリップ防止用カバーの色は、異なることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明と同じ作用に加えて、盤上において隣り合う異なるラインのテストプラグ挿入口を被覆するミストリップ防止用カバーの色を互いに違うものにすることで、作業員が点検作業を実施しているラインと、そうでないラインとを誤認するのを妨げるという作用を有する。これにより、作業員が誤って異なるラインのテストプラグ挿入口にテストプラグを挿入してしまったり、点検作業中のラインのトリップロック用端子に誤って短絡片を取り付けてしまうというミスが生じるのを妨げるという作用を有する。
【0012】
請求項4記載の発明である実遮断試験方法は、盤に立設されるトリップロック用端子又は投入ロック用端子に掛止されて,トリップロック用端子又は投入ロック用端子の鉛直下方側に設けられるテストプラグ挿入口を被覆するミストリップ防止用カバー上に,トリップロック用端子及び投入ロック用端子とを連結して短絡させる短絡片が装着された盤において、トリップロック用端子及び投入ロック用端子から端子短絡片を取り外す第1の工程と、この第1の工程の後に、トリップロック用端子又は投入ロック用端子からミストリップ防止用カバーを取り外す第2の工程と、この第2の工程の後に、テストプラグ挿入口にテストプラグを装着する第3の工程とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、第1の工程は、点検作業の開始に先立って、短絡片を取り外すことでトリップロック回路をON状態にするという作用を有する。また、短絡片が取り外されることで、ミストリップ防止用カバーの盤からの取り外しを可能にするという作用も有する。
続く第2の工程において、ミストリップ防止用カバーを取り外し可能であるということは、トリップロック用端子から短絡片が取り外し済であることを意味しているので、作業員の不注意による短絡片の取り外し忘れを確実に防止するという作用を有する。
最後の第3の工程においてテストプラグ挿入口にテストプラグを挿入することで、線路電圧と母線電圧の電圧が0Vになり、全停遮断(トリップ)のための条件が成立する。この場合、先の第1の工程において、トリップロック用端子から短絡片が取り外されて、トリップロック回路がON状態になっているので、実際の全停遮断は回避される。
つまり、請求項4記載の実遮断試験方法によれば、ミストリップを発生させることなく安全に点検作業を完了させるという作用を有する。
【0013】
請求項5記載の発明である実遮断試験方法は、請求項4記載の実遮断試験方法であって、第3の工程の後に、盤に立設されるトリップロック用端子又は投入ロック用端子にミストリップ防止用カバーを掛止して、テストプラグの頭部の少なくとも一部をミストリップ防止用カバーから露出させ、テストプラグ上をミストリップ防止用カバーにより被覆する第4の工程を有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項4記載の発明における第1乃至第3の工程のそれぞれの作用に加えて、第4の工程を備えることで、点検作業中のテストプラグが装着されたテスト端子をミストリップ防止用カバーにより被覆することが可能になる。この場合、点検作業中におけるミストリップ防止用カバーの紛失を防止するという作用を有する。
また、第2の貫通孔から、テスト端子へのテストプラグの装着の有無を作業員は外部から目視により確認可能になる。これにより、テスト端子にテストプラグが装着されているときに、作業員が点検作業中ではないと誤認して、トリップロック用端子に誤って短絡片を取り付けてしまうのを防止するという作用を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載のミストリップ防止用カバーは、短絡片と別体に構成されているので、盤上にミストリップ防止用カバーを装着した際に、短絡片に外力が作用して、トリップロック用端子や投入ロック用端子を盤上に浮き上がらせたり、これらを盤から引き抜くような力が作用するのを防止することができる。つまり、通常運転時の全停遮断が必要な場合に、トリップロック回路が機能して遮断機が切れないという不具合が生じるのを防止することができる。
また、請求項1記載のミストリップ防止用カバーの掛止部を構成するカバー本体は、短絡片と盤との間に介挿され、かつ引抜防止部を備えているので、作業員は、短絡片を取り外さない状態で請求項1記載のミストリップ防止用カバーを取り外すことができない。すなわち、請求項1に記載のミストリップ防止用カバーは、機械的インターロックとして機能する。このため、作業員は、点検作業時に請求項1記載のミストリップ防止用カバーを取り外すために短絡片を必ず取り外すので、結果的として、短絡片の取り外し忘れを確実に防止することができる。
この結果、自動復旧装置又は送電保護装置において、点検作業の開始時にミストリップが起こるのを防止することができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、テスト端子にテストプラグが装着されている状態(点検作業中)でも盤上にミストリップ防止用カバーを装着することができる。この場合、点検作業中のミストリップ防止用カバーの紛失を防止することができる。
他方、盤上にミストリップ防止用カバーが装着されている状態は、点検作業が開始される前の状態と外観上は大差がない。
従って、請求項2記載の発明では、点検作業中に作業員が誤ってトリップロック用端子に短絡片を取り付けてしまい、それによりミストリップが生じる恐れがあるのであるが、被覆部に第2の貫通孔を設けてこの第2の貫通孔から、テスト端子におけるテストプラグの装着の有無を確認できるようにすることで、上述のような事態を回避することができる。
すなわち、請求項2記載の発明によれば、点検作業開始時のミストリップを防止することができ、点検作業中のミストリップ防止用カバーの紛失を防止することができ、さらに、点検作業中のミストリップの発生を防止することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明と同じ効果に加えて、1つの盤上に、トリップロック用端子と投入ロック用端子とテスト端子との組み合わせからなる点検対象が複数設けられている場合に、それらの点検作業時に、他のラインのテスト端子に作業員が誤ってテストプラグを挿設してしまったり、点検作業中のラインのトリップロック用端子に誤って短絡片を取り付けてしまうという誤操作がなされるのを防止することができる。
この結果、請求項3記載の発明によれば、一つの盤上に複数の点検対象がある場合に、点検作業時にミストリップが生じるリスクを低減することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、作業員はトリップロック用端子と投入ロック用端子とをつないで短絡させる短絡片を取り外した後に、テスト端子(テストプラグ挿入口)を被覆するカバーを外し、その後に、テスト端子(テストプラグ挿入口)にテストプラグを挿設することになるので、作業員がトリップロック用端子の短絡片を取り外し忘れたまま、テスト端子(テストプラグ挿入口)にテストプラグを挿設するという誤操作をするのを確実に防止することができる。
この結果、点検作業開始時にミストリップが生じるのを確実に防止することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明と同じ効果に加えて、第4の工程を有することで、点検作業のために取り外したミストリップ防止用カバーの紛失を防止するとともに、ミストリップ防止用カバーを取り付けたままでも、テスト端子へのテストプラグの装着の有無を目視により確認することができる。この結果、点検作業中に、作業員が、点検作業は行われていないと誤認して、テスト端子にテストプラグが装着されている状態で、トリップロック用端子に短絡片を取り付けてしまうという誤操作がなされるのを防止することができる。
この結果、点検作業中にミストリップが生じるリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)本発明の実施例1に係るミストリップ防止用カバー、トリップロック用端子、投入ロック用端子、短絡片及びテスト端子の配置の一例を示す平面図であり、(b)は図1(a)中のA−A線矢視断面図である。
【図2】(a)は本発明の実施例1に係る実遮断試験方法の手順を示す平面図であり、(b)は図2(a)中のB−B線矢視断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施例1に係る実遮断試験方法の手順を示す平面図であり、(b)は図3(a)中のC−C線矢視断面図である。
【図4】(a)は本発明の実施例1に係る実遮断試験方法の手順を示す平面図であり、(b)は図4(a)中のD−D線矢視断面図である。
【図5】(a)は本発明の実施例1に係る実遮断試験方法の手順を示す平面図であり、(b)は図5(a)中のE−E線矢視断面図である。
【図6】(a)は本発明の実施例2に係るミストリップ防止用カバー、トリップロック用端子、投入ロック用端子、短絡片及びテスト端子の配置の一例を示す平面図であり、(b)は図6(a)中のF−F線矢視断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係るミストリップ防止用カバー、トリップロック用端子、投入ロック用端子、短絡片及びテスト端子の配置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係るミストリップ防止用カバーおよび実遮断試験方法について実施例1及び実施例2を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1に係るミストリップ防止用カバーおよびそれを用いた実遮断試験方法について図1乃至図5を参照しながら説明する。
一般に、原子力発電所や火力発電所の送電設備は、自動復旧装置(ARE)や、送電保護装置を備えており、配電系統に重大なトラブルが生じた場合に電力を全停遮断(トリップ)するよう構成されている。また、この配線回路が適切に作動するか否かを定期的に点検している。
通常、実遮断試験(点検作業)は、人為的に配線回路における全停遮断のための条件を成立させる行為であり、理論上は全停遮断が起こる仕組みになっている。しかしながら、いかに保守点検のためとはいえ、点検作業毎に全停遮断が起こるのは望ましくないので、点検作業時に全停遮断のための条件が成立しても、実際にはトリップが生じないよう、配線回路にトリップロック回路を設けて、点検作業時の全停遮断を回避している。
他方、点検作業時以外では、配電系統に何らかの重大なトラブルが生じた場合には直ちに電力の供給を停止する必要があるので、上述のトリップロック回路が作動することは好ましくない。このため、トリップロック回路に接続されるトリップロック用端子を盤上に設けて、このトリップロック用端子からの短絡片の取り外しと取り付けを行うことで、トリップロック回路のONとOFFの切り替えができる構成としている。
ところが、点検作業時に作業員が作業の手順を誤って、トリップロック用端子から短絡片を取り外さないまま、点検作業を行ってしまうと、全停遮断の条件が成立しているにも関わらずトリップロック回路が作動しないため、導電の回路において遮断器が作動してしまい全停遮断が起こって、停電事故が起こる場合があった。
このような人為的な誤操作により生じる全停遮断状態は、一般にミストリップと呼ばれ対策が求められていた。一般に、ミストリップ防止のための対策としては、作業手順の徹底と確認が周知されているが、人為的な取り決めによる事故防止には限界があり、機械的インターロックが必要だった。
そこで、本願発明では、自動復旧装置又は送電保護装置の盤上に短絡片とは別に機械的インターロックを設けることでミストリップの防止を実現した。
【0022】
以下に、本発明の実施例1に係るミストリップ防止用カバーについて図1を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は本発明の実施例1に係るミストリップ防止用カバー、トリップロック用端子、投入ロック用端子、短絡片及びテストプラグ挿入口の配置の一例を示す平面図であり、(b)は図1(a)中のA−A線矢視断面図である。
図1(b)に示すように、原子力発電所又は火力発電所における自動復旧装置又は送電保護装置の盤20には、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7が立設され、通常、その鉛直下方側に点検作業時にテストプラグ(図示せず)を挿入するためのテスト端子16が設けられている。なお、テスト端子16は電圧用テストプラグ、電流用テストプラグに対応したものなど複数種類あり、1つのラインにテスト端子16が複数個設けられる場合もあるが、ここでは、それらを総括して1つのテスト端子16として図示している。
そして、このテスト端子16にテストプラグを挿入することで、配線回路において人為的に全停遮断のための条件を成立させることができる。
【0023】
また、トリップロック用端子6はトリップロック回路(図示せず)に、投入ロック用端子7は投入ロック回路(図示せず)に接続されており、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7とが短絡片8により連結されることで、トリップロック回路がショートして機能しないようになっている。
つまり、トリップロック用端子6がショートしている状態とは、トリップロック回路が機能しない状態(OFF状態)であり、全停遮断のための条件が成立した際に、実際に全停遮断(トリップ)が起こることを意味している。また、逆に、トリップロック用端子6から短絡片8が取り外されている状態とは、上述の図示しないトリップロック回路が機能する状態(ON状態)であり、全停遮断のための条件が成立した場合でも、実際には全停遮断(トリップ)が起こらない状態である。
従って、トリップロック用端子6から短絡片8を取り外した後に、テスト端子16にテストプラグを挿入した場合には、配線回路上において全停遮断のための条件が成立するものの、トリップロック回路が機能して結果として全停遮断は起こらない。これに対して、トリップロック用端子6から短絡片8を取り外さないまま、テスト端子16に図示しないテストプラグを挿入した場合には、配線回路上における全停遮断のための条件が成立し、トリップロック回路が機能しないので、実際に全停遮断が起こって停電事故が起こってしまうのである。
【0024】
従って、従来点検作業時に、トリップロック用端子6から短絡片8を取り外した後に、テスト端子16に図示しないテストプラグを差し込むことが周知徹底されているが、点検作業時の操作や確認は全て人に委ねられているので、作業員の不注意によるミストリップを完全に防止することは極めて困難であった。
このような事情に鑑み、特許文献1に開示される発明がなされているが、特許文献1に開示される発明では、特殊な形状の短絡片を使用する必要があり、場合によっては、盤20上におけるトリップロック用端子6や投入ロック用端子7の配置を変更する必要もあり、現場への導入が難しいという課題があった。
【0025】
このような事情に鑑み、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aは、図1(a),(b)に示すように、盤20上においてテスト端子16上を被覆するカバー本体2をトリップロック用端子6及び投入ロック用端子7に掛止させて取り付けるとともに、トリップロック用端子6から短絡片8を取り外さないと、カバー本体2を取り外すことができないよう構成することで、従来の短絡片8をそのまま使用できるようにした。
より具体的には、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aは、絶縁材からなるカバー本体2からなり、このカバー本体2の鉛直上方側に、盤20上に立設されるトリップロック用端子6又は投入ロック用端子7にカバー本体2を掛止させるための掛止部3が設けられ、さらに、この掛止部3に連続して、トリップロック用端子6又は投入ロック用端子7の鉛直下方の盤20上に設けられるテスト端子16を被覆する被覆部4が設けられるものである。
また、上記ミストリップ防止用カバー1aにおける掛止部3は、カバー本体2に貫通孔5a,5bが穿設され、この貫通孔5a,5bにトリップロック用端子6及び投入ロック用端子7を挿通させて、トリップロック用端子6又は投入ロック用端子7にカバー本体2を掛止できるよう構成されている。
【0026】
そして、トリップロック用端子6を挿通させるための貫通孔5aと、投入ロック用端子7を挿通させるための貫通孔5bの間には、カバー本体2からなる引抜防止部23が形成されており、この引抜防止部23上を跨ぐようにトリップロック用端子6と投入ロック用端子7をつなぐ短絡片8取り付けられるので、短絡片8を取り外さないと、ミストリップ防止用カバー1aを取り外すことができない構造になっている。
つまり、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aの掛止部3を側面から見ると、図1(b)に示すように、盤20上にカバー本体2から成る引抜防止部23が配設され、その上に、引抜防止部23を跨ぐようにして短絡片8が配設されてトリップロック用端子6と投入ロック用端子7を接続している。
【0027】
上述のような実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aによれば、配電系統の点検作業を行うに当たり、盤20上のテスト端子16に図示しないテストプラグを挿設するためには、テスト端子16を被覆するミストリップ防止用カバー1aを取り外す必要があり、このカバー本体2を取り外すために作業員は、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7とをつなぐ短絡片8を取り外さなければならないので、短絡片8の取り外し忘れを確実に防止することができる。
この結果、トリップロック用端子6に短絡片8を取り付けたまま、テスト端子16に図示しないテストプラグが挿設されるという誤操作が起こるのを防止することができるので、点検作業開始時にミストリップが生じるのを確実に防止することができる。
また、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aによれば、短絡片8とテスト端子16上を被覆する被覆部4とが別々に構成されるので、従来の短絡片8を何ら加工することなくそのまま使用することができる。また、盤20上におけるトリップロック用端子6,投入ロック用端子7及びテスト端子16の配置についても何ら変更する必要がないので、現場に容易に導入することができ、かつ、そのためのコストも少なくすることができる。
【0028】
また、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aの取り付け位置を明確にするために、盤20上に設けられるトリップロック用端子6及び投入ロック用端子7を、例えば、棒状の導電体9と、この導電体9を盤20に立設した際に、盤20上に配設され,導電体9に周設される第1の絶縁体10と、この第1の絶縁体10に第1の隙間14を形成しながら隣設される第2の絶縁体11と、この第2の絶縁体11に第2の隙間15を形成しながら隣設される第3の絶縁体12と、導電体9の盤20に挿設されない側の端部に設けられる端部絶縁体13により構成してもよい。この場合、第1の絶縁体10又は第1の隙間14にミストリップ防止用カバー1aの掛止部3を掛止めし、第2の隙間15に短絡片8を装着することができる。
このように、トリップロック用端子6や投入ロック用端子7における、ミストリップ防止用カバー1aや短絡片8の取り付け位置を明確にしておくことで、点検作業時や点検作業終了時に、ミストリップ防止用カバー1aや短絡片8の取り外し、又は、取り付けを行う際の確認作業を容易にすることができる。より具体的には、例えば、点検作業終了時に短絡片8の取り付け忘れが起きている場合に、作業員はその異常を容易に発見することができる。
【0029】
なお、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aを構成するカバー本体2は、合成樹脂や紙等の絶縁材により構成されることが望ましい。この場合、カバー本体2が絶縁体により構成されることで、カバー本体2をトリップロック用端子6や投入ロック用端子7に掛止した際に、これらがカバー本体2によりショートするのを防止することができる。また、カバー本体2は盤20とは異なる目立つ色の絶縁材で構成されることが望ましい。この場合、作業員は盤20上におけるミストリップ防止用カバー1aの有無から、点検作業中か否かを容易に判断することができる。
【0030】
また、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aは、図1(b)に示すようにその鉛直方向の断面形状を段状に形成して、盤20上の凹凸に沿った形状としてもよい。この場合、トリップロック用端子6や投入ロック用端子7にカバー本体2を掛止した際に、カバー本体2に盤20上の突起物である,例えば、テスト端子16等が接触して、間接的に、トリップロック用端子6や投入ロック用端子7を引き抜くような負荷が加わる恐れがないので、トリップロック用端子6や投入ロック用端子7の落脱による点検作業時のミストリップ等の発生を防止することができる。
【0031】
なお、図1(a)では、ミストリップ防止用カバー1aのカバー本体2にトリップロック用端子6や投入ロック用端子7を個別に挿通できるよう、これらの本数に応じた貫通孔5a,5bを形成した場合を例に挙げて説明しているが、トリップロック用端子6を挿通させるための貫通孔5a,5aや、投入ロック用端子7を挿通させるための貫通孔5b,5bをそれぞれつなげて、複数本のトリップロック用端子6や、複数本の投入ロック用端子7を同時に挿通させることのできる一帯の貫通孔5a,5bとしてもよい。この場合、貫通孔5aと貫通孔5bの間のカバー本体2が引抜防止部23となり、短絡片8を取り外さないと、盤20からのミストリップ防止用カバー1aを取り外せないようにするという作用を有する。
【0032】
次に、図1乃至図5を参照しながら、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aを用いた実遮断試験方法について説明する。
図2乃至図5における(a)はいずれも本発明の実施例1に係る実遮断試験方法の手順を示す平面図であり、図2乃至図6における(b)はいずれもその矢視断面図である。なお、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実遮断試験(点検作業)前の盤20上におけるトリップロック用端子6,投入ロック用端子7,テスト端子16及びミストリップ防止用カバー1aの配置は、先に図1(a),(b)を参照して説明したとおりである。
そして、実施例1に係る実遮断試験方法では、まず、図1(a),(b)に示す状態から、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7とをつないで短絡させている短絡片8を取り外し、図2(a),(b)に示すように盤20からミストリップ防止用カバー1aを取り外し可能な状態にする(ステップS1)。
そして、先のステップ1により20からミストリップ防止用カバー1aが取り外し可能になるので、図3(a),(b)に示すように、盤20からミストリップ防止用カバー1aを取り外して、盤20上にテスト端子16を露出させる(ステップS2)。
【0033】
実施例1に係る実遮断試験方法においては、テスト端子16にテストプラグ(図示せず)を挿設する必要があるが、ミストリップ防止用カバー1aを取り外さないとテスト端子16にテストプラグを挿設することができない。このため、このステップS2を行うことにより、盤20上のテスト端子16にテストプラグを挿設するための準備が整ったことになる。
なお、盤20上のテスト端子16に別途、挿入口カバー18が設けられている場合には、図4(a),(b)に示すようにテスト端子16から挿入口カバー18を取り外すことで、テスト端子16にテストプラグを挿設するための準備が整ったことになる。
【0034】
先の、図1(a),(b)に示す状態では、ミストリップ防止用カバー1aの掛止部3の貫通孔5a,5bにトリップロック用端子6,投入ロック用端子7がそれぞれ挿通されてカバー本体2が掛止めされ、このカバー本体2の引抜防止部23を跨ぐように短絡片8が取り付けられているので、ミストリップ防止用カバー1aを取り外そうとしても短絡片8がストッパーの役割をして取り外すことができない。
このため、盤20からミストリップ防止用カバー1aを取り外すにあたり、作業員は、必ず短絡片8を取り外さざるをえず、その結果として、テスト端子16への図示しないテストプラグを挿設する段階においては、トリップロック用端子6に短絡片8が取り付けられていない状態を確実に実現することができる。
【0035】
そして、図5(a),(b)に示すように、盤20上のテスト端子16に、例えば端子21を備えるテストプラグ19を挿設することで実遮断試験が実施される(ステップS3)。つまり、テスト端子16にテストプラグ19を挿設することで、配線回路上における全停遮断(トリップ)のための条件が人為的に成立されて、配線回路に特に問題がない場合には、理論上、電力の供給がストップすることになるが、実際に停電が起こることは実用上望ましくない。このため、全停遮断(トリップ)のための条件が成立し、配線回路が正常に機能した場合には、全停遮断が起こる直前でトリップロック回路が機能して、実際には停電が起こらない仕組みになっている。つまり、トリップロックが正常に機能することを確認することで、全停遮断させることなく配線回路の保守点検を完了できる。
そして、このトリップロック回路を確実に機能させるために、実遮断試験時にトリップロック用端子6から短絡片8を必ず取り外しておく必要があり、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aを用い、上述のようなステップS1〜S3の手順に従って、実遮断試験を行うことによれば、点検作業時に短絡片8をトリップロック用端子6に取り付けたまま、テスト端子16にテストプラグ19を挿入してしまうという誤操作が起こるのを確実に防止することができるのである。
【0036】
従って、上述のステップS1〜S3からなる実施例1に係る実遮断試験方法によれば、その開始時にミストリップが生じるのを確実に防止することができる。この場合、実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aを用いることで、作業員の点検作業時の心理的負担も軽減することができる。また、実遮断試験においてミストリップが生じるリスクが大幅に低減されるため、実遮断試験を頻繁に行うことが可能になり、送電設備の信頼性を一層高めることができる。
【実施例2】
【0037】
次に、図6を参照しながら実施例2に係るミストリップ防止用カバーについて詳細に説明する。
一般に、自動復旧装置又は送電保護装置においては、1つの盤20内において、トリップロック用端子6,投入ロック用端子7及びテスト端子16の組み合わせからなる点検対象が複数個所ある場合もあり、それらの全てについて定期的に実遮断試験(点検作業)を行う必要がある。
この場合、上述のような実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aを用いた場合には、盤20からミストリップ防止用カバー1aを取り外して実遮断試験を行っている間にミストリップ防止用カバー1aを紛失してしまう恐れがあった。
このような事態に対処するため、実施例2に係るミストリップ防止用カバーは、テストプラグ19が装着されたテスト端子16上にミストリップ防止用カバー装着しておくことができるよう工夫したものである。
【0038】
図6(a)は本発明の実施例2に係るミストリップ防止用カバー、トリップロック用端子、投入ロック用端子、短絡片及びテスト端子の配置の一例を示す平面図であり、(b)は図6(a)中のF−F線矢視断面図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係るミストリップ防止用カバー1bは、その被覆部4を、図6(b)に示すように、カバー本体2とテスト端子16の間を長く(高く)とり、テスト端子16に図示しないテストプラグを装着した状態で、その上からミストリップ防止用カバー1bを装着可能に構成したものである。この場合、点検作業中においても、ミストリップ防止用カバー1bを装着させておくことができるので、のミストリップ防止用カバー1bの紛失を防止することができる。
【0039】
図6に示すような、盤20にミストリップ防止用カバー1bが装着されている状態は、先の図1と比較すると明らかなように、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7とが短絡片8で接続されている以外は外観上は大差がない。そして、作業員が図6に示す状態を目にした場合に、実遮断試験中であることを認識できず、実遮断試験が完了してトリップロック用端子6への短絡片8の取り付け忘れが起こっているもとの誤った判断を下し、テスト端子16にテストプラグ19が装着されたままの状態でトリップロック用端子6に短絡片8を取り付けた場合にもミストリップが生じてしまう。
このため、実施例2に係るミストリップ防止用カバー1bのように、テストプラグ19をテスト端子16に装着した状態で盤20上への取り付け可能にした場合には、図6(a),(b)に示すように、被覆部4に貫通孔22を設けて、この貫通孔22からテストプラグ19の頭部19aの少なくとも一部を露出可能に構成しておくとよい。
この場合、被覆部4に少なくとも1つの貫通孔22を穿設しておくことで、テスト端子16に挿設されるテストプラグ19の頭部19aの少なくとも一部を露出させることができる。これにより、ミストリップ防止用カバー1bを盤20に装着したまま、テスト端子16へのテストプラグ19の装着の有無を外部から目視により確認することができる。
つまり、テスト端子16にテストプラグ19を挿設している点検作業中に、作業員が、点検作業は行われていないと誤認して、トリップロック用端子6に短絡片8を誤って装着する誤操作を行い、その結果、ミストリップが生じるのを防止することができる。つまり、点検作業中にミストリップが生じるのを防止することができる。
あるいは、テストプラグ19に立設される端子21を被覆部4に形成される貫通孔22から外部に導出可能としてもよい。この場合、端子21は、テストプラグ19の一部であることから、貫通孔22から端子21が導出されている状態も、貫通孔22からテストプラグ19の頭部19aの少なくとも一部が露出されている状態に含まれる概念である。但し、貫通孔22の形状は、テストプラグ19の頭部19aは露出させることができるものの、テストプラグ19全体を挿通させることができるものであってはならないことは言うまでもない。そうとすれば、実遮断試験の開始時に、ミストリップ防止カバー1bを取り外す必要はなく、従って、トリップロック用端子6に短絡片8を取り付けたまま、テストプラグ19を盤20に装着することができるのでミストリップが生じる可能性があり、機械的なインターロックの用をなしていないためである。このために、図6に示されるように端子21を露出させるようにしたり、あるいはテストプラグ19を頭部19a側が細い錐台状に形成させるようにしてもよい。
なお、本実施例では、ミストリップ防止カバー1bに貫通孔22を穿設し、そこからテストプラグ19の頭部19aの一部を露出させることで試験員にテストプラグ19の装着を認知させたが、ミストリップ防止カバー1bを透明として貫通孔22を設けず、テストプラグ19の頭部19aの一部を露出させることなくテストプラグ19の装着を視認させるものでもよい。また、錐台状とは、円錐台状と角錐台状のいずれも含む概念である。
【0040】
この場合、作業員はミストリップ防止用カバー1bの外から、テスト端子16へのテストプラグ19の装着の有無を目視により確認することができので、テスト端子16にテストプラグ19を装着している時に、誤って、トリップロック用端子6に短絡片8を取り付けてしまうという誤操作を防止することができる。つまり、実遮断試験中にミストリップが生じるのを防止することができる。
そして、先のステップS1〜S3からなる実施例1に係る実遮断試験方法に、新たにステップS4として、テスト端子16に装着されるテストプラグ19の上にミストリップ防止用カバー1を被覆して、被覆部4の貫通孔22からテストプラグ19の頭部19aの少なくとも一部を露出させる工程(ステップS4)を加えて実施例2に係る実遮断試験方法とすることで、実遮断試験中のミストリップ防止用カバー1bの紛失を防止するとともに、実遮断試験中にミストリップが生じるのを防止することができる。
【実施例3】
【0041】
本発明の実施例3に係るミストリップ防止用カバーについて図7を参照しながら説明する。
図7は本発明の実施例3に係るミストリップ防止用カバー、トリップロック用端子、投入ロック用端子、短絡片及びテスト端子の配置の一例を示す平面図である。
実施例3に係るミストリップ防止用カバー1cは、1つの盤20上に異なるラインの、トリップロック用端子6と投入ロック用端子7とテスト端子16からなる点検対象24が複数配設される場合に、隣り合う個々の点検対象24を被覆するミストリップ防止用カバー1cの色を異なるものにした点に特徴を有するものである。
なお、図7では、実施例3に係るミストリップ防止用カバー1cとして、先の実施例2に係るミストリップ防止用カバー1bと同じ形態のカバー本体2を用いた場合を例に挙げているが、ミストリップ防止用カバー1cの形態は実施例1に係るミストリップ防止用カバー1aのカバー本体2と同じ形態にしてもよい。
【0042】
この場合、1つの盤20上において、点検対象24毎に1つのミストリップ防止用カバー1cを装着するので、点検作業時(実遮断試験時)に、作業中の点検対象と、それ以外の点検対象とを明確に区別することができる。これにより、経験の少ない作業員が点検作業を行う場合でも、誤って他のラインの点検対象24のトリップロック用端子6から短絡片8を取り外してしまったり、あるいは、他のラインの点検対象24のテスト端子16に図示しないテストプラグ19を装着してしまうなどにより、ミストリップが起こるのを防止することができる。
また、隣り合うラインの点検対象24に装着されるミストリップ防止用カバー1cの色を互いに変えておくことで、特に、実遮断試験中も点検対象24にミストリップ防止用カバー1c装着しておく場合に、実遮断試験中に作業員が操作の必要のない点検対象24に対して誤操作をしてミストリップが起こるのを防止することができる。
なお、実施例3に係るミストリップ防止用カバー1cを用いた実遮断試験方法は、実施例1又は実施例2に係る実遮断試験方法と同じであるため、その詳細な説明については省略する。
【0043】
上述のような、実施例1乃至実施例3に係るミストリップ防止用カバー1a乃至1c及びそれらを用いた実遮断試験方法によれば、ミストリップによる停電事故が発生するリスクを大幅に低減することができるので、原子力発電所や火力発電所における自動復旧装置又は送電保護装置の保守点検の信頼性を向上するとともに、保守点検を行う作業員の心理的負担も大幅に軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように本発明は、原子力発電所や火力発電所における自動復旧装置又は送電保護装置の保守点検を行う際のミストリップを防止するための機械的インターロック及びそれを用いた実遮断試験方法に関するものであり、電気関連分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1a,1b,1c…ミストリップ防止用カバー 2…カバー本体 3…掛止部 4…被覆部 5a,5b…貫通孔 6…トリップロック用端子 7…投入ロック用端子 8…短絡片 9…導電体 10…第1の絶縁体 11…第2の絶縁体 12…第3の絶縁体 13…端部絶縁体 14…第1の隙間 15…第2の隙間 16…テスト端子 17…テストプラグ挿入口 18…挿入口カバー 19…テストプラグ 19a…頭部 20…盤 21…端子 22…貫通孔 23…引抜防止部 24…点検対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動復旧装置又は送電保護装置における点検作業時に人為的な誤操作によりミストリップが起こるのを防止するためにテストプラグ挿入口を被覆するミストリップ防止用カバーであって、
このミストリップ防止用カバーは、絶縁材からなるカバー本体と、盤上に前記カバー本体を掛止させる掛止部と、この掛止部に連続して形成され,前記テストプラグ挿入口を被覆して前記テストプラグの挿入を妨げる被覆部とを有し、
前記掛止部には,前記盤に立設されるトリップロック用端子及び投入ロック用端子を挿通させるための貫通孔が形成され、
前記カバー本体を前記盤上に装着した際に,前記掛止部を形成する前記カバー本体は、前記トリップロック用端子と前記投入ロック用端子とを連結して短絡させる短絡片と前記盤との間に介挿可能に配置されると共に,前記短絡片を取り付けた状態で前記カバー本体を取り外せないように前記短絡片を跨設可能な引抜防止部を有することを特徴とするミストリップ防止用カバー。
【請求項2】
前記カバー本体の鉛直方向断面形状は段状をなし、
前記被覆部を構成する前記カバー本体は、前記掛止部を構成する前記カバー本体よりも前記盤から離れた位置に配置されて,前記テストプラグ挿入口に装着されたテストプラグを被覆可能であり、前記テストプラグの頭部の少なくとも一部を露出可能な第2の貫通孔を備えることを特徴とする請求項1記載のミストリップ防止用カバー。
【請求項3】
前記盤上において隣り合う異なるラインの前記テストプラグ挿入口を被覆する前記ミストリップ防止用カバーの色は、異なることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のミストリップ防止用カバー。
【請求項4】
盤に立設されるトリップロック用端子又は投入ロック用端子に掛止されて,前記トリップロック用端子又は前記投入ロック用端子の鉛直下方側に設けられるテストプラグ挿入口を被覆するミストリップ防止用カバー上に,前記トリップロック用端子及び前記投入ロック用端子とを連結して短絡させる短絡片が装着された前記盤において、
前記トリップロック用端子及び前記投入ロック用端子から前記端子短絡片を取り外す第1の工程と、
この第1の工程の後に、前記トリップロック用端子又は前記投入ロック用端子から前記ミストリップ防止用カバーを取り外す第2の工程と、
この第2の工程の後に、前記テストプラグ挿入口にテストプラグを装着する第3の工程とを有することを特徴とする実遮断試験方法。
【請求項5】
前記第3の工程の後に、前記盤に立設される前記トリップロック用端子又は前記投入ロック用端子に前記ミストリップ防止用カバーを掛止して、前記テストプラグの頭部の少なくとも一部を前記ミストリップ防止用カバーから露出させ、前記テストプラグ上を前記ミストリップ防止用カバーにより被覆する第4の工程を有することを特徴とする請求項4記載の実遮断試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−157202(P2012−157202A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15679(P2011−15679)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】