説明

ミスト生成器

【課題】複雑な装置構成や空気圧制御を必要とすることなく、好適な量の水溶液を超音波振動子へ搬送することが可能なミスト生成器を提供する。
【解決手段】本発明のミスト生成器は、内部に液体を貯える貯水タンクと、液体を霧化する霧化部を備える。また、貯水タンクに貯えられている液体を霧化部へ搬送するための流動経路を形成する第一搬送路を備える。また、貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、第一搬送路を介して液体を霧化部へ到達するように付勢する加圧部を備える。また、霧化部から液体を排出するための流動経路を形成する第二搬送路を備える。また、第二搬送路の一端より排出される液体を貯える排水タンクを備える。また、開閉可能な部材であり、開状態となることによって貯水タンクと排水タンクとの間で液体の流動経路を形成する開閉部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されて噴霧を行うミスト生成器に関するものであり、特に空気圧を利用して噴霧を行うミスト生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミスト生成器において、様々な付加機能の開発が進められている。例えば、水や電解水等の液体からミスト(=霧)を生成し、噴霧することで車中の空気を清浄するミスト生成器が実用化されている。
【0003】
例えば特許文献1には、持ち運び可能な噴霧装置が開示されている。この噴霧装置は、加湿用の液体を貯えるための液体貯留手段と、貯えられている液体を上方に供給する液体供給手段とを備えている。また、ハウジング内の上部に設けられ、液体供給手段から供給を受けて、液体からミストを作るミスト生成手段を備えている。
【0004】
またこの噴霧装置は、ミスト生成手段の上方に、ミスト生成手段によって生成されたミストを通す開口を備えている。また、ハウジングの上端にオン位置とオフ位置との間で回動可能に設けられる蓋と、蓋がオン位置に回動されたとき開口と連通する放出口とを備えている。これにより、ミストが開口及び放出口を通って放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に示されているような従来のミスト生成器は、液体供給手段が水溶液により湿るまでに時間がかかるため、ミスト生成器の電源が起動されてからミストが噴霧されるまでに待ち時間が発生するという問題があった。
【0007】
この問題に対して、振動子を用いるミスト生成器であって、振動子まで水溶液を押し上げるために空気圧を利用するミスト生成器が提案されている。このミスト生成器の一例を、図5〜図7を用いて説明する。
【0008】
図5は、空気圧を利用したミスト生成器90の内部構成を示した上面図及び側面断面図である。また図6及び図7は、ミスト生成に用いる水溶液が押し上げられた状態のミスト生成器90の内部構成を示した側面断面図である。
【0009】
ミスト生成器90は、送風装置96が発生させる空気圧を利用して、導水管95により水溶液タンク94から水溶液を押し上げる(図6における導水管95の灰色部分)。押し上げられた水溶液は、超音波振動子92によって霧化され、噴霧される。なお超音波振動子92は、振動子駆動回路93により駆動される。また導水管95の上面には、超音波振動子92に当接する形で、微細な穴が開いた放出板91が貼り合わされている。
【0010】
図6は、送風装置96が発生させる空気圧が比較的小さい場合の状態を示している。このため、吸い上げられた水溶液が導水管95の上端部、つまり超音波振動子92の近傍まで到達していない。この状態において送風装置96を制御し、空気圧を増加させると、図7に示す状態となる。
【0011】
図7においては、増加した空気圧により水溶液が導水管95の上端部まで到達している。しかし空気圧が大きすぎるため、放出板91の微細穴から水漏れ(図中のα)が発生している。
【0012】
このように、空気圧が低すぎると十分に水溶液を押し上げられず、逆に空気圧が高すぎると水漏れが発生する。このため例えば、空気圧検知センサや液体検知センサ等を設けて空気圧や液体の状態を監視し、送風装置96の風力を変化させる空気圧制御を行う必要がある。しかしながらこのような空気圧制御は、装置構成や処理内容の複雑化を招くため、装置サイズ及びコストの面で不利であるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、空気圧を用いて超音波振動子へ水溶液を搬送するミスト生成器であって、複雑な装置構成や空気圧制御を必要とすることなく、好適な量の水溶液を超音波振動子へ搬送することが可能なミスト生成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、内部に液体を貯える貯水タンクと、液体を霧化する霧化部と、前記貯水タンクに貯えられている液体を前記霧化部へ搬送するための流動経路を形成する第一搬送路と、前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、該液体を、前記第一搬送路を介して前記霧化部へ到達するように付勢する加圧部とを備えるミスト生成器において、前記霧化部から液体を排出するための流動経路を形成する第二搬送路と、前記第二搬送路の一端より排出される液体を貯える排水タンクと、開閉可能な部材であり、且つ開状態となることによって前記貯水タンクと前記排水タンクとの間で液体の流動経路を形成する開閉部とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、本発明のミスト生成器は、内部に液体を貯える貯水タンクと、液体を霧化する霧化部を備える。また、貯水タンクに貯えられている液体を霧化部へ搬送するための流動経路を形成する第一搬送路を備える。また、貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、第一搬送路を介して液体を霧化部へ到達するように付勢する加圧部を備える。また、霧化部から液体を排出するための流動経路を形成する第二搬送路を備える。また、第二搬送路の一端より排出される液体を貯える排水タンクを備える。また、開閉可能な部材であり、開状態となることによって貯水タンクと排水タンクとの間で液体の流動経路を形成する開閉部を備える。これにより、霧化部で霧化されなかった液体を排水タンクに貯えるとともに、開閉部を介して貯水タンクへ循環させることが可能である。
【0016】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記開閉部が、ヒンジと、前記ヒンジを軸として回動する回動部材とを備え、前記回動部材が、前記貯水タンクの内壁の一部と前記排水タンクの内壁の一部とを形成する形状をしている。
【0017】
この構成によると、開閉部は、ヒンジと、ヒンジを軸として回動する回動部材とを備えている。回動部材は、貯水タンクの内壁の一部と、排水タンクの内壁の一部とを形成する形状をしている。これにより、回動部材が回動することによって、排水タンクから貯水タンクへの流動経路を形成することができる。
【0018】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記回動部材に接触可能に設けられた部材であり、前記回動部材が前記排水タンクの内部方向へ回動するのを抑止する抑止部材を、前記ミスト生成器が備え、前記回動部材が、前記加圧部により加圧されることにより前記抑止部材に接触して該流動経路を遮断する。
【0019】
この構成によると、回動部材に接触可能に設けられた部材であり、回動部材が排水タンクの内部方向へ回動するのを抑止する抑止部材を備えている。回動部材は、加圧部により加圧されることにより、抑止部材に接触して流動経路を遮断する。これにより、加圧が行われている状態において、開閉部を閉状態にすることができる。
【0020】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記加圧部による液体の加圧が行われている場合に、前記開閉部を閉状態とし、前記加圧部による液体の加圧が行われていない場合に、前記開閉部を開状態とするよう前記開閉部を制御する開閉制御部を備える。
【0021】
この構成によると、開閉部を制御する開閉制御部を備える。開閉制御部は、加圧部による液体の加圧が行われている場合に、開閉部を閉状態とする。加圧部による液体の加圧が行われていない場合に、開閉部を開状態とする。これにより、液体の搬送状況にあわせて、開閉部の開閉を行うことができる。
【0022】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記霧化部が、前記貯水タンクの上方に設けられており、前記第一搬送路が、鉛直上向きに前記流動経路を形成し、前記加圧部が、前記貯水タンクに貯められている液体を加圧することにより、該液体を、前記第一搬送路を介して押し上げて前記霧化部へ搬送する。
【0023】
この構成によると、霧化部が貯水タンクの上方に設けられている。第一搬送路は、鉛直上向きに流動経路を形成している。加圧部は、貯水タンクに貯められている液体を加圧することにより、第一搬送路を介して液体を押し上げて霧化部へ搬送する。
【0024】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記加圧部が、前記貯水タンクの外部から内部へ空気を送り込み、前記貯水タンク内の空気圧を増加させることにより、前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧する。
【0025】
この構成によると、加圧部は、貯水タンクの外部から内部へ空気を送り込む。そして貯水タンク内の空気圧を増加させることにより、貯水タンクに貯えられている液体を加圧する。これにより、液体の搬送を行う。
【0026】
また上記の目的を達成するために本発明のミスト生成器は、前記霧化部が、超音波振動子を含み、前記超音波振動子を用いて液体を霧化する。
【0027】
この構成によると、霧化部は、超音波振動子を含んでいる。そしてこの超音波振動子を用いて、液体を霧化する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、霧化部へ過剰に供給された水溶液を、排出タンクへ排出する構造としている。このため、霧化部へ水溶液を搬送するための圧力が高すぎる場合であっても、水溶液がミスト生成器の外部に漏れ出すことがない。
【0029】
また本発明によれば、空気圧検知センサや液体検知センサ等を設け、空気圧や液体の状態に応じて加圧する空気圧の大きさを制御する必要がない。従って装置サイズ及びコストの面で有利である。
【0030】
また本発明によれば、開閉部を用いて、排出タンクの水溶液を貯水タンクへ循環させる構造としている。このため、排出タンクが満杯となり、排出タンクから液体が漏れ出すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のミスト生成器の空気圧発生時の内部構成を示す断面側面図である。
【図2】本発明のミスト生成器の空気圧停止時の内部構成を示す断面側面図である。
【図3】本発明のミスト生成器の霧化部の構成を示す模式図である。
【図4】本発明のミスト生成器の電気回路構成を示すブロック図である。
【図5】従来のミスト生成器の内部構成を示す模式図である。
【図6】従来のミスト生成器の空気圧発生時の内部構成を示す模式図である。
【図7】従来のミスト生成器の空気圧発生時の内部構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
〈1.内部構成について〉
図1は、本発明の一実施形態に係るミスト生成器100の内部構成を示す模式図である。ミスト生成器100は、ミスト生成器100が搭載されている車両10の車内に対してミストを生成して噴霧するための装置である。なおミスト生成器100は、車両10に着脱可能な構造となっている。またミスト生成器100の各部は、特に材質に言及していない限り、例えばプラスチック成形品として形成される。
【0033】
図1は、ミスト生成器100を側面から見た側面断面図である。ミスト生成器100は、充電可能なバッテリ(不図示)等を電源として作動するもので、直径10cm、高さ20cm程度の円筒形状をしている。なお図1においては、図中の下方向が、ミスト生成器100の下部方向を示している。
【0034】
図1に示すようにミスト生成器100は、放出板101、超音波振動子102(=霧化部)、貯留溝103、振動子駆動回路104、導水管105(=第一搬送路)、水溶液タンク106(=貯水タンク)、送風装置107(=加圧部)、排水管108(=第二搬送路)、排水タンク109、開閉弁110(=開閉部、回動部材)、ヒンジ111(=開閉部)、及び空気穴112を備えている。
【0035】
放出板101は、ミストを放出するために微細な穴が中央部に設けられた板状部材である。超音波振動子102(=霧化部)は、導水管105により押し上げられ、貯留溝103(図中の破線部分)に貯えられている水溶液からミストを生成し、放出板101を通してミスト生成器100の機外へ噴射する円盤形状の部材である。
【0036】
図3に、超音波振動子102周辺の構成図を示す。図3(a)は、超音波振動子102を斜め上方から見た状態を表している。図3(b)、線分AA’を含む面を断面とした場合の断面図(ただし振動子駆動回路104等の部分は断面図となっていない)を表している。
【0037】
図3に示すように、超音波振動子102はドーナツ型形状(断面は略長方形)をしており、外縁が円形である放出板101の上面に接着されている。放出板101は、例えばステンレスによって形成された略板状の部材であり、その中央の所定領域(超音波振動子102に囲まれた領域の一部)に、メッシュ部101aが設けられている。
【0038】
メッシュ部101aは、ミストが通過できる程度の大きさの微小孔が多数設けられたメッシュ状に形成されている。超音波振動子102は、圧電セラミックにより形成されている。超音波振動子102の表面に形成された電極膜と放出板101との間に、ハウジング内に設置された振動子駆動回路104によって所定電圧が印加されると、高周波(超音波)振動が発生する。
【0039】
放出板101の下方に設けられた貯留溝103に到達した水溶液は、超音波振動子102の振動動作によって霧状となり、メッシュ部101aを通って外部に放出される。これにより、ミスト(図1のβ)を生成して外部に放出するという噴霧装置の主目的が達成される。
【0040】
振動子駆動回路104は、超音波振動子102に対する電圧の印加の実施/未実施を制御する。振動子駆動回路104を含む基盤(不図示)は、ミスト生成器100のハウジング(図1の例では排水タンク109の上方)に設けられたスペースに収納されている。振動子駆動回路104は、リード線等により超音波振動子102と接続されている。
【0041】
導水管105は、上下方向(鉛直方向)に伸びた略管状の部材として、ミスト生成器100のハウジングに固定されて形成されている。導水管105の上端と下端は開口されており、導水管105の下端から入った水溶液がその内部を流動し、その上端から出ることが可能となっている。
【0042】
導水管105の下端は、水溶液タンク106内へ突出するように設計されている。一方、導水管105の上端の近傍には、放出板101〜貯留溝103が配置されている。これにより導水管105は、水溶液タンク106の内部から貯留溝103へ向かうように、水溶液の流動経路を形成している。
【0043】
なお導水管105の下端は、水溶液タンク106の底から所定距離だけ離れるように設定されている。また導水管105の形状としては、上述した通り略管状が好適であるが、水溶液の流動経路を形成する限り、種々の形状が採用され得る。
【0044】
送風装置107は、空気の吸込口と吹出口を有しており、吸込口から吸い込んだ空気を、吹出口から吹き出す動作(以下、「送風動作」という)を行う。送風装置107は、吸込口がミスト生成器100の外部(大気中)に開放されるように設置されている。また、吹出口がミスト生成器100の下部に向くように設置されている。
【0045】
送風装置107が送風動作を行うことにより、外部から水溶液タンク106の空気層へ空気を送り込む(図中の矢印γ1)。これにより、水溶液タンク106内の空気圧(図中のγ2)は、大気圧に圧力P(送風動作によって新たに加わる圧力)の分だけ増加したものとなる。水溶液タンク106内の空気圧は、送風動作が継続されている間、この状態に維持される。
【0046】
水溶液タンク106内の空気圧が増加することにより、水溶液タンク106内の水溶液が加圧される。そして水溶液の水圧が増加することにより、導水管105の内部において、水溶液タンク106内の水溶液が押し上げられ、貯留溝103に到達する。
【0047】
なおこのとき、導水管105内に存在していた空気は、放出板101のメッシュ部101aから外部へ放出される。このように水溶液タンク106内の水溶液は、加圧されることにより超音波振動子102の近傍へ到達するように付勢され、超音波振動子102へ継続的に供給される。
【0048】
なお、送風装置107が送風動作を行っていない状態では、水溶液タンク106の内部に存在している空気、及び導水管105の内部に存在している空気の圧力は、ほぼ大気圧に等しい。そのためこの状態では、水面より高い位置に設置されている超音波振動子102には、水溶液タンク106内の水溶液は供給されない。
【0049】
排水管108は、超音波振動子102により霧化しきれなかった水溶液を排水タンク109へ排水する管状部材である。排水管108は、送風装置107及び導水管105により過剰な水溶液が貯留溝103へ供給された場合、つまり送風装置107が加える圧力Pが大きすぎる場合に、この過剰な水溶液がメッシュ部101aより漏れ出すのを防ぐのに用いられる。
【0050】
排水管108は、導水管105と同様、上下方向に伸びた略管状の部材として、ミスト生成器100のハウジングに固定されて形成されている。排水管108の上端と下端は開口されており、排水管108の上端から入った水溶液がその内部を流動し、その下端から出ることが可能となっている。
【0051】
排水管108の上端の近傍には、放出板101〜貯留溝103が配置されている。一方、排水管108の下端は、排水タンク109内へ突出するように設計されている。これにより排水管108は、貯留溝103から排水タンク109の内部へ向かうように、水溶液の流動経路を形成している。なお排水管108の形状としては、上述した通り略管状が好適であるが、水溶液の流動経路を形成する限り、種々の形状が採用され得る。
【0052】
排水タンク109は、ミスト生成器100のハウジング下部、且つ水溶液タンク106に隣接する位置に設けられたタンクである。水溶液タンク106と排水タンク109との境界を形成している壁面には、開閉弁110が設けられている。開閉弁110はヒンジ111を軸として回動する板状部材である。
【0053】
開閉弁110は、送風動作が行われている場合に、閉状態(図1)となり、水溶液タンク106と排水タンク109とを遮断する。逆に送風動作が行われていない場合に開状態(図2)となり、水溶液タンク106と排水タンク109とを接続する。
【0054】
なお開閉弁110は、図2に示すように、水溶液タンク106側へ対してのみ回動するようになっている。排水タンク109側へは、排水タンク109の傾斜底部(=抑止部材)により、回動できないようになっている。或いは、図示しないストッパー(=抑止部材)を開閉弁110に接触可能な位置へ設けることにより、排水タンク109側へ回動できないようにする形態でもよい。
【0055】
これによりは開閉弁110は、水溶液タンク106に加えられる圧力Pと、両タンクに貯えられている水溶液の液量差によって生じる水圧によって、開閉が行われる。例えば送風動作が行われている場合、圧力Pが加えられることによって開閉弁110に対する水圧が増加し、開閉弁110が排水タンク109側へ押されて閉状態となる(図1)。
【0056】
逆に送風動作が行われていない場合、排水タンク109の水位が水溶液タンク106の水位より大きければ、水圧により開閉弁110が水溶液タンク106側へ押されて開状態となる(図2)。
【0057】
このように両タンクの間に位置する開閉弁110が開放されることで、排水タンク109の水溶液が水溶液タンク106へ循環される。この結果、両タンクの水位が等しくなるため、排水タンク109が満杯となるのを防ぐことができる。なお、送風動作が行われていない状態においても、貯留溝103には所定量の水溶液が残るため、所定時間内は連続的に霧化し続けることができる。
【0058】
なお開閉弁110の開閉動作は、図示しないステッピングモータ等の駆動部材と制御基板とにより、動作制御を行う形態でもよい。この場合、制御基板は、送風動作の動作状態を示す信号を送風装置107より受信し、この動作状態に連動して、駆動部材に対する開閉動作の実施を指示する。より具体的には、送風動作が検知されている場合に閉状態、送風動作が検知されていない場合に開状態となるよう、駆動部材に対する制御を行う。
【0059】
空気穴112は、排水タンク109に存在する空気を逃がすための通風孔である。これにより、水溶液が排水タンク109へ排水された場合に、排水タンク109の空気圧が増加するのを防止する。また空気穴112は止水膜を備えており、水溶液が排水タンク109の外部へ漏れ出すのを防止する。
〈2.電気回路の構成について〉
図4は、本発明の一実施形態に係るミスト生成器100の電気回路の構成を示すブロック図である。図4に示すようにミスト生成器100は、制御部201(=開閉制御部)、起動スイッチ202、電源部203、渇水検知回路204、及び電極群205を備えている。なお図中の超音波振動子102、振動子駆動回路104、水溶液タンク106、及び送風装置107については説明を省略する。
【0060】
制御部201は、ミスト生成器100の各部材の駆動を有機的に制御して、ミストの生成を統括制御するものである。また、電源部203を用いた電圧制御や、送風装置107を用いた空気圧制御等を統括制御する機能も備える。
【0061】
制御部201は、水溶液タンク106に対して圧力Pを加える動作と加えない動作とを、所定時間毎に繰り返し行うよう送風装置107を制御する。例えば送風動作を30秒間行うよう制御したのち、60分間の停止を行うよう制御する。そして60分が経過すると、再び送風動作を30秒間行うよう制御する。これにより、貯留溝103に対する水溶液の供給を継続して行う。
【0062】
起動スイッチ202は、ミスト生成器100の稼働状態のON/OFFを切り替えるためのリミットスイッチである。ただし起動スイッチがOFFされている状態でも、起動スイッチ202は制御部201対して微小電流を流す。これにより制御部201はスタンバイ状態を維持することが可能である。
【0063】
電源部203は、外部電源(不図示)より電力の供給を受け、DC/ACの変換等を行い、ミスト生成器100の各部に対して電源電圧を与える。電源部203は例えば、外部電源より電力供給を受けるための電源コードを接続する接続端子(不図示)を備えている。
【0064】
或いは電源部203は、電源として乾電池或いは二次電池を使用することにより、外部電源から切り離された状態でミスト生成器100の駆動を可能とする形態であってもよい。二次電池としては例えば、充電式アルカリ電池やリチウムイオンバッテリ等を用いることが可能である。
【0065】
渇水検知回路204は、電極群205に含まれる電極板のうちの一電極板を用いて、水溶液タンク106の水位を検知する。そして水位が所定値を下回った場合に、渇水が発生したことを検知する。渇水を検知した場合、LEDライト(不図示)を点灯させるなどにより、通知を行う。
【0066】
なお、電極群205が含む電極板は、例えばチタン又はルテニウム系材料に白金をコーティングし、その外側にイリジウムをコーティングすることにより形成されている。また電極板は、例えばリード線等を用いて電圧が印加される。
【0067】
以上に説明した本実施形態によれば、貯留部103へ過剰に供給された水溶液を、排出タンク109へ排出する構造としている。このため、超音波振動子102へ水溶液を搬送するための圧力Pが高すぎる場合であっても、水溶液がミスト生成器100の外部に漏れ出すことがない。
【0068】
また本実施形態によれば、空気圧検知センサや液体検知センサ等を設けて、空気圧や水溶液の状態に応じて圧力Pの大きさを制御する必要がない。従って装置サイズ及びコストの面で有利である。
【0069】
また本実施形態によれば、開閉弁110及びヒンジ111を用いて、排出タンク109の水溶液を水溶液タンク106へ循環させる構造としている。このため、排出タンク109が満杯となり、排出タンク109から水溶液が漏れ出すのを防止することができる。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0070】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0071】
(A)上記実施形態では、本発明の構成を実施する装置として、車載用のミスト生成器100を例に説明しているが、これ以外のミスト生成器において実施する形態でもよい。例えば、旅客機や船舶等に搭載されて使用されるミスト生成器において、本発明を実施する形態でもよい。また、持ち運んで使用する携帯用ミスト生成器において、本発明を実施する形態でもよい。
【0072】
(B)上記実施形態では、水溶液タンク106に貯えられている水溶液を加圧する加圧装置として送風装置107を用いているが、これ以外の方法により水溶液を加圧する形態でもよい。例えば、水溶液タンク106を徐々に変形させ、水溶液タンク106内のスペースを減縮させることで、水溶液タンク106内の水溶液を加圧する形態でもよい。
【0073】
(C)上記実施形態では、超音波振動子102を用いて水溶液からミストを生成しているが、これ以外の方法を用いてミストを生成する形態でもよい。例えば、複数の電極を用いて水溶液から電解水を生成し、電解水からミストを生成する形態でもよい。
【0074】
(D)上記実施形態では、導水管105及び排水管108として、ミスト生成器100のハウジング内において上下方向に伸びた略管状の部材を例に説明を行っているが、これ以外の形状又は組成をした構成でもよい。例えば、導水管105又は排水管108が流線形状をしており、ハウジングの外部を経由して水溶液の流動経路を形成する形態でもよい。また例えば、導水管105又は排水管108と、ミスト生成器のハウジングとが一体形成されている形態でもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 車両
100 ミスト生成器
101 放出板
102 超音波振動子(霧化部)
103 貯水溝
104 振動子駆動回路
105 導水管(第一搬送路)
106 水溶液タンク(貯水タンク)
107 送風装置(加圧部)
108 排水管(第二搬送路)
109 排水タンク
110 開閉弁(開閉部、回動部材)
111 ヒンジ(開閉部)
112 空気穴
201 制御部(開閉制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯える貯水タンクと、
液体を霧化する霧化部と、
前記貯水タンクに貯えられている液体を前記霧化部へ搬送するための流動経路を形成する第一搬送路と、
前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧することにより、該液体を、前記第一搬送路を介して前記霧化部へ到達するように付勢する加圧部とを備えるミスト生成器において、
前記霧化部から液体を排出するための流動経路を形成する第二搬送路と、
前記第二搬送路の一端より排出される液体を貯える排水タンクと、
開閉可能な部材であり、且つ開状態となることによって前記貯水タンクと前記排水タンクとの間で液体の流動経路を形成する開閉部とを備えること
を特徴とするミスト生成器。
【請求項2】
前記開閉部が、ヒンジと、前記ヒンジを軸として回動する回動部材とを備え、
前記回動部材が、前記貯水タンクの内壁の一部と前記排水タンクの内壁の一部とを形成する形状をしている、
請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項3】
前記回動部材に接触可能に設けられた部材であり、前記回動部材が前記排水タンクの内部方向へ回動するのを抑止する抑止部材を、前記ミスト生成器が備え、
前記回動部材が、前記加圧部により加圧されることにより前記抑止部材に接触して該流動経路を遮断する、
請求項2に記載のミスト生成器。
【請求項4】
前記加圧部による液体の加圧が行われている場合に、前記開閉部を閉状態とし、前記加圧部による液体の加圧が行われていない場合に、前記開閉部を開状態とするよう前記開閉部を制御する開閉制御部を備える、
請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項5】
前記霧化部が、前記貯水タンクの上方に設けられており、
前記第一搬送路が、鉛直上向きに前記流動経路を形成し、
前記加圧部が、前記貯水タンクに貯められている液体を加圧することにより、該液体を、前記第一搬送路を介して押し上げて前記霧化部へ搬送する、
請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項6】
前記加圧部が、前記貯水タンクの外部から内部へ空気を送り込み、前記貯水タンク内の空気圧を増加させることにより、前記貯水タンクに貯えられている液体を加圧する、
請求項1に記載のミスト生成器。
【請求項7】
前記霧化部が、超音波振動子を含み、前記超音波振動子を用いて液体を霧化する、
請求項1に記載のミスト生成器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136636(P2011−136636A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297615(P2009−297615)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】