説明

ミニエマルジョン重合を通じたマイクロカプセルの製造方法

ミニエマルジョン重合を通じたマイクロカプセルの製造方法を提供する。ミニエマルジョン重合方法を利用して単一分散分布を有する均一なサイズ及び形態を有するマイクロカプセルの製造方法である。これにより製造されたマイクロカプセルは、外壁内の液相または固相の核物質の体積がマイクロカプセルの10ないし80%を占め、重合初期に生成された単量体粒子が安定化して単量体によく溶け、外壁をなす高分子より水との界面張力が高い有機物質を高分子粒子の内部に均一に位置させうる。また、架橋剤を重合反応中に投入する場合、内部に一つの核を有するマイクロカプセルを製造でき、高分子を形成するための開始剤の適用において油溶性開始剤を使用することによって、2次粒子の形成を抑制させ、重合反応中に後投入開始剤を投入して均一なサイズ及び形態を有するマイクロカプセルを高い転換率で製造できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミニエマルジョン重合を通じたマイクロカプセルの製造方法及びそれにより製造されたマイクロカプセルに係り、さらに詳細には、単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、開始剤、望ましくは、油溶性開始剤及び脱イオン水と、任意に親水性共単量体及び/または補助単量体(架橋剤)とを混合してミニエマルジョンを形成するステップ及び前記開始剤の存在下に前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップからなり、必要に応じて前記重合反応中に後投入開始剤を投入して反応をさらに進ませるステップをさらに含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法に関する。場合によって、前記製造方法で、架橋剤は、ミニエマルジョンの重合反応中に投入されうる。また、本発明は、前記製造方法によって製造されたマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル(または、粒径が数百nm以下である場合に、ナノカプセルと区分することもある)は、公式的な規定はないが、暗黙的に認定される定義は、内部に液体または固体の分子からなる核(コア)物質と核物質を取り囲む主に高分子材料の外壁(シェル)とで構成された数十nmから数十μまでの粒子を称す。前記核物質としては、医薬品、香料、触媒、染料またはそれらを含む液相の均一溶液が挙げられる。このようなマイクロあるいはナノカプセルは、色々な産業分野で応用されている。
【0003】
マイクロカプセルを作る代表的な方法は、コアセルベーション方法、界面重合法及びインシチュ(in−situ)重合法が知られており、必要に応じて補完修正された方法を使用する。一例として、高分子を後処理して製造する方法がある(非特許文献1)。これは、水に溶けない高分子と有機溶剤、そして内核に入れる物質を全部混合した後、十分に攪拌して均一にする手続きを経て、入れた有機溶剤を除去する方法である。これを活用した特許技術の例としては、真空蒸留による溶剤の除去を記述している特許文献1と蒸発による溶剤の除去を記述している特許文献2が挙げられる。しかし、前者は、多様な有機物質を内包できないという問題点があり、後者は、マイクロカプセルの製造時間が長くかかるという短所がある。
【0004】
それ以外にも、特許文献3は、水溶分散液を加熱するか、または真空によって高分子溶剤を除去する方法を発表し、特許文献4は、有機溶剤を水で抽出して除去する方法を記載している。また、非特許文献2でも前記方法を説明している。しかし、このような方法は、有機溶媒の除去を通じてマイクロカプセルを製造する方法であるため、低い温度で揮発する物質である500Dalton以下の小さな分子量の物質をカプセル化することは不可能で、特定のシステムでのみ適用可能であるという短所がある。
【0005】
また、懸濁液−架橋結合方法でもマイクロカプセルの製造が可能である(非特許文献3)。この方法は、溶媒を利用して高分子を溶かした後に懸濁液サイズの粒子を機械的な力で作った後、高分子を架橋させる。その後、生成されたマイクロカプセルを得る過程に分けられる。この方法は、溶媒と高分子とに相容性が適当になければならないという点と、生成された粒子の構造が核−外壁(コア−シェル)構造ではない、他の構造が現れうるという短所とがある。
【0006】
一方、コアセルベーション(非特許文献4)法とは、特定の条件で高分子膜が外部との環境を調節しつつ、濃度を調節する透過が可能なコアセルベートを作ることを称す。高分子溶液に第3の溶媒を入れつつ観察すれば、特定の条件では、内部と外部の溶媒の含量が異なる物質が得られる。このような粒子をよく調節して作れば、内部に色々な物質のカプセル化が可能である。しかし、このような方法でマイクロカプセルを作るためには、コアセルベートを形成する特定の高分子を利用せねばならないという短所があり、製造工程上複雑であり、系が容易に割れて高分子のみが固められて塊を形成する恐れがあるという短所がある。
【0007】
マイクロカプセルの外壁(シェル)を形成する物質を、界面重合を通じて製造する方法も広く活用されており、外壁をなす物質としてポリウレタン、ポリアミドなど、その例は非常に多様であるところ、そのうち一例である特許文献5は、その粒径が1μm以上であり、外壁をポリウレアで製造する方法を提示している。しかし、この方法は、外壁をなす高分子物質の種類が界面重合で製造されねばならないため、その種類が限定的であり、最終完成されたマイクロカプセルの粒径分布が広く、反応系が非常に希釈された状態で得られて、その量が少ないという問題点がある。
【0008】
また、特許文献6は、異種の高分子1ないし30重量部を内部に含めるミニエマルジョン重合方法を記載している。この方法は、異種の高分子物質であるインク用トナー物質を高分子支持体として利用して均一なサイズのハイブリッド物質を製造する方法や、最終製造物質の内部に高分子のみが含まれうるという短所がある。
【0009】
一方、相対的に粒径の小さい(数十〜数百nm)マイクロカプセルの製造方法としては、やはり色々ものが提示されているところ、第1の例としては、自己組立法がある。これは、両親媒性性質を有する脂質分子を希釈された水溶液上に球形の二重層を有する粒子に作って製造する方法である。もし、この二重層に重合可能な基が導入されていれば、その状態で重合が進められて重合体を形成すれば、マイクロカプセルが形成される。しかし、この方法で70年代から研究され続けているが、両親媒性を有するブロック化合物自体の合成及び温度影響など色々な調節変数が多くて、成功した例(非特許文献5)は極めて希であり、外壁をなす高分子の種類も非常に制限的であるという短所がある。
【0010】
自己組立法を利用したさらに他の方法は、デンドリマーを利用する方法である(非特許文献6)。両親媒性のデンドリマーは、その種類によって一定の温度及び濃度で自己組立して球形の粒子を作る傾向がある。デンドリマーの特徴自体は、中心密度は低く、外部密度は高まってナノカプセルを形成して、デンドリマーの内部に保護しようとする物質を入れて反応させてマイクロカプセルを作ることである。しかし、このように生成されたデンドリマーカプセルの外壁は、化学的な共有結合でなされていないため、条件が変われば、容易に外壁としての性能を喪失し、デンドリマーの合成が難しく、一定の条件でのみ形成されるという短所がある。それ以外にも、類似した方法としてハイパーブランチッドポリマーを利用した方法(非特許文献7)、両親媒性デンドリマーを逆相に作る方法(非特許文献8)が報告されているが、それと類似した短所を有している。
【0011】
中空のマイクロカプセルを作るさらに他の方法のうちには、テンプレートを利用する方法がある。非特許文献9では、両親媒性であるポリイソプレン及びポリアクリル酸ブロック重合体を水溶液上で自己組立させて二つの反応基を有するアミンとポリアクリル酸との縮合反応を通じて外壁を架橋させた後、内部のポリイソプレンをオゾンを通じた酸化反応によって除去してナノカプセルを得る。生成手続きが複雑であり、両親媒性である分子でのみ起こるという点で大きい短所がある。
【0012】
しかし、さらに他のナノカプセルを作る方法は、非特許文献10に紹介されたエマルジョン−ディフュージョン方法である。ここでは、溶媒を利用して高分子を溶かして高分子溶液を作った後、溶媒で飽和された水溶液上にこの高分子溶液を乳化剤と共に強い攪拌力を通じて強制乳化させる。その後、多量の水溶液を加えれば、化学平衡によって溶媒が水溶液相に流出されつつ、その空席が生まれて中空のマイクロカプセルが得られる。この方法では、ほとんどの高分子を溶かせる溶媒が制限的であり、高濃度の高分子溶液を作り難いという点と粒径を調節し難いという点、そして製造方法が複雑であるという短所がある。
【0013】
非特許文献11では、高分子に非溶媒を利用して炭化水素をカプセル化する方法を提示する。この方法は、初期に種粒子として低分子量の高分子ラテックスを使用し、ここに少量のイソオクタンでラテックス粒子を膨潤させた後に、この粒子を中心に高分子を重合させれば、高分子量が多くなりつつ、自ら相分離が起こって内側にイソオクタンがカプセル化される。このような方法では、初期ラテックスをある程度膨潤可能でありつつも、後期に高分子量が多くなれば、相分離が起こる適当な系でのみ可能であるという短所がある。
【0014】
そして、PSまたはPMMAと強疎水剤であるヘキサデカンを多量混合した後に重合する、ミニエマルジョン重合方法を利用したナノカプセルを製造しようとする試みが報告された(非特許文献12)。しかし、この報告では、特殊な開始剤を使用した場合にのみマイクロカプセルが得られ、強疎水剤のみをマイクロカプセル化する限界を有していた。また、既存の技術では、特に、水溶性単量体を使用したとき、連続相で重合が起こりやすくなる。すなわち、ミニエマルジョン粒子以外での重合でマイクロカプセルではない副産物で高分子粒子自体(2次粒子)が生成されるという問題点を有している。
ここで、使用したミニエマルジョン重合方法(非特許文献13)は、乳化重合法のようにラテックスを作る方法である。しかし、一般的な乳化重合法とは違って、水に液相の単量体を分散させるが、その単量体を強力な粉砕機能を有する均質機(超音波均質機、マイクロ流動化剤、ガウリンホモジナイザなどを使用する)を利用して、数十ないし数百nmサイズの粒子に製造し、この時に発生する小さな粒子の不安定性(オストワルドライプニングによる)を、その乳化された粒子の単量体内に強疎水剤を溶解させて滲透圧を発生させることによって、安定化した単量体ミニエマルジョンをそのまま重合させて高分子に変化させることによってラテックスを製造する方法である。このような安定化メカニズムは、エマルジョンの粒径が小さくなるほど増加する液体媒質のケルビン圧力の上昇で現れるオストワルドライプニング(分散された化合物の連続相に対する溶解度は小さな粒子が大きい粒子に比べて高いため、小さな粒子は、構成成分を連続相に奪われ続け、大きい粒子はこれらを受容して、結局には、最も小さな粒子から消え、平均粒径が持続的に成長する現象)を、水にほとんど溶けずに水を経由する拡散を通じては他の所に移動できない第3の成分を単量体粒子に溶解させれば、小さな粒子は、主成分が流出されつつ濃度が高まり、大きい粒子は、主成分を受容して第3成分の濃度が薄くなりつつ生じる濃度差によって発生する個々の粒子の化学ポテンシャルの差による滲透圧力を利用して、微細な抑制して粒子を安定化させる。
【0015】
異なる高分子間の相分離現象による粒子状は、Torza及びMasonの研究結果では、各成分と連続相との界面張力を比較することによって予測可能であると報告されている(非特許文献14)。各成分間の界面張力を比較して、分散係数を求めた後、この分散係数の値を比較すれば、平衡状態での粒子構造が予測可能である。ほとんどの例では、内部核物質と連続相との界面張力より外皮をなす物質と連続相との界面張力が低いとき、核物質のカプセル化がなされると報告された。
【0016】
粒子構造を予測する他の方法は、界面張力以外に界面でのエネルギーを比較する方法がさらに効果的である。これは、界面でのエネルギーを最小化する方向に粒子の構造が生成されるという原理である。基本的には、Torza及びMasonの方法と類似しているが、界面での表面積を利用するという差を有する。界面でのエネルギーは、表面積と界面張力の積であり、平衡状態の粒子は、二つの成分間の構造を調節して表面でのエネルギーを最小化する方向に粒子を安定化させる(非特許文献15)。
【特許文献1】米国特許第4,384,975号明細書
【特許文献2】英国特許第3,737,337号明細書
【特許文献3】米国特許第3,891,570号明細書
【特許文献4】米国特許第3,737,337号明細書
【特許文献5】韓国特許第0,272,616号明細書
【特許文献6】米国特許第5,545,504号明細書
【非特許文献1】Chem.Soc.Rev.,29,295,2000
【非特許文献2】Polym.Eng.Sci.,1990,30,p915〜
【非特許文献3】Polym.Eng.Sci.,1989,29,1746〜
【非特許文献4】Polym.Eng.Sci.,1990,30,905〜
【非特許文献5】Langmuir,2000,16,1035
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.,1995,117,4417
【非特許文献7】Angew.Chem.Intl.Ed.,1991,30,1178
【非特許文献8】Angew.Chem.Intl.Ed.,1999,38,3552〜
【非特許文献9】Angew.Chem.Intl.Ed.,1998,37,2201
【非特許文献10】Drug.Dev.Re.,2002,57,18
【非特許文献11】Adv.Colloid.Interface.Science.,2002,99,181
【非特許文献12】Langmuir,17,908,2001
【非特許文献13】Prog.Polym.Sci.2002,27689〜
【非特許文献14】J.Coll.Inter.Sci.,1970,33,6783
【非特許文献15】Microencapsulation,1989,6,327〜
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記問題点を解決するために、本発明者は、持続的な研究を行った結果、単量体、乳化剤、強疎水剤、粘度の低い疎水性物質、開始剤、望ましくは、油溶性開始剤、及び脱イオン水と、任意に親水性共単量体及び/または補助単量体(架橋剤)とを混合してミニエマルジョンを形成させた後、これを重合させれば(必要に応じて前記重合反応中に後投入開始剤を投入して反応をさらに進める)、ミニエマルジョンを形成するステップで添加された強疎水剤による滲透圧力によって単量体粒子の安定性が向上して、単量体粒子中に単量体に溶ける物質を含め、疎水性物質及び単量体から生成された高分子と相分離が起こって、コア−シェル構造を有するマイクロカプセルを製造できるということを発見して本発明を完成した。
【0018】
また、本発明によるマイクロカプセルは、重合が進められるにつれて、疎水性物質と生成される高分子との溶解度差による相分離が発生するが、粘度の低い疎水性物質によって確実かつ速く、容易かつ自発的に工程が進められ、液相に添加される疎水性物質が単量体粒子には溶け、高分子には溶けないことによって、本発明によるマイクロカプセルの工程において、溶媒として活用できるという重要な追加機能があるということを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下、本発明のマイクロカプセルの製造方法を詳細に説明する。
本発明によるマイクロカプセルの製造方法は、A)単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、開始剤、及び脱イオン水と、必要ならば、親水性共単量体とを混合し、必要な時には、補助単量体(架橋剤)を添加したミニエマルジョンを形成するステップと、B)前記開始剤の存在下に前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、C)必要に応じて、前記重合反応中に後投入開始剤を投入して反応をさらに進むステップと、を含んでなることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法に関する。
【0020】
前記製造方法の一変形として、補助単量体(架橋剤)がミニエマルジョン形成ステップやミニエマルジョン重合反応中に投入されうる。
【0021】
以下で、本発明の製造方法を詳細に説明する。
本発明の製造方法で使われる反応成分の含量は、単量体100重量部に対して乳化剤0.01ないし5.0重量部、強疎水剤0.1ないし10重量部、疎水性物質10ないし300重量部、架橋剤0.0ないし10重量部、開始剤0.01ないし3重量部、親水性共単量体0.01ないし10重量部及び後投入開始剤0.01ないし1重量部でありうる。
【0022】
前記ミニエマルジョン反応ステップで、重合反応の温度を25ないし160℃、望ましくは、40ないし90℃とし、重合反応の時間は、単量体の種類によって、そして反応が進められる速度によって異なるが、3ないし24時間、望ましくは、4ないし10時間、さらに望ましくは、4ないし8時間に条件を調整して製造する。
【0023】
本発明のマイクロカプセルの製造方法で、高分子を形成するための重合反応の開始剤として使われる前記開始剤は、過酸化物、過硫酸塩系開始剤、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤及び酸化還元系開始剤からなる群から1種以上選択され、具体的には、H、ジ−tert−ブチル過酸化物、クメンヒドロ過酸化物、ジシクロへキシルペルカーボネート、tert−ブチルヒドロ過酸化物、p−メンタンヒドロ過酸化物のような無機及び有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系開始剤;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウム、過リン酸カリウム、過ホウ酸ナトリウムのような過酸塩;または酸化還元開始剤が例として挙げられる。
【0024】
望ましくは、本発明の方法の開始剤として油溶性開始剤を使用できる。油溶性開始剤を使用すれば、核を含んでいない2次粒子の形成が抑制されて均一なサイズ及び形態を有するマイクロカプセルが生成されうる。ここで、2次粒子とは、均質化を通じて形成された疎水性物質を含む単量体粒子の重合を通じて形成されたラテックス粒子ではない、水相で単量体の重合及び自己粒子化によって形成される疎水性物質を含んでいない粒子を称す。このような2次粒子は、疎水性物質を有していないため、生成されれば、最終製品の特性が低下するので、可能な限り生成を抑制することが必要である。油溶性開始剤の適用によって、開始剤は、水相ではない単量体粒子内にのみ位置し、これは、水相に少量ほど溶けている単量体が開始剤と出合って重合を起こせる可能性を抑制させて、2次粒子の形成を抑制させる。
【0025】
油溶性開始剤が2次粒子の形成を抑制させるためには、単量体にのみほとんどが溶け、水では溶けないことが望ましい。したがって、25℃で水に対する溶解度が0.5g/kg以下、さらに望ましくは、0.02g/kg以下である物質が有利であり、過酸化物、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤及び酸化還元系開始剤からなる群から選択された何れか1種以上を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明で、開始剤は、単量体100重量部に対して0.01ないし3重量部を使用する。0.01重量部未満では、重合速度が低下し、3重量部を超える場合には、重合後に不純物として作用しうる。
【0027】
本発明によって製造されるマイクロカプセルは、高分子で取り囲まれた内部に液相または固相のような別途の相として存在する核物質を含むが、前記核物質を形成する物質が疎水性物質である。
【0028】
高分子の内部に別途の相として存在するために、疎水性物質は、単量体とは相容性があり、生成される高分子とは相容性がなく、疎水性物質と水との界面張力が最終的に外壁をなす高分子と水との界面張力よりさらに大きい物質が望ましい。このような疎水性物質は、高分子より水に対する溶解度が低い物質にのみ限定されず、単量体と相容性のあるほとんどの有機物質でありうる。
【0029】
このような物質は、へキサン、へプタン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのC〜C20の脂肪族及び芳香族炭化水素及びその異性体;C10〜C20の脂肪族及び芳香族アルコール;C10〜C20の脂肪族及び芳香族エステル;C10〜C20の脂肪族及び芳香族エーテル;シリコーンオイル、天然及び合成オイルを例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記疎水性物質は、単独または2種以上混合されて使われ、後述する強疎水剤のような物質でもある。
【0030】
本発明において、疎水性物質は、単量体100重量部に対して10ないし300重量部で使われることが望ましい。10重量部未満では、内部核のサイズがあまり小さくてマイクロカプセルの核としての役割ができず、300重量部を超える場合には、内部核に比べて高分子外壁が薄くなって、粒子の形態を維持し難い。
【0031】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、ミニエマルジョンを形成させるステップで、単量体粒子の安定化のために強疎水剤を使用する。前記強疎水剤が滲透圧を通じて単量体及び疎水性物質で構成されたミニエマルジョン粒子を安定化させ、最終的には、ミニエマルジョン間の物質交換なしに重合が起こって重合が進められつつ、高分子と疎水性物質との相分離を通じてマイクロカプセルを作らせる。
【0032】
前記強疎水剤が滲透圧を通じて単量体を安定化させるためには、25℃で水に対する溶解度が5×10‐5g/kg以下、望ましくは、5×10−6g/kg以下である物質として、C12〜C20の脂肪族炭化水素類、C12〜C20の脂肪族アルコール類、C12〜C20の炭素数を有するアルキル基で構成されたアクリレート、C12〜C20のアルキルメルカプタン、有機染料、フッ素化アルカン、シリコーンオイル化合物、天然オイル、合成オイル、分子量が1,000ないし500,000であるオリゴマー及び分子量が1,000ないし500,000である高分子からなる群から選択された1種以上を使用できる。
【0033】
具体的に、前記強疎水剤の例としては、ヘキサデカン、へプタデカン、オクタデカン、セチルアルコール、イソプロピルラウレート、イソプロピルパルミテート、へキシルラウレート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート、セチルミリステート、2−オクチルデシルミリステート、イソプロピルパルミテート、2−エチルへキシルパルミテート、ブチルステアレート、デシルオレエート、2−オクチルドデシルオレエート、ポリプロピレングリコールモノオレエート、ネオペンチルグリコール2−エチルへキサノエート、多価アルコールエステルオイル、イソステアレート、トリグリセライド、ココ脂肪酸トリグリセライド、アーモンドオイル、杏子仁オイル、アボカドオイル、テオブロマオイル、ニンジン種子油、キャスターオイル、柑橘類種子油、ココナッツオイル、トウモロコシオイル、綿実油、キュウリオイル、タマゴオイル、ホホバオイル、ラノリンオイル、アマニオイル、鉱油、ミンクオイル、オリーブオイル、パーム油、仁油、桃仁油、ピーナッツオイル、なたね油、サフラワー油、胡麻油、サメ肝油、大豆油、向日葵種子油、スイートアーモンドオイル、牛脂、羊脂、亀油、植物性オイル、鯨油、小麦胚芽油、有機シリコン、シロキサン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ヘキサフルオロベンゼンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記強疎水剤は、単独または2種以上混合されて使われうる。
【0034】
さらに望ましくは、アルカンとしてヘキサデカンを使用し、アルコールとしては、セチルアルコールを使用することが良い。
【0035】
本発明において、強疎水剤は、単量体100重量部に対して0.1ないし10重量部で使われることが望ましい。0.1重量部未満では、安定したミニエマルジョンを形成できず、10重量部を超える場合には、重合以後の加工過程で不純物として残る可能性がある。強疎水剤自体をカプセル化することも可能である。しかし、強疎水剤を少量使用する時には、高分子の分子鎖一つ一つに組込まれているが、溶解限界を超えれば、強疎水剤自体が高分子と相分離現象が起こりつつカプセル化される。
【0036】
本発明によって製造されるマイクロカプセルは、前記のような核(コア)物質を取り囲んでいる高分子外壁(シェル)で構成される。カプセル化しようとする疎水性物質の種類によって、下記の単量体から選択が可能である。高分子の極性や水との界面張力は、単量体の種類変更を通じて容易に可能であり、フリーラジカル重合は、公知の重合法であって、多様な種類の単量体を利用した高分子が報告されている。
【0037】
前記高分子外壁を形成する単量体としては、不飽和二重結合を有し、ラジカル重合が可能であり、また生成された高分子と水との界面張力が、核物質と水との界面張力より小さな単量体が望ましく、メタクリレート誘導体、アクリレート誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル誘導体、ビニルエステル誘導体、ハロゲン化ビニル誘導体及びメルカプタン誘導体からなる群から1種以上選択されうる。
【0038】
このような単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ニトロスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−へキシルアクリレート、n−へキシルメタクリレート、エチルへキシルアクリレート、エチルへキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、シクロへキシルメタクリレート、4−tert−ブチルシクロへキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルエチルメタクリレート、フェニルプロピルアクリレート、フェニルプロピルメタクリレート、フェニルノニルアクリレート、フェニルノニルメタクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、フルフリルアクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、ビニル2−エチルへキサノエート、ビニルネオノナノエート、ビニルネオデカノエートが挙げられるが、これらの単量体に限定されるものではない。前記単量体は、単独または2種以上混合されて使われうる。
【0039】
本発明のマイクロカプセルの製造方法としては、外壁の強度と内部物質の拡散とを調節することが必要である時には、補助的な単量体として架橋剤を使用できる。架橋剤は、要求されるマイクロカプセルの外壁強度の程度及び核物質の放出要求の拡散速度によって、その投入如何及び量を決定する。
【0040】
前記架橋剤は、外壁を形成する主反応単量体と共重合できるものであって、2つ以上の不飽和結合を有している単量体が望ましい。
【0041】
架橋剤の具体的な例としては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、へキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート及びジビニルベンゼンからなる群から選択された1種以上を使用できる。
【0042】
本発明において、用途によって、架橋剤は、単量体100重量部に対して0ないし10重量部、望ましくは、0.1ないし10重量部で使われうる。10重量部を超える場合には、安定性を喪失して多量の浮遊物を生成する。
【0043】
本発明において、最終製品の用途に合せることが必要であり、架橋剤を投入する時に添加する方法として、前記架橋剤は、通常ミニエマルジョン形成段階で投入されうるが、ミニエマルジョンがある程度重合が進められた段階で投入することが一般的であり、投入する方法は、一時投入法または連続投入法が何れも可能である。500nm以下の小さな粒径では、先投入、後投入如何と関連なく、マイクロカプセルが形成されるが、粒径が非常に大きくなれば、架橋剤の先投入によって高分子と疎水性物質との相分離が起こる前に、架橋剤による高分子鎖間の網状構造が形成されて、粒子構造が一つの核を有さず、数個の小核を有する構造が現れうる。すなわち、粒子が大きくなりつつ、コア−シェル構造が形成されないとき、ミニエマルジョン重合反応中に架橋剤を投入して、一つの粒子に一つの核を有する粒子を形成させうる。
【0044】
前記ミニエマルジョン反応段階で架橋剤を投入する時点は、単量体が高分子に転化する転換率が20ないし90%である時であり、望ましくは、40ないし80%が適当である。
【0045】
また、本発明のマイクロカプセルの製造方法としては、単量体の種類によって油溶性開始剤の使用によって転換率が低くなる問題を解決するために、前記ミニエマルジョン重合反応中に後投入開始剤を投入できる。
【0046】
前記重合反応中に投入される後投入開始剤は、単量体の高分子転換率が50ないし95%である時に投入されることが望ましい。さらに望ましくは、高分子転換率が65ないし90%である時に投入される。
【0047】
前記後投入開始剤は、過酸化物、過硫酸塩系開始剤、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤及び酸化還元系開始剤からなる群から1種以上選択され、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過リン酸カリウム、過ホウ酸ナトリウムなどの過酸塩;過硫酸塩系開始剤;過酸化水素(H)、ジ−tert−ブチル過酸化物、クメンヒドロ過酸化物、ジシクロへキシルペルカーボネート、tert−ブチルヒドロ過酸化物、p−メンタンヒドロ過酸化物などの無機及び有機過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤;酸化還元系開始剤が使われることが良い。前記後投入開始剤は、単独または2種以上混合されて使われ、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明において、後投入開始剤は、単量体100重量部に対して0.01ないし1重量部で使われることが望ましい。0.01重量部未満では、重合速度が低下し、1重量部を超える場合には、重合後に不純物として作用しうる。
【0049】
後投入開始剤が使われることによって、本発明の方法では、均一なサイズ及び形態を有するマイクロカプセルを別途の後工程なしに高い転換率で製造できる。
【0050】
加えて、本発明のマイクロカプセルの製造方法では、主反応単量体との共重合を通じて生成される高分子の親水性を向上させることによって、核物質である疎水性物質を高分子の外壁内に安定的に位置させる親水性共単量体を使用できる。
【0051】
前記親水性共単量体(コモノマー)は、主反応単量体と共重合できるものであって、主反応単量体との相容性があることが望ましい。親水性共単量体は、疎水性物質と高分子外壁の相分離時、高分子外壁に親水性を加えて容易に強疎水剤及び疎水性物質から容易に相分離されて、分散媒質である水との境界面に位置して高分子が外壁を形成し、疎水性物質を内部の核として位置させることを助ける。単量体及び疎水性物質の種類によって、その使用如何と投入量とを決定し、全てのマイクロカプセルの製造時に投入せねばならないものではない。
【0052】
親水性共単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの少なくとも1つのカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。前記親水性共単量体は、単独または2種以上混合されて使われうる。
【0053】
本発明において、親水性共単量体は、単量体100重量部に対して0.01ないし10重量部で使われることが望ましい。0.01重量部未満では、高分子外壁に親水性を付与できなくて安定したコア−シェル構造を形成できず、10重量部を超える場合には、水相に溶ける単量体の増加によって水相で重合が起こって、2次粒子の生成が多くなる。
【0054】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、乳化剤、脱イオン水及びその他のマイクロカプセルを製造するために添加されうる成分が、本発明の目的を損なわない範囲内で所定量添加されうる。
【0055】
前記乳化剤としては、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、陰イオン性乳化剤及び両側性乳化剤からなる群から1種以上選択されうる。具体的には、スルホン酸塩、カルボン酸塩、コハク酸塩、硫黄コハク酸塩及びこれらの金属塩類、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルコハク酸ナトリウム、アビエチン酸からなる陰イオン性乳化剤;高級アミンハロゲン化物、第四アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などの陽イオン性乳化剤;ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルなどの非イオン性乳化剤;及び両側性乳化剤からなる群から選択された1種以上を使用できるが、これらの乳化剤に限定されるものではない。
【0056】
本発明において、乳化剤は、単量体100重量部に対して0.01ないし5.0重量部で使われることが望ましい。その使用量は、一般的に、0.01重量部未満では、安定したミニエマルジョンを形成させず、5.0重量部を超える場合には、粒径が小さくなり、2次粒子の形成を促進させる。しかし、最終的に乳化剤を添加する量は、生成されるマイクロカプセルの粒子の特性と得ようとするマイクロカプセルのサイズとによって決定されねばならない。
【0057】
本発明の製造方法で、前記ミニエマルジョンを形成する方法は、必要に応じてタラックス(Turrax,Ika Laboratory)のような機械的な攪拌を行ってエマルジョンを製造した後に、またはこの過程なしに超音波発生器、マイクロ流動化剤、マントン−ガウリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザなどの高いエネルギーを発生させて微細な粒子のミニエマルジョンを作る均質機(ホモジナイザ)を使用する。
【0058】
結論的に、本発明の目的達成に適した本発明のマイクロカプセルの製造方法の実施例を後述するが、本発明の製造方法の実施例に限定されるものではない。
【0059】
本発明のマイクロカプセルは、A)単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、開始剤及び脱イオン水を混合した後、ミニエマルジョンを形成するステップと、B)前記開始剤の存在下で前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、を含んでなることを特徴とする製造方法によって製造されうる。
【0060】
また、本発明のマイクロカプセルは、A)単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、補助単量体(架橋剤)、開始剤及び脱イオン水を混合した後、ミニエマルジョンを形成するステップと、B)前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、を含んでなることを特徴とする製造方法によって製造されうる。
【0061】
なお、本発明のマイクロカプセルは、A)単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、親水性共単量体、開始剤及び脱イオン水を混合した後、ミニエマルジョンを形成するステップと、B)前記開始剤の存在下で前記ミニエマルジョンを重合する反応中に架橋剤を投入してマイクロカプセルを製造するステップと、を含んでなることを特徴とする製造方法によって製造されうる。
【0062】
別法として、本発明のマイクロカプセルは、A)単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、親水性共単量体、補助単量体(架橋剤)、油溶性開始剤及び脱イオン水を混合した後、ミニエマルジョンを形成するステップと、B)前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、を含んでなることを特徴とする製造方法によって製造されうる。
【0063】
また、本発明のマイクロカプセルは、A)単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、親水性共単量体、補助単量体(架橋剤)、油溶性開始剤及び脱イオン水を混合した後、ミニエマルジョンを形成するステップと、B)前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、C)前記重合反応中に後投入開始剤を投入するステップと、を含んでなることを特徴とする製造方法によって製造されうる。
【0064】
本発明の方法によって製造されたマイクロカプセルは、ラテックスに分散された粒径が100ないし2,500nmであり、外壁の厚さは10ないし1,000nm、外壁内の液相または固相の核物質の体積が全粒子体積のうち10ないし80%でありうる。
【発明の効果】
【0065】
本発明によるマイクロカプセルの製造方法は、重合初期に生成された単量体粒子が強疎水剤による滲透圧によって安定化し、単量体粒子に溶ける物質であり、高分子には溶けない疎水性物質をカプセル化できて、球形のマイクロカプセルが得られ、本発明によるマイクロカプセルの内部核物質が大きく制限的でなく多様であり、その用途も多様に利用されうる。すなわち、内部核物質を多様に変化させれば、薬理物質、染料物質など色々な機能性物質だけでなく、容易に除去可能な低分子物質を核として使用し、内部の空洞を有する粒子も作りうる。
【0066】
そして、重合反応中に架橋剤を投入して2次粒子の形成を抑制させて均一なサイズ及び形態を有するマイクロカプセルを製造できる。
また、重合反応中に後投入開始剤を投入して均一なサイズ及び形態のマイクロカプセルを別途の後工程なしに高い転換率で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、下記の実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
[実施例1ないし3]
下記の表1に示した組成によって各成分を混合した後、均質機(ホモジナイザー)であるマイクロ流動化剤に投入してミニエマルジョン粒子を作った後、形成させたミニエマルジョンをバッチ状に窒素置換された重合反応器で65℃で加熱して5時間反応させた後、反応を終了した。そして、得られたラテックスを分析し、その結果を表1に示した。
【0068】
[比較例1ないし2]
前記実施例1と同じ方法で実施するが、表1に示した反応成分の組成比でミニエマルジョンラテックスを製造して、その結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例1ないし3を比較例1及び2と比較すれば、内部に疎水性物質を含めるか否かによって、マイクロカプセルの生成有無において差が発生するということが分かる。比較例のように、疎水性物質であるへキサンが存在していない状態では、内部に核を生成しないことが確認できた。
【0071】
〔実施例4ないし9:ミニエマルジョン重合反応時に架橋剤を投入してマイクロカプセルを製造〕
[実施例4ないし9]
下記の表2に示した組成によって各成分を混合した後、均質機であるマイクロ流動化機を利用してミニエマルジョンを形成させ、形成させたミニエマルジョンをバッチ状に窒素置換された重合反応器で90℃で加熱して反応させ、反応中に架橋剤を投入し、10時間反応させた後に反応を終了した。そして、得られたラテックスを分析し、その結果を表2に示した。
【0072】
【表2】

【0073】
一般にミニエマルジョンの粒径が大きくなれば、疎水性物質から離れた高分子の相分離が大きくなり、粘度の高い高分子中間物の完全な相分離が起こり難い。そのため、強度を維持するために、入れた架橋剤によって網状構造を有する重合中間物は、コア−シェル構造ではない部分部分が分離された多孔構造を有する。したがって、外壁の強度に優れ、かつコア−シェル構造を維持するためには、実施例7ないし9のように、架橋剤を後投入すればよい。また、生成された高分子と水との界面張力が大きいため、粒径が1μmより大きい時には、重合中に外壁を均一に形成できず、核が片側に追い込まれた形態の構造を有する。しかし、親水性共単量体の投入時には、高分子と水との界面張力を低めてコア−シェル構造が形成される。
【0074】
〔実施例10ないし12:親水性共単量体及び油溶性開始剤を利用してマイクロカプセルを製造〕
[実施例10ないし12]
下記の表3に示した組成によって各成分を混合した後、均質機を利用してミニエマルジョンを形成させた後、形成させたミニエマルジョンをバッチ状に窒素置換された重合反応器で90℃で加熱して反応させ、10時間反応させた後に反応を終了した。そして、得られたラテックスを分析し、その結果を表3に示した。
【0075】
[比較例3]
前記実施例10において、油溶性開始剤の代りに水溶性開始剤を使用したことを除いては、実施例10と同一に実施してその結果を表3に示した。
【0076】
【表3】

【0077】
前記実施例において、油溶性開始剤であるベンゾイル過酸化物を使用した場合、疎水性物質を含まず、小さなサイズを有する2次粒子が形成されず、均一なサイズを有する安定した形態のマイクロカプセルが製造された。
【0078】
〔実施例13ないし15:後投入開始剤を使用してマイクロカプセルを製造〕
[実施例13ないし15]
下記の表4に示した組成によって各成分を均質機であるマイクロ流動化機に投入した後にミニエマルジョンを形成させ、形成させたミニエマルジョンをバッチ状に窒素置換された重合反応器に投入した後、90℃の温度で10時間重合反応させた。10時間の重合反応後に後投入開始剤を投入して2時間さらに重合反応させた後、反応を終了してマイクロカプセルを製造した。
【0079】
【表4】

【0080】
〔試験例〕
[ラテックスの平均粒径及び粒径分布の測定]
前記得られたラテックスの粒径及び分布を、粒径測定装置(Microtrac UPA150)を利用して測定した後、その値を前記表1に示した。
【0081】
[電子顕微鏡]
前記得られたラテックス粒子をTEM(Transmission Electron Microscope)を利用して分析した。その結果を図1ないし8に示した。ここで、ラテックスは、高分子粒子が水に乳化剤と共に分散された状態で存在することを称す。
【0082】
本発明によって製造された高分子は、安定した形態のミニエマルジョン粒子を有し、その分布も均一であるということが確認できる。
【0083】
前記図1ないし図8に示したように、均一なサイズの粒子を有するマイクロカプセルの内部には、疎水性物質が含まれていることが見られる。
また、重合反応中に架橋剤を投入する実施例7ないし9によって製造された高分子の場合には、一つの核を有する安定した形態の粒子を有するということを図4ないし図6で確認できる。
【0084】
〔2次粒子形成如何の確認のための遠心分離〕
前記実施例10ないし15で得られたラテックスを15000rpmで1時間遠心分離して上層部と下層部とを分離した後、上層部の比率を前記表3及び表4に示した。
ラテックスを遠心分離すれば、疎水性物質を含有している粒子は、水より密度が低くて上側へ浮き上がって上層部を形成し、疎水性物質を含有していない2次粒子は、密度が水より高くて沈殿するので、これを通じて2次粒子の形成如何が分かるところ、前記表3の結果を参照すれば、油溶性開始剤を適用した実施例のマイクロカプセルは、遠心分離後、上層部の比率が高いということが分かる。これは、油溶性開始剤の存在下に重合することによって、核を含んでいない2次粒子の形成を抑制して、サイズ及び形態が均一なマイクロカプセルを製造できるということを示す。
【0085】
〔マイクロカプセルの転換率〕
実施例10ないし12で製造したラテックスの転換率を測定して前記表4に示した。
前記表4に示したように、本発明によって疎水性物質、単量体、架橋剤、親水性共単量体、強疎水剤、乳化剤及び脱イオン水を混合して、油溶性開始剤の存在下にミニエマルジョン状態で重合する中に、後投入開始剤を添加して製造された実施例10ないし12のマイクロカプセルは、最終転換率が約100%であるということが分かる。これは、マイクロカプセルの製造後、高分子に残留する単量体がほとんど無いということを意味し、したがって、残留単量体を除去するための別途の後工程を必要としない。
【0086】
以上、本発明は、記載された具体例を中心に詳細に説明されたが、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるということは、当業者ならば理解でき、このような変形及び修正は、特許請求の範囲に属することも当然である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、マイクロカプセル関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図2】本発明の実施例2によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図3】本発明の実施例3によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図4】本発明の実施例7によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図5】本発明の実施例8によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図6】本発明の実施例9によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図7】本発明の実施例10によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。
【図8】本発明の実施例11によって製造された高分子のTEM写真を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)不飽和二重結合を有し、フリーラジカルによって重合可能な単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、開始剤及び脱イオン水を混合した後にミニエマルジョンを形成するステップと、
B)前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、
を含んでなることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
A)不飽和二重結合を有し、フリーラジカルによって重合可能な単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、架橋剤、開始剤、及び脱イオン水を混合した後にミニエマルジョンを形成するステップと、
B)前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、
を含んでなることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
A)不飽和二重結合を有し、フリーラジカルによって重合可能な単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、開始剤及び脱イオン水を混合した後にミニエマルジョンを形成するステップと、
B)前記開始剤の存在下で前記ミニエマルジョンを重合する反応中に架橋剤を投入してマイクロカプセルを製造するステップと、
を含んでなることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
A)不飽和二重結合を有し、フリーラジカルによって重合可能な単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、親水性共単量体、架橋剤、油溶性開始剤及び脱イオン水を混合した後にミニエマルジョンを形成するステップと、
B)前記油溶性開始剤の存在下でミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、
を含んでなることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
A)不飽和二重結合を有し、フリーラジカルによって重合可能な単量体、乳化剤、強疎水剤、疎水性物質、親水性共単量体、架橋剤、油溶性開始剤及び脱イオン水を混合した後にミニエマルジョンを形成するステップと、
B)前記開始剤の存在下で前記ミニエマルジョンを重合させてマイクロカプセルを製造するステップと、
C)前記重合反応中に後投入開始剤を投入するステップと、
を含んでなることを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記疎水性物質は、単量体とは相容性があり、疎水性物質と水との界面張力が最終的に外壁をなす高分子と水との界面張力よりさらに大きく、生成される高分子と非相容性を有する物質であることを特徴とする請求項1ないし5のうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記疎水性物質は、C〜C20の脂肪族及び芳香族炭化水素及びその異性体、C10〜C20の脂肪族及び芳香族アルコール、C10〜C20の脂肪族及び芳香族エステル、C10〜C20の脂肪族及び芳香族エーテル、シリコーンオイル、天然及び合成オイルからなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項6に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記ミニエマルジョンを形成させるステップで混合される反応成分の組成比は、単量体100重量部に対して乳化剤0.01ないし5.0重量部、強疎水剤0.1ないし10重量部、疎水性物質10ないし300重量部及び開始剤0.01ないし3重量部であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記ミニエマルジョンを形成させるステップで混合される反応成分の組成比は、単量体100重量部に対して乳化剤0.01ないし5.0重量部、強疎水剤0.1ないし10重量部、疎水性物質10ないし300重量部、架橋剤0.1ないし10重量部及び開始剤0.01ないし3重量部であることを特徴とする請求項2または3に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
前記ミニエマルジョンを形成させるステップで混合される反応成分の組成比は、単量体100重量部に対して乳化剤0.01ないし5.0重量部、強疎水剤0.1ないし10重量部、親水性共単量体0.1ないし10重量部、疎水性物質10ないし300重量部、架橋剤0.1ないし10重量部、油溶性開始剤0.01ないし3重量部及び後投入開始剤0.01ないし1重量部であることを特徴とする請求項4または5に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
前記ミニエマルジョン重合ステップで重合反応の温度が25ないし160℃、重合反応の時間が3ないし24時間であることを特徴とする請求項1ないし5のうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
前記単量体は、メタクリレート誘導体、アクリレート誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル誘導体、ビニルエステル誘導体、ハロゲン化ビニル誘導体及びメルカプタン誘導体からなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項1ないし5にうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項13】
前記乳化剤は、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、陰イオン性乳化剤及び両性乳化剤からなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項1ないし5のうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項14】
前記強疎水剤は、25℃で水に対する溶解度が5×10−6g/kg以下である強い疎水性物質であることを特徴とする請求項1ないし5のうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項15】
前記強疎水剤は、C12〜C20の脂肪族炭化水素類、C12〜C20の脂肪族アルコール類、C12〜C20の炭素数を有するアルキル基で構成されたアクリレート、C12〜C20のアルキルメルカプタン、有機染料、フッ素化アルカン、シリコーンオイル、天然及び合成オイル、分子量が1,000ないし500,000であるオリゴマー及び分子量が1,000ないし500,000である高分子からなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項14に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項16】
前記架橋剤は、主反応単量体と共重合が可能な2つ以上の不飽和結合を有している単量体であることを特徴とする請求項2ないし5のうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項17】
前記架橋剤は、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、へキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート及びジビニルベンゼンからなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項16に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項18】
前記開始剤は、過酸化物、過硫酸塩系開始剤、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤及び酸化還元系開始剤からなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項1ないし3のうち何れか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項19】
前記油溶性開始剤は、25℃で水に対する溶解度が0.5g/kg以下の物質であることを特徴とする請求項4または5に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項20】
前記油溶性開始剤は、過酸化物、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤及び酸化還元系開始剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項21】
前記親水性共単量体は、主反応単量体と共重合可能なものであって、主反応単量体と共重合して生成される高分子の親水性を向上させることによって、核物質である疎水性物質を高分子外壁内に安定的に位置させる単量体であることを特徴とする請求項4または5に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項22】
前記親水性共単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸及びマレイン酸からなる群から選択される不飽和カルボン酸、及びイタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル及びマレイン酸モノブチルエステルからなる群から選択される少なくとも何れか一つのカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステルからなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項21に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項23】
前記後投入開始剤は、過酸化物、過硫酸塩系開始剤、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤及び酸化還元系開始剤からなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項5に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項24】
前記重合反応中に投入される後投入開始剤は、単量体の高分子転換率50ないし95%である時に投入されることを特徴とする請求項5に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項25】
前記ミニエマルジョン反応ステップで補助単量体として架橋剤が投入される時には、その架橋剤は、単量体の高分子転換率が20ないし90%である時に投入されることを特徴とする請求項3に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項26】
請求項1ないし25のうち何れか1項に記載の方法によって製造されたマイクロカプセル。
【請求項27】
前記マイクロカプセルは、マイクロカプセル全体体積の10ないし80%の体積を占める疎水性物質を内部核とし、内部核を取り囲む高分子外壁とで構成され、100ないし2,500nmのサイズを有することを特徴とする請求項26に記載のマイクロカプセル。
【請求項28】
前記マイクロカプセルから疎水性物質を除去して、核が気体で満ちている状態の内部中空性であることを特徴とする請求項26に記載のマイクロカプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−528286(P2007−528286A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518540(P2006−518540)
【出願日】平成16年7月3日(2004.7.3)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001644
【国際公開番号】WO2005/002719
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】