説明

ミネラル組成物および苦味抑制方法

【課題】 鉱泉水、海水または海洋深層水を原料とし、濃縮、希釈および/または脱塩により調整されたイオンバランスを持つミネラル水の苦味を低減せしめ、摂取しやすいミネラル組成物を提供すること。
【解決手段】 海水または鉱泉水を原料としたミネラル水に、トレハロース化合物が配合されていることを特徴とするミネラル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラル組成物特有の苦味を軽減させた組成物および苦味抑制方法に関する。さらに詳しくは、海水や鉱泉水から得られたミネラル組成物に特定の糖を加えることで、苦味成分である2価イオンを糖と結合させ、苦味を低減させた後に、健康増進に効果的な飲料および各種水系飲料の原料水、各種加工食品用の原料水などとして用いる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱泉水、海水、海洋深層水などには各種のイオン成分が豊富に含まれ、原水のまま、または様々な処理が行われた後に、食品、医薬品、化粧品、農業、水産などの分野に幅広く利用されている。また、近年ではミネラル補給による健康増進、生活習慣病予防を目的とした健康飲料が注目されており、この原料に用いるミネラル組成物の製造方法も提案されている。
【0003】
一方、海水より蒸留などの技術で食塩を製造する工程中に生成する苦汁成分を、そのままあるいは適宜希釈または海水などと混合した後にミネラル水として利用する商品も増加している。
【0004】
上記製品は一般に、イオン交換樹脂、電気透析装置、逆浸透膜装置などによる塩化ナトリウム濃度調整が施されているため、塩辛さおよび健康への悪影響は小さいと考えられる。しかし、他のイオン、特に硬度成分であるカルシウム、マグネシウムは苦味が強く、飲料、食品などへ応用する際の障害となっている。
【0005】
硬度成分は人体にとって重要な成分であり、カルシウムは1日600mg、マグネシウムは1日300mgの摂取が望ましいとされている。しかし、現代人はこれらのミネラルが不足しているといわれており、安全でおいしいミネラル補給食品の開発が望まれる。
【特許文献1】特開2002−348595公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題の解決を目ざすものである。すなわち、本発明は、鉱泉水、海水または海洋深層水を原料とし、濃縮、希釈および/または脱塩により調整されたイオンバランスを持つミネラル水の苦味を低減せしめ、摂取しやすいミネラル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
1.海水または鉱泉水を原料水としたミネラル水に、トレハロース化合物が配合されていることを特徴とするミネラル組成物。
2.海水より得られた苦汁液に、トレハロース化合物が配合されていることを特徴とするミネラル組成物。
3.濃縮、希釈もしくは脱塩の内、少なくとも1種の処理によりイオン濃度およびイオン組成が調整されている前記1または2に記載のミネラル組成物。
4.脱塩が、モザイク荷電膜の装着された透析装置による処理である前記3に記載のミネラル組成物。
【0008】
5.原料水が、海洋深層水である前記1乃至4の何れか1項に記載のミネラル組成物。
6.カルシウムに対するマグネシウムの質量比が、4/1から1/3である前記1乃至5の何れか1項に記載のミネラル組成物。
7.前記1乃至6の何れか1項に記載のトレハロース化合物添加による苦味抑制方法。
8.前記1乃至6の何れか1項に記載のミネラル組成物を含有する加工品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トレハロース化合物を添加することにより、海水や鉱泉水から得られたミネラル組成物特有の苦味を軽減させることができる。さらに、本発明では健康増進に効果的なミネラル組成物の苦味を軽減させることで、摂取しやすく、嗜好性の向上した飲料、各種水系飲料および加工食品などの原料水を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ミネラル源として鉱泉水、海水または海洋深層水を用い、濃縮、希釈もしくは脱塩の内、少なくとも1種の処理によりイオン濃度およびイオン組成が調整されたミネラル水を製造し、これにトレハロース化合物を配合することでミネラル水中の硬度成分とトレハロース化合物との複合体を形成させ、硬度成分の持つ苦味を低減させるものである。
【0011】
本発明に使用するトレハロースは、グルコースがα−1.4結合した2糖類である。これまでは非常に高価な物質であったが、でんぷんを原料とし酵素反応および水素添加により大量生産する技術が確立したことにより安価大量に入手可能となった。
【0012】
トレハロース化合物としては、トレハロース骨格にグルコースがさらにα−1.4結合したグルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトレオシルトレハロースなどが知られている。
【0013】
トレハロースは分子中の水酸基がカルシウム、マグネシウムなどの金属イオンと複合体を形成することがNMRを用いた研究により推定されている。複合体の形成量はトレハロースの添加量に依存性があり、また、スクロースでは複合体の形成が見られないことが報告されている。
【0014】
従って、トレハロース化合物を鉱泉水、海水または海洋深層水を用い、濃縮、希釈もしくは脱塩の内、少なくとも1種の処理によりイオン濃度およびイオン組成が調整されたミネラル水にトレハロースを添加することで、ミネラル水中の硬度物質とトレハロースとの複合体が形成され、ミネラル水の苦味が低減する。
【0015】
当該組成物中のトレハロース化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、組成物使用時における苦味が受忍可能な程度まで低減されていることが望ましい。
【0016】
本発明により得られたミネラル組成物はミネラル補給用飲料に用いるだけでなく、茶、ウーロン茶、コーヒー、紅茶などの抽出飲料用原料水、その他加工飲料、豆腐などの加工食品などの原料水として用いることも可能である。特に、当該組成物は、甘味を有することが好ましい食品、飲料などに甘味を賦与する効果もある。
【実施例】
【0017】
次に本発明を具体的な実施例に基づき説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0018】
[実施例1]
塩化マグネシウム10%溶液にトレハロースを10%になるよう添加した。5人のパネラーにより、苦味についてトレハロース無添加物と比較したところ、トレハロース添加により苦味が軽減されているという結果が得られた。
【0019】
[比較例1]
塩化マグネシウム10%溶液に砂糖を10%になるよう添加した。5人のパネラーにより、苦味について砂糖無添加物と比較したところ、砂糖が添加されても苦味が軽減されず、苦味と甘味とが別々に強く感じられるという結果が得られた。
【0020】
[実施例2]
市販のにがり(ナトリウム 0.4%、カリウム 0.2%、マグネシウム 0.6%)大さじ2杯およびトレハロース0.1gを水1Lに希釈した。5人のパネラーにより、苦味についてトレハロース無添加物と比較したところ、トレハロース添加により苦味が減り、まろやかな甘味が感じられるという結果を得た。
【0021】
[実施例3]
(1)モザイク荷電膜脱塩装置による海洋深層水の脱塩
駿河湾沖水深687mにて得られた海洋深層水を、大日精化工業株式会社製モザイク荷電膜100枚(膜面積10m2)が装着されている大型透析装置を用いて脱塩操作を行なった。脱塩水は硬度500になるよう調整した。得られらミネラル水はフィルターにより除菌した。
【0022】
(2)緑茶の製造
静岡県産煎茶茶葉100gを沸騰後に75℃まで冷ました上記ミネラル水3Lを用いて、抽出した。抽出液を濾過し、酸化防止剤としてビタミンCを少量加え、緑茶飲料を得た。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、トレハロース化合物を添加することにより、海水や鉱泉水から得られたミネラル組成物特有の苦味を軽減させることができる。さらに、本発明では健康増進に効果的なミネラル組成物の苦味を軽減させることで、摂取しやすく、嗜好性の向上した飲料、各種水系飲料および加工食品などの原料水を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水または鉱泉水を原料水としたミネラル水に、トレハロース化合物が配合されていることを特徴とするミネラル組成物。
【請求項2】
海水より得られた苦汁液に、トレハロース化合物が配合されていることを特徴とするミネラル組成物。
【請求項3】
濃縮、希釈もしくは脱塩の内、少なくとも1種の処理によりイオン濃度およびイオン組成が調整されている請求項1または2に記載のミネラル組成物。
【請求項4】
脱塩がモザイク荷電膜の装着された透析装置による処理である請求項3に記載のミネラル組成物。
【請求項5】
原料水が、海洋深層水である請求項1乃至4の何れか1項に記載のミネラル組成物。
【請求項6】
カルシウムに対するマグネシウムの質量比が、4/1から1/3である請求項1乃至5の何れか1項に記載のミネラル組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のトレハロース化合物添加による苦味抑制方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のミネラル組成物を含有する加工品。

【公開番号】特開2006−6188(P2006−6188A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187395(P2004−187395)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】