説明

ミリ波伝送システム

【課題】 ミリ波信号を良好に受信できる状態に容易に設定することができる。
【解決手段】 ビル8で受信した放送信号をミリ波に周波数変換したミリ波信号を、ビル影にあって放送信号を直接に受信不可能なビル6に向けて、ミリ波送信機16が送信する。受信不能なビル6に設けられたミリ波受信機20が、ミリ波送信機16からのミリ波を受信する。ミリ波送信機14及びミリ波受信機20は、いずれもホーンアンテナ16、18を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波伝送システムに関し、特に、衛星放送信号や衛星通信信号のようなテレビ信号をミリ波で伝送するものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなミリ波伝送システムとしては、例えば特許文献1に開示されているものがある。特許文献の技術によれば、高層建築物の屋上に設置された第1のミリ波送信機で、下方にミリ波信号を送信し、高層建築物の高層階に複数の第1のミリ波受信機を設置して、第1のミリ波送信機からのミリ波信号を受信する。高層建築物の中層階に設置された第2のミリ波送信機で下方にミリ波信号を送信し、高層建築物の下層階に複数の第2のミリ波受信機を設置して、第2のミリ波送信機からのミリ波信号を受信する。第1及び第2の送信機が送信するミリ波信号は、高層建築物の屋上等で受信した衛星放送信号や衛星通信信号をミリ波に周波数変換したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4204387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、高層建築物の各部屋にミリ波信号を伝送することが可能で、各部屋においてミリ波信号を元の衛星放送信号及び衛星通信信号に周波数変換することによって、衛星放送や衛星通信を視聴することが可能である。しかし、特許文献1の技術では、高速建築物であるので、ミリ波信号の元となる衛星放送信号や衛星通信信号を受信することが可能であるが、大きなビルの影にあって、衛星放送信号や衛星通信信号を直接に受信することができないビルでは、このビルまでミリ波信号を伝送する必要がある。
【0005】
本発明は、ビル影にあるビルにミリ波信号を容易に伝送することができるミリ波伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のミリ波伝送システムでは、受信した放送信号をミリ波に周波数変換したミリ波信号を、ビル影にあって前記放送信号を直接に受信不可能なビルに向けて、送信手段から送信する。放送信号としては、例えば衛星放送信号、衛星通信信号、地上デジタルテレビジョン放送信号等種々のものを使用することができる。送信手段は、放送信号源、例えば放送衛星、通信衛星、地上デジタルテレビジョン放送信号の送信局等からの放送信号を受信することができる位置に設置することが望ましい。前記の受信不能なビルに設けられた受信手段が、前記送信手段からのミリ波を受信する。送信手段及び受信手段は、いずれもホーンアンテナを有している。
【0007】
このように構成されたミリ波送信システムでは、送信手段が送信した、放送信号が周波数変換されたミリ波信号を、ビル影にあるビルに設置した受信手段で受信することができる。送信手段及び受信手段は、共にホーンアンテナによって送信、受信を行っているので、ビームは狭帯域となり、受信に障害が生じないC/Nを得るのには充分である。例えばパラボラアンテナを使用することも可能であるが、このビームは、ホーンアンテナよりも狭く、受信手段で受信できるように、送信手段及び受信手段のパラボラアンテナの向きを調整することが非常に困難である。しかし、ホーンアンテナでは、パラボラアンテナよりもビームは広いので、パラボラアンテナよりは調整が容易である。
【0008】
受信手段が受信したミリ波信号は、前記受信不能なビル内に設けた複数の別の受信手段に向けて、別の送信手段から送信することができる。この場合、別の送信手段及び別の受信手段は、ホーンアンテナよりも広いビームを有するアンテナ、例えば電波レンズアンテナを使用することが望ましい。
【0009】
このように、受信手段で受信したミリ波信号を別の送信手段によって、受信不能なビルの複数の別の受信手段に向けて送信することにより、別の受信手段はそれぞれミリ波信号を受信し、これを周波数変換することによって元の放送信号に基づく視聴を行える。
【0010】
前記受信手段が受信したミリ波信号は、ビル影にあって前記放送信号を直接に受信不能な別のビルに向けて別の送信手段によって送信することができる。この場合、別の送信手段からのミリ波信号は、受信不能な別のビルに設けられた別の受信手段によって受信される。別の送信手段及び別の受信手段も、ホーンアンテナを有している。このように構成すると、受信不能な別のビルにも、ミリ波信号を順次伝送することができ、より多くのビル影に該当するビルにミリ波を伝送することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によるミリ波伝送システムでは、ミリ波信号を良好に受信できる状態に容易に設定することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施形態のミリ波伝送システムの概略構成図である。
【図2】本発明の1実施形態のミリ波伝送システムで使用する送信機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1実施形態のミリ波伝送システムは、図1に示すように、高層ビル2の影になり、テレビジョン放送信号、例えば衛星放送信号及び衛星通信信号を直接には受信することが不可能なビル4、6において、衛星放送及び衛星通信を視聴可能にするものである。
【0014】
高層ビル2の影になっていないビル8の屋上に、衛星放送信号及び衛星通信信号を受信するアンテナ、例えばオフセットパラボラアンテナ10が配置されている。オフセットパラボラアンテナ10で受信された衛星放送信号及び衛星通信信号は、オフセットパラボラアンテナ10に付属するコンバータ12によって衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号に周波数変換されて、第1の送信手段、例えばミリ波送信機14に供給される。ミリ波送信機14では、衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号を、例えば60GHz帯のミリ波に周波数変換して、ミリ波信号を生成する。このミリ波信号は、ミリ波送信機14に一体に設けられている送信アンテナ、例えばホーンアンテナ16によって、ビル6の屋上に向けて送信される。
【0015】
ビル6の屋上には、受信アンテナ、例えばホーンアンテナ18によって受信され、ホーンアンテナ18と一体に設けられている第1の受信手段、例えばミリ波受信機20において元の衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号に周波数変換される。
【0016】
この衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号は2分配器22によって2分配される。2分配器22の一方の2分配出力は、第2の送信手段、例えばミリ波送信機24に供給され、ここで再びミリ波に周波数変換してミリ波信号を生成する。このミリ波信号は、ミリ波送信機24に一体に設けられている送信アンテナ、例えば電波レンズアンテナ26によって、ビル6の屋上から下方に向けて送信される。このビル6の各階の各室の窓際またはベランダに、電波レンズアンテナ26から送信されたミリ波信号を受信するための受信アンテナ、例えば電波レンズアンテナ28が配置されている。これら電波レンズアンテナ28には、一体に第2の受信手段、例えばミリ波受信機30がそれぞれ設けられ、受信したミリ波信号を元の衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号に周波数変換する。これら衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号が、室内のテレビジョン受信機に供給され、衛星放送及び衛星通信の視聴が可能となる。なお、電波レンズアンテナ26のビーム幅は、ホーンアンテナ16のビーム幅よりも広く、そのビーム内に各電波レンズアンテナ28が位置するようにされている。
【0017】
2分配器22の他方の分配出力は、ビル6の屋上に設けられている第3の送信手段、例えばミリ波送信機32に供給され、ミリ波送信機32に一体に設けられている送信アンテナ、例えばホーンアンテナ34によって、ビル4の屋上に向けて送信される。
【0018】
ビル4の屋上には、ミリ波送信機32から送信されたミリ波信号を受信する受信アンテナ、例えばホーンアンテナ36が設置されている。ホーンアンテナ36には、第3の受信手段、例えばミリ波受信機38が一体に設けられ、ホーンアンテナで受信したミリ波信号を、元の衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号に周波数変換する。この周波数変換された衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号は、第4の送信手段、例えばミリ波送信機40に供給される。
【0019】
ミリ波送信機40には、送信アンテナ、例えば電波レンズアンテナ42が一体に設けられ、この電波レンズアンテナ42によってビル4の屋上から下方に向けて送信される。このビル4の各階の各室の窓際またはベランダに、電波レンズアンテナ42から送信されたミリ波信号を受信するための受信アンテナ、例えば電波レンズアンテナ44が配置されている。これら電波レンズアンテナ44には、一体に第4の受信手段、例えばミリ波受信機46がそれぞれ設けられ、受信したミリ波信号を元の衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号に周波数変換する。これら衛星放送中間周波信号及び衛星通信中間周波信号が、室内のテレビジョン受信機に供給され、衛星放送及び衛星通信の視聴が可能となる。電波レンズアンテナ42のビーム幅も、ホーンアンテナ16、34のビーム幅よりも広く、そのビーム内に各電波レンズアンテナ44が位置するようにされている。
【0020】
従って、ビル2の影になって衛星放送信号や衛星通信信号が受信不能なビル4、6においても、衛星放送や衛星通信を視聴可能となる。そのため、ビル8からビル6へ、またビル6からビル4へ、それぞれミリ波信号が無線伝送されているので、衛星放送中間周波信号や衛星通信信号を伝送するためのケーブルを、ビル8からビル6、4へ敷設する必要がない。しかも、この無線伝送の送受信に使用されているミリ波送信機及び受信機14、20、32、38は、送受信用に図2に示すようなホーンアンテナ16、18、34、36を使用している。
【0021】
ミリ波帯で使用するアンテナとしては、ホーンアンテナの他に、例えばオフセットパラボラアンテナや電波レンズアンテナが考えられる。パラボラアンテナは、アンテナ利得は大きいが、ビーム幅が非常に狭く、ビル間での送受信に使用する場合、送信用のパラボラアンテナと受信用のパラボラアンテナとにおいて、わずかに位置がずれただけでも、ミリ波信号を良好に送受信することができず、送信用及び受信用のアンテナの位置調整が非常に困難である。
【0022】
電波レンズアンテナは、ビーム幅が広いので、ビル間での送信及び受信に使用した場合、送信アンテナ及び受信アンテナの位置合わせは容易である。しかし、ビーム幅が広いことに起因して、ノイズも受信してしまうので、C/Nが良好ではなく、電波レンズアンテナで受信した衛星放送信号や衛星通信信号を利用しては、良好に衛星放送や衛星通信を視聴することができない。
【0023】
そこで、ビーム幅がパラボラアンテナよりも広く、電波レンズアンテナよりも狭いホーンアンテナを使用して、送信用アンテナと受信用アンテナとの位置合わせを容易にし、かつC/Nを良好にしている。
【0024】
図2に示すように、ホーンアンテナ16、18、34、36の上面及び側面を覆うように逆U字状の仰角調整用の金具48が配置され、これにホーンアンテナ16、18、34、36が固定されている。図示していない支柱の回りに回転自在に取り付けた方位角調整用金具に対して仰角調整用金具48が、それの両側板に対して垂直な、即ち水平な軸回りに回転自在に取り付けられている。方位角調整用金具の支柱回りの角度位置を調整することによってホーンアンテナ16、18、34、36の方位角が調整され、仰角調整用金具を上記水平な軸回りの角度位置を調整することによって仰角が調整される。このように方位角及び仰角を調整することによって、送信用アンテナとしてのホーンアンテナ16と受信用アンテナとしてのホーンアンテナ18との位置を調整し、かつ送信用アンテナとしてのホーンアンテナ34と受信用アンテナとしてのホーンアンテナ36との位置を調整している。このような位置合わせをさらに容易にするために、仰角調整用金具48の上面にはホーンアンテナ16、18、34、36の中心軸と向きが一致するようにスコープ50が設けられている。
【0025】
例えばスコープをパラボラアンテナやオフセットパラボラアンテナに取り付けて、位置合わせを容易にしようとすることも考えられる。しかし、スコープを取り付けやすいのは、パラボラアンテナやオフセットパラボラアンテナが備える一次放射器であるが、一次放射器は、パラボラ反射鏡やオフセットパラボラ反射鏡を向いているので、スコープを取り付けても位置合わせには使用できない。この点、ホーンアンテナには、その中心軸と向きが一致するようにスコープを容易に取り付けることができ、位置合わせがより容易に行える。
【0026】
上記の実施形態では、衛星放送中間周波信号や衛星通信中間周波信号をミリ波に周波数変換したが、これらに限ったものではなく、例えばこれらと共に、或いは単独に地上デジタルテレビジョン放送信号等をミリ波に周波数変換することもできる。上記の実施形態では、ビル8側からビル6側のみにミリ波信号を送信したが、ビル8側にもう1台ミリ波送信機14とホーンアンテナ16とを設け、図示していないビル影にある別のビル側に送信することもできる。この場合、別のビル側には、もう1台ホーンアンテナ18とミリ波受信機20とが設けられ、別に送信機24、電波レンズアンテナ26、電波レンズアンテナ28、ミリ波受信機30が設けられる。同様に、ビル6側にもう1台ミリ波送信機32とホーンアンテナ34とを設け、図示していない別のビル影にあるビルに向けて送信することもできる。この場合にも、ビル影にある別のビルには、別に送信機40、電波レンズアンテナ42、電波レンズアンテナ44、ミリ波受信機46が設けられる。
【符号の説明】
【0027】
14 32 ミリ波送信機(送信手段)
20 38 ミリ波受信機(受信手段)
16 18 34 36 ホーンアンテナ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した放送信号をミリ波に周波数変換したミリ波信号を、ビル影にあって前記放送信号を直接に受信不可能なビルに向けて送信する送信手段と、
前記受信不能なビルに設けられ、前記送信手段からのミリ波を受信する受信手段とを、
具備し、前記送信手段及び受信手段は、いずれもホーンアンテナを有しているミリ波伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載のミリ波伝送システムにおいて、前記受信手段が受信したミリ波信号は、前記受信不能なビル内に設けた複数の別の受信手段に向けて、別の送信手段から送信されるミリ波伝送システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のミリ波伝送システムにおいて、前記受信手段が受信したミリ波信号は、ビル影にあって前記放送信号を直接に受信不能な別のビルに向けて別の送信手段によって送信され、前記別の送信手段からのミリ波信号は、前記受信不能な別のビルに設けられた別の受信手段によって受信され、別の送信手段及び別の受信手段も、ホーンアンテナを有しているミリ波伝送システム。


【図1】
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【図2】
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