説明

ミリ波誘電体内伝送装置及びその製造方法、並びに、無線伝送装置および無線伝送方法

【課題】ミリ波の2つの信号処理基板間の支持構造及び信号伝送方法を工夫して、ミリ波の信号に基づく電磁波を誘電体伝送路内に伝送できるようにすると共に、従来方式のような2つの信号処理基板間を接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるようにする。
【解決手段】複数の回路基板を備えた電子機器において、回路基板を支持する支持部材を無線信号の伝送路として利用する。たとえば、ミリ波の信号を処理する第1のプリント基板1と、プリント基板1に対して信号結合され、ミリ波の信号を受信して信号処理する第2のプリント基板2と、プリント基板1,2との間に所定の誘電率を有して配設された導波管513を備え、導波管513が誘電体伝送路を構成すると共に導波管513がプリント基板1,2を支持するものである。この構成により、誘電体伝送路を構成する導波管513の一端から輻射したミリ波の信号に基づく電磁波を他端で受信できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波誘電体内伝送装置及びその製造方法、並びに、無線伝送装置および無線伝送方法に関する。たとえば、映画映像や、コンピュータ画像等を搬送する搬送周波数がマイクロ波帯や30GHz乃至300GHzのミリ波帯の信号を高速に伝送する仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抵抗や、コンデンサ、半導体集積回路装置等の電子部品を実装し、電気的配線を行うための板状の部品としてプリント基板が使用されている。一般的に、電子機器を構成する際には、機器内部の物理的な構成上、又は、機能構成上の理由から複数枚のプリント基板同士が当該電子機器の筐体内で並設される。また、四隅に支持部材を設けてプリント基板を積み重ねた多段構造のものを当該筐体内に支持固定する方法が採られる場合が多い。
【0003】
一方、近年の映像や画像等の情報量の膨大化に伴い、プリント基板間において、ミリ波等の高周波の信号を高速に伝送する装置が使用される場合が多くなってきた。この種の高速データ伝送装置には、ミリ波等の高周波の信号をエラーなく伝送することが要求される。
【0004】
図20は従来例に係る高速データ伝送装置900の構成例を示す斜視図である。図20に示す高速データ伝送装置900は、プリント基板1,2間で高速にデータを伝送するために、基板四隅に固定材3を設けて2枚のプリント基板1,2を積み重ねた多段構造を有するものである。図20において、高速データ伝送装置900は、2枚のプリント基板1,2及び4本の通常支持用の固定材3を有しており、プリント基板1,2が基板四隅の固定材3によって平行に固定されている。その固定方法は、プリント基板1,2の四隅に、所定形状の貫通穴4を開口し、この四隅の貫通穴4に固定材3を取り付けて、プリント基板1,2を固定材3で挟むようになされる。
【0005】
プリント基板1上には、信号処理部5、コネクタ7及び電気配線8が設けられる。プリント基板1の電気配線8は、信号処理部5とコネクタ7との間を接続する。プリント基板2上には、信号処理部6、コネクタ7及び電気配線8が設けられる。プリント基板2の電気配線8は、そのコネクタ7と信号処理部6との間を接続する。高速データ伝送装置900によれば、プリント基板1のコネクタ7と、プリント基板2のコネクタ7との間にはケーブル9が接続され、プリント基板1,2間で高速にデータを伝送するようになされる。
【0006】
ところで、高速データ伝送装置900等のコスト削減や、プリント基板1,2の配置の高効率を目的として、コネクタ7とケーブル9とを排除する試みが為されている。この種の高速データ伝送装置900の改善対策に関連して、特許文献1には、データのやり取りを無線通信方式により行う電子機器が開示されている。
【0007】
この電子機器によれば、機器構成ユニット及び無線通信部を備え、無線通信部は筐体内における機器構成ユニット間のデータのやり取りをUWB無線通信にて中継する。これを前提にして、筐体内に電波吸収体が設けられ、無線通信部を介した機器構成ユニット間の通信のノイズとなる電磁波を吸収するようになされる。このように電子機器を構成すると、電波吸収体が筐体内で電磁波を吸収するので、筐体内におけるマルチパスフェージングを抑制できるというものである。
【0008】
また、特許文献2には、複数枚の回路基板を固定する固定部材とそれを利用したモジュールが開示されている。このモジュールによれば、光導波路が設けられた複数の固定部材を備え、固定部材は、その両端部で一の回路基板と、他の回路基板とで各々光結合が採られ、所定距離を隔てて複数枚の回路基板を固定する。これを前提にして、固定部材の光導波路を利用して、回路基板間において光信号を伝播するようになされる。このようにモジュールを構成すると、光信号を媒体にして回路基板間で情報を正確に伝送できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−220264号公報(第3頁 図1)
【特許文献2】特許第4077847号 (第11頁 図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、プリント基板上の信号処理速度の高速化が進む中で、従来例に係る高速データ伝送装置900や、ミリ波帯の信号伝送技術等を応用して妨害の少ない高速なデータ伝送装置や、そのデータ伝送システムを構築しようとした場合に、次のような問題がある。
【0011】
i.図20に示した高速データ伝送装置900によれば、2つのプリント基板1,2間を電気的に接続するためのコネクタ7やケーブル9等を備えなければならない。しかも、筐体内にケーブル9を引き回すための領域を確保しなければならない。
【0012】
ii.特許文献1に見られるような無線通信方式を利用した電子機器によれば、筐体が金属により遮蔽されている場合は、筐体内部の自由空間において電波が反射する。筐体内部の電波反射がマルチパス干渉の要因となって、データ伝送性能が劣化するという問題がある。因みに、マルチパス干渉を軽減するために、マルチキャリア変調方式を採用することも考えられるが、システム規模が増加したり、消費電力が増加するということが懸念される。
【0013】
一方、無線通信部の無線電力の出力レベルを絞り、無線通信エリアを限定するという方法も考えられるが、プリント基板上において、無線通信部の配置が限定され、電子部品配置の自由度が制約されるという問題が起こりうる。
【0014】
iii.また、特許文献2に見られるようなモジュールによれば、データ伝送方式として光を利用するため、固定部材の光導波路に光を送り込むための発光素子、レンズ、反射板、受光素子等を備えなければならない。また、光軸の位置決めや、その位置ズレ等に対する許容性の低さが、プリント基板間の高速データ通信システムの構成を困難にしている。従って、固定部材に光結合するための信号処理基板の構造が非常に複雑なものとなったり、システム規模が増大してコスト高と招くおそれがある。
【0015】
そこで、本発明はこのような課題の少なくとも1つを解決できる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る第1の態様(ミリ波誘電体内伝送装置)は、ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板と、前記第1の信号処理基板に対して信号結合され、前記ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板と、前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に配設された支持部材とを備えるものとする。そして、前記支持部材が誘電体伝送路を構成すると共に当該支持部材が第1の信号処理基板及び第2の信号処理基板を支持するように構成する。
【0017】
つまり、本発明に係る第1の態様(ミリ波誘電体内伝送装置)は、ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板と、ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板との間に配設された支持部材を備え、支持部材が誘電体伝送路を構成すると共に、当該支持部材で第1及び第2の信号処理基板を支持して、当該支持部材の本来の支持構造体を信号伝送経路として兼用できるようにすると共に、従来方式のような第1の信号処理基板と第2の信号処理基板とを接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるようにしたものである。
【0018】
この仕組みによれば、誘電体伝送路を構成する支持部材の一端から輻射したミリ波の信号に基づく電磁波を他端で受信できるようになる。従って、支持部材の本来の支持構造体を信号伝送経路として兼用できるので、従来方式のような第1の信号処理基板と第2の信号処理基板とを接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるようになる。
【0019】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置の製造方法は、ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板を形成する工程と、前記第1の信号処理基板から前記ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板を形成する工程と、前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に所定の誘電率を有した支持部材を配設し、当該支持部材で誘電体伝送路を形成すると共に、前記第2の信号処理基板上の前記支持部材で第1の信号処理基板を支持する工程とを有するものである。
【0020】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置の製造方法によれば、支持部材が誘電体伝送路を構成すると共に、当該支持部材が第1及び第2の信号処理基板を支持するミリ波誘電体内伝送装置を製造できるようになる。
【0021】
本発明に係る第2の態様(無線伝送装置および無線伝送方法)は、伝送対象信号をより周波数の高い(たとえばミリ波帯やマイクロ波帯の)高周波信号に変換する第1の信号変換部を備えた第1(送信側)の回路基板と、信号変換部で生成された高周波信号に基づく無線信号(電磁波)を受信して伝送対象信号に変換する第2の信号変換部を備えた第2(受信側)の回路基板と、第1の回路基板と第2の回路基板の間に配設され各回路基板を支持する支持部材とを備えたものとする。無線信号はミリ波帯のものに限らない。
【0022】
ここで、本発明に係る第2の態様においては、支持部材が、第1の回路基板側から第2の回路基板側へ無線信号を伝送する無線信号伝送路を構成するようにする。つまり、複数の回路基板を備えた電子機器において、回路基板を支持する支持部材を無線信号の伝送路として利用すると言うことである。支持部材は、先ず、無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられたものとする。
【0023】
そして、支持部材は、第1の形態としては、遮蔽材の内部の伝送路が中空の空洞導波路でもよい。この場合の本発明に係る第2の態様は、本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置との対比では、支持部材を誘電体伝送路として使用するのではなく、支持部材を中空構造にして中空導波路として使用する点に特徴がある。つまり、空洞導波管を適用した支持部材とし、支持部材内を基板間伝送に利用する構造である。
【0024】
また、支持部材は、第2の形態としては、遮蔽材の内部の伝送路には誘電体素材が充填されているものでもよい。この場合の本発明に係る第2の態様は、本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置との対比では、支持部材を誘電体伝送路として使用する点で共通する。しかし、無線信号はミリ波帯のものに限らないという点の相違がある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、無線信号伝送路(誘電体伝送路を含む)を構成する支持部材の一端に信号結合された高周波信号(ミリ波の信号を含む)に基づく無線信号(電磁波)がその他端に伝送され、当該他端で信号結合される高周波信号(ミリ波の信号を含む)を受信できるようになる。従って、支持部材の本来の支持構造体を無線信号伝送路として兼用できるので、従来方式のような第1の信号処理基板と第2の信号処理基板とを接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるようになる。
【0026】
支持部材内を無線信号の伝送路として利用するので、筐体内部の自由空間において電波が反射することに起因する問題(たとえばマルチパス干渉など)を解決できる。
【0027】
支持部材内を無線信号の伝送路として利用するので、特許文献2の仕組みを適用した場合の問題(固定部材に光結合するための信号処理基板の構造が複雑になるなど)を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施例としての無線伝送装置500の構成例を示す斜視図である。
【図2】アンテナ結合部101の構成例を示す平面図及びX1−X2矢視断面図である。
【図3】導波管513及び誘電体伝送路終端部30の形状例を示す斜視図である。
【図4】無線伝送装置500の構成例を示すブロック図である。
【図5】無線伝送装置500の形成例(その1)を示す工程図である。
【図6】無線伝送装置500の形成例(その2)を示す工程図である。
【図7】無線伝送装置500の形成例(その3)を示す工程図である。
【図8】無線伝送装置500のシミュレーションモデル例を示す斜視図である。
【図9】無線伝送装置500のシミュレーション特性例を示すグラフ図である。
【図10】第2の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置200の構成例を示す斜視図である。
【図11】第3の実施例としての多段構造型のミリ波誘電体内伝送装置300の構成例を示す斜視図である。
【図12】プリント基板1のアンテナ結合部109の構成例を示す断面図である。
【図13】第4の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置400の構成例を示す斜視図である。
【図14】アンテナ結合部101と固定材18との接合例を示す断面図である。
【図15】固定材18及び誘電体伝送路終端部30の形状例を示す斜視図である。
【図16】第5の実施例としての無線伝送装置500の構成例を示す斜視図である。
【図17】アンテナ結合部と導波管の詳細を説明する図である。
【図18】第5の実施例のシミュレーション特性例を説明する図である。
【図19】アンテナ構造(特にアンテナパターン)の変形例を説明する図である。
【図20】従来例に係る高速データ伝送装置900の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
説明は以下の順序で行なう。
1.第1の実施例(基板2枚を柱状の支持部材で積層、誘電体伝送路兼用の支持部材が基板四隅の内の一箇所)
2.第2の実施例(基板2枚を柱状の支持部材で積層、誘電体伝送路兼用の支持部材が四隅)
3.第3の実施例(基板3枚を柱状の支持部材で積層、誘電体伝送路兼用の支持部材が基板四隅の内の二箇所)
4.第4の実施例(基板2枚を並設、扁平U形状の固定材で基板を水平支持、誘電体伝送路兼用の固定材が一箇所)
5.第5の実施例(汎用構成:無線信号伝送路をなす支持部材として導波管を使用)
【0031】
<第1の実施例>
図1は、第1の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示す斜視図である。図1に示すミリ波誘電体内伝送装置100は、映画映像や、コンピュータ画像等のデータをミリ波の信号に変換して高速に伝送するミリ波映像データ伝送装置やミリ波映像データ伝送システム等に適用可能なものであり、ミリ波の信号を搬送する搬送周波数が30GHz乃至300GHzとなるものである。
【0032】
ミリ波誘電体内伝送装置100は、第1の信号処理基板(以下単にプリント基板1という)、第2の信号処理基板(以下単にプリント基板2という)、複数の通常支持用の固定材3及び、誘電体伝送路兼用の支持部材(以下単に固定材13という)を有して構成され、プリント基板1,2間を固定材3,13により支持する構造を採るものである。
【0033】
プリント基板1は映画映像や、コンピュータ画像等のデータをミリ波の信号に変換する基板である。プリント基板1の大きさは、例えば、長さがLで、幅がWで、厚さがtである。プリント基板1は、第1の信号処理部5、第1の信号生成部10a、第1の伝送線路11a及び第1のアンテナ結合部101を有して構成される。
【0034】
信号処理部5は映画映像や、コンピュータ画像等のデータに所定の規格に基づく圧縮等の処理を施して電気信号(以下入力信号という)を出力する。信号処理部5は配線パターン等の電気配線8aに接続される。電気配線8aは信号生成部10aに接続される。信号生成部10aは、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。
【0035】
信号生成部10aは伝送線路11aの一端に接続される。伝送線路11aは、信号生成部10aとアンテナ結合部101との間に電気的に接続されてミリ波の信号を伝送する。この例では、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを構成するミリ波の信号を電気的に伝送する。伝送線路11aには、プリント基板1上において、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の方式が適用される。
【0036】
伝送線路11aの他端にはアンテナ結合部101が結合(配置)される。アンテナ結合部101は、信号生成部10aから伝送線路11aを介して伝送されてくるミリ波の信号を固定材13の一端に結合する。この例で、アンテナ結合部101は、ミリ波の信号を電磁波に変換して、誘電体伝送路を構成する固定材13内に当該電磁波を輻射する。アンテナ結合部101は、双方向データ伝送時には、信号生成部10aに接続された伝送線路11aと、誘電体伝送路を構成する固定材13との間でミリ波の映像データ等を伝達する。
【0037】
固定材13は、プリント基板1とプリント基板2との間に所定の誘電率を有して配設されている。固定材13には、少なくとも、ガラスエポキシ系、アクリル系、ポリエチレン系の樹脂から成る誘電体素材が使用される。この例では3個の固定材3が1個の固定材13と共にプリント基板1,2のそれぞれの四隅に分担して配設される。固定材13は通常支持用の固定材3の配設位置以外のプリント基板1,2の隅部位に配設されている。
【0038】
固定材13は、誘電体伝送路を構成すると共に他の3つの固定材3と共にプリント基板1及びプリント基板2を支持する。この支持機能によれば、プリント基板2がプリント基板1を捧げて支持する場合、及び、プリント基板1がプリント基板2を吊り下げて支持する場合を含むものである。
【0039】
また、この支持機構では、プリント基板1とプリント基板2とが所定の方向に組み合わされ、プリント基板1及びプリント基板2が略平行な姿勢を保って、例えば、プリント基板1及びプリント基板2を垂直方向に連結するように、固定材3,13が固定される。このようにミリ波誘電体内伝送装置100を構成すると、プリント基板1及びプリント基板2を固定材3,13を介して垂直方向に棚状に積み重ねて固定できるようになる。なお、固定材3は例えば円柱状に成形した樹脂棒部材が使用される。もちろん、固定材13以外の固定材3には所定形状を有した金属棒部材を使用してもよい。
【0040】
上述の誘電体伝送路を構成する固定材13や、通常支持用の固定材3の他端にはプリント基板2が支持される。プリント基板2はプリント基板1に対して信号結合され、ミリ波の信号を受信して信号処理する。プリント基板2の大きさは、プリント基板1と、ほぼ同様な大きさを有している。
【0041】
プリント基板2は、第2のアンテナ結合部102、第2の伝送線路11b、第2の信号生成部10b及び第2の信号処理部6を有して構成される。アンテナ結合部102は誘電体伝送路を構成する固定材13と信号結合され、固定材13から電磁波を受信してミリ波の信号を出力する。この例でアンテナ結合部102は、固定材13の誘電体伝送路を伝搬してくる電磁波をミリ波の信号に変換する。なお、アンテナ結合部102は、基板面に対してアンテナ結合部101と対称な構造となっている。
【0042】
固定材13の他端には伝送線路11bの一端が結合(配置)される。伝送線路11bは、信号生成部10bとアンテナ結合部102との間に電気的に接続され、アンテナ結合部102より出力されるミリ波の信号を信号生成部10bへ伝送する。この例で、伝送線路11bは、プリント基板2の背面に配置される。また、プリント基板2の背面の伝送線路11bと、プリント基板2の表面の信号生成部10bとは、コンタクトホール12(ビアホール)を介して配線される。アンテナ結合部102は、双方向データ伝送時には、信号生成部10bに接続された伝送線路11bと、誘電体伝送路を構成する固定材13との間でミリ波の映像データ等を伝達する。
【0043】
伝送線路11bの他端には信号生成部10bが接続される。信号生成部10bは、アンテナ結合部102によって受信したミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する。信号生成部10bは配線パターン等の電気配線8bに接続される。電気配線8bは信号処理部6に接続される。信号処理部6は信号生成部10bから得られる出力信号を所定の規格に基づく伸張等の処理を施して映画映像や、コンピュータ画像等のデータを得るようになされる。
【0044】
このようにミリ波誘電体内伝送装置100を構成すると、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端から受信したミリ波の信号に基づく電磁波を他端に伝送できるようになり、プリント基板1とプリント基板2との間でミリ波通信処理をできるようになる。なお、この例では下りミリ波のデータ伝送路を構成する場合について説明したが、プリント基板1の送信機能をプリント基板2に配置し、プリント基板2の受信機能をプリント基板1に配置することで、アンテナ結合部101,102及び誘電体伝送路を構成する固定材13を介して、データの送受信を行うことができる。
【0045】
下りミリ波のデータ伝送路は、信号処理部5→信号生成部10a→伝送線路11a→アンテナ結合部101→固定材13→アンテナ結合部102→伝送線路11b→信号生成部10b→信号処理部6を経由してミリ波の信号を媒体としたデータ伝送が実現される。上りミリ波のデータ伝送路は、信号処理部6→信号生成部10b→伝送線路11b→アンテナ結合部102→固定材13→アンテナ結合部101→伝送線路11a→信号生成部10a→信号処理部5を経由してミリ波の信号を媒体としたデータ伝送が実現される。
【0046】
図2は、アンテナ結合部101の構成例を示す平面図(図2(A))及びX1−X2矢視断面図(図2(B))である。この実施例において、アンテナ結合部101に接続される伝送線路11aにはマイクロストリップラインが適用される。
【0047】
図2(A)に示すアンテナ結合部101はプリント基板1に備えられ、第1の導波管23a、所定形状の貫通穴26及び第1の信号変換部36を有して構成される。導波管23aは円筒状を有しているが、マイクロストリップラインを避けるために、上部が馬蹄形状(C形状)を有している。導波管23aは、伝送線路11aにより電気的に伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、誘電体伝送路に伝送する。
【0048】
貫通穴26は、図2(B)に示す誘電体伝送路を構成する固定材13をプリント基板1に対して固定するための開口部である。この実施例で貫通穴26は、図2(A)に示すように、導波管23aの上部と同様の馬蹄形状を有している。図2(A)及び図2(B)において、二点鎖線に示す部分は、第1の固定手段の一例を構成する誘電体伝送路終端部30であり、固定材13の端部をプリント基板1に固定するようになる(図3参照)。
【0049】
プリント基板1は図2(B)に示す絶縁層1aを有している。絶縁層1aの上部にはグランド(接地)を構成する導電層20が設けられ、その下部にもグランドを構成する導電層25が設けられる。導電層20の上部には絶縁性の伝送線路層21が積層され、この伝送線路層21の上部には導電性の線路22が積層されている。線路22は導波管23a内に挿入される。伝送線路11a(マイクロストリップライン)は、伝送線路層21及び線路22によって構成される。例えば、導電層20上の伝送線路層21において、図2(A)に示すような所定の線路幅で線路22をパターニングすることによって、マイクロストリップラインを形成する。以下で所定の線路幅を線路22の線幅W1という。この導電層20上でパターニングされた伝送線路層21及び線路22の厚みを総称して、以下で単に膜厚t1という。
【0050】
導電層20,25の各々の端部は、円筒状の導体部24で短絡(導通)され、この導体部24が導波管23aを構成している。下部が円筒状を有し、かつ、上部が馬蹄形状を有する導波管23aは、プリント基板1の表面と裏面との間でグランド用の導電層20,25を短絡する円筒状の導体部24によって与えられる。導体部24の内側には、プリント基板1を構成する誘電体が満たされ、誘電体伝送路が構成されている。ここに誘電体が満たされた導波管23aの下側面を導波管面Iといい、誘電体が満たされた導波管23aの直径をD1とする。
【0051】
導波管23aは、例えば、次のようにして形成される。先ず、プリント基板1を形成するための元の基板の1つの隅に直径D1の開口部を開口する。そして、開口部の内壁に導電部材を施して導体化し、導体化により得られた導体部24で導電層20,25と電気的に接合する。その後、プリント基板1を構成する誘電体が満たされる。なお、導体部24の内側は導波管形成時の空洞部のままでも良い。
【0052】
信号変換部36は、導波管23a内に入り込む(挿入する)ように配置された線路22から構成される。この例では、導波管23aを基準にして、導波管23aの内側の線路22が信号変換部36を構成し、導波管23aの外側の線路22が伝送線路11aを構成する。信号変換部36は導波管23a内でミリ波信号を電磁波に変換する。信号変換部36は、導波管23a内において、導波管23aの中心位置から線路22の端部に至る距離D3を有している。導波管23aの中心位置から左側(紙面で)に線路22が突出するようになされる。
【0053】
この例で、導波管23aの周囲のプリント基板1には、図2(A)に示すような貫通穴26が開口され、この貫通穴26には固定材13の端部を組み込むようになされる。アンテナ結合部101によれば、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端に、信号変換部36によって変換された電磁波を伝送すると共に、導波管23aを取り囲む貫通穴26によって当該プリント基板1と固定材13の一端とを固定するようになされる。
【0054】
図3は、固定材13及び誘電体伝送路終端部30の形状例を示す斜視図である。この例では、固定材13の端部の形状が、図2(A)に示した貫通穴26に沿って貫通できる先端C型構造を成している。貫通穴26を貫通された固定材13の端部は、図3に示す誘電体伝送路終端部30と接合されることで、プリント基板1と固定材13とを固定するようになされる。
【0055】
図3に示す固定材13の端部は円筒状を有し、その一部に切り欠き部37を有して先端C型構造を成している。切り欠き部37は、導波管23aを横切る部位を画定する。ここに切り欠き部37を有した固定材13の端部上面側を誘電体面IIIという。この例で、導波管23aの導波管面Iと、固定材13の誘電体面IIIとが当接するような接面構造を採っている。固定材13の端部の円筒状部位の外周面は雄ネジ構造31を有している。
【0056】
この固定材13の円筒状の端部には、第1の固定手段を構成する誘電体伝送路終端部30が取り付けられる。誘電体伝送路終端部30は天井付きの蓋状体(キャップやハット等の形状)を有しており、固定材13の上端部に螺合して取り付けられ、伝送線路11aから導波管23aに放射される電磁波を反射すると共に、固定材13の一端をプリント基板1に固定する。この例で誘電体伝送路終端部30の蓋状体の内側上面を天井面IIとしたとき、当該誘電体伝送路終端部30の内壁全面が金属によって構成され、又は、樹脂に金属メッキされており、導波管23a内の線路22から放射された電磁波が天井面IIによって反射される構造となっている。
【0057】
この例で、誘電体伝送路終端部30の内側面には、図3に示した固定材13の雄ネジ構造31に対応した雌ネジ構造32が設けられている。固定材13の雄ネジ構造31に、誘電体伝送路終端部30の雌ネジ構造32が嵌合される。例えば、固定材13の雄ネジ構造31に沿って、誘電体伝送路終端部30の雌ネジ構造32を周回させることで、図2に示したプリント基板1を固定材13によって固定するようになされる。
【0058】
更に、誘電体伝送路終端部30を固定材13に嵌合した際のプリント基板1と天井面IIとが成す距離をD2としたとき、空気中のミリ波の信号の波長λの4分の1に距離D2を設定し、電磁波が強められるように距離D2を調整することによって、効率良くミリ波の信号を電磁波に変換できるようになっている。
【0059】
固定材13の一端を固定する誘電体伝送路終端部30は、図2に示した線路22が導波管23aを横切る切り欠き部37に対応した第1の隙間部33を有している。隙間部33は、馬蹄形状の導波管23aの一端と他端との間に所定の幅を設けることで設定される。以下で所定の幅を隙間部33の開口幅W2という。開口幅W2の隙間部33は、プリント基板1と固定材13との接合時に、導体部24と線路22とが接触しないようにするために設けられる。なお、アンテナ結合部102についても、アンテナ結合部101と同様に構成される(図5参照)。
【0060】
このようにミリ波誘電体内伝送装置100を構成すると、誘電体伝送路を構成する固定材13内にミリ波の信号に基づく電磁波を封じ込めることができる。また、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端でミリ波の信号を電磁波に変換できるようになり、固定材13の他端で、電磁波をミリ波の信号に変換できるようになる。
【0061】
続いて、ミリ波誘電体内伝送装置100の回路構成例について説明する。図4は、ミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示すブロック図である。図4に示すミリ波誘電体内伝送装置100は下りミリ波のデータ伝送路の一例を構成し、搬送周波数が30GHz乃至300GHzのミリ波の信号を高速に伝送する画像処理装置等に適用可能なミリ波映像データ伝送装置である。
【0062】
ミリ波誘電体内伝送装置100は、信号入力用の端子201、信号生成部10a及び結合回路205を実装したプリント基板1と、プリント基板1に接合された固定材13と、結合回路207、信号生成部10b及び信号出力用の端子211を実装したプリント基板2とを有して構成される。結合回路205は、図1〜図3で示した伝送線路11a及びアンテナ結合部101から構成され、結合回路207は、同図で示した伝送線路11b及びアンテナ結合部102から構成される。信号生成部10a及び信号生成部10bはCMOS−IC装置から構成される。
【0063】
信号入力用の端子201に接続された信号生成部10aは、入力信号Sinを信号処理してミリ波の信号Sを生成するため、例えば、変調回路202、第1の周波数変換回路203及び増幅器204を有して構成される。信号入力用の端子201には変調回路202が接続され、入力信号Sinを変調するようになされる。変調回路202には例えば位相変調回路が使用される。
【0064】
変調回路202には周波数変換回路203が接続され、変調回路202によって変調された後の入力信号Sinを周波数変換してミリ波の信号Sを生成する。ここにミリ波の信号Sとは、30GHz〜300GHzの範囲のある周波数の信号をいう。周波数変換回路203には、増幅器204が接続され、周波数変換後のミリ波の信号Sを増幅するようになされる。
【0065】
増幅器204には伝送線路11a及びアンテナ結合部101を構成する結合回路205が接続され、信号生成部10aによって生成されたミリ波の信号Sを所定の誘電率εを有する固定材13の一端に送信する。結合回路205には、図1〜図3で説明した導波管23aが設けられ、誘電率εの固定材13に結合される。結合回路205は、比帯域(=信号帯域/動作中心周波数)が10%〜20%程度であれば、共振構造等を利用しても容易に実現できる場合が多い。この実施例で誘電率εを有した損失のある固定材13内にはミリ波の電磁波S’が伝搬するようになる。固定材13は損失が大きいため反射も減衰する。
【0066】
固定材13にはアンテナ結合部102の一例を構成する結合回路207が結合され、固定材13の他端から電磁波S’を受信してミリ波の信号Sに変換する。結合回路207には図示しない導波管23bが設けられる。導波管23bは、図1〜図3で説明したような導波管23aと同じ構造を有しており、誘電率εの固定材13の他端に結合される。導波管23aや、23bの他にミリ波の信号Sの波長λに基づく所定の長さ、例えば、600μm程度を有したアンテナ部材で構成してもよい。アンテナ部材には、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)が使用される。
【0067】
結合回路207には信号生成部10bが接続され、結合回路207によって受信したミリ波の信号Sを信号処理して出力信号Soutを生成するため、例えば、増幅器208、第2の周波数変換回路209及び復調回路210を有して構成される。結合回路207には増幅器208が接続され、受信後のミリ波の信号Sを増幅するようになされる。
【0068】
増幅器208には、周波数変換回路209が接続され、増幅後のミリ波の信号Sを周波数変換して周波数変換後の出力信号Soutを出力する。周波数変換回路209には復調回路210が接続され、周波数変換後の出力信号Soutを復調するようになされる。
【0069】
上述のような入力信号Sinを周波数変換してデータ伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、(1)どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、(2)反射、マルチパスにどう対応するか、(3)妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるかなどの問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器等が用いられている。
【0070】
第1の実施例で使用する信号生成部10a及び信号生成部10bは、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯で使用され、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍で多くのデバイス間での通信をするのに適したものである。この実施例では、下りミリ波のデータ伝送路の一例について説明したが、双方向データ伝送路を構成する場合は、図4に示したミリ波誘電体内伝送装置100の送信系に受信系を設け、その受信系に送信系を各々設けて上りミリ波のデータ伝送路を構成し、双方を時分割に動作させればよい。
【0071】
続いて、図5〜図7を参照して、ミリ波誘電体内伝送装置100の形成例について説明する。図5〜図7は、ミリ波誘電体内伝送装置100の形成例(その1〜3)を示す工程図である。第1の実施例のミリ波誘電体内伝送装置100を製造する場合を前提とする。
【0072】
まず、図5において、ミリ波の信号を処理するプリント基板1を形成するために基板1’を準備する。基板1’には、例えば、図2(B)に示したような絶縁層1a、導電層20,25を有した両面銅箔基板等を使用するとよい。基板1’の大きさは、例えば、長さがLで、幅がWで、厚さがtである(図1参照)。
【0073】
基板1’には、電気配線8a、伝送線路11a、導波管23a及び4個の貫通穴26等を形成する。伝送線路11a及び導波管23aはアンテナ結合部101を構成する。基板1’の絶縁層1aの表裏の導電層20,25はグランドパターンとして使用する。そして、基板1’の1つの隅に導波管23aを形成する。この実施例では、他の3つの隅には導波管23aは形成しないでよい。他の実施例では、他の3つの隅にも導波管23aを形成する場合がある。
【0074】
導波管23aは、基板1’の1つの隅に直径D1の開口部を開口する。そして、開口部の内壁に導電部材を施して導体化し、導体化により得られた導体部24で導電層20,25と電気的に接合する。導体部24は次のように形成される。例えば、プリント基板1の表面及び裏面のグランド(接地)を構成する導電層20,25を接続するための直径D1の開口部を形成する。開口部は、導波管23aを構成する円周に沿って形成される。その後、当該開口部を導体化することで、導体部用のコンタクトホール(ビアホール)が形成される。導波管形成時、コンタクトホールは空洞部となされているが、その後、プリント基板1を構成する誘電体が満たされる。なお、導体部24の内側は導波管形成時の空洞部のままでも良い。
【0075】
導波管23aが形成できたら、導電層20の全面に、所定の誘電率の絶縁性の膜を形成することにより、膜厚t1の伝送線路層21を形成する。これと共に導波管23aに内部に絶縁性の膜を充填して埋め戻す。絶縁性の膜には、プリント基板1を構成する誘電体が使用され、この誘電体を導体部24に満たすことで、誘電体伝送路が形成される。誘電体が満たされた導波管23aの下側面は導波管面Iとなる(図2(B)参照)。
【0076】
その後、絶縁性の膜上の全面に導電性の膜を形成し、当該導電性の膜をパターニングして、例えば、10本の電気配線8aと、マイクロストリップラインとなる線幅W1の1本の伝送線路11aとを形成する。伝送線路11aは伝送線路層21の上方に線幅W1の線路22を形成することで得られる。その際に、伝送線路11aの先端を導波管23a内に挿入するように配置し、その導波管23aの中心位置から距離D3だけ長くなるように伝送線路11a(線路22)をパターニングする。このパターニングによって、導波管23a内に入り込む(挿入する)ように配置された線路22から構成される信号変換部36を形成できるようになる。導波管23a内で信号変換部36がミリ波信号を電磁波に変換するようになる。
【0077】
その後、基板1’の四隅に1個の馬蹄形状の貫通穴26と、3個の馬蹄形状の貫通穴26’とを開口する。例えば、先端C形状の加工刃を有したプレス装置を使用して貫通穴26、26’を開口するようになされる。貫通穴26は固定材13の嵌合に用いられ、貫通穴26’は他の3個の固定材3の嵌合に用いられる。
【0078】
基板1’には、伝送線路11a及びアンテナ結合部101の他に、信号処理部5及び信号生成部10aを実装する。信号処理部5には、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを圧縮するような信号処理用のIC装置が使用される。信号生成部10aには、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する信号生成用のIC装置が使用される。この例では、信号処理部5及び信号生成部10aを基板1’の所定の位置にボンディングすることで、信号処理部5と信号生成部10aとを10本の電気配線8aにより接続される。これにより、映画映像や、コンピュータ画像等のデータをミリ波の信号に変換するプリント基板1が得られる。
【0079】
次に、図6において、プリント基板1からミリ波の信号を受信して信号処理するプリント基板2を形成するために基板2’を準備する。基板2’には、例えば、図2(B)に示したような絶縁層1a、導電層20,25を有した両面銅箔基板等を使用するとよい。基板2’の大きさも、長さがLで、幅がWで、厚さがtである(図1参照)。
【0080】
基板2’には、電気配線8b、伝送線路11b、導波管23b及び4個の貫通穴26等を形成する。伝送線路11b及び導波管23bはアンテナ結合部101を構成する。基板2’の絶縁層1bの表裏の導電層20,25はグランドパターンとして使用する。そして、基板2’の1つの隅に導波管23bを形成する。この例で、他の3つの隅には導波管23bは形成しないでよい。この導波管23bと共に表裏の伝送線路11bを接続するコンタクトホール12を形成する。
【0081】
導波管23bは、基板2’の1つの隅に直径D1の開口部を開口する。そして、開口部の内壁に導電部材を施して導体化し、導体化により得られた導体部24で導電層20,25と電気的に接合する。導体部24は第1のプリント基板1と同様にして形成される。
【0082】
コンタクトホール12は、基板2’の所定の位置に所定の直径の開口部を開口する。そして、開口部の内壁に導電部材を施して導体化し、導体化により得られたコンタクトホール12で表裏の伝送線路11bを接続できるようになる。
【0083】
導波管23b及びコンタクトホール12が形成できたら、コンタクトホール12の形成位置を除く導電層20の全面に、所定の誘電率の絶縁性の膜を形成することにより、膜厚t1の伝送線路層21を形成する。これと共に導波管23bに内部に絶縁性の膜を充填して埋め戻す。絶縁性の膜には、プリント基板2を構成する誘電体が使用され、この誘電体を導体部24に満たすことで、誘電体伝送路が形成される。誘電体が満たされた導波管23bの下側面は導波管面Iとなる(図2(B)参照)。
【0084】
その後、絶縁性の膜上の全面に導電性の膜を形成し、当該導電性の膜をパターニングして、10本の電気配線8bと、当該プリント基板2の表面側のマイクロストリップラインとなる線幅W1の1本の伝送線路11bとを形成する。伝送線路11bは伝送線路層21の上方に線幅W1の線路22を形成することで得られる。表面側の伝送線路11bは、基板2’の表面のコンタクトホール12に接続する。
【0085】
更に、裏面のコンタクトホール12の形成位置を除く導電層25の全面に、所定の誘電率の絶縁性の膜を形成することにより、当該プリント基板2の裏面側の膜厚t1の伝送線路層21を形成する。絶縁性の膜には、プリント基板2を構成する誘電体が使用される。その際に、裏面側の伝送線路11bも、伝送線路層21の上方に線幅W1の線路22を形成することで得られる。裏面側の伝送線路11bは、基板2’の裏面のコンタクトホール12に接続する。これにより、表面側の伝送線路11bが基板2’の表面からコンタクトホール12を経由して基板2’の裏面に至り、裏面側の伝送線路11bに接続される。
【0086】
また、裏面側の伝送線路11bの先端を導波管23b内に挿入するように配置し、その導波管23bの中心位置から距離D3だけ長くなるように伝送線路11b(線路22)をパターニングする。このパターニングによって、導波管23b内に入り込む(挿入する)ように配置された線路22から構成される信号変換部36を形成できるようになる。導波管23b内で信号変換部36が電磁波をミリ波信号に変換するようになる。
【0087】
その後、基板2’の四隅に1個の馬蹄形状の貫通穴26と、3個の馬蹄形状の貫通穴26’とを第1のプリント基板1と同様にして開口する。貫通穴26は固定材13の嵌合に用いられ、貫通穴26’は他の3個の固定材3の嵌合に用いられる。基板2’には、伝送線路11b及びアンテナ結合部101の他に、信号処理部6及び信号生成部10bを実装する。
【0088】
信号処理部6には、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを伸長するような信号処理用のIC装置が使用される。信号生成部10bには、ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する信号生成用のIC装置が使用される。この例では、信号処理部6及び信号生成部10bを基板2’の所定の位置にボンディングすることで、信号処理部6と信号生成部10bとを10本の電気配線8bにより接続される。これにより、プリント基板1から伝送されてきたミリ波の信号を映画映像や、コンピュータ画像等のデータに変換するプリント基板2が得られる。
【0089】
上述のプリント基板1及びプリント基板2が準備できたら、図7に示すプリント基板1とプリント基板2との間に所定の誘電率を有した固定材13を配設し、当該固定材13で誘電体伝送路を形成すると共にプリント基板1及びプリント基板2を支持する。固定材3及び固定材13には、その両端にC形状の切り欠き部37を有するように、例えば、所定の誘電率の樹脂を射出金型成形したものを使用する。
【0090】
誘電体伝送路終端部30及び固定材終端止め部30’には、図3で説明した形状に、例えば、所定の誘電率の樹脂を射出金型成形したものに金属メッキを施したものを使用する。もちろん、金属棒を蓋体状に加工し、その後、その内面側に雌ネジ加工を施したものを使用してもよい。
【0091】
この例では、プリント基板2上の3本の固定材3及び1本の固定材13を、プリント基板2下の3個の固定材終端部止め部30’及び誘電体伝送路終端部30と、プリント基板1上の3個の固定材終端部止め部30’及び誘電体伝送路終端部30とで係合する。
【0092】
例えば、3個の固定材3をプリント基板2の3個の貫通穴26’に表面側から嵌合し、その裏面側で、3個の固定材終端部止め部30’で各々を固定する。更に、1個の固定材13をプリント基板2の1個のアンテナ結合部102を構成する貫通穴26に表面側から嵌合し、その裏面側で、1個の誘電体伝送路終端部30で固定する。これにより、4個の固定材3,13をプリント基板2に取り付けることができる。
【0093】
また、プリント基板2上の3個の固定材3をプリント基板1の3個の貫通穴26’に裏面側から嵌合し、その表面側で、3個の固定材終端部止め部30’で各々を固定する。更に、1個の固定材13をプリント基板1の1個のアンテナ結合部101を構成する貫通穴26に裏面側から嵌合し、その表面側で、1個の誘電体伝送路終端部30で固定する。これにより、プリント基板2上の4個の固定材3,13をプリント基板1に取り付けることができ、ミリ波誘電体内伝送装置100が完成する。
【0094】
このようにプリント基板2上の3つの固定材3と1個の固定材13でプリント基板1を支持するようにミリ波誘電体内伝送装置100を形成すると、固定材13が誘電体伝送路を構成すると共に、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端から受信したミリ波の信号に基づく電磁波を他端に伝送可能なミリ波誘電体内伝送装置100を製造できるようになった。
【0095】
続いて、一般的なプラスティック素材から成る固定材13をミリ波誘電体内伝送装置100に適用した場合について、その通過特性(損失の大小)及び反射特性をCST社MW−STUDIOによるシミュレーションに基づいて説明する。図8はミリ波誘電体内伝送装置100のシミュレーションモデル例を示す斜視図である。固定材13としては、一般的なプラスティック素材を想定しているが、プラスティック素材には、ガラスエポキシ系、アクリル系及びポリエチレン系の樹脂材料が含まれる。
【0096】
なお、導電層20及び伝送線路層21を除く、プリント基板1の絶縁層1a、導電層20、導電層25に関しては、特性に大きな影響を与えないものとしてシミュレーションモデルから省略している。固定材13、プリント基板2及び誘電体伝送路終端部30は、便宜上、透視(スケルトン)表示している。
【0097】
図8に示すミリ波誘電体内伝送装置100のシミュレーションモデル例によれば、アンテナ結合部101とアンテナ結合部102とが固定材13により接続されて構成される。アンテナ結合部101には、図1及び図3に示した導波管23a及び信号変換部36を有したモデルが使用される。信号変換部36は、固定材13内でミリ波の信号を電磁波に変換して輻射する。導波管23aは、プリント基板2に開口された貫通穴26の内側に馬蹄形状を有したモデルが使用される。
【0098】
固定材13は導波管23aの外周部に開口された貫通穴26に組み込まれ、当該プリント基板1と固定材13の一端とを誘電体伝送路終端部30を介して固定するようにモデル化される。固定材13の一端を固定する誘電体伝送路終端部30は、伝送線路11aが導波管23aを横切る部位に隙間部33を有したモデルが使用される。このような隙間部33を設けると、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端と伝送線路11aとの接触を避けること、及び、その固定材13の他端と伝送線路11aとの接触を避けることが可能となる。
【0099】
アンテナ結合部101は、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端で、ミリ波の信号を電磁波に変換して固定材13に輻射するようにシミュレーションされる。例えば、アンテナ結合部101は誘電体伝送路終端部30を有しており、信号変換部36によってミリ波の信号に変換され電磁波であって、固定材13の一端に供給されなかった電磁波を反射すると共に、固定材13の一端をプリント基板1に固定するようになされる。
【0100】
アンテナ結合部102には、第2の導波管23b及び第2の信号変換部36を有したものが適用される。アンテナ結合部102の信号変換部36は、固定材13内を伝搬してきた電磁波をミリ波の信号に変換する。導波管23bは、プリント基板2に開口された貫通穴26の内側に馬蹄形状を有して形成される(図2参照)。
【0101】
アンテナ結合部102は、誘電体伝送路を構成する固定材13の他端に伝搬した電磁波を信号変換部36によってミリ波の信号に変換し、当該ミリ波の信号を導波管23bを経由して伝送線路11bへ伝送すると共に、導波管23bを形成する貫通穴26によって当該プリント基板2と固定材13の他端とを固定するようなシミュレーションモデルである。
【0102】
例えば、アンテナ結合部102は第2の固定手段の一例を構成する誘電体伝送路終端部30を有しており、固定材13の他端に伝搬した電磁波であって、信号変換部36によってミリ波の信号に変換されなかった電磁波を反射すると共に、固定材13の他端をプリント基板2に固定するようになされる。
【0103】
固定材13の他端を固定する誘電体伝送路終端部30は、伝送線路11bが導波管23bを横切る部位に図示しない第2の隙間部を有している(図2(B)参照)。このような隙間部を設けると、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端と伝送線路11bとの接触を避けること、及び、その固定材13の他端と伝送線路11bとの接触を避けることが可能となる。これにより、ミリ波誘電体内伝送装置100のシミュレーションモデルを構成する。
【0104】
続いて、図8に示したミリ波誘電体内伝送装置100のシミュレーションモデルに与えるパラメータについて説明する。そのシミュレーション時のパラメータは次の通りである。プリント基板1やプリント基板2の厚み(以下単に基板の厚みtという)は1.0mmである。導波管23aの直径D1は2.5mmである。伝送線路層21等の膜厚t1は0.1mmである。プリント基板1と天井面IIとの距離D2は1.25mmである。隙間部33の開口幅W2は0.8mmである。線路22の線幅W1は0.2mmである。導波管23aの中心位置から線路22の端部に至る距離D3は0.9mmである。プリント基板1とプリント基板2との離隔距離を基板間距離D4とすると、基板間距離D4は20mmである。
【0105】
固定材13の直径をD5とすると、直径D5は4.0mmである。プリント基板1やプリント基板2の比誘電率εrは3.5である。プリント基板1やプリント基板2の誘電正接tanδは0.005である。δは誘電体の損失角である。固定材13の比誘電率εrは3.0である。固定材13の誘電正接tanδは0.003である。上述のシミュレーション時のパラメータ値をまとめると表1のようになる。
【0106】
【表1】

【0107】
図9は、ミリ波誘電体内伝送装置100のシミュレーション特性例を示すグラフ図である。図9に示すシミュレーション特性例によれば、図8に示したプリント基板1の線路22や、プリント基板2の線路22上に与えられる各ポート301間の通過特性例及び反射特性例を示している。
【0108】
図9において、縦軸は通過特性S(2,1)dBと反射特性S(1,1)dBである。横軸は搬送周波数(GHz)であり、目盛りは5GHz単位である。図中、Iaは通過特性例を示すものであって、伝送線路11a,11bをマイクロストリップラインにより構成し、アンテナ結合部101を導波管23aにより構成し、アンテナ結合部102を導波管23bにより構成した場合の固定材13の通過特性例及び反射特性例を示す周波数特性図である。
【0109】
固定材13の通過特性S(2,1)dBは、誘電正接がtanδ=0.005のプリント基板1の伝送線路11aから、誘電正接がtanδ=0.003の固定材13を介して、同誘電正接tanδ=0.005のプリント基板2の伝送線路11bへ伝送されるミリ波の信号Sの通過特性である。通過特性S(2,1)dBは、搬送周波数を50GHzから70GHzに至り、1GHzずつ増加した場合である。このシミュレーション結果によれば、ミリ波の信号Sに基づく映像データは、ポート301間において、搬送周波数が58.7GHzの場合に通過損失が約7.4dBである。
【0110】
また、図中、IIaは固定材13の反射特性例を示すものであって、固定材13の反射特性S(1,1)dBは、誘電正接がtanδ=0.005のプリント基板1の伝送線路11aから、誘電正接がtanδ=0.003の固定材13を介して、同誘電正接tanδ=0.005のプリント基板2の伝送線路11bへ伝送されるミリ波の信号Sの反射特性である。
【0111】
反射特性S(1,1)dBは、搬送周波数を50GHzから70GHzに至り、1GHzずつ増加した場合である。このシミュレーション結果によれば、反射損失は−15dB以下を実現している。また、搬送周波数が55.0GHz〜62.5GHzの範囲で、反射損失が−10dB以下となっている。
【0112】
このような損失の大きい固定材13では、搬送周波数が増加するに従って、伝送損失が増加し、反射波は減衰して行くので、反射波による定在波の悪影響も低減できるようになる。この例では、周波数変換回路203,209で入力信号Sinをミリ波の信号Sへ周波数変換することで、(信号帯域)/(中心周波数)の比を小さくできるようになるので、ミリ波の信号送信用の信号生成部10a及び、ミリ波の信号受信用の信号生成部10bも構成し易くなる。
【0113】
このように第1の実施例のミリ波誘電体内伝送装置100及びその製造方法によれば、信号生成部10a及びアンテナ結合部101を有して、ミリ波の信号Sを処理するプリント基板1と、アンテナ結合部102及び信号生成部10bを有してミリ波の信号Sを受信し信号処理するプリント基板2との間に所定の誘電率を有して配設された固定材13を備え、固定材13が誘電体伝送路を構成すると共に、当該固定材13が、他の3個の固定材3と共にプリント基板1及びプリント基板2を支持するものである。
【0114】
この構造によって、誘電体伝送路を構成する固定材13の一端から輻射したミリ波の信号Sに基づく電磁波S’を他端で受信できるようになる。従って、固定材13の本来の支持構造体を信号伝送経路として兼用できるので、従来方式のようなプリント基板1とプリント基板2とを接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるようになった。しかも、プリント基板1,2間の支持と、高速データ伝送とが同一の支持部材である固定材13によって行われる。固定材13における高速データ伝送は、ミリ波(電磁波)により行われるため、誘電体伝送路を構成する固定材13は単一の素材で済む。従って、光導波路のように精度を要求するような加工は不要となる。
【0115】
また、アンテナ結合部101におけるプリント基板1と固定材13との固定に際しては、光伝送方式の適用時に要求されるような、データ伝送を安定して行うための位置合わせの厳密性が要求されない。ミリ波誘電体内伝送装置100によれば、簡単かつ安価な構成で、プリント基板1,2間の支持、および高速データ伝送を実現できることから、振動やずれ等に対するデータ伝送の信頼性を高くすることができる。
【0116】
<第2の実施例>
図10は、第2の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置200の構成例を示す斜視図である。この例では、プリント基板1,2等の四隅(複数)に配置された固定材131〜134でミリ波の信号Sを並列(パラレル)に伝送するようになされる(バス構成)。
【0117】
図10に示すミリ波誘電体内伝送装置200は、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを複数のミリ波の信号Sに変換して高速に伝送するミリ波映像データ伝送装置やミリ波映像データ伝送システム等に適用可能なものであり、ミリ波の信号を搬送する搬送周波数が30GHz乃至300GHzとなるものである。
【0118】
この例では、第1の実施例で説明した誘電体伝送路を構成する固定材13が、プリント基板1とプリント基板2との間に4個配設される。以下、4個の固定材を固定材131〜134という。各々の固定材131〜134がプリント基板1及びプリント基板2を支持する共に、各々の固定材131〜134がミリ波の信号Sを伝送する。固定材131〜134は、プリント基板1とプリント基板2との間に所定の誘電率を有して配設されている。
【0119】
固定材131〜134には、少なくとも、ガラスエポキシ系、アクリル系、ポリエチレン系の樹脂から成る誘電体素材が使用される。このようにミリ波誘電体内伝送装置200を構成すると、第1の実施例に比べてミリ波の信号Sに基づく映像データの伝送容量を4倍に増加させることができる。
【0120】
プリント基板1は、信号処理部5、信号生成部10c、4系統のアンテナ結合部101,103,105,107、4本の伝送線路111,113,115,117を実装して構成される。信号処理部5は第1の実施例と同様にして、映画映像や、コンピュータ画像等のデータに所定の規格に基づく圧縮等の処理を施して電気信号(以下入力信号という)を出力する。
【0121】
信号処理部5は配線パターン等の電気配線8aに接続される。電気配線8aは信号生成部10cに接続される。信号生成部10cは第1の実施例と異なり、入力信号を信号処理して複数(この例では4系統)のミリ波の信号を生成する。信号生成部10cには、例えば、第1の実施例で説明した信号生成部10aを4系統並設して構成される。
【0122】
この例で、信号生成部10cから4本の伝送線路111,113,115,117が引き出される。伝送線路111,113,115,117にはプリント基板1上において、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の方式が適用される。
【0123】
伝送線路111はプリント基板1の第1の隅部(コーナ)に配設される。伝送線路111は、信号生成部10cで第1系統を構成する信号生成部10aとアンテナ結合部101との間に接合される。アンテナ結合部101には固定材131が接続される。アンテナ結合部101は、信号生成部10cから伝送線路111を介して伝送されてくるミリ波の信号を固定材131の一端に結合する。この例でも、アンテナ結合部101は、ミリ波の信号を電磁波に変換して、誘電体伝送路を構成する固定材131内に当該電磁波を輻射する。
【0124】
固定材131は、誘電体伝送路を構成すると共に他の3つの固定材132〜134と共にプリント基板1及びプリント基板2を支持する。この支持機能によれば、第1の実施例と同様にして、プリント基板2がプリント基板1を捧げて支持する場合、及び、プリント基板1がプリント基板2を吊り下げて支持する場合を含むものである。
【0125】
また、伝送線路113はプリント基板1の第2の隅部に配設される。伝送線路113は、第2系統のアンテナ結合部103に接合される。伝送線路113は、信号生成部10cで第2系統を構成する信号生成部10aとアンテナ結合部103との間に接合される。アンテナ結合部103には固定材132が接続される。アンテナ結合部103は、信号生成部10cから伝送線路113を介して伝送されてくるミリ波の信号を固定材132の一端に結合する。
【0126】
この例でも、アンテナ結合部103は、ミリ波の信号を電磁波に変換して、誘電体伝送路を構成する固定材132内に当該電磁波を輻射する。固定材132は、誘電体伝送路を構成すると共に他の3つの固定材131,133,134と共にプリント基板1及びプリント基板2を支持する。
【0127】
更に、伝送線路115はプリント基板1の第3の隅部に配設される。伝送線路115は、第3系統のアンテナ結合部105に接合される。伝送線路115は、信号生成部10cで第3系統を構成する信号生成部10aとアンテナ結合部105との間に接合される。アンテナ結合部105には固定材133が接続される。アンテナ結合部105は、信号生成部10cから伝送線路115を介して伝送されてくるミリ波の信号を固定材133の一端に結合する。
【0128】
この例でも、アンテナ結合部105は、ミリ波の信号を電磁波に変換して、誘電体伝送路を構成する固定材133内に当該電磁波を輻射する。固定材133は、誘電体伝送路を構成すると共に他の3つの固定材131,132,134と共にプリント基板1及びプリント基板2を支持する。
【0129】
また、伝送線路117はプリント基板1の第4の隅部に配設される。伝送線路117は、第4系統のアンテナ結合部107に接合される。伝送線路117は、信号生成部10cで第4系統を構成する信号生成部10aとアンテナ結合部107との間に接合される。アンテナ結合部107には固定材134が接続される。アンテナ結合部107は、信号生成部10cから伝送線路117を介して伝送されてくるミリ波の信号を固定材134の一端に結合する。
【0130】
この例でも、アンテナ結合部107は、ミリ波の信号を電磁波に変換して、誘電体伝送路を構成する固定材134内に当該電磁波を輻射する。固定材134は、誘電体伝送路を構成すると共に他の3つの固定材131〜133と共にプリント基板1及びプリント基板2を支持する。
【0131】
一方、4系統のミリ波の信号を受信して信号処理するプリント基板2は、4系統のアンテナ結合部102,104,106,108、4本の伝送線路112,114,116,118、信号生成部10d及び信号処理部6を実装して構成される。この例で、4系統のアンテナ結合部102,104,106,108から引き出された4本の伝送線路112,114,116,118は信号生成部10dに接続される。伝送線路112,114,116,118にはプリント基板2の表裏において、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の方式が適用される。
【0132】
上述の固定材131の他端は、プリント基板2の第1の隅部に設けられたアンテナ結合部102に接合される。アンテナ結合部102は、固定材131から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路112を通じて信号生成部10dに出力される。固定材132の他端は、プリント基板2の第2の隅部に設けられたアンテナ結合部104に接合される。アンテナ結合部104は、固定材132から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路114を通じて信号生成部10dに出力される。
【0133】
また、固定材133の他端は、プリント基板2の第3の隅部に設けられたアンテナ結合部106に接合される。アンテナ結合部106は、固定材133から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路116を通じて信号生成部10dに出力される。固定材134の他端はプリント基板2の第4の隅部に設けられたアンテナ結合部108に接合される。アンテナ結合部108は、固定材134から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路118を通じて信号生成部10dに出力される。
【0134】
信号生成部10dは、第1の実施例と異なり、4系統のアンテナ結合部102,104,106,108によって受信した個々のミリ波の信号を4本の伝送線路112,114,116,118を介して入力し、伝送線路112,114,116,118を介して入力された4系統のミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する。信号生成部10dには、例えば、第1の実施例で説明した信号生成部10bを4系統並設して構成される。
【0135】
信号生成部10dには、配線パターン等の電気配線8bを介して信号処理部6が接続される。信号処理部6は信号生成部10dから得られる出力信号を所定の規格に基づく伸張等の処理を施して映画映像や、コンピュータ画像等のデータを得るようになされる。これらにより、ミリ波誘電体内伝送装置200を構成する。なお、ミリ波誘電体内伝送装置200の形成例については、図5〜図7に示したミリ波誘電体内伝送装置100の形成例(その1〜3)において、符号を読み替えて適用できるので、その説明を省略する。
【0136】
このように、第2の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置200によれば、プリント基板1,2の四隅に、固定材131〜134から構成された4系統の信号伝送路を設けている。上述した下りミリ波のデータ伝送路において、プリント基板1の信号処理部5→信号生成部10c→伝送線路111→アンテナ結合部101→固定材131→アンテナ結合部102→伝送線路112→信号生成部10d→信号処理部6を経由してミリ波の信号を媒体とした第1のデータ伝送が実現される。
【0137】
同様にして、プリント基板1の信号処理部5→信号生成部10c→伝送線路113→アンテナ結合部103→固定材132→アンテナ結合部104→伝送線路114→信号生成部10d→信号処理部6を経由してミリ波の信号を媒体とした第2のデータ伝送が実現される。プリント基板1の信号処理部5→信号生成部10c→伝送線路115→アンテナ結合部105→固定材133→アンテナ結合部106→伝送線路116→信号生成部10d→信号処理部6を経由してミリ波の信号を媒体とした第3のデータ伝送が実現される。
【0138】
プリント基板1の信号処理部5→信号生成部10c→伝送線路117→アンテナ結合部107→固定材134→アンテナ結合部108→伝送線路118→信号生成部10d→信号処理部6を経由してミリ波の信号を媒体とした第4のデータ伝送が実現される。上述の第1〜第4のデータ伝送が実現できるので、ミリ波の信号に基づく映像データ等の伝送容量を第1の実施例に比べて4倍に増加できるようになった。
【0139】
<第3の実施例>
図11は、第3の実施例としての多段構造型のミリ波誘電体内伝送装置300の構成例を示す斜視図である。この例では、第1の実施例で説明したミリ波誘電体内伝送装置100(基本構成)に対して、プリント基板1の上部に第3のプリント基板14が固定され、当該プリント基板14上の信号処理部15と、プリント基板1下のプリント基板2上の信号処理部6との間で、誘電体伝送路を構成する固定材16を介在したデータ伝送を実現できるようにした。
【0140】
図11に示す多段構造型のミリ波誘電体内伝送装置300は、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを複数のミリ波の信号Sに変換して高速に伝送するミリ波映像データ伝送装置やミリ波映像データ伝送システム等に適用可能なものであり、ミリ波の信号を搬送する搬送周波数が30GHz乃至300GHzとなるものである。
【0141】
この例では、プリント基板1の上方(外側)に1枚の第3の信号処理基板(以下、プリント基板14という)が配設される。プリント基板14は、プリント基板1とプリント基板2との間に配設された第1の固定材13と異なる第2の固定材としての固定材16が誘電体伝送路を構成する。固定材16は、ミリ波の信号を伝送すると共に、当該固定材16が他の固定材3,17等と協働してプリント基板1上のプリント基板14を支持する。
【0142】
プリント基板14は映画映像や、コンピュータ画像等のデータをミリ波の信号に変換する基板である。プリント基板14の大きさは、第1の実施例と同様にして、長さがLで、幅がWで、厚さがtである。プリント基板14は、例えば、信号処理部15、信号生成部10a、伝送線路113及びアンテナ結合部103を有して構成される。
【0143】
信号処理部15は映画映像や、コンピュータ画像等のデータに所定の規格に基づく圧縮等の処理を施して電気信号(以下入力信号という)を出力する。信号処理部15は配線パターン等の電気配線8cに接続される。電気配線8cは信号生成部10aに接続される。信号生成部10aは、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。
【0144】
信号生成部10aは伝送線路113の一端に接続される。伝送線路113は、信号生成部10aとアンテナ結合部103との間に電気的に接続されてミリ波の信号を伝送する。この例では、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを構成するミリ波の信号を電気的に伝送する。伝送線路113には、プリント基板14上において、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の方式が適用される。
【0145】
伝送線路113の他端にはアンテナ結合部103が結合(配置)される。アンテナ結合部103は、信号生成部10aから伝送線路113を介して伝送されてくるミリ波の信号を固定材16の一端に結合する。この例で、アンテナ結合部103は、ミリ波の信号を電磁波に変換して、誘電体伝送路を構成する固定材16内に当該電磁波を輻射する。アンテナ結合部103は、双方向データ伝送時には、信号生成部10aに接続された伝送線路11aと、誘電体伝送路を構成する固定材16との間でミリ波の映像データ等を伝達する。
【0146】
固定材16は、プリント基板14とプリント基板2との間に所定の誘電率を有して配設されている。固定材16には、少なくとも、ガラスエポキシ系、アクリル系、ポリエチレン系の樹脂から成る誘電体素材が使用される。この例では、2個の固定材3及び1個の固定材17が1個の固定材16と共にプリント基板1,14のそれぞれの四隅に分担して配設される。固定材16は通常支持用の固定材3,17の配設位置以外のプリント基板1,14の隅部位に配設されている。
【0147】
固定材16は、誘電体伝送路を構成する固定材13と共に、他の固定材3,17と共にプリント基板1、プリント基板2及びプリント基板14を支持する。この支持機能によれば、プリント基板2がプリント基板1及びプリント基板14を捧げて支持する場合、及び、プリント基板14がプリント基板1及びプリント基板2を吊り下げて支持する場合を含むものである。
【0148】
この支持機構では、プリント基板14とプリント基板1とプリント基板2とが所定の方向に組み合わされ、プリント基板14、プリント基板1及びプリント基板2が略平行な姿勢を保って、例えば、プリント基板14、プリント基板1及びプリント基板2を垂直方向に連結するように、固定材3,13,16,17が固定される。
【0149】
このようにミリ波誘電体内伝送装置300を構成すると、プリント基板14、プリント基板1及びプリント基板2を固定材3,13,16,17を介して垂直方向に棚状に積み重ねて固定できるようになる。なお、固定材3,13,16,17には、例えば、円柱状に成形され、先端に雄ネジ構造を有する樹脂棒部材が使用される。もちろん、固定材13,16以外の固定材3,17には所定形状を有した金属棒部材を使用してもよい。
【0150】
上述のプリント基板14からミリ波の信号に基づく電磁波を受信するプリント基板2は、2系統のアンテナ結合部102,104、2本の伝送線路112,114、信号生成部10e及び信号処理部6を実装して構成され、プリント基板1からミリ波の信号に基づく電磁波を受信して、合計2系統のミリ波の信号を受信して信号処理する。この例で、2系統のアンテナ結合部102,104から引き出された2本の伝送線路112,114は信号生成部10eに接続される。伝送線路112,114にはプリント基板2の表裏において、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の方式が適用される。
【0151】
上述の固定材13の他端は、プリント基板2の第1の隅部に設けられたアンテナ結合部102に接合される。アンテナ結合部102は、プリント基板1に接続された固定材13から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路112を通じて信号生成部10eに出力される。固定材16の他端は、プリント基板2の第2の隅部に設けられたアンテナ結合部104に接合される。アンテナ結合部104は、固定材16から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路114を通じて信号生成部10eに出力される。
【0152】
信号生成部10eは、第1及び第2の実施例と異なり、2系統のアンテナ結合部102,104によって受信した個々のミリ波の信号を2本の伝送線路112,114を介して入力し、伝送線路112,114を介して入力された2系統のミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する。信号生成部10eには、例えば、第1の実施例で説明した信号生成部10bを2系統並設して構成される。
【0153】
信号生成部10eには、配線パターン等の電気配線8bを介して信号処理部6が接続される。信号処理部6は信号生成部10eから得られる出力信号を所定の規格に基づく伸張等の処理を施して映画映像や、コンピュータ画像等のデータを得るようになされる。
【0154】
上述のプリント基板14の下方には、第1の実施例で説明したようなプリント基板1が配設されている。プリント基板1は、信号処理部5、信号生成部10a及び伝送線路11aが実装されて構成されているが、伝送線路11aがアンテナ結合部109に接合される点で構造が異なっている。
【0155】
図12は、プリント基板1のアンテナ結合部109の構成例を示す断面図である。図12に示すアンテナ結合部109によれば、図2及び図3で説明した固定材13の終端部に 取り付けられた誘電体伝送路終端部30の構成に対して、異なった構造の誘電体伝送路終端部34が取り付けられる。誘電体伝送路終端部34は、上部の雌ネジ構造35及び下部の雌ネジ構造32を有して上部の固定材17と下部の固定材13とを連結する部品連結機能を備える。誘電体伝送路終端部34には、誘電体伝送路終端部30の素材が使用され、その製造方法も同様である。
【0156】
この例では、固定材17の端部には雄ネジ構造38が施され、当該雄ネジ構造38に対応して形成された誘電体伝送路終端部34の上部の雌ネジ構造35と、当該固定材17の雄ネジ構造38とでネジ止め連結される。誘電体伝送路終端部34の下部の雌ネジ構造32については、誘電体伝送路終端部30の構成及び機能と同様となるためその説明を省略する(図2(B)参照)。
【0157】
なお、プリント基板1における誘電体伝送路を構成する固定材16同士の連結については、プリント基板1に形成された貫通穴4を介して汎用的なネジ構造により固定するようになされる。もちろん、誘電体伝送路終端部34の部品連結機能を適用してもよい。これらにより、ミリ波誘電体内伝送装置300を構成する。
【0158】
このミリ波誘電体内伝送装置300の固定材16及び17の組み立てを除く形成例については、図5〜図7に示したミリ波誘電体内伝送装置100の形成例(その1〜3)において、符号を読み替えて適用できるので、その説明を省略する。
【0159】
このように、第3の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置300によれば、プリント基板1の上方(外側)にプリント基板14が配設される。プリント基板14は、プリント基板1とプリント基板2との間に配設された固定材13と、異なる固定材16が誘電体伝送路を構成する。固定材16は、ミリ波の信号を伝送すると共に、当該固定材16が他の固定材3,17等と協働してプリント基板1上のプリント基板14を支持する。
【0160】
従って、誘電体伝送路を構成する固定材13及び固定材16を介して複数の信号処理基板間でミリ波の信号を送受信しながら、ミリ波の信号を処理できるようになる。例えば、下りミリ波のデータ伝送路において、プリント基板1の信号処理部5→信号生成部10a→伝送線路11a→アンテナ結合部102→固定材13→アンテナ結合部102→伝送線路112→信号生成部10b→信号処理部6を経由して、ミリ波の信号を媒体とした第1系統のデータ伝送が実現される。
【0161】
また、プリント基板14の信号処理部15→信号生成部10a→伝送線路113→アンテナ結合部103→固定材16→アンテナ結合部104→伝送線路114→信号生成部10b→信号処理部6を経由して、ミリ波の信号を媒体とした第2系統のデータ伝送が実現される。しかも、筐体の形状に適した3次元構造を構成することが可能になる。これにより、3段構成のプリント基板1,2,14間で相互的なデータ伝送を実行することが可能となる。
【0162】
<第4の実施例>
図13は、第4の実施例としてのミリ波誘電体内伝送装置400の構成例を示す斜視図である。この実施例では、2つのプリント基板1,2間に誘電体伝送路を構成する固定材18と通常支持用の固定材19とを備え、固定材18及び19でプリント基板1,2を水平に支持するようにした。
【0163】
図13に示すミリ波誘電体内伝送装置400は、映画映像や、コンピュータ画像等のデータを複数のミリ波の信号Sに変換して高速に伝送するミリ波映像データ伝送装置やミリ波映像データ伝送システム等に適用可能なものであり、ミリ波の信号を搬送する搬送周波数が30GHz乃至300GHzとなるものである。
【0164】
ミリ波誘電体内伝送装置400は、扁平U形状の固定材18,19を有しており、プリント基板1とプリント基板2とが並設され、当該プリント基板1及びプリント基板2との間に固定材18,19が取り付けられ、略水平な状態を保ってプリント基板1,2を連結支持固定するようになされる。固定材18は扁平U形状を成し、プリント基板1とプリント基板2との間に所定の誘電率を有して配設されている。固定材18には、少なくとも、ガラスエポキシ系、アクリル系、ポリエチレン系の樹脂から成る誘電体素材が使用される。
【0165】
この例では、所定の高さを有した4個の固定材3及び1個の固定材19が1個の固定材18と共にプリント基板1,2の上部2隅、下部2隅、左右の連結部に分担して配設される。固定材18は通常支持用の固定材3,19の配設位置以外のプリント基板1,2の連結部位に配設されている。この例で固定材18はプリント基板1,2の連結部位の左側に配設されている。
【0166】
固定材19は、プリント基板1,2の連結部位の右側に配設されている。固定材19は、固定材18と同様な形状を有しているが、導波管23a等を有していない。つまり、プリント基板1の第4の隅部とプリント基板2の第3の隅部にはアンテナ結合部101が設けられていない。プリント基板1,2の上部2隅及び下部2隅の4個の固定材3は貫通穴4を介して汎用的なネジ構造により固定するようになされる。
【0167】
また、扁平U形状の固定材18,19によって連結されるプリント基板1は、信号処理部5、信号生成部10a及び伝送線路11aが実装されて構成され、伝送線路11aがアンテナ結合部101に接合される。これらの部材の機能及び形成方法は、第1の実施例で説明しているので、その説明を省略する。上述の固定材18の一端は、プリント基板1の第1の隅部に設けられたアンテナ結合部101に接合される。プリント基板1のアンテナ結合部101は、ミリ波の信号を電磁波に変換して固定材18内に輻射する。
【0168】
上述のプリント基板1からミリ波の信号に基づく電磁波を受信するプリント基板2は、アンテナ結合部101、伝送線路11b、信号生成部10b及び信号処理部6を実装して構成され、プリント基板1からミリ波の信号に基づく電磁波を受信して、ミリ波の信号を受信して信号処理する。伝送線路11a,11bには、プリント基板1,2の表面において、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の方式が適用される。
【0169】
固定材18の他端は、プリント基板2の第2の隅部に設けられたアンテナ結合部101に接合される。プリント基板2のアンテナ結合部101は、固定材18から電磁波を受信してミリ波の信号に変換する。ミリ波の信号は伝送線路11bを通じて信号生成部10bに出力される。なお、信号生成部10b及び信号処理部6の機能については、第1の実施例で説明しているので、その説明を省略する。
【0170】
図14は、アンテナ結合部101と固定材18との接合例を示す断面図である。この実施例において、アンテナ結合部101に接続される伝送線路11aにはマイクロストリップラインが適用される。図14に示すアンテナ結合部101はプリント基板1やプリント基板2等に備えられ、導波管23a、貫通穴26及び信号変換部36を有して構成される。
【0171】
導波管23a及び貫通穴26の形状は第1の実施例で説明した通りである。プリント基板1の側の導波管23aは、伝送線路11aにより電気的に伝送されたミリ波の信号を電 磁波に変換し、誘電体伝送路に伝送する。固定材18の端部は、誘電体伝送路終端部30でプリント基板1に固定するようになされる。なお、第1の実施例で説明した同じ符号のものは同じ機能を有し、その形成方法及び寸法等は、第1の実施例で説明しているので、その説明を省略する。
【0172】
図15は、固定材18及び誘電体伝送路終端部30の形状例を示す斜視図である。この例では、固定材18の端部の形状が、図14に示した貫通穴26に沿って貫通できる先端C型構造を成している。貫通穴26を貫通された固定材18の端部は、図15に示す誘電体伝送路終端部30と接合されることで、プリント基板1と固定材18とを固定するようになされる。プリント基板2と固定材18とについても同様に固定される。
【0173】
この例で、アンテナ結合部101における固定材18の先端形状も、図3で示した固定材13の先端形状と同等の構造を採るが、固定材18の誘電体伝送路は、固定材13のような円筒型の形状から、直方体型の形状に変更されている。固定材18の両先端部は、L状に折り曲げられた扁平U形状を有している。なお、誘電体伝送路終端部30の構成及びその取り付け方法については、固定材18の雄ネジ構造31に対応した雌ネジ構造32で固定する等、第1の実施例で説明しているのでその説明を省略する。
【0174】
この例でも、誘電体伝送路終端部30を固定材18に嵌合した際のプリント基板1と天井面IIとが成す距離をD2としたとき、空気中のミリ波の信号の波長λの4分の1に距離D2を設定し、電磁波が強められるように距離D2を調整することによって、効率良くミリ波の信号を電磁波に変換できるようになっている。
【0175】
この例では、第1の実施例のように電磁波を垂直方向ではなく、扁平U形状の誘電体伝送路内を水平方向に伝搬させる構造を採ることから、信号変換部36の直下に反射器を設けてもよい。反射器は電磁波を固定材18に輻射する方向又は電磁波が進行する水平方向に対して45°に設定し、電磁波を全反射させて伝搬方向を90°曲げるようにするとよい。
【0176】
このようにミリ波誘電体内伝送装置400を構成すると、誘電体伝送路を構成する固定材18内にミリ波の信号に基づく電磁波を封じ込めることができる。また、誘電体伝送路を構成する固定材18の一端でミリ波の信号を電磁波に変換できるようになり、固定材18の他端で、電磁波をミリ波の信号に変換できるようになる。なお、ミリ波誘電体内伝送装置400の固定材18及び19の組み立てを除く形成例については、図5〜図7に示したミリ波誘電体内伝送装置100の形成例(その1〜3)において、その説明をした通りである。
【0177】
このように第4の実施例としてミリ波誘電体内伝送装置400によれば、2つのプリント基板1,2間に誘電体伝送路を構成する扁平U形状の固定材18と通常支持用の固定材19とを備え、固定材18及び19でプリント基板1,2を連結支持固定するようにした。
【0178】
従って、プリント基板1及びプリント基板2を固定材18,19を介して水平方向(二次元平面的)に拡張できるようになる。しかも、誘電体伝送路を構成する固定材18の一端から輻射したミリ波の信号Sに基づく電磁波を他端で受信できるようになる。これにより、従来方式のようなプリント基板1とプリント基板2とを接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるようになった。しかも、プリント基板1,2間の支持と、高速データ伝送とが同一の機材である固定材18によって行われる。固定材18における高速データ伝送は、ミリ波(電磁波)により行われるため、誘電体伝送路を構成する固定材18は単一の素材で済む。従って、光導波路のように精度を要求するような加工は不要となる。
【0179】
また、アンテナ結合部101におけるプリント基板1と固定材18との固定に際しては、光伝送方式の適用時に要求されるような、データ伝送を安定して行うための位置合わせの厳密性が要求されない。ミリ波誘電体内伝送装置400によれば、簡単かつ安価な構成で、プリント基板1,2間の支持、および高速データ伝送を実現できることから、振動やずれ等に対するデータ伝送の信頼性を高くすることができる。
【0180】
<第5の実施例>
図16〜図19は、第5の実施例を説明する図である。ここで、図16は、第5の実施例としての無線伝送装置500の構成例を示す斜視図である。図17は、第5の実施例におけるアンテナ結合部と導波管の詳細を説明する図である。図18は、第5の実施例のシミュレーション特性例を説明する図である。図19は、アンテナ構造(特にアンテナパターン)の変形例を説明する図である。
【0181】
第5の実施例は、伝送対象信号(ベースバンド信号)をより周波数の高い高周波信号に変換するに当たり、その周波数帯をミリ波帯に限定しない無線伝送の仕組みのものである。たとえば、ミリ波帯に限らずマイクロ波帯での適用も考えられる。また、第5の実施例は、送信側や受信側の回路基板を支持する支持部材としては、誘電体素材で構成されたのものに限定しない無線伝送の仕組みのものである。図16では第1の実施例に対する変形例で示すが、第5の実施例の手法は、第2〜第4の実施例に対しても適用可能である。以下、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0182】
[全体構成]
図16に示すように、無線伝送装置500は、第1の実施例のミリ波誘電体内伝送装置100における誘電体伝送路兼用の支持部材の一例である固定材13を、無線信号伝送路兼用の支持部材の一例である導波管513に置き換えている。また、アンテナ結合部101をアンテナ結合部501に、アンテナ結合部102をアンテナ結合部502に、それぞれ置き換えている。アンテナ結合部501,502は、プリント基板1,2上に配設された誘電体基板510と、誘電体基板510に形成されたアンテナパターン(後述する)などで構成されている。
【0183】
アンテナ結合部501とアンテナ結合部502は、プリント基板1,2の対向面に対して対称な構造となるように、それぞれの誘電体基板510が、プリント基板1,2上のプリント基板1とプリント基板2が対向する側の面上に配置されている。
【0184】
たとえば、プリント基板1においては、アンテナ結合部501は無線信号伝送路を構成する導波管513と信号結合され、導波管513を介して電磁波を送受信する。プリント基板1のプリント基板2と対向する側の面(背面)上に配置された誘電体基板510_1には、伝送線路11aの一端が結合(配置)される。この例では、伝送線路11aは、プリント基板1の背面に配置され、このプリント基板1の背面の伝送線路11aと、プリント基板1の表面の信号生成部10aとは、コンタクトホール12(ビアホール)を介して配線される。
【0185】
一方、プリント基板2においては、アンテナ結合部502は無線信号伝送路を構成する導波管513と信号結合され、導波管513を介して電磁波を送受信する。プリント基板2のプリント基板1と対向する側の面(表面)上に配置された誘電体基板510_2には、伝送線路11bの一端が結合(配置)される。この例では、伝送線路11bは、プリント基板1の表面に配置され、このプリント基板2の表面の伝送線路11bと、プリント基板2の表面の信号生成部10bとが接続される。
【0186】
導波管513は、プリント基板1とプリント基板2との間の、通常支持用の固定材3の配設位置以外の隅部位に配設されている。波管513は、後述するアンテナパターンを囲む形で、たとえば誘電体基板510と接着されることで、それらの相対位置が固定される。導波管513は、図では、円柱状で示しているが、これは一例に過ぎず、その断面形状は円に限らず四角や他の角形や楕円形などでもよい。導波管513は、無線信号伝送路を構成すると共に他の3つの固定材3と共にプリント基板1とプリント基板2を支持する。
【0187】
導波管513内は、中空(つまり内部に空気が存在する)でもよい。つまり、導波管513は、無線信号伝送路(たとえばミリ波信号伝送路)を構成し、かつ、無線信号(電波)の外部放射を抑える遮蔽材(たとえば金属材料)が伝送路を囲むように設けられ、遮蔽材の内部の伝送路が中空(空洞)の中空導波路(中空導波管)にしてもよい。
【0188】
また、導波管513内は、誘電体素材を詰めることも考えられる。誘電体素材を詰めることで、導波管内の多重反射を抑制することができるし、導波管の断面サイズ(管径)を小さくすることもできる。たとえば、導波管513が円形導波管であるとした場合、詰め込む誘電体の比誘電率をεとすると、その導波管径は中空の場合に対して約1/√ε倍に小型化できる。また、送(受)信ポートの不整合による反射成分が導波管内で多重反射して、送(受)信ポートに悪影響を与えることがある。ここで、導波管内が空気の場合、通過損失が殆どないので、多重反射しても電力レベルが減衰せず悪影響が大きい。これに対して、損失のある誘電体を詰め込むと、反射波の電力レベルが減衰していくので悪影響が抑えられる。
【0189】
導波管513は誘電体素材を詰める場合であっても、好ましくはその周縁部材を遮蔽材(たとえば金属材料)にすることが望ましい。要するに、電磁波の信号を伝送する信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、電磁波を伝送路中に閉じ込めつつ電磁波を伝送させる構造を持つものがよい。なお、誘電体素材を詰め込んで誘電体挿入の導波管513を作る場合は、金属素材の筒状部材内に誘電体を詰め込むことも考えられるし、誘電体素材の外周を覆うように金属素材の薄膜を被覆する表面処理(金属メッキと称する)を施すことも考えられる。誘電体素材の外周に金属メッキを施す構造では、小型化に加えて、金属材の筐体内に誘電体を詰め込む場合よりも軽量化ができる。一方、金属材の筒状部材内を誘電体素材で詰める構造では金属メッキの場合よりも強度を増すことができる。
【0190】
[電磁波結合構造]
図17には、アンテナ結合部501,502と導波管513で構成される電磁波結合構造の詳細が示されている。図17(1)は全体図であり、図17(2)はその側断面図である。図17(3)はプリント基板1,2と誘電体基板510に着目した断面図である。図17(4)はアンテナパターンを説明する図である。
【0191】
電磁波結合構造は、プリント基板1側のアンテナ結合部501の一部をなす誘電体基板510_1とプリント基板2側のアンテナ結合部502の一部をなす誘電体基板510_2と、両者の間に介在し電波が伝播する伝送路(導波路)を構成する導波管513を備える。
【0192】
図16にて説明したように、誘電体基板510_1はプリント基板1の背面上に配置され、誘電体基板510_2はプリント基板2の表面上に配置されている。プリント基板1,2には、図示を割愛した信号生成部10と電気的に接続された線路の一例である伝送線路11a,11b(マイクロストリップ線路)を含むアンテナ結合部501,502(伝送路結合部)が設けられる。たとえば、導波管513側の両先端には導波管513に電磁波を供給するまたは受け取るアンテナ結合部501,502が設けられる。
【0193】
アンテナ結合部501,502は、図17(3)に示すように、先ず、プリント基板1,2上にグランド導体として機能する薄い導体層521が形成され、その上層に誘電体層として厚さd51の誘電体基板510が配置されている。誘電体基板510の表面には伝送線路11(11a,11b)と接続される幅w52の導体線路522が形成されている。導体線路522の先端には電磁波を放射するアンテナ構造が結合される。導体層521、誘電体基板510、および導体線路522で、マイクロストリップライン520が構成されるようになっている。
【0194】
導体線路522の先端に設けられるアンテナ構造は、導波管513内に構成される信号伝送路(導体線路522)との結合部における構造をいい、マイクロ波帯やミリ波帯の電気信号を信号伝送路に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。たとえば、アンテナ構造には、アンテナ端子、マイクロストリップ線路、アンテナを含み構成される。
【0195】
第5の実施例では、アンテナ構造のアンテナとしては、図17(4)に示すように、方形のパッチパターン(アンテナパターン)で構成されたパッチアンテナ530Bを使用している。導体線路522とパッチアンテナ530Bとの結合部には、給電点を調整するための切欠き構造532が形成されている。
【0196】
導波管513は、導体線路522と接触しないように間隙部515(間隙部)が形成されている。空洞導波管13は、径の中心がパッチアンテナ530Bの中心と一致するように、プリント基板1,2間に配置される。そして、波管513は、パッチアンテナ530Bを囲む形で、誘電体基板510と接着剤で固定される。誘電体基板510の2層目が導体グランド(導体層521)となっており終端されるようになっている。
【0197】
このような構成において、ミリ波信号は、たとえば、アンテナ結合部501側のマイクロストリップライン520_1から一方のパッチアンテナ530B_1に給電され、導波管513と結合し管内を伝わる。そして、アンテナ結合部502側の他方のパッチアンテナ530B_2と結合し、マイクロストリップライン520_2に伝送される。逆の伝送の場合は、アンテナ結合部502側のマイクロストリップライン520_2からパッチアンテナ530B_2に給電され、導波管513と結合し管内を伝わる。そして、アンテナ結合部501側のパッチアンテナ530B_1と結合し、マイクロストリップライン520_1に伝送される。
【0198】
[シミュレーション]
導波管513を無線伝送装置500に適用した場合について、その通過特性(損失の大小)及び反射特性をAET社MW−STUDIOによるシミュレーションにより得られるSパラメータに基づいて説明する。
【0199】
無線伝送装置500のシミュレーションモデルに与えるパラメータについては表1のよにする。たとえば、パッチアンテナ530Bは、略正方形であり、その一辺d50は1.3mmである。誘電体基板510の厚さd51は0.1mmである。導体線路522は、幅w52が0.2mmであり、厚さd52が0.02mmである。導波管513は、空洞導波管であって、直径d53が3.45mmであり、長さL53(つまり基板間距離)が5mmである。誘電体基板510は、比誘電率が3.4であり、誘電正接tanδは0.01である。表1には示さないが、プリント基板1,2は、第1の実施例と同様に、厚みが1.0mmであり、比誘電率は3.5であり、誘電正接tanδは0.005である。
【0200】
【表2】

【0201】
図18には、無線伝送装置500のシミュレーション特性例(通過特性S(2,1)と反射特性S(1,1))が示されており、第1の実施例の図9と対応するものである。
【0202】
通過特性S(2,1)dBのシミュレーション結果によれば、ミリ波の信号Sに基づく映像データは、搬送周波数が60GHz近辺にて通過損失が数dB(約2dB程度)である。
【0203】
反射特性S(1,1)dBのシミュレーション結果によれば、搬送周波数が57.7GHz〜61.1GHzの範囲で、反射損失が−10dB以下を実現できている。
【0204】
このように、第5の実施例の無線伝送装置500においては、プリント基板1,2の支持部材の少なくとも一部を無線信号伝送路として利用しており、基本的な考え方は、第1〜第4の実施例と相違がない。アンテナ構造としてパッチアンテナ530Bを使用し、また導波管513として中空導波管を使用する場合でも、シミュレーション結果から分かるように、ミリ波の無線伝送を不都合なく行なうことができている。
【0205】
導波管513の本来の支持構造体を無線信号伝送経路として兼用できるので、従来方式のようなプリント基板1とプリント基板2とを接続する通信ケーブルやコネクタ等を削除できるなど、第1〜第4の実施例と同様の効果を享受できる。
【0206】
[アンテナ構造の変形例]
図19には、第5の実施例の無線伝送装置500に使用されるアンテナ構造(アンテナパターン)の変形例が示されている。アンテナパターンは、図16(4)に示したようなパッチアンテナ530Bをなす方形パターンに限定されない。誘電体基板510の表面に形成されている50Ωの導体線路522に対して、予め決められた形状の導体パターンを持つアンテナパターンを誘電体基板510の表面に形成することでアンテナ構造が構成されるようにすればよい。
【0207】
図19(1)に示す第1例は、導体線路522の端部をそのまま使用するマイクロストリップアンテナ530Aである。この場合、共振構造を使用してアンテナとして機能させる。換言すると、マイクロストリップ線路をアンテナとしたものと言える。
【0208】
図19(2)に示す第2例は、図16(4)に示したものと同じで、マイクロストリップアンテナ530Aよりも電波の放射効率を向上させるべく、マイクロストリップアンテナ530Aの線路部分(ストリップ部分)の横幅を広げた構造である。図示を割愛しているが、導体線路522とパッチアンテナ530Bとの結合部には給電点を調整するための切欠き構造532が形成されることもある。なお、ここで示している例は、パッチの形状が四角形(方形)であるが、これに限らず、円形やその他の形状にしてもよい。
【0209】
図19(3)に示す第3例は、平面型の逆Fアンテナ530Cである。給電線路530Caが導体線路522と接続され、短絡線路530Cbは誘電体基板510の下部の表面に形成される導体層521でなるグランドプレーンと接続される。
【0210】
図19(4)に示す第4例は、差動アンテナ530Dであり、位相器530Daとダイポールアンテナ530Dbの組合せで構成されている。位相器530Daは、線路長の異なる位相器530Da_1,530Da_2を具備する。位相器530Da_1,530Da_2の接続点が導体線路522と接続される。位相器530Da_1の他端がダイポールアンテナ530Dbの一方のエレメント530Db_1と接続され、位相器530Da_2の他端がダイポールアンテナ530Dbの他方のエレメント530Db_2と接続される。差動アンテナ530Dは、位相器530Da_1,530Da_2の線路長の相違により各他端での位相差が180度となるようにされている。
【産業上の利用可能性】
【0211】
前述の各実施形態は、映画映像や、コンピュータ画像等を搬送する搬送周波数が30GHz乃至300GHzのミリ波の信号を高速に伝送するミリ波誘電体内伝送装置、ミリ波誘電体内伝送方法及びミリ波誘電体内伝送システム等に適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0212】
1…プリント基板(第1の信号処理基板)、2…プリント基板(第2の信号処理基板)、3,17,19…固定材、4,26…貫通穴、5,6,15…信号処理部、8a,8b,8c…電気配線、10a,10b,10c,10d,10e…信号生成部、11a,11b,111,112,113,114,115,116,117,118…伝送線路、12…コンタクトホール(ビアホール)、13,16,18…誘電体伝送路を構成する固定材、20…導体層、21…伝送線路層、22…線路、23a,23b…導波管、24…導体部、25…導体層、30,34…誘電体伝送路終端部、30’…固定材終端止め部、31,35…雄ネジ構造、32,37…雌ネジ構造、33…隙間部、101〜109…アンテナ結合部、100,200,300,400…ミリ波誘電体内伝送装置、201…信号入力用の端子、202…変調回路、203…周波数変換回路、204…増幅器、205,207…結合回路、208…増幅器、209…周波数変換回路、210…復調回路、211…信号出力用の端子、500…無線伝送装置、501,502…アンテナ結合部、513…導波管(無線信号伝送路をなす支持部材)、510…誘電体基板、520…マイクロストリップライン、530B…パッチアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板と、
前記第1の信号処理基板に対して信号結合され、前記ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板と、
前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に配設された支持部材とを備え、
前記支持部材が誘電体伝送路を構成すると共に当該支持部材が前記第1の信号処理基板及び前記第2の信号処理基板を支持する
ミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項2】
前記第1の信号処理基板は、
入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する第1の信号生成部と、
前記第1の信号生成部によって生成された前記ミリ波の信号を前記支持部材に結合する第1の信号結合部とを有し、
前記誘電体伝送路を構成する支持部材を介在して配設される第2の信号処理基板は、
前記支持部材から前記ミリ波の信号を受信する第2の信号結合部と、
前記第2の信号結合部によって受信した前記ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する第2の信号生成部とを有する
請求項1に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項3】
前記第1の信号処理基板は、
前記第1の信号生成部と前記第1の信号結合部との間に電気的に接続されてミリ波の信号を伝送する第1の伝送線路を有し、
前記第1の信号結合部は、
当該第1の信号処理基板に開口された所定形状の貫通穴によって形成される第1の導波管と、
前記第1の導波管内に入り込むように配置され、前記第1の伝送線路から構成されて前記ミリ波信号を電磁波に変換する第1の信号変換部とを有し、
前記誘電体伝送路を構成する支持部材の一端に、前記第1の信号変換部によって変換された電磁波を伝送すると共に、前記第1の導波管を取り囲む所定形状の貫通穴によって当該第1の信号処理基板と前記支持部材の一端とを固定し、
前記第2の信号処理基板は、
前記第2の信号生成部と前記第2の信号結合部との間に電気的に接続されてミリ波の信号を伝送する第2の伝送線路を有し、
前記第2の信号結合部は、
前記第2の信号処理基板に開口された所定形状の貫通穴によって形成される第2の導波管と、
前記第2の導波管内に入り込むように配置され、前記第2の伝送線路から構成されて前記支持部材内を伝搬した電磁波をミリ波の信号に変換する第2の信号変換部とを有し、
前記誘電体伝送路を構成する支持部材の他端に伝搬した電磁波を前記第2の信号変換部によってミリ波の信号に変換し、当該ミリ波の信号を前記第2の導波管を経由して前記第2の伝送線路へ伝送すると共に、前記第2の導波管を取り囲む所定形状の貫通穴によって当該第2の信号処理基板と前記支持部材の他端とを固定する
請求項2に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項4】
前記第1の信号結合部は、
前記第1の伝送線路から第1の導波管に放射される電磁波を反射すると共に、前記支持部材の一端を前記第1の信号処理基板に固定するための第1の固定手段を有し、
前記第2の信号結合部は、
前記支持部材の他端に伝搬した電磁波であって、前記第2の信号変換部によってミリ波の信号に変換されなかった電磁波を反射すると共に、前記支持部材の他端を前記第2の信号処理基板に固定するための第2の固定手段を有する
請求項3に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項5】
前記支持部材の一端を固定する第1の固定手段は、前記第1の伝送線路が第1の導波管を横切る部位に第1の隙間部を有し、
前記支持部材の他端を固定する第2の固定手段は、前記第2の伝送線路が第2の導波管を横切る部位に第2の隙間部を有する
請求項4に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項6】
前記支持部材には、
前記少なくとも、ガラスエポキシ系、アクリル系、ポリエチレン系の樹脂から成る誘電体素材が使用される
請求項1〜5の内の何れか一項に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項7】
前記第1の信号生成部には、
前記入力信号を変調する変調回路と、
前記変調回路によって変調された後の前記入力信号を周波数変換してミリ波の信号を生成する第1の周波数変換回路とが実装され、
前記第2の信号生成部には、
前記ミリ波の信号を周波数変換して出力信号を出力する第2の周波数変換回路と、
前記第2の周波数変換回路から出力される出力信号を復調する復調回路とが実装される
請求項2に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の信号生成部には、ミリ波の信号を増幅する増幅器が各々実装される
請求項7に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項9】
前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板とが所定の方向に組み合わされ、当該第1及び第2の信号処理基板が略平行な姿勢を保って連結するように前記支持部材が固定される
請求項1〜8の内の何れか一項に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項10】
前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板とが並設され、当該第1及び第2の信号処理基板が略水平な状態を保って連結するように前記支持部材が固定される
請求項1〜8の内の何れか一項に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項11】
前記誘電体伝送路を構成する支持部材が、
前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に複数配設され、
各々の前記支持部材が第1及び第2の信号処理基板を支持する共に、各々の前記支持部材が前記ミリ波の信号を伝送する
請求項1〜10の内の何れか一項に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項12】
前記第1の信号処理基板は、
入力信号を信号処理して複数のミリ波の信号を生成する第1の信号生成部と、
前記第1の信号生成部によって生成された個々の前記ミリ波の信号を各々の前記支持部材に結合する複数の第1の信号結合部とを有し、
前記誘電体伝送路を構成する複数の支持部材を介在して配設される第2の信号処理基板は、
各々の前記支持部材から前記ミリ波の信号を受信する複数の第2の信号結合部と、前記第2の信号結合部によって受信した個々の前記ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する第2の信号生成部とを有する
請求項11に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項13】
前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に配設された第1の支持部材と異なる誘電体伝送路を構成する第2の支持部材を介して前記第1の信号処理基板の外側又は及び前記第2の信号処理基板の外側に1枚以上の第3の信号処理基板が配設され、
前記第2の支持部材が誘電体伝送路を構成し、ミリ波の信号を伝送すると共に当該第2の支持部材が第3の信号処理基板を支持する
請求項1に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項14】
ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板を形成する工程と、
前記第1の信号処理基板から前記ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板を形成する工程と、
前記第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に支持部材を配設し、当該支持部材で誘電体伝送路を形成すると共に、前記第2の信号処理基板上の前記支持部材で第1及び第2の信号処理基板を支持する工程と、
を有するミリ波誘電体内伝送装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1の信号処理基板を形成する際に、
入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する第1の信号生成部と、前記第1の信号生成部によって生成された前記ミリ波の信号を前記支持部材に結合する第1の信号結合部とを所定の基板に配置し、
前記第2の信号処理基板を形成する際に、
前記支持部材から前記ミリ波の信号を受信する第2の信号結合部と、前記第2の信号結合部によって受信した前記ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する第2の信号生成部とを所定の基板に配置する
請求項14に記載のミリ波誘電体内伝送装置の製造方法。
【請求項16】
伝送対象信号をより周波数の高い高周波信号に変換する第1の信号変換部を備えた第1の回路基板と、
前記信号変換部で生成された高周波信号に基づく無線信号を受信して前記伝送対象信号に変換する第2の信号変換部を備えた第2の回路基板と、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板の間に配設され、回路基板を支持する支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記第1の回路基板側から前記第2の回路基板側へ前記無線信号を伝送する無線信号伝送路を構成する
無線伝送装置。
【請求項17】
前記支持部材は、前記無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられ、前記遮蔽材の内部の伝送路が中空の空洞導波路である
請求項16に記載の無線伝送装置。
【請求項18】
前記支持部材は、前記無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられ、前記遮蔽材の内部の伝送路には誘電体素材が充填されている
請求項16に記載の無線伝送装置。
【請求項19】
前記第1の信号変換部で生成された高周波信号を前記無線信号にして前記支持部に結合させる第1の無線信号結合部が前記第1の回路基板上に配設されており、
前記無線信号にして前記支持部を介して伝送される前記無線信号に結合される第2の無線信号結合部が前記第2の回路基板上に配設されている
請求項16〜18の内の何れか一項に記載の無線伝送装置。
【請求項20】
送信側の回路基板と受信側の回路基板の間に、各回路基板を支持するとともに前記送信側の回路基板から前記受信側の回路基板へ無線信号を伝送する無線信号伝送路をなすように構成された支持部材を配設し、
前記送信側の回路基板において伝送対象信号をより周波数の高い高周波信号に変換し、
前記高周波信号に基づく前記無線信号を前記支持部材を介して前記受信側の回路基板へ伝送し、
前記受信側の回路基板において、前記支持部材を介して受信した前記無線信号を前記伝送対象信号に変換する
無線伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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