説明

ミルタザピンのための膣送達系

本発明は固体ミルタザピンを含む徐放性処方に関し、この処方はスキンを有する膣装置であり、この装置は熱可塑性ポリマーで製造される内部区画を含み、このポリマーはミルタザピンを含有している。ポリマーは、好ましくはエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体ミルタザピンを含む徐放性処方に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルタザピンは、精神医学における、主として大うつ病の治療のための治療用途を有する、広く用いられる薬物である。このような障害に対しては、長期にわたる使用が治療結果に必要である。毎日摂取しなければならない錠剤の処方に基づく投薬計画では、錠剤が忘れられ、治療に関する患者の遵守が望ましいものを下回ることは非常に一般的である。従って、非常に患者に優しいミルタザピンの徐放性処方に対する強い必要性が存在する。一般には、利用可能な多くの徐放性処方が存在し、これらのほとんどは処方の移植もしくは注入に基づく。代替物は経皮送達用のパッチである。精神医学的な薬物療法の脈絡においては、徐放のための膣送達系を考慮することは、投与の膣内経路がミルタザピンを投与するための可能性の広範なリストにおいて従来言及されてはいたものの(WO 02/064735)、至極まれなことである。膣送達装置一般の説明はUS 2003/0153983、WO 02/076426、WO 03/055424、US 5,558,877およびUS 4,016,251に存在する。
【0003】
膣内投与経路には、もっぱら女性の治療を目的とする、避妊投薬計画もしくはホルモン置換療法への用途が見出されている。膣送達装置は婦人科の分野において避妊用途のための疎水性ステロイド剤の送達、例えばUS 4,292,965、WO 97/02015、WO 2004/103336、US 4,469,671およびEP 0 876 815に例示されるものについて特に公知である。避妊用膣リングはオランダ国のOrganonによってMuvaring(登録商標)の商標で市販されている。このようなリングは、有益な治療効果を得るのに約0.01から0.5mg/日の薬物送達速度で通常十分である、高効力ステロイドを投与する目的で設計されている。しかしながら、局所的に送達させようとするミルタザピンの治療上有効な量についてはより多量であり、毎日約0.1から60ミリグラムの範囲をとる。
【0004】
それにも関わらず、ミルタザピンに膣送達装置の形態で徐放性処方をもたらすことには大きな利点が存在し得る。この薬物は女性においてより頻繁に生じる症状(therapeutic indication)に用いられるため、女性のみに用いることができる徐放性処方は依然として当分野への重要な貢献である。例えばうつ病を治療するための別の薬物、フルオキセチンHClは、膣送達系の形態の徐放性処方で用いることが提示されている(WO 03/055424)。記載される装置は、薬物含有区画として、使用のための表面上の1以上の溝、もしくはリング内に成型されたポケット、もしくは中空トロイド型ポリジメチルシロキサン管系を含む。WO 2005/004837は、分散した活性剤を含有する内部薬物含有区画(リザーバ)、およびこの内部区画を不連続に取り巻くシースを含む装置を記載する。WO 0170154は、オキシブチニン組成物を含むリング内に位置する孔を有し、この孔がリングの表面からリングの内部まで続く、シロキサンエラストマー膣リング装置を開示する。非ステロイド剤については、ポリシロキサンポリマーの選択はこれらの高い薬物可溶性およびポリシロキサンポリマーの周知の高い浸透性に関連する(A.D.Woolfson,R.K.Malcolm,R.J.Gallagher,Journal of Controlled Release 91(2003)465−476)。加えて、ポリシロキサンにおける同じ種類の分子の拡散係数は、典型的には、ポリ酢酸ビニルコポリマー(ポリ−EVA)において見出される拡散係数より100から200倍大きい(Treatise on controlled drug delivery;fundamentals,optimization,applications,edited by A.Kydonieus,Marcel Dekker Inc.New York,1992.Typical diffusion coefficient for steroids,pp.66−67)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/064735号
【特許文献2】米国特許公開第2003/0153983号明細書
【特許文献3】国際公開第02/076426号
【特許文献4】国際公開第03/055424号
【特許文献5】米国特許第5,558,877号
【特許文献6】米国特許第4,016,251号
【特許文献7】米国特許第4,292,965号
【特許文献8】国際公開第97/02015号
【特許文献9】国際公開第2004/103336号
【特許文献10】米国特許第4,469,671号
【特許文献11】欧州特許第0 876 815号
【特許文献12】国際公開第03/055424号
【特許文献13】国際公開第2005/004837号
【特許文献14】国際公開第0170154号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.D.Woolfson,R.K.Malcolm,R.J.Gallagher,Journal of Controlled Release 91(2003)465−476
【非特許文献2】Treatise on controlled drug delivery;fundamentals,optimization,applications,edited by A.Kydonieus,Marcel Dekker Inc.New York,1992.Typical diffusion coefficient for steroids,pp.66−67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
予期せぬことに、ミルタザピンの高放出速度、低突発性放出(low−burst release)、実質的に一定の放出速度という点で優れた薬物送達特性を高い薬物実質効率(drug substance efficiency)および1週間から1ヶ月までの使用持続期間との組み合わせで有し、および最適な機械的特性、特に送達系における柔軟性を有する膣送達系の形態での徐放性処方を、ミルタザピンについて、従来技術において教示されるようなポリシロキサンの使用を回避することによって調製できることがいまや見出されている。本発明による装置は、この装置から1日に放出させようとするミルタザピンの量についてのより良好な範囲の選択肢に対する備えもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固体ミルタザピン、スキンおよび内部区画を含む膣装置であって、内部区画は熱可塑性ポリマーで製造され、このポリマーがミルタザピンを含有する膣装置に対する備えがある。好ましくはスキンは内部区画を実質的に連続的に覆う。内部区画がミルタザピン5から80wt%を含有するとき、良好な結果を得ることができる。場合により、内部区画はコアを含み、これは固体ミルタザピンを含有しない。好ましくは内部区画および/もしくはスキンおよび/もしくはコアまたはこれら3つのすべてがエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。より具体的な実施形態においては、6から40%の範囲の酢酸ビニル含有率を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーが用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有利な特徴は、押出し技術を用いて装置を容易に製造することができ、およびリングの形態で製造される場合、小断面径の観点から柔軟であることである。これらに加えて、本発明による徐放性処方は急速放出に対して本質的に安全なデザインを有する。内部区画内にコアを適用することにより、この系は改善された薬物実質効率を可能とする。
【0010】
固体形態でのミルタザピンの存在は放出の最中のミルタザピンの十分および連続的な供給を賄い、固体形態は製造の最中での装置外部での薬物の結晶化を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による3層薬物(コア含有)送達系の断面図を示す。
【図2】第2から14日の平均放出が約7.5mg/日である3層リングのミルタザピンのインビトロ放出曲線を示す(バッチ7、10、13および16)。
【図3】第2から14日の平均放出が15mg/日である3層リングのミルタザピンのインビトロ放出曲線を示す(バッチ6、11および18)。
【図4】2つの開放「リング端」を有するロッドに切断されたリングと比較した、本発明による膣リングの放出速度を示す(バッチ2)。
【図5】放出が実質的に一定である本発明による膣リングの放出速度を示す(バッチ11および20)。
【図6】内部区画が20(バッチA1)、50(バッチC1)、60(バッチD3)および薬物70wt%(バッチE1)(内部区画としての341μm中間層厚)を含む、20から70wt%ミルタザピン含有3層リングのインビトロ放出速度(IVR)。
【図7】内部区画が40(バッチB4)、60(バッチD4)および薬物70wt%(バッチE2)(内部区画としての682μm中間層厚)を含む、ミルタザピン含有3層リングのインビトロ放出速度(IVR)。
【図8】スキン材料がEVA28(バッチD3)およびEVA15(バッチD7)である、60wt%ミルタザピン含有3層リングのインビトロ放出速度(IVR)。
【図9】それぞれ9および4μmの断面径を有するシリコーンリングおよびEVAリングの側面図。
【図10】54μmの外形を有するミルタザピンシリコーンリングおよびミルタザピンEVAリングの上方からの図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語の説明
膣装置が意味するところは、女性の膣に挿入するための薬物送達系である。この系は、2つの端部が一緒になって接合された伸張形態を送達系が有するように、リングの形態を好ましくは有する。このリングは1以上のループを含むことができ、これらのループは様々な形状、例えば楕円状、長円体状、トロイド状、三角形状、方形、六角形状、八角形状等を有することができる。その代わりに、本発明による系はらせん形状であり、これは2以上のループおよび一緒になって接合されていない2つの端部を有する繊維らせんの形状を意味する。ミルタザピンはうつ病、睡眠障害、更年期愁訴等の治療に用いることができる周知の活性化合物である。特に後者の用途に対して本発明によるリングは適切である。うつ病は女性においてより頻繁に生じるため、本発明は、特にミルタザピンでのうつ障害の治療に有益なものである。ミルタザピンは過剰の体熱感に苦しむ女性にとって有益なものであることも公知であり、これは本発明による装置をこの患者群に特に適切なものとする。装置の形態での徐放性処方の膣投与経路は、治療を必要とする女性が処方を適用し、および除去することができる容易性の観点から、薬物治療に関する遵守を改善する。ミルタザピンは入手可能であり、本発明によるリングにおいて、好ましくは塩基として、用いることができる。いずれにしても、これは、装置の内部区画の熱可塑性ポリマー中に溶解するとき、0.1wt%を上回る溶解度で、非イオン化(中性、非荷電)形態でなければならない。これは、通常、ミルタザピンの塩を本発明による処方における使用に不適切なものとする。ミルタザピンはこのS−もしくはR−鏡像異性体の形態で用いることができる。ポリマー中でミルタザピンの5から80wt%という高積載量を得るのに必要な固体形態は、好ましくは結晶性ミルタザピンである。結晶は内部区画のポリマー内に有効に分散する。固体ミルタザピンの存在を必要とする別の理由は、以下でより詳細に説明されるように、内部区画内からのミルタザピンの徐放を得ることである。
【0013】
連続スキンが意味するところは、スキンがミルタザピン含有区画を連続的に取り巻き、薬物を放出するための明白に用意された部分をスキンに欠くことである。従って、局所的な刺激を回避するため、膣組織と薬物区画との直接接触は最小限に抑えられる。スキンは、偶発的な開口部、例えばらせん形状系の端部または製造中の剪断もしくはリング端部の不完全な閉鎖による開口部のみが存在し得るが、このような開口はスキンを通してのミルタザピンの通過を容易にするために目的を持ってスキンに導入されるものではないという意味で実質的に連続である。スキン材料が幾らかの溶解したミルタザピンを含み得ることは排除されるものではない。
【0014】
装置の内部区画は、患者に送達しようとするミルタザピンを含有しおよびスキンによって覆われる区画である。従って、膣組織と内部区画との直接接触は存在しない。スキンは内部区画内の濃縮薬物からの望ましくない局所効果から膣組織を保護する遮蔽体である。内部区画は熱可塑性ポリマーによって形成される。
【0015】
コアは内部区画内の内部構造であり、内部区画内の薬物含有空間を減少させる役割を果たす。コアは固体ミルタザピンを含有しない。とは言え、コア材料が溶解したミルタザピンを含み得ることを排除するものではない。ミルタザピンが製造プロセスの最中に内部区画内に積載されるとき、幾らかのミルタザピンがコア内に浸入することがある。コアはあらゆる適切な材料、例えば金属、ポリマーもしくは内部区画に用いられるポリマーと同じ材料で製造することができる。コアは装置の強度もしくは柔軟性および薬物実質効率の増加にも寄与し得る。別の脈絡においては、コアが装置内に存在するとき、内部区画は中間層とも呼ばれる。
【0016】
本発明には、0.1から60mg/日の範囲のミルタザピンの送達速度で1週間から1もしくは2ヶ月までの使用期間に対する備えもある。
【0017】
本発明の特徴は以下の説明およびこれらの使用によって理解することができ、およびこの影響を受け得る。フィック則の拡散が化合物の放出を支配する。膣リングは円柱状リザーバ/膜のデザインであり、この放出速度は下記式によって記述することができる。従って、適切なリングは放出速度に影響を及ぼすパラメータを適切に選択することによって製造することができる。
【0018】
円筒状リザーバ/膜デザインの放出速度は以下である。
【0019】
【数1】

【0020】
L=円柱の長さ
=スキンポリマー中の化合物の拡散係数
p/s=スキンおよび内部区画の間の化合物の分配係数
ΔC=スキン近傍の内部区画およびスキンの間の溶解したミルタザピンの濃度の差
=全体的な半径、即ちスキンを含む円柱の半径
=内部区画の半径(即ちr/r=1)もしくはコアに内部区画を加えたものの半径(即ちr、コア含有リング)
この式は、式の右手側の条件が一定であるとき、即ち時間の関数ではないとき、ゼロオーダーの放出が得られることを示す。
【0021】
図2および3において、内部区画を実質的に連続的に覆うスキンを有する本発明による装置で、ミルタザピン7.5から25mg/日の放出速度を達成できることが示される。
【0022】
明らかに、内部区画のエチレン−酢酸ビニル(EVA)中のミルタザピンの溶解度は、ミルタザピンのΔCが高速の放出動態を賄うのに十分な大きさであるようなものである。ミルタザピンの大きい放出速度を備える隼定常状態において実質的に一定のΔCを維持する上での、即ち低い遮蔽特性を有する比較的薄いスキンの存在下で装置からの実質的に一定の薬物送達を維持する上での制限因子は、内部区画とスキンとの界面への溶解したミルタザピンの供給である。この供給(もしくは放出速度と呼ばれる。)は、ミルタザピンのポリマーへの溶解速度を含む因子によって決定され、この溶解速度はポリマー中でのミルタザピンの溶解度およびポリマーに対して露出される薬物の表面積によって決定される、複雑な質量輸送プロセスの結果である。後者は粒子サイズ、形状および薬物含有率によって決定される。その上、ポリマーを通したミルタザピンの拡散速度が溶解および放出速度の重要な因子である。ミルタザピン約40から80wt%を有する装置が、高速の放出速度を賄うだけではなく、5から40%を含む装置と比較したとき、それに加えて、有意により線形の、もしくは実質的に一定の放出動態を賄うことが見出されており、40wt%を上回るポリマー中の薬物含有率で薬物粒子が内部区画のポリマー内で互いに閉鎖することができるものと信じられる。ポリマー中で分散する固体粒子によって形成される構造は薬物含有率ならびに、それに加えて、粒子サイズおよび形状に依存する。薬物放出の最中、内部区画自体の特性は薬物粒子のゆっくりとした溶解によって経時的に変化し、これが、明らかに、実質的に一定の高い放出速度を生じる薬物溶解および輸送速度を促進する。おそらくは、漸進的に溶解してポリマー中に空隙を残す粒子によるポリマー中の改善された拡散通路の形成および、これらの空隙を水で充填する、スキンを通過する内部区画への水性液体の同時流入が、高レベルの薬物含有率で実質的に一定の放出を達成する上で重要な因子である。
【0023】
本発明の送達装置において、ミルタザピンはすべてのポリマー層中に存在する。系の製造プロセスにおいて薬物が内部区画に積載されるとき、薬物は、製造プロセスの最中および/もしくは系の貯蔵の最中に、平衡濃度まで他のポリマー層(1以上)に拡散する。コア含有リングの概念に基づくと、コア無しのリングでは、本質的にゼロオーダーの放出動態を得るため、拡散距離の長距離化も可能な限り小さく保持するべきであり、および活性化合物も固体形態で存在するべきである。コア無しのリングの場合の拡散距離の長距離化は、内部区画の断面径を比較的小さく保持することによって比較的小さく保持することができる。このような小径は比較的小体積の内部区画をも生じ、従って、放出を意図される使用期間だけ維持するのに必要とされる活性化合物の量が高濃度で内部区画に積載される。
【0024】
コア無しのリングの内部区画における高濃度の活性化合物は大径リングにおいて達成することもできるが、これは大過剰の、即ち目的とする使用期間にわたって放出を維持するのに必要なものを遙かに上回る活性化合物の使用を必要とし、従って、これは、薬物実質効率が低い、経済的および環境的に魅力に欠ける投薬形態を生じる。
【0025】
コア無しのリングの小さい内部区画容積からの類推で、コア含有リングの小さい内部区画容積は処理の最中に活性化合物を比較的小さいポリマー容積に濃縮する目的を提供する。
【0026】
本発明による膣送達系は、0.1から60mg/日の範囲のミルタザピンの放出速度を1週間から1ヶ月までの使用期間提供することができる。好ましくはこの速度は2から20mg/日の範囲である。
【0027】
本発明による薬物送達系の製造において用いることができる熱可塑性ポリマーは、原理的には、医薬用途に適切なあらゆる押出し可能な熱可塑性ポリマー材料、例えばエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、低密度ポリエチレン、ポリウレタンおよびスチレン−ブタジエンコポリマーであり得る。好ましい実施形態においては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーがこの優れた機械的および物理的特性のために用いられる。EVAコポリマーは、コア、中間区画(内部区画)に加えてスキンに用いることができ、あらゆる商業的に入手可能なエチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えば商品名:Elvax、Evatane、Lupolen、Movriton、Ultrathene、AtevaおよびVestyparで入手可能な製品であり得る。これらのエチレン−酢酸ビニルコポリマーはコポリマー中に存在する酢酸ビニルの量に関して異なる等級で入手可能であり、例えばEVA28は28%の酢酸ビニル含有率を有するコポリマーである。
【0028】
一実施形態においては、少なくともスキンがエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。さらなる実施形態においては、コア、内部区画およびスキンもしくは(コア無しのリングにおける)内部区画およびスキンがエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造され、これらのコポリマーは各々同じ等級であっても異なる等級であってもよい。
【0029】
別の実施形態においては、内部区画は同じ等級のエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。しかしながら、異なるポリマー等級を内部区画に選出することにより、リングの柔軟性の細かい調整が可能である。スキンの厚みおよびスキンの酢酸ビニル含有率は活性成分の放出率に影響を及ぼす。スキンが薄いほど、およびスキンの酢酸ビニル含有率が高いほど、活性成分の放出速度が速くなる。
【0030】
一実施形態においては、6%から40%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマーが用いられる。別の実施形態においては、6%から33%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマーが用いられる。さらなる実施形態においては、9%から33%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマーが用いられる。さらに別の実施形態においては、12%から33%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマーが用いられる。別の実施形態においては、スキンが6%から28%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマーで製造される。さらに別の実施形態においては、スキンが9%から28%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマー、例えばEVA9、EVA15、EVA18もしくはEVA28で製造される。EVAコポリマーの低酢酸ビニル含有率が膣リングのより高い剛性を生じることは当分野において公知である。さらに、より大きい断面径もより高い剛性、即ちより少ない柔軟性を生じる。
【0031】
本発明の膣リングは押出しの公知プロセス、例えば同時押出しおよび配合押出し(blend extrusion)によって製造することができる。薬物を含む内部区画用の材料を得るため、ミルタザピンをEVAコポリマーと混合する。混合プロセスにおける主要工程は配合押出しである。それに続いて、薬物/EVAコポリマー混合物をコアおよびスキン材料と共に同時押出しして3層(コア含有)繊維とする。その代わりに、薬物/EVAコポリマー混合物をスキン材料と共に同時押出しして2層繊維とする(コア無しのリング)。この工程の後、薬物はEVAコポリマー中で部分的に溶解する。コポリマーにおける薬物の溶解度は用いられるEVAコポリマーの酢酸ビニル含有率によって決定される。溶解しないあらゆる薬物材料が固体相として内部区画内に存在する。この固体相は、速度を制御するスキン層近傍に一定濃度の溶解した活性物質をもたらすように、薬物の溶解相と平衡状態にある。このようにして得られる3層もしくは2層繊維を所望の長さの断片に切断し、各々の断片を当業者に公知のあらゆる適切な方法でリング形状に組み立てる。その後、これらのリングを、例えば適切なサシェ内に、場合により殺菌もしくは消毒の後、包装する。
【0032】
押出しの当業者には、当分野において公知の方法および手順並びに本明細書に示される説明および実施例に基づいて薬物を含有する3層もしくは2層繊維を製造するための最適処理条件を見出す上で、例えば押出し温度、押出し速度およびエアギャップを決定する上で、困難はない。薬物/EVAコポリマー混合物の配合押出しの適切な温度は80℃から170℃の範囲、例えば約110℃にある。3層もしくは2層繊維の同時押出しの適切な温度は80℃から170℃、例えば110℃から130℃の範囲にある。
【0033】
ミルタザピン/EVAコポリマー混合物の押出しに好ましい温度は薬物の融点未満、即ち約120℃未満である。押出しの最中の薬物の溶融は薬物の遅延結晶化のような現象につながり得る。
【0034】
このようにして、例えば0.1から60mg/日の範囲のミルタザピンを放出する、薬物の一定の放出速度を有する膣リングを製造することができる。
【0035】
本発明による膣リングはあらゆる実用的なサイズで製造することができる。一実施形態において、リングは約50から60mm、別の実施形態においては、約52から56mmの外形を有する。さらなる実施形態において、断面径は約2.0から6.0mm、さらなる実施形態においては、約2.5から5.0mm、別の実施形態においては、約3.0から4.0mm、さらに別の実施形態においては、約4.0mmである。
【0036】
一実施形態において、内部区画に含有される薬物の量は5から80wt%、別の実施形態においては、10から70wt%、さらに別の実施形態においては、30から70wt%、およびさらなる実施形態においては、40から65wt%である。
【0037】
別の実施形態においては、スキンは9%から28%の酢酸ビニル含有率を有するEVAコポリマーで製造され、薬物含有内部区画内に含有される薬物の量は40から65wt%である。
【0038】
一実施形態において、本発明による薬物送達系は、円柱状内部区画およびこの区画を覆うスキンからなる円柱状繊維である。格別の実施形態において、このような円柱状繊維の断面径は約2.5から6mm、特別の実施形態においては、約3.0から5.5mm、別の実施形態においては、約3.5から4.5mm、さらに別の実施形態においては、4.0もしくは5.0mmである。一実施形態において、これらの繊維の表面は800mmを上回り、別の実施形態においては1000mmを上回り、さらなる実施形態においては約1700から2200mmである。膣での使用を目的とする薬物送達系のデザイン(物理的寸法)が被験者にとっての不都合を妨げる限り、有意に大きい表面が可能である。
【0039】
一実施形態において、前記スキンは20から200μm、別の実施形態においては20から100μmの範囲の厚みを有する。さらなる実施形態において、前記スキンは20から70μmの範囲の厚みを有する。さらなる実施形態において、内部区画のコポリマーは酢酸ビニル18から33wt%を含む。さらなる実施形態において、内部区画のコポリマーは酢酸ビニル28から33wt%を含む。さらなる実施形態において、内部区画のコポリマーは酢酸ビニル33wt%を含む。
【0040】
【表1】

【0041】
本発明を以下の実施例によって例証する。
【実施例1】
【0042】
ミルタザピンを含有する3層膣リングの調製
3層膣リングの調製は数工程からなるものであった。まず第1に、ミルタザピンおよびEVA33コポリマーを含有する内部区画顆粒を、予備混合、配合押出しおよびステアリン酸マグネシウムでの潤滑により、従来の方法で製造した。次に、EVA28のコア材料を、供給されたままの材料を潤滑化することによって調製した。続いて、内部区画顆粒、コア顆粒およびEVA28の非薬物含有スキン材料を同時押出しして3層繊維とした。この繊維を以下に記載されるように特定の長さの繊維に切断した後、繊維端を接合してリングとした。
【0043】
内部区画材料は、所望の量(即ち60wt%ミルタザピンおよび40wt% EVA33)の成分をステンレス鋼ドラムに加えた後、Rhonrad上、47rpmで60分間ドラムを回転させることによってこの粉末混合物を予備混合することにより調製した。次に、この粉末混合物をBerstorff ZE25同時回転2軸スクリュー押出機に供給し、110℃の押出し温度で配合押出しした。配合押出しで、ミルタザピンがEVAコポリマー中に均一に分散するストランドが生じた。続いて、これらのストランドを顆粒化し、内部区画顆粒とした。同時押出しに先立ち、内部区画層顆粒を0.1wt%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、47rpmの固定回転速度を有するRhonrad(バレル−フープ方式)上のステンレス鋼ドラム内で60分間均一化した。
【0044】
コア顆粒(EVA28)も0.1wt%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、47rpmの固定回転速度を有するRhonrad(バレル−フープ方式)上のステンレス鋼ドラム内で60分間均一化した。
【0045】
同時押出しの構成は、スキン材料を加工する15mmスキン押出機、コア材料を加工する18mmコア押出機および配合押出機によって送られた内部区画顆粒を加工する18mm内部区画押出機からなるものであった。この溶融流動物を紡糸金口で合わせることで3層スキン−内部区画−コア繊維が生じた。3つの溶融流動物すべての体積流量は一組の別々の紡糸ポンプによって制御した。約105から115度の押出し温度および1から2m/分の押出し速度を用いた。押出しで、約4mmの直径値、内部区画について約300μmの値および約30μmのスキン厚を有する3層繊維が導かれた。この繊維を水浴において室温(RT)に冷却し、リールに巻き付けた。この繊維を半自動カッター(Metzner)を用いて、もしくは手で、157mm繊維に切断した後、130℃で接合してリングとした。
【0046】
様々な材料を含有し、およびスキンおよび内部区画の厚みが様々である3層リングを製造した(表1を参照)。すべてのバッチはEVA28コアを有していた。
【0047】
【表2】

【0048】
ミルタザピンを含有するコア含有リングのインビトロ放出速度
膣リングのインビトロ放出速度プロフィールを37℃、水中で2から4週間試験した。これらの結果が表2に示され、繊維7、10および16の結果が図2に、並びに繊維6、11および18の結果が図3に示される。図中の結果は、スキンおよび内部区画の材料、スキンおよび内部区画の厚み並びに薬物の濃度(wt%)を変化させることにより、約7.5mg/日(図2)および15mg/日(図3)の第2から14日の平均放出が達成できることを明瞭に示す。約25mg/日の実質的に一定の放出速度が、バッチ10および20での放出結果を比較する図5に示される。
【0049】
1日放出速度測定の結果
次頁の表2を参照。
【0050】
【表3】

【0051】
結論
図2および3に示される膣リングのインビトロ放出速度プロフィールは、最初の2から4日の比較的速い速度の後、一定の放出速度で14日以内の期間、放出が長期化されることを示す。使用に所望な血漿レベルを高速に獲得するための負荷量とみなすことができる最初の高速は組成物パラメータに明らかに依存し、微調整することができる。約7.5mg/日(表2:7、10および16)および15mg/日(表2:6、11および18)の第2から14日の平均放出が得られている。
【0052】
約25mg/日の実質的に一定の放出速度が図5に示される。
【実施例2】
【0053】
急速放出の危険性の試験
水中、37℃でのインビトロ放出研究において、本発明による膣リングのミルタザピン放出速度を、2つの開放「リング端」を有するロッドに切断されたリングと比較する。このインビトロ結果が図4に示される。放出速度が有意に影響を受けることはなかったことが明瞭に示され、これは急速放出が生じなかったことを示す。明らかに、本発明による装置のデザインは、ミルタザピンのような薬物を含む高用量薬物送達系の過量放出問題に対して本質的に保護する。
【実施例3】
【0054】
薬物積載の効果
下記表3において指定されるようにリングを製造した。
【0055】
【表4】

【0056】
結論
ポリマー中の薬物積載の効果が図6に示される。放出速度は、50%および60%を積載したリングで、長期化された期間にわたってより一定および実質的である。
【実施例4】
【0057】
下記表4において指定されるようにリングを製造した。
【0058】
【表5】

【0059】
結論
682μmのより薄い中間層を内部区画として用いる、ポリマー中の薬物積載の効果が図7に示される。放出速度は、40%および60%を積載したリングで、長期化された期間にわたってより一定および実質的である。
【実施例5】
【0060】
下記表5において指定されるようにリングを製造した。
【0061】
【表6】

【0062】
結論
EVA28と比較したEVA15のスキン材料への使用の効果が図8に示される。EVA15スキン材料を有するリングで長期化された期間にわたるより一定で依然として高い放出が観察される。
【実施例6】
【0063】
ミルタザピンシリコーンリングとのミルタザピンEVAリングの比較
WO 2005/004837(MalcolmおよびWoolfson)においては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーで製造された膣薬物徐放のためのリングが記載される。スキンを通して内部薬物積載区画まで伸びる1以上の孔もしくは開口を作製することによって放出速度が影響を受け得るものと想定された。開口の数もしくはサイズを変更することにより、内部区画からの活性医薬の塩の放出を調節することが可能であった。
【0064】
この実施例においては、この技術に基づくシリコーンリングが示される。全体的な可動性を恒久的にもしくは可逆的に抑制するため、架橋剤:n−プロピルオルトシリケート(NPOS)および硬化触媒:オクタン酸スズを添加することによってPDMSを架橋させた。10から15mg/日のミルタザピンの放出速度を少なくとも21日間有するリングを製造した。スキンに孔を導入することにより、もしくは内部区画内にミルタザピンの異なる濃度を作製することにより放出を調節することは不可能であることがミルタザピンで見出された。その上、放出調節剤(release−modifying agent)の添加には放出に対する肯定的な効果はなかった。放出速度はリングの表面によって調節され、リングの表面を増加させるため、十分な放出速度にはシリコーンリングで9mmの直径が必要であった。結果として、シリコーンリングはEVAポリマーで製造されるリングよりはるかに、即ち3から4倍柔軟性に劣っていた。
【0065】
【表7】

【0066】
装置
Memertオーブン、inv.nr:5231010、温度範囲>80℃
内部区画を製造するための型
材料:アルミニウム
リングの外径:50.5mm
リングの内径:39.5mm
型の穴の直径:5.5mm
最終(2層)リング(図5および6を参照)を製造するための型
材料:アルミニウム
リングの外径:54mm
リングの内径:36mm
型の穴の直径:9mm
孔を得るための8本のアルミニウムピン。ピンは外部スキンを通して内部区画の表面上に位置する。これらのピンは内部薬物含有区画までスキンを貫通する。
【0067】
50mL Braun Omnifixシリンジ
選抜された実験構成において、3つのパラメータを変化させた。a)外層における孔の数;b)内部区画内のミルタザピンの濃度;c)内部区画への細孔形成剤(pore forming agent)の添加。
【0068】
ミルタザピンの濃度の効果を調べるため、濃度を2つのレベル間で変化させた。10wt%および30wt%。スキンにおける孔の影響は孔の数を8から0で変化させることによって試験した。最後に、放出調節剤、即ち細孔形成剤(ヒドロキシルエチルセルロース(HEC 30wt%))の添加を調べた。すべてのパラメータの多様性はWO 2005/004837に示される情報に基づくものであった。
【0069】
リング組成は2層からなる;リザーバ層(活性材料ミルタザピンおよびHECを含有する内部区画)および孔を含有するスキン層。これら2つの層は3段階で構築した。
【0070】
段階1]ミルタザピンと液体シリコーンエラストマーとの混合
段階2]リングの活性成分含有内部区画の硬化
段階3]内部区画を内包するスキン材料の硬化
段階1について(ad stage 1)。
【0071】
所定量のシリコーンエラストマーペースト(表7を参照)を、手で少なくとも5分間、所定量のミルタザピンと混合した。混合は5分後に完了し、もはや灰色のシリコーンペースト中に視認できるミルタザピンは存在しなかった。用いた材料の量は表7に示される。
【0072】
【表8】

【0073】
内部区画薬物リザーバにおいてHECを混合するための手順はミルタザピンを混合するためのものとほぼ同じであった。まず、均一な混合物が得られるまで約5分間、HECを手でシリコーンエラストマーと混合した。次に、ミルタザピンを添加し、少なくとも5分間混合した。
【0074】
段階2について。
【0075】
混合物を硬化させるため、表7において言及されるミルタザピン/(HEC)/シリコーン混合物の全量を50mLシリンジに移した後、(混合物全体に対して)1wt%のオクタン酸スズを硬化剤として添加した。シリンジの内容物を短時間(<2分)で混合したが、さもなければ混合物はシリンジ内で硬化する。続いて、この灰色混合物を型の2つの部品(上部および下部部品)に注入した。これら2つの部品を4本のオーバーヘッドスクリュー(overhead screw)によって一緒にして締めつけた。この硬化プロセスは3つの異なる硬化プロセスに従って行った。
【0076】
1]80℃で約5時間の後、室温まで約1時間冷却。
【0077】
2]80℃で約1時間の後、オーブン内で一晩、室温まで冷却。
【0078】
3]室温で週末をまたぐ。
【0079】
しかしながら、異なるバッチの製造の最中、80℃で約1時間の硬化時間の後に室温までの1時間の冷却期間が完全に硬化したリングを製造するのに十分であることが経験的に決定された。表8において、オクタン酸スズの量および硬化プロセスが要約される。
【0080】
【表9】

【0081】
段階3について
最終段階はスキン内への内部区画の封入であった。所定量のシリコーンエラストマーペーストをオクタン酸スズと迅速に混合し(<1分)、2つの型部品内に注入した。内部もしくは外部リング中の孔の数に依存して、中心片を内部区画内に配置し、ピンをリングの外側の粘性液体中に配置した。続いて、中心片を有する内部区画を型の2つの部品のうちの一方に配置した。他方の型を第1の型の上に置き、4本のオーバーヘッドスクリューを締めることによってしっかりと締めつける。硬化は段階2において記述されるように行った。硬化するエラストマーによってピンが外側に押し出されることを回避するため、外部ピン上にクランプを配置した。孔を必要としないリングの場合、中心片および外部リング中のピンを省略した。硬化後、鋳張りおよび他の不整物を除去した。
【0082】
表9において、スキンの硬化プロセスに用いられるオクタン酸スズの量の概要が示される。孔がスキンを完全に貫通したことを確認するため、IVRの後、膜の不在に関して、2つの側面によって孔を視認検査した。
【0083】
内部区画上の界面線の存在、即ち内部区画の製造の最中に2つの型部品が一緒になって加圧され、2つの部品の間に視認可能な界面線を生じる。
【0084】
スキンによる内部区画の封入の後、この線が孔の内部に視認できなければならない。そうでなければ、薄膜がピンの末端と内部区画との間に形成された可能性がある。従って、第2の視認評価を行った。
【0085】
線が存在しない場合、孔の位置でリングを横断切断する。視認評価により、膜の不在に関して孔を判定する。
【0086】
【表10】

【0087】
インビトロ放出測定
リングを製造した後、バッチPD07.32225、PD07.3227、PD07.32229、PD07.32231、PD07.3233およびPD07.32235に対して分析を行った。質量決定の後、リングをIVRにおいて測定した。放出は、水中の酢酸ナトリウム・3水和物の緩衝溶液(pH4.9、pHは酢酸で調整した。)中、37±0.2℃、サンプリング間隔:24時間で21日間測定した。図3において、これら6つのバッチの放出プロフィールが示される。ミルタザピンEVAバッチ、PD07.32119も含まれる。
【0088】
6つのシリコーンリングバッチの間で放出速度に差はなかった。10wt%ミルタザピンを含有するバッチPD07.32233およびPD07.32235は他の4つのバッチよりも幾らか低い放出プロフィールを示した。しかしながら、0孔のリング(PD07.32235)と8孔のリング(PD07.32233)との間に有意の差はなかった。これは30wt%ミルタザピンが存在する4つのバッチの間にも見られた。30wt%ミルタザピンを含むリングバッチ(PD07.32225、PD07.32227、PD07.32229およびPD07.32231)は多かれ少なかれ同様の放出プロフィールおよび速度を示す。これは、孔およびHECの存在には放出速度に対する有意の効果がないことを示す。さらに、これらのデータは、製造における差(硬化時間)が放出速度における変化を生じなかったことを示す。
【0089】
6つのバッチのシリコーンリングをEVAミルタザピンリング(バッチPD07.32119、コア:EVA28、内部区画:EVA33、40wt%ミルタザピン、厚み:682μm、スキン:EVA28、30μm)と比較するとき、EVAリングがより大きい初期突発放出(burst release)およびより急勾配の放出プロフィールを有することが注目される。
【0090】
放出制御スキンがないリングを製造し(バッチPD07.32237)、IVRを21日間測定した。このリングは最大達成可能放出速度を示すはずである。これに平行して、2つのリングの急速放出挙動を測定した。バッチPD07.32226(30wt%ミルタザピン)およびPD07.32230(30wt%ミルタザピン、30wt% HEC、IVRは7日であった。)から、約0.5cmの断片をリングから除去し、ミルタザピンが放出媒体に「大量放出(dumped)」され得る2つの開放繊維末端を創出した。これら2つのリングを測定し、30wt%リングおよび30wt% HECを含有するリングからの可能な急速放出結果を得た。IVRの結果をバッチPD07.32225およびPD07.32229と比較した。急速放出を実現するためのリングの断片の除去がIVRプロフィールに影響を及ぼさないことが観察された。PD07.32226ではより高い突発効果が顕著であり、他方、バッチPD07.32230は「正規」バッチPD07.32229より低くさえあった。PD07.32237の最大放出曲線はバッチPD07.32225およびPD07.32229に対して増加した放出プロフィールを示した。放出制御膜の効果がこの結果によって示される。バッチPD07.32237は典型的なマトリックス系のプロフィールを示し、それに対して他のバッチは徐放系の典型的な特徴を有する。
【0091】
HECを含有するリングは約0.3gの質量の増加を示した。この増加は、おそらく、内部区画内のHECの存在と組み合わせて、シリコーンスキンが水に対して幾らか透過性であるという事実によって生じた。さらに、HECは吸湿性であり、それ故にIVR後に質量が増加した。吸収された水の総量は約0.6gであった。他のリングの質量損失はミルタザピンの放出量によって説明することができる。
【0092】
柔軟性試験(圧力試験)
バッチPD07.32228、PD07.32232、PD07.32234およびPD07.32236並びにEVAミルタザピンリングの2つの代表的なバッチPD07.32119およびPD07.32137に対して柔軟性試験を行った。リングの柔軟性は圧縮試験によって測定した。リングサンプルをこの緩和状態で(約54mmの距離)2つのホルダー間に配置する。これら2つのホルダーを、互いに50mm/分の速度で、ホルダーが約21mmの距離になるまで移動させる。リングを圧縮する力を異なる圧縮で記録する。
【0093】
下記表10は4つの異なるシリコーンリングで得られた結果を示す。
【0094】
【表11】

【0095】
この柔軟性試験によると、シリコーンリングはEVAリングよりも有意に硬い。シリコーンリングを圧縮する力はEVAリングと比較して約3から4倍高い。
【0096】
リングの寸法/外見
図9および10において、シリコーンおよびEVAリングの典型例が示される。外径は同一であるが、シリコーンリングの繊維厚はEVAリング(4mm)と比較して実質的に厚い(9mm)。
【0097】
結論
少なくとも21日間の約10から15mg/日の放出についてはシリコーンおよびEVAリングの間に大きな差はないが、シリコーンミルタザピンリングは、内部区画の厚みおよび薬物積載および/またはスキンの厚みを調整することによって放出を制御することができるEVAリングとは対照的に、放出を調節するいかなる可能性をも提供することはほとんどない。従って、EVAミルタザピンリングは、膣内薬物送達装置としての使用において、シリコーン膣内リングを上回る相当の利点を有する。さらに、十分なミルタザピン放出のためのシリコーンリングはEVAリングよりも重く、非常に硬い。シリコーンリングを圧縮する力はEVAリングと比較して約3から4倍高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ミルタザピンを含む徐放性処方であって、この処方がスキンを有する膣装置であり、この装置が熱可塑性ポリマーで製造される内部区画を含み、このポリマーがミルタザピンを含有していることを特徴とする、徐放性処方。
【請求項2】
ポリマーが40から60wt%のミルタザピンを含有していることを特徴とする、請求項1に記載の処方。
【請求項3】
スキンが実質的に連続であることを特徴とする、請求項1または2に記載の処方。
【請求項4】
装置が約2.0から6.0mmの断面径を有するリングであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の処方。
【請求項5】
内部区画が固体ミルタザピンを含有しないコアを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の処方。
【請求項6】
内部区画がエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の系。
【請求項7】
スキンがエチレン酢酸ビニルコポリマーで製造されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の系。
【請求項8】
エチレン−酢酸ビニルコポリマーが6から40%の範囲の酢酸ビニル含有率を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の系。
【請求項9】
スキンが9から18%の範囲の酢酸ビニル含有率を有していることを特徴とする、請求項8に記載の系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−510290(P2010−510290A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537634(P2009−537634)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062654
【国際公開番号】WO2008/062021
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】