説明

ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト

本発明は、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストおよびその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、3−置換8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン、医薬組成物および呼吸器のムスカリン性アセチルコリン受容体介在疾患の治療におけるその使用に関する。
【0002】
発明の背景
末梢神経および中枢神経系におけるコリン作動性ニューロンから放出されるアセチルコリンは、2つの主要な群のアセチルコリン受容体−ニコチン性およびムスカリン性アセチルコリン受容体との相互作用を介して、多くの異なる生物学的プロセスに影響を与える。ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChRs)は、7回膜貫通ドメインを有するG−蛋白質結合受容体のスーパーファミリーに属する。M−Mと称される、mAChRsの5つのサブタイプがあり、各々、別個の遺伝子産物である。これらの5つのサブタイプは、各々、独自の薬理学的性質を示す。ムスカリン性アセチルコリン受容体は、脊椎動物の臓器に広く分布しており、これらの受容体は、多くの重要な機能を介在する。ムスカリン性受容体は、阻害作用および興奮作用を有することができる。例えば、気道において見られる平滑筋において、MmAChRsは、収縮反応を介在する。例えば、Caulfield (1993 Pharmac. Ther. 58:319-79)(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
【0003】
肺において、mAChRsは、気管および気管支、粘膜下腺および副交感神経節の平滑筋に局在化している。ムスカリン性受容体密度は副交感神経節において最も大きく、粘膜下腺から、気管、ついで、気管支平滑筋と密度は減少する。ムスカリン性受容体は、肺胞にはほとんど存在しない。mAChR発現の肺における機能に関しては、Fryer and Jacoby (1998 Am J Respir Crit Care Med 158(5, pt 3) S 154-60)を参照のこと。
【0004】
mAChRsの3つのサブタイプ、M、MおよびMmAChRsは、肺において重要であることが認定されている。気道平滑筋に局在するMmAChRsは、筋収縮を介在する。MmAChRsの刺激は、刺激性G蛋白質Gq/11(Gs)の結合により、ホスホリパーゼC酵素を活性化し、ホスファチジルイノシトール−4,5−ビホスフェートの解放を誘発し、その結果、収縮蛋白質のリン酸化が生じる。また、MmAChRsは、肺粘膜下腺においても見られる。この群のMmAChRsは、粘液分泌を生じさせる。
【0005】
mAChRsは、気道平滑筋におけるコリン作用性受容体群の約50〜80%を形成する。正確な機能は未知であるが、これらは、cAMP生成の阻害により、気道平滑筋のカテコールアミン作動性弛緩を阻害する。ニューロンMmAChRsは、節後副交感神経に局在する。正常な生理学的条件下、正常なMmAChRsは、副交感神経からのアセチルコリン放出を厳格に制御する。また、抑制性MmAChRsは、数種の肺において交感神経にも示されている。これらの受容体は、ノルアドレナリンの放出を阻害し、かくして、副交感神経の肺へのインプットが減少する。
【0006】
mAChRsは、肺の副交感神経節において見られ、これらは神経伝達を増強させる。また、これらの受容体は、肺末梢部実質に局在するが、それらの実質での機能は未知である。
【0007】
ムスカリン性アセチルコリン受容体機能障害は、種々の異なる病体生理学的な状態で注目されてきた。特に、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)において、炎症状態は、肺平滑筋を支配する副交感神経に対する抑制性Mムスカリン性アセチルコリン自己受容体機能の喪失を誘発し、迷走神経刺激後のアセチルコリン放出の増加を引き起こす(Fryer et al. 1999 Life Sci 64 (6-7) 449-55)。このmAChR機能障害は、MmAChRsの刺激の増大により介在される気道過敏性を生じさせる。かくして、強力なmAChRアンタゴニストの同定は、これらのmAChR−介在病態における治療において有用であるだろう。
【0008】
COPDは、慢性気管支炎、慢性気管支炎および肺気腫を含む、種々の進行性の健康障害を包含する、厳密に定義されてはいない用語であり、世界中の死亡および罹患の主な原因である。喫煙は、COPDの進行の主な危険因子である;米国だけで、5000万に近い人がたばこを吸っており、毎日推定3,000人が習慣になっている。結果として、COPDは、2020年までに、世界の健康負担の上位5位内になることが予想される。吸入抗コリン作動性治療が、現在、COPDの一次療法として「標準」であると考えられている(Pauwels et al. 2001 Am. J. Respir. Crit. Care Med. 163:1256-1276)(出典明示により本明細書に組み入れる)。
【0009】
気道過敏性疾患を治療するのに抗コリン作動性療法の使用を支持する多くの証拠があるにも拘わらず、相対的にわずかな抗コリン性化合物しか、臨床において肺への適用に使用することができない。さらに具体的には、米国において、臭化イプラトロピウム(Atrovent(登録商標)およびCombivent(登録商標)、アルブテロールと併用する)が、現在唯一の、気道過敏性疾患の治療用に販売されている吸入抗コリン作動薬である。この化合物は強力な抗ムスカリン剤であるが、作用時間が短く、かくして、COPD患者を治療するために、1日に4回も投与しなければならない。欧州およびアジアにおいては、最近、長時間作用性抗コリン作動性臭化チオトロピウム(Spiriva(登録商標))が承認されたが、この製品は、現在米国においては入手不可能である。かくして、依然として、長期間作用し、気道過敏性疾患、例えば喘息およびCOPDの治療において1日1回の投与で十分である、mAChRで遮断することができる新規化合物が必要とされている。
【0010】
mAChRは体全体に広く分散するので、有利には、気道に局所的に抗コリン作動薬を適用することができ、用いるべき薬剤の用量をより少なくすることができるだろう。さらに、長時間作用する、特に受容体でまたは肺により保持される、局所的に活性な薬剤を設計することができ、抗コリン作動薬の全身性使用により生じうる望ましくない副作用を回避することができるだろう。
【0011】
発明の概要
本発明は、アセチルコリンがMmAChRに結合する、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)介在疾患の治療方法であって、有効量の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
また、本発明は、哺乳動物における、アセチルコリンのその受容体への結合を阻害する方法であって、該哺乳動物に、有効量の式(I)で示される化合物を投与することを含む方法に関する。
また、本発明は、式(I)で示される化合物および式(I)で示される化合物および医薬担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明の化合物は、式(I):
【化1】

ここに、トロパン環に結合したアルキル鎖の好ましい配向性はエンドである。
R2およびR3は、独立して、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖低級アルキル基、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル−アルキル、2−チエニル、2−ピリジル、フェニル、4個までの炭素原子を有するアルキル基により置換されているフェニルおよび4個までの炭素原子を有するアルコキシ基により置換されているフェニルからなる群から選択される。
は、N原子の正電荷に付随するアニオンである。Xは、限定するものではないが、クロライド、ブロマイド、ヨウダイド、スルフェート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネートであってもよい。
【0013】
本発明の代表的な例としては:
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエチル)−8,8−ジエチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロマイド;および
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエチル)−8,8−ジエチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン4−メチルベンゼンスルホネート、
が挙げられる。
【0014】
製造方法
式(I)で示される化合物は、米国特許第2800478号(出典明示により本明細書に組み入れる)に記載されているように、当該分野でよく知られた合成方法を用いて得ることができる。
【0015】
合成実施例
本発明の上記合成実施例は、米国特許第2800478号(出典明示により本明細書に組み入れる)に記載の実施例を参照する。
【0016】
生物学的実施例
mAChRでの本発明の化合物の阻害効果を、以下のインビトロおよびインビボ機能アッセイにより測定する:
【0017】
カルシウム動員による受容体活性化の阻害分析:
CHO細胞上で発現するmAChRsに対する刺激を、上記のように(H. M.Sarau et al, 1999. Mol. Pharmacol. 56, 657-663)に受容体―活性化カルシウム動員をモニターすることにより分析した。MmAChRsを安定に発現するCHO細胞を、96ウェルの黒色壁/透明底部プレートに蒔いた。18〜24時間後、培地を吸引し、100μlのLoad培地(EMEM培地:アール塩および0.1%のRIA−グレードBSA(Sigma,St.Louis MO))、4μMのFluo3−アセトキシメチルエステル蛍光インジケーター色素(Fluo−3AM、Molecular Probes,Eugene,OR)で置換し、37℃で1時間インキュベートした。色素を含む培地を吸引し、新しい培地(Fluo−3AMなし)で置換し、さらに細胞を37℃で10分間インキュベートした。ついで細胞を3回洗浄し、100μlのアッセイバッファー(0.1%のゼラチン(Sigma)、120mMのNaCl、4.6mMのKCl、1mMのKHPO、25mMのNaHCO、1.0mMのCaCl、1.1mMのMgCl、11mMのグルコース、20mMのHEPES(pH7.4))中、37℃で10分間インキュベートした。50μlの化合物(1×10−11〜1×10−5M(アッセイ終了時))を添加し、プレートを37℃で10分間インキュベートした。プレートを蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR、Molecular Probes)にセットし、色素を負荷した細胞を6ワットのアルゴンレーザーからの励起光(488nm)に曝した。0.1%のBSAを含むバッファー中で調製した50μlのアセチルコリン(0.1〜10nMの最終)を毎秒50μlの割合で添加することにより細胞を活性化した。細胞内カルシウム濃度の変化としてモニターされるカルシウム動員は、566nmの発光強度の変化として測定される。発光強度変化は直接的に細胞内カルシウムレベルに関連している。全96ウェルから放出された蛍光を冷却CCDカメラで同時に測定した。毎秒データポイントを集めた。ついでGraphPad PRISMソフトウェアを用いてこのデータをプロットして解析した。
【0018】
ムスカリン性受容体放射性リガンド結合アッセイ
SPA中の0.5nMの[H]−N−メチルスコポラミン(NMS)を用いる放射性リガンド結合試験フォーマットを、ムスカリン性アンタゴニストのM、M、M、MおよびMムスカリン性アセチルコリン受容体への結合を評価するために用いる。96ウェルプレートにおいて、SPAビーズを、受容体含有膜と、40℃で30分間前もってインキュベートする。ついで、50mMのHEPESおよび試験化合物を加え、室温にて(振盪)2時間インキュベートする。ついで、ビーズを沈降させ、シンチレーションカウンターを用いて計数する。
【0019】
単離したモルモット気管における効力および作用時間の評価
成熟した雄のハートリーギニーピッグ(Hartely guinea pig)(Charles River,Raleigh,NC;400〜600グラム)から気管を除去し、修飾クレーブス−ヘンレスイ(Krebs-Henseleit)溶液に置いた。溶液の組成は、(mM):NaCl(113.0)、KCl(4.8)、CaCl(2.5)、KHPO(1.2)、MgSO(1.2)、NaHCO(25.0)およびデキストロース(11.0)であり、これらを95%のO:5%のCOで通気し、37℃で維持した。各々の気管の付着組織を洗浄し、縦方向に開放した。上皮を、綿棒で上皮表面をゆっくりと擦ることにより除去した。個々のストリップを、約2軟骨輪の幅で切断し、クレーブス−ヘンレスイ溶液を含有する、Grass FT03C力量変異変換器に接続された、10−mlのウォータージャケット組織浴に絹糸により吊した。力学応答を、AppleG4コンピュータ上で動作するMP100WS/Acknowledgeデータ収集システム(BIOPAC Systems,Goleta,CA,www.biopac.com)により記録した。組織を、1.5gの静止張力下で平衡させ、長さ−張力評価により測定して最適化し、1時間、15分毎にクレーブス−ヘンレスイ溶液で洗浄した。平衡期間後、肺組織を10μMのカルバコールで安定状態に達するまで収縮させ、これをデータ分析標準収縮とした。ついで、組織を、基本状態に達するまで1時間にわたって15分毎に洗浄した。ついで、調製物を実験の開始前少なくとも30分間静置した。
【0020】
濃度−応答曲線を、カルバコールのハーフ−ログ増分での蓄積添加(Van Rossum, 1963, Arch. Int. Pharmacodyn., 143:299)を1nMで開始することにより得た。各々の濃縮物を、応答が停止するまで調製物に接触させて、ついで、カルバコール濃縮物を連続して加えた。ペア組織を、mAChRアンタゴニスト化合物またはビヒクルに30分間曝露し、ついで、カルバコール蓄積濃度−応答曲線を得た。すべてのデータは、nを異なる動物の数として、平均±平均の標準誤差(s.e.m.)として得た。
【0021】
表面潅流(superfusion)(作用時間)試験に関しては、組織を、連続的に、2ml/分のクレーブス−ヘンレスイ溶液で、実験期間中表面潅流した。アゴニストおよびアンタゴニストの貯蔵溶液を、22−ゲージニードルを表面潅流チューブに挿入して潅流した(0.02ml/分)。機械的応答を、Macintosh G4 コンピュータ(Apple,Cupertino,CA,www.apple.com)をインターフェースとする市販のデータ収集システム(MP100WS/Acknowledge;BIOPAC Systems,Goleta,CA,www.biopac.com)を用いて記録した。組織を1.5gの静止張力で吊した。60分の平衡期間後、組織をカルバコール(1μM)で、実験期間中収縮させた。持続収縮に達すると、イソプロテレノール(10μM)を投与して組織を最大限に弛緩させ、この変化を基準とした。イソプロテレノール曝露を終了し、カルバコール−誘発張力を回復させた。ムスカリン性受容体アンタゴニストを、組織当たり単一の濃縮物で持続レベルの阻害に達するまで潅流した。ついで、化合物を除去すると、もう一度、カルバコール誘発緊張が回復した。
【0022】
以下のパラメータを、各々の濃縮のアンタゴニストに関して測定し、個々の動物に関する平均±S.E.M.として表した。カルバコール−誘発収縮の阻害は、基準応答(イソプロテレノール)のパーセントとして表し、この弛緩の1/2に達するのに必要な時間を測定した(応答の開始)。化合物を除去した後の張力の回復を、最大張力回復の1/2に到達するのに必要な時間として測定した(応答の停止)。アンタゴニストの除去後60および80分で、阻害の残存レベルを測定し、イソプロテレノール基準のパーセントとして表した。
【0023】
アンタゴニスト濃度−応答曲線を、アンタゴニストの使用中止の0、60および180−分後の最大弛緩データをプロットすることにより得た。シフトととも呼ばれる回復を、0−分阻害曲線IC50および60および180分で同様の張力回復が得られる化合物の濃度の比から計算した。
【0024】
応答の開始および停止の半分の時間を、対応する濃度に対してプロットし、そのデータを非直線回帰法に付した。これらの値を、IC50(阻害濃度−応答曲線から決定)と推定し、Ot50(IC50濃度での開始応答の半分に達するのに必要な時間)およびRt50(IC50濃度での回復応答の半分に達するのに必要な時間)を指定した。
【0025】
メタコリン誘発性気管支収縮−効力および作用時間
メタコリンに対する気道応答を意識のある自由なBalbCマウス(各群6匹)にて測定した。バロメトリックプレチスモグラフを用い、メタコリンで気管支を攻撃した場合に生じる気道抵抗の変化と相関関係にあることがわかっている(2)、単位のない測定値である、ポウズ(Penh)の増加を測定した。マウスを50μlのビヒクル(10%DMSO)中の化合物(0.003〜10μg/マウス)50μlで鼻腔内(i.n.)的に前処理し、ついでプレチスモグラフのチャンバーに、薬剤投与後所定の時間(15分〜96時間)入れた。効力の測定に関しては、所定の薬剤に対する用量反応を測定し、すべての測定は、薬剤を鼻腔内投与した後15分で行った。作用時間の測定に関しては、薬剤を鼻腔内投与した後15分〜96時間のいずれかにおいて測定した。
【0026】
チャンバーに入れた時点で、マウスを10分間平衡状態にし、Penhの基線測定を5分間行った。ついで、マウスをメタコリン(10mg/ml)のエアロゾルで2分間攻撃した。メタコリンエアロゾルの攻撃で開始し、その後5分間続けて、Penhを7分間連続して記録した。各マウスのデータをGraphPad PRISMソフトウェアを用いて分析してプロットした。この実験は、投与された化合物の作用時間の測定を可能にする。
【0027】
本発明の化合物は、限定するものではないが、気道障害、例えば慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息、慢性呼吸器閉塞、肺線維症、肺気腫およびアレルギー性鼻炎を含む、種々の兆候の治療に有用である。
【0028】
処方−投与
したがって、本発明は、さらに、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能する誘導体(例えば、塩およびエステル)および医薬上許容される担体または賦形剤、および、所望により、1種以上の他の治療物質を含む、医薬処方を提供する。
【0029】
本明細書において、「活性成分」なる用語は、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能する誘導体を意味する。
【0030】
式(I)で示される化合物は、口または鼻を介する吸入により投与されるだろう。
吸入による肺への局所デリバリー用の乾燥粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジであるか、あるいは、吸入で用いるための薄いアルミニウムホイルのブリスターであってもよい。粉末混合処方は、粉末混合処方は、一般的に、本発明の化合物および適当な粉末基剤(担体/希釈剤/賦形剤物質)、例えばモノ−、ジ−またはポリ−サッカライド(例えば、ラクトースまたはスターチ)、有機または無機塩(例えば、塩化カルシウムカルシウムリン酸塩または塩化ナトリウム)、多価アルコール(例えば、マンニトール)またはその混合物、別に、以下に記載するような、処方の化学的および/または物理的安定性または能力を改善するための1種以上の添加剤またはその混合物の吸入用混合物を含有する。ラクトースの使用が好ましい。各々のカプセルまたはカートリッジは、一般的には、20μg〜10mgの式(I)で示される化合物を、所望により、他の治療的に活性な薬剤と組み合わせて含有しうる。別法として、本発明の化合物は、賦形剤無しで提供されてもよく、あるいは、化合物、所望により他の治療的に活性な薬剤および賦形剤を含む粒子に、共沈またはコーティングにより形成することができる。
【0031】
適当には、薬剤ディスペンサーは、リザーバー乾燥粉末吸入器(RDPI)、複数回投与用乾燥粉末吸入器(MDPI)および計量吸入器(MDI)からなる群より選択される型のものである。
リザーバー乾燥粉末吸入器(RDPI)とは、粉末形の複数回分の(計量されていない用量の)薬剤を入れるのに適するリザーバー型パックを有する吸入器であって、リザーバーからデリバリーの位置に薬剤を計量するための手段を備えた吸入器を意味する。その計量手段は、例えば、第一の位置(カップにリザーバーからの医薬を充填することのできる位置)から第二の位置(計量された薬剤を吸入により患者が利用可能となる位置)に移動させることのできる、計量カップまたは穴の空いたプレートを含んでいてもよい。
【0032】
複数回投与用乾燥粉末吸入器(MDPI)とは、乾燥粉末形の薬剤を分配するのに適する吸入器であって、複数回分の一定量の(またはその一部の)薬剤を含有する(あるいは保持する)複数回投与用パック内に薬剤が含まれているものを意味する。好ましい態様においては、キャリアはブリスターパックの形態であるが、例えば、プリンティング、ペインティングおよび真空吸蔵を含むいずれか適当な方法により薬剤がその上に塗布されているカプセルをベースとするパックの形態あるいはキャリアとすることもできる。
【0033】
処方は(例えば、Diskus(GB2242134を参照)またはDiskhaler(GB2178965、2129691および2169265を参照)にあるように)予め計量することもでき、あるいは(例えば、Turbuhaler(EP69715を参照)にあるように)使用に際して計量することもできる。一例となる単位投与用の装置がRotahaler(GB2064336を参照)である。Diskus吸入装置は、その長さに沿って一定間隔で複数の凹部を有するベースシートと、その部分を密閉して複数のコンテナを限定するが、取り外し可能であるリッドシートとから形成される細長いストリップを含み、各コンテナはその中に式(I)の化合物、好ましくはラクトースと組み合わせて含有する吸入用処方を有する。該ストリップはロールに巻き付けられるように十分にフレキシブルであることが好ましい。そのリッドおよびベースシートはお互いに密閉されないリーディング端部を有し、そのリーディング端部の少なくとも一方は巻き取り手段に取り付けられていることが好ましいであろう。また、そのベースとリッドシートの間の密閉シールはその幅全体にわたっていることも好ましい。リッドシートはベースシートの第1末端から長さ方向にてベースシートから取り外されることが好ましい。
【0034】
一の態様において、複数回投与用パックは、乾燥粉末形の薬剤を閉じ込めるための複数のブリスターを含むブリスターパックである。該ブリスターは薬剤の取り出しを容易にするため標準的な様式にて配置されているのが典型的である。
一の態様において、複数回投与用ブリスターパックは、円盤形のブリスターパック上に一般に円形の様式にて配置されている複数のブリスターを含む。もう一つ別の態様において、複数回投与用ブリスターパックは、例えば、ストリップまたはテープを含む、細長い形態である。
【0035】
複数回投与用ブリスターパックは取り外しが可能であるように相互に確保された2つの部材の間に限定されることが好ましい。米国特許第5,860,419号、第5,873,360号および第5,590,645号はこの一般的な型の薬剤パックを記載する。この態様において、該装置は、通常、部材を取り外し、各薬剤用量にアクセスするための取り外し手段を含むオープニングステーションが設けられている。適当には、該装置は取り外し可能な部材がその長さに沿って一定間隔にある複数の薬剤コンテナを限定する細長いシートである場合の使用に適合し、該装置には各コンテナを順次インデックスするためのインデックス手段が設けられている。より好ましくは、該装置はシートの一方がその中に複数のポケットを有するベースシートであり、シートの他方がリッドシートであり、各ポケットとリッドシートの隣接部分が各コンテナを限定する場合の使用に適合し、該装置はオープニングステーションにあるリッドシートおよびベースシートをバラバラにするための駆動手段を含む。
【0036】
計量吸入器(MDI)とは、薬剤が噴射剤を基剤とするエアロゾル薬剤処方を含有するのに適するエアロゾル容器中に含まれるところの、エアロゾル形の薬剤を分配するのに適する薬剤ディスペンサーを意味する。エアロゾル容器には、典型的には、エアロゾル形態の薬剤処方を患者に放出するための、計量バルブ、例えば、滑りバルブが設けられている。そのエアロゾル容器は、容器を固定した状態でバルブを押すか、あるいはバルブを固定した状態で容器を押すかのいずれかにより開けることのできる、そのようなバルブにより各作動にて所定量の薬剤がデリバリーされるように設計されているのが一般的である。
【0037】
吸入による肺への局所デリバリー用のスプレー組成物は、例えば、水溶液もしくは懸濁液として、または加圧型パック、例えば計量吸入器から、適当な液化推進剤を使用することによりデリバリーされるエアゾルとして処方されていてもよい。吸入に適したエアロゾル組成物は、懸濁液または溶液のいずれでも可能であり、一般的には、式(I)で示される化合物を、所望により他の治療的に活性な成分および適当な推進剤、例えばフルオロカーボンまたは水素−含有クロロフルオロカーボンまたはその混合物、特にヒドロフルオロアルカン、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラ−フルオロエタン、特に、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパンまたはその混合物と組み合わせて含有する。二酸化炭素または他の適当なガスもまた、推進剤として用いることができる。エアロゾル組成物は、賦形剤不含であってもよく、あるいは、所望により、付加的な当該分野でよく知られた処方賦形剤、例えば界面活性剤、例えばオレイン酸またはレシチンおよび共溶媒、例えばエタノールを含有していてもよい。加圧型処方は、一般的には、バルブ(例えば、計量バルブ)で閉じられ、止め金が付いた作動装置に組み込まれる、弾筒(例えば、アルミニウム弾筒)に保持されるだろう。
【0038】
吸入により投与するための医薬は、望ましくは制御された粒度を有する。肺への局所デリバリーのための気管支系への吸入に対して最適な空気力学的粒度は、通常、1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。肺への全身デリバリーを達成するための肺胞への吸入に最適な空気力学的粒度は、約.5〜3μm、好ましくは1〜3μmである。20μmを超える空気力学的粒度を有する粒子は、一般的には、末梢気道に到達するように吸入するには大きすぎる。処方の平均空気力学的粒度は、例えばカスケードインパクション試験により測定することができる。平均幾何学的粒度は、光学的方法、例えばレーザー回折により測定することができる。
【0039】
所望の粒度を得るために、製造される場合、活性成分の粒子は、慣用的な手法、例えば制御結晶化またはナノミリングにより大きさを減少してもよい。望ましいフラクションは、空気分級により分離することができる。別法として、望ましい大きさの粒子は、例えば、所望の大きさの範囲の粒子を生成するための噴霧乾燥パラメータを制御して噴霧乾燥により直接製造することができる。好ましくは、粒子は結晶であるだろうが、望ましい場合、アモルファス物質も、また、用いることができる。賦形剤、例えばラクトースを用いる場合、一般的に、賦形剤の粒度は、本発明の吸入医薬よりも非常に大きく、「粗い」担体が呼吸用に適していない。賦形剤がラクトースである場合、典型的には、85%未満のラクトース粒子が60〜90μmのMMDを有し、15%以上が15μm未満のMMDを有する、粉砕ラクトースとして存在するだろう。担体に加えて乾燥混合物中の添加物質は、呼吸に適する、すなわち、空気力学的に10ミクロン未満であっても、あるいは、呼吸に適さない、すなわち、空気力学的に10ミクロン以上であってもよい。
【0040】
用いることができる適当な添加物質は、アミノ酸、例えばロイシン;水溶性または水に不溶性の、天然または合成界面活性剤、例えばレシチン(例えば、大豆レシチン)および固状脂肪酸(例えば、ラウリン酸、パルミチン酸およびステアリン酸)およびその誘導体(例えば、塩およびエステル);ホスファチジルコリン;糖エステルを含む。また、添加物質は、着色剤、風味マスキング剤(例えば、サッカリン)、抗−静電気剤、滑沢剤(例えば、公開されたPCT出願番号WO87/905213(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと)、化学安定化剤、緩衝剤、保存剤、吸収促進剤および他の当業者に知られた物質を含んでいてもよい。
【0041】
持続放出コーティング物質(例えば、ステアリン酸またはポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリ乳酸)も、また、活性物質または活性物質含有粒子(例えば、米国特許第3,634,582号、GB1,230,087、GB1,381,872(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと)に用いることができる。
【0042】
鼻腔スプレーは、水性または非水性ビヒクルを、添加剤、例えば増粘剤、緩衝塩またはpHを調整するための酸もしくはアルカリ、等張性調整剤または酸化防止剤と一緒に用いて処方することができる。
【0043】
噴霧による吸入用溶液は、水性ビヒクルを、添加剤、例えば酸またはアルカリ、緩衝塩、等張性調整剤または抗菌剤と用いて処方することができる。これらは、濾過またはオートクレーブで加熱することにより滅菌することができ、または非滅菌生成物として提供してもよい。
好ましい単位投与量処方は、本明細書に上記した活性成分の有効な用量またはその適当なフラクションを含有するものである。
【0044】
明細書および請求の範囲を通して、特に記載しない限り、「含む」なる語およびその単数形および進行形などの変形は、所定の数または工程あるいは一群の数または工程を含むことを意図するが、いずれか他の数または工程あるいは一群の数または工程を排除することを意図するものではない、と理解されよう。
本明細書中に引用される、特許および特許出願を含め、すべての刊行物は、その出典を明示することにより本明細書の一部とするものである。
【0045】
前の記載はその好ましい具体例も含めて本発明を十分に開示するものである。本明細書中に具体的に開示される具体例の修飾および改良は添付した請求の範囲の範囲内にある。当業者であれば、さらに工夫することなく、前の記載を用いて本発明を最大限利用することができると考える。したがって、本明細書に記載の実施例は単なる例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではないと解するべきである。独占権または特権を請求する本発明の範囲を添付した請求の範囲にて特定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

[式中:
R1は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖的級アルキル基からなる群から選択され;
R2およびR3は、独立して、直鎖または分枝鎖低級アルキル基(1〜6個の炭素原子を有する)、シクロアルキル基(5〜6個の炭素原子を有する)、シクロアルキル−アルキル(6〜10個の炭素原子を有する)、2−チエニル、2−ピリジル、フェニル、4個までの炭素原子を有するアルキル基により置換されているフェニルおよび4個までの炭素原子を有するアルコキシ基により置換されているフェニルからなる群から選択され;
は、N原子の正電荷に付随するアニオンである]
で示される化合物。
【請求項2】
トロパン環に結合したアルキル鎖の配向性がエンドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエチル)−8,8−ジエチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロマイド;および
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエチル)−8,8−ジエチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン4−メチルベンゼンスルホネート;
からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、クロライド、ブロマイド、ヨウダイド、スルフェート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネートからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物および医薬上許容される担体を含む、ムスカリン性アセチルコリン受容体介在疾患の治療用の医薬組成物。
【請求項6】
阻害を必要とする哺乳動物におけるアセチルコリンのその受容体への結合の阻害方法であって、安全かつ有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項7】
アセチルコリンがその受容体に結合する、ムスカリン性アセチルコリン受容体介在疾患の治療方法であって、安全かつ有効な量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項8】
疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息、慢性呼吸器閉塞、肺線維症、肺気腫およびアレルギー性鼻炎からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
投与が、口または鼻を介する吸入により行われる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
投与が、リザーバー乾燥粉末吸入器、複数回投与乾燥粉末吸入器または定量投与吸入器から選択される機械的ディスペンサーにより行われる、請求項7記載の方法。
【請求項11】
化合物がヒトに投与され、1mgの投与量で12時間以上の作用時間を有する、請求項7記載の方法。
【請求項12】
化合物が24時間以上の作用時間を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
化合物が36時間以上の作用時間を有する、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2007−535477(P2007−535477A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520388(P2006−520388)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/023042
【国際公開番号】WO2005/009440
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】