説明

メアンダコイル、メアンダコイルの製造方法及び電磁超音波トランスデューサ

【課題】 メアンダコイルにおいて、材料までの距離を変化させることなく送受信効率を向上させる。
【解決手段】本発明のメアンダコイルは、同方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束されて構成された第1導線群と、第1導線群の導線に流れる電流とは逆方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束されて構成された第2導線群とを有しており、第1導線群と第2導線群とが平面上に互いに等距離をもって且つ平面上で交互に並ぶように配備されていることを特徴とするものである。この第1導線群は導線を平面が形成された巻芯の周りを同方向にn回に亘って巻き回して形成されており、また第2導線群は導線を巻芯の周りを第1導線群とは反対の方向に向かってn回に亘って巻き回して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メアンダコイル、このメアンダコイルの製造方法及びこのメアンダコイルを用いた電磁超音波トランスデューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
材料の表面欠陥や内部欠陥を検出したり、材料特性や材料の温度を測定したりするために、超音波を用いた方法がある。このような超音波は例えば圧電素子により発生させることができ、水やグリセリンなどの接触媒質を介して圧電素子を材料に接触させることで材料内部に伝達される。ところが、この方式で超音波検査を行う際は、圧電素子を材料に必ず接触させなければならず、圧延中の板などに対するオンライン検査には適用が困難であるという問題があった。
そこで、近年になって非接触式で材料の超音波検査が可能な電磁超音波トランスデューサ(EMAT:Electro Magnetic Acoustic Transducer)を用いた超音波検査が着目されている。この電磁超音波トランスデューサは、静磁場を発生させる永久磁石を備えた静磁場発生装置と、静磁場発生装置により形成された静磁場内に渦電流を生起させるメアンダコイル(櫛型形状のコイル)やレーストラック型コイルなどを備えている。
【0003】
この電磁超音波トランスデューサを用いて超音波を発生させる場合は、例えばメアンダコイルにパルス電流を流し、静磁場内の材料に渦電流を誘起させて、静磁場と渦電流との相互作用により発生したローレンツカによって材料に超音波が生起される。
ところで、メアンダコイルは、パルス電流の周波数を変化させることで超音波の発生箇所を変化させることができて精密な検査が可能な反面、送受信効率が低いという欠点を有している。つまり、レーストラック型と呼ばれる渦巻き形状のコイルでは巻数が多く構成できるため電流密度も大きくなり送受信効率を高くすることができるが、平面上を蛇行するだけのメアンダコイルの場合は巻数を多くすることができず、有効な対策がないのが現状である。
【0004】
そこで、特許文献1の電磁超音波トランスデューサでは、巻芯の材料側に平板状のメアンダコイルを複数枚重ねて複合型のメアンダコイルを形成している。このように平板状のメアンダコイルを複数枚重ねれば、メアンダコイルの直線部分が重なって電流密度を大きくすることができ送受信効率も向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−86797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、メアンダコイルを用いた電磁超音波トランスデューサでは、材料までの距離(リフトオフ)を大きくすると送受信効率が急激に悪化することが知られている。それゆえ、巻芯の厚み方向に複数枚のメアンダコイルを重ねると、材料から遠い側にあるメアンダコイルでは材料までの距離が大きくなり過ぎて、電流密度を大きくできても送受信効率はあまり向上しない。
電磁超音波トランスデューサ自身を材料に近づけることもできるが、あまり電磁超音波トランスデューサを材料に近づけ過ぎるとメアンダコイルが材料に衝突して電磁超音波トランスデューサが破損する虞が高くなる。
【0007】
それゆえ、特許文献1の電磁超音波トランスデューサでも、送受信効率が十分とは言い難かった。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、材料までの距離を変化させることなく送受信効率を向上させることができるメアンダコイル、メアンダコイルの製造方法及びこのメアンダコイルを用いた電磁超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のメアンダコイルは、同方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束されて構成された第1導線群と、前記第1導線群の導線に流れる電流とは逆方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束されて構成された第2導線群とを有し、前記第1導線群と第2導線群とが前記平面上に互いに等距離をもって且つ前記平面上で交互に並ぶように配備されていることを特徴とするものである。
本発明者は、材料までの距離を変化させないようにするには、導線を平面と垂直な方向に沿って積層するのではなく、平面に沿って並べて電流密度を高めれば良いのではないかと考えた。そして、同方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束された導線群を平面に沿って等距離に並べたメアンダコイルを用いれば、材料までの距離を変化させることなく送受信効率が大きく向上できることを知見して本発明を完成させたのである。
【0009】
なお、このようなメアンダコイルとしては、前記第1導線群と第2導線群とが互いにn本の導線を等しい間隔で並べて構成されており、前記第1導線群のi(ただし、iは、i≦nの整数)本目の導線と第2導線群のi本目の導線との距離が全ての導線に関して同一とされているものを採用することができる。
このように第1導線群と第2導線群とで導線群を構成する導線の本数や間隔を同じにすれば、それぞれの導線群を1つの導線として捉えて線間距離や入射角を算出することができるようになり、超音波の制御も容易に行えるようになる。
【0010】
このようなメアンダコイルとしては、例えば前記第1導線群が前記導線を前記平面が形成された巻芯の周りを同方向にn回に亘って巻き回して形成されており、前記第2導線群が前記導線を前記巻芯の周りを前記第1導線群とは反対の方向に向かってn回に亘って巻き回して形成されたものを採用することができる。
このように導線を互いに異なる方向に向かって巻芯の回りを巻き回わせば、巻芯の表面(平面)に沿って複数本の導線を並束することが可能となり、上述の第1導線群と第2導線群とを容易に形成することが可能となる。
【0011】
また、前記第1導線群と第2導線群とは、単一の前記導線から形成されると共に直列に接続されているのが好ましい。このように単一の導線から各導線群を形成すれば、電流消費量を変えずに平面の電流密度だけを向上させてメアンダコイルの送受信効率を向上させることが可能となる。
より具体的には、上述のメアンダコイルは次のようにして形成することができる。まず、前記導線を前記平面が形成された巻芯の周りを同方向にn回に亘って巻き回すことで第1導線群を形成し、前記導線を巻芯の表面に沿って軸方向に這わせ、次に、前記導線を前記巻芯の周りを前記第1導線群とは反対の方向に向かってn回に亘って巻き回すことで第2導線群を形成する。
【0012】
このようにすれば単一の導線から前記第1導線群と第2導線群とを軸方向に順次形成することができ、上述のメアンダコイルを簡単に形成することが可能となる。
また、本発明のメアンダコイルの製造方法は、巻芯の周りを同方向にn回に亘って導線を巻き回して、同方向に電流が流れる複数本の導線が前記巻芯に形成された平面上に並束された第1導線群を形成し、前記導線を前記巻芯の表面に沿って軸方向に這わせ、次に、前記導線を前記巻芯の周りを前記第1導線群とは反対の方向に向かってn回に亘って巻き回して、前記第1導線群の導線に流れる電流とは逆方向に電流が流れる複数本の導線が前記平面上に並束された第2導線群を形成することを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の電磁超音波トランスデューサは、上述のメアンダコイルと、被検査体に静磁場を発生させる静磁場発生装置と、を備えており、前記磁場発生装置により発生した磁場領域の被検査体に前記メアンダコイルを用いて渦電流を発生させることで前記被検査体に超音波を生起させることを特徴とするものである。
このような電磁超音波トランスデューサを用いることにより、送受信効率を向上させて材料の内部欠陥や表面欠陥を精度良く検査できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のメアンダコイル、メアンダコイルの製造方法及びこのメアンダコイルを用いた電磁超音波トランスデューサにより、材料までの距離を変化させることなく送受信効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電磁超音波トランスデューサの正面図である。
【図2】第1実施形態のメアンダコイルの斜視図である。
【図3】第1実施形態のメアンダコイルの説明図である。(a)はコイルの平面配置図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】メアンダコイルの巻き方(製造方法)を示す図である。
【図5】磁歪型のメアンダコイルを示す図である。
【図6】本発明のメアンダコイル(a)と従来のメアンダコイル(b)との送受信効率を比較して示すグラフである。
【図7】第2実施形態のメアンダコイルの図である。
【図8】第3実施形態のメアンダコイルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のメアンダコイル1及びこのメアンダコイル1が設けられた電磁超音波トランスデューサ(以下、単にトランスデューサ2という)を図面に基づき説明する。なお、以降の説明において、図1の紙面の上下を、メアンダコイル1及びトランスデューサ2を説明する際の上下とする。また、図1の紙面の左右方向を、メアンダコイル1及びトランスデューサ2を説明する際の軸方向という。
トランスデューサ2は、鋼材などの被検査体3に対して被検査体3の内部に超音波を生起させるものであり、表面欠陥や内部欠陥の超音波検査に用いられる。トランスデューサ2は、永久磁石を備えた静磁場発生装置4を備えており、この静磁場発生装置4により被検査体3の内部に静磁場5を発生させることができるようになっている。また、トランスデューサ2は、静磁場発生装置4により形成された被検査体3内の静磁場領域に渦電流6を生起させるメアンダコイル1を、被検査体3と静磁場発生装置4との間に有している。
【0017】
なお、トランスデューサ2には、静磁場発生装置4により静磁場5が上下方向に発生するローレンツ型と静磁場5が軸方向(水平方向)に発生する磁歪型とがあるが、以降の説明ではローレンツ型を例に挙げてメアンダコイル1及びトランスデューサ2を説明する。
図1に示されるローレンツ型のトランスデューサ2では、静磁場発生装置4は永久磁石の磁極を上下に向けるようにして備えられており、静磁場5は上下方向に沿って被検査体3の内部を貫通するように発生している。ここで、メアンダコイル1にパルス電流7を流すと、被検査体3の上面に渦電流6がパルス電流7とは電流の流れる方向が反対となるように発生する。すると、渦電流6と静磁場5との相互作用によってローレンツ力が軸方向に誘起され、被検査体3の内部に軸方向に向かって超音波が発生する。トランスデューサ2では、このようにして発生した超音波を用いることにより被検査体3の内部欠陥や表面欠陥を検査することが可能となっている。
【0018】
ところで、上述のようなメアンダコイル1を用いたトランスデューサ2では、レーストラック型のコイルのように巻数を大きくすることができず、送受信効率が低いという欠点を有していた。そこで、本発明では、導線8を上下方向(平面13と垂直な方向)に積層するのではなく、導線8を平面13に沿って並べている。
具体的には、本発明のメアンダコイル1は、同方向に電流が流れる複数本の導線8が平面13上に並束されて構成された導線群9で構成されている。この導線群9には、第1導線群11と第2導線群12とがあり、第1導線群11の導線8に流れる電流と第2導線群12の導線8に流れる電流とは互いに反対方向とされている。そして、本発明のメアンダコイル1では、これらの第1導線群11と第2導線群12とが平面13上に互いに等距離をもって且つ平面13上で交互に並ぶように配備されている。
【0019】
次に、第1実施形態のメアンダコイル1について詳しく説明する。
図2に示されるように、第1実施形態のメアンダコイル1は、棒状に形成された巻芯10と、この巻芯10の周囲に巻回された単一の導線8とを有している。巻芯10は、上下方向に厚みをもった立体であり、被検査体3の上方に被検査体3から距離をあけて配備されており、その下側には被検査体3の上面(表面)と平行になるように対面した平面13が形成されていると良い。本実施形態では、巻芯10は角柱状に形成されている。
図3に示されるように、導線8は、電気伝導性に優れる銅線やアルミ線などを用いて形成されており、巻芯10の表面を這うように巻き回されている。具体的には、導線8には、巻芯10の上面の縁に沿って軸方向に直線的に這わせられた部分と、巻芯10の表面を軸垂直方向に向かって巻芯10の軸回りに巻回する部分とがある。この直線状に這わせられた部分と巻き回された部分とは軸方向に交互に配置されており、導線8が巻き回された部分が上述した導線群9のいずれかとなっている。
【0020】
導線群9には単一の導線8を巻き回して成る第1導線群11と第2導線群12とがあり、これらの第1導線群11と第2導線群12とは導線8がn回(図例では3回)に亘ってそれぞれ同じ巻数だけ巻き回されて構成されている。
それぞれの導線群9を構成する導線8同士の間隔は第1導線群11と第2導線群12とで同じ間隔とされており、またそれぞれの導線群9は軸方向に等しい間隔をあけて形成されている。それゆえ、第1導線群11のi(ただし、iは、i≦nの整数)本目の導線8と第2導線群12のi本目の導線8との距離は導線群9を構成する全ての導線8に関して同一となる。
【0021】
第1導線群11と第2導線群12とは、単一の導線8を互いに巻き回し方向が反対向きとなるように巻き回したものであり、巻き回し方向が反対であるため電流が流れる方向も逆になっている。
上述のような第1導線群11と第2導線群12とを形成する場合には、単一の導線8を巻芯10に対して以下の手順に従って巻き回すことで形成される。
図4に示されるように、導線8を巻芯10の表面に沿って軸方向に這わせる(S1)。所定の長さだけ導線8を這わせたら、導線8を軸垂直方向に直角に折り曲げて、まず第1導線群11を形成する。
【0022】
第1導線群11を形成するには、軸垂直方向に曲げられた導線8を方向T(上流側から見て軸回りに反時計回りの方向)にn回に亘って巻き回す(S2)。このとき、巻き回された導線8同士の間隔が軸方向に等しくなるように巻き回すことで、複数本の導線8が平面13上に並束された第1導線群11が形成される。
第1導線群11が巻き終わると、導線8を再び直角に折り曲げて、軸方向に向かって巻芯10の表面を這わせる(S3)。そして、導線8を軸方向に第1導線群11の場合と同様に所定の長さだけ這わせたら、導線8を軸垂直方向に直角に折り曲げて、次に第2導線群12を形成する。
【0023】
第2導線群12を形成する際には、導線8を軸垂直方向に曲げる方向を第1導線群11のときとは反対向きの方向すなわち方向T’(上流側から見て軸回りに時計回りの方向)とする。そして、第1導線群11の場合と同様に導線8をn回に亘って軸垂直方向に巻き回す(S4)。このとき、巻き回された導線8同士の間隔が巻芯10の下面で第1導線群11と同様に軸方向に等しくなるように巻き回すことで、複数本の導線8が平面13上に並束された第2導線群12が形成される。
第2導線群12が巻き終わると、導線8を再び直角に折り曲げて、軸方向に向かって巻芯10の表面を這わせる(S5)。そして、上述した手順で第1導線群11を再び巻き回す。このように第1導線群11と第2導線群12とを軸方向に順次形成することで、上述のメアンダコイル1が形成される。
【0024】
第1導線群11及び第2導線群12は導線群9を構成する導線8間ではいずれの導線8も同じ向きに電流が流れており、同じ方向に電流が流れる複数の導線8が束ねられて導線群9となっているため、第1導線群11及び第2導線群12が全体として大きな電流量の1本の導線8として機能する。それゆえ、これらの導線群9を備えたメアンダコイル1により材料に発生する渦電流6の電気量も大きなものとなり、大出力の超音波が発生するため超音波の送受信効率も向上する。
また、第1導線群11及び第2導線群12は、それぞれの導線群9を構成する導線8の本数や導線8同士の間隔が同じになるように形成されており、導線群9同士の間隔も一定とされているため、従来のメアンダコイル1において成立していたパルス電流7の周波数と超音波の入射角との関係をそのまま利用することができる。
【0025】
すなわち、パルス電流7の周波数をf[Hz]、音速をV[m/s]、各導線群9の中心線間の距離をW[m]としたときに、超音波の入射角θ[rad]は以下の式(1)で導かれる。なお、この入射角θは、被検査体3の表面に対して超音波が法線方向に発生する場合を基準として、超音波が法線に対して何度傾斜しているかで示される。
【0026】
【数1】

【0027】
それゆえ、上述のメアンダコイル1を備えたトランスデューサ2では、式(1)の関係に基づいて任意の入射角で超音波を被検査体3に発生させることが可能となり、材料内の特定の部分だけに超音波を発生して内部欠陥や表面欠陥を精度良く検査することが可能となる。
【0028】
なお、上述のメアンダコイル1はローレンツ型のトランスデューサ2に用いられたものの例であったが、このようなメアンダコイル1は磁歪型のトランスデューサ2にも用いることもできる。
図5に示されるように、磁歪型のトランスデューサ2は、互いに距離をあけて且つ互いに異なる磁極を対面させるように一組の永久磁石が水平に並べられた静磁場発生装置4を有しており、これら一組の永久磁石を用いて軸方向(水平方向)に静磁場5を付与できるように構成されている。このトランスデューサ2には一組の永久磁石の間に上述のメアンダコイル1が配置されており、メアンダコイル1にパルス電流7を流すと材料に大きな電流密度の渦電流6を誘起できるようになっている。それゆえ、軸方向に付与された静磁場5と大きな電流密度の渦電流6とが相互に作用して上下方向に大きなローレンツ力が発生し、大出力の超音波が縦波状態で発生するため、高い送受信効率を実現することができる。
【0029】
例えば、図6(a)に示されるように、単一の導線8を4回に亘って巻き回した第1導線群11と第2導線群12とを備えたメアンダコイル1を配備した磁歪型のトランスデューサ2では、図6(b)に示される従来のメアンダコイル1に比べて4倍程度に増幅された表面SH波(図中の矢印で示される部分)が検出されており、超音波の送受信効率が約4倍になっていることが分かる。このことから、本発明のメアンダコイル1では導線8の巻き回し数に応じて超音波の送受信効率を大きくすることができると判断され、内部欠陥や表面欠陥を精度良く検査することが可能となることがわかる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態のメアンダコイル1及びトランスデューサ2について説明する。
【0030】
図7に示されるように、第2実施形態のトランスデューサ2は、第1実施形態のようにメアンダコイル1が巻芯10の回りに巻き回されているのではなく、メアンダコイル1が静磁場発生装置4の回りに巻き回されている。このメアンダコイル1では、導線8が永久磁石の下側だけでなく上側にも巻き回されており、永久磁石の下側を通る導線8は1層分の厚みだけで済むため、メアンダコイル1の厚みが薄くなった分だけ静磁場発生装置4の永久磁石を材料に近づけることができ、材料に働く静磁場5を第1実施形態のメアンダコイル1より強くして高い送受信効率を実現することができる。
【0031】
また、メアンダコイル1の上側の導線8が下側の導線8から上下方向に離れているため、上側の導線8のリフトオフが大きくなって渦電流6の発生に影響を及ぼす可能性がなくなる。その結果、メアンダコイル1の下側の導線8だけで材料に確実に渦電流6を形成することが可能となり、第1実施形態のメアンダコイル1より良好な送受信効率を実現することができる。
なお、第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、第1実施形態と同じであるためこれらの説明は省略する。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態のメアンダコイル1及びこのメアンダコイル1を用いたトランスデューサ2について説明する。
【0032】
第3実施形態のメアンダコイル1は、第1実施形態のように単一の導線8を巻き回したものではなく、送信用の導線8aと受信用の導線8bとをそれぞれ導線群9として巻き回したものである。
図8(a)に示されるように、第3実施形態のメアンダコイル1では、巻芯10の下面に送信用の導線8aが2回巻き回されて送信用の第1導線群11aが形成されており、その隣に受信用の導線8bが2回巻き回されて受信用の第1導線群11bが形成されている。そして、送信用の第1導線群11aから軸方向に所定間隔をあけた位置に送信用の第2導線群12aが形成されている。この送信用の第2導線群12aは、送信用の導線8aを第1導線群11aと同回数に亘って反対の方向に巻き回したものであり、導線8同士の間隔は第1導線群11aと同じとされている。そして、この送信用の第2導線群12aの隣には受信用の第2導線群12bが送信用の第2導線群12aと同じように受信用の導線8bを巻き回して形成されている。
【0033】
この第3実施形態のメアンダコイル1では、送信用の導線8aにパルス電流7を流すと送信用の第1導線群11a及び第2導線群12aを順に電流が流れ、導線8の巻数に応じた高電流密度の渦電流6が材料に形成されて高出力の超音波が発生される。超音波が材料の表面欠陥や内部欠陥に跳ね返えされると、跳ね返えされた超音波が静磁場発生装置4により形成された静磁場5に戻ってくる。そうすると、発生時とは逆の機構により静磁場5に渦電流6が発生して受信用の第1導線群11b及び第2導線群12に渦電流6とが逆向きに流れる電流が発生し、超音波のエコーを検出することができる。
【0034】
このとき、第3実施形態のメアンダコイル1では、受信用の第1導線群11b及び第2導線群12bが複数の導線8で形成されているため、受信用の導線群9の巻数に応じて検出される電流も大きくなる。それゆえ、第3実施形態のメアンダコイル1では、超音波の検出感度も大きくすることができる。
なお、第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、第1実施形態と同じであるためこれらの説明は省略する。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 メアンダコイル
2 トランスデューサ(電磁超音波トランスデューサ)
3 被検査体
4 静磁場発生装置
5 静磁場
6 渦電流
7 パルス電流
8 導線
8a 送信用の導線
8b 受信用の導線
9 導線群
10 巻芯
11 第1導線群
12 第2導線群
13 平面
θ 超音波の入射角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束されて構成された第1導線群と、
前記第1導線群の導線に流れる電流とは逆方向に電流が流れる複数本の導線が平面上に並束されて構成された第2導線群とを有し、
前記第1導線群と第2導線群とが前記平面上に互いに等距離をもって且つ前記平面上で交互に並ぶように配備されていることを特徴とするメアンダコイル。
【請求項2】
前記第1導線群と第2導線群とは、互いにn本の導線を等しい間隔で並べて構成されており、
前記第1導線群のi(ただし、iは、i≦nの整数)本目の導線と第2導線群のi本目の導線との距離が全ての導線に関して同一とされていることを特徴とする請求項1に記載のメアンダコイル。
【請求項3】
前記第1導線群は、前記導線を前記平面が形成された巻芯の周りを同方向にn回に亘って巻き回して形成されており、
前記第2導線群は、前記導線を前記巻芯の周りを前記第1導線群とは反対の方向に向かってn回に亘って巻き回して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のメアンダコイル。
【請求項4】
前記第1導線群と第2導線群とは、単一の前記導線から形成されると共に直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメアンダコイル。
【請求項5】
巻芯の周りを同方向にn回に亘って導線を巻き回して、同方向に電流が流れる複数本の導線が前記巻芯に形成された平面上に並束された第1導線群を形成し、
前記導線を前記巻芯の表面に沿って軸方向に這わせ、
次に、前記導線を前記巻芯の周りを前記第1導線群とは反対の方向に向かってn回に亘って巻き回して、前記第1導線群の導線に流れる電流とは逆方向に電流が流れる複数本の導線が前記平面上に並束された第2導線群を形成することを特徴とするメアンダコイルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のメアンダコイルと、被検査体に静磁場を発生させる静磁場発生装置と、を備えており、
前記磁場発生装置により発生した磁場領域の被検査体に前記メアンダコイルを用いて渦電流を発生させることで前記被検査体に超音波を生起させることを特徴とする電磁超音波トランスデューサ。
【請求項7】
請求項5に記載された製造方法により製造されるメアンダコイルと、被検査体に静磁場を発生させる静磁場発生装置と、を備えており、
前記磁場発生装置により発生した磁場領域の被検査体に前記メアンダコイルを用いて渦電流を発生させることで前記被検査体に超音波を生起させることを特徴とする電磁超音波トランスデューサ。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−258357(P2010−258357A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109304(P2009−109304)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】