説明

メイラード反応阻害剤及び老化改善剤

【課題】優れたメイラード反応阻害作用を有し、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のメイラード反応阻害剤及び該メイラード反応阻害剤を含有する老化改善剤の提供。
【解決手段】ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種を含有するメイラード反応阻害剤、及び該メイラード反応阻害剤を有効成分として含有する老化改善剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種を含有するメイラード反応阻害剤及び老化改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢による皮膚の老化は、様々な要因が複雑に作用して起こり、その作用機序から光老化と自然老化とに大きく分けられる。近年、皮膚の老化の中でも、とりわけ、自然老化に対し、メイラード(Maillard)反応が深く関与していることが報告されている。
【0003】
メイラード反応とは、アミノ酸、ペプチド、タンパク質などが有するアミノ基と、ケトン、アルデヒド又は還元糖が反応して褐色色素が生成する反応である。
食品分野においては、メイラード反応により生ずる褐色及び風味が好んで利用されており、メイラード反応を促進させる研究が行われている。その一方で、メイラード反応は食品が劣化したときの指標とされる場合もある。そのため、食品の劣化を防ぐことを目的として、メイラード反応の進行を阻害する研究についても行われている。
【0004】
皮膚においては、メイラード反応により褐変した色素が生じ、この色素が蓄積されることが報告されている(非特許文献1及び2参照)。皮膚の主要構成成分であるタンパク質及び皮膚コラーゲンに対して、メイラード反応が引き起こされると、自然老化に伴う皮膚の弾力性の低下やくすみの原因となることが知られている。また、加齢に伴うコラーゲンの変性は、皮膚のハリ及びツヤが消失する一因であることが報告されている。したがって、皮膚においてメイラード反応を阻害することにより、皮膚のタンパク質やコラーゲンを保護し、皮膚のハリ及びツヤが維持されることが期待できる。
【0005】
このようなメイラード反応阻害作用を有する化合物として、アミノグアニジンが報告されている(非特許文献3参照)。しかしながら、前記アミノグアニジンは、メイラード反応阻害作用が強くなく、更に、副作用を有することが報告されている(非特許文献4及び5参照)。
また、メイラード反応阻害作用を有する植物の抽出物として、例えば、カルカデ、ハイビスカス、シャゼンシ、トウニン、マロニエ、ケイシ、ゴミシ、シコン、センナ、トシシ、及びビャッキュウから選択される抽出物(特許文献1参照)、イチイヨウの抽出物、キンオウシの抽出物、又はモクテンリョウの抽出物(特許文献2参照)、鳳凰木の抽出物(特許文献3参照)、パパイヤの抽出物(特許文献4参照)、シモニロの抽出物(特許文献5参照)、などが提案されている。
【0006】
しかしながら、現在までのところ、優れたメイラード反応阻害作用を有し、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、広く使用可能なメイラード反応阻害剤及び老化改善剤は未だ十分には提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−106336号公報
【特許文献2】特許第3695472号公報
【特許文献3】特開2009−67747号公報
【特許文献4】特開2006−298812号公報
【特許文献5】特開2006−219447号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Z.Ernaehrungswiss、Vol.30、p29−45
【非特許文献2】Science、Vol.211、No.4481、p491−493、1981
【非特許文献3】最新医学、49巻・2号、p78−83、1994
【非特許文献4】Autoimmu15:311−314、1993
【非特許文献5】Diabetes43(Suppl1):204、1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたメイラード反応阻害作用を有し、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のメイラード反応阻害剤、及び該メイラード反応阻害剤を含有する老化改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種が、優れたメイラード反応阻害作用を有し、老化改善剤として有用であることを知見した。
前記ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種におけるメイラード反応阻害作用を有する物質の詳細については不明であるが、ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種が優れたメイラード反応阻害作用を有し、肌の硬化、シワ形成、ハリ及びツヤの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成、肌のくすみの原因となる着色の防止乃至改善に有効であることは現在までのところ全く知られておらず、これらのことは、本発明者による新知見である。
【0011】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするメイラード反応阻害剤である。
<2> 前記<1>に記載のメイラード反応阻害剤を有効成分として含有することを特徴とする老化改善剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたメイラード反応阻害作用を有し、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のメイラード反応阻害剤、及び該メイラード反応阻害剤を含有する老化改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(メイラード反応阻害剤)
本発明のメイラード反応阻害剤は、ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0014】
<ローヤルゼリー蛋白の加水分解物>
前記ローヤルゼリー蛋白の加水分解物は、ローヤルゼリーに水及び蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)を添加し、加温及び加圧下で反応させることにより製造することができる。
ローヤルゼリーは、ミツバチ科ヨーロッパミツバチ(学名:Apis melifica L.)のうちの若い働き蜂の咽頭腺からの分泌物であり、女王蜂となる幼虫や成虫となった女王蜂に給餌されるものである。
【0015】
前記ローヤルゼリーには、通常10質量%以上の蛋白質が含まれている。このローヤルゼリー由来の蛋白質分画としては、生ローヤルゼリー、乾燥ローヤルゼリー、ローヤルゼリーをエタノール沈殿、硫安処理、加熱処理等の蛋白変性処理を行って得られた蛋白沈殿物(エタノール沈殿物を含む)、或いは、ローヤルゼリーを抽出、濾過、遠心分離、クロマトグラフィー等の種々の手段により分画後の蛋白質を好適に用いることができる。これらの中でも、ローヤルゼリー飲料の製造時に水不溶性蛋白として副生するローヤルゼリーのエタノール変性蛋白質を使用するのが好ましい。前記エタノール変性蛋白質は、50容量%〜100容量%程度のエタノールを使用してローヤルゼリーからデセン酸等の飲料用の生理活性物質を抽出した残渣の水に対する溶解度が小さい蛋白質として得ることができる。
【0016】
前記ローヤルゼリー蛋白の加水分解物は、蛋白質分解酵素により加水分解を行うことにより得ることができる。前記蛋白質分解酵素には、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼが含まれ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
前記蛋白質分解酵素としては、動物由来(例えば、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パンクレアチン等)、植物由来(例えば、パパイン等)、又は微生物由来(例えば、乳酸菌、酵母、カビ、枯草菌、放線菌等)のエンドペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、若しくは微生物由来(例えば、乳酸菌、アスペルギルス属菌、リゾープス属菌等)などのエキソペプチダーゼを例示することができる。
【0017】
前記蛋白質分解酵素としては、例えば、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)産生ペプチダーゼ(商品名:アクチナーゼAS)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼA、フレーバーザイム)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼP)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:ウマミザイムG、Promod 192P、Promod 194P、スミチームFLAP)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)産生ペプチダーゼ(商品名:Sternzyme B15024)、アスペルギルス属産生ペプチダーゼ(商品名:コクラーゼP)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:ペプチダーゼR)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)産生ペプチダーゼ(商品名:オリエンターゼ22BF、ヌクレイシン)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)産生ペプチダーゼ(商品名:アルカラーゼ)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼS)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)産生ペプチダーゼ(商品名:ニュートラーゼ)、バチルス属産生ペプチダーゼ(商品名:プロタメックス)などが挙げられる。
【0018】
前記ローヤルゼリー蛋白を蛋白質分解酵素で処理する条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水性溶媒中で15℃〜60℃、好ましくは20℃〜50℃、特に37℃前後で、1時間〜72時間程度、好ましくは3時間〜48時間程度処理することにより実施することができる。また、必要に応じて加圧することも好ましい。
前記蛋白質分解酵素の使用量は、例えば蛋白質100g当たり0.01g〜3g程度、好ましくは0.05g〜1g程度である。蛋白質分解酵素は遊離の酵素を用いてもよく、担体に固定化した酵素を使用してもよい。
【0019】
<ノニ果汁>
前記ノニ(Morinda citrifolia)は、日本名をヤエヤマアオキといい、アカネ科の植物であり、沖縄〜小笠原諸島、台湾〜中国、インドの沿岸部等に分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
前記ノニの果実を搾り器などで搾って得られるのがノニ果汁である。得られたノニ果汁は乾燥させて用いられ、凍結乾燥品が好ましい。なお、ノニ果汁を抽出処理した抽出液を用いることもできる。
【0020】
<ウスベニアオイの抽出物>
ウスベニアオイ(学名:Malva sylvestris)は、ヨーロッパ原産であって、アジアやアメリカ等に分布しているアオイ科アオイ属に属する多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。
抽出原料として使用し得るウスベニアオイの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果核部、地上部、又はこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、葉部、花部が特に好ましい。
【0021】
<セキセツソウの抽出物>
セキセツソウ(学名:Centella asiatica)は、セリ科の植物であり、本州西南部、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、台湾、中国等に分布しておりこれらの地域から容易に入手可能である。
抽出原料として使用し得るセキセツソウの部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、樹皮部、根茎部、地上部、又はこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、葉部、茎部が特に好ましい。
【0022】
前記ウスベニアオイの抽出物、及びセキセツソウの抽出物には、ウスベニアオイ、及びセキセツソウから選択される少なくとも1種の植物を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
前記ウスベニアオイの抽出物、及び前記セキセツソウの抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる抽出方法によって、前記の各植物抽出原料から得ることができる。
例えば、前記各植物抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより、メイラード反応阻害作用を有する抽出物を得ることができる。なお、前記各植物抽出原料を採取した後に、直ちに乾燥し、粉砕したものを溶媒抽出に供することが特に好ましい。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0023】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はないが、メイラード反応阻害作用を有する成分を容易に抽出できる点で、極性溶媒が好ましい。前記極性溶媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒などが挙げられる。前記極性溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0024】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0025】
前記親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。
【0026】
なお、2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶液として使用する場合には、抽出効率の観点から、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が7:3〜2:8(質量比)の範囲であることが特に好ましい。
【0027】
本発明において、前記各抽出原料から、メイラード反応阻害作用を有する物質を抽出するにあたって特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
【0028】
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、各抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分間〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物が得られる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常、常温〜95℃にて1〜3時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常、常温〜80℃にて30分間〜3時間程度である。
【0029】
抽出処理により可溶性成分を溶出させた後、ろ過して抽出残渣を除くことによって、抽出液を得ることができる。なお、得られる抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0030】
なお、得られる抽出液は、そのままでもメイラード反応阻害剤として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、前記抽出物は、特有の味及び匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、未精製のままでも実用上支障はない。前記精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0031】
また、前記抽出物は、常法にしたがって製剤化することができ、製剤化したものをメイラード反応阻害剤として使用してもよい。前記抽出物を製剤化する場合には、前記抽出物を、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容され得るキャリアー、又はその他の任意の助剤を用い、常法に従って、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化して提供することができる。また、その他の組成物に配合して使用できる他、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0032】
前記ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種を含有するメイラード反応阻害剤は、メイラード反応阻害作用を有し、特に、その有効成分が経皮的に吸収されたときに、皮膚及び血管壁において生じるメイラード反応を効果的に阻害することができる。
更に、前記メイラード反応阻害剤は、優れたメイラード反応阻害作用を通じて、肌の硬化、シワ形成、ハリ及びツヤの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を防止乃至改善し、皮膚の老化を防止したり、皮膚を美肌にしたりすることができるので、特に、以下に説明する本発明の老化改善剤として好適に利用できる。
【0033】
(老化改善剤)
本発明の老化改善剤は、本発明の前記メイラード反応阻害剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記老化改善剤における前記メイラード反応阻害剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記老化改善剤は、前記メイラード反応阻害剤そのものであってもよい。また、前記その他の成分としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記老化改善剤が有する老化改善作用は、メイラード阻害作用に基づいて発揮される。前記老化改善剤によれば、肌の硬化、シワ形成、ハリ及びツヤの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を防止乃至改善でき、皮膚の老化を防止したり、皮膚を美肌にしたりすることができる。特に前記老化改善作用は、その有効成分が経皮的に吸収されたときに、皮膚及び血管壁に対して効果的に発揮される。
【0034】
本発明のメイラード反応阻害剤は、優れたメイラード反応阻害作用及び前記メイラード反応阻害作用を通じて発揮される優れた老化改善作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、例えば皮膚外用剤に配合するのに好適である。
前記皮膚外用剤は、本発明のメイラード反応阻害剤を有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
【0035】
前記皮膚外用剤は、植物からの抽出物が有するメイラード反応阻害作用、及び、前記メイラード反応阻害作用を通じて発揮される老化改善作用により、肌の硬化、シワ形成、ハリ及びツヤの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を防止乃至改善でき、皮膚の老化を防止したり、皮膚を美肌にしたりすることができる。特に、前記メイラード反応阻害作用及び前記老化改善作用は、その有効成分が経皮的に吸収されたときに、皮膚及び血管壁に対して効果的に発揮される。
【0036】
ここで、前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用する各種薬剤を意味し、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などが含まれる。前記皮膚外用剤の具体例としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、入浴剤などが挙げられる。
【0037】
前記皮膚外用剤における前記メイラード反応阻害剤の配合量としては、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜調整することができるが、標準的な各抽出物に換算して0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0038】
前記皮膚外用剤は、前記メイラード反応阻害剤が有するメイラード反応阻害作用、老化改善作用を妨げない限り、通常の皮膚外用剤の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分を添加することができる。前記その他の成分としては、特に制限はなく、例えば、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤、活性酸素消去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、などが挙げられる。これらの成分は、前記メイラード反応阻害剤と共に併用した場合、相乗的に作用して、通常期待される以上の優れた作用効果をもたらすことがある。
【0039】
なお、本発明のメイラード反応阻害剤及び老化改善剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
<試料No.1>
ウスベニアオイの抽出物(丸善製薬株式会社製、商品名:マローモイスチャー、凍結乾燥品)を用意した。
【0042】
<試料No.2>
セキセツソウの抽出物(丸善製薬株式会社製、商品名:セキセツソウ抽出液、凍結乾燥品)を用意した。
【0043】
<試料No.3>
ローヤルゼリー蛋白の加水分解物(丸善製薬株式会社製、商品名:ビューライズ ローヤルゼリー、凍結乾燥品)を用意した。
【0044】
<試料No.4>
ノニ果汁(丸善製薬株式会社製、商品名:ノニ果汁、凍結乾燥品)を用意した。
【0045】
(実施例1)
−メイラード反応阻害作用試験−
試料No.1〜4の各試料を用い、下記の試験方法によりメイラード反応阻害作用を試験した。
【0046】
各試料の凍結乾燥品を蒸留水に溶解した被験試料溶液50μL、100mmol/LのD(−)−リボース200μL、25mg/mLのリゾチーム200μL、100mmol/Lのリン酸水素ナトリウム(pH7.4)500μL、及び滅菌蒸留水50μLを混合(全量1000μL)し、37℃で静置した。コントロールは、被験試料溶液に代えて蒸留水とした以外は、前記と同様にして調製した。ブランクは、被験試料溶液に代えて蒸留水としたこと、37℃に代えて4℃で静置した以外は、前記と同様にして調製した。
【0047】
7日後、ボルテックスで攪拌し、反応液20μLにSDS−PAGE用サンプルバッファー20μLを混合した後、沸騰浴中で3分間加熱し、分析サンプルとした。アクリルアミド濃度を、分離ゲル15%、濃縮ゲル4%に調製したポリアクリルアミドゲルに分析サンプル20μLをアプライし、電気泳動を行った。
泳動したゲルをクマシーブリリアントブルー染色後脱色し、検出したバンドをKODAK 1D Image Analysis Software EDAS290 Version3.5にて定量的に測定した。このとき、リゾチームの二量体及び三量体にそれぞれ対応するバンドのNet intensity(バンド強度)を求めた。得られた測定結果から、下記数式1によりメイラード反応阻害率を算出した。即ち、前記メイラード反応阻害率は、リゾチームの二量体及び三量体の形成阻害率を指標として算出した。結果を表1に示す。
<数式1>
メイラード反応阻害率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
ただし、前記数式1中、Aは、被験試料添加時の二量体と三量体のNet intensityの和、Bは、被験試料無添加時(コントロール)の二量体と三量体のNet intensityの和、Cは、被験試料無添加時の4℃で静置(ブランク)の二量体と三量体のNet intensityの和を、それぞれ表す。
【0048】
【表1】

表1の結果から、試料No.1〜4の各試料が、それぞれ高いメイラード反応阻害作用を有することが認められた。また、メイラード反応阻害作用の作用強度は、各試料の濃度に依存することが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のメイラード反応阻害剤及び老化改善剤は、優れたメイラード反応阻害作用を有し、皮膚のシワ、弾力性の低下及びくすみなどに代表される生体の老化の防止乃至改善に有効であり、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、入浴剤などに幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウスベニアオイの抽出物、セキセツソウの抽出物、ローヤルゼリー蛋白の加水分解物、及びノニ果汁から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするメイラード反応阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載のメイラード反応阻害剤を有効成分として含有することを特徴とする老化改善剤。