説明

メソポーラスチタニアの製造方法

【課題】工業的に活用範囲の広い小さな細孔径を有するメソポーラスチタニア、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(1)アルカリ性水溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤と、アルコキシチタン及び/又はヒドロキシチタンとを添加し、5〜100℃で脱水縮合させる工程Iを有する、非晶質メソポーラスチタニアの製造方法、及び(2)その方法によって得られる、窒素吸着等温線からBJH法により求めた細孔分布のピークトップが1〜2nm、細孔容量が0.2〜0.5cm3/gの非晶質メソポーラスチタニアである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質メソポーラスチタニア及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質構造をもつ物質は高い表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体として広く使用されている。特に、多孔質構造を形成する細孔の細孔径の分布がシャープである場合、分子篩としての作用が発現し、構造選択性を有する触媒担体の利用や物質分離剤への応用が可能となる。かかる応用のために、均一で微細な細孔を有する多孔体が求められており、メソ領域の細孔を有するメソポーラスチタニアが開発され、注目されている。
【0003】
例えば、非特許文献1〜3には、ドデシルアミン等のアルキル鎖長の長い第1級アミンを用いて、チタン源を水熱反応させる方法が開示されている。しかし、これらの方法では、比較的高温で長時間の水熱反応を行う必要があり、しかも細孔径が2nm以下の非晶質メソポーラスチタニアは得られていない。
非特許文献4には、第四級アンモニウム塩を用いて、酸性領域でチタン源を反応させる方法が開示されているが、この方法でも細孔径2nm以下の非晶質メソポーラスチタニアは得られていない。
【0004】
非特許文献5には、オクタデシルアミンを用いて超音波照射という特異な条件下で反応させる方法が開示されている。
また、特許文献1には、チタン無機塩等のチタニア前駆体を、アニオン性界面活性剤と、カチオン性界面活性剤又は重合阻害剤との存在下で重合させる方法が開示されている。さらに、特許文献2には、カチオン性界面活性剤と酸化硫酸チタンとを水中で混合し、結晶性チタニアを析出させた後、カチオン性界面活性剤を除去する、アナターゼ型結晶構造を有するメソポーラスチタニアの製造方法が開示されている。
このように、従来法によればメソポーラスチタニア粒子は形成されるものの、工業的に満足できる方法ではない。
【0005】
【非特許文献1】D. M. Antonelli, Microporous Mesoporous Mater., 30, 315-319(1999)
【非特許文献2】Hideaki Yoshitake, Tae Sugihara, Takashi Tatsumi, Stud. Surf. Sci. Catal., 141, 251-256 (2002)
【非特許文献3】Hideki Yoshitake,Tae Sugihara, and Takasi Tatsumi, Chem. Mater., 14, 1023-1029(2002)
【非特許文献4】Hirobumi Shibata, and Masahiko Abe, Chem.Mater., 18, 2256-2260(2006)
【非特許文献5】Yang-Qin Wang, and Aharon Gedanken, J.Mater.chem., 11, 521-526(2001)
【特許文献1】特開2003−119024号公報
【特許文献2】特開2006−69877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、工業的に活用範囲の広い小さな細孔径を有する非晶質メソポーラスチタニア、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、第四級アンモニウム型界面活性剤を用いて、アルカリ性水溶液にチタン源を添加し、脱水縮合させることにより、活用範囲の広い非晶質メソポーラスチタニアを効率よく製造しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)、(2)を提供する。
(1)アルカリ性水溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤と、アルコキシチタン及び/又はヒドロキシチタンとを添加し、5〜100℃で脱水縮合させる工程Iを有する、非晶質メソポーラスチタニアの製造方法。
(2)前記(1)の方法によって得られる、窒素吸着等温線からBJH法により求めた細孔分布のピークトップが1〜2nmであり、細孔容量が0.2〜0.5cm3/gである、非晶質メソポーラスチタニア。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温、アルカリ条件下という工業的に有利な穏やかな条件下で、工業的に活用範囲の広い小さな細孔径を有する非晶質メソポーラスチタニアを効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の非晶質メソポーラスチタニアの製造方法は、アルカリ性水溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤と、アルコキシチタン及び/又はヒドロキシチタン(以下、「チタン源」ということがある)とを添加し、5〜100℃で脱水縮合させることを特徴とする。
【0010】
<アルカリ性水溶液>
本発明においては、アルカリ性水溶液を用いることで、Ti−O−Tiの結合を促進し、活用範囲の広い小さな細孔径を有する非晶質メソポーラスチタニアを効率的に製造することができる。また、アルカリ性水溶液中ではチタン源は負に帯電するため、第四級アンモニウム型界面活性剤とチタン源との静電相互作用が働きやすくなるという利点がある。
アルカリ性水溶液に用いるアルカリとしては、水溶性であれば特に制限はない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸塩;リン酸三ナトリウム等のリン酸塩;炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸塩;ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。これらの中では、取り扱い性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム等の珪酸塩が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウムが特に好ましい。
チタン源を反応させるアルカリ性水溶液は、反応促進の観点から、pHを8〜14(25℃)、好ましくはpHを9〜14、特に好ましくは11〜14とする量で用いることが望ましい。なお、水溶液のpHはチタン源の添加により低下するが、チタン源添加終了後のpHが8以下にならないように、水溶液中のアルカリ剤濃度を適宜調整することが好ましい。特に、反応終了後のpHが7以上であることが望まれる。
【0011】
<第四級アンモニウム型界面活性剤>
第四級アンモニウム型界面活性剤は、反応系の均一分散とメソ細孔の形成のために用いられる。本発明においては、ミセルを鋳型としてメソ細孔を形成させるので、使用する第四級アンモニウム型界面活性剤は、臨界ミセル濃度(cmc)を有する化合物であることが必要である。本発明においては、臨界ミセル濃度(cmc)を有しない化合物を用いるとメソ細孔を形成することができない。また、従来法で用いられているアミン化合物は反応性が乏しく、アルキル鎖長が長くなると溶解しにくくなるため加熱が必要になる等の不利があり、好ましくない。
【0012】
第四級アンモニウム型界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
[R1234N]+- (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を示し、R3及びR4の2つが同時にベンジル基であることはない。Xは1価の陰イオンを示す。)
【0013】
一般式(1)におけるR1及びR2の炭素数8〜18のアルキル基(以下、「長鎖アルキル基」ということがある)の具体例としては、各種のオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、炭素数8〜18のアルケニル基の具体例としては、各種のオクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
一般式(1)におけるR1及びR2は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数12〜18、より好ましくは炭素数12〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数12〜18の直鎖状のアルキル基である。
【0014】
一般式(1)におけるR3及びR4は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、各種ブチル基が挙げられ、特に好ましくはメチル基である。また、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基の具体例としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−イソプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
一般式(1)におけるXは、高い結晶性を得るという観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン、硫酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる1種以上である。Xは、より好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオンである。
【0015】
一般式(1)で表される長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩の具体例としては、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド;ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド;ヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ステアリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0016】
また、一般式(1)で表される長鎖アルキル基を有するジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド;ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミド;ジヘキシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジオクチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0017】
これらの第四級アンモニウム型界面活性剤の中では、均一な細孔を形成させる観点から、特に長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムのクロリド、ブロミド又はヒドロキシドがより好ましい。その好適例としては、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドのクロリド、ブロミド又はヒドロキシドが挙げられ、特にドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが好ましい。
【0018】
<チタン源>
本発明においては、チタン源として、アルコキシチタン及び/又はヒドロキシチタンを用いる。好ましくはテトラアルコキシチタン及び/又はテトラアルコキシチタンを加水分解して得られるヒドロキシアルコキシチタンないしテトラヒドロキシチタンである。
チタン源のテトラアルコキシチタンとしては、特に下記一般式(2)で表されるテトラアルコキシチタンが好ましい。
Ti(OR54 (2)
(式中、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
一般式(2)におけるR5は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数2〜6のアルキル基である。
前記チタンテトラアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ビス(2−プロパラノラト)チタン、テトラ2−エチル−1−ヘキサノラートチタン等が挙げられる。
本発明では、均一な細孔を形成させる観点から、特にテトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンが好ましく、これら化合物のアルコキシ基の一部ないし全部を加水分解しヒドロキ基にしたヒドロキシチタンもまた好ましい。
【0019】
<非晶質メソポーラスチタニアの製造方法>
本発明の非晶質メソポーラスチタニアの製造方法は、アルカリ性水溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤と、アルコキシチタン及び/又はテトラヒドロキシチタン(チタン源)とを添加し、5〜100℃で脱水縮合させる工程Iを有する。
工程Iにおける水溶液中の第四級アンモニウム型界面活性剤の含有量は、規則的なメソ細孔を形成させる観点から、その臨界ミセル濃度(cmc)の 倍以下の濃度となる量であることが好ましい。具体的には、好ましくは0.0001〜2モル/L、より好ましくは0.001〜2モル/L、特に好ましくは0.005〜1.5モル/Lである。
工程Iにおける水溶液中のチタン源の含有量は、好ましくは0.0001〜3モル/L、より好ましくは0.005〜3モル/L、特に好ましくは0.005〜2モル/Lである。
【0020】
反応液の調製方法に特に制限はない。例えば、(i)アルカリ性水溶液を撹拌しながら第四級アンモニウム型界面活性剤、チタン源の順に投入する方法、(ii)アルカリ性水溶液を撹拌しながら第四級アンモニウム型界面活性剤、及びチタン源を同時に投入する方法等を採用することができるが、前記(i)の方法が好ましい。
第四級アンモニウム型界面活性剤、及びチタン源を含有するアルカリ性水溶液には、本発明の非晶質メソポーラスチタニアの形成を阻害しない限り、その他の成分として、メタノール等の有機化合物や、無機化合物等の他の成分を添加してもよく、他の金属を担持させたい場合は、それらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加することもできる。
【0021】
チタン源を脱水縮合させて非晶質メソポーラスチタニアを形成させる場合の反応温度は、5〜100℃であり、好ましくは10〜80℃である。反応温度が100℃を超えると、細孔容積が小さくなり、細孔径分布も広がる上に、BET表面積も小さくなる。更に温度が高すぎるとチタニアがアナターゼ型に結晶化し、(光)触媒活性が発現するので、樹脂添加剤や不安定有機物の安定化又は分離を目的とする用途には不向きとなる。
本発明方法においては、5〜100℃の温度で所定時間撹拌した後、静置して、メソポーラスチタニアを析出させ、その後必要に応じて熟成させることにより、メソポーラスチタニアを効率的に得ることができる。
反応時間は温度により異なるが、通常5〜100℃で0.1〜24時間、好ましくは10〜80℃で0.5〜10時間撹拌することによりメソポーラスチタニアが形成される。その後静置して、5時間〜2日間熟成することが好ましい。
得られたメソポーラスチタニアは、水中に懸濁した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、好ましくはメソポーラスチタニアをろ過、遠心分離法等により分離し、水洗、乾燥することが好ましい。
【0022】
工程Iで得られたメソポーラスチタニアは、第四級アンモニウム型界面活性剤等を含む状態で得られる。その第四級アンモニウム型界面活性剤は、メソポーラスチタニア内部、メソ細孔内、チタニア粒子表面に存在すると考えられる。そこで、得られたメソポーラスチタニアを酸性溶液と接触させることにより、第四級アンモニウム型界面活性剤を抽出、除去し、メソ細孔が開いたメソポーラスチタニアを得ることができる。より具体的には、得られたメソポーラスチタニアを酸性溶液中で、1回又は複数回、混合し接触させる。
用いることのできる酸性溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;カチオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた水溶液や有機溶媒溶液が挙げられる。これらの中では無機酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
抽出系が水溶液の場合は、pHを好ましくは1.0〜5.0、より好ましくはpH2以下に調整することが望ましい。有機溶媒溶液を使用する場合は、酸濃度を好ましくは0.001〜1モル/L、より好ましくは0.005〜0.1モル/Lに調整することが望ましい。
その他の抽出操作条件に特に制限はないが、通常、室温〜95℃で1時間〜5日間、好ましくは50〜85℃で1日〜4日間行うことが望ましい。
上記の方法により得られたメソポーラスチタニアは、焼成法により得られたメソポーラスチタニアと異なり、水酸基が多量に存在すると考えられる。
【0023】
<非晶質メソポーラスチタニア粒子>
本発明の非晶質メソポーラスチタニア粒子は、細孔分布が揃っており、細孔分布がシャープであることが特徴の1つである。すなわち、本発明方法により得られる非晶質メソポーラスチタニアは、窒素吸着等温線からBJH法により求めた細孔分布のピークトップが1〜2nmにあり、細孔容量が0.2〜0.5cm3/gである粒子である。その細孔容量は、好ましくは0.21〜0.45cm3/gであり、より好ましくは0.21〜0.40cm3/gであり、特に好ましくは0.21〜0.35cm3/gである。
本発明の非晶質メソポーラスチタニアのBET比表面積は、好ましくは300m2/g以上、より好ましくは400m2/g以上、更に好ましくは450m2/g以上である。
【0024】
非晶質メソポーラスチタニアの構造は、用いるチタン源により異なる。チタン源として有機基を有するものを用いた場合、有機基を有するTi−O−Tiの結合構造が得られ、またチタン源以外に、他の元素、例えばAl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mn、Fe等の金属やB、P、N、S等の非金属元素を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等を製造時又は製造後に添加することで、該金属又は非金属元素をチタン粒子に存在させることができる。
本発明の非晶質メソポーラスチタニアは、樹脂添加剤や不安定有機物の安定化又は分離を目的とする観点から、非晶質であることが好ましい。結晶性チタニアでは(光)触媒活性が発現するので、かかる用途には不向きである。
【実施例】
【0025】
実施例及び比較例で得られたメソポーラスチタニア粒子の物性測定は、以下の方法により行った。
<BET比表面積、平均細孔径、及び細孔容積の測定>
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。前記のBJH法を採用し、ピークトップを平均細孔径とした。前処理は150℃で2時間行った。
細孔容積は、t−plot法によりtの大きな領域における直線の切片から求めた。
【0026】
実施例1
水298gにメタノール98g、1規定水酸化ナトリウム水溶液2.28gを加えた溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤として、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)1.7gを室温下で溶解させた。該溶液(pH12)にテトライソプロポキシチタン(和光純薬工業株式会社製)3.18gをゆっくりと加え、室温(25℃)で5時間攪拌後、12時間熟成させた。得られた析出物をろ別し、水洗、乾燥した後、該乾燥粉0.2gをエタノール30gに1規定塩酸0.5gを混合した溶液(酸濃度0.013mol/L)に加え、80℃で3日間攪拌した。その後、該粉末をろ別し、水洗、乾燥して非晶質メソポーラスチタニア粉末を得た。結果を表1に示す。また、得られた非晶質メソポーラスチタニア粉末の細孔状態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図1に示す。
【0027】
実施例2
水50.7gに水酸化ナトリウム0.58gを加えた水溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤として、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)11.26gを室温下で溶解させた。該溶液(pH14)にテトライソプロポキシチタン(和光純薬工業株式会社製)14.73gをゆっくりと加え、室温(25℃)で5時間攪拌後、12時間熟成させた。得られた析出物をろ別し、水洗、乾燥した後、該乾燥粉0.2gをエタノール30gに1Nの塩酸0.5gを混合した溶液(酸濃度0.013mol/L)に加え、80℃で16時間攪拌した。その後、該粉末をろ別し、水洗、乾燥して非晶質メソポーラスチタニア粉末を得た。結果を表1に示す。
【0028】
実施例3
水500gにメタノール400g、1規定水酸化ナトリウム水溶液2.28gを加えた溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤として、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社製)3.5gを室温下で溶解させた。該溶液(pH12)にテトライソプロポキシチタン(和光純薬工業株式会社製)1.98gをゆっくりと加え、5時間攪拌後、室温(25℃)で12時間熟成させた。得られた析出物をろ別し、水洗、乾燥した後、該乾燥粉0.2gをエタノール30gに1Nの塩酸0.5gを混合した溶液(酸濃度0.013mol/L)に加え、80℃で20時間攪拌した。その後、該粉末をろ別し、水洗、乾燥して非晶質メソポーラスチタニア粉末を得た。結果を表1に示す。
実施例4
実施例3において、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド3.5gを60℃で溶解させた以外は、実施例3と同様の操作を行い、非晶質メソポーラスチタニア粉末を得た。結果を表1に示す。
【0029】
実施例5
実施例1において、テトライソプロポキシチタン3.18gを、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ビス(2−プロパラノラト)チタン(75% 2−プロパノール溶液、和光純薬工業株式会社製)5.51gに変え、抽出条件を80℃で3日間から80℃で22時間に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、非晶質メソポーラスチタニア粉末を得た。結果を表1に示す。
【0030】
実施例6
水14.7gに第四級アンモニウム塩として、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液(東京化成工業株式会社製)12.1gを加えた水溶液(pH14)に、テトライソプロポキシチタン(和光純薬工業株式会社製)14.5gをゆっくりと加え、5時間攪拌後、室温(25℃)で12時間熟成させた。得られた析出物をろ別し、水洗、乾燥した後、該乾燥粉0.2gをエタノール30gに1Nの塩酸0.5gを混合した溶液(酸濃度0.013mol/L)に加え、80℃で20時間攪拌した。その後、該粉末をろ別し、水洗、乾燥した後、チタニア粉末を得た。結果を表1に示す。
【0031】
実施例7
水298gにメタノール98g、1規定水酸化ナトリウム水溶液2.28gを加えた溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤として、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)1.7gを80℃で溶解させた。該溶液(pH12)にテトライソプロポキシチタン(和光純薬工業株式会社製)3.18gをゆっくりと加え、80℃で5時間攪拌、12時間熟成させた。得られた析出物をろ別し、水洗、乾燥した後、該乾燥粉0.2gをエタノール30gに1規定塩酸0.5gを混合した溶液((酸濃度0.013mol/L)に加え、80℃で16時間攪拌した。その後、該粉末をろ別し、水洗、乾燥して非晶質メソポーラスチタニア粉末を得た。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から、本発明の製造方法により得られた非晶質メソポーラスチタニアは、工業的に活用範囲の広い小さな1〜2nmの平均細孔径を有し、細孔容量が0.2〜0.5cm3/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、低温、アルカリ条件下という工業的に有利な穏やかな条件下で、非晶質メソポーラスチタニアの製造が可能である。また、得られる非晶質メソポーラスチタニアは、細孔径が小さいため、例えば構造選択性を有する触媒担体、物質分離剤、酵素や機能性有機化合物の固定化担体等としての利用が可能である。
特に、芳香族化合物等の有機分子の大きさに応じた反応選択性の向上や、芳香族化合物等の有機分子の分離には1〜2nm程度の細孔が必要であり、また色素等の機能性材料の導入には適度な大きさの細孔容量も必要である。この点からも、本発明は有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1で得られた非晶質メソポーラスチタニア粉末の細孔状態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性水溶液に、第四級アンモニウム型界面活性剤と、アルコキシチタン及び/又はヒドロキシチタンとを添加し、5〜100℃で脱水縮合させる工程Iを有する、非晶質メソポーラスチタニアの製造方法。
【請求項2】
工程Iで得られた非晶質メソポーラスチタニアを酸性溶液と接触させる、請求項1に記載の非晶質メソポーラスチタニアの製造方法。
【請求項3】
第四級アンモニウム型界面活性剤が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1又は2に記載の非晶質メソポーラスチタニアの製造方法。
[R1234N]+- (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を示し、R3及びR4の2つが同時にベンジル基であることはない。Xは1価の陰イオンを示す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法によって得られる、窒素吸着等温線からBJH法により求めた細孔分布のピークトップが1〜2nmであり、細孔容量が0.2〜0.5cm3/gである、非晶質メソポーラスチタニア。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−280226(P2008−280226A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128339(P2007−128339)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】