説明

メソポーラスモレキュラーシーブの合成

【課題】 本発明は、MCM−48及びMCM−41メソポーラスモレキュラーシーブの新規な合成方法並びにホウ素置換されたMCM−48メソポーラスモレキュラーシーブ及びその合成方法を提供する。
【解決手段】 テンプレート及び適度な極性を有する溶媒を水に溶解し、生成した水溶液に、ケイ酸ナトリウム粉末、場合によりホウ素化合物を水に溶解して溶媒/SiOモル比が1〜6になるように、一定に撹拌しながら滴下し、次いでpHを調整してゲル混合物を得、生成したゲル混合物を容器に入れてシールし、自然発生圧力下で水熱反応させた後に、冷却し、固体生成物を分離し、場合により洗浄し、温度700〜1000Kで焼成することを含む、Si−MCM−48又はSi−MCM−41或はB−MCM−48の合成方法。ホウ素が、骨格内に4配位されて存在し、焼成後の生成物中のSi/Bモル比が3.3以上の、B−MCM−48。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MCM−48及びMCM−41メソポーラスモレキュラーシーブの新規な合成方法並びにホウ素置換されたMCM−48メソポーラスモレキュラーシーブ及びその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MCM−48は、M41S系統の立方構造のIa3d部材であることは知られている。MCM−48は、三次元細孔構造を有することにより、今までに報告された多数のモレキュラーシーブの中で、機能的なメソポーラス材料として大いに注目を引いている。
【0003】
MCM−48におけるメソポーラスチャンネルの三次元網状組織は、MCM−41の一次元チャンネル(p6mm)に比べて、大きな細孔内拡散速度を示すため、吸着剤又は触媒担体として使用される間に細孔閉塞に対する耐性が一層大きいと考えられる。MCM−48は、また、そのチャンネル系が分岐状であるために、他のナノ構造を合成するための優れた無機テンプレートともなる。
【0004】
MCM−48は、アルキルトリメチルアンモニウムミセル界面でのシリケート重縮合反応を経由してミセル/シリケートの複合体を形成させ、次いでミセルを除去するという、限られた条件下でよって初めて得られた(例えば非特許文献1を参照)。しかし、1995年以前は、MCM−48を得るための再現性は悪かった。MCM−48の合成の信頼性は、ジェミニ界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤との混合物を使用することによって向上された(例えば非特許文献2を参照)。しかし、これらの合成において使用される試薬源であるジェミニ界面活性剤及びテトラエトキシシラン(TEOS)は、特殊な界面活性剤及びシリカ源であることから、高価であり、MCM−48の用途ばかりでなく大量生産も制限されてきた。
【0005】
1998年に、ケイ酸ナトリウムからの多工程手順を用いたMCM−48の新規な合成法が報告されたが、シリカ源を前処理することが必要とされた(例えば非特許文献3を参照)。
【非特許文献1】Beck J.S., Vartuli J.C., Roth W.J.,Leonowicz M.E., Kresge C.T., Schmitt K.D., Chu C.T.-W.,Olson D.H., Sheppard E.W., McCullen S.B., Higgin J.B., Schlenker J.L., J.Am. Chem. Soc. 114 (1992) 10834
【非特許文献2】Chen F. Huang Q.Li., Chem. Mater. 8 (1997) 2685
【非特許文献3】Kim J.M. Kim S. K., Ryoo R., Chem Commun. 1998, 259
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安価なシリカ源材料を使用して、高品質のMCM−48及びMCM−41メソポーラスモレキュラーシーブの新規で、簡単なかつ再現性のある合成方法を提供するものである。また、本発明は、新規な、ホウ素置換されたMCM−48メソポーラスモレキュラーシーブ及びその合成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上述した課題を達成するために、鋭意研究した結果、安価な市販されているシリカ源と特定のテンプレートとから、適度な極性を有する溶媒をSiOに対して特定のモル比で用い、反応液のpHを調整して水熱合成反応を実施することにより、規則性の高いMCM−48及びMCM−41メソポーラスモレキュラーシーブ並びにホウ素を含有するMCM−48メソポーラスモレキュラーシーブを合成することができることを見出して本発明をなすに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、以下の1〜12の発明が提供される。
1.テンプレート及び適度な極性を有する溶媒を水に溶解し、生成した水溶液に、ケイ酸ナトリウム粉末を水に溶解して溶媒/SiOモル比が1〜6になるように、一定に撹拌しながら滴下し、次いでpHを調整してゲル混合物を得、生成したゲル混合物を容器に入れてシールし、自然発生圧力下で水熱反応させた後に、冷却し、固体生成物を分離し、場合により洗浄し、温度700〜1000Kで焼成することを含む、MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブ(Si−MCM−48)の合成方法。
2.テンプレートが有機アンモニウム塩である、前記1記載の合成方法。
3.有機アンモニウム塩が、炭素数8〜36のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアンモニウムの水酸化物又はハロゲン化物である、前記2記載の合成方法。
4.適度な極性を有する溶媒が脂肪族アルコールである、前記1記載の合成方法。
5.pHが9以上である前記1記載の合成方法。
6.ホウ素が、骨格内に4配位されて存在し、焼成後の生成物中のSi/Bモル比が3.3以上の、ホウ素含有MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブ(B−MCM−48)。
7.テンプレート及び適度な極性を有する溶媒を水に溶解し、生成した水溶液に、ケイ酸ナトリウム粉末及びホウ素化合物を水に溶解して溶媒/SiOモル比が1〜6になるように、一定に撹拌しながら滴下し、次いでpHを調整してゲル混合物を得、生成したゲル混合物を容器に入れてシールし、自然発生圧力下で水熱反応させた後に、冷却し、固体生成物を分離し、場合により洗浄し、温度700〜1000Kで焼成することを含む、ホウ素含有MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブの合成方法。
8.テンプレートが有機アンモニウム塩である、前記7記載の合成方法。
9.有機アンモニウム塩が、炭素数8〜36のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアンモニウムの水酸化物又はハロゲン化物である、前記8記載の合成方法。
10.適度な極性を有する溶媒が脂肪族アルコールである、前記7記載の合成方法。
11.ホウ素化合物がホウ酸である、前記7記載の合成方法。
12.pHが9以上である、前記7記載の合成方法。
13.シリカ源としてケイ酸ナトリウム粉末を用い、温度350〜480K、pH10〜13の水熱合成条件で、適度な極性を有する溶媒としてエタノールを用い、エタノール/SiOモル比を4〜6に設定することでMCM−48を、エタノール/シリカ比を4以下に設定することでMCM−41を合成することを特徴とするメソポーラスモレキュラーシーブスの合成方法。8.テンプレートが有機アンモニウム塩である、前記7記載の合成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、入手可能なシリカ源の中で最も安価な粉末珪酸ナトリウムを原料として用いて、規則性の高いSi−MCM−48及びSi−MCM−41並びにB−MCM−48を安価に合成することができる。本発明に従って得られたSi−MCM−48及びB−MCM−48は、大きな細孔内拡散速度を示す。また、構造規則性の高いSi−MCM−41も合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いるシリカ源としては、入手可能なシリカ源の中で最も安価な粉末ケイ酸ナトリウムを原料として用いる。このような粉末ケイ酸ナトリウムとしては、例えば、キシダ化学より市販されているものを用いることができる。
【0011】
テンプレートとしては、晶出中に生成物を結晶格子に取り入れることにより、形成される生成物の結晶構造が決定される化合物を使用することができる。本発明において用いるテンプレートとしては、例えば有機アンモニウム塩、炭素数8〜36のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアンモニウムの水酸化物又はハロゲン化物を挙げることができる。特に、セチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウム(C16TMACl)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(C16TMABr)、ヨウ化セチルトリメチルアンモニウム(C16TMAI)が好ましい。このようなセチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物は、例えば、東京化成より市販されている。
【0012】
MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブの形成において、CTMAをテンプレートとして使用する時に、適度な極性を有する溶媒が、テンプレート充填パラメーター(g=V/aL、ここで、Vは、アルキル末端基によって占められる容積であり、aは、ミセル表面における有効な頭部基であり、Lは、アルキル鎖の動的な長さである)を増大させる。適度な極性を有する溶媒分子は、ミセルコアーに侵入するが、頭部基近くで依然入り交じることから、適度な極性を有する溶媒を加えることによって、Vは、増大され、MCM−48アセンブリーの形成に適したテンプレート充填パラメーターになる。
【0013】
このような溶媒としては、アルコール、有機酸を挙げることができる。アルコールの例は、好ましくは脂肪族アルコール、一層好ましくはC〜C脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−メチルプロパン−2−オール等である。有機酸の例は、酢酸、プロピオン酸である。
【0014】
従来法では、MCM−48を合成するには、ゲル中のSiO/NaOモル比は、1.0/0.25に設定されていた。しかし、ケイ酸ナトリウム粉末の場合は、SiO/NaOモル比は1.0/0.5であり、1.0/0.25から大きく外れていることから、ケイ酸ナトリウム粉末を前処理することなく、ケイ酸ナトリウム粉末から直接にMCM−48を合成することは、考えられなかった。
【0015】
また、反応ゲル中の適度な極性を有する溶媒/SiOモル比を変化させることにより、同一の反応器で、生成物としてMCM−41、MCM−48を選択的に得ることができることを見出した。すなわち、反応ゲル中の適度な極性を有する溶媒/SiOモル比が小さい場合は、MCM−41が得られる。溶媒の種類に応じて、溶媒/SiOモル比は、異なるが、一般に溶媒/SiOモル比が1よりも小さい、好ましくは4よりも小さい場合は、MCM−41が得られる。MCM−41のXRD回折線強度、言い換えると構造の規則性は、溶媒/SiOモル比モル比が大きくなるにつれて高くなる。エタノール/SiOモル比が3の場合に、構造規則性が一番高いMCM−41が得られた。
【0016】
溶媒の種類に応じて、溶媒/SiOモル比は、異なるが、一般に反応ゲル中の極性を有する溶媒/SiOモル比が1〜6、好ましくは4〜6、一層好ましくは4より大きい〜6の場合は、MCM−48が得られる。反応ゲル中の溶媒/SiOモル比が6よりも大きくなると非晶質のメソポーラスが得られる傾向にある。
【0017】
MCM−48を合成する場合、出発原料の量比は、
テンプレート/SiO=0.2〜2.0、好ましくは0.3〜1.0
O/SiO=30〜300、好ましくは40〜200(HOは、ケイ酸ナトリウム粉末に含有されるHOを含む)
適度な極性を有する溶媒/SiO=1〜6、好ましくは4〜6、一層好ましくは4より大きい〜6
のモル比の範囲内で選択することができる。
【0018】
Si−MCM−48を合成するには、テンプレートを水に溶解し、次いで適度な極性を有する溶媒を溶液に添加する。これに、ケイ酸ナトリウム粉末を水に溶解して、一定に撹拌しながら滴下する。次いで、酸を加えてpHを調整してpH9以上、好ましくは10〜13、更に好ましくは11〜12にする。得られるMCM−48の構造規則性が、反応ゲルのpHを調整するときに使用する酸の種類に影響される。例えば、塩酸より硫酸を使用した場合は、MCM−48の構造規則性が高くなる。
【0019】
ゲル混合物が得られる。これを十分に撹拌した後に、生成した均質な混合物を容器に入れてシールし、場合により付加的な熟成時間の後に、加熱して温度300〜700K、好ましくは350〜600K、更に好ましくは350〜480Kにおいて自然発生圧力下で水熱反応させる。水熱反応の時間は、反応温度に応じて変わり、温度が高い程、短くなる。反応の時間は、具体的には、2〜130時間が代表的であり、10〜100時間が好ましい。
【0020】
水熱反応させた後に、冷却し、固体生成物をろ過、遠心分離又はデカンテーションによって分離し、分離した固体生成物を適当な洗浄液、好ましくは水で十分に洗浄する。引き続き固体生成物を、場合により、加熱して一晩風乾して合成されたままのサンプルを得、合成されたままのサンプルを、温度700〜1000Kで焼成してテンプレートを除去する。
【0021】
次に、MCM−48の触媒及び吸着特性を改良する目的で、広範囲のホウ素含量にわたる一連のホウ素置換されたMCM−48立方メソポーラスモレキュラーシーブ(B−MCM−48)の合成について説明する。MCM−48骨格中のSiを三価のホウ素に同型置換することを目標とする。
【0022】
出発原料の量比は、
Si/B≧2
テンプレート/SiO=0.2〜2.0、好ましくは0.3〜1.0
O/SiO=30〜300、好ましくは40〜200(HOは、ケイ酸ナトリウム粉末に含有されるHOを含む)
適度な極性を有する溶媒/SiO=1〜6、好ましくは4〜6、一層好ましくは4より大きい〜6
のモル比の範囲内で選択することができる。
【0023】
ホウ素原料としては、ホウ素化合物やホウ素を含有する任意の物質を使用してよい。ホウ素原料の例として、ホウ酸、ホウ酸塩、等を挙げることができる。
【0024】
B−MCM−48の合成手順は、Si−MCM−48の合成において、出発原料として、更にホウ素原料を加える外は、同じにすることができる。しかし、合成されたままのサンプルを、温度700〜1000Kで焼成してテンプレートを除去する場合には、ホウ素の一部が骨格中4配位されて存在し、残りは骨格外に存在する。
【0025】
このようにして得られた本発明のB−MCM−48は、テンプレート除去後においても、ホウ素が、骨格内に4配位されて存在し、生成物中のSi/Bモル比が3.3以上の、ホウ素含有MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブである。
以下に、本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は、実施例によりいささかも制限されるものではない。
【実施例】
【0026】
実施例において用いた測定装置及び測定方法は、下記の通りである:
Cu−Kα放射を用いた回折計(理学 RINT 2000)を使用することによって、粉末X線回折(XRD)スペクトルを記録した。
Micrometritics Gemini 2370装置を使用して、窒素吸着等温線を77Kにおいて測定した。サンプルを473Kにおいて3時間脱ガスした後に、吸着を実施した。
BET式の線状部分からBET表面積を求めた(P/P=0.05〜0.16)。
吸着等温線及びBJH式の吸着ブランチから、細孔寸法分布を計算した。
JEOL JNM−EX 270 FT NMR SYSTEMを使用して、29Siマジック角回転(MAS)及び11B MAS NMRスペクトルを、それぞれ共鳴周波数79.45MHz及び128.3MHzで測定した。
化学シフトを、29Siについてテトラメチルシラン及び11BについてBF−O(Cを参照した。
Hitachi S−2250N Scanning Electron Microscopeを使用して、走査電子顕微鏡(SEM)画像を記録した。
熱質量分析を、TG−DTA200(Seiko Instruments Inc.)を使用して空気中昇温速度10K/minで実施した。B−MCM−48中のホウ素含量を、Horiba JOBIN YNON Ultima2によるInductive Coupled Plasma Acoustic Emission Spectroscopy(ICP)を使用して測定した。
【0027】
実施例において使用した原料は、下記の通りである:
シリカ源:ケイ酸ナトリウム粉末(NaO・2SiO・2.52HO、キシダ化学)
ホウ素源:ホウ酸(HBO、キシダ化学)
テンプレート:塩化セチルトリメチルアンモニウム(C16TMACl、東京化成)
【0028】
実施例1
16TMAClを蒸留水に溶解し、次いでエタノール5モル/SiO1モルを溶液に添加した。このテンプレート−エタノール混合物に、ケイ酸ナトリウム粉末を蒸留水に溶解して、一定に撹拌しながら滴下した。希硫酸を加えてpHを調整して11.5にした。初期のゲル混合物のモル組成は、下記の通りであった:
1.0SiO/0.5NaO/5.0COH/0.65C16TMACl/120H
【0029】
室温で1時間連続して撹拌した後に、生成した均質な混合物をステンレスオートクレーブ中に入れてシールし、413Kにおいて22時間静的に加熱して自然発生圧力下で水熱反応させた。サンプルを冷却して室温にした後に、固体生成物をろ過によって捕集した。捕集した固体生成物を蒸留水で十分に洗浄し、343Kにおいて一晩風乾して合成されたままのサンプルを得た。合成されたままのサンプルを、最終的に空気中で823Kにおいて6時間焼成してメソ細孔中の有機種を除いた。サンプルの特性を、XRD、FTIR、BET、SEM、TEM、11Bと29Si MAS−NMRを用いて求めた。結果を下記の表1に示す。
【0030】
実施例2
16TMAClを蒸留水に溶解し、次いでエタノール5モル/SiO1モルを溶液に添加した。このテンプレート−エタノール混合物に、ケイ酸ナトリウム粉末及びホウ酸を蒸留水に溶解して、一定に撹拌しながら滴下した。希硫酸を加えてpHを調整して11.5にした。初期のゲル混合物のモル組成は、下記の通りであった:
1.0 SiO/0.5 NaO/x HBO/5.0 COH/0.65 C16TMACl/120 H
xの値は0から0.5の範囲で様々な値に変えた。
【0031】
実施例1と同様の操作を行なって合成されたままのサンプルを得た。合成されたままのサンプルを、最終的に空気中で823Kにおいて6時間焼成してメソ細孔中の有機種を除いた。サンプルの特性を、XRD、FTIR、BET、SEM、TEM、11Bと29Si MAS−NMRを用いて求めた。サンプル中のホウ素含量の分析には、ICPを用いた。結果を下記の表1に示す。
【0032】
Si−MCM−48及びB−MCM−48の合成結果を表1にまとめる。生成物は、SiO又はSiO+Bの回収率に基づいて常に60%よりも高い収率で再現して得られた。ICP分析は、焼成した生成物のSi/Bが、Si/B比2及び5を有する反応ゲルから合成されたサンプルについて、それぞれ約3.3及び8.7であることを示した。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例3
実施例1において、エタノール/SiOモル比をさまざまに変え、pHを11に調整した外は、実施例1と同様にして、MCMモレキュラーシーブを合成した。焼成後のモレキュラーシーブの形態を調べた結果を下記の表2に示す。
【表2】

【0035】
表2から明らかな通りに、エタノール/SiOモル比を4〜6に設定することでMCM−48が合成され、エタノール/シリカ比を4以下に設定することでMCM−41が合成された。
【0036】
以下に、本発明に従って、Si−MCM−48及びB−MCM−48が合成されたことを、図を参照しながら説明する。
【0037】
合成されたままの及び焼成したサンプルの両方の粉末XRDスペクトルを図1に示す。(211)から(431)までの8つのXRD反射ピークは、立方空間群Ia3dの指数付けに一致した。ピークは、すべて良く分解され、高品質のMCM−48メソ細孔網状組織の高い秩序度を示した。焼成した際に、XRDピークの強度は、合成されたままのサンプルに比べて約3倍増大し、テンプレートを除くことによって秩序度が向上されることを示した。
【0038】
異なる仕込みSi/Bモル比のゲルから合成され、焼成したB−MCM−48の粉末XRDスペクトルを図2に示す。Si/B比が5よりも大きい時に(図示せず)、反射ピークは、良く分解され、ピーク強度は、Si−MCM−48のピーク強度と同じであった。Si/B比が5から2に減少するにつれて、ピーク強度は低下した。Si/B比が1の時には、反射ピークは、観測されなかった。本条件下で、2よりも大きいSi/B比において、良好なMCM−48構造を製造することができた。Si/B比が5から2に減少する時に、合成されたままのサンプル及び焼成したサンプルの両方について、格子定数大きくなり、回折ピーク(d211)の2θの低い角度へのわずかなシフトが観測された(表1)。
【0039】
焼成したSi−MCM−48についてのN吸着−脱着等温線を図3に示す。それは、IUPACに規定される通りに典型的な可逆タイプIV吸着−脱着等温線であった。相対圧力(P/P)範囲0.25〜0.3における極めて鋭いステップは、均一なメソ細孔内での毛管凝縮(充填)に相当する。このステップの鋭さは、均一な細孔寸法を反映した。吸着及び脱着サイクルでの明確なヒステリシスループは、観測されなかった。細孔容積対細孔直径のプロットを図4示す。平均細孔直径27.39Åを有する非常に狭い細孔寸法分布が観測された。BET表面積は、1225m/gであり、細孔容積は、1.18m/gであった。
【0040】
異なるSi/B比を有するSi−MCM−48のN吸着等温線を図5に示す。B−MCM−48サンプルは、タイプIV吸着等温線を示し、相対圧力(P/P)範囲0.25〜0.3における屈折の鋭さは、Si/B比が5よりも大きい時(図示せず)のSi−MCM−48の鋭さと同じであった。しかし、Si/B比が5から2に減少するにつれて、屈折は、鋭くなくなり、Si/B比が1の時には、屈折は、完全に消失した。
【0041】
異なるSi/B比を有するB−MCM−48の細孔容積対細孔直径のプロットを図6に示す。Si/B比が2よりも大きい時に、狭い細孔寸法分布が観測され、細孔直径は、Si−MCM−48の細孔直径と同じであった。しかし、Si/B比が2に減少した時に、細孔容積が減少し、Si/B比が1の時には、規則的なピークは、観測されなかった。すべてのB−MCM−48サンプル(Si/B比>2の時)は、表1に示す通りの高い表面積を示した。これらの結果は、合成ゲルにおけるSi/B比が2よりも大きいならば、高い品質のB−MCM−48を得ることができることを示した。
【0042】
Si−MCM−48及びB−MCM−48サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)の画像は、結晶状粒子を示した。B−MCM−48の典型的なSEM像を図7に示す。粒子形態学は、十分に形成された立方(先を切られた菱面体十二面体)結晶のものであった。結晶の寸法は、約1μmであった。
【0043】
焼成したSi−MCM−48の29Si MAS NMRスペクトルを図8に示す。Si(OSi)(OH)ユニット、Si(OSi)(OH)ユニット及びSi(OSi)ユニットの、−92、−102及び−110ppm付近に化学シフトを有する3つの分解されたピークが観測された。Si/B比が減少した時に、Si(OSi)(OH)ユニット/Si(OSi)ユニットスペクトル強度比が増大した。このことは、ケイ素原子の三価ホウ素による置換が、シラノール基の形成を生じることを示唆した。
【0044】
合成されたままの及び焼成した両方のB−MCM−48(Si/B=5)の11B MAS NMRスペクトルを図9の(a)と(b)に示す。−2.74ppmにおける1つだけのピークを、合成されたままのサンプルにより例示し(図9(a))、シリケート骨格中に四面体配位されるホウ素について典型的なものであった。焼成した後に、新しいピークが19ppmに現れた(図9(b))。それは、空気中で焼成した際に、シリケート骨格からホウ素が一部除かれることを示唆した。新しいピークは、骨格にグラフトしたホウ酸塩相又は骨格外のホウ酸により得る。
【0045】
テンプレート分子を除いた後に、ホウ素をシリケート骨格中に四面体配位されるのを保つために、合成されたままのB−MCM−48サンプルを、空気中で焼成する代わりにテンプレートを抽出するために、スラリー化し、メタノールで洗浄した。
【0046】
合成されたままのB−MCM−48(Si/B=5)サンプル1gを、エタノール30ml中に分散させ室温で1時間攪拌した後に、TG−DTA分析した結果、80%を越えるテンプレートが除かれ、B−MCM−48の構造秩序への影響は、観測されなかった。生成したサンプルの11B MAS NMRスペクトルは、−2.7ppmに1つだけの鋭いピークを提示し、80%のテンプレート分子が除かれた後に、脱ホウ素が起こらずかつホウ素原子が四面体配位状態に保たれることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明においては、入手可能なシリカ源の中で最も安価な粉末珪酸ナトリウムを原料として用いて、規則性の高いSi−MCM−48及びSi−MCM−41並びにB−MCM−48を安価に合成することができる。得られたSi−MCM−48及びB−MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブは、特段に大きな細孔内拡散速度を示すため、高性能の分離・吸着剤あるいは触媒としての期待が大きい。Si−MCM−41も安価な分離・吸着剤あるいは触媒として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】合成されたままの及び焼成したサンプルの両方の粉末XRDスペクトルを示す。
【図2】異なる仕込みSi/B比のゲルから合成されたB−MCM−48焼成品の粉末XRDスペクトルを示す。
【図3】焼成したSi−MCM−48についてのN吸着−脱着等温線を示す。
【図4】細孔容積対細孔直径のプロットを示す。
【図5】異なる仕込みSi/B比のゲルから合成されたSi−MCM−48焼成品とB−MCM−48焼成品とのN吸着等温線を示す。
【図6】異なる仕込みSi/B比のゲルから合成されたB−MCM−48の細孔容積対細孔直径のプロットを示す。
【図7】B−MCM−48焼成品の典型的なSEM像を示す
【図8】焼成したB−MCM−48の29Si MAS NMRスペクトルを示す。
【図9】(a)合成されたままのB−MCM−48(Si/B=5)の11B MAS NMRスペクトルを示す。 (b) 焼成した後のB−MCM−48(Si/B=5)の11B MAS NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプレート及び適度な極性を有する溶媒を水に溶解し、生成した水溶液に、ケイ酸ナトリウム粉末を水に溶解して溶媒/SiOモル比が1〜6になるように、一定に撹拌しながら滴下し、次いでpHを調整してゲル混合物を得、生成したゲル混合物を容器に入れてシールし、自然発生圧力下で水熱反応させた後に、冷却し、固体生成物を分離し、場合により洗浄し、温度700〜1000Kで焼成することを含む、MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブの合成方法。
【請求項2】
テンプレートが有機アンモニウム塩である、請求項1記載の合成方法。
【請求項3】
有機アンモニウム塩が、炭素数8〜36のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアンモニウムの水酸化物又はハロゲン化物である、請求項2記載の合成方法。
【請求項4】
適度な極性を有する溶媒が脂肪族アルコールである、請求項1記載の合成方法。
【請求項5】
pHが9以上である請求項1記載の合成方法。
【請求項6】
ホウ素が、骨格内に4配位されて存在し、焼成後の生成物中のSi/Bモル比が3.3以上の、ホウ素含有MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブ。
【請求項7】
テンプレート及び適度な極性を有する溶媒を水に溶解し、生成した水溶液に、ケイ酸ナトリウム粉末及びホウ素化合物を水に溶解して溶媒/SiOモル比が1〜6になるように、一定に撹拌しながら滴下し、次いでpHを調整してゲル混合物を得、生成したゲル混合物を容器に入れてシールし、自然発生圧力下で水熱反応させた後に、冷却し、固体生成物を分離し、場合により洗浄し、温度700〜1000Kで焼成することを含む、ホウ素含有MCM−48メソポーラスモレキュラーシーブの合成方法。
【請求項8】
テンプレートが有機アンモニウム塩である、請求項7記載の合成方法。
【請求項9】
有機アンモニウム塩が、炭素数8〜36のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルアンモニウムの水酸化物又はハロゲン化物である、請求項8記載の合成方法。
【請求項10】
適度な極性を有する溶媒が脂肪族アルコールである、請求項7記載の合成方法。
【請求項11】
ホウ素化合物がホウ酸である、請求項7記載の合成方法。
【請求項12】
pHが9以上である、請求項7又は8記載の合成方法。
【請求項13】
シリカ源としてケイ酸ナトリウム粉末を用い、温度350〜480K、pH10〜13の水熱合成条件で、適度な極性を有する溶媒としてエタノールを用い、エタノール/SiOモル比を4〜6に設定することでMCM−48を、エタノール/シリカ比を4以下に設定することでMCM−41を合成することを特徴とするメソポーラスモレキュラーシーブスの合成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−261852(P2007−261852A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87759(P2006−87759)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月28日 日本吸着学会発行の「第19回日本吸着学会研究発表会講演要旨集」に発表
【出願人】(000173647)財団法人産業創造研究所 (17)
【Fターム(参考)】