説明

メタルハライドランプ、メタルハライドランプ点灯装置

【課題】直流点灯方式の水銀フリーメタルハライドランプにおける寿命特性の大幅な改善を図る。
【解決手段】ハロゲン化物および希ガスとを含み、かつ本質的に水銀を含まない放電媒体が封入された放電空間14の両端に設けられた封止部12a,12bで放電容器11が構成される。放電空間14内には陽極3a2および陰極3b2が対向配置され、陽極3a2の基部側端部に金属箔3a1の一端部が、陰極3b2の基部側端部に金属箔3b1の一端部がそれぞれ結合される。金属箔3a1,3b1は、封止部12a、12bにより気密に封着される。金属箔3a2,3b2の他端部は、それぞれ外部リード3a3,3b3に結合され封止部12a、12b外にそれぞれ導出される。放電容器14内に流れる電流の向きは一定とし、陽極3a2側の金属箔3a1とこの金属箔3a1に接続された外部リード3a3がレニウム金属膜4で被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ランプ、特に直流点灯による水銀フリーのメタルハライドランプ、メタルハライドランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水銀を使用しない、いわゆる水銀フリーメタルハライドランプは、放電容器の気密性を確保するモリブデン箔等からなる金属箔と放電媒体との反応が起こりやすいという問題があり、金属箔を緻密なコーティング膜で被覆を行い、放電媒体との反応防止を図り、水銀を用いないことに伴う寿命特性の低下等の改善が図られている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002-260581公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、水銀フリーのメタルハライドランプを直流点灯させた場合の利点として、自動車用前照灯用の場合、交流点灯の場合に必要な交流変換回路が不要であったり、一方向の電界のためにScやNa等の金属元素が陰極に引かれ、陰極側で発光管の白濁やNa抜けが発生し、陽極側ではこれらの現象は少なく、総括的には直流のほうが発光管の白濁やNa抜けが少なったり、さらにチラツキが少ない等が考えられる。
【0004】
しかしながら、封入している金属ハロゲン化物は、点灯中にアーク内で金属とハロゲンに分解する。それぞれは一部イオン化して、金属は陽イオンに、ハロゲンは陰イオンとなり、ヨウ化亜鉛(ZnI)の場合、ZnとIがアーク中に存在する。
【0005】
水銀フリーハロゲンランプでは、ランプ電圧形成物質として蒸気圧の大きい、例えば第2ハロゲン化物の一種のヨウ化亜鉛が封入されているので、ハロゲン陰イオン(I)のランプ中の量は大きい。このハロゲン陰イオン(I)は直流点灯では陽極に引かれ、その後中性のハロゲン(I)と推定される状態で電極軸と石英ガラスの間を通過して金属箔に到達して金属箔と反応してヨウ化モリブデン(MoI)が生成する。ヨウ化モリブデン(MoI)はMoよりもずっと密度が小さいため、Moがヨウ化モリブデン(MoI)に変化する時に体積が増加して周囲の石英ガラスに多大な応力を及ぼすことになる。
【0006】
自動車前照灯のように頻繁で、始動時に大電流を通過させるランプでは、上記反応が生じると非常に短時間で封止部の石英ガラスにクラックが発生し、発光管はリークし不点となる。また、直流点灯の陽極側の金属箔は、交流点灯の両側の金属箔や直流点灯の陰極側の金属箔よりもずっとヨウ化モリブデン(MoI)になり易く、結果として石英ガラスのリーク、不点が非常に生じやすい。このため寿命特性の劣化を来たしていた。
【0007】
この発明の目的は、直流点灯方式おける寿命特性を向上させた水銀フリーのメタルハライドランプおよびメタルハライドランプ点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、この発明のメタルハライドランプは、放電空間と該放電空間の両端に設けられた封止部とを有する放電容器と、前記放電空間内に対向して配置された陽極および陰極と、前記陽極および陰極の基部側端部にそれぞれ一端部が接合され、かつ前記封止部により気密に封着された金属箔と、前記金属箔の他端部にそれぞれ接合され、かつ前記封止部外に導出された一対の外部リードと、前記放電容器内に封入され、ハロゲン化物および希ガスとを含み、かつ本質的に水銀を含まない放電媒体と、を具備し、前記放電容器内に流れる電流の向きを一定とし、少なくとも前記陽極側の金属箔と該金属箔に接続された前記外部リードがレニウム金属膜で被覆されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、水銀フリーランプで点灯方式を直流とし、陽極側の金属箔、外部リードそれに陽極にレニウム金属膜を被覆したことにより、寿命特性を大幅に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1、図2は、この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための、図1は概略的な構成図、図2は図1の拡大した構成図である。
【0012】
1はメタルハライドランプを構成する内管であり、この中央部の放電容器11の両端部には、板状の封止部12a、12bが形成されており、その両端には、筒状の非封止部13a,13bが形成されている。なお、内管1は耐熱性と透光性に優れた材料であれば使用でき、例えば石英ガラスを使用可能である。
【0013】
放電容器11の内部には、軸方向において、中央部が略円柱状、その両端部がテーパ状の放電空間14が形成されている。この放電空間14の容積は、ショートアーク型の放電ランプでは100μl以下、自動車の前照灯用として用途を指定する場合には、放電空間の容積は10μl〜40μlであるのが望ましい。
【0014】
放電空間14には、金属ハロゲン化物2および希ガスとからなる放電媒体が封入され、放電媒体には本質的に水銀を含まないものとする。次に、放電媒体の具体例について説明する。
【0015】
まず、ハロゲン化金属としては、種々の金属元素のハロゲン化物を用いることができ、例えば主として発光に寄与する金属の第1のハロゲン化物が使用される。第1のハロゲン化物としては、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)および希土類金属から選ばれる一種または複数種の金属元素のハロゲン化物を用いる。NaやScは、特に高効率な発光物質である。
【0016】
ハロゲン化金属は、蒸気圧が相対的に高く、第1のハロゲン化物の金属に比較して可視光域に発光しにくい金属の一種または複数種のハロゲン化物を、第2のハロゲン化物として含むことができる。可視光域に発光しにくい金属とは、第1のハロゲン化物の金属よりエネルギー準位が高く、第1のハロゲン化物の金属が主として発光する状態であればよい。第2のハロゲン化物を添加することで、水銀を含むランプに近いランプ電圧を得ることができ、水銀フリーメタルハライドランプの電気特性や発光特性の改善が可能となる。第2のハロゲン化物は、色度改善等に対しても寄与する。
【0017】
第2のハロゲン化物としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)および錫(Sn)から選ばれる一種または複数種の金属のハロゲン化物が用いられる。
【0018】
ハロゲン化金属を構成するハロゲンとしては、ヨウ素(I)が反応性の低さにおいて最も適当であり、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)の順に反応性が強くなるが、必要に応じ適宜選択可能である。また、ヨウ化物と臭化物のように、異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0019】
ハロゲン化金属の封入量については、例えば主として発光に寄与する第1のハロゲン化物は、放電容器の内容積(放電空間の容積)1cc当たり5mg〜110mgの範囲で封入することができる。さらに好適な範囲は、放電容器の内容積1cc当たり5mg〜35mgである。このような範囲において、光束の立ち上がりを早くすることができるとともに、光色を安定させることができる。第2のハロゲン化物は、放電容器の内容積1cc当たり0.05mg〜200mgの範囲で封入することができる。他のハロゲン化物については適宜調整される。
【0020】
また、希ガスとしては、始動用および緩衝ガスとしての他に、始動直後には主発光を担うように作用する。一般的には放電容器を透過しなければ特に限定されないが、放電容器が石英ガラスで形成される場合は、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)が推奨される。始動直後の発光を希ガスに依存する場合には、最も発光効率が高いのはキセノンであるため、キセノンが最適である。
【0021】
希ガスの封入圧力を高くすると、ランプ電圧が高くなり、同一ランプ電流に対してランプ入力を大きくして、光束の立ち上がり特性を向上させることができる。光束の立ち上がり特性が良いことは、どのような使用目的であっても好都合であるが、特に自動車用前照灯装置や液晶プロジェクタ等では極めて重要である。希ガスは例えば3気圧以上の圧力で封入され、特に5〜15気圧の範囲で封入することが好ましい。
【0022】
さらに、「本質的に水銀が封入されていない」とは、水銀が全く封入されない状態に限らず、放電容器の内容積1cc当たり2mg未満の水銀、好ましくは1mg以下の水銀が存在することの許容を意味する。しかし、水銀が封入されないことは環境上望ましいことである。従来の水銀蒸気により放電ランプの電気特性を維持する場合、短アーク形では放電容器の内容積1cc当たり20mg〜40mg、場合によっては50mg以上の水銀を封入していたことからすれば、この実施形態で使用される水銀量は、本質的に少ないといえる。
【0023】
再び図1において、封止部12a、12bの内部には、マウント3a、3bが封止されている。マウント3a,3bは、金属箔3a1,3b1、陽極3a2、陰極3b2、外部リード3a3,3b3からなる。金属箔3a1,3b1は、例えば、モリブデン(Mo)のような高融点の短冊形状の薄い金属板である。
【0024】
4は、陽極3a2側の金属箔3a1、それに金属箔3a1に接続された外部リード3a3に被覆されたレニウム(Re)金属である。レ二ウム金属膜4は、後述するイオンプレーティング法により200nm〜2500nm範囲の膜厚で被覆している。
【0025】
図3は、この発明のメタルハライドランプを自動車用前照灯に適用した場合について説明するための概略的な構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでは異なる部分を中心して説明する。
【0026】
図3において、メタルハライドランプの主要部を構成する発光管は、2重管構造となっており、発光管内部には例えば石英ガラス製の内管1が配置されている。内管1はランプ軸方向に細長い形状であって、その略中央部には略楕円形の放電容器11が形成されている。放電容器11の両端部には、板状の封止部12a,12bが形成されており、その両端には、筒状の非封止部13a,13bが形成されている。
【0027】
発光管の非封止部13a側には、ソケット7が接続される。それらの接続は、非封止部13a付近の外管9外周面に装着された金属バンド71を、ソケット7の内管1保持側の開口端に形成された4本の金属製の舌片72(図3では、2本を図示)により挟持することによって行なわれている。そして、接続をさらに強化するために、金属バンド71および舌片72の接触点を溶接している。なお、ソケット7の底部には外部リード3a3と図示しないサポートワイヤがそれぞれ接続される端子が形成される。
【0028】
一端が金属箔3a1,3b1の端部に接続された外部リード3a3,3b3の他端は、管軸に沿って封止部12a,12bの外部に延出している。外部に延出した外部リード3b3には、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ6の一端が接続され、その他端は、ソケット7の方向に延出している。そして、管軸と平行するサポートワイヤ6の部分には、セラミックからなる絶縁スリーブ8が被覆されている。
【0029】
上記で構成された内管1の外側には、管軸に沿って石英ガラスに紫外線の遮断作用を有する金属酸化物が添加された筒状の外管9が内管1と略同心状に設けられている。内管1と外管9の接続は、内管1両端の筒状の非封止部13a,13b付近に外管9を溶着することにより行なわれており、内部空間は気密状態である。その空間には、例えば、窒素やネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスを一種または混合して封入したりすることができる。
【0030】
図4は、レ二ウム金属膜をイオンプレーティング法により、陽極3a2の基部側、金属箔3a1、それに金属箔3a1に接続された外部リード3a3に被覆する方法について説明するための説明図である。図5はレ二ウム金属膜が施されるマウントについて説明するための説明図である。
【0031】
図4において、41は高真空にされた真空槽であり、真空槽41の上側には陰極となる基板支持台42に設置された基板43に、図5(a)に示すマウント3aを多数取り付ける。このとき、陽極3a2を下向きにした状態で、外部リード3a3を基板43に固定する。真空槽41の下側の蒸発台44上に置かれたレ二ウム金属Reは、電極放電により加熱され蒸発する。蒸発台44と基板43の間に設置された高周波コイル45により、蒸発したレ二ウム金属Reはイオン化され、加速されてマウント3aの表面に、レニウム金属膜4として被覆される。
【0032】
真空槽41全体は、例えばX軸とY軸方向の2種類の回転を掛けることで、マウント3a全面に均一に被覆される。このとき、高周波コイル45の出力や時間などを制御することにより、被覆の膜厚が決めることができる。
【0033】
なお、レニウム金属膜成膜時には、陽極3a2はかさばる。このことから、図5(b)に示すように、陽極3a2がない状態のマウント3a’を成膜させた場合は、1度にレニウム金属膜を成膜できる個数を多くすることができるという利点がある。陽極3a2と金属箔3a1は、レーザー溶接や抵抗溶接などの接合手段を用いて接合する。
【0034】
このようにしてレニウム金属膜4が被覆されたマウント3aが、図1に示すメタルハライドランプに使用している。金属箔3a1に被覆されたレ二ウム金属膜4は、金属箔3a1に対するハロゲン(I)などの反応を防止する。また、金属箔3a1の表面に形成された高品質のレニウム金属膜4は、金属箔3a1と封止部12aの石英ガラスの密着性をより強固にすることができ、封止部12aの封止力の向上で点滅特性の改善を図れることが判明した。
【0035】
レニウム金属膜4の形成は、イオンプレーティング法の他にメッキ法が考えられる。メッキ法の場合は、外部リード3a3側を支持して、陽極3a2を下にした図5(a)マウント3aを電解液に漬けてレニウム金属Reをメッキすることにより、マウント3aのレニウム金属膜4を被覆させることができる。
【0036】
ここで、この発明のメタルハライドランプを用いた自動車前照用ランプとしての適用する場合の具体例について図1を参照しながら説明する。
【0037】
石英ガラス製の放電容器1の内径Aは、2.6mmで回転楕円形状に成形する。楕円の長軸方向の両端に細長い封止部12a,12bを備えている。陽極3a2、陰極3b2の先端部は、放電空間14に突出させる。陽極3a2、陰極3b2の基部は、封止部12a,12b内において、金属箔3a1,3b1の一端にそれぞれ溶接されている。陽極3a2の先端は、直径Bが0.65mmの球、直径Cが0.35mmの軸形状を有し、材料はドープタングステンである。また、陰極3b2は、直径Dが0.35mmの軸形状を有し、材料は1.0%トリア含有のタングステンである。陽極3a2と陰極3b2の電極間距離Eは4.2mmに設定されている。
【0038】
さらに、封止部12aの直径Fは5mmとし、金属箔3a1は長さを12mm、厚さを20μm、幅を2.0mmとする。放電容器1内には、放電媒体として、希ガス、第1のハロゲン化物および第2のハロゲン化物が封入されている。陰極3b2の金属箔3b1の長さは7mmとする。
【0039】
希ガスとしては、キセノン11気圧を封入した。また、第1のハロゲン化物としてヨウ化スカンジウム(ScI)0.10mg、ヨウ化ナトリウム(NaI)0.25mgを、第2のハロゲン化物としてヨウ化亜鉛(ZnI)0.12mgをそれぞれ封入した。
【0040】
(実施例1)
比較例1は、陽極3a2の金属箔3a1の厚さを20μm、幅を2.0mm、長さを7mmとした。比較例2は、陽極3a2の金属箔3a1の厚さを20μm、幅を2.0mm、長さを14mmとした。
【0041】
実施例は、比較例1と同様に陽極3a2側の金属箔3a1の厚さを20μm、幅を2.0mm、長さを7mmとし、この金属箔3a1と外部リード3a3を溶接で接合した、図5(b)の状態のマウント3a’を、イオンプレーティング法でレ二ウム金属膜4を400nmの膜厚で形成した。
【0042】
このような金属箔3a1、外部リード3a3の仕様のメタルハライドランプを3種類製作し、下記のA〜Dの点灯試験を、直流点灯回路を用い、始動時は75Wで、定常時は35Wの直流電力で行った。
【0043】
(1)…点灯試験A
比較例1,2、実施例の3種類のランプを、10灯づつ35W入力で連続点灯試験を行った。
【0044】
陽極3a2の金属箔3a1と外部リード3a3の接合部に関して、比較例1は酸化が生じ、700時間以内に全数がその近辺の石英がクラックして不点となった。比較例2は、金属箔3a1が長いので金属箔3a1と外部リード3a3の接合部の温度は比較例1に対して低く700時間まで全数、金属箔3a1と外部リード3a3の接合部からクラックすることはなかった。
【0045】
これに対し、実施例では、金属箔3a1と外部リード3a3の接合部の温度は、比較例1と同じであったが、接合が耐熱性のレニウム金属膜4が被膜されているため、モリブデン製の外部リード3a3、金属箔3a1が酸化することはなく、5000時間点灯でも接合部からクラックすることはなかった。
【0046】
比較例2のように、金属箔3a1を長くすれば、クラックは避けられるが、封止部12aの長さが増大して、コンパクト性が失われ、特に自動車用前照灯では問題になる。また、金属箔が長くなると箔クラックが生じやすくなる。
【0047】
金属箔3a1の反応に関しては、比較例1,2とも200時間程度の点灯で金属箔3a1が陽極3a2側から黒化してきてそのためその近辺の石英ガラスにクラックが入ってくる。この場合に陰極3b2側の金属箔3b1は、反応が遅く、ヨウ化モリブデンの生成の証拠である黒色の変色もずっと少ない。
【0048】
比較例2では、金属箔3a1と外部リード3a3の接合部でのクラックの発生はないが、この金属箔3a1の反応、それに伴う金属箔3a1近辺からの封止部12aを形成する石英ガラスのクラック、リークにより1000時間以内に全数不点となった。
【0049】
これに対し、実施例はこの2種類の石英クラックがほとんど無く、全数5000時間点灯可能であった。
【0050】
(2)…点灯試験B
比較例1,2、実施例の3種類のランプを10灯づつ、点灯0.5秒、消灯4秒のサイクルで点灯試験を行った。この試験は、金属箔3a1と遊離ヨウ素(I)との反応の影響をなるべく排除して、封止部12a部の石英ガラスと金属箔3a1の密着性と関連する始動時のストレスの影響を評価するためである。
【0051】
比較例1は、平均8000回の点滅でリーク、不点となり、比較例2は平均5000回の点滅でリーク、不点となった。金属箔3a1が長い方が箔のクラック発生を生じ易いことが確認できた。
【0052】
これに対して、実施例は3万回以上の点滅が可能であった。比較例1と実施例を比較すると、実施例では封止部12aの石英ガラスと金属箔3a1との密着性が向上していることが分かった。これは、レニウム金属膜4が石英ガラスである封止部12aと金属箔3a1の間に介在している効果と考えられる。
【0053】
(3)…点灯試験C
比較例1,2、実施例の3種類のランプを10灯づつ、点灯3秒、消灯4秒のサイクルで点灯試験を行った。この試験では、金属箔3a1と遊離ヨウ素(I)との反応の影響が大きくなる。
【0054】
比較例1では平均3000回、比較例2では平均2500回でそれぞれ不点となった。両方とも金属箔3a1は反応により黒く変色し、金属箔3a1近辺の石英ガラスにクラックが発生し、ここからリークが生じて不点となる。これに対して実施例では、2万回以上の点滅が可能であった。
【0055】
(4)…点灯試験D
比較例1,2、実施例の3種類のランプを10灯づつ、日本電球工業会規格「JEL215」の点滅方式で点灯試験を行った。この点滅は、1サイクル2時間で種々の点灯時間、消灯時間の組み合わせであり、総合的な寿命特性を評価する。
【0056】
比較例1、比較例2とも点灯300時間以内にすべて不点となった。これに対して実施例では全数2000時間以上の点灯が可能であった。
【0057】
(実施例2)
この実施例2のランプ仕様は、実施例1と同じで、厚さが20μm、幅が2.0mm、長さが7mmの金属箔3a1と外部リード3a3と接合させた図5(b)の状態のマウント3a’を、イオンプレーティング法でレ二ウム金属膜4の膜厚を変えて被覆させたものである。膜厚は100nm〜4000nm(4μm)まで100nmずつ変えた。
【0058】
このメタルハライドランプ2灯づつを規格の点滅方式で点灯試験を行った。結果、2000時間以上の点灯時間に達するのは、膜厚200−2500nmの範囲であった。さらに2500時間以上の点灯時間が得られる好適な範囲は、400−2000nmの範囲であった。レ二ウム金属膜4の膜厚が小さいと点灯時間が経つと遊離ハロゲンとの反応が顕著になってくる。また、膜厚が大きいと封止部12aの石英ガラスとの密着性が逆に低下し、点滅のストレスによる石英ガラスにクラックが発生しやすくなる。
【0059】
(実施例3)
この実施例3のランプ仕様は、実施例1と同じで、陽極3a3、厚さが20μm、幅が2.0mm、長さが7mmの金属箔3a1、外部リード3a3が接合された図5(a)の状態のマウント3aを、イオンプレーティング法で400nmのレ二ウム金属膜4を被覆させたランプを実施例3−Aとする。
【0060】
同様に、厚さが20μm、幅が2.0mm、長さが7mmの金属箔3a1と外部リード3a3が接合された図5(b)の状態のマウント3a’を、イオンプレーティング法で400nmのレ二ウム金属膜4を被覆させ、その後陽極3a3を接合させたランプを実施例3−Bとする。
【0061】
この実施例3−A,3−Bの2種類のランプを200本ずつ、日本電球工業会規格の点灯方式で300時間まで点灯した。
【0062】
この点灯時間の間に、実施例3−Aは1本もチラツキは生じなかったが、実施例3−Bでは12本がチラツキを生じた。実施例3−Bでは陽極の電極変形が大きくそのためチラツキが生じやすいが実施例3−Bでは、レニウム金属膜4が陽極3a2に被膜されているため、陽極3a2の変形が小さく、そのためチラツキが生じることはなかった。
【0063】
図6はこの発明の点灯装置に関する一実施形態について説明するための回路図である。この実施形態は、この発明のメタルハライドランプを直流点灯するように構成したものである。
【0064】
同図において、61は直流電源、62はチョッパ、63は制御部、Rはランプ電流検出手段、VRはランプ電圧検出手段、64は始動部、65は図3の構成のメタルハライドランプである。
【0065】
直流電源61には、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。また必要に応じて、電解コンデンサCを並列接続して平滑化を行う。
【0066】
チョッパ62は、直流電圧を所要値の電圧に変換するとともに、メタルハライドランプ65を所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。
【0067】
制御部63は、チョッパ22を制御する。例えば、点灯直後にはメタルハライドランプ65に定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をチョッパ62から流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御部63はランプ電流とランプ電圧との検出信号が帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生させてチョッパ62を定電力制御する。さらに、制御部63には時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されて、これによりランプ電流を制御するように構成されている。
【0068】
ランプ電流検出手段Rは、ランプと直列に挿入されてランプ電流を検出して制御部63に制御入力する。ランプ電圧検出手段VRは、ランプと並列的に接続されてランプ電圧を検出して制御部23に制御入力する。始動部64は、始動時に20kVのパルス電圧をメタルハライドランプ65に供給できるように構成されている。
【0069】
そして、この実施形態のメタルハライドランプ点灯装置を用いてメタルハライドランプを直流点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車用前照灯として必要な電源投入後1秒後に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現することができる。また、直流−交流変換回路が不要で、直流点灯のメタルハライドランプの有利性を享受しながら寿命特性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための概略的な構成図。
【図2】図1要部の拡大示す構成図。
【図3】この発明のメタルハライドランプを自動車前照灯用に適用した場合について説明するための概略的な構成図。
【図4】イオンプレーティング法によるレ二ウム金属の成膜について説明するための概念図。
【図5】この発明のレニウム金属膜を施す対象物について説明するための説明図。
【図6】この発明のメタルハライドランプ点灯装置に関する一実施形態について説明するための回路図。
【符号の説明】
【0071】
1 内管
11 放電容器
12a、12b 封止部
13a,13b 非封止部
14 放電空間
2 金属ハロゲン化物
3a、3b マウント
3a1,3b1 金属箔
3a2 陽極
3b2 陰極
3a3,3b3 外部リード
4 レ二ウム金属膜
61 直流電源
62 チョッパ
63 制御部
64 始動部
65 メタルハライドランプ
R ランプ電流検出手段
VR ランプ電圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間と該放電空間の両端に設けられた封止部とを有する放電容器と、
前記放電空間内に対向して配置された陽極および陰極と、
前記陽極および陰極の基部側端部にそれぞれ一端部が接合され、かつ前記封止部により気密に封着された金属箔と、
前記金属箔の他端部にそれぞれ接合され、かつ前記封止部外に導出された一対の外部リードと、
前記放電容器内に封入され、ハロゲン化物および希ガスとを含み、かつ本質的に水銀を含まない放電媒体と、を具備し、
前記放電容器内に流れる電流の向きを一定とし、少なくとも前記陽極側の金属箔と該金属箔に接続された前記外部リードがレニウム(Re)金属膜で被覆されたことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記レ二ウム金属膜は、前記陽極と該陽極に一端が結合された前記金属箔と該金属箔に一端が結合された前記外部リードにそれぞれ被覆を施したことを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記レニウム金属膜の膜厚は、200nm〜2500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載のメタルハライドランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のメタルハライドランプと、
前記放電容器内に流れる電流の向きが時間とともに変化せず、常に単一方向である電流をメタルハライドランプに供給して点灯する点灯回路と、を具備したことを特徴とするメタルハライドランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−210551(P2008−210551A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43897(P2007−43897)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】