説明

メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマー、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法

【課題】メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌を簡便かつ迅速・確実に検出でき、かつ、その遺伝子型を識別できるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法を提供すること、並びにこれらの方法に適用可能なメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマー及びメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出キットを提供すること。
【解決手段】メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列又はそれと相補的な塩基配列に含まれる連続した少なくとも10以上の塩基配列を備えるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用プライマーを提供する。検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を鋳型に、上記プライマーを用いて該遺伝子の標的領域を増幅させる工程と、この標的領域のDNA断片の増幅の有無に応じて該遺伝子の有無を判断する工程とを含む、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマー及びプライマーセット並びにメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法に関する。さらに本発明は、細菌のβ−ラクタム薬耐性の判定方法及びメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
ペニシリンの発見により、細菌感染症の治療は著しく進歩したが、抗菌薬の使用に伴って耐性菌が出現し、院内感染が問題となった。これにより、さらに強力で幅広い抗菌スペクトルを有する新型の抗菌薬の開発が望まれ、多くの次世代β−ラクタム薬が開発された。
【0003】
ところが、幅広い抗菌スペクトルを有するカルバペネム系抗菌薬が開発された後においても、その分子構造中のβ−ラクタム環を加水分解し、その抗菌作用を無効化するβ−ラクタム薬耐性菌が出現した。このβ−ラクタム薬耐性菌が医療施設内に蔓延すれば、カルバペネム系抗菌薬を含むすべてのβ−ラクタム薬が無効であるため、院内感染の問題はさらに深刻化することになる(非特許文献1)。
【0004】
β−ラクタム薬耐性菌の出現は、カルバペネム系抗菌薬を安易に大量使用した結果であるため、院内感染を防止するには、カルバペネム系抗菌薬を含む全ての抗菌薬を患者の症状に合わせてより慎重に使用することが求められる。したがって、信頼性の高い検査によってβ−ラクタム薬耐性菌の検出を確実に行い、耐性菌についての正確な情報を臨床の現場に伝えることが重要となる。
【0005】
現在、医療施設の検査室でβ−ラクタム薬耐性菌を確実に検出できる試験方法は確立されていないが、以下の方法でβ−ラクタム薬耐性菌を検出できることが報告されている。
【0006】
1つ目の方法は、セファロスポリン系抗菌薬とカルバペネム系抗菌薬とに対してそれぞれ薬剤感受性試験を行い、セファロスポリン系抗菌薬に高度の耐性を示し、かつ、カルバペネム系抗菌薬にも低度又は高度の耐性を示す細菌株を分離する方法である(非特許文献2)。
【0007】
2つ目の方法は、被検細菌を接種した培地の上に、メタロ−β−ラクタマーゼ阻害剤であるチオール化有機酸(例えば、メルカプト酢酸ナトリウム)を含有したディスクとβ−ラクタム薬(例えば、セファロスポリン系抗菌薬、カルバペネム系抗菌薬)を含有したディスクとを置いて培養し、両ディスクの隣接部に発育阻止円が生じるか否かによって、β−ラクタム薬耐性菌を判別する方法である(特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−299388号公報
【非特許文献1】Osanoら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、1994年、38巻、p.71−78
【非特許文献2】伊豫部ら、臨床と微生物、1999年、26巻(2)、p.153−158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、カルバペネム系抗菌薬に対する薬剤感受性試験においては、カルバペネム薬の存在下で、β−ラクタム薬耐性菌がメタロ−β−ラクタマーゼを誘導するのにはある程度の時間を要するため、β−ラクタム薬耐性菌を確実に検出することは困難である。
【0010】
また、抗菌薬を含有させたディスクを用いた試験法においては、各抗菌薬を含有したディスクの準備等の煩雑な作業が伴い、発育阻止円の有無を判定するまでに長時間が必要であるため、簡便かつ迅速にβ−ラクタム薬耐性菌を検出することが困難である。
【0011】
さらに、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列には多様性があり、院内感染の疫学調査においてはその遺伝情報を詳細に解析することが不可欠とされるが、上記の2つの方法では、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の遺伝子型を識別することは不可能である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌を簡便かつ迅速・確実に検出でき、かつ、その遺伝子型を識別できる、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法、β−ラクタム薬耐性菌の検出方法及び細菌のβ−ラクタム薬耐性の判定方法を提供することにある。本発明の目的はまた、これらの方法に適用可能なメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマー及びプライマーセット、並びにメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる課題を解決するべく検討を重ね、等温の遺伝子増幅反応であるLoop mediated isothermal amplification(以下、LAMP)法(国際公開第00/28082号パンフレット)を利用することにより、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌を簡便かつ迅速・確実に検出し、その遺伝子型を識別できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明のプライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出するのに用いるプライマーであって、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列又はそれと相補的な塩基配列、に含まれる連続した少なくとも10以上の塩基配列を備えるプライマー、又は、このプライマーとストリンジェントな条件でハイブリダイズする少なくとも10以上の塩基配列を備えるプライマーであることを特徴とする。
【0015】
さらに、上記プライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列から選択される標的領域の5’側から、塩基配列領域としてB3、B2及びB1を選択し、この標的領域の3’側から、塩基配列領域としてF3c、F2c及びF1cを選択し、上記B3、B2及びB1の相補的塩基配列を、それぞれB3c、B2c及びB1cとし、上記F3c、F2c及びF1cに相補的な塩基配列を、それぞれF3、F2及びF1としたとき、以下の(a)〜(d)のいずれかに該当する塩基配列からなることが好ましい。
(a)前記B2領域を3’側に有し、前記B1c領域を5’側に有する塩基配列。
(b)前記B3領域を有する塩基配列。
(c)前記F2領域を3’側に有し、前記F1c領域を5’側に有する塩基配列。
(d)前記F3領域を有する塩基配列。
【0016】
本発明のプライマーを用いて、PCR法又はLAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を増幅すれば、当該メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ効率的に検出可能な量まで増幅することが可能である。このため、増幅されたDNA断片の有無を確認することによって、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌を検出することができる。
【0017】
また、上記プライマーは、上記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列である配列表の配列番号1に示す塩基配列の中より塩基番号465〜741で表される塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列とすることができ、さらに、配列表の配列番号2〜9に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列のいずれか一つの塩基配列とすることが好ましい。
【0018】
さらに、上記プライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、以下の(a)又は(b)の塩基配列からなることが好ましい。
(a)5’−(配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号3に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号6に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号7に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【0019】
本発明のプライマーを用いて、PCR法又はLAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、IMP−1型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はIMP−1型の遺伝子型であると判定できる。
【0020】
また、上記プライマーは、上記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列である配列表の配列番号14に示す塩基配列の中より塩基番号467〜741で表される塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列とすることができ、さらに、配列表の配列番号15〜22に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列のいずれか一つの塩基配列とすることが好ましい。
【0021】
さらに、上記プライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、以下の(a)又は(b)の塩基配列からなることが好ましい。
(a)5’−(配列番号15に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号16に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号19に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号20に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【0022】
本発明のプライマーを用いて、PCR法又はLAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、IMP−2型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はIMP−2型の遺伝子型であると判定できる。
【0023】
また、上記プライマーは、上記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列である配列表の配列番号27に示す塩基配列の中より塩基番号452〜695で表される塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列とすることができ、さらに、配列表の配列番号28〜34に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列のいずれか一つの塩基配列とすることが好ましい。
【0024】
さらに、上記プライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、以下の(a)又は(b)の塩基配列からなることが好ましい。
(a)5’−(配列番号28に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号29に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号31に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号32に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【0025】
本発明のプライマーを用いて、PCR法又はLAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、IMP−11型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はIMP−11型の遺伝子型であると判定できる。
【0026】
また、上記プライマーは、上記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列である配列表の配列番号38に示す塩基配列の中より塩基番号39〜266で表される塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列とすることができ、さらに、配列表の配列番号39〜45に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列のいずれか一つの塩基配列とすることが好ましい。
【0027】
さらに、上記プライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、以下の(a)又は(b)の塩基配列からなることが好ましい。
(a)5’−(配列番号39に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号40に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号43に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号44に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【0028】
本発明のプライマーを用いて、PCR法又はLAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、VIM−2型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はVIM−2型の遺伝子型であると判定できる。
【0029】
本発明のプライマーセットは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLAMP法で検出するのに用いるプライマーセットであって、配列表の配列番号4に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号10に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号11に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号12に示す塩基配列からなるプライマーとを含むことを特徴とし、このプライマーセットは、配列表の配列番号9に示す塩基配列からなるプライマー及び/又は配列表の配列番号13に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含むことが好ましい。
【0030】
本発明のプライマーセットを用いて、LAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、IMP−1型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はIMP−1型の遺伝子型であると判定できる。
【0031】
また、本発明のプライマーセットは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLAMP法で検出するのに用いるプライマーセットであって、配列表の配列番号17に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号23に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号24に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号25に示す塩基配列からなるプライマーとを含むことを特徴とし、このプライマーセットは、配列表の配列番号22及び/又は配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含むことが好ましい。
【0032】
本発明のプライマーセットを用いて、LAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、IMP−2型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はIMP−2型の遺伝子型であると判定できる。
【0033】
また、本発明のプライマーセットは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLAMP法で検出するのに用いるプライマーセットであって、配列表の配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号35に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号36に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号37に示す塩基配列からなるプライマーとを含むことを特徴とし、このプライマーセットは、配列表の配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含むことが好ましい。
【0034】
本発明のプライマーセットを用いて、LAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、IMP−11型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はIMP−11型の遺伝子型であると判定できる。
【0035】
また、本発明のプライマーセットは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLAMP法で検出するのに用いるプライマーセットであって、配列表の配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーと、配列表の配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーとを含むことを特徴とし、このプライマーセットは、配列表の配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含むことが好ましい。
【0036】
本発明のプライマーセットを用いて、LAMP法でメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出すれば、VIM−2型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的かつ高感度に増幅することができる。このため、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断でき、増幅された遺伝子はVIM−2型の遺伝子型であると判定できる。
【0037】
また、本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法は、検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を鋳型に、上記プライマー又はプライマーセットを用いてメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅させる増幅工程と、この標的領域のDNA断片が増幅された場合にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子が存在し、この標的領域のDNA断片が増幅されなかった場合にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子が存在しないと判断する判断工程とを含むことを特徴とする。
【0038】
さらに、本発明のβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法は、検体中に含まれるβ−ラクタム薬耐性菌のゲノムDNAを鋳型に、上記プライマー又はプライマーセットを用いてメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅させる増幅工程と、この標的領域のDNA断片が増幅された場合にβ−ラクタム薬耐性菌が存在し、この標的領域のDNA断片が増幅されなかった場合にβ−ラクタム薬耐性菌が存在しないと判断する判断工程とを含むことを特徴とする。
【0039】
本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法を使用すれば、検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片をPCR法又はLAMP法で特異的かつ高感度に増幅することができ、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌が存在すると判断できる。さらに、IMP−1型、IMP−2型、IMP−11型及びVIM−2型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出できる上記プライマーセットを使用すれば、検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌の遺伝子型を判定できる。
【0040】
上記方法は、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を、LAMP法によって増幅させることが好ましい。
【0041】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を、LAMP法によって増幅させれば、PCR法で不可欠とされる温度制御が不要となるため、等温での相補鎖合成反応を可能にする。このため、PCR装置等の特殊な装置を用いることなく、検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌の遺伝子型を簡便かつ迅速に判定できる。
【0042】
また、本発明は、細菌のβ−ラクタム薬耐性の判定方法であって、被検細菌のゲノムDNAを鋳型に、上記プライマー又はプライマーセットを用いて、LAMP法によって、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅させる増幅工程と、この標的領域のDNA断片が増幅された場合に、β−ラクタム薬耐性であると判断し、この標的領域のDNA断片が増幅されなかった場合に、β−ラクタム薬感受性であると判断する判断工程とを含む、判定方法を提供する。
【0043】
さらに、本発明は、上記プライマー又はプライマーセットと、DNAポリメラーゼと、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含むdNTPと、マグネシウム塩又はマンガン塩である補助因子と、を含むβ−ラクタマーゼ遺伝子の検出キットを提供する。
【0044】
本発明のβ−ラクタム薬耐性の判定方法又はβ−ラクタマーゼ遺伝子の検出キットを使用すれば、検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片をLAMP法で特異的かつ高感度に増幅することができ、当該DNA断片の増幅が確認された場合には、検体中にメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子が存在し、検体中に存在する細菌はβ−ラクタム薬耐性であると判断できる。さらに、IMP−1型、IMP−2型、IMP−11型及びVIM−2型のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出できる上記プライマーセットを使用すれば、検体中に含まれるメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はβ−ラクタム薬耐性菌の遺伝子型を判定できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法並びに細菌のβ−ラクタム薬耐性の判定方法により、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌を簡便かつ迅速・確実に検出することが可能となる。また、本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出方法並びに細菌のβ−ラクタム薬耐性の判定方法により、PCR装置等の特殊な装置を用いることなく、その遺伝子型を高感度に識別することが可能となり、特異的かつ高感度にIMP−1型、IMP−2型、IMP−11型又はVIM−2型のうちのいずれの遺伝子型に該当するかを判定できる。
【0046】
本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用プライマー及びプライマーセット並びにメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌の検出キットを使用することにより、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子及びβ−ラクタム薬耐性菌を簡便かつ迅速・確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0048】
本発明は、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列又はそれと相補的な塩基配列に含まれる連続した少なくとも10以上の塩基配列を備えるプライマー、又はこれらの塩基配列のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズする少なくとも10以上の塩基配列を備えるプライマーを提供すること、及び、これらのプライマーを用いて、LAMP法によりメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を特異的に増幅し、増幅されたDNA断片の有無を確認すると同時に遺伝子型を判定すること、を基礎としている。
【0049】
本発明における「メタロ−β−ラクタマーゼ」とは、活性中心に亜鉛等の金属イオンを有し、β−ラクタム薬が有するβ−ラクタム環を加水分解して、その抗菌作用を無毒化することができる酵素である。メタロ−β−ラクタマーゼは、活性中心にセリン残基を持つセリン−β−ラクタマーゼがセファマイシン系及びカルバペネム系抗菌薬を加水分解できないのに対し、これらの抗菌薬を含む総てのβ−ラクタム薬を加水分解できる。
【0050】
ここで、「β−ラクタム薬」とは、その骨格にβ−ラクタム環を有する抗生物質で、細菌の細胞壁ペプチドグリカンの合成に必須の酵素群の働きを阻害することで抗菌作用を発揮する薬剤のことをいい、ペニシリンからセフェム系、セファマイシン系、カルバペネム系抗菌薬等が該当する。
【0051】
本発明における「β−ラクタム薬耐性菌」とは、メタロ−β−ラクタマーゼを産生するメタロ−β−ラクタマーゼ産生菌のことであって、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子は、多くの遺伝子型が存在する。その中で、日本国内ではIMP−1型(配列番号1)とVIM−2型(配列番号38)が一般的であるが、最近、IMP−2型(配列番号14)、IMP−11型(配列番号27)も検出されている。これらの遺伝子型を把握することは、医療現場において重要な情報とされている。
【0052】
本発明において使用される検体としては、細菌感染が疑われる人間又は他の動物の生体由来の検体、例えば、患者カテーテル拭き取り検体、喀痰、気管支肺胞洗浄液、鼻汁、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、うがい液、唾液、血液、血清、血漿、髄液、尿、糞便、組織等が挙げられ、これらの検体から分離培養した発育コロニー、培養液等も検体となり得る。
【0053】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の有無を迅速に検出するために、これらの検体は、未精製の状態でも使用できるが、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、タンパク質分解酵素等による組織細胞由来タンパク質を分解後、フェノール及びクロロホルム抽出を行って精製したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。
【0054】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域の増幅は、納富らが開発したLAMP法で達成される。LAMP法は、PCR法で不可欠とされる温度制御が不要なループ媒介等温増幅法(国際公開第00/28082号パンフレット)であって、鋳型となるヌクレオチドにプライマーの3’側をアニールさせて相補鎖合成の起点とすると共に、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能にする。
【0055】
このLAMP法では、鋳型となる核酸の6つの塩基配列領域を認識する少なくとも4つのプライマーが必要とされる。これらのプライマーは、3’側が常に鋳型となるヌクレオチドにアニールするように設計されるため、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能することになり、高感度でかつ特異性の高い核酸の増幅反応が可能となる。
【0056】
LAMP法に用いられるプライマーが認識する6つの塩基配列領域は、鋳型となるヌクレオチドの3’側から順にF3c、F2c、F1cと呼び、5’側から順にB3、B2、B1と呼び、さらに、F1c、F2c、F3cの相補的な塩基配列をそれぞれF1、F2、F3と呼び、B1、B2、B3の相補的な塩基配列をそれぞれB1c、B2c、B3cと呼ぶ。
【0057】
本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマーの設計は、まず、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列から上記の6つの塩基配列領域を決定し、その後、後述するインナープライマーF及びB並びにアウタープライマーF及びBを設計するが、IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーを設計するには、配列表の配列番号1に示す塩基配列から上記の6つの塩基配列領域を決定し、IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーを設計するには、配列表の配列番号14に示す塩基配列から上記の6つの塩基配列領域を決定し、IMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーを設計するには、配列表の配列番号27に示す塩基配列から上記の6つの塩基配列領域を決定し、VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーを設計するには、配列表の配列番号38に示す塩基配列から上記の6つの塩基配列領域を決定し、その後それぞれインナープライマーF及びB並びにアウタープライマーF及びBを設計することとなる。
【0058】
ここで、IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーの設計は、配列表の配列番号1に示す塩基配列のうち、配列表の塩基番号465〜741に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域を決定するのが好ましく、配列表の配列番号2〜9に示す塩基配列に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域のいずれかを決定するのがさらに好ましい。
【0059】
また、IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーは、配列表の配列番号14に示す塩基配列のうち、配列表の塩基番号467〜741に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域を決定するのが好ましく、配列表の配列番号15〜22に示す塩基配列に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域のいずれかを決定するのがさらに好ましい。
【0060】
IMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーは、配列表の配列番号27に示す塩基配列のうち、配列表の塩基番号452〜695に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域を決定するのが好ましく、配列表の配列番号28〜34に示す塩基配列に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域のいずれかを決定するのがさらに好ましい。
【0061】
VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出するプライマーは、配列表の配列番号38に示す塩基配列のうち、塩基番号39〜266に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域を決定するのが好ましく、配列表の配列番号39〜45に示す塩基配列に含まれる範囲から上記の6つの塩基配列領域のいずれかを決定するのがさらに好ましい。
【0062】
LAMP法に用いられるインナープライマーとは、標的塩基配列上のある特定のヌクレオチド配列領域を認識し、かつ合成起点を与える塩基配列を3’側に有し、同時にこのプライマーを起点とする核酸合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を5’側に有するオリゴヌクレオチドのことをいい、「F2より選ばれた塩基配列」及び「F1cより選ばれた塩基配列」を含むプライマーをインナープライマーF(以下、IPF)と呼び、「B2より選ばれた塩基配列」と「B1cより選ばれた塩基配列」を含むプライマーをインナープライマーB(以下、IPB)と呼ぶ。このインナープライマーは、「F2より選ばれた塩基配列」と「F1cより選ばれた塩基配列」の間、あるいは「B2より選ばれた塩基配列」と「B1cより選ばれた塩基配列」の間に、塩基数0〜50のいずれかの長さの任意の塩基配列を有していてもよい。
【0063】
一方、アウタープライマーとは、標的塩基配列上の『「ある特定のヌクレオチド配列領域」の3'末端側に存在するある特定のヌクレオチド配列領域』を認識かつ合成起点を与える塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。ここで、「F3より選ばれた塩基配列」を含むプライマーをアウタープライマーF(以下、OPF)、「B3より選ばれた塩基配列」を含むプライマーをアウタープライマーB(以下、OPB)と呼ぶ。
【0064】
ここで、各プライマーにおけるFとは、標的塩基配列のセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供することを意味するプライマー表示であり、各プライマーにおけるBとは、標的塩基配列のアンチセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供することを意味するプライマー表示である。
【0065】
LAMP法における核酸の増幅では、インナープライマー及びアウタープライマーに加え、さらにループプライマーを用いることができる。ループプライマーは、LAMP法による増幅生成物の同一鎖上に生じる相補的配列が互いにアニールしてループを形成するとき、このループ内の配列に相補的な塩基配列をその3’側に含むプライマー(二本鎖を構成する各々について1つずつ)のことをいう。すなわち、ダンベル構造の5’側のループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的な塩基配列を持つプライマーである。このプライマーを用いれば、核酸合成の起点が増加するため、反応時間の短縮と検出感度の上昇が可能となる(国際公開第02/24902号パンフレット)。
【0066】
ループプライマーの塩基配列は、上記ダンベル構造の5’側のループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的であれば、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列又はその相補鎖から選択されてもよく、他の塩基配列でもよい。また、ループプライマーは1種類であっても、2種類であってもよい。
【0067】
本発明のプライマーは、10塩基以上であることが好ましく、15塩基以上であることがさらに好ましい。また、各プライマーは、単一のオリゴヌクレオチドであってもよく、複数のオリゴヌクレオチドの混合物であってもよい。
【0068】
尚、各プライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入したり、あるいは天然の核酸を制限酵素等によって切断し、所望の塩基配列で構成されるように改変し、あるいは連結して得ることも可能である。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、公知の方法を使用して合成できる。例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法又はPCR法を単独又は適宜組合せることで、かかるプライマーを合成することができる。
【0069】
本明細書における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」としては、一般に知られたものを選択することができる。ストリンジェントな条件として、例えば、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハーツ溶液、10%デキストラン硫酸、及び20μg/mlのDNAを含む溶液中、42℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、室温で2×SSC・0.1%SDS中で一次洗浄し、次いで、約65℃において0.1×SSC・0.1%SDSで二次洗浄する、という条件が挙げられる。
【0070】
さらに、本発明のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用プライマーは、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅するために、LAMP法のみでなく、PCR法にも使用できる。PCR法では、上記プライマーの任意の2つの組み合わせを用いて、検体中のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を鋳型に耐熱性のDNAポリメラーゼでPCRを行えば、目的とするDNA断片を増幅させることが可能である。
【0071】
本発明者らは、IMP−1型、IMP−2型、IMP−11型及びVIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子に特異的な塩基配列を迅速に増幅できるLAMP法のプライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結果、それぞれの遺伝子の塩基配列(配列番号1、14、27及び38)から、以下のプライマーセットを選定した。
【0072】
IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマーセット
IPF:5'-GCGTCACCCAAATTGCCTAAACGGTTTGGTTGCCTGAAAGG-3' (配列番号10)
OPF:5'-GGGACACACTCCAGATAACG-3' (配列番号4)
IPB:5'-GCTTGGCCAAAGTCCGCCCCTTTAACCGCCTGCTCTA-3' (配列番号11)
OPB:5'-TTAGTTGCTTGGTTTTGATGGT-3' (配列番号12)
LPF:5'-ACGGTTTAATAAAACAACCACCGA-3' (配列番号13)
LPB:5'-TCACAGTGAAGTTGGAGACGC-3' (配列番号9)
【0073】
IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマーセット
IPF:5'-GCGTCACCCAAATTACCAAGACCGGTGGTTTGGTTACCTGAAAAG-3' (配列番号23)
OPF:5'-GGCACACTCAAGATAACG-3' (配列番号17)
IPB:5'-GCTTGGCCAAAGTCCGCCCCTTTAACAGCCTGTTCC-3' (配列番号24)
OPB:5'-TTAGTTACTTGGCTGTGATGG-3' (配列番号25)
LPF:5'-TCGGTGGTTGTTTTGTTAAACCGG-3' (配列番号26)
LPB:5'-TCATAGTGAAATTGGGGACGC-3' (配列番号22)
【0074】
IMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマーセット
IPF:5'-TTGCGTCATCTAGATTACCAAGACCGATAACGTAGTGGTTTGGCTACC-3' (配列番号35)
OPF:5'-TTTATCCAGGCCCAGGGC-3' (配列番号30)
IPB:5'-GAAGCATGGCCACATTCGGCCAAGAGCGACGCATCTCC-3' (配列番号36)
OPB:5'-ACCGCCTGTTCCCACG-3' (配列番号37)
LPB:5'-TGCAAAACTGGTTGTTCCAAGCC-3' (配列番号34)
【0075】
VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のプライマーセット
IPF:5'-CCGGACCTCCCCGACCGCCGCTCGCTTTTTCCGTAG-3' (配列番号46)
OPF:5'-GCGTCTATCATGGCTATTGCG-3' (配列番号41)
IPB:5'-GGTCGCATATCGCAACGCAGCCATCACGGACAATGAGACC-3' (配列番号47)
OPB:5'-GCACCCCACGCTGTATC-3' (配列番号48)
LPF:5'-ACTGTCGGATACTCACCGC-3' (配列番号49)
【0076】
核酸合成で使用する酵素は、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Bca(exo−)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント等が挙げられ、好ましくはBst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)が挙げられる。
【0077】
核酸合成で使用する酵素は、ウイルスや細菌等から精製されたものでもよく、遺伝子組換え技術によって作製されたものでもよい。またこれらの酵素はフラグメント化やアミノ酸の置換等の改変をされたものでもよい。
【0078】
LAMP反応後の核酸増幅産物の検出は、公知の技術によって実現できる。例えば、増幅された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドをプローブに用いてハイブリダイゼーションを行ったり、蛍光性インターカレーター法(特開2001−242169号公報)で検出したり、あるいは、反応終了後の反応液をそのままアガロースゲルで電気泳動してバンドとして検出することもできる。アガロースゲル電気泳動では、LAMP増幅産物は、塩基長の異なる多数のバンドがラダー(はしご)状に検出される。
【0079】
また、LAMP法では核酸の合成により基質が大量に消費され、副産物であるピロリン酸イオンが、共存するマグネシウムイオンと反応してピロリン酸マグネシウムとなるため、反応液が肉眼で確認できる程度にまで白濁する。したがって、この白濁を指標として、反応終了後あるいは反応中の濁度上昇を経時的に光学的に観察できる測定機器を用いて検出できる。例えば、分光光度計を用いて400nmにおける吸光度の変化を確認することによって、核酸の増幅反応を検出することができる(国際公開第01/83817号パンフレット)。
【0080】
本発明のプライマーを用いて核酸増幅の検出を行う際に必要な各種の試薬類は、予めパッケージングしてキット化することができる。具体的には、本発明のプライマーあるいはループプライマーとして必要な各種のオリゴヌクレオチド、核酸合成の基質となる4種類のdNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)、鎖置換活性を有する上記の鋳型依存性核酸合成酵素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、補助因子としての塩類(マグネシウム塩又はマンガン塩等)、酵素や鋳型を安定化する保護剤、さらに必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類がキットとして提供される。
【0081】
キットは、本発明のプライマーによってLAMP反応が正常に進行することを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明のプライマーにより増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)検出感度の確認:
LAMP法を用いて検出感度を確認した。
1.IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ
(1)細菌懸濁液の調製
実験には、IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有することが明らかであるSerratia marcescens MKDM17株(以下、MKDM17株)を用いた。まず、MKDM17株の発育コロニーを滅菌生理食塩水でMcFarland#0.5(1.5X10cfu/mL)に懸濁し、TE緩衝液(ニッポンジーン社)で10倍ずつ段階的に希釈した。その後、100℃で10分間加熱処理し、13,000回転/分で5分間遠心分離し、得られた上清を、鋳型DNAを含む検体とした。
【0084】
(2)LAMP法に用いるプライマー
LAMP法に用いるプライマーとして、IPF(配列番号10)、OPF(配列番号4)、IPB(配列番号11)、OPB(配列番号12)、LPF(配列番号13)、LPB(配列番号9)を用いた。
【0085】
(3)LAMP法による増幅反応
IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的配列のDNA断片を増幅するため、最終反応溶液25μL中の各試薬濃度が下記になるように、反応混合液を調製した。尚、プライマーの合成はオペロンバイオテクノロジー社に依頼し、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)精製したものを使用した。
【0086】
反応溶液組成:
20mM Tris−HCl pH8.8
10mM KCl
8mM MgSO
1.4mM dNTPs
10mM (NHSO
0.8M Betaine(SIGMA社)
0.1% Tween20
1.6μM IPF
1.6μM IPB
0.2μM OPF
0.2μM OPB
0.8μM LPF
0.8μM LPB
8U Bst DNA polymerase(NEB社)
【0087】
上記組成の反応溶液23μLに各濃度の検体溶液2μLを加えて最終反応溶液25μLとし、0.2mLの専用チューブ内で、63℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA−200(栄研化学社)を用いてDNA断片の増幅反応を検出した。
【0088】
図1は、リアルタイム濁度法によるIMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。横軸は時間(分)、縦軸は650nmでの吸光度(濁度)である。図1に示すように、IMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有したMKDM17株を3×10cfu/testの濃度まで、60分以内に検出できた。
【0089】
2.IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ
(1)細菌懸濁液の調製
実験には、IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有することが明らかであるAcinetobacter baumannii EKN7108株(以下、EKN7108株)を用いた。まず、EKN7108株の発育コロニーを滅菌生理食塩水でMcFarland#0.5(1.5X10cfu/mL)に懸濁し、TE緩衝液(ニッポンジーン社)で10倍ずつ段階的に希釈した。その後、100℃で10分間加熱処理し、13,000回転/分で5分間遠心分離し、得られた上清を、鋳型DNAを含む検体とした。
【0090】
(2)LAMP法に用いるプライマー
LAMP法に用いるプライマーとして、IPF(配列番号23)、OPF(配列番号17)、IPB(配列番号24)、OPB(配列番号25)、LPF(配列番号26)、LPB(配列番号22)を用いた。
【0091】
(3)LAMP法による増幅反応
IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的配列のDNA断片を増幅するため、最終反応溶液25μL中の各試薬濃度が下記になるよう調製した。尚、プライマーの合成はオペロンバイオテクノロジー社に依頼し、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)精製したものを使用した。
【0092】
反応溶液組成:
20mM Tris−HCl pH8.8
10mM KCl
8mM MgSO
1.4mM dNTPs
10mM (NHSO
0.8M Betaine(SIGMA社)
0.1% Tween20
1.6μM IPF
1.6μM IPB
0.2μM OPF
0.2μM OPB
0.8μM LPF
0.8μM LPB
8U Bst DNA polymerase(NEB社)
【0093】
上記組成の反応溶液23μLに各濃度の検体溶液2μLを加えて最終反応溶液25μLとし、0.2mLの専用チューブ内で、63℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA−200(栄研化学社)を用いてDNA断片の増幅反応を検出した。
【0094】
図2は、リアルタイム濁度法によるIMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。横軸は時間(分)、縦軸は650nmでの吸光度(濁度)である。図2に示すように、IMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有したEKN7108株を3×10cfu/testの濃度まで、60分以内に検出できた。
【0095】
3.IMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ
(1)細菌懸濁液の調製
実験には、Pseudomonas aeruginosa EKN7116株(以下、EKN7116株)を用いた。まず、EKN7116株の発育コロニーを滅菌生理食塩水でMcFarland#0.5(1.5X10cfu/mL)に懸濁し、TE緩衝液(ニッポンジーン社)で10倍ずつ段階的に希釈した。その後、100℃で10分間加熱処理し、13,000回転/分で5分間遠心分離し、得られた上清を、鋳型DNAを含む検体とした。
【0096】
(2)LAMP法に用いるプライマー
LAMP法に用いるプライマーとして、IPF(配列番号35)、OPF(配列番号30)、IPB(配列番号36)、OPB(配列番号37)、LPB(配列番号34)を用いた。
【0097】
(3)LAMP法による増幅反応
IMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的配列のDNA断片を増幅のため、最終反応溶液25μL中の各試薬濃度が下記になるよう調製した。尚、プライマーの合成はオペロンバイオテクノロジー社に依頼し、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)精製したものを使用した。
【0098】
反応溶液組成:
20mM Tris−HCl pH8.8
10mM KCl
8mM MgSO
1.4mM dNTPs
10mM (NHSO
0.8M Betaine(SIGMA社)
0.1% Tween20
1.6μM IPF
1.6μM IPB
0.2μM OPF
0.2μM OPB
0.8μM LPB
8U Bst DNA polymerase(NEB社)
【0099】
上記組成の反応溶液23μLに各濃度の検体溶液2μLを加えて最終反応溶液25μLとし、0.2mLの専用チューブ内で、63℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA−200(栄研化学社)を用いてDNA断片の増幅反応を検出した。
【0100】
図3は、リアルタイム濁度法によるIMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。横軸は時間(分)、縦軸は650nmでの吸光度(濁度)である。図3に示すように、IMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有したEKN7116株を3×10cfu/testの濃度まで、60分以内に検出できた。
【0101】
4.VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ
(1)細菌懸濁液
実験には、VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有することが明らかであるPseudomonas aeruginosa NCB326株(以下、NCB326株)を用いた。まず、NCB326株の発育コロニーを滅菌生理食塩水でMcFarland#0.5(1.5X10cfu/mL)に懸濁し、TE緩衝液(ニッポンジーン社)で10倍ずつ段階的に希釈した。その後、100℃で10分間加熱処理し、13,000回転/分で5分間遠心分離し、得られた上清を、鋳型DNAを含む検体とした。
【0102】
(2)LAMP法に用いるプライマー
LAMP法に用いるプライマーとして、IPF(配列番号46)、OPF(配列番号41)、IPB(配列番号47)、OPB(配列番号48)、LPF(配列番号49)を用いた。
【0103】
(3)LAMP法による増幅反応
VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的配列のDNA断片を増幅のため、最終反応溶液25μL中の各試薬濃度が下記になるよう調製した。尚、プライマーの合成はオペロンバイオテクノロジー社に依頼し、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)精製したものを使用した。
【0104】
反応溶液組成:
20mM Tris−HCl pH8.8
10mM KCl
8mM MgSO
1.4mM dNTPs
10mM (NHSO
0.8M Betaine(SIGMA社)
0.1% Tween20
1.6μM IPF
1.6μM IPB
0.2μM OPF
0.2μM OPB
0.8μM LPF
8U Bst DNA polymerase(NEB社)
【0105】
上記組成の反応溶液23μLに各濃度の検体溶液2μLを加えて最終反応溶液25μLとし、0.2mLの専用チューブ内で、63℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA−200(栄研化学社)を用いてDNA断片の増幅反応を検出した。
【0106】
図4は、リアルタイム濁度法によるIMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。横軸は時間(分)、縦軸は650nmでの吸光度(濁度)である。図4に示すように、VIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を保有したNCB326株を3×10cfu/testの濃度まで、60分以内に検出できた。
【0107】
(実施例2)プライマーの評価(特異性試験):
実験には、メタロ−β−ラクタマーゼ阻害剤であるメルカプト酢酸ナトリウム(SMA)含有ディスクを用いた試験でメタロ−β−ラクタマーゼ産生株であると確認した90菌株を用いた。各菌株の発育コロニーに、それぞれの菌株を精製水に懸濁し、100℃で10分間加熱処理したものを検体とし、実施例1に記載の各々のLAMP法の反応溶液20μLに検体5μLを添加して、LAMP法による増幅反応を行うことにより遺伝子型を評価した。
【0108】
対照実験として、同一の検体を、P−F1(配列番号50)及びP−R1(配列番号51)、P−F2(配列番号52)及びP−R2(配列番号53)、並びにP−F3(配列番号54)及びP−R3(配列番号55)の各々のプライマーセットを用いてPCR法による増幅を行った。
【0109】
P−F1及びP−R1の組合せでDNA断片の増幅が認められたものは、増幅されたDNA断片を精製し、DNAシーケンサーによる解析を行い、決定された塩基配列からIMP−1型又はIMP−11型であると判定した。P−F2及びP−R2の組合せでDNA断片の増幅が認められたものは、IMP−2型と判定した。P−F3及びP−R3の組合せで増幅が認められたものは、VIM−2型と判定した。
【0110】
表1は、メタロ−β−ラクタマーゼ産生株である上記90菌株のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子が、LAMP法とPCR法とによる解析でどの遺伝子型に分類されたかを比較するためにまとめた表である。
【0111】
【表1】

【0112】
その結果、いずれの方法でも90菌株のすべてが、IMP−1型、IMP−2型、IMP−11型及びVIM−2型の4種類の遺伝子型に分類され、LAMP法とPCR法とによる結果は一致した。このことより、IMP−1型、IMP−2型、IMP−11型及びVIM−2型の各々のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子検出用のLAMP法のプライマーセットは、各々のメタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を特異的に検出することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】リアルタイム濁度法によるIMP−1型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。
【図2】リアルタイム濁度法によるIMP−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。
【図3】リアルタイム濁度法によるIMP−11型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。
【図4】リアルタイム濁度法によるVIM−2型メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子のLAMP法の検出感度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を検出するのに用いるプライマーであって、
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列又はそれと相補的な塩基配列、に含まれる連続した少なくとも10以上の塩基配列を備えるプライマー、又は、
前記プライマーとストリンジェントな条件でハイブリダイズする少なくとも10以上の塩基配列を備えるプライマー。
【請求項2】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列が、
配列表の配列番号1に示され、
該塩基配列の塩基番号465〜741から選ばれた任意の塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、に含まれる、
請求項1記載のプライマー。
【請求項3】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子から選ばれた配列表の配列番号2〜9に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、から選ばれた、
請求項2記載のプライマー。
【請求項4】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列が、
配列表の配列番号14に示され、
該塩基配列の塩基番号467〜741から選ばれた任意の塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、に含まれる、
請求項1記載のプライマー。
【請求項5】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子から選ばれた配列表の配列番号15〜22に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、から選ばれた、
請求項4記載のプライマー。
【請求項6】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列が、
配列表の配列番号27に示され、
該塩基配列の塩基番号452〜695から選ばれた任意の塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、に含まれる、
請求項1記載のプライマー。
【請求項7】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子から選ばれた配列表の配列番号28〜34に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、から選ばれた、
請求項6記載のプライマー。
【請求項8】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列が、
配列表の配列番号38に示され、
該塩基配列の塩基番号39〜266から選ばれた任意の塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、に含まれる、
請求項1記載のプライマー。
【請求項9】
前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子から選ばれた配列表の配列番号39〜45に示す塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列、から選ばれた、
請求項8記載のプライマー。
【請求項10】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の塩基配列から選択される標的領域の5’側から、塩基配列領域としてB3、B2及びB1を選択し、
前記標的領域の3’側から、塩基配列領域としてF3c、F2c及びF1cを選択し、
前記B3、B2及びB1の相補的塩基配列を、それぞれB3c、B2c及びB1cとし、
前記F3c、F2c及びF1cに相補的な塩基配列を、それぞれF3、F2及びF1としたとき、
以下の(a)〜(d)のいずれかに該当する塩基配列からなる、請求項1〜9のいずれか一項記載のプライマー。
(a)前記B2領域を3’側に有し、前記B1c領域を5’側に有する塩基配列。
(b)前記B3領域を有する塩基配列。
(c)前記F2領域を3’側に有し、前記F1c領域を5’側に有する塩基配列。
(d)前記F3領域を有する塩基配列。
【請求項11】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、
以下の(a)又は(b)の塩基配列からなる、
請求項1〜3及び10のいずれか一項記載のプライマー。
(a)5’−(配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号3に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号6に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号7に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【請求項12】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、
以下の(a)又は(b)の塩基配列からなる、
請求項1、4〜5及び10のいずれか一項記載のプライマー。
(a)5’−(配列番号15に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号16に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号19に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号20に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【請求項13】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、
以下の(a)又は(b)の塩基配列からなる、
請求項1、6〜7及び10のいずれか一項記載のプライマー。
(a)5’−(配列番号28に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号29に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号31に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号32に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【請求項14】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子又はその相補鎖から選択される標的領域のDNA断片を増幅し、かつ、
以下の(a)又は(b)の塩基配列からなる、
請求項1及び8〜10のいずれか一項記載のプライマー。
(a)5’−(配列番号39に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号40に示す塩基配列)−3’。
(b)5’−(配列番号43に示す塩基配列)−(塩基数0〜50の任意の塩基配列)−(配列番号44に示す塩基配列に相補的な塩基配列)−3’。
【請求項15】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLoop mediated isothermal amplification(LAMP)法で検出するのに用いるプライマーセットであって、
配列表の配列番号4に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号10に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号11に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号12に示す塩基配列からなるプライマーと、
を含む、プライマーセット。
【請求項16】
配列表の配列番号9に示す塩基配列からなるプライマー及び/又は配列表の配列番号13に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含む、
請求項15記載のプライマーセット。
【請求項17】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLoop mediated isothermal amplification(LAMP)法で検出するのに用いるプライマーセットであって、
配列表の配列番号17に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号23に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号24に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号25に示す塩基配列からなるプライマーと、
を含む、プライマーセット。
【請求項18】
配列表の配列番号22及び/又は配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含む、
請求項17記載のプライマーセット。
【請求項19】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLoop mediated isothermal amplification(LAMP)法で検出するのに用いるプライマーセットであって、
配列表の配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号35に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号36に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号37に示す塩基配列からなるプライマーと、
を含む、プライマーセット。
【請求項20】
配列表の配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含む、
請求項19記載のプライマーセット。
【請求項21】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子をLoop mediated isothermal amplification(LAMP)法で検出するのに用いるプライマーセットであって、
配列表の配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーと、
配列表の配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーと、
を含む、プライマーセット。
【請求項22】
配列表の配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含む、
請求項21記載のプライマーセット。
【請求項23】
メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法であって、
検体中に含まれる前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子を鋳型に、請求項1〜14のいずれか一項記載のプライマー又は請求項15〜22のいずれか一項記載のプライマーセットを用いて、前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅させる増幅工程と、
前記標的領域のDNA断片が増幅された場合に、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子が存在し、前記標的領域のDNA断片が増幅されなかった場合に、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子が存在しないと判断する判断工程と、
を含む、検出方法。
【請求項24】
β−ラクタム薬耐性菌の検出方法であって、
検体中に含まれる前記β−ラクタム薬耐性菌のゲノムDNAを鋳型に、請求項1〜14のいずれか一項記載のプライマー又は請求項15〜22のいずれか一項記載のプライマーセットを用いて、前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅させる増幅工程と、
前記標的領域のDNA断片が増幅された場合に、β−ラクタム薬耐性菌が存在し、前記標的領域のDNA断片が増幅されなかった場合に、β−ラクタム薬耐性菌が存在しないと判断する判断工程と、
を含む、検出方法。
【請求項25】
前記増幅工程において、前記メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を、Loop mediated isothermal amplification(LAMP)法によって増幅させることを特徴とする、請求項23又は24記載の検出方法。
【請求項26】
細菌のβ−ラクタム薬耐性の判定方法であって、
被検細菌のゲノムDNAを鋳型に、請求項1〜14のいずれか一項記載のプライマー又は請求項15〜22のいずれか一項記載のプライマーセットを用いて、Loop mediated isothermal amplification(LAMP)法によって、メタロ−β−ラクタマーゼ遺伝子の標的領域のDNA断片を増幅させる増幅工程と、
前記標的領域のDNA断片が増幅された場合に、β−ラクタム薬耐性であると判断し、前記標的領域のDNA断片が増幅されなかった場合に、β−ラクタム薬感受性であると判断する判断工程と、
を含む、判定方法。
【請求項27】
請求項1〜14のいずれか一項記載のプライマー又は請求項15〜22のいずれか一項記載のプライマーセットと、
DNAポリメラーゼと、
dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含むdNTPと、
マグネシウム塩又はマンガン塩である補助因子と、
を含む、
β−ラクタマーゼ遺伝子の検出キット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−195421(P2007−195421A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15216(P2006−15216)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【出願人】(591222245)国立感染症研究所長 (48)
【Fターム(参考)】