説明

メタロセン基体のリンキラルホスフィン類

本発明は、エナンチオ選択的触媒反応に使用されるメタロセン基体のホスフィンリガンドであり、そのリガンドが、式(I)を有するリガンドに係る。式中、Mは、金属であり;Zは、PまたはAsであり;Lは、適当なリンカーであり;R1は、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルキルアミノ、炭素環式アリール、置換および未置換炭素環式アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、炭素環式アリールアミノおよびヘテロアリールアミノであり;Xは、式(II)から選択される:式(II)中、R、R2およびR3は、独立に、任意に置換された分岐および直鎖アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、炭素環式アリールおよびヘテロアリールから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キラルメタロセン基体のホスフィンリガンドおよびそれらの製造方法に関する。また、本発明は、高エナンチオメトリック過剰の生成物を生ずるための不斉変換反応のための触媒または前触媒として使用することのできる金属-リガンド錯体に関する。同様な構造を有するアルシン類もまた本発明の範囲内に入る。
【背景技術】
【0002】
ある種の公知のジホスフィンリガンドは、リン原子にてのみキラリティを示す:
【0003】
【化1】

【0004】
キラル1,1’-ビス(ホスフェタノ)フェロセン類(FerroTANE)の合成は、Marinetti15およびBurk16によって独立に報告されている。FerroTANEは、イタコネート類および(E)-β-(アシルアミノ)アクリレート類のRh-触媒水素化に適用して成功を納めている17
【0005】
Mezzetti18およびvan Leeuwen19は、独立に、P-キラルフェロセニルビスホスフィン類4aおよび4bを報告している。これら2つのリガンドは、α-デヒドロアミノ酸誘導体の不斉水素化について優れたエナンチオ選択性(99%eeまで)を示した。
【0006】
Zhangは、3および4位にケタール置換基を有する1,1’-ビス(ホスホラニル)フェロセンリガンド5を報告している20。このリガンドは、β-デヒドロアミノ酸誘導体の水素化にて優れたエナンチオ選択性を示した。リガンドのケタール基は、ケタール基を有しない対応するリガンドが中程度のeeを生ずるのみであるから、高いエナンチオ選択性を達成するために重要である。Zhangは、また、1,1’-ビス(ジナフトホスフェピニル)フェロセンリガンド、f-ビナファンを開発し、このリガンドは、アクリルアリールイミン類のIr-触媒水素化
に適用して成功を納めている。21
Reetzは、ビナフトール誘導されたフェロセン基体のビスホスホナイトリガンド622を開発し、このリガンドは、イタコネート類およびα-デヒドロアミノ酸誘導体のRh-触媒水素化にて優れた反応性およびエナンチオ選択性を示した。
【0007】
公知リガンドのもう1つの類は、プラナーキラリティおよびリンキラリティの両方を示す:
【0008】
【化2】

【0009】
Van Leeuwenは、プラナーキラルティとリンキラリティ7aおよび7bを組み合わせたフェロセン基体のビスホスフィン類を報告している23。これらの2つのリガンドは、不斉アリルアルキレーションについて優れたエナンチオ選択性(99%eeまで)を示した。
【0010】
さらに最近、Togniは、プラナーキラリティ、リンキラリティおよび炭素キラリティを組み合わせた第1の三座配位フェロセン基体のホスフィンリガンド12を報告している24
【0011】
【化3】

【0012】
我々は、先に、キラルホスフィンおよびアルシンリガンドの新規な類およびそれらの製造のための方法を報告し、これらは、WO-A-2005/068477およびWO-A-2005/068478の下に公開された同時継続出願に報告されている。
【0013】
エナンチオ選択的触媒反応に使用される改良したキラルビスホスフィンリガンドを設計することは有益であろう。
本発明に従えば、エナンチオ選択的触媒反応に使用されるメタロセン基体のホスフィンまたはアルシンリガンドであり、そのリガンドが、式:
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、Mは、金属であり;
Zは、PまたはAsであり;
Lは、適当なリンカーであり;
R1は、置換および未置換分岐および直鎖アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ;置換および未置換シクロアルキル;置換および未置換シクロアルコキシ;置換および未置換シクロアルキルアミノ;置換および未置換炭素環式アリール;置換および未置換炭素環式アリールオキシ;置換および未置換ヘテロアリール;置換および未置換ヘテロアリールオキシ;置換および未置換炭素環式アリールアミノ;および、置換および未置換ヘテロアリールアミノから選択され、そのまたは各ヘテロ原子が、独立に、硫黄、窒素および酸素から選択され;
Xは、
【0016】
【化5】

【0017】
{式中、R、R2およびR3は、独立に、置換および未置換分岐および直鎖アルキル;置換および未置換シクロアルキル;置換および未置換炭素環式アリール;および、置換および未置換ヘテロアリールから選択され、そのまたは各ヘテロ原子が、独立に、硫黄、窒素および酸素から選択される。}
から選択される。]
を有するリガンドが提供される。
【0018】
R2およびR3基は、互いに置換されていてもよく、一緒に、任意に置換されたヘテロ環システムを形成してもよい。
好ましくは、Mは、Feであるが、Ruがもう1つの好ましいMであってもよい。
【0019】
Lは、好ましくは、各官能基にて、例えば、リンまたは砒素と結合する能力を有する二官能性部分を含む。概して、リンカー(L)は、二官能性化合物、特に、例えば、リンまたは砒素と結合しうる少なくとも2つの官能基を有する化合物から誘導されるであろう。二官能性化合物は、便宜上、ジ-リチエート化されるかまたは反応してジ-グリニヤール試薬を形成するか、あるいは、処理されてジアニオン反応性種を形成し、ついで、ジアステレオ選択風にリンまたは砒素と直接結合して、例えば、キラルリンまたは砒素を形成する化合物を含むのがよい。この場合、ジアニオン反応性種の第1のアニオン成分は、本発明に従うリガンドの第1のリガンド前駆体のリン(または砒素)置換基と結合するのがよく、ジアニオン反応性種の第2のアニオン成分は、再度、ジアステレオ選択風に、再度、リガンドの第2のリガンド前駆体中のリン(または砒素)置換基と結合して、本発明に従うキラルリン(または砒素)中心を形成して(第1および第2のリガンド前駆体は、相互に同一である)、第1および第2のリガンド前駆体をリンカーにより一緒に結合するのがよい。通常、脱離基、例えば、ハライドは、第1および第2のリガンド前駆体のリン(または砒素)置換基上に生じ、この脱離基は、アニオン性成分のリン(または砒素)置換基との結合から離れる。以下のスキームは、本方法の例である:
【0020】
【化6】

【0021】
例えば、Lは、フェロセンおよびその他のメタロセン類、ジフェニルエーテル類、キサンテン類、2,3-ベンゾチオフェン、1,2-ベンゼン、コハク酸イミド類、環式無水物および多くのその他から選択することができる。便宜上、必ずしも必要ではないが、このようなジアニオン性リンカーは、対応するジハロ-前駆体、例えば:
【0022】
【化7】

【0023】
[式中、R’は、いずれか適当な数の適当ないずれか1つ以上の置換基類を表す。]
から製造することができる。
その他の適したジアニオン性リンカーは、以下のように表すことができる:
【0024】
【化8】

【0025】
しかし、フェロセンおよびその他のメタロセン類は、また、本発明に従うリンカーとして使用するために選択することができ、やはり選択しうる多くのその他の適当な部分が存在する。
【0026】
好ましいR1としては、フェニル、メチル、シクロヘキシルおよびt-ブチル基が挙げられる。
好ましいR2およびR3としては、独立に、メチル、エチル、イソプロピルおよびt-ブチル基が挙げられる。また、R2およびR3は、それらが結合する窒素と一緒に、任意に置換されたヘテロ環、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンおよびそれらの誘導体を形成する。
【0027】
本発明のある種のリガンドは、Ugiのアミンから誘導され、本発明に従う1つの好ましいリガンド(ジアニオンリンカーは、フェロセンである)は、以下のように表すことができる:
【0028】
【化9】

【0029】
同好ましいリガンドは、Ugiのアミン基とともに、完全には、
【0030】
【化10】

【0031】
のように、示すことができる。
本発明は、また、上記したリガンドのエナンチオマーおよびジアステレオマーに関する。
【0032】
本発明に従うリガンドは、以下のように表すことができる:
【0033】
【化11】

【0034】
[式中、M、L、R1およびXは、先に定義した通りであり、リンは、所望される場合、砒素によって少なくとも一部置換されていてもよい。]
本発明のリガンドは、リン(または砒素)でのキラリティを示す。好ましくは、リンカー分子の対向端のリン(または砒素)置換基のキラルコンフィギュレーションは同一である。
【0035】
また、本発明に従えば、本発明のリガンドに配位した遷移金属を含む遷移金属錯体が提供される。その金属は、好ましくは、VIb族またはVIII族金属、特に、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金またはニッケルである。
【0036】
本発明に従うフェロセン基体のリンキラルホスフィン類の合成は、以下のスキームに従い達成することができる:
【0037】
【化12】

【0038】
ここで、Lは、有機リチウム種またはグリニヤール試薬L(G)2から誘導されるリンカーであり、XおよびR1は、先に定義した通りである。同合成スキームは、概して、本発明に従うその他のキラルメタロセン基体リガンドに適用可能である。
【0039】
さて、以下の実施例を参考としつつ、本発明をさらに詳しく例示する。
【実施例1】
【0040】
【化13】

【0041】
1,1’ビス[(SP,RC,SFe)(1-N,N-ジメチルアミノ)エチルフェロセニル]フェニルホスフィノ]フェロセンL1
(R)-N,N-ジメチル-1-フェロセニルエチルアミン[(R)-Ugiのアミン](3.09g,12mmol)のEt2O(20ml)溶液に、1.5M t-BuLiのペンタン溶液(8.0ml,12.0mmol)を-78℃で加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、室温で1.5時間攪拌した。ついで、混合物を、再度、-78℃まで冷却し、ジクロロフェニルホスフィン(1.63ml,12.0mmol)を一度に加えた。-78℃で20分間攪拌後、混合物を室温まで緩やかに温め、室温で1.5時攪拌した。ついで、混合物を-78℃まで再度冷却し、1,1’ジリチオフェロセン[1,1’-ジブロモフェロセン(1.72g,5.0mmol)およびペンタン中1.5M t-BuLi溶液(14.0ml,21.0mmol)からEt2O(20ml)中-78℃で調製した]の懸濁液をカニューレにより緩やかに加えた。混合物を室温まで温め、12時間攪拌させた。NaHCO3飽和溶液(20ml)を加えることによって、反応をクエンチした。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で溶剤を除去した。濾液を濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(SiO2,ヘキサン-EtOAc-Et3N=85:10:5)により精製すると、95% ビス-(SP,RC,SFe)標題化合物L1と5% (RP,RC,SFe-SP,RC,SFe)メソ化合物との混合物としてオレンジ色の固体(3.88g、85%)を与えた。メソ化合物は、クロマトグラフィー(SiO2,ヘキサン-EtOAc-Et3N=85:10:5)を使用し、さらに注意深く精製することによって除去することができる。オレンジ/黄色の結晶固体。
【0042】
【化14】

【0043】
標識SPは、リンでのSコンフィギュレーションを指し、RCは、炭素(またはその他の助剤)でのRコンフィギュレーションを指し、SFeは、プラナーなキラル要素でのSコンフィギュレーションを指す。
【0044】
注意:リンでのコンフィギュレーションを定める時本研究の全てにて一貫性を維持するために、我々は、Ugiのアミン(1-N,N-ジメチルアミノ)エチルフェロセニル)フラグメントに優先権1を与え、生ずるリチウムまたはグリニヤール求核剤(上記実施例にて、リチオフェロセン)に優先権2を与え、残りの群に優先権3を与えた。本方法は、厳密なアプローチとは必ずしも一致しないだろう。これらの規則および提案するリンコンフィギュレーションは、単結晶X線結晶法を使用してチェックした。
【実施例2】
【0045】
2,2’ビス[(SP,RC,SFe)(1-N,N-ジメチルアミノ)エチルフェロセニル]フェニルホスフィノ]-4-トリルエーテルL2
【0046】
【化15】

【0047】
2,2’ジチオ-4-トリルエーテル[2,2’-ジブロモ-4-トリルエーテル(1.78g,5.0mmol)およびペンタン中1.5M t-BuLi溶液(14.0ml,21.0mmol)から公知の方法によってEt2O(20ml)中-78℃で調製した]の懸濁液を、1,1’-ジリオフェロセンよりむしろリンカー試薬として使用した以外は、上記した方法と同様の方法を使用。
【0048】
【化16】

【実施例3】
【0049】
2,7-ジ-t-ブチル-4,5-ビス-[(SP,RC,SFe) (1-N,N-ジメチルアミノ)エチルフェロセニル]フェニルホスフィノ]-9,9-ジメチル-9H-キサンテン
【0050】
【化17】

【0051】
2,7ジ-t-ブチル-4,5-ジリチオ-9,9-ジメチル-9H-キサンテン[2,7-ジ-t-ブチル-4,5-ジブロモ-9,9-ジメチル-9H-キサンテンおよびペンタン中1.5M t-BuLi溶液から公知の方法によってEt2O中-78℃で調製した]の懸濁液を、1,1’-ジリチオフェロセンよりむしろリンカー試薬として使用した以外は、上記した方法と同様の方法を使用。
【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【実施例4】
【0054】
(Z)-2-エトキシ-3-(チオフェン-3-イル)アクリル酸
【0055】
【化20】

【0056】
(Vol.8,No.6,2004,Organic Research & Development)の改良法に従い、本化合物を以下のように合成した:エチルクロロアセテート(44.8ml,421mmol)と無水エタノール(30ml)とを10〜12℃まで冷却した。エタノール中ナトリウムエトキシド溶液(21%w/w,165ml)をN2下12〜16℃で25分かけて加えた。添加が完了した後、反応混合物を25℃まで温め、1時間攪拌した。ついで、混合物を10℃まで冷却し、ついで、10〜14℃で0.5時間かけて、固形のナトリウムエトキシド(33.3g,488ml)を小分けして加えた。エタノール(20ml)の添加に続き、ジエチルカーボネート(31ml,256mmol)を加えた。スラリーをついで0〜5℃まで冷却し、ついで、3-チオフェンカルボキサアルデヒド(20.2g,179.5mol)を1時間かけて加えた。添加が完了した後、混合物をオイル浴中40℃で15時間攪拌した。スラリーをついで10〜15℃まで冷却し、ついで、水(40ml)を加え、続いて、NaOH水溶液(10M溶液の55ml)を加えた。生ずるスラリーをpH14、20℃で3時間攪拌した。混合物を水(60ml)で希釈し、ついで、減圧下45℃に置き、エタノールの大部分と若干の水とを除去した。生ずる粘着性のスラリーを、ついで、氷浴中で4℃まで冷却し、ついで、濃HCl(115ml)で滴下処理した。生ずるスラリーをついで室温で1.5時間攪拌し、ついでEtOAc(2×200ml)で抽出し、有機層を水、塩水で洗浄し、ついで、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶剤を減圧下蒸発させると、深い褐色の残渣を与えた。これを5M NaOH(250ml)に溶解させ、この溶液をEtOAc(100ml)で洗浄した。塩基性の水溶液をついで40℃まで冷却し、濃HCl(11M)でpH4〜6の酸性とした。生成物は、ジエチルエーテル(3×200ml)で抽出し、塩水で洗浄し、(硫酸ナトリウムで)乾燥させ、減圧下、溶剤を除去した。残渣は、ついで、シリカのパッドを介して濾過した(溶離液:ヘキサン:EtOAc90:10)。溶剤を減圧下除去し、ついで、残渣をEt2O/ヘキサンから再結晶すると、黄色結晶として標題化合物を与えた。
【0057】
【化21】

【0058】
上記した方法と同じ方法を使用して、以下の化合物を製造した:
【実施例5】
【0059】
【化22】

【0060】
(Z)-2-エトキシ-3-(チオフェン-2-イル)アクリル酸
【0061】
【化23】

【実施例6】
【0062】
(Z)-3-(4-シアノフェニル)-2-エトキシアクリル酸
【0063】
【化24】

【実施例7】
【0064】
(Z)-3-(3-ベンジルオキシ)-4-メトキシフェニル)-2-エトキシアクリル酸
【0065】
【化25】

【実施例8】
【0066】
(Z)-2-エトキシ-3-(3-メトキシフェニル)アクリル酸
【0067】
【化26】

【実施例9】
【0068】
一般的な水素化スクリーニング法:
45mlのオートクレーブに、リガンド(3.25×10-3mM)を入れ、容器を真空/Arサイクル下に置いた。容器をついでアルゴンでフラッシュした。MeOH中[(COD)2Rh]BF4のガス抜き溶液(0.64mM溶液5ml)をついでシリンジ/ニードルにより加え、不活性雰囲気を維持するために、容器の上にゴム栓をかぶせた。この混合物を10分間攪拌すると、透明な黄色溶液を与えた。MeOH中出発物質のガス抜き溶液を、ついで、シリンジ/ニードルにより加え、その間、不活性雰囲気を維持するように注意深く試みた。ついで、オートクレーブをParr 3000マルチ反応器システムに連結し、ついで、Ar(5バール)下に置き、攪拌しつつ排気し、このプロセスを3回繰り返した。最終排気後、混合物をH2(50バール)下に置き、再度、注意深く排気した。混合物をついでH2(50バール)下に置き、シールし、所望される温度まで必要とされる時間加熱した。この時間後、反応混合物を冷却し、容器を排気した。ついで、分析用に、0.5〜1.0mlのアリコートを採取した。
【実施例10】
【0069】
(S)-2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジル)-3-メチルブタン酸
【0070】
【化27】

【0071】
45mlオートクレーブ中に、1,1’ビス-[(RP,SC,RFe)L1(0.0063g,0.0069mmol)、[(COD)2Rh]BF4(0.0025g,0.0061mmol)および(E)-2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジリデン)-3-メチルブタン酸(2g,6.49mmol)を入れた。容器をついで真空/Arサイクル下に置いた。容器をついでアルゴンでフラッシュし、不活性雰囲気を維持するために、容器の上にゴム栓をかぶせた。ガス抜きしたMeOH(10ml)をついでカニューレにより加え、容器内の不活性雰囲気を維持するように注意した。容器をついでシールし、攪拌を開始した。容器をついでAr(5バール)下に置き、排気し、このプロセスを3回繰り返した。オートクレーブをついでH2(50バール)下に置き、再度、注意深く排気した。混合物をついでH2(50バール)下に置き、シールし、40℃まで12時間加熱した。この時間後、反応混合物を冷却し、容器を排気した。ついで、分析用に、0.5〜1.0mlのアリコートを採取した。転化率>98%,ee>98.5%(主要なエナンチオマー第2のランニングピーク)。
【0072】
【化28】

【0073】
2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジル)-3-メチルブタン酸のe.e.決定のためのHPLC法
Chiralpak-ADカラム(250mm×4.6mm),94%ヘキサン,3% 2-メチル-2-プロパノールおよび3%t-アミルアルコール,流速:1ml/分,230nm。S-酸13.15分(ビス-[(RP,SC,RFe)]1で最大ピーク),R-酸14.01分,出発物質42.73分。
【0074】
2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジル)-3-メチルブタン酸(メチルエステル)-ジアゾメタン誘導体化のe.e.決定のためのHPLC法
10mlのバイアルに、攪拌子と1mlの粗製の水素化反応混合物とを入れた。激しく攪拌しつつ、ヘキサン中トリメチルシリルジアゾメタン(2M)を反応混合物に滴下すると、ジアゾメタンの良好な黄色が消え、同時に、良好なガスが発生する。反応混合物が黄色となり、ガス発生が止まるまで、この滴下プロセスを継続した。ニートの酢酸(15〜30μl,酢酸が多すぎないことと過剰のガス発生に注意)をついで加えると、その際、混合物は、非常に淡い黄色となった。この混合物のほぼ1/3を、ついで、Pasteurピペット中の湿潤したシリカの小さなパッドを介して濾過し、少量のヘキサン/IPA(80:20)で洗浄した。生じた溶液をついでHPLCを使用して分析した:Chiralpak-ADカラム(250mm×4.6mm),95%ヘキサン,5%i-プロピルアルコール,流速:1ml/分,230nm。生成物エナンチオマー;9〜10分,出発物質;14〜16分。
注意:エナンチオマーの溶離の順序は、非誘導体化された酸についての分析に関して逆である。
【0075】
1,1’ビス-[(SP,RC,SFe)]L1は、(R)-2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジル)-3-メチルブタン酸を生成する。
1,1’ビス-[(RP,SC,RFe)]L1は、(S)- 2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジル)-3-メチルブタン酸を生成する。
【0076】
【化29】

【0077】
(E)-2-(3-(3-メトキシプロポキシ)-4-メトキシベンジリデン)-3-メチルブタン酸
【実施例11】
【0078】
【表1】

【実施例12】
【0079】
【表2】

【実施例13】
【0080】
【表3】

【実施例14】
【0081】
柔軟なリンカーユニットを含むリガンドは、記載する酸基質のエナンチオ選択的水素化のために最も好ましいことが見出された。
【0082】
【化30】

【0083】
【表4】

【実施例15】
【0084】
(S)-2-エトキシ-3-(チオフェン-2-イル)プロパン酸(メチルエステルとして)についてのe.e.決定のためのHPLC法
【0085】
【化31】

【0086】
誘導体化後:
Chiralpak-ADカラム(250mm×4.6mm),95%ヘキサン,2.5% 2-メチル-2-プロパノールおよび2.5% t-アミルアルコール,流速:1ml/分,236nm。エナンチオマー5.44および5.81分(ビス-[(SP,RC,SFe)1での最大ピーク]。
【実施例16】
【0087】
(S)-3-(3-ベンジルオキシ)-4-メトキシフェニル)-2-エトキシプロパン酸についてのe.e.決定のためのHPLC法
【0088】
【化32】

【0089】
Chiralpak-ADカラム(250mm×4.6mm),93%ヘキサン,7% -i-プロピルアルコール,流速:1.2ml/分,235nm。エナンチオマー11.71分,13.33分(ビス-[(RP,SC,RFe)1での最大ピーク],出発物質36.68分。
【実施例17】
【0090】
【表5】

【実施例18】
【0091】
(S)-2-エトキシ-3-(チオフェン-3-イル)プロパン酸についてのe.e決定のためのHPLC法
【0092】
【化33】

【0093】
Chiralpak-ADカラム(250mm×4.6mm),99%ヘキサン,1% -i-プロピルアルコール,流速:0.7ml/分,積分235〜239nm。エナンチオマー9.71分,10.88分(ビス-[(RP,SC,RFe)1での最大ピーク],出発物質16.35分。
【実施例19】
【0094】
(S)-2-エトキシ-3-(3-メトキシフェニル)プロパン酸(メチルエステルとして)についてのe.e決定のためのHPLC法
【0095】
【化34】

【0096】
誘導体化後:
Chiralpak-ADカラム(250mm×4.6mm),95%ヘキサン,2.5% 2-メチル-2-プロパノールおよび2.5% t-アミルアルコール,流速:1ml/分,積分280〜290nm。エナンチオマー7.49および10.00分(ビス-[(SP,RC,SFe)1での最大ピーク]。
【実施例20】
【0097】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオ選択的触媒反応に使用されるメタロセン基体のホスフィンまたはアルシンリガンドであり、そのリガンドが、式:
【化1】

[式中、Mは、金属であり;
Zは、PまたはAsであり;
Lは、適当なリンカーであり;
R1は、置換および未置換分岐および直鎖アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ;置換および未置換シクロアルキル;置換および未置換シクロアルコキシ;置換および未置換シクロアルキルアミノ;置換および未置換炭素環式アリール;置換および未置換炭素環式アリールオキシ;置換および未置換ヘテロアリール;置換および未置換ヘテロアリールオキシ;置換および未置換炭素環式アリールアミノ;および、置換および未置換ヘテロアリールアミノから選択され、そのまたは各ヘテロ原子が、独立に、硫黄、窒素および酸素から選択され;
Xは、
【化2】

{式中、R、R2およびR3は、独立に、置換および未置換分岐および直鎖アルキル;置換および未置換シクロアルキル;置換および未置換炭素環式アリール;および、置換および未置換ヘテロアリールから選択され、そのまたは各ヘテロ原子が、独立に、硫黄、窒素および酸素から選択される。}
から選択される。]
を有するリガンド。
【請求項2】
R2およびR3が、それらが結合する窒素と一緒に、任意に置換されたヘテロ環を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リン(または砒素)でキラリティを示す、請求項1または請求項2に記載のリガンド。
【請求項4】
Lに結合した第1のリン(または砒素)置換基のキラルコンフィギュレーションが、Lに結合した第2のリン(または砒素)置換基のキラルコンフィギュレーションと同一である、請求項3に記載のリガンド。
【請求項5】
Lが、ジアニオン反応性種から誘導される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリガンド。
【請求項6】
Lが、メタロセン類、ジフェニルエーテル類、キサンテン類、2,3-ベンゾチオフェン、1,2-ベンゼン、環式無水物またはコハク酸イミド類から選択される、請求項5に記載のリガンド。
【請求項7】
Lが、フェロセンである、請求項6に記載のリガンド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のリガンドのエナンチオマー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のリガンドのジアステレオマー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のリガンドに配位した遷移金属を含む遷移金属錯体。
【請求項11】
金属が、VIb族またはVIII族の金属である、請求項10に記載の遷移金属錯体。
【請求項12】
金属が、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金またはニッケルから選択される、請求項11に記載の遷移金属錯体。
【請求項13】
エナンチオ選択的触媒反応における請求項1〜9のいずれか1項に記載のリガンドの使用。
【請求項14】
エナンチオ選択的触媒反応における請求項10〜12のいずれか1項に記載の遷移金属錯体の使用。

【公表番号】特表2008−526938(P2008−526938A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550840(P2007−550840)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000114
【国際公開番号】WO2006/075166
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(502132634)フェニックス・ケミカルズ・リミテッド (9)
【Fターム(参考)】