説明

メタンを主成分とするガスの窒素除去方法および装置

【課題】メタンを主成分とするガス中の窒素を除去して再液化の効率化を実現するメタンを主成分とするガスの窒素除去方法を提供する。
【解決手段】窒素を吸着分離する吸着剤が充填された3以上の吸着塔を準備し、所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程と、上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程と、減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程とを、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去する方法であって、吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンを主成分とするガス中に不純物として含まれる窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中から産出されるメタンを主成分とするガスである天然ガスには、様々な不純物(NO、SO、HO、N、CO等)が含まれている。これらの不純物は、主として沸点差を利用した深冷分離などにより取り除かれ、製品グレードのメタン(CH)として精製されて液化され、液化天然ガス(LNG)としてLNG基地間を移送される。
【0003】
天然ガス中の窒素除去方法としては、上述したように沸点差を利用した深冷分離を用いた方法が一般的である。これは、メタン、窒素、二酸化炭素などが明らかに異なる沸点を持っているため、天然ガスの分離精製方法として極めて適した方法だからである。ところが、このような深冷分離を用いた方法は、大規模操業プラントを対象としており、中小規模の操業には向いていない。
【0004】
そこで、中小規模プラントでのガス分離には、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption;PSA)を用いた方法の採用が模索されている。
【0005】
近年では、メタン純度の高い天然ガスを採掘できるガス田は徐々に減ってきており、純度が低いところや規模の小さなところも利用しなければならなくなってきている。このため、採掘箇所も多岐に渡ってきているうえ、かつてにくらべて中小規模での操業も増えつつあるのが現状である。そこで、中小規模プラントにおける天然ガスのガス分離に対してPSAを適用するニーズが、より高まりを見せている。
【0006】
一方、LNGプラントやLNG基地では、貯蔵タンク内で、外部からの自然入熱などにより気化したガス、すなわちボイルオフガス(BOG)が多く発生する。これらのガスには低沸点成分である窒素が多く含まれている。これらのBOGは、余剰ガスを燃焼させて無害化するフレアスタックで処理されるか、工場内の燃料ガスとして利用されるのが一般的である。BOGを燃料ガスとして利用する場合、不燃成分である窒素濃度を管理してカロリー調整をする必要があり、窒素濃度が高いときは窒素除去設備を設けて処理しなければならない。
【0007】
またBOGを、燃焼させるのではなく、再液化して製品ガスとして回収することも検討されている。しかしながら、BOGを液化するためには、圧縮機で加圧したうえで冷却する必要があり、窒素の沸点がメタンに比べて低いことから、窒素濃度が高いと液化のために要する動力が過大になってしまい、エネルギー効率が悪くなる。
【0008】
このようなBOGの窒素除去設備としては、規模的に深冷分離は適用できず、PSAを用いた方法を模索しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−013594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
天然ガスの脱窒素プロセスでは、分離対象となるガスの分子径の差が微小である。このため、従来、PSAのような、分子径の違いを利用したガスの吸着分離は困難であるとされていた。最近になって、分子径ではなく、吸着速度の差を利用した吸着剤の開発が進み、例えば分子ふるい炭素(MSC)や、バリウムを置換したETS−4と呼ばれるゼオライト等の吸着剤が提案されている。これらの吸着剤を使用することにより、天然ガスの脱窒素プロセスに対してPSAを利用することの可能性が、現実味を帯びてきている。
【0011】
ここで、天然ガスの貯蔵タンク内で気化したボイルオフガス中の窒素除去にPSAを用いること自体は、上記特許文献1に記載されている。しかしながら、上記特許文献1には、PSAの運転条件について一切の言及が無く、天然ガス中の窒素除去方法として最適なPSAの運転パターンを提供するものではない。上記のような最新の吸着剤を用いたとしても、ある程度のガス分離はできるものの、単純に吸着筒にガスを通過させるだけでは、回収率や窒素濃度の点で十分に満足できる分離性能が得られるものではない。
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、PSAの運転パターンを最適化することにより、メタンを主成分とするガス中の不純物である窒素を除去し、再液化と製品化の効率を向上させるメタンを主成分とするガスの窒素除去方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第1のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法は、メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を準備し、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去方法であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施することを要旨とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1のメタンを主成分とするガスの窒素除去装置は、メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を備え、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去装置であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施することを要旨とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第2のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法は、メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を準備し、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去方法であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入することを要旨とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第2のメタンを主成分とするガスの窒素除去装置は、メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を備え、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去装置であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法および装置は、吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施する。
回収動作は、ガスを排出する吸着塔とそのガスを導入する吸着塔の圧力を均一化する均圧により実施する。回収動作を1回の均圧で行うと、均圧後に排出側の吸着塔に残ったガスを廃棄することになる。そこで、回収動作を、比較的高圧のガスを回収する第1段階の均圧動作と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階の均圧動作とにわけて行うようにした。このように均圧動作を2段階で行うことにより、廃棄するガスを少なくして回収できるガス量を増やし、回収率を向上することができる。
【0018】
本発明において、上記第1段階の回収動作と第2段階の回収動作とでは、異なる吸着塔にガスを移動する場合には、
比較的高圧の第1段階の均圧動作と比較的低圧の第2段階の均圧動作を異なる吸着塔との間で行い、2段階の均圧動作によって廃棄するガスを少なくして回収できるガス量が増え、回収率を向上することができる。
【0019】
本発明において、上記第1段階の回収動作では復圧工程後の吸着塔にガスを移動し、上記第2段階の回収動作では復圧工程前の吸着塔にガスを移動する場合には、
復圧工程後の比較的高圧の第1段階の均圧動作と、復圧工程前の比較的低圧の第2段階の均圧動作と、2段階の均圧動作によって廃棄するガスを少なくして回収できるガス量が増え、回収率を向上することができる。
【0020】
本発明において、上記復圧工程前の吸着塔に第2の回収動作によるガスの移動を行ない、上記復圧工程後の吸着塔に第1の回収動作によるガスの移動を行なう場合には、
復圧工程後の比較的高圧の第1段階の均圧動作と、復圧工程前の比較的低圧の第2段階の均圧動作と、2段階の均圧動作によって廃棄するガスを少なくして回収できるガス量が増え、回収率を向上することができる。
【0021】
本発明において、上記回収動作では、流出させたガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させる場合には、
上記第2段階の回収動作では、窒素分の濃度が高い残留ガスが流出される傾向にあることから、そのガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させて吸着剤と接触させることにより窒素分を吸着し、窒素除去率を向上させることができる。
【0022】
本発明の第2のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法および装置は、吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、上記回収動作は、流出させたガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させる。
上記回収動作では、窒素分の濃度の高い残留ガスが流出される傾向にあることから、そのガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させて吸着剤と接触させることにより窒素分を吸着し、窒素除去率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の窒素除去装置の全体構成を示す図である。
【図2】上記従来例における運転工程を説明する図である。
【図3】上記従来例における運転工程を説明する図である。
【図4】第1実施形態を実施するための窒素除去装置の全体構成を示す図である。
【図5】上記窒素除去装置を用いた運転工程の一例を説明する図である。
【図6】上記窒素除去装置を用いた運転工程の一例を説明する図である。
【図7】第1実施形態の窒素除去方法の運転工程を説明する図である。
【図8】第1実施形態の作用を説明するための図である。
【図9】第1実施形態の窒素除去方法の運転工程を説明する図である。
【図10】第2実施形態を実施するための窒素除去装置の全体構成を示す図である。
【図11】第2実施形態の窒素除去方法の運転工程を説明する図である。
【図12】第2実施形態の窒素除去方法の運転工程を説明する図である。
【図13】第3実施形態の窒素除去方法の運転工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明の前提となるメタンを主成分とするガスの窒素除去装置を説明する図である。この例は、メタンを主成分とするガスとして天然ガスを適用した例である。特に、天然ガスの貯蔵タンクで気化したボイルオフガスを好適に適用することができる。
【0026】
この例では、天然ガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3つの吸着塔A,B,Cを備えている。上記各吸着塔A,B,Cには、塔下部から原料ガス(この例では天然ガス)が導入され、内部の吸着剤に窒素ガスを吸着させ、窒素濃度を低下させたガスが製品ガスとして塔上部から取り出される。
【0027】
上記各吸着塔A,B,Cに充填される吸着剤としては、例えば、吸着速度の差によってメタンと窒素を分離する速度分離を行う吸着剤や、吸着量の差によってメタンと窒素を分離する平衡分離を行う吸着剤を好適に用いることができる。具体的には、速度分離の吸着剤として分子ふるい炭素(MSC)等を、平衡分離の吸着剤としてバリウムを置換したETS−4と呼ばれるゼオライト等を使用することができる。
【0028】
各吸着塔A,B,Cの下部には、原料ガスを導入するための原料導入路1A,1B,1Cが連通している。また、各吸着塔A,B,Cの下部には、吸着塔A,B,C内のガスを大気排気するための大気排気路2A,2B,2Cが連通している。
【0029】
一方、各吸着塔A,B,Cの上部には、製品ガスを取り出すための製品取出路3A,3B,3Cが連通している。また、各吸着塔A,B,Cの上部には、上記製品取出路3A,3B,3Cから取り出した製品ガスを減圧状態の吸着塔A,B,C内に還流させて復圧するための復圧路4A,4B,4Cが連通している。また、各吸着塔A,B,Cの上部には、上記製品取出路3A,3B,3Cから取り出した製品ガスを吸着塔A,B,C内に還流させてパージするためのパージ路5A,5B,5Cが連通している。さらに、各吸着塔A,B,Cの上部には、吸着塔A,B,Cの上部同士を連通させることにより、高圧側から低圧側にガスを移して均圧する均圧路6A,6B,6Cが連通している。符号7は、製品ガスを一時的に貯留するバッファタンク7である。
【0030】
上記原料導入路1A,1B,1C、大気排気路2A,2B,2C、製品取出路3A,3B,3C、復圧路4A,4B,4C、パージ路5A,5B,5C、均圧路6A,6B,6Cには、それぞれ図示しない開閉弁が設けられており、各開閉弁の開閉制御によって各吸着塔A,B,Cへのガスの導出と排出を制御する。
【0031】
上記各開閉弁の開閉制御により、大気圧を超える所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、上記吸着圧力より低い大気圧に減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、減圧状態の吸着塔A,B,Cを吸着圧力まで復帰させる復圧工程を制御する。また、これら各工程を、各吸着塔A,B,Cによって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔A,B,Cにおいては各工程を順次切り替えて実施することにより、連続的に天然ガスから窒素を除去するようになっている。
【0032】
さらに、上記各開閉弁の開閉制御により、吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔A,B,Cから排出されるガスを、復圧段階の吸着塔A,B,Cに導入する回収動作を実施するようになっている。この回収動作は、均圧路6A,6B,6Cを通して2つの吸着塔A,B,Cを連通することにより行う。
【0033】
図2は、図1の装置を用いて行う窒素ガス除去方法の工程を説明する図である。
【0034】
吸着塔A,B,Cそれぞれにおいて、吸着工程→再生工程→復圧工程を実行する。吸着工程では、塔の下部に導入された原料ガスを大気圧を超える所定の吸着圧力で吸着剤と接触させ、窒素を吸着剤に吸着させて窒素を除去し、メタンの純度を上げて精製する。再生工程では、吸着工程後の塔内から残留ガスを排出して上記吸着圧力より低い大気圧に減圧し、製品ガスを流してパージすることにより、吸着剤から窒素を脱離させて再生する。復圧工程では、再生工程後の塔内に、再び原料ガスを導入して吸着圧力まで復帰させる。
【0035】
A塔で吸着工程を行う間、B塔で復圧工程、C塔で再生工程を行う。ついで、A塔で再生工程を行う間、B塔では吸着工程、C塔で復圧工程を行う。つぎに、A塔で復圧工程を行う間、B塔では再生工程、C塔で吸着工程を行う。このサイクルと切り替えを繰り返すことにより、吸着工程、再生工程、復圧工程を、各吸着塔A,B,Cによって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔A,B,Cにおいて各工程を順次切り替えて実施し、連続的に製品ガスを得るようになっている。
【0036】
このとき、吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔A,B,Cから排出されるガスを、復圧段階の吸着塔A,B,Cに導入する回収動作を実施する。具体的には、吸着工程後で再生工程前の吸着塔A,B,Cと、再生工程後で復圧工程前の吸着塔A,B,Cとを、均圧路6A,6B,6Cを介して連通させる。これにより、吸着工程後で再生工程前の吸着塔A,B,C(吸着圧力であり比較的高圧である)の塔内ガスを、再生工程後で復圧工程前の吸着塔A,B,C(再生圧力であり比較的低圧である)に移動させて回収するのである。
【0037】
図3は、図1の装置により図2の工程を実施する際のガスの流れを説明する図である。
【0038】
図3(A)は、A塔で吸着工程、B塔およびC塔で回収動作である均圧動作を行っている状態を示す。A塔では、原料導入路1Aから塔下部に原料ガスが導入され、製品取出路3Aにより塔上部から製品ガスが取り出される。B塔およびC塔では、それぞれの塔上部の均圧路6B,6C同士が連通する。これにより、それまで吸着工程を実施して比較的高圧の吸着圧力であったC塔から、それまで再生工程を実施して比較的低圧の再生圧力であったB塔にガスを移動させて回収する。この動作により、B塔とC塔は均圧化される。図ではこの動作について、C塔を「流出均圧」、B塔を「流入均圧」と記載している。
【0039】
図3(B)は、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの大気排気動作を行っている状態を示す。A塔の状態は上述した説明と同様である。B塔では、再生工程後にガスの流入で均圧されたところへ、復圧路4Bにより塔上部へ製品ガスを送り込み、塔内圧力を吸着圧力まで上昇させる。C塔では、吸着工程後に塔内ガスの流出で均圧された後、大気排気路2Cにより塔下部から塔内ガスをさらに排出して大気圧まで減圧する。
【0040】
図3(C)は、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちのパージ動作を行っている状態を示す。A塔およびB塔の状態は上述した説明と同様である。C塔では、大気排気後、パージ路5Cにより塔上部へ製品ガスをパージガスとして送り込みながら、大気排気路2Cにより塔下部からパージガスを排出する、このような大気圧でのパージを行うことにより、吸着剤に吸着された窒素を脱離させる。
【0041】
図4は、第1実施形態の前提となる天然ガスの窒素除去装置を説明する図である。
【0042】
基本的には図1に示す装置と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この装置では、各吸着塔A,B,Cの下部に、真空ポンプ9により塔内を真空排気するための真空排気路8A,8B,8Cが連通している。これにより、再生工程において、大気排気に加えて真空排気を行い、大気圧でのパージでなく真空排気しながらの減圧パージを行ないうるようになっている。
【0043】
図5は、図4の装置を用いて行う窒素ガス除去方法の工程を説明する図である。
【0044】
基本的には図2に示す工程と同様であるが、再生工程の動作を、大気排気→真空排気1→パージ→真空排気2としている。
【0045】
図6は、図4の装置により図5の工程を実施する際のガスの流れを説明する図である。
【0046】
図6(A)(B)は、図3(A)(B)と同様であるので、重複する説明は一部省略した。
図6(A)は、図3(A)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔およびC塔で回収動作である均圧動作を行っている状態を示す。
図6(B)は、図3(B)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの大気排気動作を行っている状態を示す。
【0047】
図6(C)は、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの真空排気1動作を行っている状態を示す。A塔およびB塔の状態は上述した説明と同様である。C塔では、大気排気後、真空排気路8Cにより塔下部から塔内ガスをさらに真空ポンプで排出して減圧する。
【0048】
図6(D)は、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの減圧パージ動作を行っている状態を示す。A塔およびB塔の状態は上述した説明と同様である。C塔では、真空排気1後、真空排気路8Cにより塔下部から塔内ガスをさらに真空ポンプで排出して減圧しながら、塔上部へ製品ガスをパージガスとして送り込み、減圧パージを行うことにより、吸着剤に吸着された窒素を脱離させる。
【0049】
図6(E)は、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの真空排気2動作を行っている状態を示す。A塔およびB塔の状態は上述した説明と同様である。C塔では、減圧パージ後、塔上部へのパージガスの導入を停止して、真空排気路8Cにより塔下部から塔内ガスをさらに真空ポンプで排出する。
【0050】
<第1実施形態>
図7は、本発明の第1実施形態の窒素ガス除去方法の工程を説明する図である。この第1実施形態の方法は、図4に示した装置とほぼ同様の装置において、開閉弁を開閉制御することにより実現することができる。
【0051】
この実施形態は、基本的には図5に示す工程と同様であるが、回収動作を、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施するようにしている。
【0052】
2段階の回収動作について、例えばA塔を例にとってより詳しく説明する。
【0053】
A塔の塔内ガスを他の吸着塔B,Cに移す回収動作を説明する。この場合、A塔の吸着工程と再生工程の間に、A塔の塔内ガスを他の吸着塔B,Cに流出させる(図では流出均圧と記している)。この流出均圧動作は、A塔の吸着工程直後の比較的高圧のガスを復圧工程後の吸着塔(この例ではB塔である)に移して回収する第1段階(図では流出均圧Hと表示している)と、上記第1段階でのガス流出により少し低圧になったA塔の塔内ガスを復圧工程前の吸着塔(この例ではC塔である)に移して回収する第2段階(図では流出均圧Lと表示している)との2段階を行う。
【0054】
A塔において他の吸着塔B,Cの塔内ガスを受け入れる回収動作を説明する。A塔の再生工程終了後、復圧工程の段階で、他の吸着塔B,Cから塔内ガスを流入させる(図では流入均圧と記している)。この流入均圧動作は、A塔の復圧工程前、再生工程で真空排気されて低圧状態のところに、上述した第2段階の比較的低圧の塔内ガスをこの例ではB塔から移して回収する(図では流入均圧Lと表示している)。また、A塔の復圧工程後、ある程度の高圧まで復圧されたところに、上述した第1段階の比較的高圧の塔内ガスをこの例ではC塔から移して回収する(図では流入均圧Hと表示している)。
【0055】
図8は、1段階で行う回収動作(1段回収)と2段階で行う回収動作(2段回収)において、塔内ガスを流出する吸着塔(この例ではA塔)の塔内圧力の変化と動作との関係を表した図である。
【0056】
まず、1段回収の場合(図5で説明した工程である)を説明する。
【0057】
回収動作(流出均圧)は、吸着工程後の吸着圧力の吸着塔(この例ではA塔)と、復圧工程前の再生工程で真空排気された真空排気圧力の吸着塔(この例ではC塔)を、均圧路6A,6Cにより連通して均圧化する。この均圧化により、吸着圧力を保っていたA塔の塔内ガスを真空排気圧力のC塔に移動させて回収する。このとき、吸着圧力であったA塔の塔内圧力は、A塔の吸着圧力とC塔の真空排気圧力との平均圧力まで降下する。その後A塔では、再生工程の大気排気および真空排気1により、塔内の残留ガスが排出される。ここで排出された残留ガスが廃棄されることになる。
【0058】
つぎに、2段回収の場合(図7で説明した工程である)を説明する。
【0059】
第1段階の回収動作(流出均圧H)は、吸着工程後の吸着圧力の吸着塔(この例ではA塔)と、復圧工程により吸着圧力近くまで圧力を戻した吸着塔(この例ではB塔)を、均圧路6A,6Bにより連通して均圧化する。この均圧化により、吸着圧力を保っていたA塔の塔内ガスをある程度復圧されたB塔に移動させて回収する。このとき、吸着圧力であったA塔の塔内圧力は、A塔の吸着圧力とB塔の圧力との平均圧力まで降下する。降下の程度は上述した1段回収での均圧のときよりも小さい。
【0060】
第2段階の回収動作(流出均圧L)は、上記第1段階の均圧が行なわれた後の吸着塔(この例ではA塔)と、復圧工程前の再生工程で真空排気された真空排気圧力の吸着塔(この例ではC塔)を、均圧路6A,6Cにより連通して均圧化する。この均圧化により、第1段階での均圧圧力まで降下したA塔の塔内ガスを、真空排気圧力のC塔に移動させて回収する。このとき、A塔の塔内圧力は、第1段階での均圧圧力とC塔の真空排気圧力との平均圧力まで降下する。このとき、第1段階(流出均圧H)で一旦低下した圧力と真空排気圧力との平均圧力まで下がるので、上述した1段階回収における均圧圧力よりも低い圧力まで降下させることができる。その後A塔では、再生工程の大気排気および真空排気1により、塔内の残留ガスが排出され廃棄されるが、回収動作を終了したときの到達圧力が1段回収のときよりも低くなるため、廃棄するガスを少なくすることができる。
【0061】
このように、上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施する。
回収動作は、ガスを排出する吸着塔(この例ではB塔,C塔)とそのガスを導入する吸着塔(この例ではA塔)の圧力を均一化する均圧により実施する。回収動作を1回の均圧で行うと、均圧後に排出側の吸着塔(この例ではB塔,C塔)に残ったガスを廃棄することになる。そこで、回収動作を、比較的高圧のガスを回収する第1段階の均圧動作と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階の均圧動作とにわけて行うようにした。このように均圧動作を2段階で行うことにより、廃棄するガスを少なくして回収できるガス量を増やし、回収率を向上することができる。
【0062】
このように、A塔に着目すると、上記第1段階の回収動作と第2段階の回収動作とでは、異なる吸着塔B,Cに対してガスを移動する。
これにより、比較的高圧の第1段階の均圧動作と比較的低圧の第2段階の均圧動作を異なる吸着塔との間で行い、2段階の均圧動作によって廃棄するガスを少なくして回収できるガス量が増え、回収率を向上することができる。
【0063】
このとき、A塔に着目すると、上記第1段階の回収動作では復圧工程後の吸着塔(この例ではB塔)にガスを移動し、上記第2段階の回収動作では復圧工程前の吸着塔(この例ではC塔)にガスを移動する。
これにより、復圧工程後の比較的高圧の第1段階の均圧動作と、復圧工程前の比較的低圧の第2段階の均圧動作と、2段階の均圧動作によって廃棄するガスを少なくして回収できるガス量が増え、回収率を向上することができる。
【0064】
さらに、B塔およびC塔に着目すると、上記復圧工程前の吸着塔(この例ではA塔)にB塔における第2の回収動作によるガスの移動を行ない、上記復圧工程後の吸着塔(この例ではA塔)にC塔における第1の回収動作によるガスの移動を行なう。
これにより、復圧工程後の比較的高圧の第1段階の均圧動作と、復圧工程前の比較的低圧の第2段階の均圧動作と、2段階の均圧動作によって廃棄するガスを少なくして回収できるガス量が増え、回収率を向上することができる。
【0065】
図9は、図4の装置により図7の工程を実施する際のガスの流れを説明する図である。
【0066】
図9(A)は、図3(A)図6(A)と基本的に同様であり、A塔で吸着工程、B塔およびC塔で回収動作である均圧動作を行っている状態を示す。この均圧動作は、均圧路6B,6CによりB塔とC塔を連通させ、C塔の塔内ガスをB塔に移動させて均圧化するもので、上述した流出均圧Lおよび流入均圧Lに相当する(図7参照)。
【0067】
図9(B)〜(E)は、図6(B)〜(E)と同様であるので、重複する説明は一部省略した。
図9(B)は、図3(B)図6(B)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの大気排気動作を行っている状態を示す。
図9(C)は、図6(C)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの真空排気1動作を行っている状態を示す。
図9(D)は、図6(D)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの減圧パージ動作を行っている状態を示す。
図9(E)は、図6(E)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの真空排気2動作を行っている状態を示す。
【0068】
図9(F)は、A塔およびB塔で回収動作である均圧動作を行い、C塔で真空排気2を行っている状態を示す。ここでの均圧動作は、均圧路6A,6BによりA塔とB塔を連通させ、A塔の塔内ガスをB塔に移動させて均圧化するもので、上述した流出均圧Hおよび流入均圧Hに相当する(図7参照)。
【0069】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態の窒素ガス除去方法を実現するための窒素除去装置を説明する図である。
【0070】
基本的には図1および図4に示す装置と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この装置では、各吸着塔A,B,Cの上部に設けられた均圧路6A,6B,6Cと、各吸着塔A,B,Cの下部である原料ガスの原料ガス導入側とを連通させる連通路10が設けられている。
【0071】
上記第1実施形態では、第2段階の回収動作を、吸着塔A,B,Cの製品ガス排出側同士を均圧路6A,6B,6Cで連通して均圧させている。これに対し、第2実施形態では、第2段階の回収動作を、吸着塔A,B,Cの製品ガス排出側と、吸着塔A,B,Cの原料ガスの導入側とを連通させて均圧するようにしている。これにより、第2実施形態では、上記回収動作は、排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入するようになっている。
【0072】
図11は、第2実施形態の窒素ガス除去方法の工程を説明する図である。この第2実施形態の方法は、図10に示した装置において、開閉弁を開閉制御することにより実現することができる。
【0073】
この実施形態は、基本的には図7に示す工程と同様であるが、上記第2段階の回収動作では、排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入する。すなわち、流出均圧H/流入均圧Hと、流出均圧L/流入均圧Lとの2段階で行う回収動作のうち、第2段階の回収動作である流出均圧L/流入均圧Lの動作を、塔内ガス流出側の吸着塔の製品ガス排出側と、塔内ガス流入側の吸着塔の原料ガス導入側とを連通させて均圧させる。このときの均圧では、塔内ガス流出側の吸着塔の製品ガス排出側から、塔内ガス流入側の吸着塔の原料ガス導入側へガスが移動する。
【0074】
この動作について、例えばA塔を例にとってより詳しく説明する。
【0075】
A塔の塔内ガスを他の吸着塔B,Cに移す回収動作を説明する。この場合、第1段階の流出均圧H/流入均圧Hの回収動作は、図7での説明と同様である。上記第1段階でのガス流出により少し低圧になったA塔の塔内ガスを、復圧工程前の吸着塔(この例ではC塔である)に移して回収する第2段階(図では流出均圧Lと表示している)を行う。このとき、連通路10を介してA塔の上部(製品ガス排出側)と、C塔の下部(原料ガス導入側)を連通させ、A塔の塔内ガスをA塔の上部から流出させてC塔の下部へ導入する。
【0076】
A塔において他の吸着塔B,Cの塔内ガスを受け入れる回収動作を説明する。A塔の再生工程終了後、復圧工程の段階で、他の吸着塔B,Cから塔内ガスを流入させる(図では流入均圧と記している)。この流入均圧動作は、A塔の復圧工程前、再生工程で真空排気されて低圧状態のところに、上述した第2段階の比較的低圧の塔内ガスをこの例ではB塔から移して回収する(図では流入均圧Lと表示している)。このとき、連通路10を介してB塔の上部(製品ガス排出側)と、A塔の下部(原料ガス導入側)を連通させ、B塔の塔内ガスをB塔の上部から流出させてA塔の下部へ導入する。その後、復圧工程後の流出均圧H/流入均圧Hの回収動作は、図7での説明と同様である。
【0077】
上記第2段階の回収動作では、窒素分の濃度が高い残留ガスが排出される傾向にある。すなわち、吸着塔内部のガス組成は、原料ガス導入側の方がより窒素濃度が高く、製品ガス排出側の方がより窒素濃度が低くなっている。このため、2段階の回収動作のうち、1回目の流出均圧H/流入均圧Hでは、製品ガス排出側の窒素濃度が比較的低い塔内ガスを回収することができる。ところが、2回目の流出均圧L/流入均圧Lでは、原料ガス導入側の窒素濃度が比較的高い塔内ガスが流出することになる。そこで、この窒素濃度が比較的高い塔内ガスを、他の吸着塔の原料ガス導入側に回収して吸着剤と接触させることにより窒素分を吸着し、窒素除去率を向上させることができるのである。
【0078】
このように、第2実施形態では、上記第2段階の回収動作で、排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入するため、上記第2段階の回収動作では、窒素分の濃度が高い残留ガスが排出される傾向にあることから、その排出ガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入して吸着剤と接触させることにより窒素分を吸着し、窒素除去率を向上させることができる。それ以外は、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0079】
図12は、図10の装置により図11の工程を実施する際のガスの流れを説明する図である。
【0080】
図12(A)は、A塔で吸着工程、B塔およびC塔で回収動作である均圧動作を行っている状態を示す。ここでの均圧動作は、均圧路6Cおよび連通路10によりB塔とC塔を連通させ、C塔の塔内ガスを上部から取り出し、B塔の下部に移動させて均圧化するもので、上述した流出均圧Lおよび流入均圧Lに相当する(図11参照)。
【0081】
図12(B)〜(F)は、図9(B)〜(F)と同様であるので、重複する説明は一部省略した。
図12(B)は、図9(B)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの大気排気動作を行っている状態を示す。
図12(C)は、図9(C)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの真空排気1動作を行っている状態を示す。
図12(D)は、図9(D)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの減圧パージ動作を行っている状態を示す。
図12(E)は、図9(E)と同様であり、A塔で吸着工程、B塔で復圧工程、C塔で再生工程のうちの真空排気2動作を行っている状態を示す。
図12(F)は、図9(F)と同様であり、A塔およびB塔で回収動作である均圧動作を行い、C塔で真空排気2を行っている状態を示す。
【0082】
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態の窒素ガス除去方法の工程を説明する図である。この第3実施形態の方法は、図10に示した装置において、開閉弁を開閉制御することにより実現することができる。
【0083】
この実施形態は、基本的には図11に示す工程と同様であるが、上記第2段階の回収動作において、それぞれ排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入する。すなわち、流出均圧H/流入均圧Hと、流出均圧L/流入均圧Lとの2段階で行う回収動作の双方を、塔内ガス流出側の吸着塔の製品ガス排出側と、塔内ガス流入側の吸着塔の原料ガス導入側とを連通させて均圧させる。このときの均圧では、塔内ガス流出側の吸着塔の製品ガス排出側から、塔内ガス流入側の吸着塔の原料ガス導入側へガスが移動する。
【0084】
この動作について、例えばA塔を例にとってより詳しく説明する。
【0085】
A塔の塔内ガスを他の吸着塔B,Cに移す回収動作を説明する。第1段階の流出均圧H/流入均圧Hの回収動作の際、連通路10を介してA塔の上部(製品ガス排出側)と、B塔の下部(原料ガス導入側)を連通させ、A塔の塔内ガスをA塔の上部から流出させてB塔の下部へ導入する。つぎに、上記第1段階でのガス流出により少し低圧になったA塔の塔内ガスを、復圧工程前の吸着塔(この例ではC塔である)に移して回収する第2段階(図では流出均圧Lと表示している)を行う。このとき、連通路10を介してA塔の上部(製品ガス排出側)と、C塔の下部(原料ガス導入側)を連通させ、A塔の塔内ガスをA塔の上部から流出させてC塔の下部へ導入する。
【0086】
A塔において他の吸着塔B,Cの塔内ガスを受け入れる回収動作を説明する。A塔の再生工程終了後、復圧工程の段階で、他の吸着塔B,Cから塔内ガスを流入させる(図では流入均圧と記している)。この流入均圧動作は、A塔の復圧工程前、再生工程で真空排気されて低圧状態のところに、上述した第2段階の比較的低圧の塔内ガスをこの例ではB塔から移して回収する(図では流入均圧Lと表示している)。このとき、連通路10を介してB塔の上部(製品ガス排出側)と、A塔の下部(原料ガス導入側)を連通させ、B塔の塔内ガスをB塔の上部から流出させてA塔の下部へ導入する。その後、復圧工程後の流出均圧H/流入均圧Hの回収動作の際、連通路10を介してC塔の上部(製品ガス排出側)と、A塔の下部(原料ガス導入側)を連通させ、C塔の塔内ガスをC塔の上部から流出させてA塔の下部へ導入する。
【0087】
このように、第3実施形態では、上記回収動作で、排出したガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入するため、上記第2段階の回収動作では、窒素分の濃度が高い残留ガスが排出される傾向にあることから、その排出ガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に導入して吸着剤と接触させることにより窒素分を吸着し、窒素除去率を向上させることができる。それ以外は、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0088】
つぎに、実験例および実施例を説明する。
【実験例1】
【0089】
図1に示す装置により、図2および図3で説明した大気圧再生プロセスを実施した。吸着剤は、モレキュラーシービングカーボン(分子ふるい炭素)を用いた。CHの回収率と、製品ガス中のN濃度を測定した。
その結果、CHの回収率は65.08%、製品ガス中のN濃度は2.990mol%であった。
【実験例2】
【0090】
図4に示す装置により、図5および図6で説明した真空再生プロセスを実施した。吸着剤は同じものを用いた。
その結果、CHの回収率は61.61%、製品ガス中のN濃度は1.051mol%となった。
再生圧力を低下させたことにより、吸着剤の再生状態が向上し、実験例1に比べると分離性能が向上した。
【実施例1】
【0091】
図4に示す装置により、図7および図9で説明した2段階回収プロセスを実施した。吸着剤は同じものを用いた。
その結果、CHの回収率は60.06%、製品ガス中のN濃度は1.292mol%となった。
実験例1に比べると分離性能が向上している。実験例2よりも製品ガス中の窒素濃度が低下している理由は、均圧動作を二回に分けて実施したため、その分回収ガス量が増加したことによるものである。
【実施例2】
【0092】
図10に示す装置により、図11および図12で説明した回収プロセスを実施した。吸着剤は同じものを用いた。
その結果、CHの回収率は61.61%、製品ガス中のN濃度は0.879mol%となった。
実験例1および2に比べ、製品ガス中の窒素濃度が低下している。
【実施例3】
【0093】
図10に示す装置により、図13で説明した回収プロセスを実施した。吸着剤は同じものを用いた。
その結果、CHの回収率は61.05%、製品ガス中のN濃度は0.978mol%となった。
実験例1および2に比べ、製品ガス中の窒素濃度が低下している。
【0094】
CHの回収率と製品ガス中のN濃度については、実用性を考慮してCHの回収率を60.0%以上とし、製品ガス中のN濃度を1.0mol%未満とすることを目標とし、実施例2および実施例3において当該目標値を達成できた。
【0095】
なお、上述した説明は、本発明を3つの吸着塔で行った例を示したが、これに限定するものではなく、4つ以上の吸着塔で行うようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、メタンを主成分とするガスが天然ガスである例を説明したが、本発明が適用される分野はこれに限定するものではない。メタンを主成分とするガスとして、例えば油田・ガス田以外から生産される天然ガスであるタイトサンドガス、炭層メタン、シェールガスや、バイオ系ガスである家畜由来のバイオガス、食品残渣由来のバイオガス等、各種のメタンを主成分とするガスから窒素分を除去することに適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
A,B,C 吸着塔
1A,1B,1C 原料導入路
2A,2B,2C 大気排気路
3A,3B,3C 製品取出路
4A,4B,4C 復圧路
5A,5B,5C パージ路
6A,6B,6C 均圧路
7 バッファタンク
8A,8B,8C 真空排気路
9 真空ポンプ
10 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を準備し、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去方法であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施することを特徴とするメタンを主成分とするガスの窒素除去方法。
【請求項2】
上記第1段階の回収動作と第2段階の回収動作とでは、異なる吸着塔にガスを移動する請求項1記載のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法。
【請求項3】
上記第1段階の回収動作では復圧工程後の吸着塔にガスを移動し、上記第2段階の回収動作では復圧工程前の吸着塔にガスを移動する請求項1または2記載のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法。
【請求項4】
上記復圧工程前の吸着塔に第2の回収動作によるガスの移動を行ない、上記復圧工程後の吸着塔に第1の回収動作によるガスの移動を行なう請求項1〜3のいずれか一項に記載のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法。
【請求項5】
上記回収動作では、流出させたガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のメタンを主成分とするガスの窒素除去方法。
【請求項6】
メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を備え、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着搭によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去装置であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、吸着後の比較的高圧のガスを回収する第1段階と、その後の比較的低圧のガスを回収する第2段階とを実施することを特徴とするメタンを主成分とするガスの窒素除去装置。
【請求項7】
メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を準備し、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去方法であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、流出させたガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させることを特徴とするメタンを主成分とするガスの窒素除去方法。
【請求項8】
メタンを主成分とするガスから窒素を吸着分離するための吸着剤が充填された3以上の吸着塔を備え、
所定の吸着圧力に加圧した状態で窒素を吸着剤に吸着させる吸着工程、
上記吸着圧力よりも減圧した状態で吸着剤から窒素を脱離させて再生する再生工程、
減圧状態の吸着塔を吸着圧力まで復帰させる復圧工程、
これら各工程を、各吸着塔によって並行して実施しながら、それぞれの吸着塔においては各工程を順次切り替えて実施することにより、メタンを主成分とするガスから窒素を除去するメタンを主成分とするガスの窒素除去装置であって、
吸着工程から再生工程に移行するときの減圧段階で吸着塔から排出されるガスを、復圧段階の吸着塔に導入する回収動作を実施し、
上記回収動作は、流出させたガスを他の吸着塔の原料ガス導入側に流入させることを特徴とするメタンを主成分とするガスの窒素除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−144628(P2012−144628A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3511(P2011−3511)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】