説明

メタンガス濃縮装置および方法ならびに燃料ガスの製造装置および方法

【課題】高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができるメタンガス濃縮装置を提供する。
【解決手段】少なくともメタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮装置1であって、上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを濃縮する第1濃縮装置11と、上記第1濃縮装置11の非透過ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスをさらに濃縮する第2濃縮装置12と、上記第1濃縮装置11の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを回収する回収装置13とを備えたことにより、高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮装置および方法、ならびにメタンガスと熱量調節用の高熱量ガスとを含む燃料ガスの製造装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、し尿、浄化水汚泥、下水処理汚泥、家畜糞尿、生ゴミ等の有機性廃棄物をメタン発酵菌により嫌気性発酵処理することにより、有機性廃棄物を分解して主としてメタンガスと二酸化炭素を含むバイオガスを発生させ、このバイオガスをエネルギーとして有効活用する技術が開発されている。
【0003】
一方、発生させたバイオガスから高濃度のメタンや二酸化炭素を分離する回収技術も種々のものが開発されている。特に、小型〜中型の設備に利用できるものとして膜分離法があげられる。
【0004】
このような膜分離法は、高分子膜等を用いてガス成分の透過速度の差によって成分分離を行なうものであり、加圧ガスを膜に通過させるだけでガス成分の分離が可能で、対象ガスの種類や処理ガス量等に合わせて分離膜を選択し、必要に応じて複数の分離膜を並列に組み合わせて使用したり(下記の特許文献1〜3)、直列に組み合わせて使用したりすることが行なわれている(下記の特許文献4)。
【特許文献1】特開平11−3723号公報
【特許文献2】特開2001−949号公報
【特許文献3】特表2006−507385号公報
【特許文献4】特開2007−254572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の分離膜を単に並列に使用したのでは、回収率はある程度あげることができるものの、高濃度のメタンガスを得るには限界がある。一方、複数の分離膜を単に直列に使用したのでは、ある程度高濃度のメタンガスを得ることができるものの、回収率を上げるのには限界がある。このように、高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができるメタンガスの濃縮装置は得られていなかったのが実情である。また、二酸化炭素とメタンを主として含むバイオガスを原料として燃料ガスを得ようとすると、メタンガスだけでは十分な熱量が得られない場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができるメタンガス濃縮装置および方法ならびに燃料ガスの製造装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のメタンガス濃縮装置は、少なくともメタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮装置であって、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを濃縮する第1濃縮装置と、
上記第1濃縮装置の非透過ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスをさらに濃縮する第2濃縮装置と、
上記第1濃縮装置の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを回収する回収装置とを備えたことを要旨とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明のメタンガス濃縮方法は、少なくともメタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮方法であって、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを濃縮する第1濃縮工程と、
上記第1濃縮工程の非透過ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスをさらに濃縮する第2濃縮工程と、
上記第1濃縮工程の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを回収する回収工程とを備えたことを要旨とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の燃料ガスの製造装置は、メタンガスと熱量調節用の高熱量ガスとを含む燃料ガスの製造装置であって、
有機物を分解して得られたバイオガスに対して高熱量ガスを添加してバイオガスと高熱量ガスとの混合ガスとする高熱量ガス添加手段と、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを濃縮する第1濃縮装置と、
上記第1濃縮装置の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを回収する回収装置とを備えたことを要旨とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の燃料ガスの製造方法は、メタンガスと熱量調節用の高熱量ガスとを含む燃料ガスの製造方法であって、
有機物を分解して得られたバイオガスに対して高熱量ガスを添加してバイオガスと高熱量ガスとの混合ガスとする高熱量ガス添加工程と、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを濃縮する第1濃縮工程と、
上記第1濃縮工程の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを回収する回収工程とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のメタンガス濃縮装置および方法は、分離膜による第1段階と第2段階の2段階の濃縮により二酸化炭素を除去してメタンガスを濃縮するため、高濃度の濃縮メタンガスを得ることができる。また、第1段階の濃縮の透過ガスをさらに分離膜によって二酸化炭素を分離してメタンガスを回収することから、メタンガスの回収率を飛躍的に向上することができる。このように、高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができ、例えば、メタンガスの含有率が60%未満の混合ガスや、混合ガス中に空気等の不純ガスが混入するような環境であっても高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができる。また、メタンガスを高回収率で回収した後の排ガスとして高濃度の二酸化炭素ガスを得ることができ、二酸化炭素回収装置としての機能も同時に発揮する。
【0012】
本発明のメタンガス濃縮装置および方法において、上記第2濃縮装置または工程の透過ガスおよび回収装置の非透過ガスを第1濃縮装置または工程の導入側に還流させる場合には、第2濃縮装置または工程において透過した二酸化炭素およびメタンガスを第1濃縮装置または工程に再び導入するとともに、回収装置で透過しなかったメタンガスを第1濃縮装置または工程に再び導入し、メタンガスの濃縮濃度および回収率を向上することができる。
【0013】
本発明のメタンガス濃縮装置および方法において、上記第1濃縮装置または工程と第2濃縮装置または工程の分離膜の面積が略等しい場合には、上記第1濃縮装置または工程と第2濃縮装置または工程の分離膜の面積を略等しくすることにより、第1濃縮装置と第2濃縮装置に同じ分離膜の濃縮装置を用いることができて設備効率面で有利である。また、第1濃縮装置または工程の導入圧と第2濃縮装置または工程の導入圧との差が少ないため、分離膜の面積を略等しくすることで第1濃縮装置または工程も第2濃縮装置または工程も略同等の濃縮性能が発揮され、メタンガスの濃縮濃度および回収率を向上することができる。
【0014】
本発明のメタンガス濃縮装置および方法において、上記回収装置または工程の分離膜の面積を第1濃縮装置または工程の分離膜の面積よりも小さくした場合には、回収装置または工程の分離膜をメタンガスがより透過し難くなり、メタンガスの回収効率を向上することができる。
【0015】
本発明のメタンガス濃縮装置および方法において、上記回収装置または工程における分離膜の透過前後の差圧を0.1MPa以下とした場合には、回収装置または工程の分離膜をメタンガスがより透過し難くなり、メタンガスの回収効率を向上することができる。
【0016】
本発明の燃料ガスの製造装置および方法は、あらかじめバイオガスに対して高熱量ガスを添加してバイオガスと高熱量ガスとの混合ガスとし、この混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスと高熱量ガスを濃縮する。このようにすることにより、あらかじめバイオガスに対する混合比率を定めて高熱量ガスを添加することにより、メタンガスと高熱量ガスが所定比率で混合された所定熱量の燃料ガスを得ることができ、このように、バイオガスを原料として十分な熱量で安定した品質の燃料ガスを簡単な制御で得ることができる。
【0017】
本発明の燃料ガスの製造装置および方法において、上記添加手段は、第1濃縮装置または工程に導入するガスを昇圧する昇圧手段の上流においてバイオガスに対して高熱量ガスを添加する場合には、低圧なバイオガスに対して高熱量ガスを添加できて高熱量ガスの液化を防ぐ。これにより、分離膜透過後のメタンガスと高熱量ガスの混合比率の変動を防止し、安定した品質の燃料ガスを簡単な制御で得ることができる。
【0018】
本発明の燃料ガスの製造装置および方法において、上記回収装置または工程の分離膜の面積を第1濃縮装置または工程の分離膜の面積よりも小さくした場合には、回収装置または工程の分離膜をメタンガスがより透過し難くなり、メタンガスの回収効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明が適用される燃料ガス製造装置の一例を示す構成図である。
【0021】
この燃料ガス製造装置は、少なくともメタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮装置1を備え、メタンガスと熱量調節用の高熱量ガスとを含む燃料ガスを製造するものである。
【0022】
上記燃料ガス製造装置は、原料ガスとして有機物を分解して得られたバイオガスを使用する。上記バイオガスは、有機性廃棄物を嫌気性雰囲気でメタン菌などの嫌気性微生物を用いて有機物を分解処理する消化槽(図示せず)等により発生させ、メタンを高濃度に含有するとともに二酸化炭素を含有するガスである。
【0023】
上記消化槽は、例えば、円筒槽、矩形槽及び卵形槽などの形状が用いられる。また、上記消化槽としては、発生した消化ガスを循環するとともに攪拌する攪拌装置が設けられた1段構造のものを用いることもできるし、通性嫌気性菌により蛋白質などの高分子有機物を有機酸などの低分子有機物に分解する酸発酵槽や、油脂分などを高温で分解して溶解する可溶化槽などを前段に設けて2段構造のものを用いることもできる。
【0024】
上記原料ガスをメタンガス濃縮装置1に導入する原料ガス導入路3には、LPGボンベ4に連通するプロパンガス添加路5が接続され、有機物を分解して得られたバイオガスに対して高熱量ガスとしてプロパンガスを添加してバイオガスとプロパンガスとの混合ガスとする。LPGボンベ4およびプロパンガス添加路5が本発明の高熱量ガス添加手段として機能する。なお、プロパンガス添加路5に変えて図示において鎖線で示すプロパンガス添加路5aを設け、高熱量ガスを圧縮機6の下流側において添加するようにすることもできる。
【0025】
高熱量ガスとしては、プロパンガスだけでなく、エタンガスやブタンガスを用いることもでき、これらは単独でもしくは併せて用いることができる。
【0026】
このように、メタンガスと二酸化炭素を含むバイオガスに対して、熱量調節用の高熱量ガスを所定の割合で添加して混合ガスとする。そして、この混合ガスから二酸化炭素を分離することにより、メタンガスに対して所定割合以上で高熱量ガスが添加された燃料用ガスを得ることができる。ここでの高熱量ガスの添加割合は、最終的に得られる燃料ガスの熱量を例えば都市ガス等の規格に合わせるように設定することが行なわれる。
【0027】
バイオガスに対して所定割合でプロパンガスが添加された混合ガスは、圧縮機6で0.5〜0.9MPa(ゲージ圧力)程度の所定圧力に昇圧されてメタンガス濃縮装置1に導入される。したがって、本実施形態では、高熱量ガスの添加手段は、後述する第1濃縮装置11に導入するガスを昇圧する昇圧手段としての圧縮機6の上流においてバイオガスに対して高熱量ガスを添加するようになっている。
【0028】
上記メタンガス濃縮装置1は、メタンガスと二酸化炭素の混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するものであるが、本実施形態の混合ガスは、メタンガスと二酸化炭素に加えて高熱量ガスとしてのプロパンガスも添加されており、この混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスと高熱量ガスを濃縮する。また、上記混合ガスは、メタンガス、高熱量ガス、二酸化炭素以外に、空気等の他のガスが混入されている場合もある。
【0029】
上記メタンガス濃縮装置1は、それぞれ分離膜を備えた第1濃縮装置11、第2濃縮装置12ならびに回収装置13とを備えて構成されている。
【0030】
第1濃縮装置11は、分離膜により上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させてメタンガスおよび高熱量ガスを濃縮する。第1濃縮装置11への混合ガスの導入圧力は、0.5〜0.9MPa(ゲージ圧力)程度に設定される。第1濃縮装置11における分離膜の透過ガスは、分離膜を透過した二酸化炭素に分離膜を透過してしまったメタンガスや高熱量ガスが含まれたガスであり、回収装置13に導入される。第1濃縮装置11における分離膜の非透過ガスは、メタンガスおよび高熱量ガスに分離膜を透過しなかった多少の二酸化炭素が含まれたガスであり、第2濃縮装置12に導入される。
【0031】
第2濃縮装置12は、上記第1濃縮装置11の非透過ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスをさらに濃縮する。第2濃縮装置12への混合ガスの導入圧力は、流量調節を行なわない限り、第1濃縮装置11への導入圧力から0.005〜0.05MPa下がる程度で、第1濃縮装置11への導入圧力とほぼ同程度となる。第2濃縮装置12における分離膜の透過ガスは、分離膜を透過した二酸化炭素にメタンガス等が含まれたガスであり、第1濃縮装置11の導入側すなわち圧縮機6の上流側に還流されて再び第1濃縮装置11に導入される。また、第2濃縮装置12における分離膜の非透過ガスは、メタンガスおよび高熱量ガスが所定比率で混合された混合ガスであり、製品ガスとして後工程に送られる。
【0032】
この例では、上記第1濃縮装置11と第2濃縮装置12の分離膜の面積が略等しくなるよう設定されている。このようにすることにより、第1濃縮装置11と第2濃縮装置12は同じ分離膜装置を兼用することができて設備効率がよい。
【0033】
上記回収装置13は、上記第1濃縮装置11の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを回収する。すなわち、回収装置13への導入ガスは、上述したように第1濃縮装置11の分離膜を透過した二酸化炭素およびメタンガスや高熱量ガスが含まれたガスであり、このガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させて分離し、メタンガスおよび高熱量ガスを回収する。
【0034】
上記回収装置13における分離膜の非透過ガスは、回収されたメタンガスおよび高熱量ガスを含むガスであり、第1濃縮装置11の導入側すなわち圧縮機6の上流側に還流されて再び第1濃縮装置11に導入される。上記回収装置13における分離膜の透過ガスは、高濃度の二酸化炭素を主とするガスであり、排出路14から排出するか、あるいは製品二酸化炭素として二酸化炭素タンク15に貯留される。
【0035】
上記回収装置13に導入されるガスの導入圧は、上記第1濃縮装置11の透過ガスの圧力であり、0.1MPa(ゲージ圧力)以下程度となる。また、上記回収装置13における分離膜の透過前後の差圧は0.1MPa以下程度に設定するのが好ましい。
【0036】
上記回収装置13の分離膜の面積は、第1濃縮装置11の分離膜の面積と同じにすることができる。このようにすることにより、回収装置13と第2濃縮装置12は同じ分離膜装置を兼用することができて設備効率がよい。
【0037】
また、上記回収装置13の分離膜の面積を第1濃縮装置11の分離膜の面積よりも小さく設定するようにしてもよい。このようにすることにより、回収装置13の分離膜をメタンガスがより透過し難くなり、回収装置13でのメタンガスの回収効率を向上することができる。
【0038】
上記第1濃縮装置11、第2濃縮装置12および回収装置13に用いられる分離膜としては、主としてポリイミド膜、ポリスルホン膜、三酢酸セルロース膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、ポリエーテルスルホン膜などの高分子気体分離膜や、カーボン膜、微多孔質ガラス複合膜などを用ることができるが、これらのなかでも、ポリイミド膜がメタンガスと二酸化炭素との分離係数が高く、しかも耐硫化水素性もあるために好ましい。
【0039】
このようにして、第2濃縮装置12の非透過ガスとして、メタンガスおよび高熱量ガスが所定比率で混合された混合ガスである燃料ガスが精製され、製品ガス導出路16から導出される。
【0040】
上述したように、メタンガスと二酸化炭素を含むバイオガスに対して高熱量ガスを所定割合で添加した混合ガスから二酸化炭素を分離することにより、メタンガスに対して所定割合で高熱量ガスが添加された燃料用ガスを得る。製品ガスである燃料ガス中のメタンガスと高熱量ガスの比率は、最初にバイオガスに対して添加する高熱量ガスの添加比率により決定され、この添加比率は、プロパンガス添加路5に設けられた流量調節器26により調節する。
【0041】
ここで、上記原料ガス導入路3には、原料ガスであるバイオガス中のメタンガス濃度を検知する濃度検知器17が設けられ、原料ガス中のメタンガス濃度が一定比率以下に低下したときに、原料ガス導入路3の原料弁18およびプロパンガス添加路5のプロパン弁19を閉じて、メタンガス濃縮装置1への混合ガスの導入を停止する。再び原料ガス中のメタンガス濃度が一定比率以上になったときに、原料弁18およびプロパン弁19を開けてメタンガス濃縮装置1への混合ガスの導入を再開する。これにより、製品ガスである燃料ガス中のメタンガスに対する高熱量ガスの比率を一定以上に保つようになっている。
【0042】
ここで、濃度検知器17を原料ガス導入路3に設けるのに代えて、メタンガス濃縮装置1下流の製品ガス導出路16に濃度検知器17aを設けるようにすることもできる。この場合、製品ガス中のメタンガス濃度が所定の範囲を外れたときには、原料ガス導入路3の原料弁18およびプロパンガス添加路5のプロパン弁19を閉じてメタンガス濃縮装置1への混合ガスの導入を停止し、熱量が適正範囲を外れた製品ガスを高圧タンク7へ充填してしまうことを防止するようになっている。
【0043】
製品ガス導出路16には、精製ガスの流量を調節する流量調節器27が設けられるとともに、精製された燃料ガスに対して付臭ガスを添加するための付臭ガスボンベ20および付臭ガス添加路21が接続されるとともに、付臭ガスが添加された製品ガスを一時的に貯留するバッファタンク22が接続されている。また、上記バッファタンク22に貯留された製品ガスは、圧縮機23で圧縮されて高圧ガスタンクユニット24の各高圧タンク7に貯留される。
【0044】
そして、上記各高圧タンク7に貯留された燃料ガスは、燃料ボンベ8に個別充填されて所定の燃料として使用される場所に運ばれたり、あるいは、供給ノズル9から内燃機関付きの車両に燃料として供給される。
【0045】
以上のように、本実施形態のメタンガス濃縮装置1および方法は、分離膜による第1段階と第2段階の2段階の濃縮により二酸化炭素を除去してメタンガスを濃縮するため、高濃度の濃縮メタンガスを得ることができる。また、第1段階の濃縮の透過ガスをさらに分離膜によって二酸化炭素を分離してメタンガスを回収することから、メタンガスの回収率を飛躍的に向上することができる。このように、高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができ、例えば、メタンガスの含有率が60%未満の混合ガスや、混合ガス中に空気等の不純ガスが混入するような環境であっても高回収率で高濃度のメタンガスを得ることができる。また、メタンガスを高回収率で回収した後の排ガスとして高濃度の二酸化炭素ガスを得ることができ、二酸化炭素回収装置としての機能も同時に発揮する。
【0046】
また、本実施形態の燃料ガスの製造装置および方法は、あらかじめバイオガスに対して高熱量ガスを添加してバイオガスと高熱量ガスとの混合ガスとし、この混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスと高熱量ガスを濃縮する。このようにすることにより、あらかじめバイオガスに対する混合比率を定めて高熱量ガスを添加することにより、メタンガスと高熱量ガスが所定比率で混合された所定熱量の燃料ガスを得ることができ、このように、バイオガスを原料として十分な熱量で安定した品質の燃料ガスを簡単な制御で得ることができる。
【0047】
また、上記第2濃縮装置12または工程の透過ガスおよび回収装置13の非透過ガスを第1濃縮装置11または工程の導入側に還流させる場合には、第2濃縮装置12または工程において透過した二酸化炭素およびメタンガスを第1濃縮装置11または工程に再び導入するとともに、回収装置13で透過しなかったメタンガスを第1濃縮装置11または工程に再び導入し、メタンガスの濃縮濃度および回収率を向上することができる。
【0048】
また、上記第1濃縮装置11または工程と第2濃縮装置12または工程の分離膜の面積が略等しい場合には、上記第1濃縮装置11または工程と第2濃縮装置12または工程の分離膜の面積を略等しくすることにより、第1濃縮装置11と第2濃縮装置12に同じ分離膜の濃縮装置を用いることができて設備効率面で有利である。また、第1濃縮装置11または工程の導入圧と第2濃縮装置12または工程の導入圧との差が少ないため、分離膜の面積を略等しくすることで第1濃縮装置11または工程も第2濃縮装置12または工程も略同等の濃縮性能が発揮され、メタンガスの濃縮濃度および回収率を向上することができる。
【0049】
また、上記回収装置13または工程の分離膜の面積を第1濃縮装置11または工程の分離膜の面積よりも小さくした場合には、回収装置13または工程の分離膜をメタンガスがより透過し難くなり、メタンガスの回収効率を向上することができる。
【0050】
また、上記回収装置13または工程における分離膜の透過前後の差圧を0.1MPa以下とした場合には、回収装置13または工程の分離膜をメタンガスがより透過し難くなり、メタンガスの回収効率を向上することができる。
【0051】
また、上記添加手段は、第1濃縮装置11または工程に導入するガスを昇圧する昇圧手段である圧縮機6の上流においてバイオガスに対して高熱量ガスを添加する場合には、低圧なバイオガスに対して高熱量ガスを添加できて高熱量ガスの液化を防ぐ。これにより、分離膜透過後のメタンガスと高熱量ガスの混合比率の変動を防止し、安定した品質の燃料ガスを簡単な制御で得ることができる。
【実施例】
【0052】
上記燃料ガス製造装置を用い、メタンガス55〜60%、窒素ガス5%、残り二酸化炭素の混合ガスからメタンガスの濃縮を行なった。実施例として上述したメタンガス濃縮装置1を使用して濃縮した例を示し、比較例1として第1濃縮装置11だけで濃縮した例、比較例2として第1濃縮装置11および第2濃縮装置12で濃縮した例を示す。なお、それぞれ混合ガスの導入圧力を0.6MPa,0.65MPa,0.7MPaと変化させ、さらにそれぞれ精製ガスの流量を4m/Hr,5m/Hr,6m/Hrと変化させた。それぞれのときのメタンガスの回収率を下記の表1に示す。なお、流量は、製品ガス導出路16に設けた図示しないバルブの開閉により調節し、導入圧力は、各流量のときの圧縮機6の回転数によって調節を行った。
【0053】
【表1】

【0054】
上記表1からわかるように、実施例の回収率はいずれも99%以上と比較例1,2よりも高い値を示した。
【0055】
また、上記実施例について、混合ガスの導入圧力を0.6MPa,0.65MPa,0.7MPaと変化させ、さらにそれぞれ精製ガスの流量を4m/Hr,5m/Hr,6m/Hrと変化させたときの濃縮ガスのメタンガス濃度の測定結果を下記表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
上記表2は、バイオガスプラントから発生するガスを原料に用いており、メタンと二酸化炭素以外に空気が含まれているため、生成ガス中に窒素ガスが混入し、実測値としては90%以下程度の値をとる。そこで、空気に起因する窒素ガスを考慮しないメタンガス濃度を算出した。
【0058】
まず、混合ガスの導入圧力を0.6MPaで、精製ガスの流量を1m/Hrと6m/Hrのときの精製ガスの組成を測定した。その結果を下記の表3に示す。表3には原料ガスの組成の測定結果も示している。
【0059】
【表3】

【0060】
上記表3によれば、混合ガスの導入圧力を0.6MPaにおいて、精製ガス流量が1m/Hrのときは、メタン濃度95.29%、窒素濃度4.71%であり、精製ガス流量が6m/Hrのときは、メタン濃度82.72%、窒素濃度11.65%であった。
【0061】
この結果に基づいて、精製ガス流量を変化させたときの分離膜の分離性能としてメタン濃度と残留窒素濃度との関係をプロットしたのが図2の線図であり、この直線から、メタン濃度と残留窒素濃度の間に下記の式(1)の関係が成り立つことがわかる。
y(残留窒素濃度)=−0.5521x(メタン濃度)+57.32・・・(1)
【0062】
そして、上記式(1)に上記表2の実測値を当てはめてそれぞれの精製ガスにおける残留窒素濃度および残留二酸化炭素濃度を算出した値を下記の表4に示す。なお、透過ガス成分の透過速度は下記の式(2)で表されることから、透過ガス成分の分圧差が変われば分離性能も変わることとなる。しかしながら、分離膜のガスの透過係数はガス成分に応じた固有値であることから、精製ガスのメタン濃度が同一であれば、混合ガスの導入圧力が変化しても、分離膜の分離性能に対する影響は極めて小さいと考えられる。したがって、導入圧力0.65MPaおよび0.7MPaの実測値にも上記式(1)を適用した。
F={P・(P1−P2)}/L・・・(2)
F:ガス成分の透過速度
P:ガス成分の透過係数
P1−P2:透過ガス成分の分圧差
L:分離膜の厚み
【0063】
【表4】

【0064】
さらに、上記表4の結果から、残留窒素を考慮しないメタンガス濃度を算出した結果を下記の表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
上記表5の結果からわかるとおり、実施例のメタンガスの精製能力として、空気を含まない原料ガスであれば、94%以上のメタンガス濃度になるまでメタンを濃縮することが可能であることがわかる。このように、実施例の燃料ガス製造装置によれば、充分なメタンガス分離性能を確保しながら、99%以上の高い回収率でメタンガスを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明が適用されたメタンガス濃縮装置および燃料ガス製造装置の一実施形態を示す図である。
【図2】分離膜の分離性能としてメタン濃度と残留窒素濃度との関係をプロットした線図である。
【符号の説明】
【0068】
1:メタンガス濃縮装置
3:原料ガス導入路
4:LPGボンベ
5:プロパンガス添加路
5a:プロパンガス添加路
6:圧縮機
7:高圧タンク
8:燃料ボンベ
9:供給ノズル
11:第1濃縮装置
12:第2濃縮装置
13:回収装置
14:排出路
15:二酸化炭素タンク
16:製品ガス導出路
17:濃度検知器
17a:濃度検知器
18:原料弁
19:プロパン弁
20:付臭ガスボンベ
21:付臭ガス添加路
22:バッファタンク
23:圧縮機
24:高圧ガスタンクユニット
26:流量調節器
27:流量調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともメタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮装置であって、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを濃縮する第1濃縮装置と、
上記第1濃縮装置の非透過ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスをさらに濃縮する第2濃縮装置と、
上記第1濃縮装置の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを回収する回収装置とを備えたことを特徴とするメタンガス濃縮装置。
【請求項2】
上記第2濃縮装置の透過ガスおよび回収装置の非透過ガスを第1濃縮装置の導入側に還流させる請求項1記載のメタンガス濃縮装置。
【請求項3】
上記第1濃縮装置と第2濃縮装置の分離膜の面積が略等しい請求項1または2記載のメタンガス濃縮装置。
【請求項4】
上記回収装置の分離膜の面積を第1濃縮装置の分離膜の面積よりも小さくした請求項1〜3のいずれか一項に記載のメタンガス濃縮装置。
【請求項5】
少なくともメタンガスと二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離してメタンガスを濃縮するメタンガス濃縮方法であって、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを濃縮する第1濃縮工程と、
上記第1濃縮工程の非透過ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスをさらに濃縮する第2濃縮工程と、
上記第1濃縮工程の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスを回収する回収工程とを備えたことを特徴とするメタンガス濃縮方法。
【請求項6】
メタンガスと熱量調節用の高熱量ガスとを含む燃料ガスの製造装置であって、
有機物を分解して得られたバイオガスに対して高熱量ガスを添加してバイオガスと高熱量ガスとの混合ガスとする高熱量ガス添加手段と、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを濃縮する第1濃縮装置と、
上記第1濃縮装置の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを回収する回収装置とを備えたことを特徴とする燃料ガスの製造装置。
【請求項7】
上記添加手段は、第1濃縮装置に導入するガスを昇圧する昇圧手段の上流においてバイオガスに対して高熱量ガスを添加する請求項6記載の燃料ガスの製造装置。
【請求項8】
上記回収装置の分離膜の面積を第1濃縮装置の分離膜の面積よりも小さくした請求項6または7記載の燃料ガスの製造装置。
【請求項9】
メタンガスと熱量調節用の高熱量ガスとを含む燃料ガスの製造方法であって、
有機物を分解して得られたバイオガスに対して高熱量ガスを添加してバイオガスと高熱量ガスとの混合ガスとする高熱量ガス添加工程と、
上記混合ガスから二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを濃縮する第1濃縮工程と、
上記第1濃縮工程の透過ガスからさらに二酸化炭素を優先的に透過させる分離膜によりメタンガスおよび高熱量ガスを回収する回収工程とを備えたことを特徴とする燃料ガスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−242773(P2009−242773A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288305(P2008−288305)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】