説明

メッキ用樹脂組成物及びメッキ成形体

【課題】 シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物よりなり、鏡面外観メッキ性、耐熱性及び高機械強度に優れたメッキ用樹脂組成物、及びこれを用いた鏡面光沢メッキ成形体を提供すること。
【解決手段】 本発明は、(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体及び(B)ゴム状弾性体からなり、(A)成分と(B)成分の量が質量比で、(A)/(B)=100/0〜60/40である基材と、(C)ウォラストナイトを(A)成分、(B)成分及び(C)成分全量に対して、30〜80質量%を含有してなり、かつ荷重0.46MPaにおける熱変形温度が150℃以上であることを特徴とするメッキ用樹脂組成物、及びこれを用いた鏡光沢メッキ成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ用樹脂組成物及びメッキ成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐熱性及び鏡面光沢性に優れる樹脂組成物及びこれを用いた鏡面光沢メッキ成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
鏡面外観を有する装飾メッキ分野においては、材料として従来よりABS樹脂,ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂,ポリアミド樹脂等が用いられている。特に耐熱性を必要とされる用途においては、ポリアミド樹脂/フィラー系及びポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ブレンド系が用いられている。しかしながら、ポリアミド樹脂/フィラー系組成物及びポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ブレンド系組成物に鏡面メッキを施した成形体の実用耐熱性は110℃程度であり、高温に曝される部品には適用困難なため、さらなる耐熱性を有する鏡面光沢メッキ用材料の開発が望まれていた。
一方、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(以下、SPSと略称することがある。)は融点270℃を有し、ゴム成分,炭酸カルシウム等の酸化性溶液に可溶な成分を添加することにより、メッキが可能な結晶性樹脂である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、優れた耐熱性を発揮させるためにはガラスファイバーを添加する必要があり、その場合メッキ成形体の実用耐熱温度は200℃を有するが、反面、エッチング処理によりガラスファイバーが露出するため、ナシ地メッキあるいは成形体でシボのついたメッキには好適であるものの鏡面メッキには適用できなかった。また、ガラスファイバーを添加しない場合、鏡面メッキが可能であるものの、メッキ成形体の実用耐熱温度は120℃程度が限界であり、ポリアミド樹脂系よりは優れた耐熱性を示すものの未だ不十分であった。
また、特許文献2には、SPSに無機系繊維状物であるウォラストナイトやゾノトライトを配合した低誘電性組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開9−41151号公報
【特許文献2】特許第2784631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物よりなり、鏡面外観メッキが可能で、しかも従来のポリアミド樹脂系組成物に比べて耐熱性と高機械強度に優れたメッキ用樹脂組成物、及びこれを用いた鏡面光沢メッキ成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ウォラストナイトが酸化性溶液に可溶であり、これを配合したシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物は、エッチング工程により、表面外観を悪化させることもないことを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1. (A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体及び(B)ゴム状弾性体からなり、(A)成分と(B)成分の量が質量比で、(A)/(B)=100/0〜60/40である基材と、(C)ウォラストナイトを(A)成分、(B)成分及び(C)成分全量に対して、30〜80質量%を含有してなり、かつ荷重0.46MPaにおける熱変形温度が150℃以上であることを特徴とするメッキ用樹脂組成物。
2. (A)成分と(B)成分の量が質量比で、(A)/(B)=95/5〜80/20である前記1記載のメッキ用樹脂組成物。
3. 前記1又は2に記載のメッキ用樹脂組成物を成形して得られる成形体をメッキ処理することにより得られ、かつ入射角60°での鏡面光沢度が400Gs以上であることを特徴とする鏡面光沢メッキ成形体。
4. 前記3記載の鏡面光沢メッキ成形体を用いてなるマフラー又はエンジン周辺部品を含む自動二輪車用部品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるメッキ成形体は、優れた鏡面光沢性と耐熱性及び高機械強度を有すると共に、軽量で安価で外観性もよい。また、鏡面外観を必要とし、しかも形状自由度も大きい。このために、例えば自動車又は自動二輪車用のマフラーカバー、マフラーエンドキャップ、ギアボックスカバー、エンジンカバー、その他の鏡面光沢が求められる部品など各種用途に適用され、高温に曝される部品に有効であることから、特に自動二輪車用のマフラー又はエンジン周辺の装飾性を要する部品などに好適に用いられる。また、使用温度150〜200℃での適用が可能であるため、金属代替品として用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、(A)成分としてのシンジオタクチックポリスチレン構造を有するスチレン系重合体(SPS)におけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素-炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティ―は同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR)により定量される。13C-NMR法により測定されるタクティシティ―は、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明におけるシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体とは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、もしくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティ−を有するポリスチレン,ポリ(アルキルスチレン),ポリ(ハロゲン化スチレン),ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン),ポリ(アルコキシスチレン),ポリ(ビニル安息香酸エステル),これらの水素化重合体およびこれらの混合物,あるいはこれらを主成分とする共重合体を指称する。
なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン),ポリ(エチルスチレン),ポリ(イソプロピルスチレン),ポリ(タ−シャリ−ブチルスチレン),ポリ(フェニルスチレン),ポリ(ビニルナフタレン),ポリ(ビニルスチレン)などがあり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン),ポリ(ブロモスチレン),ポリ(フルオロスチレン)などがある。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)など、また、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン),ポリ(エトキシスチレン)などがある。
【0008】
これらのうち特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン,ポリ(p−メチルスチレン),ポリ(m−メチルスチレン),ポリ(p−タ−シャリ−ブチルスチレン),ポリ(p−クロロスチレン),ポリ(m−クロロスチレン),ポリ(p−フルオロスチレン),水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。このスチレン系重合体は分子量について特に制限はないが、重量平均分子量が10,000以上、好ましくは50,000以上である。さらに、分子量分布についてもその広狭は制約がなく、様々なものを充当することが可能である。重量平均分子量を10,000以上とすることにより、得られる組成物あるいは成形品の熱的性質、機械的性質は低下せず良好なものが得られる。
このようなシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体は、例えば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62−187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
【0009】
一方、(B)成分としてのゴム状弾性体の具体例としては、天然ゴム,ポリブタジエン,ポリイソプレン,ポリイソブチレン,ネオプレン,ポリスルフィドゴム,チオコールゴム,アクリルゴム,ウレタンゴム,シリコーンゴム,エピクロロヒドリンゴム,エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM),エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM),エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム,スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB,SEBC),スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS),ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS),メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS),メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS),オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS),アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(AABS),ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR),メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。このうち特に、SEBS,SIR,SEP,SIS,SEPS,エチレン-α-オレフィン共重合体ゴムまたはこれらを変性したゴムが好ましく用いられる。なお、これらのゴム状弾性体は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
本発明のメッキ用樹脂組成物において、基材となる(A)成分のSPSと(B)成分のゴム状弾性体との配合割合は、(A)成分60〜100質量%で(B)成分0〜40質量%の範囲である。(B)成分が40重量部を超える場合、耐熱性が低下することがある。特に成形品の衝撃強度向上とメッキ密着強度向上の両立の観点からは、(A)成分80〜95質量%で(B)成分5〜20質量%の範囲からなることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のメッキ用樹脂組成物においては、メッキの際のエッチングによる表面粗化促進,耐熱性向上,及び線膨張係数抑制のために、(C)成分としてのウォラストナイトを添加することが必要である。
ウォラストナイトは化学式 CaSiO3 で示されるケイ酸塩化合物であり、天然に鉱物として産出される。針状結晶であり、通常3〜10のアスペクト比を有するため耐熱性向上が可能であり、かつ、一般的なガラス繊維と比較して微細なため成形品の外観を悪化させにくい。さらに、ウォラストナイトは酸化性溶液に可溶であるため、酸化性溶液に不溶であるガラス繊維と異なり、エッチング処理により表面外観を悪化させにくい。
ウォラストナイトの繊維長,繊維径に特に制限はないが、一般的には平均繊維長10〜100μm,平均繊維径2〜8μm程度のものが好適に用いられる。
【0012】
また、ウォラストナイトは表面処理したものが好ましい。表面処理に用いられるカップリング剤は、樹脂との接着性を良好にするために用いられるものであり、いわゆるシラン系カップリング剤,チタン系カップリング剤等、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。中でもγ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン,エポキシシラン,イソプロピルトリ(N-アミドエチル,アミノエチル)チタネ−トが好ましい。
ウォラストナイトの配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分全量に対して、30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜60質量%である。ウォラストナイトの配合量が30質量%未満であると、充填材としての充分な配合効果が認められない。一方、80質量%を超えると、分散性が悪く、成形が困難になるという不都合が生じる。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的が阻害されない範囲で、所望により難燃剤,難燃助剤,核剤,酸化防止剤,可塑剤,離型剤,顔料,カ−ボンブラック,耐光剤,耐候剤,帯電防止剤等の添加剤あるいは(A)成分以外の他の熱可塑性樹脂を適宜配合することができる。
前記難燃剤としては、臭素化ポリスチレン,臭素化シンジオタクチックポリスチレン,臭素化ポリフェニレンエ−テルをはじめとする臭素化ポリマー,臭素化ジフェニルアルカン,臭素化ジフェニルエーテルをはじめとする臭素化芳香族化合物等公知のものから任意に選択して用いることができる。また、難燃助剤としては三酸化アンチモンをはじめとしたアンチモン化合物,その他公知のものから任意に選択して用いることができる。また、ドリップ防止剤としてテフロン化合物等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの難燃剤および難燃助剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
核剤としてはアルミニウムジ(p-t-ブチルベンゾエ−ト)をはじめとするカルボン酸の金属塩,メチレンビス(2,4-ジ-t-ブチルフェノ−ル)アシッドホスフェ−トナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩,タルク,フタロシアニン誘導体等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの核剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤としてはリン系,フェノール系,イオウ系等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤としてはポリエチレングリコ―ル,ポリアミドオリゴマ―,エチレンビスステアロアマイド,フタル酸エステル,ポリスチレンオリゴマ―,ポリエチレンワックス,ミネラルオイル,シリコ−ンオイル等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの可塑剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
他の熱可塑性樹脂としては直鎖状高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,高圧法低密度ポリエチレン,アイソタクチックポリプロピレン,シンジオタクチックポリプロピレン,ブロックポリプロピレン,ランダムポリプロピレン,ポリブテン;1,2-ポリブタジエン,環状ポリオレフィン,ポリ-4-メチルペンテンをはじめとするポリオレフィン系樹脂及びこれらを形成するモノマー(エチレン,プロピレン,ブチレン,ブテン,オクテン,ブタジエン,イソプレン,ノルボルネン,ノルボルナジエン,シクロペンタジエンなど)二種以上から得られた共重合体及びこれらの変性体,ポリスチレン,HIPS,ABS,AS,SMAをはじめとするポリスチレン系樹脂,ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル系樹脂,ポリアミド6,ポリアミド6,6;芳香族系ポリアミドをはじめとするポリアミド系樹脂,ポリフェニレンエーテル,PPS等公知のものから任意に選択して用いることができる。このうち特に、ポリスチレン,HIPSをはじめとするアタクチック構造を有するスチレン系重合体,ポリフェニレンエーテルが好ましく用いられる。なお、これらの熱可塑性樹脂は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明の樹脂組成物の調整方法については特に制限はなく公知の方法により調整することができる。例えば前記成分及び各種添加剤を、リボンブレンダー,ヘンシェルミキサー,バンバリーミキサー,ドラムタンブラー,単軸スクリュー押出機,二軸スクリュー押出機,コニーダ,多軸スクリュー押出機等を用いて溶融混練することにより、本発明の樹脂組成物が得られる。
このようにして得られた本発明の樹脂組成物は、ASTM D648により求められる荷重0.46MPaにおける熱変形温度が150℃以上であることが必要であり、好ましくは180℃以上である。
前記樹脂組成物を用いることにより、成型法にとらわれることなく優れた物性を有する成型品を得ることができる。例えば、射出成形による成型品,押出成形によるシート,押出成形及び熱成形による容器,トレイ等が挙げられる。
このうち特に射出成形が好ましく用いられる。射出成形時の金型温度に特に制限はないが、40〜180℃が好ましく、より好ましくは120〜160℃である。また、特に120℃以下の場合は、SPS成分を十分結晶化させ耐熱性を十分に発揮させるため必要に応じ100℃以上でアニ−リングを行ってもよい。
【0017】
本発明における鏡面光沢メッキ成形体は、前記による成形体をメッキ処理することにより得られる。
メッキ方法としては通常のプロセスが適用可能であるが、例えば下記の工程からなる方法が適用可能である。
(1)洗浄工程;必要により成形体表面の埃や汚れを除去するために洗浄する。
(2)表面粗化工程;酸化性液体に浸漬し、成形体表面を化学的に粗化(エッチング)する。酸化性液体としては、クロム酸/硫酸の混合酸や過マンガン酸塩などが挙げられる。
(3)表面調製工程;界面活性剤を主成分とした表面調整剤により触媒吸着を促進させる。
(4)触媒付与工程;パラジウム等の触媒を含有する溶液に成形体を浸漬し、成形体表面に触媒を吸着させる。
(5)化学的メッキ工程;吸着した触媒を核に化学的にニッケルや銅などの金属被膜を形成させる。
(6)電気的メッキ工程;必要により、銅,ニッケル,クロムなどを電気メッキする。このようにして、鏡面光沢性に優れたメッキ成形体を得ることができる。
このようにして得られるシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を主成分とするメッキ成形体は、入射角60°での鏡面光沢が400Gs以上のものである。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
また、後述の実施例及び比較例における各種評価は、下記の方法により行なった。
1. 熱変形温度
ASTM D648に準拠し、荷重0.46MPa(低荷重条件)、及び荷重1.82MPa( 高荷重条件)で測定した。
2. 線膨張係数
ASTM D696に準拠し、温度20〜80℃の範囲において測定した。
3. 外観評価
得られたメッキ成形体を、目視により外観評価し、鏡面光沢があるものを○、鏡面光沢がないものを×とした。
【0019】
4. 耐熱性評価(ヒートサイクル試験)
メッキ成形体試料について、下記条件で熱履歴を与えるヒートサイクル試験を行い、メッキの異常有無を目視で評価した。
(ア)サイクル条件1;−30℃で1時間 → 23℃で0.5時間 → 150℃で1時間 →23℃で0.5時間 のサイクルを3回。
(イ)サイクル条件2;−30℃で1時間 → 23℃で0.5時間 → 200℃で1時間 →23℃で0.5時間 のサイクルを3回。
上記試験終了後の鏡面に変化ない場合を○、3回のサイクルで膨れ又は割れが発生した場合を△、1〜2回のサイクルで膨れ又は割れが発生した場合を×として評価した。
5. 鏡面光沢度
鏡面光沢度計(mirror−TRI−gloss:BYK−Gardner製)を用いて、JIS Z 8741に準じて入射角60℃で測定した。
【0020】
実施例1〜3、比較例1〜4
以下により、原材料を用いて樹脂組成物を調製した後、メッキ成形体を製造し、試験・評価を行った。
(1)原材料
(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体
出光興産株式会社製「XAREC 130ZC」:SPS(Mw=200,000)
(B)ゴム状弾性体
株式会社クラレ製「Septon 8006」:SEBS
(C)ウォラストナイト
JFEミネラル株式会社製「PH−560」:アスペクト比 8.7,平均繊維長 38.5μm,平均繊維径 3.90μm
(D)その他無機充填材
(D−1)白石カルシウム株式会社製「ホワイトンSB赤」:炭酸カルシウム
(D−2)旭ファイバーガラス株式会社製「JAFT164G」: ガラス繊維
(E)添加剤
(E−1)核剤 :旭電化株式会社製「NA11」
(E−2)酸化防止剤:チバガイギー株式会社製「Irganox1010」
(E−3)酸化防止剤 :旭電化株式会社製「PEP36」
(F)その他の樹脂
(F-1)東洋紡株式会社製「T-777−02」:メッキグレードPA(ナイロン6)
(F-2)三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製「PL2010」:メッキグレードPC/ABS
【0021】
(2)樹脂組成物及び成形体の製造
第1表に示す種類と量の各成分を、ヘンシェルミキサ−でドライブレンドを行なった後、2軸押出機にて溶融混練を行いペレット化した。
【0022】
【表1】

【0023】
得られたペレットを用い、射出成形により、図1に示す形状の自動二輪車用マフラーエンドキャップを成形した。また、別途、試験用試料を作成し、前記方法により熱変形温度及び線膨張係数の測定をした。結果を第4表に示す。
(3)メッキ処理
実施例1〜3、比較例1,2(各SPS系)及び比較例4(PC/ABS系)の成形品については第2表の工程Aにより、また、比較例3(ポリアミド系)の成形品については第3表の工程Bにより、それぞれメッキ処理を行った。
【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
(注)
1)キザイ株式会社製:「CPコンデショナー」表面調整剤
2〜5)荏原ユージライト株式会社製:「UBAC−EP」、「CF5P」、「#63」、「DN308」電気メッキ光沢剤
6)奥野製薬工業株式会社製:「TNエッチャントMK」エッチング剤
得られたメッキ成形体について、前記方法により、外観評価、耐熱性評価及び鏡面光沢度の測定を行った。結果を第4表に示す。
【0027】
【表4】

【0028】
以上の結果から明らかなように、本発明による実施例1〜3のメッキ成形体は、従来例としての、SPSを用いた比較例1,2、及びポリアミド(PA)及びPC/ABSを用いた比較例3,4と比べて、優れた鏡面光沢性及び耐熱性の双方を有している。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明におけるメッキ樹脂組成物及びこれを用いた成形体は、特に耐熱性と鏡面光沢性の双方を必要とする車両用部品や電気・熱器具部品、或いは金属パーツ代替品などとして広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における成形体の一例である自動二輪車用マフラーエンドキャップを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体及び(B)ゴム状弾性体からなり、(A)成分と(B)成分の量が質量比で、(A)/(B)=100/0〜60/40である基材と、(C)ウォラストナイトを(A)成分、(B)成分及び(C)成分全量に対して、30〜80質量%を含有してなり、かつ荷重0.46MPaにおける熱変形温度が150℃以上であることを特徴とするメッキ用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の量が質量比で、(A)/(B)=95/5〜80/20である請求項1記載のメッキ用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメッキ用樹脂組成物を成形して得られる成形体をメッキ処理することにより得られ、かつ入射角60°での鏡面光沢度が400Gs以上であることを特徴とする鏡面光沢メッキ成形体。
【請求項4】
請求項3記載の鏡面光沢メッキ成形体を用いてなるマフラー又はエンジン周辺部品を含む自動二輪車用部品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−111695(P2006−111695A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299044(P2004−299044)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(591083266)東洋理工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】