メッシュモデル作成装置およびプログラム
【課題】 メッシュモデルから除外すべき部品を容易に判断可能にするメッシュモデル作成装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】 部品選別部8は、予め定める複数の閾値と各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。分割部9は、各閾値ごとに、組物から除外すべき部品を除いた組物を複数の有限要素に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。メッシュ総数取得部10は、各閾値ごとに作成されるメッシュモデルの有限要素の総数を、各閾値ごとに集計する。相関表示部11は、表示装置3を制御して、有限要素の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる。
【解決手段】 部品選別部8は、予め定める複数の閾値と各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。分割部9は、各閾値ごとに、組物から除外すべき部品を除いた組物を複数の有限要素に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。メッシュ総数取得部10は、各閾値ごとに作成されるメッシュモデルの有限要素の総数を、各閾値ごとに集計する。相関表示部11は、表示装置3を制御して、有限要素の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品を組合わせて構成される組物の解析用のメッシュモデルを作成するメッシュモデル作成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の製品設計では、計算機支援設計装置(以下、CAD(Computer Aided Design)装置またはCADシステムという)を用いて、三次元座標系における製品の図形データを作成して、設計を行っている。
【0003】
また設計の一工程において、コンピュータシミュレーションを行い、製品の解析を行っている。この解析では、まずCADシステムで作成した設計データに基づいて、製品を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。次に有限要素法および有限体積法などによって放熱解析、流体解析、強度解析および電磁波解析などの解析を行い、設計データが表す製品の特性を把握する。この解析結果に基づいて、設計の修正が必要であると判断すると、設計データを修正し、再度解析を行う。解析と設計データの修正とを繰返すことによって、最も好ましい特性が得られる設計データを生成していく。このように解析と設計データの修正とを繰返すので、短期間で良い設計を行うためには、解析に要する時間を可能な限り短縮する必要がある。
【0004】
たとえば電化製品は、筐体および機械的な部品などの構造部品と、構造部品の電源および駆動制御用の回路に使用される電子部品などの複数の部品が組合されて構成されている。このような電化製品の設計では、CADシステムを用いて複数の部品をアセンブリデータとして作成し、このアセンブリデータに基づいて、解析用のメッシュモデルを作成する。電化製品を構成する複数の部品の形状は、それぞれ異なるので、メッシュモデルの作成では、小さい部品のサイズに注意を払う必要がある。そこでたとえばサイズの小さい部品のサイズに合わせて有限要素のサイズを設定すれば、実際の形状に近いメッシュモデルを作成することができ、解析の精度が向上する。しかしながら、有限要素のサイズを小さく設定するほど有限要素の数が多くなり、解析に要する時間が長くなるという問題がある。
【0005】
逆に、有限要素のサイズを大きく設定すると、有限要素の数が少なくなり、解析に要する時間を短くすることができる。しかしながら、有限要素のサイズを大きく設定してしまうと、実際の形状から離れたメッシュモデルが作成され、解析の精度が低下してしまう。
【0006】
このように、有限要素のサイズと解析精度との間には、トレードオフの関係がある。そこで精度の高い解析を可能な限り短時間で行うために、解析精度に与える影響の少ない部品を予め削除して、この削除された部品のメッシュ分割を行わずに、解析精度に与える影響の大きい部品のみのメッシュ分割を行って、メッシュモデルを作成し、このメッシュモデルを用いて解析を行う技術がある(たとえば特許文献1参照)。この従来の技術では、解析精度に与える影響が少ない部品として、サイズの小さい部品をメッシュモデルから削除して、有限要素のサイズを大きく設定することによって、メッシュモデルの有限要素の数を少なくするとともに、解析精度が低下することを防いでいる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−167928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の従来技術では、メッシュのサイズを利用者が設定し、設定したメッシュのサイズよりも小さい部品をメッシュモデルから除外してメッシュモデルを作成しているが、解析精度と解析時間とを考慮したときに、設定したメッシュのサイズが妥当か否かを判断することが難しい。すなわちメッシュのサイズを大きく設定すると、除外される部品が多くなって解析時間が短くなるが、解析精度が低下してしまい、メッシュのサイズを小さく設定すると、除外される部品が少なくなって解析精度が向上するが、解析時間が長くなってしまい、妥当なメッシュのサイズを設定することが困難となる。
【0009】
したがって本発明の目的は、メッシュモデルから除外すべき部品を容易に判断可能にするメッシュモデル作成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成するメッシュモデル作成装置であって、
予め定める複数の閾値と各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段とを含むことを特徴とするメッシュモデル作成装置である。
【0011】
また本発明は、前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成するリスト生成手段をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記閾値は、異なる物性に対してそれぞれ設定されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、コンピュータを、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成する装置として機能させるプログラムであって、
コンピュータを、
予め定める複数の閾値と組物を構成する各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、複数の小領域で構成されるメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品選別手段は、閾値と各部品の物性値とを比較して、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。本発明では複数の閾値が予め定められており、各閾値ごとにメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別される。したがって、ある閾値に対して除外すべき部品と判断された部品が、閾値が異なれば組込まれる部品として判断されることがある。すなわち閾値によって、除外すべき部品が多くなったり、少なくなったりする。
【0018】
分割手段は、除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。本発明ではメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品との選別が、各閾値ごとに行われ、この選別にしたがって、各閾値ごとにメッシュモデルが作成される。
【0019】
要素数集計手段は、メッシュモデルの小領域の総数を集計する。本発明では、各閾値ごとにメッシュモデルが作成されて、作成されたメッシュモデルごとに小領域の総数が集計される。すなわち各閾値に対する小領域の総数が、閾値ごとに集計される。
【0020】
表示手段は、小領域の総数と、閾値との相関を表す情報を表示する。小領域の総数と、解析に要する時間とには相関があり、小領域の総数が多いほど、解析に要する時間が長くなる傾向にある。また小領域の総数と、解析精度とにも相関があり、小領域の総数が多いほど解析精度が高くなる傾向にある。本発明では、閾値と小領域の総数との相関が表示されるので、利用者は小領域の総数から解析精度および解析時間の予測を容易に行うことができ、妥当な閾値を容易に導き出すことができる。また解析時間は、解析に使用する計算機の性能に依存するが、使用する計算機の性能と小領域の総数とを照らし合わせることによって、解析時間を容易に予測することができる。これによって、たとえば高速演算処理可能な計算機を用いて解析を行う場合に、解析時間が短いと判断すると、除外する部品の数を減らして、精度の高い解析を行うことができる。
【0021】
従来の技術では、メッシュのサイズを利用者が設定して、メッシュモデルを作成するが、メッシュモデルからは解析に要する時間が容易に予測することができない。たとえば作成したメッシュモデルの小領域の数を集計すれば、解析に要する時間を予測することは可能であるが、意図した解析時間でなければさらにメッシュのサイズを設定し直してメッシュモデルを作成し、さらに小領域の総数を集計する必要がある。このような処理を複数回繰返すことによって、意図した時間で解析可能と予測されるメッシュモデルが作成されるので、メッシュモデルを作成する処理が煩雑になるが、本発明では閾値と小領域の総数との相関が表示されるので、前述したように容易に最適なメッシュモデルを得ることができる。
【0022】
また従来の技術では、解析に使用する計算機の性能に応じて解析時間を予測することができないので、たとえば高速演算処理可能な計算機を用いて、短時間で解析を行うことができる場合であっても、除外すべき部品の数を多く設定してしまい、精度の低い解析を行ってしまうことがあるが、本発明では小領域の総数が表示されるので、前述したように使用する計算機に応じた解析時間を容易に予測することができ、最適なメッシュモデルを容易に作成することができる。
【0023】
また本発明によれば、表示手段は、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示するので、利用者が表示手段を視認することによって、メッシュモデルから除外された部品を容易に把握することができる。
【0024】
さらに本発明によれば、リスト生成手段は、複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成する。このような対応表情報が生成されるので、同じ設計データまたは少しだけ変更を加えた設計データを用いて再びメッシュモデルを作成するときに、対応表情報を適用することによって、部品選別手段が行う処理を省略しても除外すべき部品を除いた組物のメッシュモデルを作成することができる。
【0025】
さらに本発明によれば、閾値は、異なる物性に対してそれぞれ設定されるので、たとえば部品の体積などの1つの物性値に基づいて除外すべき部品と組込むべき部品との選別が行われるのではなく、複数の物性値に基づいて部品の選別が行われるので、選別の精度を向上することができる。
【0026】
さらに本発明によれば、表示手段は、組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示するので、利用者が表示手段を視認することによって、本来ならば組込むべき部品に隠れて目視することができない除外すべき部品であっても、容易に視認することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、表示手段は、除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させるので、利用者が表示手段を目視することによって、除外すべき部品を容易に視認することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、コンピュータがプログラムを読込むことによって、コンピュータを前述の部品選別手段と、分割手段と、要素数集計手段と、表示制御手段として機能させ、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成する装置として機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の一形態のメッシュモデル作成装置1の機能的な構成を示す図である。メッシュモデル作成装置1は、コンピュータシミュレーションによる解析に用いられるメッシュモデルを作成する。メッシュモデルは、解析対象物を複数の小領域で分割することによって作成される。メッシュモデル作成装置1は、コンピュータによって実現される。以下の本実施の形態の説明において、小領域を有限要素と記載するが、メッシュモデルは有限要素法に限らずに、有限体積法などの有限要素法とは異なる解析法にも用いられる。
【0030】
メッシュモデル作成装置1を実現するコンピュータは、中央処理装置(Central Processing Unit:略称CPU)によって実現される制御部と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などによって実現される記憶装置2と、陰極線管(Cathode Ray Tube:略称CRT)および液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:略称LCD)などによって実現される表示装置3と、キーボードおよびポインティングデバイスなどによって実現される入力装置4とを含んで構成される。メッシュモデル作成装置1は、制御部が、記憶装置2に記憶されるプログラムを読込んで実行することによって機能する設計データ読込部5と、属性データ取得部6と、属性指定部7と、部品選別部8と、分割部9と、メッシュ総数取得部10と、相関表示部11と、閾値入力部12と、部品表示部13と、メッシュモデル出力部14とを含んで構成される。
【0031】
入力装置4は、利用者の操作に応じた指令をメッシュモデル作成装置1に与える。メッシュモデル作成装置1は、入力装置4から与えられる指令に基づいた制御を行う。記憶装置2は、設計データ、メッシュモデル作成装置1の処理結果、およびプログラムなどのデータを記憶して、メッシュモデル作成装置1の指令に基づいて記憶しているデータをメッシュモデル作成装置1に与える。表示装置3は、メッシュモデル作成装置1の指令に基づいた画像情報を可視表示する。
【0032】
図2は、クラムシェル型の携帯型電話機21を模式的に示す斜視図である。図2には、携帯型電話機21の筐体に搭載されるメイン基板22も示している。メイン基板22には、携帯型電話機21を動作させるために必要な送受信回路、電源回路、電話の機能を制御するためのソフトウェアが記録されたLSI(Large-Sale Integrated circuit)、抵抗器およびコンデンサなどのチップ部品が搭載されている。以下、メッシュモデル作成装置1が、複数の部品が搭載されたメイン基板22のメッシュモデルを作成する処理について説明する。本実施の形態では、メイン基板22も部品の1つとして扱い、メッシュモデル作成装置1は、部品の1つであるメイン基板22およびメイン基板22に搭載される部品が組合されて構成される組物を複数の有限要素に分割して、メッシュモデルを作成する。
【0033】
図3は、複数の部品23が搭載されたメイン基板22を示す図である。図3(1)は、複数の部品23が搭載されたメイン基板22を示す正面図であり、図3(2)は、図3(1)の切断面線A−Aから見た複数の部品23が搭載されたメイン基板22の断面図である。メイン基板22に実装される部品23の数は、携帯型電話機21の機種によって異なるが、1台の携帯型電話機21に対して、実際には数百〜千個以上におよぶが、図3では、全ての部品を図示すると煩雑になるので、理解の容易のために大部分の部品を省略している。またメイン基板22には、両面実装タイプが用いられ、実際にはメイン基板22の一表面22aと他表面22bとの両方に部品が実装されるが、図3(2)ではメイン基板22の他表面22bに実装される部品を省略している。
【0034】
図4は、携帯型電話機21の折り曲げ試験を説明するための図である。折り曲げ試験は、携帯型電話機21を人手で持ち歩く時に、不用意に携帯型電話機21に外力が印加された場合に備えて行われる試験であり、たとえば携帯型電話機21の予め定める部位を固定した状態で、予め定める部位に外力を加えることによって行われる。図4では、折り畳まれた状態の携帯型電話機21において、長手方向の一端部および他端部をそれぞれ固定台24によって裏面21b側から固定し、表面21a側から、長手方向の中央に外力Fを加えている状態を模式的に示している。外力Fを加えると、携帯型電話機21の筐体が長手方向の中央を中心にして外力Fの向きに変位して、全体的に湾曲し、ひいては筐体に搭載されたメイン基板22も湾曲する。メイン基板22には、前述したように携帯型電話機21の機能を実現するための多数のチップ部品23が実装されている。これら複数のチップ部品23は、筐体に比べると外力Fに対して非常に脆く、メイン基板22が湾曲すると、簡単に破壊されることがある。したがって携帯電話の設計者は、外力Fが印加されてもメイン基板22の湾曲を抑えるように携帯型電話機21の筐体の強度設計を行う。設計者は、設計した設計データによって実現される携帯型電話機21が、所望する特性を有する構造であるかを検証するために、実物を用いた折り曲げ試験を行う前に、仮想的に携帯型電話機21に外力Fを印加して、メイン基板22およびチップ部品23に生じる歪および加わる応力などをコンピュータシミュレーションによって構造解析を行う。この構造解析に用いられるメッシュモデルを、メッシュモデル作成装置1が作成する。設計者は、構造解析の結果として得られる歪値および応力値などに基づいて、メイン基板22およびチップ部品23などが破壊しないかを予測する。構造解析の結果、破壊のおそれがある場合には、設計データに改善を加え、再びコンピュータシミュレーションによって構造解析を行って、改善した内容を検証するという試行錯誤を繰り返す。
【0035】
図5は、構造解析の対象となる複数の部品23が実装されたメイン基板22を示す平面図である。図5では、理解の容易のために、説明の対象となる部品23のみを図示している。図5に示すメイン基板22には、相互に形状の異なる3種類の部品23が実装されており、それぞれ第1部品25、第2部品26および第3部品27と記載する。第1〜第3部品25,26,27の形状を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
メッシュモデル作成装置1は、メイン基板22と第1部品25と第2部品26と第3部品27とを対象とし、四面体要素および六面体要素などの3次元要素によってメッシュモデルを作成するが、メッシュの作成の様子について図面を用いて説明するときは、理解の容易のために3次元要素を三角形要素および四角形要素などの2次元要素として説明する。したがって、有限要素の総数の説明では、3次元要素の数ではなく、メイン基板22を平面視したときの3次元要素を2次元要素として扱い、紙面で表示可能な数として2次元要素の数を参考として記載する。
【0038】
次に図1に示すメッシュモデル作成装置1の各部の機能について詳細に説明する。設計データ読込部5は、記憶装置2に記憶された設計データを読込む。この設計データは、たとえばCADシステムを用いて作成されたデータである。この設計データには、製品を構成する部品を識別するパーツコードなどが含まれる。
【0039】
属性データ取得部6は、記憶装置2に記憶され、部品の属性値がデータベース化された部品情報DBから、製品を構成する部品の属性値を読込む。属性データ取得部6が読込むべき部品のデータは、たとえば設計データ読込部5が読込んだ設計データによって指定される部品のデータである。属性データ取得部6が読込む属性データは、たとえばパーツコードなどの部品を識別する情報、およびパーツコードによって指定される部品の物性値などを含む。物性値には、部品の高さ、幅、奥行き、表面積、体積、アスペクト比などの部品の形状を表す情報と、材質、比重、ヤング率、引張り強さ、ポアソン比、発熱量、熱伝導率、比熱、動作保障温度などの特性を表す情報とが含まれる。属性データ取得部6は、部品情報DBから属性値を読込むとしたが、設計データに属性値が予め含まれている場合には、設計データ読込部5が読込んだ設計データから属性値を読込む。
【0040】
属性指定部7は、解析精度に影響の少ない部品をメッシュモデルから除外するために、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とを選別するときに選別基準の閾値となる属性値を指定する。本実施の形態では属性値として物性値を指定し、具体的には体積を指定する。属性値の指定は、予め設定された初期設定を用いてもよく、また入力装置4から入力された情報に基づいて指定してもよい。
【0041】
部品選別部8は、属性指定部7によって指定された閾値と各部品の物性値とを比較して、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。部品選別部8は、まず複数の部品について、属性指定部7で指定した属性に対応する属性値を取得する。本実施の形態では属性として体積を指定するので、部品選別部8は、全ての部品の体積を取得する。具体的には属性データ取得部6によって読込まれたデータから、メイン基板22および第1〜第3部品25,26,27の体積を表すデータを抽出する。次に、部品選別部8は、各部品の体積と、閾値とを比較して、部品を選別する。後述するように、部品選別部8は、閾値を段階的に変化させて、各閾値ごとに部品の選別を行う。具体的には、属性値として体積が指定されている場合、部品選別部8は、閾値となる体積の値を段階的に増加させて、各体積に対してそれぞれ除外すべき部品と、組込むべき部品とに部品を選別する。閾値は、たとえば部品のうちで2番目に体積の大きい部品を最大値とし、最小値を0(零)として、予め定める増加幅で増加させていく。本実施の形態ではメイン基板22が最も体積が大きいので、2番目に体積の大きい第3部品27の体積(640mm3)を最大値として設定し、増加幅を200mm3に設定する。すなわち複数の閾値としては、0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3が選択される。予め定める増加幅および最大値は、予め設定された初期設定を用いてもよく、また入力装置4から入力された情報に基づいて指定してもよい。
【0042】
閾値が0mm3の場合、全ての部品の体積が0mm3よりも大きいので、部品選別部8は、メッシュモデルから除外すべき部品はなく、全ての部品がメッシュモデルに組込むべき部品として判断する。すなわち図5に示す全ての部品がメッシュモデルに組込むべき部品として判断される。
【0043】
図6は、閾値が200mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図であり、図7は、閾値が400mm3および600mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図であり、図8は、閾値が640mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【0044】
閾値が200mm3の場合、第1部品25の体積(1.2mm3)が閾値以下なので、部品選別部8は、第1部品25を除外すべき部品として判断し、第2部品26、第3部品27およびメイン基板22をメッシュモデルに組込むべき部品として判断する(図6参照)。閾値が400mm3および600mm3の場合、第1部品25の体積(1.2mm3)および第2部品26の体積(235.2mm3)が閾値以下なので、部品選別部8は、第1部品25および第2部品26を除外すべき部品として判断し、第3部品27およびメイン基板22をメッシュモデルに組み込む部品として判断する(図7参照)。閾値が640mm3の場合、第1〜第3部品25,26,27の体積(1,2mm3,235.2mm3,640mm3)が閾値以下なので、部品選別部8は、第1〜第3部品25,26,27を除外すべき部品として判断し、メイン基板22をメッシュモデルに組込むべき部品として判断する(図8参照)。
【0045】
分割部9は、各閾値ごとに、組物から除外すべき部品を除いた組物を複数の有限要素に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。すなわち本実施の形態では閾値として0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3が選ばれるので、各閾値に対して、部品選別部8がメッシュモデルに組込むべき部品として選別した部品を組合わせた組物のメッシュモデルをそれぞれ作成する。有限要素の大きさは、たとえば部品の大きさに合わせて予め設定されている。
【0046】
図9は、閾値が0mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が0mm3の場合には、除外すべき部品がないので、分割部9は、全ての部品を組合わせた組物を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図9は、図5に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。
【0047】
図10は、閾値が200mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が200mm3の場合には、除外すべき部品として第1部品25が選択されるので、分割部9は、第1部品25を除外して、組込むべき部品として選択された部品を組合わせた組物を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図10は、図6に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。
【0048】
図11は、閾値が400mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が400mm3の場合には、除外すべき部品として第1部品25および第2部品26が選択されるので、分割部9は、第1部品25および第2部品26を除外して、組込む部品として選択された部品を組合わせた組物を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図11は、図7に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。閾値が600mm3の場合には、閾値が400mm3の場合と除去すべき部品が同じなので、分割部9が行う処理も閾値が400mm3の場合と同じであり、重複する説明を省略する。
【0049】
図12は、閾値が640mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が640mm3の場合には、除外すべき部品として第1〜第3部品25,26,27が選択されるので、分割部9は、メイン基板22のみを複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図12は、図8に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。
【0050】
メッシュ総数取得部10は、各閾値ごとに作成されるメッシュモデルの有限要素の総数を、各閾値ごとに集計する。すなわち本実施の形態では閾値として0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3が選ばれるので、各閾値に対して作成されたメッシュモデルの有限要素の総数を各閾値ごとに集計する。具体的にはメッシュモデル作成装置1は、図9〜図11に示す各メッシュモデルの有限要素の総数を集計する。
【0051】
図9に示す閾値が0mm3のメッシュモデルの場合には、平面視で見える有限要素の総数(以下、メッシュ総数という)は、287である。前述したように分割部9は、3次元要素で分割するので、メッシュ総数取得部10は、3次元要素の総数を集計するが、本実施の形態では理解の容易のために、以下の説明を通して平面視で見えるメッシュ総数を有限要素の総数として説明する。図10に示す閾値が200mm3のメッシュモデルの場合には、メッシュ総数が141である。図11に示す閾値が400mm3,600mm3のメッシュモデルの場合には、メッシュ総数が118である。図12に示す閾値が640mm3のメッシュモデルの場合には、メッシュ総数が105である。
【0052】
本実施の形態では、部品選別部8、分割部9およびメッシュ総数取得部10が、各閾値ごとにそれぞれ処理を行っているが、これに限らずに、部品選別部8、分割部9およびメッシュ総数取得部10が、この記載順に閾値を変更するごとに各部の処理を順次行ってもよい。また本実施の形態では理解の容易のために第1〜第3部品25,26,27について説明したが、前述したように実際にはメイン基板22に数百〜千個以上の部品が搭載され、これらの部品に対して部品選別部8、分割部9およびメッシュ総数取得部10がそれぞれ前述と同様の処理を行う。
【0053】
図13は、閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフである。相関表示部11は、表示制御手段に相当し、表示装置3を制御して、有限要素の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる。具体的には、相関表示部11は、横軸を閾値、縦軸をメッシュ総数とするグラフを作成して、作成したグラフを表示装置3に表示させる。前述したように本実施の形態ではメイン基板22に第1〜第3部品25,26,27が搭載されるとして説明したが、実際には数百〜千個以上の部品が搭載されるので、図13に示すグラフは、閾値に対してメッシュ総数がなだらかに変化している。
【0054】
閾値入力部12は、設計者がキーボードおよびマウスなどを操作することによって、入力装置4から入力される閾値を、閾値として設定する。すなわち表示装置3に表示された閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを設計者が参考にして設定される閾値が、メッシュモデルを作成する処理の閾値として採用される。閾値入力部12が閾値を設定すると、この閾値に基づいて部品選別部8が前述と同様にして部品を選別し、分割部9がメッシュモデルを作成する。閾値入力部12によって設定された閾値に基づいて、既にメッシュモデルが作成されている場合には、このメッシュモデルを援用することによって再度メッシュモデルを作成しなくてもよい。
【0055】
部品表示部13は、表示制御手段に相当し、表示装置3を制御して、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させる。図14は、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせた組物を示す斜視図である。部品表示部13は、たとえば部品選別部8が組込むべき部品と判断した部品を、不透明で表示させ、部品選別部8が除外すべき部品と判断した部品を半透明で表示させている。図14では、体積の大きい部品が半透明で示されている。本実施の形態では閾値として体積を指定しているので、体積の小さい部品が半透明で表示されるが、閾値として体積とは異なる物性値を指定した場合には、図14に示すように体積の大きい部品が半透明で示される場合がある。
【0056】
メッシュモデル出力部14は、分割部9によって複数の有限要素に分割されたメッシュモデルに対して、たとえば各節点にそれぞれヤング率およびポアソン比などを対応させて解析用のメッシュモデルを作成する。設計者は、このメッシュモデル出力部14によって作成されたメッシュモデルを使用して構造解析などの所定の解析を行う。
【0057】
以上説明した本実施の形態のメッシュモデル作成装置1によれば、部品選別部8は、閾値と各部品の物性値とを比較して、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。本実施の形態では複数の閾値が予め定められており、各閾値ごとにメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別される。したがって、ある閾値に対して除外すべき部品と判断された部品が、閾値が異なれば組込まれる部品として判断されることがある。すなわち閾値によって、除外すべき部品が多くなったり、少なくなったりする。
【0058】
分割部9は、除外すべき部品を除いた組物を複数の有限要素に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。本実施の形態ではメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品との選別が、各閾値ごとに行われ、この選別にしたがって、各閾値ごとにメッシュモデルが作成される。
【0059】
メッシュ総数取得部10は、メッシュモデルの有限要素の総数を集計する。本実施の形態では、各閾値ごとにメッシュモデルが作成されて、作成されたメッシュモデルごとに有限要素の総数が集計される。すなわち各閾値に対する有限要素の総数が、閾値ごとに集計される。
【0060】
相関表示部11は、有限要素の総数と、閾値との相関を表す情報を表示する。有限要素の総数と、解析に要する時間とには相関があり、有限要素の総数が多いほど、解析に要する時間が長くなる傾向にある。また有限要素の総数と、解析精度とにも相関があり、有限要素の総数が多いほど解析精度が高くなる傾向にある。本実施の形態では、図13に示すように閾値と有限要素の総数との相関が表示されるので、利用者は有限要素の総数から解析精度および解析時間の予測を容易に行うことができ、妥当な閾値を容易に導き出すことができる。また解析時間は、解析に使用する計算機の性能に依存するが、使用する計算機の性能と有限要素の総数とを照らし合わせることによって、解析時間を容易に予測することができる。設計者は、以上の観点から閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを参照して閾値を設定し、入力装置4を操作することによって閾値がメッシュモデル作成装置1に入力される。この入力された閾値に基づいて、解析用のメッシュモデルが作成される。これによって、たとえば高速演算処理可能な計算機を用いて解析を行う場合に、解析時間が短いと判断すると、除外する部品の数を減らして、精度の高い解析を行うことができる。
【0061】
また部品表示部13は、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示装置3に表示させるので、利用者が表示装置3を視認することによって、メッシュモデルから除外された部品を容易に把握することができる。特に、部品選別部8が組込むべき部品と判断した部品を、不透明で表示させ、部品選別部8が除外すべき部品と判断した部品を半透明で表示させているので、モデルが3次元で表示されて、除外すべき部品で隠れて見えないような組込むべき部品を容易に視認することができる。
【0062】
本実施の形態では、部品選別部8が組込むべき部品と判断した部品を、不透明で表示させ、部品選別部8が除外すべき部品と判断した部品を半透明で表示させているが、表示のさせ方は、これに限られない。たとえば、部品表示部13は、表示装置3を制御して、組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させてもよい。これによって、モデルが3次元で表示されている場合でも、大きな部品の影となって隠れている部分に除外すべき部品が存在しても、設計者は目視で確認することができる。また、部品表示部13は、表示装置3を制御して、除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させて、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示してもよい。このように除外すべき部品が点滅することによって、設計者が除外すべきと判断された部品を容易に判断することができる。また、部品表示部13は、表示装置3を制御して、除外すべき部品と、組み込む部品との色を異ならせて表示させてもよい。さらに、除外すべき部品に関してのみ、除外すべき部品を識別可能なリストを表示装置3に表示してもよい。
【0063】
また以上の説明ではメイン基板22を部品の1つとして扱っているので、メイン基板22よりも体積の大きい部品を搭載する場合には、メイン基板22がメッシュモデルから除外すべき部品として判断される場合があり、メッシュモデルとして不適切な場合がある。そこで、メイン基板22などのメッシュモデルに必須となる部品を予め指定しておき、部品選別部8がメッシュモデルから除外すべき部品と判断したとしても、予め指定された部品についてはメッシュモデルに組込むべき部品として判断されるようにしてもよい。
【0064】
また以上の説明では、閾値に体積を設定した場合について説明したが、体積に限らずに、解析の種類に応じてヤング率、ポアソン比および質量を閾値に設定してもよい。
【0065】
またメッシュモデル作成装置1は、複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成するリスト生成部をさらに備えてもよい。本実施の形態では、閾値が0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3に設定されるので、リスト生成部は、各閾値に対して、除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた表2に示す対応表情報を生成する。このような対応表情報が生成されるので、同じ設計データまたは少しだけ変更を加えた設計データを用いて再びメッシュモデルを作成するときに、対応表情報を適用することによって、部品選別部8が行う処理を省略しても除外すべき部品を除いた組物のメッシュモデルを作成することができる。
【0066】
【表2】
【0067】
また本実施の形態では、閾値は、1つの物性値に対して設定されるが、異なる物性に対してそれぞれ設定されてもよい。たとえば閾値として、体積を第1閾値に設定し、ヤング率を第2閾値に設定してもよい。
【0068】
実装面積を第1閾値とし、ヤング率を第2閾値として設定した場合の一例について説明する。表3は、第1部品、第2部品、第3部品の物性を示す表である。
【0069】
【表3】
【0070】
前述したように第1閾値および第2閾値は、それぞれ複数の値に設定される。たとえば特定の値として第1閾値によって10mm角以下か否かを判定し、第2閾値によって10GPa以下か否かを判定して、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する場合について説明する。表4は、部品選別部8が部品を選別するときの判断結果を表す。
【0071】
【表4】
【0072】
まず部品選別部8は、各部品が10mm角以下か否かを判断し、10mm角以下の第2部品および第3部品を除外すべき部品の候補として選択する。次に部品選別部8は、候補として選択された第2部品および第3部品に対して、ヤング率が10GPa以下か否かを判断し、ヤング率が10GPa以下の第3部品を除外すべき部品として選別する。この特定の閾値に対する部品の選別が終わると、実装面積およびヤング率を予め定める増加幅で増加させた値を第1閾値および第2閾値として新たに設定して、再度部品を選別する処理を繰り返す。前記予め定める増加幅は、第1閾値と第2閾値とのそれぞれに対して異なって設定されていてもよい。相関表示部11は、前述したように閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを表示装置3に表示させる。グラフでは、横軸に第1閾値と第2閾値とを重ねて表示させ、横軸の第1および第2閾値が示す閾値に対応するメッシュ総数をプロットする。これによって複数の物性値に基づいて部品の選別が行われるので、選別の精度を向上することができる。たとえば強度解析を行うときに無視することが出来ないような、体積が小さいがヤング率が高い部品をむやみに削除することを防ぐことが可能であるため、解析精度が著しく低下することを防ぐことができる。
【0073】
また、第1閾値を固定して、第2閾値を変化させ、固定した第1閾値と、各第2閾値とに対して部品の選別をして、メッシュモデルを作成するとともにメッシュ総数を取得し、さらに第2閾値を固定して、第1閾値を変化させ、固定した第2閾値と、各第1閾値とに対して部品の選別をして、メッシュモデルを作成するとともにメッシュ総数を取得してもよい。相関表示部11は、前述したように閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを表示装置3に表示させる。グラフでは、x軸を第1閾値とし、y軸を第2閾値とし、z軸をメッシュ総数とする3次元表示にしてもよく、またx軸またはy軸に垂直な断面で3次元表示のグラフを切って、2次元表示にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の一形態のメッシュモデル作成装置1の機能的な構成を示す図である。
【図2】クラムシェル型の携帯型電話機21を模式的に示す斜視図である。
【図3】複数の部品23が搭載されたメイン基板22を示す図である。
【図4】携帯型電話機21の折り曲げ試験を説明するための図である。
【図5】構造解析の対象となる複数の部品23が実装されたメイン基板22を示す平面図である。
【図6】閾値が200mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【図7】閾値が400mm3および600mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【図8】閾値が640mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【図9】閾値が0mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図10】閾値が200mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図11】閾値が400mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図12】閾値が640mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図13】閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフである。
【図14】組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせた組物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 メッシュモデル作成装置
2 記憶装置
3 表示装置
4 入力装置
5 設計データ読込部
6 属性データ取得部
7 属性指定部
8 部品選別部
9 分割部
10 メッシュ総数取得部
11 相関表示部
12 閾値入力部
13 部品表示部
14 メッシュモデル出力部
21 携帯型電話機
22 メイン基板
23 部品
25 第1部品
26 第2部品
27 第3部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品を組合わせて構成される組物の解析用のメッシュモデルを作成するメッシュモデル作成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の製品設計では、計算機支援設計装置(以下、CAD(Computer Aided Design)装置またはCADシステムという)を用いて、三次元座標系における製品の図形データを作成して、設計を行っている。
【0003】
また設計の一工程において、コンピュータシミュレーションを行い、製品の解析を行っている。この解析では、まずCADシステムで作成した設計データに基づいて、製品を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。次に有限要素法および有限体積法などによって放熱解析、流体解析、強度解析および電磁波解析などの解析を行い、設計データが表す製品の特性を把握する。この解析結果に基づいて、設計の修正が必要であると判断すると、設計データを修正し、再度解析を行う。解析と設計データの修正とを繰返すことによって、最も好ましい特性が得られる設計データを生成していく。このように解析と設計データの修正とを繰返すので、短期間で良い設計を行うためには、解析に要する時間を可能な限り短縮する必要がある。
【0004】
たとえば電化製品は、筐体および機械的な部品などの構造部品と、構造部品の電源および駆動制御用の回路に使用される電子部品などの複数の部品が組合されて構成されている。このような電化製品の設計では、CADシステムを用いて複数の部品をアセンブリデータとして作成し、このアセンブリデータに基づいて、解析用のメッシュモデルを作成する。電化製品を構成する複数の部品の形状は、それぞれ異なるので、メッシュモデルの作成では、小さい部品のサイズに注意を払う必要がある。そこでたとえばサイズの小さい部品のサイズに合わせて有限要素のサイズを設定すれば、実際の形状に近いメッシュモデルを作成することができ、解析の精度が向上する。しかしながら、有限要素のサイズを小さく設定するほど有限要素の数が多くなり、解析に要する時間が長くなるという問題がある。
【0005】
逆に、有限要素のサイズを大きく設定すると、有限要素の数が少なくなり、解析に要する時間を短くすることができる。しかしながら、有限要素のサイズを大きく設定してしまうと、実際の形状から離れたメッシュモデルが作成され、解析の精度が低下してしまう。
【0006】
このように、有限要素のサイズと解析精度との間には、トレードオフの関係がある。そこで精度の高い解析を可能な限り短時間で行うために、解析精度に与える影響の少ない部品を予め削除して、この削除された部品のメッシュ分割を行わずに、解析精度に与える影響の大きい部品のみのメッシュ分割を行って、メッシュモデルを作成し、このメッシュモデルを用いて解析を行う技術がある(たとえば特許文献1参照)。この従来の技術では、解析精度に与える影響が少ない部品として、サイズの小さい部品をメッシュモデルから削除して、有限要素のサイズを大きく設定することによって、メッシュモデルの有限要素の数を少なくするとともに、解析精度が低下することを防いでいる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−167928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の従来技術では、メッシュのサイズを利用者が設定し、設定したメッシュのサイズよりも小さい部品をメッシュモデルから除外してメッシュモデルを作成しているが、解析精度と解析時間とを考慮したときに、設定したメッシュのサイズが妥当か否かを判断することが難しい。すなわちメッシュのサイズを大きく設定すると、除外される部品が多くなって解析時間が短くなるが、解析精度が低下してしまい、メッシュのサイズを小さく設定すると、除外される部品が少なくなって解析精度が向上するが、解析時間が長くなってしまい、妥当なメッシュのサイズを設定することが困難となる。
【0009】
したがって本発明の目的は、メッシュモデルから除外すべき部品を容易に判断可能にするメッシュモデル作成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成するメッシュモデル作成装置であって、
予め定める複数の閾値と各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段とを含むことを特徴とするメッシュモデル作成装置である。
【0011】
また本発明は、前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成するリスト生成手段をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記閾値は、異なる物性に対してそれぞれ設定されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、コンピュータを、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成する装置として機能させるプログラムであって、
コンピュータを、
予め定める複数の閾値と組物を構成する各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、複数の小領域で構成されるメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品選別手段は、閾値と各部品の物性値とを比較して、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。本発明では複数の閾値が予め定められており、各閾値ごとにメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別される。したがって、ある閾値に対して除外すべき部品と判断された部品が、閾値が異なれば組込まれる部品として判断されることがある。すなわち閾値によって、除外すべき部品が多くなったり、少なくなったりする。
【0018】
分割手段は、除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。本発明ではメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品との選別が、各閾値ごとに行われ、この選別にしたがって、各閾値ごとにメッシュモデルが作成される。
【0019】
要素数集計手段は、メッシュモデルの小領域の総数を集計する。本発明では、各閾値ごとにメッシュモデルが作成されて、作成されたメッシュモデルごとに小領域の総数が集計される。すなわち各閾値に対する小領域の総数が、閾値ごとに集計される。
【0020】
表示手段は、小領域の総数と、閾値との相関を表す情報を表示する。小領域の総数と、解析に要する時間とには相関があり、小領域の総数が多いほど、解析に要する時間が長くなる傾向にある。また小領域の総数と、解析精度とにも相関があり、小領域の総数が多いほど解析精度が高くなる傾向にある。本発明では、閾値と小領域の総数との相関が表示されるので、利用者は小領域の総数から解析精度および解析時間の予測を容易に行うことができ、妥当な閾値を容易に導き出すことができる。また解析時間は、解析に使用する計算機の性能に依存するが、使用する計算機の性能と小領域の総数とを照らし合わせることによって、解析時間を容易に予測することができる。これによって、たとえば高速演算処理可能な計算機を用いて解析を行う場合に、解析時間が短いと判断すると、除外する部品の数を減らして、精度の高い解析を行うことができる。
【0021】
従来の技術では、メッシュのサイズを利用者が設定して、メッシュモデルを作成するが、メッシュモデルからは解析に要する時間が容易に予測することができない。たとえば作成したメッシュモデルの小領域の数を集計すれば、解析に要する時間を予測することは可能であるが、意図した解析時間でなければさらにメッシュのサイズを設定し直してメッシュモデルを作成し、さらに小領域の総数を集計する必要がある。このような処理を複数回繰返すことによって、意図した時間で解析可能と予測されるメッシュモデルが作成されるので、メッシュモデルを作成する処理が煩雑になるが、本発明では閾値と小領域の総数との相関が表示されるので、前述したように容易に最適なメッシュモデルを得ることができる。
【0022】
また従来の技術では、解析に使用する計算機の性能に応じて解析時間を予測することができないので、たとえば高速演算処理可能な計算機を用いて、短時間で解析を行うことができる場合であっても、除外すべき部品の数を多く設定してしまい、精度の低い解析を行ってしまうことがあるが、本発明では小領域の総数が表示されるので、前述したように使用する計算機に応じた解析時間を容易に予測することができ、最適なメッシュモデルを容易に作成することができる。
【0023】
また本発明によれば、表示手段は、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示するので、利用者が表示手段を視認することによって、メッシュモデルから除外された部品を容易に把握することができる。
【0024】
さらに本発明によれば、リスト生成手段は、複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成する。このような対応表情報が生成されるので、同じ設計データまたは少しだけ変更を加えた設計データを用いて再びメッシュモデルを作成するときに、対応表情報を適用することによって、部品選別手段が行う処理を省略しても除外すべき部品を除いた組物のメッシュモデルを作成することができる。
【0025】
さらに本発明によれば、閾値は、異なる物性に対してそれぞれ設定されるので、たとえば部品の体積などの1つの物性値に基づいて除外すべき部品と組込むべき部品との選別が行われるのではなく、複数の物性値に基づいて部品の選別が行われるので、選別の精度を向上することができる。
【0026】
さらに本発明によれば、表示手段は、組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示するので、利用者が表示手段を視認することによって、本来ならば組込むべき部品に隠れて目視することができない除外すべき部品であっても、容易に視認することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、表示手段は、除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させるので、利用者が表示手段を目視することによって、除外すべき部品を容易に視認することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、コンピュータがプログラムを読込むことによって、コンピュータを前述の部品選別手段と、分割手段と、要素数集計手段と、表示制御手段として機能させ、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成する装置として機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の一形態のメッシュモデル作成装置1の機能的な構成を示す図である。メッシュモデル作成装置1は、コンピュータシミュレーションによる解析に用いられるメッシュモデルを作成する。メッシュモデルは、解析対象物を複数の小領域で分割することによって作成される。メッシュモデル作成装置1は、コンピュータによって実現される。以下の本実施の形態の説明において、小領域を有限要素と記載するが、メッシュモデルは有限要素法に限らずに、有限体積法などの有限要素法とは異なる解析法にも用いられる。
【0030】
メッシュモデル作成装置1を実現するコンピュータは、中央処理装置(Central Processing Unit:略称CPU)によって実現される制御部と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などによって実現される記憶装置2と、陰極線管(Cathode Ray Tube:略称CRT)および液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:略称LCD)などによって実現される表示装置3と、キーボードおよびポインティングデバイスなどによって実現される入力装置4とを含んで構成される。メッシュモデル作成装置1は、制御部が、記憶装置2に記憶されるプログラムを読込んで実行することによって機能する設計データ読込部5と、属性データ取得部6と、属性指定部7と、部品選別部8と、分割部9と、メッシュ総数取得部10と、相関表示部11と、閾値入力部12と、部品表示部13と、メッシュモデル出力部14とを含んで構成される。
【0031】
入力装置4は、利用者の操作に応じた指令をメッシュモデル作成装置1に与える。メッシュモデル作成装置1は、入力装置4から与えられる指令に基づいた制御を行う。記憶装置2は、設計データ、メッシュモデル作成装置1の処理結果、およびプログラムなどのデータを記憶して、メッシュモデル作成装置1の指令に基づいて記憶しているデータをメッシュモデル作成装置1に与える。表示装置3は、メッシュモデル作成装置1の指令に基づいた画像情報を可視表示する。
【0032】
図2は、クラムシェル型の携帯型電話機21を模式的に示す斜視図である。図2には、携帯型電話機21の筐体に搭載されるメイン基板22も示している。メイン基板22には、携帯型電話機21を動作させるために必要な送受信回路、電源回路、電話の機能を制御するためのソフトウェアが記録されたLSI(Large-Sale Integrated circuit)、抵抗器およびコンデンサなどのチップ部品が搭載されている。以下、メッシュモデル作成装置1が、複数の部品が搭載されたメイン基板22のメッシュモデルを作成する処理について説明する。本実施の形態では、メイン基板22も部品の1つとして扱い、メッシュモデル作成装置1は、部品の1つであるメイン基板22およびメイン基板22に搭載される部品が組合されて構成される組物を複数の有限要素に分割して、メッシュモデルを作成する。
【0033】
図3は、複数の部品23が搭載されたメイン基板22を示す図である。図3(1)は、複数の部品23が搭載されたメイン基板22を示す正面図であり、図3(2)は、図3(1)の切断面線A−Aから見た複数の部品23が搭載されたメイン基板22の断面図である。メイン基板22に実装される部品23の数は、携帯型電話機21の機種によって異なるが、1台の携帯型電話機21に対して、実際には数百〜千個以上におよぶが、図3では、全ての部品を図示すると煩雑になるので、理解の容易のために大部分の部品を省略している。またメイン基板22には、両面実装タイプが用いられ、実際にはメイン基板22の一表面22aと他表面22bとの両方に部品が実装されるが、図3(2)ではメイン基板22の他表面22bに実装される部品を省略している。
【0034】
図4は、携帯型電話機21の折り曲げ試験を説明するための図である。折り曲げ試験は、携帯型電話機21を人手で持ち歩く時に、不用意に携帯型電話機21に外力が印加された場合に備えて行われる試験であり、たとえば携帯型電話機21の予め定める部位を固定した状態で、予め定める部位に外力を加えることによって行われる。図4では、折り畳まれた状態の携帯型電話機21において、長手方向の一端部および他端部をそれぞれ固定台24によって裏面21b側から固定し、表面21a側から、長手方向の中央に外力Fを加えている状態を模式的に示している。外力Fを加えると、携帯型電話機21の筐体が長手方向の中央を中心にして外力Fの向きに変位して、全体的に湾曲し、ひいては筐体に搭載されたメイン基板22も湾曲する。メイン基板22には、前述したように携帯型電話機21の機能を実現するための多数のチップ部品23が実装されている。これら複数のチップ部品23は、筐体に比べると外力Fに対して非常に脆く、メイン基板22が湾曲すると、簡単に破壊されることがある。したがって携帯電話の設計者は、外力Fが印加されてもメイン基板22の湾曲を抑えるように携帯型電話機21の筐体の強度設計を行う。設計者は、設計した設計データによって実現される携帯型電話機21が、所望する特性を有する構造であるかを検証するために、実物を用いた折り曲げ試験を行う前に、仮想的に携帯型電話機21に外力Fを印加して、メイン基板22およびチップ部品23に生じる歪および加わる応力などをコンピュータシミュレーションによって構造解析を行う。この構造解析に用いられるメッシュモデルを、メッシュモデル作成装置1が作成する。設計者は、構造解析の結果として得られる歪値および応力値などに基づいて、メイン基板22およびチップ部品23などが破壊しないかを予測する。構造解析の結果、破壊のおそれがある場合には、設計データに改善を加え、再びコンピュータシミュレーションによって構造解析を行って、改善した内容を検証するという試行錯誤を繰り返す。
【0035】
図5は、構造解析の対象となる複数の部品23が実装されたメイン基板22を示す平面図である。図5では、理解の容易のために、説明の対象となる部品23のみを図示している。図5に示すメイン基板22には、相互に形状の異なる3種類の部品23が実装されており、それぞれ第1部品25、第2部品26および第3部品27と記載する。第1〜第3部品25,26,27の形状を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
メッシュモデル作成装置1は、メイン基板22と第1部品25と第2部品26と第3部品27とを対象とし、四面体要素および六面体要素などの3次元要素によってメッシュモデルを作成するが、メッシュの作成の様子について図面を用いて説明するときは、理解の容易のために3次元要素を三角形要素および四角形要素などの2次元要素として説明する。したがって、有限要素の総数の説明では、3次元要素の数ではなく、メイン基板22を平面視したときの3次元要素を2次元要素として扱い、紙面で表示可能な数として2次元要素の数を参考として記載する。
【0038】
次に図1に示すメッシュモデル作成装置1の各部の機能について詳細に説明する。設計データ読込部5は、記憶装置2に記憶された設計データを読込む。この設計データは、たとえばCADシステムを用いて作成されたデータである。この設計データには、製品を構成する部品を識別するパーツコードなどが含まれる。
【0039】
属性データ取得部6は、記憶装置2に記憶され、部品の属性値がデータベース化された部品情報DBから、製品を構成する部品の属性値を読込む。属性データ取得部6が読込むべき部品のデータは、たとえば設計データ読込部5が読込んだ設計データによって指定される部品のデータである。属性データ取得部6が読込む属性データは、たとえばパーツコードなどの部品を識別する情報、およびパーツコードによって指定される部品の物性値などを含む。物性値には、部品の高さ、幅、奥行き、表面積、体積、アスペクト比などの部品の形状を表す情報と、材質、比重、ヤング率、引張り強さ、ポアソン比、発熱量、熱伝導率、比熱、動作保障温度などの特性を表す情報とが含まれる。属性データ取得部6は、部品情報DBから属性値を読込むとしたが、設計データに属性値が予め含まれている場合には、設計データ読込部5が読込んだ設計データから属性値を読込む。
【0040】
属性指定部7は、解析精度に影響の少ない部品をメッシュモデルから除外するために、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とを選別するときに選別基準の閾値となる属性値を指定する。本実施の形態では属性値として物性値を指定し、具体的には体積を指定する。属性値の指定は、予め設定された初期設定を用いてもよく、また入力装置4から入力された情報に基づいて指定してもよい。
【0041】
部品選別部8は、属性指定部7によって指定された閾値と各部品の物性値とを比較して、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。部品選別部8は、まず複数の部品について、属性指定部7で指定した属性に対応する属性値を取得する。本実施の形態では属性として体積を指定するので、部品選別部8は、全ての部品の体積を取得する。具体的には属性データ取得部6によって読込まれたデータから、メイン基板22および第1〜第3部品25,26,27の体積を表すデータを抽出する。次に、部品選別部8は、各部品の体積と、閾値とを比較して、部品を選別する。後述するように、部品選別部8は、閾値を段階的に変化させて、各閾値ごとに部品の選別を行う。具体的には、属性値として体積が指定されている場合、部品選別部8は、閾値となる体積の値を段階的に増加させて、各体積に対してそれぞれ除外すべき部品と、組込むべき部品とに部品を選別する。閾値は、たとえば部品のうちで2番目に体積の大きい部品を最大値とし、最小値を0(零)として、予め定める増加幅で増加させていく。本実施の形態ではメイン基板22が最も体積が大きいので、2番目に体積の大きい第3部品27の体積(640mm3)を最大値として設定し、増加幅を200mm3に設定する。すなわち複数の閾値としては、0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3が選択される。予め定める増加幅および最大値は、予め設定された初期設定を用いてもよく、また入力装置4から入力された情報に基づいて指定してもよい。
【0042】
閾値が0mm3の場合、全ての部品の体積が0mm3よりも大きいので、部品選別部8は、メッシュモデルから除外すべき部品はなく、全ての部品がメッシュモデルに組込むべき部品として判断する。すなわち図5に示す全ての部品がメッシュモデルに組込むべき部品として判断される。
【0043】
図6は、閾値が200mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図であり、図7は、閾値が400mm3および600mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図であり、図8は、閾値が640mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【0044】
閾値が200mm3の場合、第1部品25の体積(1.2mm3)が閾値以下なので、部品選別部8は、第1部品25を除外すべき部品として判断し、第2部品26、第3部品27およびメイン基板22をメッシュモデルに組込むべき部品として判断する(図6参照)。閾値が400mm3および600mm3の場合、第1部品25の体積(1.2mm3)および第2部品26の体積(235.2mm3)が閾値以下なので、部品選別部8は、第1部品25および第2部品26を除外すべき部品として判断し、第3部品27およびメイン基板22をメッシュモデルに組み込む部品として判断する(図7参照)。閾値が640mm3の場合、第1〜第3部品25,26,27の体積(1,2mm3,235.2mm3,640mm3)が閾値以下なので、部品選別部8は、第1〜第3部品25,26,27を除外すべき部品として判断し、メイン基板22をメッシュモデルに組込むべき部品として判断する(図8参照)。
【0045】
分割部9は、各閾値ごとに、組物から除外すべき部品を除いた組物を複数の有限要素に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。すなわち本実施の形態では閾値として0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3が選ばれるので、各閾値に対して、部品選別部8がメッシュモデルに組込むべき部品として選別した部品を組合わせた組物のメッシュモデルをそれぞれ作成する。有限要素の大きさは、たとえば部品の大きさに合わせて予め設定されている。
【0046】
図9は、閾値が0mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が0mm3の場合には、除外すべき部品がないので、分割部9は、全ての部品を組合わせた組物を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図9は、図5に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。
【0047】
図10は、閾値が200mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が200mm3の場合には、除外すべき部品として第1部品25が選択されるので、分割部9は、第1部品25を除外して、組込むべき部品として選択された部品を組合わせた組物を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図10は、図6に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。
【0048】
図11は、閾値が400mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が400mm3の場合には、除外すべき部品として第1部品25および第2部品26が選択されるので、分割部9は、第1部品25および第2部品26を除外して、組込む部品として選択された部品を組合わせた組物を複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図11は、図7に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。閾値が600mm3の場合には、閾値が400mm3の場合と除去すべき部品が同じなので、分割部9が行う処理も閾値が400mm3の場合と同じであり、重複する説明を省略する。
【0049】
図12は、閾値が640mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。前述したように閾値が640mm3の場合には、除外すべき部品として第1〜第3部品25,26,27が選択されるので、分割部9は、メイン基板22のみを複数の有限要素に分割してメッシュモデルを作成する。すなわち図12は、図8に示す組物を分割したメッシュモデルを示す。
【0050】
メッシュ総数取得部10は、各閾値ごとに作成されるメッシュモデルの有限要素の総数を、各閾値ごとに集計する。すなわち本実施の形態では閾値として0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3が選ばれるので、各閾値に対して作成されたメッシュモデルの有限要素の総数を各閾値ごとに集計する。具体的にはメッシュモデル作成装置1は、図9〜図11に示す各メッシュモデルの有限要素の総数を集計する。
【0051】
図9に示す閾値が0mm3のメッシュモデルの場合には、平面視で見える有限要素の総数(以下、メッシュ総数という)は、287である。前述したように分割部9は、3次元要素で分割するので、メッシュ総数取得部10は、3次元要素の総数を集計するが、本実施の形態では理解の容易のために、以下の説明を通して平面視で見えるメッシュ総数を有限要素の総数として説明する。図10に示す閾値が200mm3のメッシュモデルの場合には、メッシュ総数が141である。図11に示す閾値が400mm3,600mm3のメッシュモデルの場合には、メッシュ総数が118である。図12に示す閾値が640mm3のメッシュモデルの場合には、メッシュ総数が105である。
【0052】
本実施の形態では、部品選別部8、分割部9およびメッシュ総数取得部10が、各閾値ごとにそれぞれ処理を行っているが、これに限らずに、部品選別部8、分割部9およびメッシュ総数取得部10が、この記載順に閾値を変更するごとに各部の処理を順次行ってもよい。また本実施の形態では理解の容易のために第1〜第3部品25,26,27について説明したが、前述したように実際にはメイン基板22に数百〜千個以上の部品が搭載され、これらの部品に対して部品選別部8、分割部9およびメッシュ総数取得部10がそれぞれ前述と同様の処理を行う。
【0053】
図13は、閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフである。相関表示部11は、表示制御手段に相当し、表示装置3を制御して、有限要素の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる。具体的には、相関表示部11は、横軸を閾値、縦軸をメッシュ総数とするグラフを作成して、作成したグラフを表示装置3に表示させる。前述したように本実施の形態ではメイン基板22に第1〜第3部品25,26,27が搭載されるとして説明したが、実際には数百〜千個以上の部品が搭載されるので、図13に示すグラフは、閾値に対してメッシュ総数がなだらかに変化している。
【0054】
閾値入力部12は、設計者がキーボードおよびマウスなどを操作することによって、入力装置4から入力される閾値を、閾値として設定する。すなわち表示装置3に表示された閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを設計者が参考にして設定される閾値が、メッシュモデルを作成する処理の閾値として採用される。閾値入力部12が閾値を設定すると、この閾値に基づいて部品選別部8が前述と同様にして部品を選別し、分割部9がメッシュモデルを作成する。閾値入力部12によって設定された閾値に基づいて、既にメッシュモデルが作成されている場合には、このメッシュモデルを援用することによって再度メッシュモデルを作成しなくてもよい。
【0055】
部品表示部13は、表示制御手段に相当し、表示装置3を制御して、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させる。図14は、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせた組物を示す斜視図である。部品表示部13は、たとえば部品選別部8が組込むべき部品と判断した部品を、不透明で表示させ、部品選別部8が除外すべき部品と判断した部品を半透明で表示させている。図14では、体積の大きい部品が半透明で示されている。本実施の形態では閾値として体積を指定しているので、体積の小さい部品が半透明で表示されるが、閾値として体積とは異なる物性値を指定した場合には、図14に示すように体積の大きい部品が半透明で示される場合がある。
【0056】
メッシュモデル出力部14は、分割部9によって複数の有限要素に分割されたメッシュモデルに対して、たとえば各節点にそれぞれヤング率およびポアソン比などを対応させて解析用のメッシュモデルを作成する。設計者は、このメッシュモデル出力部14によって作成されたメッシュモデルを使用して構造解析などの所定の解析を行う。
【0057】
以上説明した本実施の形態のメッシュモデル作成装置1によれば、部品選別部8は、閾値と各部品の物性値とを比較して、組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する。本実施の形態では複数の閾値が予め定められており、各閾値ごとにメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別される。したがって、ある閾値に対して除外すべき部品と判断された部品が、閾値が異なれば組込まれる部品として判断されることがある。すなわち閾値によって、除外すべき部品が多くなったり、少なくなったりする。
【0058】
分割部9は、除外すべき部品を除いた組物を複数の有限要素に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する。本実施の形態ではメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品との選別が、各閾値ごとに行われ、この選別にしたがって、各閾値ごとにメッシュモデルが作成される。
【0059】
メッシュ総数取得部10は、メッシュモデルの有限要素の総数を集計する。本実施の形態では、各閾値ごとにメッシュモデルが作成されて、作成されたメッシュモデルごとに有限要素の総数が集計される。すなわち各閾値に対する有限要素の総数が、閾値ごとに集計される。
【0060】
相関表示部11は、有限要素の総数と、閾値との相関を表す情報を表示する。有限要素の総数と、解析に要する時間とには相関があり、有限要素の総数が多いほど、解析に要する時間が長くなる傾向にある。また有限要素の総数と、解析精度とにも相関があり、有限要素の総数が多いほど解析精度が高くなる傾向にある。本実施の形態では、図13に示すように閾値と有限要素の総数との相関が表示されるので、利用者は有限要素の総数から解析精度および解析時間の予測を容易に行うことができ、妥当な閾値を容易に導き出すことができる。また解析時間は、解析に使用する計算機の性能に依存するが、使用する計算機の性能と有限要素の総数とを照らし合わせることによって、解析時間を容易に予測することができる。設計者は、以上の観点から閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを参照して閾値を設定し、入力装置4を操作することによって閾値がメッシュモデル作成装置1に入力される。この入力された閾値に基づいて、解析用のメッシュモデルが作成される。これによって、たとえば高速演算処理可能な計算機を用いて解析を行う場合に、解析時間が短いと判断すると、除外する部品の数を減らして、精度の高い解析を行うことができる。
【0061】
また部品表示部13は、組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示装置3に表示させるので、利用者が表示装置3を視認することによって、メッシュモデルから除外された部品を容易に把握することができる。特に、部品選別部8が組込むべき部品と判断した部品を、不透明で表示させ、部品選別部8が除外すべき部品と判断した部品を半透明で表示させているので、モデルが3次元で表示されて、除外すべき部品で隠れて見えないような組込むべき部品を容易に視認することができる。
【0062】
本実施の形態では、部品選別部8が組込むべき部品と判断した部品を、不透明で表示させ、部品選別部8が除外すべき部品と判断した部品を半透明で表示させているが、表示のさせ方は、これに限られない。たとえば、部品表示部13は、表示装置3を制御して、組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させてもよい。これによって、モデルが3次元で表示されている場合でも、大きな部品の影となって隠れている部分に除外すべき部品が存在しても、設計者は目視で確認することができる。また、部品表示部13は、表示装置3を制御して、除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させて、組込むべき部品と、除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示してもよい。このように除外すべき部品が点滅することによって、設計者が除外すべきと判断された部品を容易に判断することができる。また、部品表示部13は、表示装置3を制御して、除外すべき部品と、組み込む部品との色を異ならせて表示させてもよい。さらに、除外すべき部品に関してのみ、除外すべき部品を識別可能なリストを表示装置3に表示してもよい。
【0063】
また以上の説明ではメイン基板22を部品の1つとして扱っているので、メイン基板22よりも体積の大きい部品を搭載する場合には、メイン基板22がメッシュモデルから除外すべき部品として判断される場合があり、メッシュモデルとして不適切な場合がある。そこで、メイン基板22などのメッシュモデルに必須となる部品を予め指定しておき、部品選別部8がメッシュモデルから除外すべき部品と判断したとしても、予め指定された部品についてはメッシュモデルに組込むべき部品として判断されるようにしてもよい。
【0064】
また以上の説明では、閾値に体積を設定した場合について説明したが、体積に限らずに、解析の種類に応じてヤング率、ポアソン比および質量を閾値に設定してもよい。
【0065】
またメッシュモデル作成装置1は、複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成するリスト生成部をさらに備えてもよい。本実施の形態では、閾値が0mm3,200mm3,400mm3,600mm3,640mm3に設定されるので、リスト生成部は、各閾値に対して、除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた表2に示す対応表情報を生成する。このような対応表情報が生成されるので、同じ設計データまたは少しだけ変更を加えた設計データを用いて再びメッシュモデルを作成するときに、対応表情報を適用することによって、部品選別部8が行う処理を省略しても除外すべき部品を除いた組物のメッシュモデルを作成することができる。
【0066】
【表2】
【0067】
また本実施の形態では、閾値は、1つの物性値に対して設定されるが、異なる物性に対してそれぞれ設定されてもよい。たとえば閾値として、体積を第1閾値に設定し、ヤング率を第2閾値に設定してもよい。
【0068】
実装面積を第1閾値とし、ヤング率を第2閾値として設定した場合の一例について説明する。表3は、第1部品、第2部品、第3部品の物性を示す表である。
【0069】
【表3】
【0070】
前述したように第1閾値および第2閾値は、それぞれ複数の値に設定される。たとえば特定の値として第1閾値によって10mm角以下か否かを判定し、第2閾値によって10GPa以下か否かを判定して、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する場合について説明する。表4は、部品選別部8が部品を選別するときの判断結果を表す。
【0071】
【表4】
【0072】
まず部品選別部8は、各部品が10mm角以下か否かを判断し、10mm角以下の第2部品および第3部品を除外すべき部品の候補として選択する。次に部品選別部8は、候補として選択された第2部品および第3部品に対して、ヤング率が10GPa以下か否かを判断し、ヤング率が10GPa以下の第3部品を除外すべき部品として選別する。この特定の閾値に対する部品の選別が終わると、実装面積およびヤング率を予め定める増加幅で増加させた値を第1閾値および第2閾値として新たに設定して、再度部品を選別する処理を繰り返す。前記予め定める増加幅は、第1閾値と第2閾値とのそれぞれに対して異なって設定されていてもよい。相関表示部11は、前述したように閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを表示装置3に表示させる。グラフでは、横軸に第1閾値と第2閾値とを重ねて表示させ、横軸の第1および第2閾値が示す閾値に対応するメッシュ総数をプロットする。これによって複数の物性値に基づいて部品の選別が行われるので、選別の精度を向上することができる。たとえば強度解析を行うときに無視することが出来ないような、体積が小さいがヤング率が高い部品をむやみに削除することを防ぐことが可能であるため、解析精度が著しく低下することを防ぐことができる。
【0073】
また、第1閾値を固定して、第2閾値を変化させ、固定した第1閾値と、各第2閾値とに対して部品の選別をして、メッシュモデルを作成するとともにメッシュ総数を取得し、さらに第2閾値を固定して、第1閾値を変化させ、固定した第2閾値と、各第1閾値とに対して部品の選別をして、メッシュモデルを作成するとともにメッシュ総数を取得してもよい。相関表示部11は、前述したように閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフを表示装置3に表示させる。グラフでは、x軸を第1閾値とし、y軸を第2閾値とし、z軸をメッシュ総数とする3次元表示にしてもよく、またx軸またはy軸に垂直な断面で3次元表示のグラフを切って、2次元表示にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の一形態のメッシュモデル作成装置1の機能的な構成を示す図である。
【図2】クラムシェル型の携帯型電話機21を模式的に示す斜視図である。
【図3】複数の部品23が搭載されたメイン基板22を示す図である。
【図4】携帯型電話機21の折り曲げ試験を説明するための図である。
【図5】構造解析の対象となる複数の部品23が実装されたメイン基板22を示す平面図である。
【図6】閾値が200mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【図7】閾値が400mm3および600mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【図8】閾値が640mm3の場合の、部品が搭載されたメイン基板22を示す平面図である。
【図9】閾値が0mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図10】閾値が200mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図11】閾値が400mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図12】閾値が640mm3の場合のメッシュモデルを示す図である。
【図13】閾値とメッシュ総数との関係を表すグラフである。
【図14】組込むべき部品と、除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせた組物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 メッシュモデル作成装置
2 記憶装置
3 表示装置
4 入力装置
5 設計データ読込部
6 属性データ取得部
7 属性指定部
8 部品選別部
9 分割部
10 メッシュ総数取得部
11 相関表示部
12 閾値入力部
13 部品表示部
14 メッシュモデル出力部
21 携帯型電話機
22 メイン基板
23 部品
25 第1部品
26 第2部品
27 第3部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成するメッシュモデル作成装置であって、
予め定める複数の閾値と各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段とを含むことを特徴とするメッシュモデル作成装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする請求項1記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項3】
前記複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成するリスト生成手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項4】
前記閾値は、異なる物性に対してそれぞれ設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項7】
コンピュータを、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成する装置として機能させるプログラムであって、
コンピュータを、
予め定める複数の閾値と組物を構成する各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、複数の小領域で構成されるメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成するメッシュモデル作成装置であって、
予め定める複数の閾値と各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、メッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と、閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段とを含むことを特徴とするメッシュモデル作成装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品との表示形式を互いに異ならせて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする請求項1記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項3】
前記複数の閾値のうちの特定の閾値と、物性値を前記特定の閾値と比較したときに除外すべき部品を識別する識別情報とを対応させた対応表情報を生成するリスト生成手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項4】
前記閾値は、異なる物性に対してそれぞれ設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記組込むべき部品を各部品の稜線で表示し、除外すべき部品の表面をシェーディング表示して、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、表示手段を制御して、前記除外すべき部品を予め定める時間間隔で点滅させて、前記組込むべき部品と、前記除外すべき部品とが組合された組物の形状を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のメッシュモデル作成装置。
【請求項7】
コンピュータを、複数の部品が組合されて構成される組物を複数の小領域に分割して、メッシュモデルを作成する装置として機能させるプログラムであって、
コンピュータを、
予め定める複数の閾値と組物を構成する各部品の物性値とを比較して、各閾値ごとに、前記組物を構成する複数の部品を、複数の小領域で構成されるメッシュモデルから除外すべき部品と、メッシュモデルに組込むべき部品とに選別する部品選別手段と、
各閾値ごとに、前記組物から前記除外すべき部品を除いた組物を複数の小領域に分割して、各閾値ごとのメッシュモデルをそれぞれ作成する分割手段と、
各閾値ごとに作成される前記メッシュモデルの小領域の総数を、各閾値ごとに集計する要素数集計手段と、
表示手段を制御して、小領域の総数と閾値との相関を表す情報を表示させる表示制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−3900(P2009−3900A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166973(P2007−166973)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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