説明

メッセージ配信装置、メッセージ配信システム、メッセージ配信方法、プログラムおよび集積回路

【課題】各ノードが任意に繋がったオーバレイネットワークにおいて、各ノードの接続状態や嗜好状態の動的な変化に対応して、所望のメッセージをできるだけ適合性の高いノードへ配信する。
【解決手段】メッセージ配信装置は、ネットワークにおける他のノードに対して発信するメッセージを生成する初期メッセージ生成配信部と、ネットワークを介して他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御部とを備え、通信制御部は、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出し、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメッセージ配信方法、メッセージ配信サーバ、通信端末装置及びメッセージ配信システムに関し、特に、ネットワークを介して通信端末装置間でメッセージを配信するメッセージ配信方法、メッセージ配信サーバ、通信端末装置及びメッセージ配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、インターネット等のネットワークを介して映像や音声等のストリームデータを配信するコンテンツ配信サービスが増加している。これに伴い、コンテンツ配信元のサーバやネットワークに対する負荷が増大している。このため、コンテンツ配信サーバ機能の向上やネットワーク帯域のより一層の広帯域化が望まれているが、サーバを管理する配信業者やネットワークを施設するキャリアに対するコスト負担が大きく、機能の向上は容易に実現できない。
【0003】
このような課題を解決するために、例えば特許文献1に記載されたストリームデータ分散配信方法のような技術がある。特許文献1に記載された技術では、インターネット等のネットワーク環境において、各ノード間でストリームデータの送受信を行うため、各ノードは、上流ノードと下流ノードとの接続関係を示すトポロジ情報を交換して、上流ノードから下流ノードへストリームデータを中継している。このストリームデータ分散配信方法では、各ノード間でトポロジ情報を交換するため、各ノードが自律的に、トポロジ情報を記憶し、更新し、提供する等の管理を行う機能を備えている。また、一般のユーザ端末同士が映像や音声等のストリームデータを受信しつつ、同時に複数台のユーザ端末に対してストリームデータを分岐中継、再配信する工程を次々に繰り返す、所謂、ピュアP2P(Peer to Peer)型配信プラットフォームを実現するサービスも展開されている。このサービスでは、例えば、Gnutellaのような、インターネットを介して個人間でファイルの交換を行うアプリケーションソフトも一部のユーザで利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−169089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の特許文献1のストリームデータ分散配信方法及びピュアP2P型配信プラットフォームでは、以下のような問題が発生する。
【0006】
すなわち、従来のP2P配信プラットフォーム技術では、あるノードのユーザが所望のストリームデータをネットワークを介して検索する場合、そのストリームデータの検索条件を設定した検索クエリをネットワーク上の複数のノードに対してリレー式に送信して、応答されたノードから該当コンテンツをダウンロードするプル型の配信形態をとる。この場合、無作為に検索クエリを発行すると、ノード間で爆発的なトラフィックの氾濫を招き、ストリームデータの配信が不可能となる。また、特許文献1のようなストリームデータ分散配信方法は、ストリームデータの送受信を管理するトポロジーデータはセンターサーバで管理している、すなわちコンテンツ配信処理の一部には依然センターサーバが用いられるため、センターサーバがダウンすると、系全体の動作が不安定になってしまうという信頼性のリスクを抱えている。また、上記従来の技術では、各ノード間の接続状態やノード自身の嗜好状態が、時間の経過と共に動的に変化する下で、効率的にメッセージを配信することはできなかった。効率的にメッセージを配信するとは、例えば所望のメッセージを、できるだけノード自身の嗜好状態に適合性の高いノードに対して送ることを示す。ノード間の接続状態や嗜好状態の変化を逐次、センターサーバにて全て管理することは可能ではあるが、ノード数の増加と共にその処理量が爆発的に増大し、サーバのコストが肥大化してしまうという課題がある。
【0007】
また、GnutellaなどのP2P型のメッセージ配信を用いた先行例による方式を採用する場合、メッセージ数がノード数Nのn乗にて等比級数的に増大し、かつノードの属性とメッセージ内容の適合性が考慮されないため、効果の薄いメッセージの配信数が大幅に増え、メッセージ転送に必要なNW帯域やCPU能力の資源を浪費してしまうという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するものであり、各ノードが任意に繋がったオーバレイネットワークにおいて、各ノードの接続状態や嗜好状態の動的な変化に対応して、所望のメッセージをできるだけ適合性の高いノードへ配信することを実現するメッセージ配信装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明のメッセージ配信装置は、ネットワークを介して相互に接続された複数のノードに対してメッセージを配信するメッセージ配信装置であって、前記ネットワークにおける他のノードに対して発信するメッセージを生成する初期メッセージ生成配信部と、前記ネットワークを介して前記他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御部とを備え、前記通信制御部は、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出し、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送することを特徴とする。
【0010】
これにより、メッセージ配信装置において、配信先となる他のノードの属性情報に基づき効率的なメッセージ配信が可能となる。このとき、中央管理サーバによる処理を伴わないので、中央管理サーバ準備のコストも不要となり、収容端末数が増えても、中央管理サーバの負荷を抑制することが可能となる。また、システムとしては、中央サーバの信頼性に依存せずに安定なメッセージ配信を行うことが可能となる。
【0011】
また、前記通信制御部は、前記メッセージを受信した他のノードから送信されたメッセージに含まれる情報であって、前記他のノードにおける前記メッセージに対するアクションに関する情報を含む経過情報ログを受信し、前記メッセージ配信装置は、さらに、前記メッセージに対するアクションに関する情報を含む情報を、属性情報として前記他のノードごとに管理する属性情報記憶部を備えるようにしてもよい。
【0012】
また、前記通信制御部は、前記メッセージに含まれるアクションに関する情報に基づき、コンテンツを配信すべきノードの候補を算出し、前記算出されたノードの候補に対して、再度コンテンツを含むメッセージを送信するようにしてもよい。
【0013】
このとき、前記メッセージに対するアクションは、前記メッセージを参照したか否かに関する情報であることとしてもよい。
【0014】
また、前記メッセージは複数のリンクボタンを含み、前記メッセージに対するアクションは、前記メッセージを参照する際に最初に押下した前記リンクボタンに関する情報であることを特徴としてもよい。
【0015】
これにより、メッセージを配信された他のノードにおけるアクションを考慮して、効率的にメッセージを配信するための候補となるノードを算出することができる。
【0016】
また、前記メッセージ配信装置は、さらに、前記他のノードごとに、前記他のノードが保持するリンク状態に関する情報を含むリンク情報を記憶するリンク情報記憶部を備え、前記通信制御部は、前記他のノードから受信した前記メッセージに含まれる経過情報ログと前記リンク情報とに基づきリレー確率の算出を行うことにより、前記ノードの候補を算出してもよい。
【0017】
これにより、他のノードが保持するリンク数を考慮して、効率的にメッセージを配信するための候補となるノードを算出することができる。
【0018】
また、前記属性情報は、前記他のノードの上り回線帯域に関する情報を含み、前記通信制御部は、前記ノードの候補のうち、所定の帯域以上の上り回線帯域を有するノードに対して前記メッセージの配信を行うこととしてもよい。
【0019】
これにより、メッセージを配信された他のノードにおけるアクションや他のノードが保持するリンク数を考慮して算出された候補となるノードのうち、さらにメッセージ配信の効率が高いノード対してメッセージの配信を行うことが可能となる。
【0020】
また、前記経過情報ログは、前記他のノードにおけるリンク数に関する情報を含み、前記通信制御部は、前記リンク数が所定の値以上の他のノードにおいて前記メッセージが受信された場合にメッセージ配信を停止するようにしてもよい。
【0021】
これにより、十分大きな数のノードへメッセージのコピーがリレーされた場合には、送信元ノードからそれ以上のメッセージ配信を行うことがなくなるため、効率的なメッセージ配信が可能となる。
【0022】
また、前記メッセージ配信装置は、さらに、前記メッセージに対するアクションの履歴を、前記メッセージに記録するメッセージコンテンツ再生部を備えることとしてもよい。
【0023】
これにより、メッセージ配信装置が他の配信元ノードからメッセージを受信した場合に、配信元ノードにおいてメッセージ配信の候補となるノードを算出する際に用いる情報をメッセージに記録することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、中央管理サーバを準備すること無く、接続状態および各ノード自身の属性状態が、時間の経過と共に動的に変化する各ノードの最新状態に適した方法で、メッセージ配信を行うことができる。
【0025】
また、中央管理サーバを介してメッセージ配信を行う場合に生じる、収容端末数の増加による中央管理サーバの負荷の増大とこれに起因したメッセージ配信処理の遅延という問題もない。また、システムとしてみた場合に、中央管理サーバの信頼性に依存せずに安定したメッセージ配信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るネットワークシステムの全体構成を示す図
【図2】本実施の形態に係るメッセージフォーマットの一例を示す図
【図3】本実施の形態に係るリンク情報の一例を示す図
【図4】本実施の形態に係る属性情報の一例を示す図
【図5】本実施の形態に係る配信メッセージを用いた配信処理の模式図
【図6】本実施の形態に係る配信元ノードで実行される配信メッセージ生成処理の一例を示すフローチャート
【図7】本実施の形態に係る受信ノードで実行されるリレー送信制御処理の一例を示すフローチャート
【図8】本実施の形態に係るメッセージ情報の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のネットワークシステムの全体構成を示す図である。
【0029】
図1のネットワークシステム200は、メッセージ配信装置100がインターネット等のネットワークを介して相互に接続されることにより構成される。図1の例では、メッセージ配信装置100の1つをノード1と表現する。また、ノード2からノード9は、それぞれノード1と同等の構成を有するものとする。このようなメッセージ配信装置100は、例えばパーソナルコンピュータやネットワーク家電等の通信機能を有する通信端末装置により実現される。
【0030】
なお、図1のネットワークシステム200は、各ノード1からノード9において保持される、他のノードとのリンク情報により形成された非構造的ネットワークである。ここで、非構造的ネットワークとは、ノード間のリンクが自然発生的に生成されたものであり、メッセージを転送する際の転送経路を選ぶ方法を、あらかじめネットワーク構造的に決めておくことのないネットワークを指す。また、図1ではノード数が9台である場合を示しているが、その台数を特に限定するものではなく、数百台又は数千台以上のノード数を有する非構造的ネットワークに対しても本発明は適用可能であることは勿論である。
【0031】
以下の説明では、ノード間で配信メッセージをリレー転送する処理に関わる技術説明として以下の用語を定義して使用するものとする。
【0032】
ノード接続数:各ノードがリンク情報により他のノードと接続するノードの数。
【0033】
リレー転送数:複数のノードがリレーしながら配信メッセージをリレーするメッセージあたりの転送回数の累計の上限数。
【0034】
リレー複製数:1つのノードから複数のノードへ配信メッセージをリレーする際の、同コンテンツ配信メッセージを渡すノード合計数。
【0035】
図1には、本実施の形態におけるメッセージ配信装置100の機能ブロック図をあわせて示している。メッセージ配信装置100は、入力操作部101と、記憶部102と、同記憶部内にあるリンク情報記憶部102aおよび属性情報記憶部102bと、初期メッセージ生成配信部103と、制御部104と、表示部105と、通信制御部106と、同通信制御部内にあるメッセージ配信条件管理部107と、メッセージコンテンツバッファ108と、メッセージコンテンツ再生部109から構成される。図1の例では、前述のとおり、ノード2からノード9も同様の構成を有するものとする。
【0036】
入力操作部101は、キーボードやマウス等の入力デバイスから構成され、ユーザによる通信に関する操作や、コンテンツ配信の為の操作等をする際に利用し、その入力信号を制御部104に出力する。
【0037】
記憶部102は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリから構成され、メッセージ配信装置100を制御する為の制御プログラム、メッセージ配信の為の送信制御プログラムや、コンテンツ再生の為の再生制御プログラム等を記憶する。また、記憶部102は、他のノードとのリンク情報を記憶するリンク情報記憶部102aと、ノードに関する属性情報(住所、加入インターネットプロバイダ、上り帯域、等)を記憶する属性情報記憶部102bを含む。
【0038】
初期メッセージ生成配信部103は、メッセージ配信装置100が発信するメッセージを生成するプログラム、および生成されたメッセージを記憶する。また、初期メッセージ生成配信部103は、メッセージを生成するためのフォーマットである配信メッセージフォーマットを格納する。配信メッセージフォーマットの詳細は後述する。
【0039】
初期メッセージ生成配信部103にて生成されるメッセージ例を図2に示す。メッセージは、上段に示すメッセージフォーマットに、下段に示す情報の他、各部に具体的情報を格納することにより生成される。ここで、TTL部はメッセージの繰り返しリレー回数をカウント保管するエリア、リレー部はメッセージをリレーする確率の設定値を保持するエリア、コンテンツ部は写真や文字などのメッセージの内容を保持するエリア、経過情報ログ部はメッセージを受け取ったそれぞれのノードがメッセージに自ノードの処理状況を書き込むエリアである。メッセージフォーマットを構成する各部の詳細は後述する。
【0040】
制御部104は、記憶部102に記憶された制御プログラムに基づいて、メッセージ配信装置100内の各部を制御して、メッセージ配信装置100としての動作を制御する。例えば、コンテンツ配信メッセージを受信した際のリレー送信制御処理を行う。リレー送信制御処理の詳細は後述する。
【0041】
表示部105は、入力操作部101の操作により制御部104から入力される表示情報の表示や、上記制御部104において実行される各種処理において入力される表示情報等を表示する。表示部105の機能としては、表示出力の機能があれば良く、例えば具体的な表示を行うために外部接続された可般型のディスプレイデバイスなどを用いても良い。また、本実施の形態ではメッセージ配信装置100は表示部105を備えるとしているが、表示部105にかえて出力機能を有するインターフェースを備え、メッセージ配信装置100に接続された表示装置に表示部105が行う動作をさせるようにしてもよい。
【0042】
通信制御部106は、ネットワークシステム200と接続するI/F機能と、ネットワークシステム200を介して他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御機能とを有する。通信制御部106は、ネットワークシステム200を介して他のノードからメッセージを受信し、そのメッセージを制御部104に出力する。また、通信制御部106は、リンク関係にある他のノードに対してメッセージをリレー配信する。このとき、リレー配信するメッセージは、例えば、制御部104から入力される、設定情報が追記されたメッセージである。また、リンク関係にある他のノードは、例えば、リンク情報記憶部102aに格納されたリンク情報に基づいて特定される。図3にリンク情報の一例を示す。図3の例では、相手ノードごとに、そのノードが保持するリンク数、リンク相手のIPアドレス、リンク相手までのRTT(Round Trip Time:リンク相手までのネットワーク的な距離)と言った情報を保持している。図3の例では、ノード1からノード2(IPアドレス192...2)へのパスはRTTが15msecであり、かつリンク先IPの先頭に記述された○印は、該パスがリレーに用いられたことを示す。続いて、ノード2からノード3(IPアドレス192...3)へのパスはRTTが100msecであったことを示している。
【0043】
このようなリンク情報は、図2示したメッセージフォーマット内の追加情報部に、後述するメッセージ配信のリレーステップに従って、それぞれのリンク状態に関する情報が記述される。そして、この追加情報部に記録されたリンク情報を切り出して、図2の102aのリンク情報記憶部へ記録し、後述する配信先ノードを選定する際の判定データとして利用する。
【0044】
属性情報記憶部102bは、リンク関係にある相手ノードそれぞれの属性情報を記憶管理する。図4に属性情報の一例を示す。図4の例では、リンク関係にある相手ノードごとに、その相手ノードが保持するリンクの数、ノードの所在、加入しているISPの名称と確保されている上り転送帯域、該当メッセージに対して行ったアクション内容を管理している。
【0045】
メッセージ配信条件管理部107は、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報を管理する。通信制御部106は、配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出する。そして、通信制御部106は、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送する。例えば、門真市地域で行方不明になった「たずね犬」のメッセージを配信する場合に、居住地域が門真市周辺であったり、飼い犬を所有するといった属性情報を持つノードについては適合性が高いと判断する。配信適合性の算出例についての詳細は後述する。
【0046】
メッセージコンテンツバッファ108は、メッセージに添付された写真や動画などのコンテンツ情報を一時的に蓄える。メッセージコンテンツバッファ108は、例えば、コンテンツデータの書き込みと読み出しが可能なフラッシュメモリ等の半導体メモリから構成される。
【0047】
メッセージコンテンツ再生部109は、メッセージコンテンツバッファ108に一時的に蓄えられたコンテンツ情報を、制御部104を介して表示部105に表示させる。メッセージコンテンツ再生部109は、例えば、音楽データ、映像データ、静止画データ及びテキストデータを再生する再生機能を有する。
【0048】
次に、本実施の形態に係るメッセージ配信装置100における、配信の初期メッセージ生成手順について説明する。なお、この説明においては、ネットワーク構成は図1に示すものであるとし、ノード1がメッセージ配信を行うものとし、ノード1をはじめとする各ノードがメッセージ配信装置100の構成を有するものとする。
【0049】
ノード1は、ネットワークシステム200を介して各ノード1〜9間でメッセージをリレー配信するために、初期メッセージ生成配信部103に格納された配信メッセージフォーマットを用いて配信メッセージを生成する。なお、配信メッセージフォーマットの詳細は後述する。そして、この配信メッセージ内のコンテンツ部に、受信ノードにおいて表示するコンテンツを設定して次ノードへ送信する。なお、次ノードへの送信は、後述するリレー送信制御処理により行う。
【0050】
以上が配信の初期メッセージ生成手順である。
【0051】
次に、配信メッセージの概要について説明する。
【0052】
配信メッセージとは、配信元となるノード1からネットワークシステム200のノードに対してメッセージ配信のためのノードの接続状態、属性状態や、ネットワークの状態を問い合わせるプッシュ型のメッセージであり、P2Pアプリケーションを搭載したノード間でコンテンツをバケツリレー式に転送させるために、ノードや網の状態をプローブするために利用されるものである。
【0053】
図5は、配信メッセージを用いた配信処理の模式図である。図5において、ノード1からノード5は、ネットワークシステム200でそれぞれ相互接続されている。まず、ノード1が配信メッセージをノード2へ配信し、続いてノード2はノード3へ、ノード3はノード4へ、ノード4はノード5へ、と次々にリレー配信するものとする。仮にメッセージ配信実行時に、転送繰り返し回数(後述するTTL)として4が設定されていたとすると、4回転送を繰り返したノード5のところで転送は終了し、配信メッセージは配信要求を開始したノード1へ戻される。ここで、ノード1は、配信メッセージ内に書き込まれた、各ノードの状態やユーザの起こしたアクションなどの情報を解析し、実際のコンテンツを配信すべきノードの候補を算出し、そのノードに対して、再度メッセージに載せた必要コンテンツを送付する。
【0054】
以下、配信メッセージの詳細について説明する。
【0055】
図2は、配信メッセージフォーマットの例である。図2の例では、配信メッセージフォーマットは、TTL(Time To Live)部と、リレー部と、コンテンツ部と、経過情報ログ部、追加情報部から構成される。なお、図2内の経過情報ログ部には、図4に示した属性情報に相当する情報が含まれる。
【0056】
TTL部とは、配信メッセージの有効期限を設定する配信制御用パラメータである。例えば、TTL部にリレー転送数を設定しておき、配信メッセージを受信したノードがリンク先のノードに配信メッセージをリレー配信する際にリレー転送数を減算させ、リレー転送数が「0」になったときに配信メッセージの転送を停止させることにより、ノード間でリレー転送される配信メッセージの配信状態を制御することが可能になる。また、TTL部に時間情報を設定しておき、ノード間で配信メッセージを配信中に時間情報がタイムアップしたときに配信メッセージの送信を停止させるようにしてもよい。なお、時間情報には、「12時」のような時刻と、配信してから「30分」のような配布期間がある。
【0057】
なお、TTLが0になる、もしくは配信の残り時間が0となった場合、該メッセージは、あらかじめメッセージ内のTTL部に記録された配信元ノードのIPアドレス(この場合はノード1のIPアドレス)へ返送される。この操作の後、配信元のノードは、メッセージ内に記録された各ノードの処理内容等の履歴情報を分析することにより、現在のネットワークの状態を推定し、ノードの属性状態やネットワークの動的な変化に応じた適切なメッセージ配信方法を選択することが可能となる。このようなメッセージ配信方法の選択の詳細については後述する。
【0058】
リレー部とは、1つのノードから配信メッセージを他のノードへリレー配信する際のノード数(以下に説明する「リレー複製数」と同義)を設定する配信制御用パラメータである。例えば、リレー部にリレー複製数を設定しておき、配信メッセージを受信したノードがリレー部に設定されたリレー複製数に基づいて配信メッセージを配信するノード数を決定させることにより、1つのノードから他のノードに配信メッセージがリレー配信される際のリレー数、すなわち、リレー複製数を制御することができ、その結果としてネットワークシステム200全体で発生するトラフィック量を閾値以下に制御することが可能になる。また、リレー部にノード数の分配率を設定しておき、1つのノードが保持するリンク先のノード数に分配率を乗算させてコンテンツ配信メッセージを配信するリレー転送数を決定させるようにしてもよい。
【0059】
コンテンツ部には、メッセージを受信したノードのユーザに提示したいコンテンツと、コンテンツ配信元ノードが「メッセージを見て欲しい」と考えるユーザの属性情報を設定しておく。例えば、図5において、「たずね犬」のメッセージを配布する場合、図8に示すような「たずね犬」のポスターを作成し、図2の配信メッセージフォーマット内の追加情報部に添付する。この場合に期待するユーザ属性情報としては、探したい地域、ユーザの犬への興味度合い、報酬額などであり、配信メッセージを受信したノードがどの属性に反応したか、などを識別する情報をメッセージ内に記録することで、同メッセージ回収後に、より効果的な詳細メッセージの配信を行うことが可能となる。このようなメッセージ配信方法の詳細については後述する。
【0060】
次に、配信メッセージを受信したノードにおける処理の概要について説明する。
【0061】
配信メッセージを受信したノードでは、制御部104により、配信メッセージのコンテンツ部から取得されたコンテンツデータがメッセージコンテンツバッファ108に書き込まれるとともに、メッセージコンテンツ再生部109により再生用のコンテンツデータが読み出される。
【0062】
メッセージコンテンツ再生部109は、制御部104から再生コンテンツが指示されると、制御部104を介して記憶部102から再生制御プログラムを読み出してコンテンツ再生処理を実行する。このコンテンツ再生処理では、メッセージコンテンツ再生部109は、メッセージコンテンツバッファ108からコンテンツデータを読み出して再生する。メッセージコンテンツ再生部109は、再生データが映像データ又は静止画データの場合は、その再生データを制御部104を介して表示部105に表示する。また、メッセージコンテンツ再生部109は、音楽出力機能を有し、再生データが音楽データの場合は、その再生中の音楽を出力する。
【0063】
また、前記再生処理実行時に、ユーザが起こしたアクション内容は、配信メッセージ内の経過情報ログ部に記録され、ユーザの嗜好状態を推定するため等の目的に、同メッセージ回収後の分析作業にて使用可能である。ユーザが起こしたアクションとは、メッセージに対してどのような行動を起こしたか、であり、例えば「xxについてのリンクをクリックした」、「何も行わなかった」などが挙げられる。
【0064】
次に、メッセージ配信装置100において実行される配信メッセージ生成処理について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。なお、この説明において、配信メッセージ生成処理を行うメッセージ配信装置100は、図1におけるノード1であるとする。
【0065】
まず、初期メッセージ生成配信部103は、制御部104を介して入力操作部101から入力される配信メッセージ生成指示の有無を判別する(S101)。
【0066】
配信メッセージ生成指示が入力されたことを判別すると(S101がYES)、TTL部及びリレー部の各設定値の入力を促す設定案内表示情報を制御部104を介して表示部105に出力して、TTL部及びリレー部の設定入力画面を表示し(S102)、何回リレーを繰り返すかといったリレー転送数、およびリレーする分配率などをユーザに設定させる。配信メッセージ生成指示が入力されていない場合(S101がNO)は、S101に戻り配信メッセージ生成指示の入力を待つ。
【0067】
次いで、初期メッセージ生成配信部103は、設定表示画面に基づく入力操作部101からのTTL値とリレー値の入力の有無を判別する(S103)。入力されるTTL値とリレー値は、例えば、TTL値としてリレー転送数「4」、リレー値として分配率「0.5」といったものである。初期メッセージ生成配信部103は、制御部104を介して入力操作部101からTTL値とリレー値が入力されたことを確認すると(S103がYES)、その各入力値をTTL部及びリレー部に設定する(S104)。TTL値とリレー値が入力されていない場合(S103がNO)は、S103に戻りTTL値とリレー値の入力を待つ。
【0068】
次に、初期メッセージ生成配信部103は、コンテンツ部に設定するコンテンツの入力を促すコンテンツ設定案内表示情報を、制御部104を介して表示部105に出力して、コンテンツ入力又は選択用の設定入力画面を表示させる(S105)。コンテンツ設定案内表示情報とは、ユーザに対してメッセージに添付するコンテンツの設定を促す表示である。この画面より、ユーザはコンテンツを直接指定して入力するか、もしくは選択肢として挙げられたコンテンツ一覧より適当なコンテンツを選択しても良い。コンテンツ部へのコンテンツの設定は、ユーザが用意するコンテンツデータを入力するようにしてもよいし、記憶部102に配信用のコンテンツデータが予め記憶されている場合は、そのコンテンツのファイル名等を表示部105に表示させて、コンテンツの選択を促すようにしてもよい。
【0069】
次いで、初期メッセージ生成配信部103は、設定入力画面に対する入力操作部101からのコンテンツデータの入力、又はコンテンツデータの選択の有無を判別する(S106)。初期メッセージ生成配信部103は、コンテンツデータの入力、又はコンテンツデータの選択を確認すると(S106がYES)、入力、又は選択されたコンテンツデータをコンテンツ部に設定する(S107)。コンテンツデータの入力、又は選択がされていない場合(S106がNO)は、S106に戻りコンテンツデータの入力、又は選択を待つ。
【0070】
次に、初期メッセージ生成配信部103は、コンテンツ部に設定するユーザ属性情報の入力を促すユーザ属性情報設定案内表示情報を制御部104を介して表示部105に出力して、ユーザ属性情報の設定入力画面を表示させる(S108)。ユーザ属性情報設定用の入力画面とは、例えばユーザの居住地などのユーザの属性情報の設定を促す画面である。この時、ユーザ属性情報は、例えば、記憶部102に予め記憶したユーザ属性情報を表示部105に表示させて、ユーザに選択させるようにしても良いし、ユーザにより自由にユーザ属性情報を入力させるようにしても良い。
【0071】
次いで、初期メッセージ生成配信部103は、設定入力画面に基づく入力操作部101からのユーザ属性情報の入力の有無を判別する(S109)。ユーザ属性情報としては、例えば、「横浜市内に居住する人」といった情報が入力される。ユーザ属性情報の入力を確認すると(S109がYES)、そのユーザ属性情報「横浜市内に居住する人」をコンテンツ部に設定する(S110)。ユーザ属性情報が入力されていない場合(S109がNO)は、S109に戻りユーザ属性情報の入力を待つ。
【0072】
さらに、初期メッセージ生成配信部103は、コンテンツのファイル名と、当該コンテンツの存在場所を示す配信元ノード(ここではノード1)のIPアドレスとを履歴情報としてコンテンツ部に設定し(S111)、本処理を終了する。
【0073】
以上で説明した配信メッセージ生成処理の後、初期メッセージ生成配信部103は、生成した配信メッセージと送信指示とを制御部104を介して通信制御部106に出力する。通信制御部106は、制御部104を介して初期メッセージ生成配信部103から配信メッセージと送信指示が入力されると、ネットワークシステム200を介してノードに配信メッセージを送信する。図1の例では、ノード1からノード2、ノード3、ノード4に配信メッセージが送信される。
【0074】
なお、上記配信メッセージ生成処理では、コンテンツ部に、ユーザ属性情報と、履歴情報と、コンテンツデータと、を設定する場合を説明したが、コンテンツデータが大容量である場合は、配信メッセージに全てを設定することは不可能なので、コンテンツデータを分割して、その分割したデータ毎に連続するファイル名と、その分割データの存在場所を示す配信元ノード1のIPアドレス+サブアドレスとを履歴情報として、コンテンツ部に設定するようにしてもよい。
【0075】
次に、コンテンツ配信メッセージを受信したメッセージ配信装置100において実行されるリレー送信制御処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。この説明においては、コンテンツ配信メッセージを受信したメッセージ配信装置100は図1におけるノード2であるとする。
【0076】
まず、制御部104は、通信制御部106からの配信メッセージ受信の有無を判別する(S201)。配信メッセージの受信がない場合(S201がNO)、S201に戻り配信メッセージの受信を待つ。配信メッセージの受信がある場合(S201がYES)、制御部104は、その配信メッセージのコンテンツ部に設定されたユーザ属性情報を読み出す(S202)。ユーザ属性情報は、例えば、配信メッセージを用いた配信処理(図3)の説明で示した「横浜市内に居住する人」といったものである。
【0077】
続いて、通信制御部106は、属性情報記憶部102b予め記憶されたユーザ属性情報に、受信した配信メッセージに設定されたユーザ属性情報と一致する属性情報があるか否かを判別する(S203)。
【0078】
一致するユーザ属性情報がある場合(S203がYES)、コンテンツ部に設定されたコンテンツデータを読み出してメッセージコンテンツバッファ108に保存するとともに、コンテンツ再生指示をメッセージコンテンツ再生部109に出力して、コンテンツの再生を実行させる(S204)。一致するユーザ属性情報がない場合(S203がNO)、次ノードへの送信準備へ入るためにS205へ進む。
【0079】
メッセージコンテンツ再生部109は、コンテンツ再生指示が入力されると、メッセージコンテンツバッファ108に保存されたコンテンツデータを読み出して表示部105への映像表示、静止画表示や、音声出力等を実行する。このときの映像表示、静止画表示や、音声出力は強制的なものであってもよい。
【0080】
入力操作部101は、前記表示部105の表示内容に対してユーザが行った任意のアクションを受け付ける(S205)。例えば、表示内容が後述する図8のようなたずね犬に関するものであり、例えば「たずね犬の特徴」と言ったボタンの押下を受け付ける。このような入力を受け付けると、メッセージコンテンツ再生部109は、さらに詳細な情報を表示部105上に表示すると共に、メッセージコンテンツ再生部109は、アクションの履歴を、配信メッセージ内の経過情報ログ部を構成するメッセージ処理部に記録する。このような履歴情報が記録された配信メッセージは、その配信リレー回数を完了した後、配信元となるメッセージ配信装置100へ送信される。配信元となるメッセージ配信装置100は、履歴情報が記録された配信メッセージを受信し、記憶部102へ蓄積する。このようにして蓄積された配信メッセージは、ユーザの嗜好状態を推定するため等の目的に向け、ユーザの起こしたアクションの内容を分析することができる。
【0081】
次に、制御部104は、コンテンツ配信メッセージのTTL部及びリレー部に設定されたTTL値とリレー値を読み出し(S206)、リンク情報記憶部102aに記憶された他のノードとのリンク情報を読み出す。TTL値とリレー値は、例えば図3の説明で示したリレー転送数「4」、分配率「0.5」といったものである。また、このリンク情報は、リンク情報記憶部102a内に蓄積された自ノードとのリンクを保持する相手ノードの管理番号である。
【0082】
制御部104は、リレー複製数を算出する(S207)。ここで、リレー複製数とは、メッセージを複製転送する相手ノードの総数であり、その一例として、ノード接続数をリレー値(分配率「0.5」)で乗算することにより得ることができる。この時、ノード2である通信端末装置が記憶するリンク情報のノード接続数が「6」であったとすると、乗算結果は「3」となる。すなわち、リレー複製数「3」が得られる。
【0083】
なお、リレー値として分配率ではなく直接リレー複製数を使うこともできる。但し、直接リレー複製数を利用する場合、指定したリレー複製数がノード接続数より大きいことがある。そのような場合は、リレー複製数をノード接続数に合わせる。
【0084】
次に、制御部104は、リレー先のノードにメッセージをリレー配信する(S207)。このとき、リレー先のノードは、乗算したリレー複製数のノードをリンク情報に基づいて選択する。また、1回転送を実行したため、配信メッセージ内のTTL部に記述されたTTL値(リレー転送数「4」)を1つ減算し、「3」を新たにTTL部へ設定する。
【0085】
次に、制御部104は、リレー配信の停止条件を満たすか否かを判断する(S208)。例えば、メッセージ内に設定したTTL値が0か否かを確認し、0でない場合、すなわちリレー配信の停止条件を満たさない場合(S208がNO)はそのまま本処理を終了する。0の場合、すなわちリレー配信の停止条件を満たす場合(S208がYES)はメッセージを配信元のノードに返送し、本処理を終了する。
【0086】
図1の例では、ノード1は、ノード2〜4にコンテンツ配信メッセージをリレー配信しているが、この場合、TTL値(リレー転送数「4」)を1つ減算したTTL値(リレー転送数「3」)がTTL部に設定され、コンテンツ部に設定されたコンテンツ存在場所がノード1のIPアドレスに書き換えられたコンテンツ配信メッセージがノード2〜3にリレー配信される。
【0087】
以上のリレー送信処理は、ノード1から配信メッセージを受信したノード3〜4においても同様に実行される。例えば、ノード1からコンテンツ配信メッセージを受信したノード3では、ユーザ属性情報を照合して異なる場合は、コンテンツ再生は実行されずに、配信メッセージは他のノード、図1に示すようにノード4,7,6にリレー配信される。この時、ノード3のノード接続数は6であるが、上記リレー値(分配率「0.5」)により、配信メッセージのリレー複製数は3となるが、送信元のノード1は配信先から除外される。このリレー複製数が、実際のリレー配信先候補数より小さい場合、配信先ノードを選択する必要が生じる。この場合、図2の102aにあるリンク情報管理部が、それぞれの相手ノードに対するリンク状態を評価し、例えば「よりTTL値の小さい(即ちNW的な距離が近い)ノード」を優先的に選択する。
【0088】
そして、ノード3では、TTL部のリレー転送数は「3」から「2」に1つ減算され、続いてノード3から配信メッセージを受信するノード4,7,6では、TTL部のリレー転送数は「2」から「1」に1つ減算され、ノード4,7,6から配信メッセージを受信するノード8〜9では、TTL部のリレー転送数は「1」から「0」に1つ減算される為、これらのノード8〜9からリンク先の他のノードへのコンテンツ配信メッセージのリレー配信は停止される。
【0089】
TTL部が0となったノード9では、配信メッセージのコンテンツ部に記述された配信元ノードのIPに基づき、ノード1へ返送する。(ステップS209)この操作により、配信元ノードであるノード1は、図2の配信メッセージ内の経過情報ログに記録された、配信履歴情報を解析することで、時間の経過と共に動的に変化する各ノード間の接続状態および各ノード自身の属性状態を推定し、各ノードの最新状態に適した方法でメッセージ配信を行う。
【0090】
また、上記で述べたリレー配信の停止条件については、TTL部が0となるか否かの他に、ジャイアントノードと呼ばれるリンク数が大きいノードに配信メッセージが受け取られ、その次のノードへリレーを行った直後とすることもできる。これは、ジャイアントノードが多数のノードへリレーを行うためであり、十分大きな数のノードへメッセージのコピーがリレーされたと考えられることによる。ジャイアントノードの定義については、配信の都合によって適宜決めれば良く、例えば「リンク数が50以上のノード」と言った設定がある。このような配信条件は、初期メッセージ生成時に、図2の追加情報部に追加配信条件として書き込まれ、配信メッセージと共に転送される。それぞれのノードが保持するリンク数は、各ノードのリンク情報記憶部102aに記憶されており、このリンク数と、前記配信条件とを比較することにより、メッセージ配信停止条件の判定を行う。
【0091】
次に、上記、配信元ノードが受け取った配信メッセージ内の経過情報ログに基づき、リレー確率の算出を行うアルゴリズム例について説明する。
【0092】
各ノードが保持するリンク数に従い、リレー確率の値を個別に算出する。あらかじめ配信元にて設定したリレー確率に、一様に従うのでは無く、例えばリンク数が大きい(例えば10以上)ノードにおいては、リレー確率を小さく(例えば0.4)設定し、逆にリンク数が小さい(例えば4以下)ノードにおいては、リレー確率を大きく(例えば0.8)設定するようにする。この操作により、突然配信メッセージ数の数が増大したり、また消失したりすることを回避することが可能となる。
【0093】
また、各ノードの次一つ先のノードのリンク数(即ち自ノードより2ホップ先のノードのリンク数)を用いて、同様の判定を行う方法も可能である。これは、隣接ノードの保持するリンク数を、常にお互いがアップデート保存することにより実現可能となる。この方法により、配信メッセージ数の増減を平準化することが可能となる。
【0094】
配信元ノードにおける、メッセージ配信のリレー確率の算出にあたっては、回収した配信メッセージ内の経過情報ログより、各ノードのリンク数の平均を算出し、その平均値より適切なリレー確率を設定することができる。これは、配信元ノードは、あらかじめネットワーク内の各ノードのリンク数を知ることが出来ないためであり、仮に本方式による配信メッセージ回収による情報による判断をできなければ、全くの想像によるリレー確率の設定となり、メッセージ配信の効率は極めて悪いものとなりかねない。
【0095】
また、配信メッセージ内への経過情報ログへの、自ノードに関する情報記録については、自ノードの情報提供可否を確認した後とすることで、情報提供意向の反映を行うことが可能である。
【0096】
また、メッセージ配信のリレー確率設定については、あらかじめ設定を行わず、各ノードのユーザアクションを受けてから、どのノードへリレーするかを決めることも可能である。これは即ち、各ノードの持つ属性強度と配信メッセージの適合性を評価し、その結果を反映してリレーを行うこととなる。配信元ノードが受け取った配信メッセージ内の経過情報ログに基づき、ノードの属性強度を判定する事例について説明する。
【0097】
ノードの属性強度の判定としては、ステップS205で説明した、メッセージに添付された情報をユーザに提示した場合の、ユーザのアクション内容に従って、転送アルゴリズムの変更を行う方法がある。以下、図8のメッセージ情報例を用いて説明する。
【0098】
図8は、メッセージに添付された「たずね犬」を知らせるメッセージ情報例である。これを見たユーザのアクションによって、例えば次の種類が考えられる。
【0099】
ユーザが該メッセージコンテンツの表示を見た後、その表示ウィンドウを閉じた場合(read and forward)には、その最初に押したリンクボタンの種別により興味対象を評価する。図8の501に示した「たずね犬の特徴」情報であれば、犬に対する興味が強いと判断できる。図8の502に示した「迷子になった地域」情報であれば、地域に対する興味が強いと判断できる。図8の503に示した「懸賞金」であれば、報酬に対する興味が強いと判断できる。これより、まずは502の「迷子になった地域」情報に興味を持ったノードを抽出し、リレーリストを生成し、さらに詳細な「たずね犬」メッセージを発信することが可能である。ここで述べたリレーリストとは、配信したいメッセージコンテンツの内容に鑑みて、配信先ノードの一覧を配信優先順位に従って生成したリストである。
【0100】
例えば、ユーザが該メッセージコンテンツの表示を見た後、詳細情報を確認した上で「とりおき」ボタンを押してその表示ウィンドウを閉じた場合(read, store and forward)には、該メッセージへの興味は強いと判断し、詳細情報送出時には、リレーリスト上の配信の優先度を上げる。
【0101】
ユーザが該メッセージコンテンツの表示を見ること無く、もしくは全く詳細表示を行わず、かつ「とりおき」ボタンも押さずに表示を終了した場合(no interest)には、興味が低いと判断し、詳細情報送出時には、リレーリスト上の配信優先順位を下げる。
【0102】
また、配信優先順位の判定、および詳細情報送出時のリレーリスト上の配信優先順位設定について、特定のアルゴリズムを適用せずに、配信元ノードのユーザに返ってきた配信メッセージ内の履歴情報を見せることで、配信元ユーザ自身に、例えば「地域優先」などの配信条件を設定させても良い。
【0103】
また、配信優先順位の判定、および詳細情報送出時のリレーリスト上の配信優先順位設定について、ユーザがとった対応アクションに重要度付け(例:配信メッセージを読んだ場合は5点、配信メッセージの参考情報リンク先ボタンを押すなどのアクションを起こした場合は10点、配信メッセージを読まずに閉じた場合は0点)を行い、合計ポイントで高いノードを選択し、リレーリストを設定することも可能である。
【0104】
また、例えばHD動画ストリームを、P2Pアプリケーションを搭載したノード間でコンテンツをバケツリレー式に転送させることを考える場合、配信メッセージの履歴情報内に書かれている「各ノードが保持する上り帯域」より、HD動画ストリーム配信に十分な例えば10Mbps以上のノードを選択し、リレーリストを設定することもできる。
【0105】
なお、上記配信メッセージを配信するための通信プロトコルとしては、例えば、既存のオーバーレイネットワーク(例えば、Gnutella)の上で動作するアプリケーションとして実装可能である。配信メッセージを配信するために必要なネットワークインフラは、何らかの形でノード同士がリンクを介して接続され、それぞれのノードが接続相手先のアドレスを保持しているようなネットワークである。また、コンテンツ配信メッセージの授受に使用する下位プロトコルとしては、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、又はHTTP(HyperTextTransfer Protocol)等何でも構わない。
【0106】
以上のような構成により、本発明に係るメッセージ配信装置は、各ノードが任意に繋がったオーバレイネットワークにおいて、各ノードの接続状態や嗜好状態の動的な変化に対応して、所望のメッセージをできるだけ適合性の高いノードへ配信することが可能となる。
【0107】
この方法によれば、中央管理サーバを準備すること無く、接続状態および各ノード自身の属性状態が、時間の経過と共に動的に変化する各ノードの最新状態に適した方法で、メッセージ配信を行うことができる。言わば、ばらまき型でありながら、メッセージ配信の効率を向上させることが可能となる。
【0108】
また、配信元となるメッセージ配信装置において、メッセージ配信に必要となる情報の管理を行うとともにメッセージ配信処理を行うので、中央管理サーバ準備のコストも不要となる。すなわち、中央管理サーバを介してメッセージ配信を行う場合に生じる、収容端末数の増加による中央管理サーバの負荷の増大とこれに起因したメッセージ配信処理の遅延という問題もない。また、システムとしてみた場合に、中央管理サーバの信頼性に依存せずに安定したメッセージ配信を行うことが可能となる。
【0109】
例えば、発生する検索トラフィック量(=メッセージ数)を概算すると、従来方式であるメッセージばらまき方式では、平均リンク数を3、メッセージのリレー回数TTL=5とすると、総メッセージ数は3の5乗であり、243となる。一方、本方式により、平均リンク数を3(転送確率0.5)、メッセージのリレー回数TTL=7とすると、(3×0.5)の7乗であり、総メッセージ数は17.09となる。即ち、発生するトラフィック量のみに着目すれば、1/10以下となり、かつ、嗜好への適合性も確保可能となる。
【0110】
以上の実施の形態で示したメッセージ配信装置のプロセッサおよびそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるためのプログラムコードからなるプログラムを、記録媒体に記録すること又は各種通信路等を介して流通させ頒布することもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROMなどがある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出されうるメモリなどに格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより各実施形態で示したような機能が実現されるようになる。なお、制御プログラムの一部を画像管理装置とは別個のプログラム実行可能な装置(プロセッサ)に各種ネットワークを介して送信して、その別個のプログラム実行可能な装置においてその制御プログラムの一部を実行させることとしてもよい。
【0111】
以上の実施の形態で示したメッセージ配信装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1又は複数の集積回路(IC、LSIなど)として実装されることとしても良く、メッセージ配信装置の構成要素に更に他の要素を加えて集積回路化(1チップ化)されることとしてもよい。
【0112】
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続または設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、各ノードが任意に繋がったオーバレイネットワークにおいて、各ノードの接続状態や嗜好状態の動的な変化に対応して、所望のメッセージをできるだけ適合性の高いノードへ送ることが可能とするメッセージ配信装置に有用である。
【符号の説明】
【0114】
100 メッセージ配信装置
101 入力操作部
102 記憶部
102a リンク情報記憶部
102b 属性情報記憶部
103 初期メッセージ生成配信部
104 制御部
105 表示部
106 通信制御部
107 メッセージ配信条件管理部
108 メッセージコンテンツバッファ
109 メッセージコンテンツ再生部
200 ネットワークシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して相互に接続された複数のノードに対してメッセージを配信するメッセージ配信装置であって、
前記ネットワークにおける他のノードに対して発信するメッセージを生成する初期メッセージ生成配信部と、
前記ネットワークを介して前記他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御部とを備え、
前記通信制御部は、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出し、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送することを特徴とするメッセージ配信装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記メッセージを受信した他のノードから送信されたメッセージに含まれる情報であって、前記他のノードにおける前記メッセージに対するアクションに関する情報を含む経過情報ログを受信し、
前記メッセージ配信装置は、さらに、
前記メッセージに対するアクションに関する情報を含む情報を、属性情報として前記他のノードごとに管理する属性情報記憶部を備えることを特徴とする請求項1記載のメッセージ配信装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記メッセージに含まれるアクションに関する情報に基づき、コンテンツを配信すべきノードの候補を算出し、前記算出されたノードの候補に対して、再度コンテンツを含むメッセージを送信する請求項2記載のメッセージ配信装置。
【請求項4】
前記メッセージ配信装置は、さらに、
前記他のノードごとに、前記他のノードが保持するリンク状態に関する情報を含むリンク情報を記憶するリンク情報記憶部を備え、
前記通信制御部は、前記他のノードから受信した前記メッセージに含まれる経過情報ログと前記リンク情報とに基づきリレー確率の算出を行うことにより、前記ノードの候補を算出する請求項3記載のメッセージ配信装置。
【請求項5】
前記属性情報は、前記他のノードの上り回線帯域に関する情報を含み、
前記通信制御部は、前記ノードの候補のうち、所定の帯域以上の上り回線帯域を有するノードに対して前記メッセージの配信を行うことを特徴とする請求項3または4記載のメッセージ配信装置。
【請求項6】
前記メッセージに対するアクションは、前記メッセージを参照したか否かに関する情報であることを特徴とする請求項2記載のメッセージ配信装置。
【請求項7】
前記メッセージは複数のリンクボタンを含み、
前記メッセージに対するアクションは、前記メッセージを参照する際に最初に押下した前記リンクボタンに関する情報であることを特徴とする請求項2記載のメッセージ配信装置。
【請求項8】
前記経過情報ログは、前記他のノードにおけるリンク数に関する情報を含み、前記通信制御部は、前記リンク数が所定の値以上の他のノードにおいて前記メッセージが受信された場合にメッセージ配信を停止するようにメッセージを生成することを特徴とする請求項2記載のメッセージ配信装置。
【請求項9】
前記メッセージ配信装置は、さらに、
前記メッセージに対するアクションの履歴を、前記メッセージに記録するメッセージコンテンツ再生部を備えることを特徴とする請求項1記載のメッセージ配信装置。
【請求項10】
ネットワークを介して相互に接続された複数のノードに対してメッセージを配信するメッセージ配信装置におけるメッセージ配信方法であって、
前記ネットワークにおける他のノードに対して発信するメッセージを生成する初期メッセージ生成配信ステップと、
前記ネットワークを介して前記他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御ステップとを備え、
前記通信制御ステップでは、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出し、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送することを特徴とするメッセージ配信方法。
【請求項11】
ネットワークを介して相互に接続された複数のノードに対してメッセージを配信するメッセージ配信装置のためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記ネットワークにおける他のノードに対して発信するメッセージを生成する初期メッセージ生成配信ステップと、
前記ネットワークを介して前記他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御ステップとを実行させ、
前記通信制御ステップでは、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出し、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
ネットワークを介して相互に接続された複数のノードに対してメッセージを配信する集積回路であって、
前記ネットワークにおける他のノードに対して発信するメッセージを生成する初期メッセージ生成配信部と、
前記メッセージのリレーする制御部と、
前記ネットワークを介して前記他のノードとの間でのメッセージ配信の為の通信手順を実行する通信制御部とを備え、
前記通信制御部は、他のノードにメッセージを配信するための配信条件情報に基づき、所定のアルゴリズムにより、配信を行うメッセージと他ノードの属性情報との配信適合性を算出し、算出結果にしたがって、次のノードにメッセージを転送することを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239044(P2012−239044A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106836(P2011−106836)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】