説明

メテオリンを有効成分として含む血管新生抑制剤

本発明は、メテオリンを有効成分として含む血管新生抑制剤に関するもので、詳細には、マウス発生の胚芽後期段階と生後段階で脳と網膜の星状細胞に高度に発現されて、特に血管で取り囲まれた星状細胞エンドフィートから検出されて、自己分泌を通じてトロンボスポンジン−1/−2(TSP−1/−2)の発現を促進して血管新生を抑制して、血管の成熟を促進させるメテオリンを有効成分として含む、血管新生抑制剤に関するものである。本発明のメテオリンは、血管新生を抑制することで血管関連疾患予防用薬学的組成物および血管関連疾患予防用健康食品に有用に使用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メテオリン(meteorin)を有効成分として含む血管新生抑制剤に関するもので、より詳細には、マウス発生の胚芽後期段階と生後段階で脳と網膜の星状細胞に高度に発現し、特に血管で取り囲まれた星状細胞エンドフィートから発見され、自己分泌を通じてトロンボスポンジン−1/−2(TSP−1/−2)の発現を促進して血管新生を抑制し、血管の成熟を促進させるメテオリンを有効成分として含む血管新生抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系の血管は、内皮細胞障壁から伸びている星状細胞の突起が包んでいる基底膜によって包まれている(Risau,W.,Nature,1997年,第386巻,671−674頁;Abbott,N.J.,等,Nat.Rev.Neurosci.,2006年,第7巻,41−53頁;Kim,J.H.,等,J.Biochem.Mol.Biol.,2006年,第39巻,339−345頁;Ballabh,P.,等,Neurobiol.Dis.,2004年,第16巻,1−13頁)。内皮細胞障壁は、高度の選択的な透過性を有して脳の微細環境を恒常性を有するように調節するのに重要な役割をする。このような構造を神経血管領域(gliovascular interface)と称する(Abbott,N.J.,等,Nat.Rev.Neurosci.,2006年,第7巻,41−53頁)。虚血のような中枢神経系の病理的状態や神経膠腫がある時、一般的に神経血管領域の構造の変化を伴う。このような変化には、非正常的な血管新生が起きる血管から星状細胞が離れることと血液が漏る所から星状細胞が落ちることが含まれる(Rich,J.N.,and Bigner,D.D Nat.Rev.Drug Discov.,2004年,第3巻,430−446頁;Maher,E.A.,Genes Dev.,2001年,第15巻,1311−1333頁;Lee,S.W.,等,Arch.Pharm.Res.,2006年,第29巻,265−275頁)。ゆえに、星状細胞と内皮細胞との間の相互作用は、神経血管領域で障壁を調節するのに重要な役割をするといえる。しかし、現在このような相互作用を調節する正確な機序は、多くの部分が知られていない。
【0003】
最近、中枢神経系での血管形成は、血管新生と障壁形成(barriergenesis)、この二つの過程によって起きると報告されたことがある(Lee,S.W.,等,Nat.Med.,2003年,第9巻,900−906頁;Rieckmann,P.and Engelhardt,B Nat.Med.,2003年,第9巻,828−829頁;Park,J.A.,等,Ontogeny to Artificial Interfaces,2006年,41−59頁)。特に、発生中の脳と網膜での星状膠細胞は増殖する神経膠細胞から生成される低酸素濃度を感知して血管形成を誘導する(Risau,W.,Nature,1997年,第386巻,671−674頁)。発生が進行するにつれて血管の成熟が始まる。ここで、血管新生を止めて血管の内皮細胞が障壁形成の過程を通じて選択的な透過性を得るようになる(Engelhardt,B.,Cell Tissue Res.,2003年,第314巻,119−129頁;Riasu,W.and Wolburg,H.Trends Neurosci.,1990年,第13巻,174−178頁)。いくつかの研究で、神経血管領域で特徴的な障壁性格を有する成熟した血管を誘導して維持するために、内皮細胞と星状細胞間の相互作用が成り立つと報告された(Risau,W.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1986年,第83巻,3855−3859頁;Janzer,R.C.and Raff,M.C.Nature,1987年,第325巻,253−257頁;Laterra,J.,等,J.Cell Physiol.,1990年,第144巻,204−215頁;Zerlin,M.and Goldman,J.E.J.Comp Neurol.,1997年,第387巻,537−546頁)。神経血管領域の星状細胞は、血管の成長、安定化と成熟の調節子として重要な役割をすると知られている。これは、星状細胞が機能的血管のために必要な多様な因子の発現と分泌を調節して成り立つ(Risau,W.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1986年,第83巻,3855−3859頁;Yonezawa,T.,等,Glia,2003年,第44巻,190−204頁;Haseloff,R.F.,等,Cell Mol.Neurobiol.,2005年,第25巻,25−39頁;Chow,J.,等,Brain Res.Dev.Brain Res.,2001年,第130巻,123−132頁;West,H.,等,Development,2005年,第132巻,1855−1862頁)。分泌した局所的因子の影響下で、血管の内皮細胞は、さらに丈夫で広い細胞間連接を形成するようになる。
【0004】
一方、本発明者等は、血管成熟に関与する星状細胞媒介シグナルを明らかにするために、星状細胞で遺伝子発現の酸素調節に対して調査して、これが血管の形成と維持に係わっていることを明らかにしたことがある(Lee,S.W.,等,Nat.Med.,2003年,第9巻,900−906頁;Song,H.S.,等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,2002年,第290巻,325−331頁)。本発明者等によって生後ラットの脳の星状細胞から分離した酸素調節遺伝子(hyrac;PubMed Access No.AY800384 and DQ133462)は、メテオリンタンパク質をコードするということが報告された(Nishino,J.等,EMBO J.,2004年,第23巻,1998−2008頁)。前記研究によると、メテオリン(meteorin)は、分泌するタンパク質に微分化された神経前駆細胞と放射膠細胞(radial glia)で発現される。これは、また星状細胞存在時、間接的に軸索(axon)の延長を促進させる。この研究では、メテオリンがニューロンに及ぼす間接的な影響は、神経成長のためのシグナルを提供するための周囲の環境の変化のためであると考えられている。
【0005】
それで、本発明等は、メテオリンがマウス発生の胚芽後期段階と生後段階で脳と網膜の星状細胞で高度に発現され、特に血管で取り囲まれた星状細胞エンドフィートで高度に検出され、トロンボスポンジン−1/−2(TSP−1/−2)の発現を促進して血管新生を抑制し、血管成熟を促進させることを明らかにすることによって本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、メテオリンを有効成分として含む血管新生抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
同時に、本発明は、メテオリンを有効成分として含む血管新生関連の脳血管疾患、心血管系疾患、眼科疾患または癌疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0009】
本発明者等は、ラットの星状細胞から酸素−調節遺伝子を分離するためにRDA(representative difference complementary DNA assay)方法を使用して、低酸素症後の再酸素化過程で増加するラットのEST(ESTexpressed sequence tag)を確認した。本発明者等は、前記EST配列を根拠にしてRACE(rapid amplification of cDNA ends)PCR分析を使用して相補的DNAの全長を明らかにし、それをHyracとした(hypoxia/reoxygenation regulatory factor in astrocytes,PubMed Access No.AY800384)。Hyracは、Nishinoなど(EMBO J.,2004年,第23巻,1998−2008)によってメテオリンであると特定されたので、本発明では「メテオリン(配列番号:1および配列番号:2)」と命名する。
【0010】
メテオリン遺伝子が分泌シグナルドメインをコードしていることから、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞に、リポフェクタミン(invitrogen,米国)を使用してメテオリン遺伝子をトランスフェクションした後、ジェネティシン(GibcoBRL,米国)で選別して安定的なメテオリン細胞株を樹立した。前記細胞株から分泌したメテオリンタンパク質を精製(図1参照)し、精製したタンパク質は、濃縮、透析されたものを使用することが好ましい。
【0011】
また、本発明のメテオリンは、
(a)配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15の塩基配列のコード領域を含むDNAによってコードされるタンパク質;
(c)配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一であり、かつ配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加により修飾されたアミノ酸配列で構成されたタンパク質;および
(d)配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15で表わされる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAによってコードされるタンパク質、または配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質
のいずれか一つであることが好ましい。
【0012】
前記ハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件下で実施すると、相同性が高い塩基配列を有したDNAが選別され、結果的に分離するタンパク質には、メテオリンと機能的に同一なタンパク質が含まれる可能性が高くなる。相同性が高い塩基配列とは、例えば、配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15で表わされる塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましいのは95%以上の相同性を有した配列を意味する。配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましいのは95%以上の高い相同性の配列を有する任意のアミノ酸配列を、使用することができる。前記の相同性の割合は、当業者によって選択された従来のアルゴリズムで決定することができる。
【0013】
前記ハイブリダイゼーションは、当業界によってストリンジェントな条件(Hames and Higgins,Eds.Nucleic Acid Hybridisation,IRL Press,U.K.,1985年)下のDNA−DNAハイブリダイゼーションによって実施することができる。
【0014】
前記ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション後、洗浄時に決定される。ストリンジェントな条件中の一つは、常温で6×SSC、0.5%SDSで15分洗浄した後、45℃で2×SSC、0.5%SDSで30分間洗浄し、50℃で0.2×SSC、0.5%SDSで30分間の洗浄を二度繰り返す。さらに好ましいストリンジェントな条件は、さらに高い温度を使用することである。前記ストリンジェントな条件の他の部分は、同一に遂行して終わりの二回の30分は、60℃で0.2×SSC、0.5%SDSで洗浄する。また他のストリンジェントな条件は、前記ストリンジェントな条件で最後の二回を65℃で0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄することである。当業者なら必要なストリンジェントな条件を得るためにこのような条件を明確に設定することができる。
【0015】
さらに、本発明のメテオリンは、哺乳動物由来のすべてのメテオリンであり得るが、配列番号:1で表わされるラット由来のメテオリン、配列番号:11で表わされるヒト由来のメテオリン、または配列番号:14で表わされるマウス由来のメテオリンであることが最も好ましい。前記哺乳動物では、例えば、ヒト、マウスおよびラット以外の動物種であるモルモット、ウサギ、豚、羊、山羊、犬、牛、猿およびチンパンジーなどの動物種などを挙げることができる。
【0016】
メテオリンの濃度は、低酸素状態後の星状細胞再酸素化で高い増加を示し(図2参照)、これはメテオリンが酸素濃度によって発現が調節されるタンパク質であることを意味する。
【0017】
また、はメテオリンは他の臓器に比べて脳で著しく発現(図3参照)され、これはメテオリンタンパク質が脳に多量に存在するタンパク質であることを示唆する。メテオリンは、生後マウスの脳より胚芽段階の脳で多く発現される。生後および成体の脳でメテオリンが検出されるにも関わらず、脳発達が進行するほどメテオリンタンパク質発現がわずかに減少する(図4参照)。これはメテオリンが脳発生に必須的であることを提示する。
【0018】
生後7日目のマウス大脳皮質のすべての部位でメテオリン免疫反応が観察され(図5参照)、これは血管と類似の星模様の構造で発現されるように見える。海馬でも前記大脳皮質と同じく似た様相でメテオリン免疫反応が観察された(図6参照)。したがって、星模様の星状細胞でのメテオリンの免疫反応は、血管と密接な関連がある複合反応であることが明らかに示された。
【0019】
メテオリンは、血管周囲細胞および内皮細胞では発現しないが(図7および図8参照)、星状細胞(GFAP)ではメテオリン免疫反応とGFAP免疫反応の同一分布を示している(図9参照)。このような同一分布は、血管と関連があり、血管と内皮細胞障壁の形成が顕著な段階で血管と直接的な接触をする星状細胞で、メテオリンが発現されるということを証明する。
【0020】
前記で詳しくみたように、メテオリンは酸素濃度によって血管周辺の星状細胞で特異的に発現され、パラクライン経路を介して血管の分化に影響を与え、したがって内皮細胞障壁が機能を現わすのに寄与すると思われる。
【0021】
またメテオリン免疫反応は、血管の選択的障壁が形成されるヒト胚芽39週目に、GCL(神経細胞層)、IPL(内網状層)、およびINL(内顆粒層)で検出される(図10参照)。
【0022】
最近の研究によるとメテオリンは、他の分泌要素の発現を誘導して神経軸索延長を間接的に促進させ、グリア細胞分化を直接的に増加させる(Nishino,J.,等,EMBO J.,2004年,第23巻,1998−2008頁)。ゆえに、本発明者等は、星状細胞由来のメテオリンが血管新生と関連した様々なシグナル因子を誘導して血管に影響を及ぼすのかどうか調査した。
【0023】
まず、メテオリンsiRNAで星状細胞の内因性メテオリン発現を抑制させた。その結果、細胞溶解物と条件培地からメテオリン発現抑制を確認した(図11の左側参照)。siRNAを通じて内因性メテオリン発現を抑制させた時、星状細胞でのTSP−1/−2発現と分泌は減少したが、VEGF(血管内皮成長因子)発現には何らの影響を及ぼさなかった。
【0024】
また、メテオリン発現抑制をmRNA水準を通じて確認したした結果、やはり、TSP−1/−2のmRNA水準が減少することが分かった(図11の右側参照)。
【0025】
前記結果がsiRNA自体によるmRNAの減少ではないことを証明するために、本発明者等は、メテオリンsiRNA処理をした星状細胞に精製したメテオリンタンパク質を処理した結果、星状細胞でTSP−1/−2発現が回復することを観察することができた(図12参照)。これは、メテオリンが星状細胞でTSP−1/−2の発現と分泌を調節するということを裏付ける。
【0026】
前記TSPタンパク質は、細胞で発現して分泌する糖タンパク質の一種で(Adams,J.C.,Annu.Rev.Cell Dev.Biol.17,25−5,2001)、これらの中で特にTSP−1と−2は、血管新生抑制物質であり、CD36受容体を通じて管形成と内皮細胞移動を抑制する。
【0027】
ゆえに、メテオリンは、TSP−1/−2の発現を増加させることで、血管新生を抑制することができる。
【0028】
次に、メテオリンsiRNAをトランスフェクションした星状細胞から得た条件培地(siMetr−ACM)をヒト脳微細血管の血液内皮細胞(HBMEC)に処理すると、管構造形成と微細血管内皮細胞の移動およびCAM(絨毛尿膜)発現を増加させる(図13参照)。
【0029】
siMetr−ACMを処理してTSPタンパク質を外部から処理すると、血管新生が抑制される(図13のsiMetr+TSP参照)。これは、培地へ分泌したメテオリンが星状細胞で自己分泌的方式でTSP−1/−2の発現と分泌を誘導することを意味し、またメテオリンは、星状細胞のTSP−1/−2発現調節を通じて間接的に血管新生を抑制することを意味する。
【0030】
メテオリンによって誘導されるTSP発現の機序を調査するために、ヒト星状細胞に多様な濃度のメテオリンタンパク質を処理した後、TSP−1/−2の発現量を測定した結果、TSP−1/−2はメテオリン濃度依存的に増加したが、血管新生タンパク質(giopoietin)−1の量は変わらなかった(図14および15参照)。
【0031】
また、本発明者等は、メテオリンの効果を管形成を通じた実験で調査した。メテオリンを処理した星状細胞由来の条件培地(Metr−ACM)にHBMECを露出させると、管模様構造の形成が阻害されることを観察することができる(図16参照)。これは、メテオリンによる血管新生抑制機能を示唆するものである。この血管新生抑制効果が、TSP−1/−2のためであることを証明するために本発明者等は、TSP活性を阻む中和抗体を使用した。この抗体は、TSPがCD36受容体に結合することを防ぐことでTSP−1/−2の活性を抑制すると知られている。中和TSP−1/−2抗体を一緒に処理すると、血管新生抑制効果が消え(図16のMetr−+α−TSP参照)、これは、Metr−ACMのTSP−1/−2が血管新生抑制活性を媒介するという事実を示唆している。
【0032】
最近、ERK1/2とAkt1経路の活性化が、TSP−1/−2の発現に寄与するという事実が報告された。本発明者等は、星状細胞にメテオリンタンパク質を処理すると、Erk1/2のリン酸化が誘導されることを発見した(図17の上部参照)。また、MEK[マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ]阻害剤であるU0126およびメテオリンを、段階的に星状細胞に処理すると、TSP−1/−2の発現と分泌量が減少した(図17の下の部分参照)。これは、メテオリンがErk1/2シグナル経路を通じてTSP−1/−2を調節するという事実を示唆する。
【0033】
また、本発明者等は、7日目発生中のマウスの脳(P7)でTSPがメテオリンと共に位置することを発見した(図18参照)。これは、メテオリンがTSP発現に生理的に重要な役割をすることを示唆する。
【0034】
また、前記のようにメテオリンは、TSP−1/−2の発現を調節するので、TSP−1/−2の分泌促進剤として使用することができる。
【0035】
同時に、本発明は、メテオリンを有効成分として含む血管新生関連の脳血管疾患、心血管系疾患、眼科疾患または癌疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0036】
前記血管新生関連の脳血管疾患には、多発性硬化症(Rosenberg G.A.,Neuroscientist,2002年,第8(6)巻:586−95頁)、実験的アレルギー性脳脊髄炎(Proescholdt M.A.等,J Neuropathol Exp Neurol.,2002年,第61(10)巻:914−25頁)、細菌性髄膜炎(Infect Dis Clin North Am.,v−vi.Review.,1999年,第13(3)巻:527−48頁)、虚血(Gashe Y.等,J Cereb Blood Flow Metab.,2001年,第21(12)巻:1393−400頁)、脳浮腫(Dempsey RJ 等,Neurosurgery.,2000年,第47(2)巻:399−404頁;discussion 404−6)、アルツハイマー病(Banks W.A.等,Peptides,2002年,第23(12)巻,2223−6頁)、後天性免疫欠乏症侯群痴ほう合併症(Krebs F.C.等,Adv Pharmacol.,2000年,第49巻:315−85頁)、脳腫瘍(Davies D.C.等,J Anat.,2002年,第200(6)巻:639−46頁)、外傷性脳損傷(Esen F.等,J Neurosurg Anesthesiol.,2003年,第15(2)巻:119−25頁)、または高血圧(Kucuk M.等,Life Sci.,2002年,第71(8)巻:937−46頁)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
血管成熟は、それ以上の血管形成が抑制される一方、形成された血管は機能的に成熟することを意味するもので、脳血管成熟は、脳血管障壁が発生して選択的透過性を誘導するようになる過程と要約される。脳血管障壁が発生する間、脳の血管新生は止まり脳の毛細血管は、徐々に脳血管障壁に分化する(Plate,K.H.,J.Neuropathol.Exp.Neurol.,1999年,第58巻,313−320頁;Breier,G.等,Development,1992年,第114巻,521−532頁)。
【0038】
本発明のメテオリンは、血管新生を抑制することにより脳血管の障壁の形成を通じた機能的成熟を可能にすることで、脳血管障壁障害と関連した疾患の治療および予防剤に有用に使用することができる。
【0039】
前記心血管系疾患は、動脈硬化、血管癒着、浮腫性硬化症(O’Brien K.D.等,Circulation,1996年,第93(4)巻,pp672−682頁)などからなる群より選択することができる。また、前記の眼科疾患は、角膜移植性血管新生、血管新生性緑内障、黄斑変性、糖尿病性網膜症、早熟児の網膜症、新生血管性緑内障、新生血管による角膜疾患、黄斑変性、翼状片、網膜変性、後水晶体繊維増殖症、および顆粒性結膜炎(D’Amato R.J.等,Ophthalmol.,1995年,第102巻,1261−1262頁;Adamis A.P.等,Angiogenesis,1999年,第3巻,9−14頁)からなる群より選択することができる。
【0040】
また、前記癌疾患は、星状細胞腫、神経膠腫、肺癌、非小細胞性肺癌、肝臓癌、結腸癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頚部癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、結腸癌、乳癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚部癌腫、膣癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、骨盤癌腫、中枢神経系腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳下垂体腺腫(Hanahan D 等,Cell,1996年,第86巻,353−364頁)からなる群より選択することができ、本発明の組成物を血管新生と関連した癌疾患および転移治療に使用することができる。
【0041】
本発明の組成物は、メテオリンにさらに同一または類似の機能を有する有効成分を1種以上含むことができる。投与のためには、さらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで調製することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エチルアルコールおよびこれら成分の中で1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような主使用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化できる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990年)に開示されている方法を使用して、各疾患によって、または成分によって好ましく製剤化することができる。
【0042】
本発明の血管関連疾患予防用薬学的組成物は、目的とする方法によって非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり、経口投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。本発明によるメテオリンの一日の投与量は、0.01〜5000mg/kgであり、好ましくは0.01〜10mg/kgであり、一日一回ないし数回に分けて投与することがさらに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、メテオリン遺伝子をトランスフェクションさせた細胞から分泌したメテオリンタンパク質の精製を示した写真:モック:モックベクター。α−c−myc:c−myc(癌誘発遺伝子)抗体。
【図2】図2は、ヒトの星状細胞で酸素濃度によるメテオリン発現量を示した写真: N:正常酸素分圧。H;低酸素状態。R;再酸素化。
【図3】図3は、マウスの各組織によるメテオリン発現量を示した写真およびグラフである。
【図4】図4は、マウスの胚芽および生後の脳のメテオリン発現量を示した写真である。
【図5】図5は、マウスの生後7日目の大脳皮質でメテオリンの免疫反応を示した写真:矢印:メテオリンの免疫反応。
【図6】図6は、マウスの生後7日目の海馬(hippocampus)でメテオリンの免疫反応を示した写真:矢印:メテオリンの免疫反応。CA1:アンモン角1。DG:歯状回。H:海馬門。GCL:顆粒細胞層。SGZ:顆粒細胞層下部。
【図7】図7は、マウス内皮細胞でのメテオリンの二重免疫蛍光分析を示した写真:PECAM:内皮細胞指標。DIC:メテオリンとPECAMの同一な分布。
【図8】図8は、マウス血管周囲細胞でのメテオリンの二重免疫蛍光分析を示した写真:αSMA:血管周囲細胞指標(alpha−SMA)。DIC:メテオリンとαSMAの同一な分布。
【図9】図9は、マウス星状細胞でのメテオリンの二重免疫蛍光分析を示した写真:GFAP:星状細胞。DIC:メテオリンと星状細胞の同一な分布。
【図10】図10は、ヒト胚芽39週目のメテオリン免疫反応を示した写真:矢印:メテオリンの免疫反応。GCL:神経節細胞層。IPL:内網状層。INL:内顆粒層。
【図11】図11は、ヒトの星状細胞にメテオリンsiRNAの処理による内因性メテオリンの発現抑制を現わす写真:siN.C.:メテオリンsiRNAを処理しない陰性対照群。siMetr:メテオリンsiRNAを処理した星状細胞。VEGF:血管内皮増殖因子。
【図12】図12は、メテオリンsiRNA処理をしたマウスの星状細胞にメテオリンタンパク質を処理した後、TSP−1/−2発現量を示した写真:siMetr:siRNA−メテオリンをトランスフェクションさせた星状細胞から得た培地(siMetr−ACM)。VEGF:血管内皮増殖因子。
【図13】図13は、メテオリンsiRNAをトランスフェクションさせた星状細胞から得た条件培地(siMetr−ACM)をヒト脳微細血管の血液内皮細胞(HBMEC)に処理した時、管構造形成、微細血管内皮細胞の移動およびCAM(絨毛尿膜)発現を示した写真:siN.C.:メテオリンsiRNAを処理しないHBMEC。siMetr:メテオリンsiRNAを処理したHBMEC。siMetr+TSP:メテオリンsiRNAを処理した後、TSPタンパク質1ug/ml(AおよびB)または1ug/ml(C)を処理したHBMEC。
【図14】図14は、ヒト星状細胞に多様な濃度のメテオリンタンパク質を処理した後、TSP−1/−2の発現量を調査した写真:Ang−1:血管新生タンパク質(giopoietin)−1。
【図15】図15は、前記図14のTSP−1/−2の発現量を定量化したグラフである。
【図16】図16は、メテオリンを処理した星状細胞条件培地(Metr−ACM)にHBMECを露出させた後、管模様構造の形成を示した写真:con:運搬体のみ処理したHBMEC。Metr:メテオリンを処理した星状細胞条件培地を処理したHBMEC。con+IgG:マウスIgGを処理したHBMEC。Metr−+α−TSP:Metrと中和TSP−1/−2抗体を一緒に処理したHBMEC。
【図17】図17は、メテオリンタンパク質を処理した星状細胞でリン酸化されたErk1/2を示した写真:p−Erk1/2:リン酸化されたErk1/2。
【図18】図18は、7日目のマウスの脳(P7)でメテオリンとTSP−1/−2の位置を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の実施例で示すように、本発明の実施態様および現在好ましい態様は例示的である。
【0045】
以下の実施例は、本発明の実施局面および現在好ましい局面を説明する。
【0046】
しかし当業者は本開示を考慮して、本発明の精神および範囲内で改変および改良を加えてもよい。。
【0047】
<実施例1>メテオリンの調製
本発明の有効成分であるメテオリンを調製するために、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にメテオリン遺伝子をリポフェクタミン(invitrogen,米国)を使用してトランスフェクションした後、ジェネティシン(GibcoBRL,米国)で選別して安定的なメテオリン細胞株を調製した。前記調製した細胞株から分泌したメテオリンタンパク質をカラム(Talon Metal affinity resin column,Clontech Laboratories Inc.,米国)を使用して精製し、精製したタンパク質(図1)は、Centricon YM10(Millipore Corporation,米国)を使用して濃縮、透析して下記の実験例に使用した。前記メテオリンは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有し、配列番号:2で表わされる塩基配列を有する。
【0048】
<実施例2>細胞培養
本発明に使用したヒト脳微小血管内皮細胞(HBMEC)および一次ヒト大脳皮質星状細胞は、Cell Systems(米国)から購入した。HBMECは、20%FBS(ウシ胎仔血清、米国)、3ng/ml bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)および10units/mlヘパリンを含んでいるM199培地で培養し、星状細胞は10%FBSが添加されたDulbeccoの変形されたEagle培地(DMEM,Invitrogen,米国)で培養した。
【0049】
下記実験例の低酸素状態のためには、低酸素チェンバー(Forma)で5%CO、Nと均衡を成した1%Oの条件で細胞を培養した。
【0050】
下記の条件培地(CM)というのは、それぞれの求められる実験条件下で無血清DMEMに星状細胞を露出して準備したものをいう。
【0051】
内在性メテオリンを除去するために、Astrocyte Nucleofactor(商標)キット(米国)を使用して、メテオリンsiRNAを星状細胞にトランスフェクションした。一方、星状細胞にメテオリンタンパク質を処理するためには、細胞は合流地点の50%程度に培養してタンパク質を処理する前に、血清を添加しなかった。内在性メテオリンを除去したまたは星状細胞にメテオリンタンパク質を処理する条件培地(CM)で培養した2〜3日後に、Amicon Ultra−4 centrifugal filter units(米国)を使用して、細胞を50倍に濃縮して下記の実験に使用した。
【0052】
実験中のHBMECは、ヒト内皮血清−非含有基礎培地(GibcoBRL,米国)と1:1に希釈した条件培地(CM)で培養した。
【0053】
<実験例1>メテオリンの酸素濃度による発現調節の調査
本発明者等は、ラットの星状細胞でメテオリンが酸素濃度によって調節されるのかどうかを確認するために、メテオリン形態を認識するようにデザインされた抗−メテオリン親和度精製抗体を生産した。メテオリンに対するマウスメテオリンに特異的なペプチドC28SWRGSGLTQEPGSVGQ44とC28SWRGSGLTQEPGSVGQ44を抗原としてウサギに注射することにより、メテオリン特異的な抗体を製作して使用した(Dinona Inc.,米国およびTakara,韓国)。
【0054】
その結果、メテオリンは、正常酸素分圧状態(normoxia)に比べて低酸素状態で微妙に減少し、低酸素状態後の星状細胞再酸素化で目立って増加した(図2)。これは、メテオリンが星状細胞で酸素濃度によって発現が調節されるタンパク質であることを確認できた。
【0055】
<実験例2>メテオリンの組織による発現調節の調査
マウス組織でメテオリン発現をメテオリンcDNAをプローブにしてノーザンブロット分析(マウス多重組織ノーザン;MTNTM,Clontech)で分析してみると、メテオリンは分析した他の臓器に比べて脳で顕著に発現されるということが分かった(図3)。
【0056】
<実験例3>メテオリンの脳発生調節機能の調査
メテオリンが星状細胞の脳で多量に発現するタンパク質であり、酸素濃度依存的に調節される因子であるということが確認され、本発明者等は、次の段階でメテオリンの脳発生調節機能に対して調査した。マウスの胚芽段階と生後段階の脳で行ったウエスタンブロット分析によると、生後段階(胚芽段階:12.5、15.5および17.5日目;生後段階:3、7および20日目)や成体の脳でメテオリンが検出されはするが、脳発達が進行するほどメテオリンタンパク質発現がわずかに減少することが分かる(図4)。
【0057】
<実験例4>大脳皮質と海馬でメテオリン発現の調査
星状細胞で酸素濃度によるメテオリンの発現誘導が確認され、本発明者等は、生後段階の脳でメテオリン発現がどんな様相を有するのか調査した。特に、本発明者等は、血管形成と内皮細胞障壁の形成が目立つ生後段階の脳を調査した。
【0058】
生後7日目段階ICR(IcrTacSam)マウス(Samtako、韓国)から脳を摘出して、OCT compound(Sakura Finetek 米国Inc.,米国)に陥没させて凍らせた後、管状方向に連続的な切片(10μm)を作った。メテオリン抗体を使用して前記10μm切片で免疫組織化学分析をした。対比染色で核周辺をヘマトシリンで染色し、IgGは対照群に使用した。
【0059】
その結果、生後7日目段階で大脳皮質すべての部位でメテオリン免疫反応が観察された。これは、血管と類似な星模様の構造で発現されるもののように見えた(図5)。海馬でも同じく似た様相のメテオリン免疫反応が観察され、星模様の星状細胞での免疫反応は、血管と密接な関連がある複合反応であることが明確に示された(図6)。
【0060】
次に、メテオリンを発現する細胞の種類を区別するために、連続切断面に対するメテオリン免疫反応細胞(メテオリン)、星状細胞(GFAP)、血管周囲細胞(alpha−SMA、血管周囲細胞指標)、内皮細胞(PECAM、内皮細胞指標)に対して特異的な抗体を使用して二重免疫蛍光分析を遂行した。
【0061】
その結果、メテオリンに免疫反応を示す細胞は、星状細胞であり、他の血管内皮細胞や血管周囲細胞にはメテオリンが免疫反応を示さなかった(図7および図8)。図中、点線(DIC,微分干渉コントラスト法)で示されたものは、血管を意味する。
【0062】
メテオリン免疫反応とGFAP免疫反応は、同一な分布を示した。この同一分布は、血管と関連があり、DIC(点線)で描写した(図9)。
【0063】
<実験例5>網膜でメテオリン発現
中脳から発達する網膜と網膜の血管は、選択的障壁の性格を帯びるので、血液網膜関門(BRB)と呼ばれる。網膜の血管形成は、脳の血管障壁と形態的発生的に似ているので、本発明者等は、発生中のヒトの網膜でメテオリンの免疫反応を調べた。ソウル大学病院で部検した妊娠39週目の患者の胎児から目を分離し、それぞれの目をパラフィンに陥没させて切片を作った後、InnoGenex immunohistochemistry kit(San Ramon,米国)を使用して免疫組織化学実験を実施した。
【0064】
その結果、メテオリン免疫反応は、血管の選択的障壁構造が形成されるヒト胚芽39週目になる時期のGCL(神経細胞層)、IPL(内網状層)、INL(内顆粒層)で検出された(図10)。拡大図を見ると、メテオリンを発現する細胞がGCL血管とGCLからIPL、INLを経て枝を伸ばしている血管に位置していることを明確に観察することができる。
【0065】
<実験例6>星状細胞でのメテオリン発現抑制によるヒト脳微小血管内皮細胞(HBMEC)の血管新生促進
本発明者等は、メテオリンが血管周辺星状細胞で発現されるので精製されたメテオリンタンパク質が血管形成に直接的に影響を及ぼすのかどうかを調査するために管形成分析を実施した。
【0066】
前記実施例で精製したメテオリンを異なる濃度0.1ng/ml〜1000ng/mlで、ヒト脳微小血管内皮細胞(HBMEC)に処理した。しかし、精製されたメテオリンタンパク質は、HBMECの管形成にいかなる影響も及ぼさなかった。
【0067】
また、本発明者等は、ヒトの星状細胞に由来したメテオリンが血管新生と関連したさまざまなシグナル因子を誘導して血管に影響を及ぼすのかどうかを調査した。
【0068】
このような仮説をテストするために、TSP−1と−2を同時に感知する抗体と特異的にTSP−1のみを感知する抗体を使用した。ウエスタンブロット用にTSP抗体は、Lab Vision Corporation(米国)で購入したAb−11と−2を使用した。VEGF(血管内皮増殖因子)抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc(米国)から購入した。
【0069】
星状細胞の内因性メテオリン発現を抑制するために、本発明者等は、メテオリンをコードするsiRNAを、インターネット基盤のプログラム(http://www.dharmacon.comまたはhttp://jura.wi.edu/bio)を使用して設計し、ヒトメテオリン

をターゲットにするメテオリンsiRNAは、配列番号:13

で表わされる配列にdTdTを添加して調製し、対照群にはターゲット配列がないsiRNA(陰性対照としてターゲット配列がない、siRNA NC)を調製(Lafayette,米国)した。
【0070】
前記調製したsiRNAで星状細胞の内因性メテオリン発現を抑制させ、細胞溶解物と条件培地からメテオリン発現抑制を確認した。siRNAを通じて内因性メテオリン発現を抑制させた時、星状細胞でのTSP−1/−2発現と分泌は減少したが、VEGF発現には何らの影響を及ぼさなかった(図11の左側)。
【0071】
また、メテオリン発現抑制をmRNA水準で調査した。総RNAは、トライゾール(Trizol,Invitrogen,米国)を使用して製造者の方法にしたがってマウスの脳またはヒト星状細胞で分離し、総RNAから逆転写酵素(マウス白血病ウイルス逆転写酵素,米国)を使用してFirst−stranded cDNAを合成し、連続的に同じ量のcDNAをマウスメテオリンプライマー対

、ヒトメテオリンプライマー対

、ヒトTSP−1/−2プライマー対

およびβ−アクチンプライマー対

をそれぞれ使用してPCRで増幅させた。
【0072】
その結果、TSP−1/−2のmRNA水準が減少することを観察することができた(図11の右側)。
【0073】
前記mRNAの減少がsiRNA自体によるmRNAの減少ではないことを証明するために、本発明者等は、メテオリンsiRNA処理をした星状細胞に精製したメテオリンタンパク質を処理して72時間経過後、条件培地を収得して精製したメテオリンタンパク質を濃度0.1および1ng/mlで処理した時、星状細胞でTSP−1/−2発現が回復することを観察することができた(図12)。このようにして、前記mRNAの減少がsiRNA自体によるmRNAの減少ではないことを確認することができた。
【0074】
星状細胞で内因性メテオリンタンパク質の発現を抑制させた時、TSP−1/−2の発現と分泌が低下したので、siRNA−メテオリンをトランスフェクションした星状細胞から得た条件培地(siMetr−ACM)を使用して、ヒト脳微小血管内皮細胞(HBMEC)に対するメテオリンの間接的な影響を実験してみた。
【0075】
本発明者等は、管構造形成を「BD Matrigel(商標)アッセイ」(BD Bioscince,米国)で確認した。48ウェルプレート(Nunc,Danmark)で5×10個HBMECに星状細胞から得た条件培地(siMetr−ACM)を処理して、細胞の模様変化を4時間後に観察した。管形成で使用したTSPタンパク質とヘパリンは、Sigma−Aldrich Corporation(米国)から購入し、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)は、Upstate Biotechnology(米国)から購入した。微小血管内皮細胞の移動は、傷移動分析(wound migration assay)を通じて観察し、CAM(絨毛尿膜)発現は、CAM分析で観察した。
【0076】
傷移動分析は、下記のように行なった。
【0077】
0.3%ゼラチンがコーティングされた60mm皿に、1.5×10HBMECを播種した。90%コンフルエンシィを有するように、37℃で1〜2日間培養した後、滅菌処理されたプラスチックチップで傷をつけた。細胞残余物が残らなくなるまでPBS(リン酸緩衝食塩水)で3回洗浄して、条件培地と1mMチミジンを添加して、37℃で16時間培養した。また、PBSで2回洗浄して、メタノールで1分程度固定した後、ギムサ溶液で5分間染色して移動した細胞数を顕微鏡で観察した。
【0078】
CAM分析は、下記のように行なった。
【0079】
ニワトリの受精卵を湿度90%を維持している37℃培養器に入れて培養して、3日胚になると刃物で穴を作って注射器でアルブミン3mlを抜き出した。9日胚になる時、条件培地が塗布された滅菌処理カバースリップ(Nnnc,Rochester,米国)を太い血管を避けて乗せた。培養基で2日間培養させた後、10%脂肪エマルジョン(fat emulsion;Intralipose)2〜3mlをCAM膜内側に注入して解剖顕微鏡(8倍率)で観察して、CAMの写真を撮った。
【0080】
その結果、siMetr−ACMは、管構造形成と微細血管内皮細胞の移動、そしてCAM(絨毛尿膜)発現を増加させ、siMetr−ACMの血管新生に対する影響は、TSPタンパク質を外部で処理した時に抑制された(図13)。
【0081】
<実験例7>星状細胞でTSP−1/−2の発現と分泌を通じたメテオリンの血管新生抑制の調査
メテオリンによって誘導されるTSP発現の機序を研究するために、本発明者等は、ヒトの星状細胞に多様な濃度のメテオリンタンパク質を処理した後、ウエスタンブロットでTSP−1/−2の発現量を調査した。
【0082】
ヒト星状細胞は、メテオリンタンパク質を処理する前に無血清培地で16時間培養後、40時間多様な濃度(0、0.1、0.3、1、3および10ng/ml)のメテオリンタンパク質を処理した。TSP抗体は、Ab−11(Lab Vision Corporation,CA)を使用した。ウエスタンブロットの結果、メテオリンは細胞溶解物と条件培地でTSP−1/−2の発現を誘導した。
【0083】
その結果、条件培地でTSP−1/−2は、用量依存的に増加した。しかし、血管新生タンパク質(giopoietin)−1の量は変わらなかった(図14)。図15は、デンシトメトリーを使用して、前記TSP−1/−2の相対的な量を定量化したものである。
【0084】
本発明者等は、条件培地を使用してメテオリンの効果を管形成を通じて実験した。HBMECにメテオリンを処理した星状細胞から得た条件培地を入れて、4時間培養し、HBMECを0.3ng/mlメテオリンを処理した星状細胞条件培地(Metr−ACM)に露出させた時、管模様構造の形成が阻害された(図16)。この血管新生抑制効果が、TSP−1/−2のためであるということを証明するために本発明者等は、TSP活性を阻む中和抗体(Ab−1,Lab Vision Corporation,CA)を使用した。
【0085】
中和TSP−1/−2抗体を一緒に処理した結果、血管新生抑制効果が消えることを発見(図16のMetr−+α−TSP)した。これは、Metr−ACMのTSP−1/−2が血管新生抑制活性を媒介するだろうという事実を示唆する。図16で「con」は、運搬体だけ処理したもの、「con+IgG」は、ネズミIgGを一緒に処理したものを意味する。
【0086】
最近、ERK1/2とAkt1経路の活性化が、TSP−1/−2の発現に寄与するという事実が報告された。それで、本発明者等は、星状細胞に10分間10ng/mlのメテオリンタンパク質を処理して、Erk1/2およびphospho Erk1/2抗体をCell Signaling Technology Inc.(米国)から購入して、ウエスタンブロット実験した結果、Erk1/2のリン酸化が誘導されたことを発見した(図17の上部)。
【0087】
また、星状細胞にMEK[マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ]阻害剤であるU0126(Cell Signaling Technology Inc.,米国)を1μmで処理して、10ng/mlのメテオリンを処理して24時間培養してウエスタンブロットをした結果、U0126を処理した星状細胞では、TSP−1/−2の発現と分泌量が減少(図17の下の部分)した。これは、メテオリンがErk1/2シグナル経路を通じてTSP−1/−2を調節するという事実を示唆する。
【0088】
また、本発明者等は、発生中の脳でメテオリンとTSP−1/−2の位置を証明した。TSP抗体であるAb−4(Lab Vision Corporation,CA)を使用して、免疫反応実験を通じて本発明者等は、発生後7日目であるネズミの脳(P7)で、TSPがメテオリンと一緒に位置することを発見した(図18)。図18で、メテオリンは緑色で、TSPは赤色に染色されていて、二つのタンパク質が一緒に存在する所は黄色に見える。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のメテオリンは、一次培養したヒト星状細胞と生後ネズミの脳と網膜にある血管周囲を取り囲んでいる突起を有したGFAP陽性星状細胞および内皮細胞を取り囲んでいる星状細胞の末端で発現され、TSP−1/−2と同時に発現して、血管新生を抑制して、血管を成熟させるのに重要な役割をする。ゆえに、本発明のメテオリンは、血管新生抑制剤、トロンボスポンジン−1/−2(TSP−1/−2)分泌促進剤、血管関連疾患予防用薬学的組成物および血管関連疾患予防用健康食品に有用に使用することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0090】
配列番号:1は、ラットのメテオリンポリペプチド配列である。
配列番号:2は、ラットのメテオリンポリヌクレオチド配列である。
配列番号:3は、マウスメテオリン遺伝子を増幅するためのセンスプライマー配列である。
配列番号:4は、マウスメテオリン遺伝子を増幅するためのアンチセンスプライマー配列である。
配列番号:5は、ヒトメテオリン遺伝子を増幅するためのセンスプライマー配列である。
配列番号:6は、ヒトメテオリン遺伝子を増幅するためのアンチセンスプライマー配列である。
配列番号:7は、ヒトTSP−1/−2遺伝子を増幅するためのセンスプライマー配列である。
配列番号:8は、ヒトTSP−1/−2遺伝子を増幅するためのアンチセンスプライマー配列である。
配列番号:9は、β−アクチン遺伝子を増幅するためのセンスプライマー配列である。
配列番号:10は、β−アクチン遺伝子を増幅するためのアンチセンスプライマー配列である。
配列番号:11は、ヒトのメテオリンポリペプチド配列である。
配列番号:12は、ヒトのメテオリンポリヌクレオチド配列である。
配列番号:13は、メテオリンsiRNAのポリヌクレオチド配列である。
配列番号:14は、マウスのメテオリンポリペプチド配列である。
配列番号:15は、マウスのメテオリンポリヌクレオチド配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メテオリン(meteorin)を有効成分として含む、血管新生抑制剤。
【請求項2】
(a)配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15で表わされる塩基配列のコード領域を含むDNAによってコードされるタンパク質;
(c)配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一であり、かつ配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加により修飾されたアミノ酸配列で構成されたタンパク質;および
(d)配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15で表わされる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAによってコードされるタンパク質、または配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質
のいずれかひとつであることを特徴とする、血管新生抑制剤。
【請求項3】
前記メテオリンが、トロンボスポンジン−1/−2(TSP−1/−2)の分泌を促進することを特徴とする、請求項1記載の血管新生抑制剤。
【請求項4】
血管新生関連の脳血管疾患、心血管系疾患、眼科疾患または癌疾患の予防または治療のための、メテオリンを有効成分として含む、組成物。
【請求項5】
前記血管新生関連の脳血管疾患が、多発性硬化症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、細菌性髄膜炎、虚血、脳浮腫、アルツハイマー病、後天性免疫欠乏症侯群痴ほう合併症、脳腫瘍、外傷性脳損傷および高血圧からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記心血管系疾患が、動脈硬化、血管癒着、および浮腫性硬化症からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記眼科疾患が、角膜移植性血管新生、血管新生性緑内障、糖尿病性網膜症、新生血管による角膜疾患、黄斑変性、翼状片、網膜変性、後水晶体繊維増殖症、および顆粒性結膜炎からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
前記癌が、星状細胞腫、神経膠腫、肺癌、非小細胞性肺癌、肝臓癌、結腸癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頚部癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門付近癌、結腸癌、乳癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚部癌腫、膣癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、骨盤癌腫、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、および脳下垂体腺腫からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項9】
(a)配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15で表わされる塩基配列のコード領域を含むDNAによってコードされるタンパク質;
(c)配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一であり、かつ配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加により修飾されたアミノ酸配列で構成されたタンパク質;および
(d)配列番号:2、配列番号:12または配列番号:15で表わされる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAによってコードされるタンパク質、または配列番号:1、配列番号:11または配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質
のいずれかひとつであることを特徴とする、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−504371(P2010−504371A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530244(P2009−530244)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002146
【国際公開番号】WO2008/136541
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509084149)エスエヌユー アールアンドディービー ファウンデーション (19)
【Fターム(参考)】