説明

メディア攪拌ミル

【課題】金属ビーズを用い、更なるマイルドな分散ができ、しかも金属ビーズのコンタミの問題を解消したメディア攪拌ミルを提供する。
【解決手段】ビーズ状粉砕メディアを収容した円筒形の粉砕室を有する粉砕容器、この粉砕容器に原料スラリー供給口、原料スラリー出口、粉砕室の軸心とほぼ同軸の回転軸を持つ撹拌部材、撹拌部材の上方にメディア分離部材を備え、一端が前記原料スラリー供給口に連通され、他端が前記原料スラリー出口に連通され、撹拌羽根が設けられたスラリータンクTが途中に配置された原料スラリー循環路が接続されたメディア攪拌ミル10において、ビーズ状粉砕メディアが、耐錆性を持ち、磁着でき、弾性係数が150〜250GPaの金属あるいは合金で形成されており、そして原料スラリーが循環する経路の少なくとも1カ所に原料スラリー内に混入した粉砕メディア由来のコンタミを磁着するための磁着手段206が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズ状粉砕メディアを使用するメディア攪拌ミルに関する。本発明のメディア攪拌ミルは、鉱物、顔料、染料、化学薬品、フェライト等の磁性材料、及びセラミックなどを超微細粒、特にナノメートルサイズまで粉砕又は分散し、例えば塗料、印刷インク、顔料、磁気テープ用コーティング材、ゴム、接着剤、化粧品、及び塗り薬のような医薬などに調整するのに特に適しているが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
このようなメディア攪拌ミルとしては、例えば特許第3703148号公報(特許文献1)に開示されたものが知られている。この特許文献に開示1されたメディア攪拌ミルにおいては、分散用の攪拌部材と遠心セパレータが一軸に取り付けられた構造となっている。
ところで、原料の中には処理中に変質しまうものがあり、このような場合には分散力を低減しなければならない。分散力の低減は、一般的には攪拌部材の回転数を低減することによって行われるが、このように攪拌部材の回転数を低減すると、上記した特許文献1のミルにおいては、一軸に遠心セパレータも取り付けられているので、遠心セパレータの回転数も低減されてしまい、遠心力が小さくなり、分離能力が極端に小さくなってしまい、粉砕メディア流出の危険が生じてしまうという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するミルとして特開2006−212488号公報(特許文献2)に開示されたメディア攪拌ミルがある。このメディア攪拌ミルにおいては、攪拌部材と遠心セパレータが別々に駆動できるようになっており、分散力と分離能力を別々にコントロ−ルが可能であるが、分散力を弱め、分離能力を強力にすると、遠心セパレータの遠心力が分散力に影響してしまうことがある。
以上のように、遠心セパレータを備えたメディア攪拌ミルは、種々開発されているが、分散力と分離能力のバランスが難しく、効率的でないという問題を有している。
【特許文献1】特許第3703148号公報
【特許文献2】特開2006−212488号公報
【0004】
そこで、本願出願人は、先に特願2006−336751号(特開2008−149208号)必要な分散力と分離能力を効率よく得ることができるメディア攪拌ミルを提供した。
特願2006−336751号(特開2008−149208号)のメディア攪拌ミルは、原料スラリー供給口路を有する円筒形の粉砕タンク、この粉砕タンク内の一端側において回転自在に配置された攪拌部材、前記粉砕タンク内の他端側において回転自在に配置された遠心分離式メディア分離部材、前記攪拌部材から前記メディア分離部材とは反対方向に延び前記粉砕タンク外部に延びる第1駆動軸、前記メディア分離部材から前記攪拌部材とは反対側に延び前記粉砕タンク外部に延びる第2駆動軸、前記粉砕タンク内部に収容された粉砕メディア、および前記粉砕タンクの内周壁近傍に配置され、前記攪拌部材の回転により円周方向外方に向けられた前記原料と粉砕メディアの流れを、半径方向内方に転換する流れ転換部材を備え、前記攪拌部材とメディア分離部材が、互いの干渉が小さくなるように軸方向に間隔を置いて配置されており、前記第2駆動軸が中空軸で形成されており、この中空軸の内部が前記メディア分離部材の内部空間と連通され、原料スラリー出口路を形成していることを特徴とするものである。
【特許文献3】特開2008−149208号
【0005】
このメディア攪拌ミルにおいては、上記したように、粉砕タンク内部において攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材を十分に間隔をおいて配置したことにより、攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材は、それぞれ独自の性能が互いに干渉無く(あるいは極力小さい状態で)発揮できるようになる。
【0006】
なお、攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材を間隔をおいて配置したことにより、粉砕タンク内部の粉砕メディアは回転力と遠心力を受けて、渦流になりやすくなるが、上記したような流れ転換部材を設けたことにより、スラリーとメディアに半径方向内方の流れを作り出し、回転流れと軸方向流れができるようにした。
【0007】
以上により、粉砕メディアの流れは、あたかも混合機のような流れとなり、移動しながら接触しあい、原料の粉砕、分散が効率よく行われるようになった。
【0008】
また、上記公報のメディア攪拌ミルは、攪拌部材の回転速度を低減しても、メディア分離部材の遠心力が分散力にあまり影響しないので、上記したように、強い分散力を与えると変質してしまうおそれのある原料用として用いて好適である。
【0009】
また、攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材を間隔をおいて配置したことにより、粉砕メディアの動ける空間が大きくなり、自由度が大きくなるので、攪拌部材の回転速度を大きくしても、粉砕メディアのパック現象がなく運転できる。攪拌部材の回転速度を大きくした場合は、粉砕メディアおよび原料スラリーの流れが速くなり、循環流が大きく、原料スラリーのミルへの供給(排出)量に比して大きくなるので、ショートパスの確率が小さくなる。
【0010】
以上、上記公報のメディア攪拌ミルにおいては、幅広く条件を変更でき、極めて小さな粉砕メディア(マイクロビーズ)でのミル低周速運転での所謂マイルド分散が可能である一方で、高周速高効率運転が可能である。また、遠心分離式メディア分離部材は、小型、高速により大きな遠心力を発揮できるので、分離能力が大きく、粉砕メディアの流出が皆無である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したようなメディア攪拌ミルにおいては、粉砕メディア(マイクロビーズ)の材料としては、主にセラミックスを用い、金属はあまり使用されていない。これは、金属ビーズを用いると、ビーズ同士の衝突等により、金属が摩耗し、それが製品に対してのコンタミになるからである。
【0012】
しかしながら、上記したようにセラミックスビーズを用いると、上記のコンタミは防げるが、セラミックは極めて硬度が高いので製品の粒子に衝撃を与えて、該粒子がダメージを受けて、変質したり、凝集しやすくなるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、金属ビーズを用い、更なるマイルドな分散ができ、しかも金属ビーズを用いた場合のコンタミの問題を解消したメディア攪拌ミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、下記(1)〜(12)の構成の本発明のメディア攪拌ミルによって達成される。
(1)
ビーズ状粉砕メディアを収容した円筒形の粉砕室を有する粉砕容器、この粉砕容器に設けられた原料スラリー供給口、粉砕された原料スラリーを粉砕容器外に排出する原料スラリー出口、前記粉砕室の下部であって、該粉砕室の軸心とほぼ同軸の回転軸を持つ撹拌部材、および前記粉砕室内であって、前記撹拌部材の上方に設けられたメディア分離部材を備え、一端が前記原料スラリー供給口に連通され、他端が前記原料スラリー出口に連通され、撹拌羽が設けられたスラリータンクが途中に配置された原料スラリー循環路が接続されたメディア攪拌ミルにおいて、前記ビーズ状粉砕メディアが、耐錆性を持ち、磁着でき、弾性係数が150〜250GPaの金属あるいは合金で形成されており、そして原料スラリーが循環する経路の少なくとも1カ所に原料スラリー内に混入した粉砕メディア由来のコンタミを磁着するための磁着手段が設けられていることを特徴とするメディア攪拌ミル。
(2)
前記粉砕メディアを形成する金属または合金が、ステンレススチールである上記(1)のメディア攪拌ミル。
(3)
前記磁着手段が、ミルの出口に配置されている上記(1)または(2)のメディア攪拌ミル。
(4)
前記ビーズ状粉砕メディアの硬度が2.5〜7.5GPaである上記(1)〜(3)のいずれかのメディア攪拌ミル。
(5)
前記粉砕メディアの直径が0.015〜0.1mmである請求項1〜4のいずれかのメディア攪拌ミル。
(6)
粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の30%〜60%である上記(1)〜(5)のいずれかのメディア攪拌ミル。
(7)
前記粉砕室下方部分を半径方向に分割し、粉砕室下方部分内方部と環状の粉砕室下方部分外方部とを構成する案内環を設け、前記粉砕室下方部分外方部を粉砕メディアと原料スラリーの混合物の上昇通路とした上記(1)〜(6)のいずれかのメディア攪拌ミル。
(8)
前記案内環は環状空間を有し、前記粉砕容器に取り付けられた複数のパイプによって支えられ、該パイプを用いて前記環状空間に通水排水が可能な構造である上記(7)のメディア攪拌ミル。
(9)
前記パイプが粉砕容器の上方から延び、下端で前記案内環を支持している(8)のメディア攪拌ミル。
(10)
前記案内環は、その下端が前記撹拌部材の上端以上にあり、そしてその上端が前記メディア分離部材の下端と下方に所定の間隔を隔てた位置にある(7)〜(9)のいずれかのメディア攪拌ミル。
(11)
前記案内環の外周壁と粉砕容器の内周壁の間の間隔は、10〜50mmである上記(7)〜(10)のいずれかのメディア攪拌ミル。
(12)
前記案内環の高さは、粉砕室の高さの1/3〜1/2である上記(7)〜(11)のいずれかのメディア攪拌ミル。
【発明の効果】
【0015】
本発明のメディア攪拌ミルは、上記のような金属または合金の粉砕メディアを用いているので、原料の特徴を変化させることなくマイルドに分散させることができ、しかも原料スラリー内に混入した粉砕メディア由来のコンタミを磁着するための磁着手段を設けたので、最終製品には粉砕メディア由来のコンタミが無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施態様によるメディア攪拌ミルを示す断面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う断面図である。
【図3】図1に示したメディア攪拌ミルの一使用形態を示す概略図である。
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態によるメディア攪拌ミルについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるメディア攪拌ミル10を示すものであり、このメディア攪拌ミル10は、上部を閉鎖する端板12aを有する竪型円筒形の粉砕容器12を備えている。この粉砕容器12は、内部に円柱状の粉砕室14を備えており、この粉砕室14内にスラリー状の原料を導入するための原料スラリー供給口16を有している。粉砕容器12の下部には、フレーム18が取り付けられている。
【0018】
上記粉砕容器12の粉砕室14の内部下部中央には、攪拌部材22が回転自在に配置されている。攪拌部材22は、羽根車であり、例えば、ボス22aの周囲に固定され、上下に間隔を置いて配置された一対の環状板22b,22cとそれらの間に配置された複数の羽根22dで構成されている。
【0019】
上記撹拌部材22には、上端がこの撹拌部材22のハブ22aに取り付けられ、そこから粉砕容器12および上記フレーム18を軸方向下方に貫通して延びる撹拌部材駆動軸である回転駆動軸24が固定されている。この回転駆動軸24は、その下方端部が、図示しない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、図に矢印で示す方向に回転駆動される。この回転駆動軸24の回転軸(回転軸線)は粉砕室14の中心軸を通っていることが好ましい。なお、上記回転駆動軸24には、軸封25(メカニカルシール等)が設けられている。
【0020】
メディア攪拌ミルにおいて周知のように、粉砕容器12の内部には、ビーズ状の粉砕メディア30(なお、図においては極めて拡大して示した)が収納されている。
このビーズ状粉砕メディア30は、耐錆性を持ち、磁着でき、弾性係数が150〜250GPaの金属あるいは合金で形成されている。この粉砕メディアを形成する金属または合金は、ステンレススチール等であることが好ましく、その硬度は、ビッカース硬度で2.5〜7.5GPaであることが好ましい。この粉砕メディア30は、その直径が0.015〜0.1mmのものを用いることができる。
この粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の30%〜60%である。通常のメディア攪拌ミルにおいては、粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の75%〜90%であるので、本発明のメディア攪拌ミルは、粉砕メディアが金属または合金製であることも相俟って、拘束力が小さくソフトな粉砕・分散が可能である。
【0021】
上記粉砕容器12の粉砕室14の内部上方であって粉砕室14の中心部近傍には、上記該攪拌部材と軸方向に間隔をおいて対向して配置され、原料スラリー内に分散したメディア30を該原料から分離するための遠心分離式メディア分離部材32が設けられている。このメディア分離部材32は、下部に内部に空間を有する筒状の本体を有するボス32aおよび該本体の下部を閉鎖する閉鎖板32bを備えている。上記ボス32aの本体には、複数の開孔が設けられ、そこから原料スラリーのみが上記本体内の空間に導入されるようになっている。このメディア分離部材32は、上記該攪拌部材22と同軸に配置されていることが好ましいが、軸がずれていてもよい。このメディア分離部材32には、中空の回転駆動軸34が固定されている。この駆動軸34は、端板12bを貫通して上方に延び、その端部は、図示しない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、図に矢印で示す方向に回転駆動される。なお、上記回転駆動軸34には、軸封36(メカニカルシール等)が設けられている。また、この駆動軸34の中空部は、メディア分離部材32の内部空間に連通し、原料スラリー出口38を形成している。上記メディア分離部材としては、従来のスクリーンを用いることもできる。
【0022】
粉砕容器12の外周には、冷媒体または熱媒体(通常は冷媒体であって、冷却水)を通すためのジャケット40が設けられており、粉砕室14内を温調可能にしている。このジャケット40には、下方部分に冷却水を導入するための冷却水入口42、上方部分に冷却水を排出するための冷却水出口46が設けられている。
【0023】
粉砕容器12は、上記端板12aを取り外すことにより、粉砕容器12を開いて、容易にメンテナンスができるようになっている。
【0024】
本メディア攪拌ミルにおいては、上記攪拌部材22は、周速5〜30m/sの範囲の回転速度で駆動が可能であり、メディア分離部材32は、10〜20m/sの範囲の回転速度で駆動が可能である。
【0025】
上記粉砕室14内の下部には、案内環50が配置されている。この案内環50は、内周環板52、その外周方向に間隔を隔てた外周環板54,下辺を構成する環状の下環板56および上辺を構成する上環板58から構成されており、内部は液密となっている。
【0026】
この案内環50は、前記粉砕室14下方部分を半径方向に分割し、粉砕室下方部分内方部14aと環状の粉砕室下方部分外方部14bとを構成する。前記粉砕室下方部分外方部14bは、粉砕メディアと原料スラリーの混合物の上昇通路の機能を果たす。
【0027】
前記案内環50は、上記した構造であるので環状空間50aを有し、前記粉砕容器に取り付けられた複数のパイプ60a、60b(図2参照)によって支えられ、該パイプ60a、60bを用いて前記環状空間に冷却水の通水排水が可能な構造である。従って、本発明では、原料スラリーを粉砕容器12内部からも冷却できる。
【0028】
前記パイプ60a、60bは、図に示したように粉砕容器12の上方から延び、下端で前記案内環50を支持していることが好ましい。
【0029】
前記案内環50は、図に示したようにその下端が前記撹拌部材22の上端以上にあり、そしてその上端が前記メディア分離部材32の下端と下方に所定の間隔を隔てた位置にあることが好ましい。
【0030】
前記案内環の外周壁と粉砕容器の内周壁の間の間隔は、10〜50mmであることが好ましい。上記間隔が、上記の下限未満であると、ビーズの動きを拘束しすぎであり、上限を越えると、自由度が増しすぎる。
【0031】
前記案内環の高さは、粉砕室の高さの1/3〜1/2であることが好ましい。上記高さが、上記の下限未満であると、ビーズの流れのコントロールが不十分になり、上限を越えると、ビーズの流れのスムーズさが損なわれる。
【0032】
図4は、本発明のメディア攪拌ミルを使用する一態様を示す概略図である。本明細書、特許請求の範囲では、図4全体に示された構造もメディア攪拌ミルと考える。メディア攪拌ミル10の原料スラリー出口38は、パイプ200の一端に接続され、該パイプ200の他端はスラリータンクTの上部に開放されている。パイプ200の途中(これもメディア攪拌ミル10の一部と考える)には、原料スラリーから粉砕メディア30の金属コンタミ分を磁着して除去する磁着手段であるマグネットフィルター206が設けられている。このマグネットフィルター206としては、日本マグネティックス社製のマグネットフィルターCS型を用いるのが好ましい。このマグネットフィルター206は、メディア分離部材で分離しきれなかった粉砕メディアをも原料スラリーから除去することができる。タンクTの底部はパイプ201によりポンプ202を介してメディア攪拌ミル10の原料スラリー供給口116に接続されている。スラリータンクT内には、電動モータ203により回転駆動される撹拌羽根204が配置されている。この配置により、原料スラリーは被粉砕粒子が所望の微細粒に分散されるまで、繰り返しメディア攪拌ミル100に通される。
【0033】
作動においては、原料スラリー供給口16から原料である被粉砕粒子を含む原料スラリーを粉砕室14に導入しながら撹拌部材22を回転駆動する。粉砕室14内に導入されたスラリーは、粉砕室14内にすでに形成されているスラリーとメディア30の回転流れに乗って攪拌部材22の方向に下降移動されて、攪拌部材22により撹拌混合される。このとき、スラリーとメディア30は、半径方向外方に粉砕容器12の内壁まで移動され、この後撹拌混合された上記スラリーとメディア30は、今度は粉砕室14の内壁と案内環50の間の上昇通路を上昇移動する流れfとなり、そして上昇しきると、今度は先の下降する流れとなる。粉砕室14中心付近やや上方において、スラリーおよびメディアにはメディア分離部材32により回転運動が与えられる。この回転運動により、質量の大きいメディアは半径方向外向きに付勢され、スラリーから分離される。この場合、被粉砕粒子のうち、粉砕が不十分で粒子サイズが大きいものもメディアと同様に挙動する。一方、十分に粉砕されて質量が小さくなった粒子を含むスラリーは、メディア分離部材32の内部空間に入り、回転軸34内部の原料出口38を介してメディア攪拌ミル外部へ排出される。このとき、マグネットフィルター206は、原料スラリーから粉砕メディア30の金属コンタミ分を磁着して除去する。また、分離しきれなかった粉砕メディアも金属コンタミ分を磁着して除去する。この構成により、上記の整った流れ中に、原料粒子は、自由に運動する粉砕メディアの接触により良質な破砕、分散が行われ、その結果、高品質の製品がえられる。また、本発明のメディア攪拌ミルによれば、上記の作用により、粒度分布幅の狭い粉砕を達成することが可能になる。また、粉砕メディアの量も少なくて済む。
なお、本発明のメディア攪拌ミルにおいては、攪拌部材22が、メディア分離部材32から十分に離隔されているので、該メディア分離部材32の干渉が極めて少ない。
【符号の説明】
【0034】
10 メディア攪拌ミル
12 粉砕容器
14 粉砕室
16 原料スラリー供給口
18 フレーム
22 攪拌部材
24 回転駆動軸
25 軸封
30 粉砕メディア
32 メディア分離部材
32a ハブ部
32b 閉鎖板
34 中空駆動軸
36 軸封
38 原料出口
40 ジャケット
40a 冷却水入口
40b 冷却水出口
50 案内環
52 内周環板
54 外周環板
56 下環板
58 上環板
60a パイプ
60b パイプ
206 マグネットフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズ状粉砕メディアを収容した円筒形の粉砕室を有する粉砕容器、この粉砕容器に設けられた原料スラリー供給口、粉砕された原料スラリーを粉砕容器外に排出する原料スラリー出口、前記粉砕室の下部であって、該粉砕室の軸心とほぼ同軸の回転軸を持つ撹拌部材、および前記粉砕室内であって、前記撹拌部材の上方に設けられたメディア分離部材を備え、一端が前記原料スラリー供給口に連通され、他端が前記原料スラリー出口に連通され、撹拌羽が設けられたスラリータンクが途中に配置された原料スラリー循環路が接続されたメディア攪拌ミルにおいて、前記ビーズ状粉砕メディアが、耐錆性を持ち、磁着でき、弾性係数が150〜250GPaの金属あるいは合金で形成されており、そして原料スラリーが循環する経路の少なくとも1カ所に原料スラリー内に混入した粉砕メディア由来のコンタミを磁着するための磁着手段が設けられていることを特徴とするメディア攪拌ミル。
【請求項2】
前記粉砕メディアを形成する金属または合金が、ステンレススチールである請求項1のメディア攪拌ミル。
【請求項3】
前記磁着手段が、ミルの出口に配置されている請求項1または2のメディア攪拌ミル。
【請求項4】
前記ビーズ状粉砕メディアのビッカース硬度が2.5〜7.5GPaである請求項1〜3のいずれかのメディア攪拌ミル。
【請求項5】
前記粉砕メディアの直径が0.015〜0.1mmである請求項1〜4のいずれかのメディア攪拌ミル。
【請求項6】
粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の30%〜60%である請求項1〜5のいずれかのメディア攪拌ミル。
【請求項7】
前記粉砕室下方部分を半径方向に分割し、粉砕室下方部分内方部と環状の粉砕室下方部分外方部とを構成する案内環を設け、前記粉砕室下方部分外方部を粉砕メディアと原料スラリーの混合物の上昇通路とした請求項1〜6のいずれかのメディア攪拌ミル。
【請求項8】
前記案内環は環状空間を有し、前記粉砕容器に取り付けられた複数のパイプによって支えられ、該パイプを用いて前記環状空間に通水排水が可能な構造である請求項7のメディア攪拌ミル。
【請求項9】
前記パイプが粉砕容器の上方から延び、下端で前記案内環を支持している請求項8のメディア攪拌ミル。
【請求項10】
前記案内環は、その下端が前記撹拌部材の上端以上にあり、そしてその上端が前記メディア分離部材の下端と下方に所定の間隔を隔てた位置にある請求項7〜9のいずれかのメディア攪拌ミル。
【請求項11】
前記案内環の外周壁と粉砕容器の内周壁の間の間隔は、10〜50mmである請求項7〜10のいずれかのメディア攪拌ミル。
【請求項12】
前記案内環の高さは、粉砕室の高さの1/3〜1/2である請求項7〜11のいずれかのメディア攪拌ミル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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