説明

メトフォルミンおよびMTP阻害剤の組み合わせ物

本発明は、抗糖尿病薬メトフォルミンとMTP(ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質)阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルとの組み合わせ物、および2型糖尿病の処置または防止に組み合わせて投与するためのその使用に関する。さらに本発明は、第一の有効成分としてメトフォルミン、および第2の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを、2型糖尿病の処置または防止に同時もしくは順次使用するための組み合わせ調製物として含む生成物、ならびに関連する製薬学的組成物および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗糖尿病薬メトフォルミンとMTP(ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質)阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルとの組み合わせ物、および2型糖尿病の状態の処置または防止に組み合わせて投与するためのその使用に関する。さらに本発明は、第一の有効成分としてメトフォルミンと第二の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルとを、2型糖尿病の処置または防止に同時もしくは順次使用するための組み合わせ調製物として含む生成物、および関連する製薬学的組成物および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病(単に糖尿病と呼ばれることが多い)は、膵臓のベータ細胞により生産されるホルモンであるインスリンのレベルが低いか、または補充するには不十分なレベルのインスリンの分泌と結び付いたインスリンの効果に対する異常な抵抗性のいずれかから生じる代謝障害および不適切な高血糖(高血糖症)を特徴とする症候群である。世界保健機関は3種の主要な糖尿病の型を認知している:それらは異なる原因および人口分布を有する1型、2型および妊娠糖尿病である。1型糖尿病は通常、膵臓ベータ細胞の自己免疫的破壊による。2型糖尿病は、異常に大量のインスリンを必要する目的組織中でのインスリン抵抗性またはインスリン感度の低下を特徴とし、そしてベータ細胞が需要を満たすことができない場合に糖尿病が発症する。妊娠糖尿病はインスリン抵抗性が関与する点で2型糖尿病に似ているが、妊娠中のホルモンが女性にインスリン抵抗性を引き起こし、遺伝的にこの状態を発症し易くさせる可能性がある。
【0003】
2型糖尿病は、はるかに最も多い糖尿病の状態であり、そして太り気味または肥満の成人で最も多く生じるが、この疾患の罹患率は青年層で劇的に増加する。2型糖尿病の主な要因は、脂肪および筋肉細胞レベルでのインスリン抵抗性である。これは膵臓で生産されるインスリンが細胞に接続してグルコースを中に入れ、そしてエネルギーを生産することができないことを意味する。これが高血糖症(高血中グルコース)を引き起こす。これを補償するために、膵臓はさらにインスリンを生産する。細胞はこのインスリン増加を感知し、そしてさらに抵抗性となり、高グルコースレベル、そしてしばしば高インスリンレベルをもたらす。
【0004】
2型糖尿病の人が、食事および運動で正常またはほぼ正常な血中グルコースレベルに到達できない場合、薬物療法を使用して血中グルコースレベルを下げることができる。2型糖尿病の薬物療法には、メトフォルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン(ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン)、メグリチニド、シタグリプチンのような経口の低血糖薬、または注射可能なホルモンのインスリンがある。
【0005】
メトフォルミン、すなわちN,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸アミドは、太り気味または肥満の人の2型糖尿病の処置の第一選択薬である。メトフォルミン療法は、インスリンに対する感受性を上げ、そして内因性または外因性インスリンの不存在では活性でない。主な効果は肝臓のグルコース排出を下げ、これにより空腹時性血糖を下げる。さらにメトフォルミンは末梢グルコースの筋肉および脂肪組織への取り込みを強化する。
【0006】
メトフォルミンと他の抗糖尿病薬との組み合わせ物は、臨床の現場で広く使用されてお
り、徹底的な臨床的調査に供されている。例えばメトフォルミンと、例えばグリブリドもしくはグリベンクラミドのようなスルホニルウレア誘導体との組み合わせ物は、2型糖尿病患者でメトフォルミンの単独治療後に次の段階として広く使用されている。特許文献1はロシグリタゾンとメトフォルミンとの組み合わせの組み合わせ物を開示し、そしてピオグリタゾンとメトフォルミンの組み合わせ物が最近の臨床試験で試験された。ジペプチルペプチダーゼ阻害剤であるシタグリプチンとメトフォルミンの組み合わせ生成物が、最近、2型糖尿病の処置に認可された(Janumed)。メトフォルミンを含むメグリチニドの使用も特許文献2に記載された。
【0007】
ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(今後、MTPと呼ぶ)は、主に腸および肝臓でトリグリセリド、コレステリルエステルおよびホスファチジルコリンのようなリン脂質を輸送できることが知られている。これはMTPが、消化管におけるカイロミクロンおよび肝臓におけるVLDLのようなアポ−B含有リポタンパク質の合成に必要であることを示す。したがって全身的に活性なMTP阻害剤は、VLDLおよびLDLの合成を阻害し、これによりヒトのVLDL、LDL、コレステロールおよびトリグリセリドのレベルを下げることになる。MTPを阻害できる化合物は、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、2型糖尿病、アテローム硬化症のような障害の処置、および食後の血清トリグリセリド血漿レベルの低下に有用となると考えられる。
【0008】
MTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルは、特許文献3に化合物(230)として記載されている。この化合物は血漿中で迅速に代謝され、大変低い全身的血漿濃度を生じる。したがって主に腸のMTPを阻害して食後のトリグリセリドの吸収に阻害を生じるが、肝臓に及ぼす効果は限定的となるように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/065663号パンフレット
【特許文献2】米国特許第2007/0167525号明細書
【特許文献3】国際公開第02/20501号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、抗糖尿病薬メトフォルミンとMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルとの組み合わせ物を提供することであり、これは2型糖尿病の処置、管理または防止に関してメトフォルミンの単独療法に比べて有利な効果を有する。
【0011】
この有利な、すなわち有益な効果は、2型糖尿病を有する個体が該MTP阻害剤とメトフォルミンとの組み合わせ物で処置された場合に、メトフォルミンの単独療法での処置よりも低レベルのHbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)および低レベルの空腹時性血漿グルコース(FPG)で分かる。有利な、すなわち有益な効果が分かる他のパラメーターは、例えば体重、LDLレベル、およびHDLに対するLDLの比である。
【0012】
HbA1c、すなわちグリコシル化ヘモグロビンは、高い血漿グルコースレベルへのヘモグロビンの標準的な暴露により、非酵素的経路で形成されたヘモグロビンの状態である。赤血球中でのHbA1cの形成は、細胞がそのライフサイクルの間に暴露されたグルコースの平均レベルを反映している。HbA1cを測定することは、長期のグルコース調節をモニタリングすることにより抗糖尿病療法の有効性を評価する。より効果的な糖尿病の
処置が、より低レベルのHbA1cを生じるだろう。
【0013】
メトフォルミンとMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルとを組み合わせた使用は、グルコース依存性のインスリン分泌に有益な効果を有することができるインクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド(GLP−1)の分泌を刺激し、そしてまた満腹を誘導するペプチドYYの分泌を刺激し、これにより体重の減少を生じ、そしてインスリンの感受性を改善すると考えられる。
【0014】
メトフォルミンとMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルは、同時(例えば別個の、もしくは単位組成物で)、またはいずれかの順序で順次に組み合わせて投与することができる。後者の場合、2種の有効成分がある期間内にある量で、そして有利な効果またはさらに相乗的効果が確実に達成されるために十分な量および様式で投与される。好適な方法および投与の順序および個々の投薬用量および組み合わせ物の各有効成分に関する処方は、それらの投与経路および処置する特定の患者に依存すると思われる。最適な投与法および順序、および投薬用量および処方は、常法を使用して、そして本明細書で説明する情報の観点から当業者が容易に決定できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する、MTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルと、抗糖尿病薬メトフォルミンとを「組み合わせて投与する」、「組み合わせた投与」、または「組み合わせた使用」とは、個体に及ぼす各生成物の効果が重なるように、これら生成物を個体に同時に、またはある間隔内で投与することを意味する。
【0016】
また本発明は、2型糖尿病に罹患している患者の処置または予防的処置に、同時または順次使用するために適する組み合わせ調製物として、第一の有効成分としてメトフォルミン、および第2の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを含有する生成物に関する。
【0017】
本明細書で使用する用語「治療に有効な量」とは、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が求める組織系、動物またはヒトにおける生物学的もしくは医学的応答を誘導する活性化合物または製薬の量を意味し、この応答には処置する疾患または障害の症状の緩和を含む。より詳細には、メトフォルミンとMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルの投与を含んでなる組み合わせ療法を対象とする本発明では、「治療に有効な量」は、組み合わせた効果が所望の生物学的または医学的応答を誘導するように、一緒に、または順次摂取される薬剤の組み合わせの量を意味すべきである。例えば、治療に有効な量のメトフォルミンは、1日あたり500mgから3000mgの間の量を、通常2もしくは3回の用量に分割することが知られている。長期放出製剤の錠剤は、1日1回の投与でよい。しかし臨床的プラクティスでは、2000g/日より高い用量を与えることは稀である。さらに上記の例のように治療に有効な量を用いた併用療法(co−therapy)の場合、当業者はメトフォルミンおよび/またはMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルの量が別個に治療に有効であってもなくてもよいことを認識するであろう。
【0018】
メトフォルミン製剤は即時放出製剤、ならびに1日1回の使用を可能にする徐放性もしくは持効性放出(prolonged release:SR)、または新規の長期放出製剤を含むことができることに注目すべきである。
【0019】
2型糖尿病の処置、管理または予防に、同時または順次使用するための組み合わせ調製物として、第一の有効成分としてメトフォルミン、および第2の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを含有する生成物は、キットを構成することができる。キットは別個の組成物を含有するために分割されたボトルもしくは分割されたホイルパケットのような容器を含んでなることができ、ここで各区画はメトフォルミンまたはMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルのいずれかを含んでなる複数の剤形(例えば錠剤)を含む。あるいは有効成分を含有する剤形を分けるというより、むしろキットは個別の区画のそれぞれに別個の組成物を含んでなる全投薬用量を含む。この種のキットの例は、ブリスターパックであり、ここで各個別のブリスターが2種の錠剤を含み、1つはメトフォルミンを含んでなる錠剤であり、他方はMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを含んでなる錠剤である。
【0020】
典型的には、キットは別個の成分の投与に関する指示を含んでなる。そのような使用書には以下のような状況を含む:
i.成分が投与される剤形(例えば経口)
ii.生成物の成分の一部が異なる投薬間隔で投与される時期、または
iii.組み合わせ中の個別成分のタイトレーションが処方する医師により望まれる時期。容器にはその上に中の内容および適宜注意を説明するラベルを付してもよい。
【0021】
そのようなキットの一例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは包装産業で公知であり、そして錠剤、カプセル等のような製薬学的な単位剤形(unit dosage form)の包装に広く使用されている。ブリスターパックは一般に、好ましくは透明なプラスチック材料のホイルで覆われた比較的硬質材料のシートからなる。包装工程中に、プラスチックホイル中に凹所が形成される。この凹所は包装されるべき錠剤またはカプセルのサイズおよび形状を有する。次いで錠剤またはカプセルが凹所に配置され、そして比較的硬質材料のシートはホイルの面でプラスチックホイルに対して密封され、これはプラスチックホイルとシートとの間の凹所の方向とは反対側である。好ましくはシートの強度は、凹所に手で圧をかけることによりシートの凹所の所に開口が形成され、これにより錠剤またはカプセルをブリスターパックから取り出すことができるような程度である。次いで錠剤(1もしくは複数)またはカプセル(1もしくは複数)は、開口部により取り出すことができる。キットには例えば錠剤またはカプセルに続く数の形式で、記憶の援助を提供することが望ましく、これによりその数はそのように指定される錠剤またはカプセルが摂取されるべき処方期間中の日に対応する。そのような記憶を援助する別の例は、カードに印刷されたカレンダーであり、例えば以下のように「第一週、月曜日、火曜日...、等、第二週、月曜日、火曜日...」などである。他の記憶を援助する変形は、容易に明白である。「毎日の用量」は、所定の1日に摂取すべき1個の錠剤もしくはカプセルまたは数個のピルもしくはカプセルであることができる。また第一化合物の毎日の用量は、1個の錠剤もしくはカプセルからなることができ、同時に第二化合物の毎日の用量は数個の錠剤またはカプセルからなることができ、そして逆であることもできる。記憶の援助はこれを反映すべきである。
【0022】
また本発明は、担体および第一の有効成分としてメトフォルミン、および第二の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを、好ましくはそれぞれ2型糖尿病の患者に治療的効果を生じる量で含んでなる製薬学的組成物に関する。また本発明は、前記の製薬学的組成物の調製法に関する。
【0023】
第一の有効成分としてメトフォルミン、および第二の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを、同時または順次使用するための組み合わせ調製物として含んでなる本発明の生成物、あるいはメトフォルミンおよび該MTP阻害剤の組み合わせ物を含んでなる本発明の製薬学的組成物は、肥満または高脂血症の処置にも使用することができる。
【0024】
本発明が、例えば哺乳動物を処置する薬剤を製造するために本発明に従う生成物または製薬学的組成物の使用に関連すると言う場合、そのような使用は哺乳動物の処置法として特定の管理下にあると解釈されるべきであり、その方法はそのような処置が必要な哺乳動物に有効量の本発明の生成物または製薬学的組成物を投与することを含んでなると理解される。
【0025】
したがってまた本発明は、哺乳動物個体の2型糖尿病を処置または防止する方法を提供し、この方法は個体に(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルおよびメトフォルミンの組み合わせ投与を含んでなる。
【0026】
また本発明は、2型糖尿病の処置、管理または防止においてメトフォルミンの効力を改善するために、メトフォルミンと組み合わせて投与するための薬剤を製造するために、(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルの使用に関する。
【0027】
本発明による使用のための製薬学的組成物を調製するために、有効成分として塩基もしくは酸付加塩形の特定化合物の治療に有効な量が、製薬学的に許容され得る担体との完全な混合物に合わせられるが、この担体は投与に望ましい調製物の形態に依存して広い様々な形態を取ることができる。これらの製薬学的組成物は望ましくは経口投与に適する単位剤形(unitary dosage form)である。例えば経口剤形の組成物の調製では、懸濁液、シロップ、エリキシルおよび溶液のような経口液体調製物の場合、例えば水、グリコール、油、アルコール等の任意の通常の製薬学的媒質を使用でき;あるいは粉末、ピル、カプセルおよび錠剤の場合、澱粉、糖、カオリン、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等のような固体担体を使用できる。投与の容易さから、錠剤およびカプセルが最も有利な経口単位剤形を表し、この場合、固体の製薬学的担体が明らかに使用される。
【0028】
前記製薬学的組成物を、投与の容易さおよび投薬の均一性から投薬単位形(dosage unit form)に製剤することが特に有利である。本明細書および特許請求の範囲で使用する投薬単位形とは、単位投薬量として適する物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要とする製薬学的担体と合わさって所望の治療効果を生じるように算出された、予め定めた量の有効成分を含有する。そのような投薬単位形の例は錠剤(刻み目付またはコート錠剤)、カプセル、ピル、粉末小包、茶サジ一杯分、テーブルスプーン一杯分等、およびそれらを複数に分割したものである。
【0029】
組み合わせ物の各成分の必要用量は、処置の過程を通して2もしくは3回の副用量として適切な間隔で投与することが適切かもしれない。スターターキットは、250mg、500mgまたは100mgといった一定用量のメトフォルミンを有する複数の用量、および可変の増加する用量のMTP阻害剤、例えば5、10、15mgを含むことができる。スターターキットは薬剤を別個の投薬製剤として提供でき、あるいはスターターキットは2つの薬剤の単一投薬製剤を提供することができる。スターターキットが組み合わせた一つの単位投薬量を含む場合の態様では、例となる単位投薬量は以下の通りである(mgの投薬用量として、メトフォルミン:MTP阻害剤の比で提供される):500:5、500:10、500:15、500:20、500:25、500:30、1000:5、1000:10、1000:15、1000:20、1000:25、1000:30、1500:5、1500:10、1500:15、1500:20、1500:30、2000:5、2000:10、2000:15、2000:20、2000:25、2000:30。
【実施例】
【0030】
メトフォルミンとMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルとの組み合わせに関する概念の立証試験
メトフォルミン処置を受けている2型糖尿病の被験体の処置において、MTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルの安全性および効力を調査した。1日2回(bid)、5−10−15mgの3用量のMTP阻害剤の処方を、二重盲検の無作為化された12週間の平行群実験計画でプラセボと比較し、ここですべての被験体はメトフォルミン処置に続いた。すべての被験体は、2型糖尿病の処置に関するその地方の実践ガイドラインに従い、熱量的に適切な低脂肪(30%)の食事を維持した。
【0031】
実験に無作為化された被験体は、少なくとも3カ月間、2型糖尿病でなければならず、そして少なくとも2カ月間、安定なメトフォルミンの単一療法を受けていた。88、84、91および89名の患者がプラセボ、5mg、10mgおよび15mg BIDに無作為化された。平均年齢は55歳であり、そして女性よりわずかに多い男性がこの実験に無作為化された(男性:女性−54%:46%)。
【0032】
平均のベースライングリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)は、7.8±0.8%(平均±SD)であり、そして平均血漿グルコースは9.1±1.80ミリモル/リットル(平均±SD)であった。被験体の大部分(68%)が8%以下のHbA1cレベルを有した。
【0033】
ベースラインでの平均体重は94.9kgであり、そして異なる処置群で92.8kgから96.7kgの間で変動したが、平均ベースラインBMIは32.8kg/mであった。
【0034】
87%の被験体が試験を完了した。試験から脱落した被験体の比率は、プラセボ、5、10、および15mg bidの用量群についてそれぞれ13%(11/88)、7%(6/84)、18%(16/91)および13%(12/89)であった。
【0035】
第1の効力パラメーター:12週目でのHbA1cレベルのベースラインからの変化は、混合モデル分析を使用して、すべての実薬処置群(active treatment
arm)についてプラセボに対して統計的に有意な減少を示した。異なる処置群でのH
bA1c(%)の平均減少は、プラセボ、5、10、および15mg bidについてそれぞれ−0.27、−0.46、−0.55および−0.54であった。プラセボからの最小2乗平均(混合モデルから)の差は、5、10、および15mg bid用量についてそれぞれ0.19、0.28および0.28であった。
【0036】
重要な第2の効力パラメーター:12週目の平均体重減少は、プラセボ、5、10、および15mg bid群についてそれぞれ1.88kg(2%)、1.71kg(1.0%)、2.80kg(2.9%)および3.37kg(3.6%)であった。実薬処置群において、空腹時性血漿グルコース(FPG)の12週目でのベースラインからの平均変化パーセントは、プラセボ、5、10、および15mg bid群についてそれぞれ+0.7%、−2.3%、−6.1%および−6.0%であり、そしてベースラインからのわずかな(modest)絶対変化に対応した(プラセボ、5、10、および15mg bid用量群についてそれぞれ0.06ミリモル/リットルの増加、そして0.37、0.063および0.63ミリモル/リットルの減少)。実薬処置群で観察された変化の規模は、HbA1cの低下に合致している。
【0037】
測定した第2の効力パラメーターには、空腹時性血漿脂質を含んだ。有益な効果は、MTP阻害剤(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを10mg bidおよび15mg bidでメトフォルミンとの組み合わせ物で投与した時に、LDLレベルおよびHDLに対するLDLの比で見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の有効成分としてメトフォルミン、および第2の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルを、同時もしくは順次使用するための組み合わせ調製物として含んでなる生成物。
【請求項2】
薬剤として使用するための請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
2型糖尿病の処置または防止に使用するための請求項1に記載の生成物。
【請求項4】
肥満の処置に使用するための請求項1に記載の生成物。
【請求項5】
2型糖尿病を処置または防止する薬剤を製造するための請求項1に記載の生成物の使用。
【請求項6】
肥満を処置する薬剤を製造するための請求項1に記載の生成物の使用。
【請求項7】
第一の有効成分としてメトフォルミン、および第2の有効成分としてMTP阻害剤である(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステル、および担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項8】
薬剤として使用するための請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項9】
2型糖尿病の処置または防止に使用するための請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項10】
肥満の処置に使用するための請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項11】
2型糖尿病を処置または防止する薬剤を製造するための請求項7に記載の製薬学的組成物の使用。
【請求項12】
肥満を処置する薬剤を製造するための請求項7に記載の製薬学的組成物の使用。
【請求項13】
2型糖尿病の処置または防止において、メトフォルミンの効力を改善するためにメトフォルミンと組み合わせて投与する薬剤を製造するための(+)−フェニル−(4−{4−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−フェニル}ピペリジン−1−イル)酢酸メチルエステルの使用。

【公表番号】特表2011−509974(P2011−509974A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542626(P2010−542626)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050418
【国際公開番号】WO2009/090210
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】