説明

メラミン化粧板

【課題】メラミン樹脂の有する表面硬度を維持しつつ、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れるメラミン化粧板を提供する。
【解決手段】表面層と芯材層とが積層された構造を有するメラミン化粧板であって、前記表面層は、意匠面となる第1の面側にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、前記芯材層と接する第2の面側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなる表面層材料で構成され、前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とするメラミン化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラミン化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラミン化粧板は、表面にメラミン樹脂を有する表面層(化粧層)が形成された化粧板であり、硬く、耐水性、耐汚染性、耐傷付き性が良好なため、家具や建築用の壁や車輌の内装用途等、様々な分野で使用されてきた。
一般的なメラミン樹脂を用いたメラミン化粧板は、表面硬度が硬く、曲げ加工等のポストフォーム(二次成形)加工用途には不向きである。しかし、近年では、曲げ用途にも対応するポストフォーム用メラミン樹脂が開発され、これを用いたポストフォーム用化粧板は加熱曲げができるようになり、扉等の用途に使用されてきた。さらに、フェノール樹脂を含浸させたクラフト紙やアルミニウム等をメラミン化粧板の裏貼りに使用することで、用途に合わせた様々な組み合わせのメラミン化粧板が製造されている。例えば、特許文献1には、ポストフォーム用メラミン樹脂を用いたメラミン樹脂含浸紙からなる表面層とアルミニウムを組み合わせたメラミン化粧板が開示されている。また、メラミン化粧板の中にはキッチンパネル材として普及する不燃性メラミン化粧板があり、ガラス繊維基材と水酸化アルミニウム微粉等を用いた化粧ボード仕様の不燃性メラミン化粧板が主流となっている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているメラミン化粧板では、メラミン化粧層とアルミニウムを接着させるためには、フェノール樹脂を含浸させたクラフト紙の層が必要であり、このフェノール樹脂層がある分、メラミン化粧板の厚みが厚くなるため、薄膜化が難しく、曲げ加工性も制限され、加熱しても4mmRの曲げ加工が限界であった。
また、化粧ボード仕様では、製品厚みが厚く、加熱下でも柔軟性を発現出来ず、高剛性であるため、不燃性と曲げ加工性を同時に要求される分野においては、容易に実用化されない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−96702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、メラミン樹脂の有する表面硬度を維持しつつ、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れるメラミン化粧板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記発明(1)〜(9)により達成される。
(1)表面層と芯材層とが積層された構造を有するメラミン化粧板であって、
前記表面層は、意匠面となる第1の面側にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、前記芯材層と接する第2の面側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなる表面層材料で構成され、
前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とする、メラミン化粧板。
(2)全体厚みが0.4mm以下である、上記(1)に記載のメラミン化粧板。
(3)前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含む、上記(1)又は(2)に記載のメラミン化粧板。
(4)前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、非水溶性である、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載のメラミン化粧板。
(5)前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するウレタンアクリル複合粒子を含む、上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載のメラミン化粧板。
(6)前記ウレタンアクリル複合粒子は、アクリル成分をコアとし、ウレタン成分をシェルとするコアシェル構造を有する水性クリヤータイプである、上記(5)に記載のメラミン化粧板。
(7)前記ガラスクロスを基材とするプリプレグは、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有する樹脂組成物をガラスクロスに含浸してなる、上記(1)乃至(6)のいずれか一に記載のメラミン化粧板。
(8)前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂及び/又はウレタン樹脂を含有する、上記(7)に記載のメラミン化粧板。
(9)常温(通常20〜30℃程度)での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工性を有する、上記(1)乃至(8)のいずれか一に記載のメラミン化粧板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メラミン樹脂の有する表面硬度を維持しつつ、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れるメラミン化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のメラミン化粧板の構成の一例を表す概念図である。
【図2】本発明のメラミン化粧板の製造方法の一例を説明する図である。
【図3】本発明のメラミン化粧板の構成の他の一例を表す概念図である。
【図4】本発明のメラミン化粧板の構成の他の一例を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のメラミン化粧板は、表面層と芯材層とが積層された構造を有するメラミン化粧板であって、前記表面層は、意匠面となる第1の面側にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、前記芯材層と接する第2の面側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなる表面層材料で構成され、前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とする。
【0010】
以下、本発明のメラミン化粧板について、図をもとに詳細に説明する。
本発明のメラミン化粧板の構成の一例として、図1に、表面層15と芯材層16とから成るメラミン化粧板12の構成を示す。また、メラミン化粧板の製造方法の一例として、図2に、メラミン化粧板12の製造方法の一例を示す。図2に示す例では、メラミン化粧板12は、表面層材料15Aと芯材層材料16Aとを重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。
【0011】
<1.表面層>
表面層15は、表面層材料15Aで構成され、この表面層材料15Aは、本発明のメラミン化粧板12の意匠面(露出される側の面)側に配置される。表面層材料15Aは、意匠面となる第1の面側151にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、前記芯材層16と接する第2の面側152に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなるものである。
なお、本発明において表面層基材が樹脂を担持するとは、樹脂が基材(担体)の表面に付着し、又は、基材内部の空隙部に含浸され、表面層材料の成形後に担持させた樹脂の性能を発現することを可能にする状態であることを意味する。なお、樹脂は基材の表面及び基材の内部に均一に分布していなくてもよい。
【0012】
前記表面層基材は、第1の面側151に意匠面が形成されたシート状の基材である。前記表面層基材の材質は特に限定されないが、好ましくは、パルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維などを用いることができ、必要に応じて、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙などを用いることができる。
前記表面層基材の坪量は特に限定されないが、40〜150g/mであることが好ましい。坪量が前記下限値未満であると、樹脂含浸工程での切れ、しわの問題から、塗工処理が困難であり、さらに第1の面と第2の面それぞれに担持させる樹脂含浸量を調整する事も困難である。一方、坪量が前記上限値を超えると、表面層基材が担持する樹脂の含浸量にムラが生じ、メラミン化粧板12の柔軟性を低下させると共に、生産性低下、コスト高の原因となるため好ましくない。
【0013】
本発明に用いる表面層材料15Aは、表面層基材の第1の面側151にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持されてなる。これにより、表面層材料15Aの第1の面側151の表面、即ちメラミン化粧板表面に好適な表面硬度を付与することができる。
メラミン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メラミンとホルムアルデヒドを中性又は弱アルカリ下において反応させて得られるものを用いることができる。メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比((ホルムアルデヒドのモル量)/(メラミンのモル量)の値であり、以下、単に「反応モル比」ということがある。)は、特に限定されないが、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0、さらに好ましくは1.1〜1.8として、反応させて得られたものを好適に用いることができる。反応モル比が前記下限値未満であると、未反応成分が増加し保存性低下、コスト高となり、前記上限値を超えると硬化後の樹脂柔軟性低下が著しくなる。なお、メラミン樹脂としては、1種類が単独で含まれるもの用いることもできるし、反応モル比や重量平均分子量等が異なる2種類以上のメラミン樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
また、メラミン樹脂としては、住友化学(株)製のメラミン樹脂等、市販のものを用いることもできる。
【0014】
メラミン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、200〜500が好ましく、特に250〜350が好ましい。分子量が前記下限値よりも小さいと、未反応分が多くなり、保存性が低下し、前記上限値よりも大きいと、基材への含浸性が低下する。なお、前記重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0015】
表面層材料15Aの第1の面側151に担持される樹脂中の上記メラミン樹脂の含有量は、特に限定されないが、80〜100質量%であり、特に95〜100質量%が好ましい。メラミン樹脂の含有量が前記下限値未満であると、表面硬度や耐汚染性が低下する。
【0016】
前記メラミン樹脂を含有する樹脂を表面層基材の第1の面側151に担持させる方法としては、特に限定されないが、前記樹脂を溶剤に溶解した樹脂ワニスを、例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーターなどの公知の装置を用いて塗工した後、80〜130℃程度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。なお、前記加熱乾燥後の樹脂含浸紙には、当該樹脂含浸紙全体の重さを100質量%としたときに、2〜6質量%の揮発分(溶剤)が残存する事が好ましい。これにより、樹脂含浸紙の取り扱いが容易になり、また加熱成形時において、第1の面側151に担持させたメラミン樹脂の樹脂フローが向上する事で化粧板の意匠外観・表面光沢度が良好となるからである。揮発分が2%以下では樹脂含浸紙が割れ易く取り扱いが困難となり、樹脂フローの低下もあり外観形成に支障が生じる。また、揮発分が6%以上にした場合、成形後の乾燥環境下では、化粧板反り(シートカール)が増大しやすくなり、7.5%以上では化粧板外観での光沢転写性に揮発分の影響が生じて来る。
【0017】
前記メラミン樹脂を含有する樹脂を溶解する溶剤としては、特に限定されないが、例えば、水、メタノール等が挙げられる。中でも水が好ましい。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。前記樹脂ワニスの固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、前記樹脂ワニスの30〜70質量%が好ましく、特に45〜60質量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
【0018】
本発明の表面層材料15Aは、表面層基材の意匠面と反対側である第2の面側152には、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持されてなる。なお、本発明において、熱可塑性エマルジョン樹脂とは、熱可塑性樹脂を含むが溶剤に分散してエマルジョン状態となったものである。また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分とは、熱可塑性エマルジョン樹脂から溶剤を除いた成分を意味する。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、メラミン化粧板に柔軟性を付与する。従って、第2の面側152には、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持することにより、表面層15と芯材層16との接着強度を向上させることができるとともに、メラミン化粧板の曲げ加工性を向上させることができる。
【0019】
前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。本発明において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。ウレタン樹脂とアクリル樹脂とは、各々が芯材層との接着強度が高いため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン樹脂は、特に強靭性、弾性、柔軟性に優れ、アクリル樹脂は、特に透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性に優れる。また、本発明において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。また、前記ウレタンアクリル複合粒子が、表面層材料15Aの第1の面側151に担持された時の粒子間の配列状態は、特に限定されないが、例えば、直鎖構造等が挙げられる。粒子の構造及び粒子間の配列状態は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。これらの中でも、前記ウレタンアクリル複合粒子は、アクリル成分をコアとし、ウレタン成分をシェルとするコアシェル構造を有する水性クリヤータイプであることが特に好ましい。ウレタンアクリル複合粒子が上記コアシェル構造であると、表面層材料15Aの第2の面側152に担持させたときに、表面外郭がウレタン組成となるので、表面層材料15Aの第2の面側152は、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂の両方の特性を有しつつ、外郭にウレタン樹脂の特性が付与される。なお、本発明において「水性クリヤー」とは、樹脂液は水溶性であり水分を飛ばした後の塗膜は非水性で、かつ下地の色柄が明らかに識別出来る程の透明性を持つ樹脂水溶液を意味する。表面層材料15Aの第2の面側152に担持される樹脂が水性クリヤータイプであることにより、表面層が有する意匠面の色調に及ぼす影響を抑制することができる。
なお、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、これらの中の1種類が単独で含まれるもの用いることもできるし、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して含むもの用いることもできる。
また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、上記熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子以外にも、必要に応じて少量の増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等を含んでいても良い。
【0020】
前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含むことが好ましく、前記エマルジョン樹脂粒子の平均粒径は、60〜90nmであることが特に好ましい。これにより、表面層基材の繊維間への含浸性が向上し、より表面層基材の内部に含浸させることができるため、表面層に良好な柔軟性を付与することができる。
【0021】
また、前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、非水溶性であることが好ましい。これにより、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が表面層材料15Aの第1の面側151へと移行して、第1の面側151に担持されているメラミン樹脂と混合して、第1の面側151のメラミン樹脂による表面性能を損なうことを防止することができる。
【0022】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を表面層基材の第2の面側152に担持させる方法としては、特に限定されず、メラミン樹脂を含有する樹脂を表面層基材の第1の面側151に担持させる上述の方法と同様にして行うことができる。つまり、溶剤に溶解されたエマルジョン状態の前記熱可塑性エマルジョン樹脂を塗工、加熱乾燥する方法等が挙げられる。なお、前記加熱乾燥後の樹脂含浸紙には、当該樹脂含浸紙全体の重さを100質量%としたときに、2〜6質量%の揮発分が残存することが好ましい。これにより、樹脂含浸紙の取り扱いが容易になり、また加熱成形時において、第1の面側151に担持させたメラミン樹脂の樹脂フローが向上する事で化粧板の意匠外観・表面光沢度が良好となるからである。
【0023】
前記熱可塑性エマルジョン樹脂に用いられる溶剤としては、特に限定されないが、例えば、水等が挙げられる。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、前記熱可塑性エマルジョン樹脂の25〜60質量%が好ましく、特に30〜45質量%が好ましい。これにより、前記熱可塑性エマルジョン樹脂の基材への含浸性を向上できる。
【0024】
<2.芯材層>
メラミン化粧板12は、表面層15の第2の面側152に、芯材層16を積層してなる。
前記芯材層16は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料16Aで構成される。これにより、メラミン化粧板に、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
【0025】
ガラスクロスとしては、特に限定されないが、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等が挙げられ、中でも不燃性、強度の点からガラス織布が好ましい。
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもTガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。
【0026】
前記ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量100g/m以上とする事が好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m以下が好ましい。
【0027】
前記プリプレグとしては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂等を含有する樹脂組成物を上述のガラスクロスに含浸してなるものを用いることができる。前記樹脂組成物としては、前記表面層15の第2の面側152と芯材層16との層間接着強度が、メラミン化粧板12を形成するために十分であれば、特に限定されないが、中でも、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有することが好ましく、20〜35質量%含有することが特に好ましい。これにより、前記表面層15の第2の面側152と芯材層16との層間接着強度を向上させることができる。
【0028】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。中でもアクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、前記熱可塑性樹脂はアクリル樹脂及び/又はウレタン樹脂を含有することが好ましい。
【0029】
前記プリプレグは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、上述したガラスクロスと同様のガラスクロスに、前記樹脂組成物を溶剤に溶解させたワニスを含浸、乾燥させることにより得られる。
【0030】
また、前記芯材層材料16Aは、表面層材料15Aと接する面側に、さらに熱可塑性エマルジョン樹脂を担持させる事で、さらに接着強度を向上させ、高い常温曲げ加工性を達成出来る。なお、芯材層材料16Aの表面層材料15Aと接する面側に担持させる熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、柔軟性を付与し、燃焼時の発熱量、ガス有害性に支障なければ特に限定されず、当該熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が含むエマルジョン樹脂粒子の平均粒径は特に限定されず、水溶性でも非水溶性でもよい。
【0031】
芯材層16の厚みは、100μm以上とすることが好ましい。これにより、メラミン化粧板12に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほどメラミン化粧板12の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることが好ましい。
【0032】
<3.メラミン化粧板>
メラミン化粧板12は、上述した表面層材料15Aと芯材層材料16Aとを、所定の順序で重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。
メラミン化粧板12を加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度130〜150℃、圧力2〜8MPa、時間10〜60分間で実施することができる。
また、メラミン化粧板12の成形時に、表面層材料15Aの第1の面側に、鏡面仕上げ板を重ねることにより鏡面仕上げとすることができ、エンボス板又はエンボスフィルム等を重ねることにより、エンボス仕上げとすることができる。
【0033】
なお、本発明のメラミン化粧板は、図1及び図2に示したメラミン化粧板12の形態に限定されず、機械的強度等を付与したい場合には、図3に示すように、芯材層の下側にさらに別の芯材層材料を積層して芯材層を2層積層した、表面層15、芯材層16、芯材層17の三層構成とすることもできる。また、表面層および芯材層以外の別の層を有していてもよく、例えば、図4に示すように、意匠面側の最外層に保護層18を有していたり、芯材層側の最外層に支持層19を有していたりしても良い。
前記保護層18は、特に限定されないが、例えば、坪量10〜50g/mの紙基材に、メラミン樹脂単独、あるいは、メラミン樹脂に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいはシリカから選ばれる無機充填材を含有させた樹脂組成物を含浸させ、これを乾燥することにより得ることができる。
前記支持層19は、特に限定されず、例えば、表面層基材に用いられるものと同様の基材に、表面層材料の第1の面側又は第2の面側に用いることができる樹脂を含浸させてなるプリプレグや、金属箔等を用いることができる。
【0034】
本発明のメラミン化粧板は、常温(通常20〜30℃程度)での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工が可能であるが、特に限定はされない。最小曲げ半径Rとは、半径Rの湾曲部を有する型に沿わせて、一方方向に行う常温曲げ加工を繰り返し実施しても、割れ等の不具合を生じず、100%の良品が得られる最小の型の半径Rを意味する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
表面層基材として坪量80g/mの酸化チタン含有化粧紙(大日本印刷(株)製)を用い、前記酸化チタン含有化粧紙の第2の面側に、ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で40g/mとなるように塗工し、続いて前記化粧紙の第1の面側(意匠面側)に、メラミン樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50質量%)を50g/mとなる様に塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて90秒乾燥し、樹脂比率が53%、揮発分率3%の表面層材料を得た。なお、前記メラミン樹脂は反応釜に原料メラミンとホルマリンを所定配合比率で仕込み触媒添加後、沸点まで昇温して還流反応し、メラミン溶解が完了した事を確認した上で、反応終点に達したら脱水処理にて樹脂固形分を調整し冷却する方法により合成した。
得られた表面層材料の第2の面側に、芯材層として厚み0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製「WEA7628」)を重ね合わせ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmのメラミン化粧板を得た。
【0037】
(実施例2)
厚さ0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製「WEA7628」)にウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で70g/mを塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて150秒乾燥し、樹脂比率が25%、揮発分率3%のプリプレグを作製し、これを芯材層として用いたこと以外は、実施例と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧板を得た。
【0038】
(実施例3)
坪量80g/mの酸化チタン含有薄葉紙の表裏面にウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で50g/m塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて60秒乾燥し、樹脂比率が40%、揮発分率4%のプリプレグを作製した。このプリプレグと実施例1で得られたメラミン化粧板とで、ガラスクロス基材厚さ0.2mm(南亜プラスチック社製「WEA7628」)を挟み込む形に組み合わせた後、実施例1と同一の加熱加圧成形条件下で成形し、厚さ0.4mmのメラミン化粧板を得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1で使用した表面層基材(坪量80g/m)の酸化チタン含有化粧紙を用い、化粧紙の表裏面からディップ含浸方式で塗工し、汎用メラミン樹脂(反応モル比1.8、樹脂固形分52質量%)を樹脂固形分が100g/mになる様に塗工した後、120℃の熱風乾燥機に90秒乾燥し、樹脂比率が55%、揮発分率6%の表面層材料を得た。
次に坪量200g/mの晒しクラフト紙(東洋ファイバー(株)製「DLP−195」)に前記表面層に使用した汎用メラミン樹脂をディップ含浸方式で塗工した後、130℃の熱風乾燥機にて150秒乾燥し、樹脂比率が50%、揮発分率4%のプリプレグを作製した。得られたプリプレグを芯材層として用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧板(4)を得た。
【0040】
(比較例2)
比較例1と同様の表面層材料を用い、芯材層として厚み0.2mmポリエステル不織布(旭化成工業社製、スパンボンド「アイエル」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧板(4)を得た。
【0041】
以上の実施例1、2、3及び比較例1、2で得られたメラミン化粧板(1)〜(5)について特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0042】
(試験方法)
1.不燃性試験
日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」4.10 不燃性能試験・評価方法における、(2)ii)4.10.2 の発熱性試験・評価方法 及び 4.10.3 のガス有害性試験・評価方法、により実施した。
上記業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。
2.耐煮沸性試験
JIS K6902の耐煮沸性試験に準拠した方法で処理を行い、沸騰水中に2時間浸漬後の試験片の膨れ、層間はく離の有無を確認した。
3.耐汚染性試験
JIS K6902の耐汚染性試験に準拠した方法で処理を行い、試料表面の汚染材料残りの有無を確認した。
4.曲げ成形性試験
JIS K6902の曲げ成形性試験(A法)に準拠し、室温、10mmRにて外曲げ及び内曲げ成形を行い、化粧シート表面の割れの有無を確認した。
5.表面硬度(鉛筆硬度)試験
JIS K5600に準拠した鉛筆硬度試験により評価を行った。
【0043】
【表1】

【0044】
比較例1では、表面層の第2の面側に担持させる樹脂として、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を用いずに、メラミン樹脂を用いたため、メラミン化粧板(4)は常温曲げ加工性に劣った。
また、比較例1及び比較例2では、芯材層として、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグを用いず、比較例1ではクラフト紙を基材としたプリプレグを用い、比較例2ではポリエステル不織布を用いたため、メラミン化粧板(4)、(5)は不燃性に劣った。
一方、実施例1〜3で得られたメラミン化粧板(1)、(2)及び(3)は、表面層は、第1の面側にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、第2の面側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなる表面層材料で構成され、芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されているため、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れていた。さらに、実施例1〜3で得られたメラミン化粧板(1)、(2)及び(3)は、化粧板の基本的な要求品質である表面硬度、耐煮沸性、耐汚染性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のメラミン化粧板は、良好な曲げ加工性及び不燃性を有し、薄膜化に対応可能なものである。そして、表面層には、従来の化粧板と同様の表面層基材が使用できるため、豊富な色柄から自由に選択でき、且つ、公共施設等における不燃性を有する材料の規制を受ける壁等の用途に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0046】
12、13、14 メラミン化粧板
15 表面層
15A 表面層材料
151 第1の面側
152 第2の面側
16 芯材層
16A 芯材層材料
17 芯材層
18 保護層
19 支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と芯材層とが積層された構造を有するメラミン化粧板であって、
前記表面層は、意匠面となる第1の面側にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、前記芯材層と接する第2の面側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなる表面層材料で構成され、
前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とする、メラミン化粧板。
【請求項2】
全体厚みが0.4mm以下である、請求項1に記載のメラミン化粧板。
【請求項3】
前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含む、請求項1又は2に記載のメラミン化粧板。
【請求項4】
前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、非水溶性である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメラミン化粧板。
【請求項5】
前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するウレタンアクリル複合粒子を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメラミン化粧板。
【請求項6】
前記ウレタンアクリル複合粒子は、アクリル成分をコアとし、ウレタン成分をシェルとするコアシェル構造を有する水性クリヤータイプである、請求項5に記載のメラミン化粧板。
【請求項7】
前記ガラスクロスを基材とするプリプレグは、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有する樹脂組成物をガラスクロスに含浸してなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のメラミン化粧板。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂及び/又はウレタン樹脂を含有する、請求項7に記載のメラミン化粧板。
【請求項9】
常温(通常20〜30℃程度)での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工性を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のメラミン化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116091(P2012−116091A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267733(P2010−267733)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】