説明

メルカプト官能性シリコーンを用いるフッ素化シリコーン定着器剥離剤の安定化

【課題】熱および/または圧力定着操作の際の、加熱された定着器オイル組成物からの揮発成分の放出を低減またはなくすこと。
【解決手段】基体と、フルオロポリマーを含む外側層と、前記外側層の上の剥離剤材料被膜とを含む定着器部材であって、前記剥離剤材料被膜が、メルカプト官能性剥離剤と以下の化学式Iで表されるフッ素化シリコーン剥離剤とを含む混合物を含む定着器部材。前記フッ素化シリコーン剥離剤は、トリデカフルオロオクタン官能基を有してもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、プリンタ、複写機、イメージ・オン・イメージ(image−on−image)、デジタルおよび他の装置などの静電写真装置において有用な定着器部材が開示される。より詳細には、熱および/または圧力定着操作の際の、加熱された定着器オイル組成物からの揮発成分の放出を低減またはなくすのに有効な組成物およびプロセスが開示される。揮発成分放出の抑制剤または抑止剤として、および種々の金属、エラストマーまたは複合型定着器基体の剥離剤として特に有効な組成物は、メルカプト官能性剥離剤と、フルオロ官能基を有するポリジメチルシロキサン剥離剤とを含む混合物を含む。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,029,827号、4,101,686号、および4,185,140号には、定着器部材と相互作用して、帯電性熱可塑性樹脂トナーに対して良好な剥離性を有する熱的に安定で補充可能な自己洗浄型層を形成する、官能基を有するポリマー剥離剤、を使用することが記載されている。
【特許文献1】米国特許第4,029,827号
【特許文献2】米国特許第4,101,686号
【特許文献3】米国特許第4,185,140号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
実施形態としては、基体と、フルオロポリマーを含む外側層と、外側層上の剥離剤材料被膜とを含み、剥離剤材料被膜が、メルカプト官能性剥離剤と、以下の化学式Iで表されるフッ素化シリコーン剥離剤とを含む混合物を含む定着器部材が挙げられる。
【0004】
【化1】

【0005】
ここで、mは約0〜約25の数値であり、nは約1〜約25の数値であり、x/(x+y)は約0.01〜約1であり、R1およびR2はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基およびアルキルアミノ基からなる群から選択され、R3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基、ポリオルガノシロキサン基および化学式−(CH2o−(CF2p−CF3のフルオロ鎖(なお、oは約0〜約25の数値、pは約1〜約25の数値である)からなる群から選択される。
【0006】
実施形態としてはまた、
基体と、
a)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのうちの2つのコポリマー、b)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのターポリマーおよびc)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび硬化部位モノマー(cure site monomer)のテトラポリマーからなる群から選択されるフルオロエラストマーを含む外側層と、
外側層上の剥離剤材料被膜と、
を含む定着器部材であって、剥離剤材料被膜が、メルカプト官能性剥離剤と以下の化学式Iで表されるフッ素化シリコーン剥離剤とを含む混合物を含む定着器部材が挙げられる。
【0007】
【化2】

【0008】
ここで、mは約0〜約25の数値であり、nは約1〜約25の数値であり、x/(x+y)は約0.01〜約1であり、R1およびR2はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基およびアルキルアミノ基からなる群から選択され、R3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基、ポリオルガノシロキサン基および化学式−(CH2o−(CF2p−CF3のフルオロ鎖(なお、oは約0〜約25の数値、pは約1〜約25の数値である)からなる群から選択される。
【0009】
実施形態としてはさらに、静電潜像を受け取る電荷保持面と、電荷保持面に現像剤材料を供給して静電潜像を現像し、現像像を電荷保持面に形成する現像要素と、現像像を電荷保持面から複写基体に転写する転写要素と、複写基体に転写された現像像を定着する定着器部材要素とを備えた記録媒体上に像を形成する画像形成装置であって、定着器部材が、a)基体と、b)フルオロポリマーを含む外側層と、外側層上の剥離剤材料被膜とを含み、剥離剤材料被膜が、メルカプト官能性剥離剤と以下の化学式Iで表されるフッ素化シリコーン剥離剤とを含む混合物を含む画像形成装置が挙げられる。
【0010】
【化3】

【0011】
ここで、mは約0〜約25の数値、nは約1〜約25の数値、x/(x+y)は約0.01〜約1、R1およびR2はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基からなる群から選択され、R3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基、ポリオルガノシロキサン鎖および化学式−(CH2o−(CF2p−CF3のフルオロ鎖(なお、oは約0〜約25の数値、pは約1〜約25の数値である)からなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書では、例えばメルカプト官能性シリコーンオイル化合物と、特定の化学式で表されるフルオロシリコーンオイルとの混合物を含む剥離剤オイル組成物が開示される。剥離剤は、高温または運転温度における定着器オイル混合組成物からのフルオロアルデヒド等の揮発成分の放出を制御または抑制するのに有効である。剥離剤オイル組成物およびこの組成物を用いた定着方法は、酸化的および熱的分解プロセスから生じるフルオロアルデヒド揮発成分放出のレベルを制限する、あるいは放出をなくす。
【0013】
図1を参照すると、典型的な静電写真複写装置において、複写されるオリジナルの光学像が感光部材上に静電潜像の形態で記録され、続いて、通常トナーと呼ばれる帯電性熱可塑性樹脂粒子を加えることによって潜像が見えるようになる。詳細には、感光体10の表面は、電源11から電圧が供給された充電器12によって帯電される。次に、感光体は、レーザおよび発光ダイオード等の光学システムまたは像入力装置13からの光によって画像様に露光され、感光体上に静電潜像が形成される。一般に、静電潜像は、現像剤ステーション14からの現像剤混合物を静電潜像に接触させることによって現像される。現像は磁気ブラシ、パウダークラウド(powder cloud)または他の公知の現像プロセスを用いることによって行うことができる。乾式現像剤混合物は通常、摩擦電気により付着したトナー粒子を有するキャリア微粒子を含む。トナー粒子はキャリア微粒子から潜像に吸引されて、それの上にトナー粉末像を形成する。あるいは、トナー粒子が液内に分散した液状キャリアを含む液体の現像剤材料を用いることもできる。液体の現像剤材料は静電潜像と接触させられて、トナー粒子が像状に付着する。
【0014】
トナー粒子が光導電性表面上に像状に付着した後、トナー粒子は転写手段15によって複写用紙16に転写される。転写手段は圧力転写または静電転写であってよい。あるいは、現像像が中間転写部材またはバイアス転写部材に転写され、次いで複写用紙に転写されてもよい。複写基体の例として、紙や、ポリエステル、ポリカーボネートなどの透明材料、布、木材、またはその上に完成像が形成されるその他の所望の材料が挙げられる。
【0015】
現像像の転写が完了した後、複写用紙16は、図1で定着ローラ20および圧力ローラ21として描かれた(ただし、圧力ローラと接する定着ベルト、圧力ベルトと接する定着ローラなどの任意の他の定着用構成部品も、本発明装置における使用に適する)定着ステーション19に進み、定着部材と圧力部材の間に複写用紙16を通すことによって、現像像が複写用紙16に定着され、それによって永久的な像が形成される。あるいは、転写および定着はトランスフィックス(transfix application)により達成することもできる。
【0016】
転写後に、感光体10はクリーニングステーション17に進み、そこで感光体10上に残ったトナーは全て、ブレード(図1で示されるように)、ブラシまたは他のクリーニング装置によって感光体10から除去される。
【0017】
図2を参照すると、定着ステーション19の一実施形態が、適切なベース部材または基体4上にポリマー表面5を備える定着ローラ20の一実施形態により描かれている。適切なベース部材または基体4とは、この実施形態の場合、アルミニウム、アルマイト、スチール、ニッケル、銅等のような任意の適切な金属から作製された中空シリンダまたはコアであって、シリンダと同一軸状に延びるこのシリンダの中空部分内に配置された適切な加熱素子6を有している。定着器部材20は、必要に応じ、コア4と外側層5との間に配置された接着、クッションその他の適切な層7を含むことができる。バックアップまたは圧力ローラ21は定着ローラ20と協働してニップまたは接点アーク1を形成しており、この部分を複写用紙その他の基体16が通過することにより、その表面のトナー像24が定着ローラ20のポリマーまたはエラストマー表面5に接触する。図2に示されるとおり、バックアップローラまたは圧力ローラ21の一実施形態が、ポリマーまたはエラストマー表面または層3をその上に有する堅いスチール製コア2を有するものとして示されている。サンプ(sump)25はポリマー剥離剤26を収容しており、この剥離剤は室温で固体または液体であってよいが、運転温度では流体であり、官能性または非官能性のシリコーンオイルまたはその混合物であってよい。圧力部材21はさらに加熱素子(図示せず)を必要に応じて含むこともできる。
【0018】
図2で示される、ポリマー剥離剤26をポリマーまたはエラストマー表面5に塗布する実施形態においては、図示されている方向に回転可能に取り付けられる2つの剥離剤送りローラ27、28を設けて、剥離剤26をポリマーまたはエラストマー表面5に送る。送りローラ27はサンプ25に部分的に浸漬し、その表面上で剥離剤をサンプから送りローラ28に送る。計量ブレード29を用いることによって、ポリマー剥離流体の層を最初に送りローラ27に塗布し、その後、剥離流体をサブミクロンから数ミクロンの厚みの範囲に制御された厚みでポリマーまたはエラストマー5に塗布できる。したがって、計量機構29によって、約0.1〜約2ミクロンまたはそれ以上の厚みの剥離流体をポリマーまたはエラストマーの表面5に塗布できる。
【0019】
図3は定着器部材の一実施形態の拡大概略図であり、種々の可能な層を示す。図3に示すとおり、基体4はその上に中間層7を有する。中間層7は、例えばシリコーンゴムその他適切なゴム材料などのゴムであってもよい。中間層7の上には、以下に説明するようにフルオロエラストマーを含む外側層5が配置される。外側のフルオロエラストマー層5の上には、最も外側の液体フルオロシリコーン剥離層9が配置される。
【0020】
ある実施形態においては、フルオロシリコーンは、フルオロアルデヒドの放出を低減または無くすために、メルカプト官能性剥離剤などのメルカプト官能性剥離剤と組み合わせて用いられる。ある実施形態においては、フルオロシリコーンは以下の化学式で表される。
【0021】
【化4】

【0022】
ここで、mは約0〜約25の数値または約1〜約15の数値または約1〜約10の数値であり、nは約1〜約25の数値または約1〜約15の数値または約2〜約12の数値であり、x/(x+y)は約0.01〜約1または約0.02〜約0.8または約0.04〜約0.2であり、R1およびR2は、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの約1〜約25の炭素を有するアルキル基と、フェニル、ビフェニルなどのアリール基と、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニルなどの約1〜約25の炭素を有するアリールアルキル基と、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノなど約1〜約25の炭素を有するアルキルアミノ基とからなる群から選択され、R3は、メチル、エチルなどのアルキル基と、フェニル、ビフェニルなどのアリール基と、メチルフェニル、エチルフェニルなどのアリールアルキル基と、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノなどのアルキルアミノ基と、ポリジアルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサンなどのポリオルガノシロキサン鎖と、化学式−(CH2o−(CF2p−CF3のフルオロ鎖(なお、oは約0〜約25の数値または約1〜約15の数値、pは約1〜約25の数値または約4〜約15の数値または約5〜約10の数値である)とからなる群から選択される。ある実施形態において、mは2であり、R1、R2およびR3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基からなる群から選択される。ある実施形態においては、フルオロシリコーンはトリデカフルオロオクタン官能基を有する。ある実施形態においてフルオロシリコーンは、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタン官能基を有する。
【0023】
実施形態においては、フルオロシリコーンはメルカプト官能性剥離剤と混合される。メルカプトオイルが、フルオロアルデヒド放出を低減または無くすために、フルオロ流体と組み合わせて用いられる。
【0024】
メルカプトオイルを、フルオロアルデヒド放出を低減または無くすために、フルオロ流体と組み合わせて用いることができる。
【0025】
適切で代表的なメルカプト官能性シロキサンとしては以下の化学式で表されるものが挙げられる。
【0026】
【化5】

【0027】
ここで、Aは−R4−Xを表し、R4は約1〜約10の炭素を有するアルキル基を表し、Xは−SHを表し、R1およびR2は同一であっても異なってもよく、それぞれ約1〜約25の炭素を有するアルキル基と、約4〜約10の炭素を有するアリール基と、アリールアルキル基とからなる群から選択され、R3は約1〜約25の炭素を有するアルキル基と、約4〜約10の炭素を有するアリール基と、アリールアルキル基と、約1〜約500のシロキサン単位を有する、置換されたジオルガノシロキサン鎖とからなる群から選択され、bおよびcは数値で、同一であっても異なってもよくそれぞれが1≦b≦10と10≦c≦1,000の条件を満たし、dおよびd’は数値であって同一であっても異なってもよいが2または3であり、eおよびe’は数値であって同一であっても異なってもよいが0または1であり、d+e=3およびd’+e’=3の条件を満たす。
【0028】
本明細書で使用される非官能性オイルとは定着器部材の表面または表面上の充填材と相互作用または化学的に反応しないオイルのことである。本明細書で使用される官能性オイルとは定着器部材の表面上にある充填材と化学的に反応する官能基を有する剥離剤のことであって、定着器部材の表面からトナー粒子を効果的に剥離するように充填材の表面エネルギーを低減する。表面エネルギーが低減されない場合、トナー粒子は定着ローラの表面または定着ローラの表面上の充填材粒子に付着する傾向があり、それによって複写品質が低下する。
【0029】
定着器オイル組成物は約1〜約15重量パーセントのメルカプト官能性オイルまたは約5〜約10重量パーセントのメルカプト官能性オイル、および約85〜約99重量パーセントまたは約90〜約95重量パーセントのフルオロシリコーンオイルから構成される。
【0030】
剥離剤オイル組成物は、ローラ塗布具や毛細管作用(wicking action)などの既知の塗布方法を用いて、定着ローラ、定着ベルト、定着フィルムなど定着器部材の定着面に塗布できる。最良の剥離でオイル組成物を最も効率よく使用するためには、定着器部材に塗布された後、受像シートに転写される剥離剤オイルの量は、1シートあたり約0.011〜約6マイクロリットルまたは1シートあたり約0.01〜約3マイクロリットルの範囲内にある。
【0031】
定着器システム部材の外側面の例としては、フルオロエラストマーが挙げられる。詳細には、適切なフルオロエラストマーは、米国特許第4,257,699号、第5,017,432号および第5,061,965号と共に米国特許第5,166,031号、第5,281,506号、第5,366,772号および第5,370,931号に詳細に説明されているフルオロエラストマーである。そこに記載されているように、これらのエラストマーは、1)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、2)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンのターポリマー、および3)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンと硬化部位モノマー(cure site monomer)のテトラポリマーの種類からのものであり、これらはVITON A(登録商標)、VITON B(登録商標)、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON GH(登録商標)、VITON GF(登録商標)およびVITON ETP(登録商標)としてさまざまな名称により市場で知られている。VITON(登録商標)の名称は、E.I. DuPont de Nemours, Inc.の商標である。硬化部位モノマーは、
4−ブロモペルフルオロブテン−1、
1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、
3−ブロモペルフルオロプロペン−1、
1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1
またはDuPontから市販されている他の適切な公知の硬化部位モノマーであってもよい。他の市販のフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)およびFLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられる。FLUOREL(登録商標)は3M Companyの商標である。さらに市販されている材料としては、ポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)であるAFLAS(商標)とポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンフッ化ビニリデン)であるFLUOREL II(登録商標)(LII900)(両方とも3M Companyから入手可能)およびFOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)、FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)およびTN505(登録商標)として特定されるTecnoflons(Montedison Specialty Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0032】
定着器部材の表面に有効なフルオロエラストマーの例としては、フッ化ビニリデン系フルオロエラストマー、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンをコモノマーとしたフルオロエラストマーが挙げられる。また、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのうちの1つのコポリマーもある。3つの公知のフルオロエラストマーの例として、(1)VITON A(登録商標)として商業的に知られているものなどの、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのうちの2つのコポリマーの類、(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのターポリマーの類および(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に知られる、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび硬化部位モノマーのテトラポリマーの類がある。
【0033】
フルオロエラストマーのVITON GH(登録商標)とVITON GF(登録商標)は比較的少量のフッ化ビニリデンを含んでいる。VITON GF(登録商標)とViton GH(登録商標)は約35重量パーセントのフッ化ビニリデンと、約34重量パーセントのヘキサフルオロプロピレンと、約29重量パーセントのテトラフルオロエチレンとを約2重量パーセントの硬化部位モノマーと共に含んでいる。
【0034】
外側層の他の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、ポリフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン(PFA テフロン(登録商標))、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレンペルフルオロメチルビニルエーテルコポリマー(MFA)などのフルオロポリマー等、およびその混合物またはポリマーが挙げられる。
【0035】
全固形分の重量パーセントとして、外側層溶液における、溶液中のフルオロエラストマー化合物の量は、全固形分の重量の約10〜約25パーセントまたは約16〜約22パーセントである。本明細書で使用される全固形分には、フルオロエラストマー、ジヒドロフッ素化剤および、場合により用いられる補助剤および金属酸化物充填材などの充填材の量が含まれる。
【0036】
フルオロエラストマーに加えて、外側層はフルオロポリマーまたは上述のフルオロエラストマーと混合される他のフルオロエラストマーを含んでもよい。適切なポリマーの混合物の例としては、上述のフルオロエラストマーがポリテトラフルオロエチレンおよびペルフルオロアルコキシからなる群から選択されるフルオロポリマーと混合されたものが挙げられる。フルオロエラストマーはまた非フッ素化エチレンまたは非フッ素化プロピレンと混合されてもよい。
【0037】
定着器用のシリコーン剥離剤の官能基のためのアンカー部位(anchoring site)を与えるために、無機粒子充填材をフルオロエラストマー外側層と共に用いることもできる。ただし、充填材を本発明のフルオロシリコーン剥離剤と共に用いる必要はない。実際には、金属酸化物を用いなければ定着器寿命が延び、製造コストが低減する。適切な充填材の例としては、金属、金属合金、金属酸化物、金属塩、その他の金属化合物などの金属を含有した充填材が挙げられる。本発明に適用可能な金属の一般的な種類としては、周期表の1b、2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6b、7b、8属および希土類元素の金属が挙げられる。充填材は、アルミニウム、銅、スズ、亜鉛、鉛、鉄、白金、金、銀、アンチモン、ビスマス、亜鉛、イリジウム、ルテニウム、タングステン、マンガン、カドミウム、水銀、バナジウム、クロム、マグネシウム、ニッケルおよびそれらの合金の酸化物であってもよい。その他の具体例としては、酸化アルミニウムおよび酸化第二銅の無機粒子充填材が挙げられる。他の例としては、それぞれ、強化および非強化の焼成アルミナおよび板状アルミナが挙げられる。
【0038】
本明細書における定着器部材の外側フルオロエラストマー表面層の厚みは約10〜約250マイクロメーターまたは約15〜約100マイクロメーターである。
【0039】
必要に応じて中間接着層および/または中間ポリマーまたはエラストマー層を塗布して、所望の特性と性能目的を達することができる。中間層は基体と外側フルオロエラストマー表面との間にあってもよい。接着中間層は、例えばエポキシ樹脂およびポリシロキサンから選択されてもよい。適切な中間層の例としては、常温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴムおよび低温加硫(LTV)シリコーンゴムなどのシリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは公知であり、例えばSILASTIC(登録商標)735黒色RTVおよびSILASTIC(登録商標)732RTV(両方ともDow Corning)並びに、106 RTVシリコーンゴムおよび90 RTVシリコーンゴム(両方ともGeneral Electric)などが市場で容易に入手可能である。他の適切なシリコーン材料として、(ポリジメチルシロキサンなどの)シロキサンや、バージニア州リッチモンドのSampson Coatingsから入手可能なシリコーンゴム552などのフッ化シリコーンやビニル架橋熱硬化性ゴムまたはシラノール常温架橋材料などの液体シリコーンゴム等が挙げられる。別の特定の例としてDow Corning Sylgard 182がある。
【0040】
基体と中間層との間に接着層を設けてもよい。中間層と外側層との間にも接着層を設けてもよい。中間層がない場合、フルオロエラストマー層が接着層を介して基体に接着されてもよい。
【0041】
中間層の厚みは約0.5〜約20mmまたは約1〜約5mmである。
【0042】
本明細書で記載した剥離剤または定着オイルは送りローラなどの送り機構を介して定着器部材の外側層上に提供される。送りローラの一部は、定着器オイルまたは剥離剤を収容するサンプ内に浸漬する。フッ化シリコーンオイルは、剥離オイルが貯蔵サンプに収容され、約0.1〜約20mg/複写または約1〜約12mg/複写の量を、必要に応じて剥離剤供給ローラによって、必要なときに定着ローラに供給されるという方法で、補充することができる。定着器オイルが、貯蔵サンプと場合により設けられる供給ローラとを介して定着ローラに供給されるシステムはよく知られている。剥離オイルは連続相または半連続相で定着器部材上に存在してもよい。膜形状の定着器オイルは連続相であり、定着器部材を連続的に覆う。
[実施例1]
5.6モル%のペンダントトリデカフルオロオクチルフッ素化基を有するフッ素化オルガノポリジメチルシロキサンが、(2)PC085(塩化白金酸)を有する同一のフッ素化オルガノポリジメチルシロキサン、(3)3.1wt%のメルカプトプロピル官能性液(Xerox Fuser Agent)を有する同一のフッ素化オルガノポリジメチルシロキサン、(4)7.4wt%のメルカプトプロピル官能性液(Xerox Fuser Agent)を有する同一のフッ素化オルガノポリジメチルシロキサンおよび(5)10%のメルカプトプロピル官能性液(Xerox Fuser Agent)を有する同一のフッ素化オルガノポリジメチルシロキサンと比較された。
【0043】
図5は上述の5つの異なる流体に対して30分間260度で加熱すると放出されるフルオロアルデヒドの相対量の棒グラフである。
【0044】
図4は、放出されたフルオロアルデヒド構造体対メルカプトオイルの重量パーセントについての、M/Z95ベースイオンのヘッドスペースガスクロマトグラフィー/質量スペクトルからの、総フルオロアルデヒドピーク面積のグラフであり、密閉容器中で30分間260度に加熱した際のフルオロアルデヒドの抑制を示している。
【0045】
本発明を特定の実施形態および好ましい実施形態を参照して詳細に述べてきたが、当業者には、さまざまな変更形態および変形形態が明らかであることは理解されよう。当業者には容易に実現できるそのような変更形態および実施形態はすべて、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】画像装置の一実施形態の概略図である。
【図2】定着器サブシステムの一実施形態の拡大図であって、定着器および圧力ローラを示す。
【図3】定着器部材の一実施形態の拡大側面図であって、基体と中間層と外側層と剥離剤被膜層とを備えた定着器部材を示す。
【図4】総フルオロアルデヒドピーク面積対メルカプトオイルの重量パーセントのグラフである。
【図5】種々の剥離剤についての、放出されるフルオロアルデヒドの相対量の棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、フルオロポリマーを含む外側層と、前記外側層の上の剥離剤材料被膜とを含む定着器部材であって、
前記剥離剤材料被膜が、メルカプト官能性剥離剤と以下の化学式Iで表されるフッ素化シリコーン剥離剤とを含む混合物を含む定着器部材。
【化1】

(式中、mは約0〜約25の数値であり、nは約1〜約25の数値であり、x/(x+y)は約0.01〜約1であり、R1およびR2はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基およびアルキルアミノ基からなる群から選択され、R3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基、ポリオルガノシロキサン基および化学式−(CH2o−(CF2p−CF3のフルオロ鎖(oは約0〜約25の数値で、pは約1〜約25の数値である)からなる群から選択される。)
【請求項2】
前記フッ素化シリコーン剥離剤がトリデカフルオロオクタン官能基を有する、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項3】
前記トリデカフルオロオクタン官能基が、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタン官能基である、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項4】
前記メルカプト官能性剥離剤が以下の化学式で表される、請求項1に記載の定着器部材。
【化2】

(式中、Aは−R4−Xを表し、R4は約1〜約10の炭素を有するアルキル基を表し、Xは−SHを表し、R1およびR2は同一であっても異なってもよく、それぞれ約1〜約25の炭素を有するアルキル基と、約4〜約10の炭素を有するアリール基と、アリールアルキル基とからなる群から選択され、R3は約1〜約25の炭素を有するアルキル基と、約4〜約10の炭素を有するアリール基と、アリールアルキル基と、約1〜約500のシロキサン単位を有する、置換されたジオルガノシロキサン鎖とからなる群から選択され、bおよびcは数値であって同一であっても異なってもよく、それぞれが1≦b≦10と10≦c≦1,000の条件を満たし、dおよびd’は数値であって同一であっても異なってもよいが、2または3であり、eおよびe’は数値であって同一であっても異なってもよいが、0または1であり、d+e=3およびd’+e’=3の条件を満たす。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−221179(P2006−221179A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31471(P2006−31471)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】