説明

メルカプト複素環化合物の製造方法

【課題】医薬および農薬の合成原料または中間体あるいはパーマネントウェーブ用薬剤として有用なメルカプト複素環化合物を入手容易な原料を用いて、高収率で生産性よく工業的に製造する方法を提供する。
【解決手段】式(1)(Xは−O−、−S−、−NH−、−NR1−のいずれかの構造を
示す。R1は炭素数1〜6の、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基を示す
。Yは酸素原子、硫黄原子またはNR2を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Z1は少なくとも1つのメルカプト基を有する二価の有機残基を示す。)で
表されるメルカプト複素環化合物を、硫化金属または水硫化金属と、式(2)(XおよびYは上記式(1)と同義であり、Z2は少なくとも1つのハロゲン基を有する二価の有機
残基を示す。)で表される化合物とを、溶媒の存在下、pH7.0〜11.0の条件下で反応させることにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルカプト複素環化合物を効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メルカプト化合物は、各種の医薬や農薬の合成原料として広く使用されている。なかでもメルカプト複素環化合物は、医薬品としての有用性が高く認められているが(特許文献2)、その製造には、収率、原料の点で工業的に問題があった。
【0003】
具体的には、メルカプト複素環化合物は、脱離性のある置換基(ハロゲン基、メシル基、トシル基など)を有する複素環化合物類とチオカルボン酸アルカリ塩類もしくはチオ尿素とを、予め置換反応を起こさせる置換基以外の置換基を保護した上で反応させた後、その脱保護反応を行うことで製造可能である(非特許文献1、特許文献1〜3)。しかしながら、チオ尿素を用いた製法では目的物の収率が低く、工業的製法としては実用的でない(特許文献1)。
【0004】
また、チオカルボン酸アルカリ塩類を用いた製法においては、原料のチオカルボン酸アルカリ塩類が高価であることから、工業的実用レベルにおいては不十分である(非特許文献1、特許文献1〜3)。工業的実用性や経済性を考慮すると、チオカルボン酸アルカリ塩類に代表される高価な硫化剤ではなく、より安価な硫化金属類または水硫化金属類を硫化剤として用いた製法が望ましいが、従来の技術では、硫化剤として水硫化ナトリウムを用いた場合は低収率であった(非特許文献1)。
【特許文献1】米国特許明細書3328415号公報
【特許文献2】特表2002−543069号公報
【特許文献3】特開平4−103584号公報
【非特許文献1】GEORG FUCH,ARKIV FOR KEMI,1966,26(P.111−116)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、医薬および農薬の合成原料または中間体あるいはパーマネントウェーブ用薬剤として有用なメルカプト複素環化合物を、入手容易な原料を用いて高収率で生産性よく工業的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、メルカプト複素環化合物を、安価かつ入手容易な原料から容易に製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[16]の事項に関するものである。
【0007】
[1]下記式(1)
【0008】
【化3】

【0009】
(Xは−O−、−S−、−NH−、−NR1−のいずれかの構造を示す。R1は炭素数1〜6の、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基を示す。Yは酸素原子、硫黄原子またはNR2を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Z1
少なくとも1つのメルカプト基を有する二価の有機残基を示す。)
で表されるメルカプト複素環化合物の製造方法であって、
硫化金属または水硫化金属と、下記式(2)
【0010】
【化4】

【0011】
(XおよびYは上記式(1)と同義であり、Z2は少なくとも1つのハロゲン基を有する
二価の有機残基を示す。)で表される化合物とを、溶媒の存在下、pH7.0〜11.0の条件下で反応させることを特徴とするメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0012】
[2]前記式(1)中のZ1が1個のメルカプト基を有する二価の有機残基であり、か
つ該メルカプト基が前記メルカプト複素環化合物の2位の炭素原子に直接結合しており、前記式(2)中のZ2が1個のハロゲン基を有する二価の有機残基であり、かつ該ハロゲ
ン基が前記式(2)で表される化合物の2位の炭素原子に直接結合していることを特徴とする[1]に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0013】
[3]前記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物が、2−メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタムおよび2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムからなる群より選ばれるメルカプト複素環化合物であることを特徴とする[1]に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0014】
[4]前記硫化金属が、硫化アルカリ金属、硫化アルカリ土類金属、またはこれらの混合物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0015】
[5]前記硫化金属が、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウムおよび硫化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0016】
[6]前記水硫化金属が、水硫化ナトリウムまたは水硫化カリウムであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
[7]前記溶媒として、水と有機溶媒との重量比が1:0.1〜10である混合溶媒を用いることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0017】
[8]前記有機溶媒が、メタノール、N−メチルピロリドン、アセトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンおよびN,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種または2種以上の溶媒であることを特徴とする[7]に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0018】
[9]前記反応開始から完了までの間に、無機酸または無機のアルカリを反応液に添加することによりpHを前記範囲内に調整することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0019】
[10]前記反応を40℃以下で行うことを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
[11]前記硫化金属または水硫化金属を溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液またはスラリーの温度を−20〜40℃に調整しながら、該溶液またはスラリーに、前記式(2)で表される化合物を添加することにより、前記反応を行うことを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0020】
[12]前記硫化金属または水硫化金属を溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液またはスラリーのpHを7.5〜11.0に調整した後、該溶液またはスラリーに、前記式(2)で表される化合物を添加することにより、前記反応を行うことを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0021】
[13]前記硫化金属または水硫化金属の溶液またはスラリーの温度を40℃以下に調整しながら、該溶液またはスラリーに、無機酸を添加することにより該溶液またはスラリーのpHを前記範囲内に調整することを特徴とする[12]に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0022】
[14]前記反応のために使用される、式(2)で表される化合物と、硫化金属または水硫化金属との当量比が1:0.8〜5.0であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【0023】
[15]前記反応後の反応液のpHを2.0〜6.0に調整することを特徴とする[1]〜[14]のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
[16]前記反応後の反応液に無機酸を添加することにより、該反応後の反応液のpHを前記範囲内に調整することを特徴とする[15]に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法によれば、式(1)で表されるメルカプト複素環化合物を高収率で生産性よく得ることができる。また、本発明の製造方法には、保護基による保護及び脱保護という工程がないので、従来の製法に比べて短い工程で製造可能であり、しかも種々の置換基を有するハロゲノ複素環化合物類に適用可能であることから、工業的製法として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0026】
<メルカプト複素環化合物>
本発明の製造方法で得られるメルカプト複素環化合物は、下記式(1)
【0027】
【化5】

【0028】
(ただし、Xは−O−、−S−、−NH−、−NR1−のいずれかの構造を示す。R1は炭素数1〜6の、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基を示す。Yは酸素原子、硫黄原子またはNR2を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Z1は少なくとも1つのメルカプト基を有する二価の有機残基を示す。)で表される化
合物である。
【0029】
上記式(1)において、Xは−O−、−S−、−NH−、−NR1−のいずれかの構造
を示す。R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1
〜6のアルコキシアルキル基を示す。これらのうち、R1としては、炭素数1〜4のアル
キル基、アルコキシ基およびアルコキシアルキル基が好ましく、なかでもメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエチル基およびエトキシエチル基などが工業的な原料入手や取り扱い性の点でより好ましい。
【0030】
また、上記式(1)において、Yは、酸素原子、硫黄原子またはNR2を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。これらのうち、R2としては、水素原子、
メチル基およびエチル基などが工業的な原料入手の容易さや取り扱い性の点で好ましい。以上に挙げたもののうち、Yとしては酸素原子が工業的な原料入手や取り扱い性の点でより好ましい。
【0031】
また、上記式(1)において、Z1は少なくとも1つのメルカプト基(−SH)を有す
る二価の有機残基を示す。メルカプト基は1つであっても複数個であってもよいが、1個がより好ましい。また、該有機残基Z1は炭化水素基にメルカプト基が結合したものであ
ることが好ましく、分岐、側鎖を有していてもよい。側鎖としてはアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。
【0032】
このような二価の有機残基としては、アルキレン基にメルカプト基が結合しているものが好ましく挙げられる。アルキレン基へメルカプト基が結合する位置に特に制限はない。
メルカプト基は直接アルキレン基に結合していても、さらに別のアルキレン基などを介して結合していてもよい(例えば、メルカプトエチル基がアルキレン基中の炭素原子に結合している等)。
【0033】
ただし、メルカプト基が直接アルキレン基に結合していると、メルカプト基が環によって拘束される。上記式(1)の化合物をパーマネントウェーブ用の薬剤として用いる際には、毛髪のシスチン結合に対する上記式(1)の化合物中のメルカプト基の反応性が高くなる。したがって、メルカプト基は直接アルキレン基に結合しているほうが好ましい。
【0034】
メルカプト基が直接アルキレン基に結合している場合、メルカプト基は原料化合物中のハロゲン基をメルカプト基へ置換する際の反応性の点から上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物の2位の炭素原子に結合していることが好ましい。「2位の炭素原子」とは式(1)においてYが結合している炭素原子からみて−X−と反対側であり、1番目の炭素原子を言う。式(2)における「2位の炭素原子」の位置も同様とする。また、前記アルキレン基としては、主鎖の炭素数が2〜8、好ましくは3〜7のアルキレン基が望ましい。該アルキレン基が側鎖を有する場合、側鎖としては、炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。
【0035】
本発明の製造方法により製造することができる上記式(1)で示されるメルカプト複素環化合物としては、
2−メルカプト−3−プロピオラクトン、2−メルカプト−2−メチル−3−プロピオラクトン、2−メルカプト−3−メチル−3−プロピオラクトン、2−メルカプト−3−エチル−3−プロピオラクトン、2−メルカプト−2,3−ジメチル−3−プロピオラクトン、2−メルカプト−3−プロピオラクタム、2−メルカプト−2−メチル−3−プロピオラクタム、2−メルカプト−3−メチル−3−プロピオラクタム、2−メルカプト−3−エチル−3−プロピオラクタム、2−メルカプト−2,3−ジメチル−3−プロピオラクタム、2−メルカプト−3−プロピオチオラクトン、2−メルカプト−2−メチル−3−プロピオチオラクトン、2−メルカプト−3−メチル−3−プロピオチオラクトン、2−メルカプト−3−エチル−3−プロピオチオラクトン、2−メルカプト−2,3−ジメチル−3−プロピオチオラクトン、
3−メルカプト−4−ブチロラクトン、2,3−ジメルカプト−4−ブチロラクトン、2,4−ジメルカプト−4−ブチロラクトン、3,4−ジメルカプト−4−ブチロラクトン、3−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、3−メルカプト−4−ブチロラクタム、2,3−ジメルカプト−4−ブチロラクタム、2,4−ジメルカプト−4−ブチロラクタム、3,4−ジメルカプト−4−ブチロラクタム、
2−メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−2−メチル−4,4−ジメチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−3−(2−プロペニル)−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−2−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−3−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−3,4−ジメチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−2−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−3−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−2−メチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−3−メチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−3,4−ジメチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−2−エチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−3−エチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−2−メチル−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−3−メチル−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−
3,4−ジメチル−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−2−エチル−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−3−エチル−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクタム、
【0036】
3−メルカプト−5−バレロラクトン、4−メルカプト−5−バレロラクトン、2,3−ジメルカプト−5−バレロラクトン、2,4−ジメルカプト−5−バレロラクトン、2,5−ジメルカプト−5−バレロラクトン、3,4−ジメルカプト−5−バレロラクトン、3−メルカプト−5−バレロチオラクトン、3−メルカプト−5−バレロラクタム、4−メルカプト−5−バレロラクタム、2,3−ジメルカプト−5−バレロラクタム、2,4−ジメルカプト−5−バレロラクタム、2,5−ジメルカプト−5−バレロラクタム、
2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−2−メチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−3−メチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−4−メチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−メチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−2−エチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−3−エチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−エチル−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、2−メルカプト−2−メチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−3−メチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−4−メチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−5−メチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−2−エチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−3−エチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−4−エチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−5−エチル−5−バレロラクタム、2−メルカプト−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−2−メチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−3−メチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−4−メチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−5−メチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−2−エチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−3−エチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−4−エチル−5−バレロチオラクトン、2−メルカプト−5−エチル−5−バレロチオラクトン、
【0037】
3−メルカプト−6−ヘキサノラクトン、4−メルカプト−6−ヘキサノラクトン、5−メルカプト−6−ヘキサノラクトン、2,3−ジメルカプト−6−ヘキサノラクトン、2,4−ジメルカプト−6−ヘキサノラクトン、2,5−ジメルカプト−6−ヘキサノラクトン、3−メルカプト−6−ヘキサノラクタム、4−メルカプト−6−ヘキサノラクタム、5−メルカプト−6−ヘキサノラクタム、2,3−ジメルカプト−6−ヘキサノラクタム、2,4−ジメルカプト−6−ヘキサノラクタム、2,5−ジメルカプト−6−ヘキサノラクタム、
2−メルカプト−6−ヘキサノラクトン、2−メルカプト−2−メチル−6−ヘキサノラクトン、2−メルカプト−3−メチル−6−ヘキサノラクトン、2−メルカプト−4−メチル−6−ヘキサノラクトン、2−メルカプト−5−メチル−6−ヘキサノラクトン、2−メルカプト−6−メチル−6−ヘキサノラクトン、2−メルカプト−6−ヘキサノラクタム、2−メルカプト−2−メチル−6−ヘキサノラクタム、2−メルカプト−3−メチル−6−ヘキサノラクタム、2−メルカプト−4−メチル−6−ヘキサノラクタム、2−メルカプト−5−メチル−6−ヘキサノラクタム、2−メルカプト−6−メチル−6−ヘキサノラクタム、2−メルカプト−6−ヘキサノチオラクトン、2−メルカプト−2−メチル−6−ヘキサノチオラクトン、2−メルカプト−3−メチル−6−ヘキサノチオラクトン、2−メルカプト−4−メチル−6−ヘキサノチオラクトン、2−メルカプト−5−メチル−6−ヘキサノチオラクトン、2−メルカプト−6−メチル−6−ヘキサノチオラクトン、
2−メルカプト−7−ヘプタノラクトン、2−メルカプト−7−ヘプタノチオラクトン、2−メルカプト−7−ヘプタノラクタム、
2−メルカプト−8−オクタノラクトン、2−メルカプト−8−オクタノチオラクトン
、2−メルカプト−8−オクタノラクタム、
2−メルカプト−9−ノナラクトン、2−メルカプト−9−ノナチオラクトン、2−メルカプト−9−ノナラクタム、およびこれらラクタム類のN−アルキル誘導体(たとえば、N−メチルあるいはN−エチル誘導体など)、N−アルコキシ誘導体(たとえば、N−メトキシあるいはN−エトキシ誘導体など)、N−アルキルアルコキシ誘導体(たとえば、N−(2−メトキシ)エチルあるいはN−(2−エトキシ)エチル誘導体など)などが挙げられる。
【0038】
これらの中でも、本発明の製造方法は、3−メルカプト−4−ブチロラクトン、2,3−ジメルカプト−4−ブチロラクトン、2,4−ジメルカプト−4−ブチロラクトン、3−メルカプト−4−ブチロラクタム、2,3−ジメルカプト−4−ブチロラクタム、2,4−ジメルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−4−ブチロラクトン(2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、
2,3−ジメルカプト−5−バレロラクトン、2,4−ジメルカプト−5−バレロラクトン、2,5−ジメルカプト−5−バレロラクトン、3−メルカプト−5−バレロラクタム、4−メルカプト−5−バレロラクタム、2,3−ジメルカプト−5−バレロラクタム、2,4−ジメルカプト−5−バレロラクタム、2,5−ジメルカプト−5−バレロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタムおよび2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムの工業的製造に好適に用いることができる。
【0039】
さらに、これらの中でも本発明の製造方法は2−メルカプト−4−ブチロラクトン(2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタムおよび2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムの工業的製造により好適に用いることができる。
【0040】
<ハロゲノ複素環化合物>
本発明の製造方法において、メルカプト複素環化合物の製造原料として用いられるハロゲノ複素環化合物は下記式(2)
【0041】
【化6】

【0042】
(ただし、XおよびYは上記式(1)と同義であり、Z2は少なくとも1つのハロゲン基
を有する二価の有機残基を示す。)で表される化合物である。
上記式(2)のハロゲノ複素環化合物は、硫化金属または水硫化金属と反応して上記式(1)のメルカプト複素環化合物となるので、上記式(2)中のXおよびYは目的とする上記式(1)の化合物のXおよびYとそれぞれ同じものとなる。
【0043】
また、上記式(2)において、Z2は上記式(1)中のZ1と同じでないことを条件として、少なくとも1つのハロゲン基(本発明では、−F、−Cl、−Br、−I、−Atのいずれかを示す)を有する二価の有機残基を示す。Z2のハロゲン基は、上記ハロゲノ複
素環化合物と硫化金属または水硫化金属との反応により、上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物のメルカプト基へと置換されるため、当該ハロゲン基の数および位置は上記式(1)中のZ1のメルカプト基の数および位置に対応しており、Z2とZ1とは、そ
れぞれハロゲン基を有するか、メルカプト基を有するかの点でのみ異なっている。言い換えれば、Z2のハロゲン基以外の部位と、Z1のメルカプト基以外の部位とは同一である。
【0044】
従って、上記式(2)で表される化合物としては、目的とする上記式(1)で表される化合物のメルカプト基がハロゲン基となっているものを選択すればよい。例えば、2−メルカプト−4−ブチロラクトンを目的物とする場合には、式(2)で表される化合物としては2−クロロ−4−ブチロラクトン、2−ブロモ−4−ブチロラクトン、2−ヨード−4−ブチロラクトンなどのいずれかを選択すればよい。また、2,3−ジメルカプト−5−バレロラクタムを目的物とする場合は、式(2)で表される化合物として2,3−ジクロロ−5−バレロラクタム、2,3−ジブロモ−5−バレロラクタム、2,3−ジヨード−5−バレロラクタムなどのいずれかを選択すればよい。
【0045】
なお、上記ハロゲン基としては、反応性、入手性の面から、−Brが好ましい。
上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物は、市販品として入手可能であるほか、既知の方法に準じて製造可能である。例えば、市販のラクトン誘導体、チオラクトン誘導体および環状ケトン誘導体を使用して、米国特許明細書4247468号、J.Med.Chem.1987.30.1995−1998、Tetrahedron Asymmetry 2003.14.2587−2594、Tetrahedron Letters 2005.46.3041−3044等に記載の方法に準じて、上記式(2)で示されるハロゲノ複素環化合物を合成できる。
【0046】
<硫化金属または水硫化金属>
本発明の製造方法で目的とするメルカプト複素環化合物(上記式(1))は、対応するハロゲノ複素環化合物(上記式(2))と硫化金属または水硫化金属との反応によって製造できる。
【0047】
硫化金属としては、硫化アルカリ金属および硫化アルカリ土類金属が挙げられ、好ましくは硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化マグネシウム、硫化カルシウムである。これら
のうち、安価ならびに工業的な入手が容易である点から、硫化ナトリウム、硫化カリウムがより好ましい。
【0048】
また、水硫化金属としては、水硫化アルカリ金属などが挙げられ、安価ならびに工業的な入手が容易である点から、水硫化ナトリウム、水硫化カリウムが好ましい。
【0049】
<溶媒>
上記式(2)で表される化合物と、硫化金属または水硫化金属との反応に使用される溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのモノアルコール類;プロピレングリコールなどの多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF);N−メチルピロリドン等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を併せて使用することもできる。これらのうち、反応収率および溶媒由来の副生物に対する分離操作を考慮すると、水、メタノール、アセトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、MTBE、THF、ジエチルエーテル、DMF、N−メチルピロリドンからなる群の中から1種あるいは2種以上を併せて使用することがより好ましい。
【0050】
溶媒の使用量は、少ないほど副反応が進行しやすく、その場合には上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物の収率が低下するおそれがある。その一方、溶媒の使用量が多いと、副反応が抑制され、上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物の収率は向上するが、反応液の濃度が希釈されるため、生産性は低下するおそれがある。そのため、溶媒の使用量は、反応収率および生産性との兼ね合いで決定することが好ましい。具体的には、たとえば、上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物100質量部に対して、溶媒を100〜2000質量部で使用する態様などが挙げられる。
【0051】
また、上述した溶媒として、2種以上の溶媒からなる混合溶媒を使用する場合には、水と上述した有機溶媒とを混合した混合溶媒が好ましい。この場合、目的物の収率向上の点から、水と組み合わせる有機溶媒としては、上述した有機溶媒のうち、メタノール、N−メチルピロリドン、アセトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、THF、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種または2種以上が好ましく、1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。
【0052】
水と有機溶媒との混合比率としては、水:有機溶媒の重量比で、好ましくは1:0.1〜10であり、より好ましくは1:0.1〜7.0、さらに好ましくは1:0.1〜5.0である。
【0053】
<反応時のpH>
上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物と、硫化金属もしくは水硫化金属との反応は、該ハロゲノ複素環化合物と硫化金属もしくは水硫化金属とを溶媒の存在下で接触させること、好ましくは、該硫化金属または水硫化金属を上述した溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液またはスラリーと、該ハロゲノ複素環化合物とを接触させることにより行うとよい。
【0054】
pH調整前の硫化金属もしくは水硫化金属の溶液またはスラリーのpHは14前後であるが、ハロゲノ複素環化合物との反応の際には、反応液のpHを7.0〜11.0に保ち、このpH条件下で反応させることが重要である。該反応液のpH値は、好ましくはpH7.0〜10.0、さらに好ましくはpH7.0〜9.5であるとよい。pH値が7.0未満の場合には、原料の転化率が上がらずに収率が低くなる傾向があり、11.0を超え
る場合には、生成した目的物が副反応により分解して収率が低くなる傾向がある。
【0055】
反応液のpH値の測定は、市販のpHメーターを使用して行えばよい。pHを測定する
際の温度はそのときの反応液の温度でよく、pHを測定するために反応液の温度を変える必要はない。すなわち、本発明において反応液のpH値は、当該反応中に、その温度にて測定した値である。
【0056】
反応液のpH調整は、
(i)あらかじめ、硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーに、上記ハロゲノ複素環化合物と反応させた際の反応液のpH変化を見越して、酸を添加することで該溶液あるいはスラリーのpHを調整しておく等して、反応の事前に行ってもよいし、
(ii)反応中に反応液に酸あるいはアルカリを添加しながら行ってもよく、
あるいは、
(iii)上記(i)および(ii)の操作を組み合わせてもよい。
【0057】
あらかじめpH調整した硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーを使用する場合には、上記ハロゲノ複素環化合物の添加中および添加後の反応液のpHが上記所定のpH範囲内となるように、硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーのpHを調整しておくことが好ましい。
【0058】
すなわち、反応中に反応液のpHが低下することを見越してpHを調整しておくことが望ましく、具体的には、硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーのpHを7.5〜11.0、好ましくは8.0〜10.0に調整しておくとよい。
【0059】
このように調整しておくことにより、反応中の反応液のpHを7.0〜11.0に保つことができ、高収率で上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物を製造することができる。
【0060】
pH調整のために添加する酸としては、無機酸および有機酸が挙げられる。これらのうち、有機副生物が生じない点から無機酸(鉱酸)が好ましく、工業的に入手容易な塩酸、硫酸、硝酸のいずれかを使用するのがより好ましい。この場合、塩酸、硫酸、硝酸を1種で使用してもよいし、2種以上を併せて使用してもよい。
【0061】
反応前にpH調整を行う場合には、硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーの温度を40℃以下に保ちながら実施することが好ましく、25℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。該温度の下限値は使用する溶媒によっても異なり、特に限定されないが、一般には−20℃以上であるとよい。この場合、pHの測定は該温度で行えばよい。
【0062】
また、反応中に反応液のpHを、pH7.0〜11.0に調整するには、反応液中に入れたpHメーター計を使用して、pHの変動に従い酸あるいはアルカリを供給することで上記のpH範囲を保持することで行う。
【0063】
酸としては、無機酸または有機酸を用いることができる。これらのうち、有機副生物が生じない点から無機酸(鉱酸)が好ましく、工業的に入手容易な塩酸、硫酸、硝酸のいずれかを使用するのがより好ましい。この場合、塩酸、硫酸、硝酸を1種で使用してもよいし、2種以上を併せて使用してもよい。
【0064】
また、アルカリをpH調整に用いる場合には、工業的に汎用な無機のアルカリが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水硫化ナトリウム、硫化ナ
トリウム、硫化カリウム、水硫化カリウムなどの水溶液が好ましい。
【0065】
なお、これらのpH調整の際、中和により硫化水素ガスが発生するため、硫化水素ガスの系外放出を防ぎ、pH調整に必要な酸の使用総量を抑制し、主反応収率も向上させるという観点から、閉鎖系の反応器を用いることが好ましい。
【0066】
<反応操作>
上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物の、硫化金属もしくは水硫化金属の溶液またはスラリーへの添加方法に関しては、該ハロゲノ複素環化合物が、2−ハロゲノ−4−ブチロラクトン、2−ハロゲノ−4−チオラクトン、2−ハロゲノ−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−ハロゲノ−4−メチル−4−ブチロラクトンなどの常温で液体の化合物である場合には、溶媒に希釈してから添加してもよく、そのまま添加してもよい。ただし、局所的濃度勾配による副反応を抑制するためには、溶媒で希釈してから添加する方法が好ましい。同様に、常温で固体のハロゲノ複素環化合物についても溶媒で希釈してから添加する方法が好ましい。これらの希釈に使用する溶媒としては、上述した反応に使用される溶媒のうち、いずれか1種以上の有機溶媒が好ましく挙げられる。該有機溶媒を使用して、ハロゲノ複素環化合物を溶解して、溶液の状態で、硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーに添加すると良い。
【0067】
上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物を、硫化金属もしくは水硫化金属の溶液またはスラリーに添加する際の温度は、目的物であるメルカプト複素環化合物の収率に大きく影響するため、事前に硫化金属または水硫化金属の溶液あるいはスラリーを冷却しておくことが好ましく、同様に反応中においても反応液を冷却しながら、上記式(2)で示されるハロゲノ複素環化合物を添加することが好ましい。その際の設定温度としては、通常は40℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは5℃以下である。設定温度の下限値は特に限定されないが、目的物の生産性を勘案すると−20℃以上であるとよい。
【0068】
また、上記添加操作を含め、上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物と、硫化金属もしくは水硫化金属との反応完了までの操作全体を通じて、反応系を40℃以下の温度に保つことが望ましい。また、上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物と硫化金属もしくは水硫化金属の溶液またはスラリーとの反応時の圧力は、0.09〜0.50MPaが好ましく、0.10〜0.30MPaがより好ましい。圧力が0.09MPa未満の場合、目的物の選択率が下がる傾向がある。また圧力が0.50MPaを超える場合は特殊な反応器が必要になり、工業的な製造には適さない。
【0069】
また、上記反応に供される、上記式(2)で表されるハロゲノ複素環化合物と硫化金属もしくは水硫化金属との当量比(ハロゲノ複素環化合物:硫化金属もしくは水硫化金属)は1:0.8〜5.0であることが好ましく、1:1.0〜5.0であることがより好ましい。ハロゲノ複素環化合物に対する硫化金属または水硫化金属の当量比が上記下限値未満では、目的物である上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物の収率低下が生じる場合がある。また、ハロゲノ複素環化合物に対する硫化金属または水硫化金属の当量比が5.0を超えると、反応収率は高い値を示すが、過剰分の硫化金属または水硫化金属の処理工程に要するコストが増えるとともに、反応液のpH調整のために大量の酸を要することになる結果、反応液の濃度が低下して、生産性が悪化し、工業的な価値が低くなる傾向がある。
【0070】
反応後の反応液には、上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物および該メルカプト複素環化合物のチオラートアニオン体などが含まれる。反応後の反応液は、中性〜アルカリ性であり、目的物であるメルカプト複素環化合物の酸化反応が進行しやすくなって
いる。また、上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物のなかでも、特にラクトン骨格を有する化合物は、加水分解反応がおこりやすい。
【0071】
そこで、このような酸化反応による収率低下を抑制するために、反応後の反応液にすみやかに酸を添加することでpHをより酸性側にした状態で、その後の回収および精製操作を行うことが好ましい。この場合、好ましいpH値の範囲は2.0〜6.0である。
【0072】
反応後の反応液のpH調整のために添加する酸としては、汎用の無機酸および有機酸が挙げられる。これらのうち、有機副生物が生じない点から無機酸(鉱酸)が好ましく、工業的に入手容易な塩酸、硫酸、硝酸からなる群の中から1種単独あるいは2種以上を併せて使用することがより好ましい。
【0073】
また、pH調整の際に局所的低pH領域における加水分解反応がおこるのを抑制するため、溶液の温度を25℃以下に保ちながら酸の添加を実施すると良い。好ましくは15℃以下が良く、さらに好ましくは5℃以下が良い。25℃を超える温度になると加水分解が進行しやすくなる。温度の下限値には特に制限は無い。反応液が凍結せずにpHを調整できればよい。
【0074】
ついで、目的物であるメルカプト複素環化合物の回収および精製操作について説明する。
上記反応後の反応液をpH調整した後、このpH調整後の反応液に、該反応液と相溶しない有機溶媒を添加して、上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物を含む有機相を抽出する。
【0075】
抽出に使用する有機溶媒としては、ジエチルエーテル、MTBE、イソプロピルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサノール、オクタノールが挙げられ、これらの中から1種単独でも2種以上を併せて使用することもできる。安全性、工業的な取り扱い易さという観点から、好ましくは、MTBE、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチルからなる群の中から1種単独あるいは2種以上を併せて使用すると良い。
【0076】
また、反応における溶媒種および溶媒の使用量、硫化金属または水硫化金属の使用量などによっては、反応後の反応液に無機塩が析出している場合がある。この場合には、望ましくは上記抽出操作の前に、これらを遠心分離あるいは吸引濾過により除去するとよい。遠心分離機内あるいは吸引濾過でのロート上のケーキは、抽出に使用する有機溶媒で洗浄すると良い。
【0077】
次いで、抽出した有機相の有機溶媒を留去するが、抽出した有機相の有機溶媒を留去する際の留去液の液温度は100℃以下が良く、好ましくは70℃以下が良い。また、抽出に使用した有機溶媒の沸点を勘案して、減圧条件下にて溶媒を留去してもよい。
【0078】
抽出溶媒として使用した有機溶媒を留去した後の溶液に含まれる、上記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物は、そのままカラムクロマトグラフィーにより分離精製してもよい。上記式(1)の化合物が液体の場合には、蒸留精製により精製してもよい。蒸留精製を行う場合には、目的物であるメルカプト複素環化合物の熱分解を防ぐため、減圧条件下で行うことが好ましく、蒸留精製する液の温度は200℃以下を保つように減圧度を調整すると良い。特に、液の温度が150℃以下となるように減圧度を調整することが好ましい。また、結晶化可能な化合物の場合には、再結晶により精製してもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例中、特に明示しない限り、「%」は質量基準である。
【0080】
以下の例中における、高速液体クロマトグラフィー分析(以下、HPLCという。)の条件は以下の通りである。
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex NN−814(長さ20cm、内径0.5cm)
カラム温度:40℃
溶離液:0.1%H3PO4、8mM−KH2PO4
流量:1.5mL/min
検出:RI、UV(検出波長210nm)
また、以下の例中、pH値は以下のpHメーターを用いて測定した。
【0081】
pH計:東京硝子器械株式会社製、デジタルpHコントローラー 型式:FD-02
pH電極:東京硝子器械株式会社製、pHコントローラー用電極 型式:CE-108C
【0082】
[実施例1]
2−メルカプト−4−ブチロラクトンの製造
70%水硫化ナトリウム(49g、0.6mol、純正化学株式会社製)を1,2−ジメトキシエタン(34g、純正化学株式会社製、特級)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、34g)との混合溶媒に室温にて溶解した。当溶液を氷冷、常圧条件下(10℃以下、約0.10MPa)、撹拌しながら塩酸(18g、純正化学株式会社製、特級35%〜37%)を加え、pH8.9に調整した。溶液の温度が10℃以下を維持するように冷却しながら、2−ブロモ−4−ブチロラクトン(34g、0.2mol、東京化成株式会社製)を約20分かけて滴下した。滴下完了後の反応液を2分間撹拌した。なお、2−ブロモ−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.5〜8.9の範囲内であった。
【0083】
その後、溶液の温度が10℃以下になるように冷却しながら、塩酸(24g)を約5分かけて加え、溶液のpHを4.0に調整した。溶液中に析出した無機塩を吸引濾過により除去した後、濾液側に酢酸エチル(20g、純正化学株式会社製、特級)を加えて有機相を抽出した。得られた水相を酢酸エチル(34g)で再抽出した。これらの抽出した有機相を合わせて、減圧下に濃縮、蒸留精製することで2−メルカプト−4−ブチロラクトン(19g、bp.94℃/0.3kPa、収率78%)を得た。
【0084】
[実施例2]
2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトンの製造
2−ブロモ−4−ブチロラクトンの替わりに、2−ブロモ−4−メチル−4−ブチロラクトン(36g、0.2mol、アルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例1に従って2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン(20g、bp.73℃/0.4kPa、収率77%)を合成した。なお、2−ブロモ−4−メチル−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.4〜8.9の範囲内であった。
【0085】
[実施例3]
2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトンの製造
(1)2−ブロモ−4−エチル−4−ブチロラクトンの製造
4−エチル−4−ブチロラクトン(46g、0.4mol、アルドリッチ社製)に90%三臭化リン(2g、0.07mol、和光純薬工業株式会社製)を室温にて加え、10
分間撹拌した。反応液を100℃に加熱し、臭素(64g、0.4mol、純正化学株式会社製)を滴下ロートより1時間かけて滴下した。滴下完了後、反応液を1時間、100℃で撹拌した。
【0086】
反応後の反応液を室温まで冷却後、水(100g)を少しずつ加えて10分間撹拌した。更に、酢酸エチルを200g加えて抽出した。有機相の分離により得られる水相を酢酸エチル(90g)で再抽出した。
【0087】
これらの抽出した有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム(純正化学株式会社製)にて乾燥後、硫酸ナトリウムを濾過除去した有機相を、減圧下に濃縮・蒸留することで、2−ブロモ−4−エチル−4−ブチロラクトン(50g、bp.104℃/0.4kPa、収率65%)を得た。
【0088】
(2)2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトンの製造
2−ブロモ−4−ブチロラクトンの替わりに、上記2−ブロモ−4−エチル−4−ブチロラクトン(39g、0.2mol)を使用して、実施例1に準じて反応させ、反応後の液を実施例1に準じて、pH調整、吸引濾過、抽出操作を行った後、蒸留精製し、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン(22g、bp.91℃/0.4kPa、収率75%)を得た。なお、2−ブロモ−4−エチル−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.6〜8.9の範囲内であった。
【0089】
[実施例4]
2−メルカプト−4−ブチロチオラクトンの製造
(1)2−ブロモ−4−ブチロチオラクトンの製造
4−ブチロチオラクトン(100g、0.98mol、アルドリッチ社製)を酢酸エチル(90g、純正化学株式会社製)に溶解し、63℃に加温した。臭素(180g、1.1mol、純正化学株式会社製)を滴下ロートより15分かけて滴下した。滴下完了後、反応液を24時間、63℃で撹拌した。
【0090】
反応後の反応液を室温まで冷却後、水(500g)を少しずつ加えて10分間撹拌した。更に、酢酸エチルを1000g加えて抽出した。
有機相の分離により得られる水相を酢酸エチル(900g)で再抽出した。これらの抽出した有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム(純正化学株式会社製)にて乾燥後、硫酸ナトリウムを濾過により除去した有機相を減圧下に濃縮・蒸留することで、2−ブロモ−4−ブチロチオラクトン(66g、bp.62℃/0.2kPa、収率37%)を得た。
【0091】
(2)2−メルカプト−4−ブチロチオラクトンの製造
上記2−ブロモ−4−ブチロチオラクトン(36.2g、0.2mol)を使用して、実施例1に準じて反応させ、反応後の液を実施例1に準じて、pH調整、吸引濾過、抽出操作を行った後、蒸留精製し、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン(21.4g、bp.62℃/0.2kPa、収率80%)を得た。なお、2−ブロモ−4−ブチロチオラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.5〜8.9の範囲内であった。
【0092】
[実施例5]
2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムの製造
(1)2−ブロモ−6−ヘキサノラクタムの製造
臭素(240g、1.5mol、純正化学株式会社製)のベンゼン(50g、純正化学社製)溶液を氷冷下10℃まで冷却した。冷却した液に90%三臭化リン(450g、1.6mol、和光純薬製)を、反応液温10℃以下を保ちながら加え、60分間撹拌した
。市販の6−ヘキサノラクタム(85g、0.75mol、東京化成株式会社、製品名ε−カプロラクタム)のベンゼン(220g)溶液を、反応液温10℃以下を保ちながら滴下ロートより上記反応液に30分かけて滴下した。
【0093】
滴下完了後、反応液を45℃に加温して5.5時間撹拌した。反応後の反応液を1000gの氷に空け、得られるベンゼン相を分液回収した。回収したベンゼン相を減圧下に濃縮することで、粗結晶として2−ブロモ−6−ヘキサノラクタム(粗結晶として53.5g)を得た。
【0094】
(2)2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムの製造
上記2−ブロモ−6−ヘキサノラクタムの粗結晶(39g)を使用して、実施例1に準じて反応させ、反応後の液を実施例1に準じて、pH調整、吸引濾過、抽出操作を行った後、反応液を減圧下に約半量となるまで濃縮した。濃縮した液に、酢酸エチル(330g、純正化学株式会社製、特級)を加えて抽出した。得られた水相を酢酸エチル(330g)で再抽出した。これらの抽出した有機相を合わせて、減圧下に濃縮することで粗結晶として2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムを得た。2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムの粗結晶は、ヘキサン:酢酸エチル(体積比2:1)を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して、2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムの結晶(26.1g、0.18mol、6−ヘキサノラクタムからの収率24%)を得た。なお、2−ブロモ−6−ヘキサノラクタム滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.6〜8.9の範囲内であった。
【0095】
[実施例6]
N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
(1)2,4−ジブロモ酪酸ブロミドの製造
2,4−ジブロモ酪酸ブロミドを、A.Kamalらの方法(TetrahedronAsymmetry 2003,14,2587−2594)に準じて、下記の方法により4−ブチロラクトンより合成した。
【0096】
4−ブチロラクトン(100g、1.15mol、東京化成株式会社製)に三臭化リン(12.5g、0.046mol、東京化成株式会社製)を加えた。
上記の溶液に、約10℃以下を保ちながら、臭素(200g、1.25mol、和光純薬株式会社)を、溶液を撹拌下、約2hrかけて滴下した。滴下後、70℃に昇温して、臭素(200g、1.25mol、和光純薬株式会社)を約30分間かけて滴下した。滴下完了後の液を80℃に昇温した後に、80℃で3時間撹拌した。
【0097】
反応終了後の反応液の下部にガラス管を挿入し、ガラス管より窒素を吹き込むことで、未反応の臭素と反応により生成する臭化水素を除去した。この反応液を減圧下に蒸留することで、2,4−ジブロモ酪酸ブロミド(190g、0.61mol、bp.87−88℃/0.7kPa、収率53%)を得た。
【0098】
(2)N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの合成
N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムを、A.Kamalらの方法(Tetrahedron Asymmetry 2003,14,2587−2594)に準じて、下記の方法により2,4−ジブロモ酪酸ブロミドより合成した。
【0099】
40%メチルアミン水溶液(31.6g、0.4mol、純正化学株式会社)と水13.2gとの混合溶液を10℃以下に冷却した溶液に、10℃以下を保つように2,4−ジブロモ酪酸ブロミド(148g、0.48mol)を15分間かけて滴下した。滴下完了後に30℃に昇温して、30分間撹拌した。反応液にクロロホルム200gを加えて、有
機相を抽出した。分離した有機相に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。
【0100】
硫酸マグネシウムを濾過により除去して得られた有機相を濃縮して得られる粗結晶をジエチルエーテル−ヘキサンの1:1溶液で洗浄して、N−メチル−2,4−ジブロモ酪酸アミド(85.6g、0.33mol、mp.54℃、収率69%)を得た。得られた結晶をTHF(720g、純正化学株式会社製、特級)に溶解した。
【0101】
溶解した溶液を氷冷下10℃以下としてから60%NaH in mineral oil(26.4g、0.66mol、純正化学株式会社)を約15分かけて少しずつ加えた。添加後に室温まで昇温して、2時間撹拌した。反応後の反応液を約1/3重量となるまで濃縮した後に、濃縮残渣を氷水(400g)に入れ、クロロホルム400gで抽出した。得られたクロロホルム相を濃縮して得られる濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでN−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(45.6g、0.25mol、収率77%)を得た。
【0102】
(3)N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
70%水硫化ナトリウム(19.1g、0.24mol、純正化学株式会社製)を1,2−ジメトキシエタン(13.1g、純正化学株式会社製、特級)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、13.1g)との混合溶媒に室温にて溶解した。当溶液を氷冷、常圧条件下(10℃以下、約0.10MPa)、撹拌しながら塩酸(8.8g、純正化学株式会社製、特級35%〜37%)を加えることで、pH8.9に調整、溶液の温度を氷冷下にて10℃以下まで冷却した。溶液の温度が10℃以下を維持するように冷却しながら、冷却した溶液にN−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(35.6g、0.2mol)とDMF(156g)との混合液を約30分かけて滴下した。滴下完了後の反応液を5分間撹拌した。なお、N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタム滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.6〜8.9の範囲内であった。
【0103】
その後、溶液の温度が10℃以下になるように冷却しながら、塩酸(8.8g)を約2分かけて加え、溶液のpHを6.0に調整した。溶液中に析出した無機塩を吸引濾過により除去した後、濾液側に酢酸エチル(310g、純正化学株式会社製、特級)を加えて有機相を抽出した。得られた水相を酢酸エチル(550g)で再抽出した。これらの抽出した有機相を合わせて、減圧下に濃縮した。濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでN−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム(20.6g、0.157mol、収率78%)を得た。
【0104】
[実施例7]
2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
(1)2−ブロモ−4−ブチロラクタムの合成
実施例6に記載の方法により得られた2,4−ジブロモ酪酸ブロミドを使用し、40%メチルアミン水溶液の代わりにアンモニア水を使用した以外は、実施例6に従って2,4−ジブロモ酪酸アミド(73.5g、0.30mol、mp.79℃、収率63%)を得た。得られた結晶をTHF(650g、純正化学株式会社、特級)に溶解した。溶解した溶液を氷冷下10℃以下としてから60%NaH in mineral oil(24g、0.60mol、純正化学株式会社)を約15分かけて少しずつ加えた。添加後に室温まで昇温して、2時間撹拌した。反応後の液を約1/3重量となるまで蒸発、濃縮した後に、濃縮残渣を氷水(360g)に入れ、クロロホルム(360g)で抽出した。得られたクロロホルム相を蒸発濃縮して得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで2−ブロモ−4−ブチロラクタム(37.9g、0.23mol、収率27%)を得た。
【0105】
(2)2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの替わりに2−ブロモ−4−ブチロラクタム(32.8g、0.2mol)を使用した以外は、実施例6に従って2−メルカプト−4−ブチロラクタム(18.1g、0.15mol、収率77%)を合成した。なお、2−ブロモ−4−ブチロラクタム滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.6〜8.9の範囲であった。
【0106】
[実施例8]
N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
(1)N−エチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの合成
実施例6に記載の方法により得られた2,4−ジブロモ酪酸ブロミドを使用して、40%メチルアミン水溶液のかわりに70%エチルアミン水溶液を使用した以外は、実施例6に従ってN−エチル−2,4−ジブロモ酪酸アミド(91.7g、0.336mol、収率70%)を得た。得られたN−エチル−2,4−ジブロモ酪酸アミド(81.9g、0.30mol)を使用して、実施例7に準じて反応させ、N−エチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(40.9g、0.21mol、収率71%)を得た。
【0107】
(2)N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの替わりにN−エチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(38.4g、0.2mol)を使用した以外は、実施例6に従ってN−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム(23.8g、0.16mol、収率82%)を合成した。なお、N−エチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタム滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.5〜8.9の範囲内であった。
【0108】
[実施例9]
N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
(1)N−メトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの合成
N−メトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタムを、生田らの方法(Journal of Medicinal Chemistry 1987,30.1995−1998)に準じて、下記の方法により2,4−ジブロモ酪酸ブロミドを使用して合成した。
【0109】
O−メチルヒドロキシアミン塩酸塩(52g、0.62mol、純正化学株式会社製)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、100g)とクロロホルム(500mL、純正化学株式会社製、特級)を氷冷条件下において攪拌し、これに2,4−ジブロモ酪酸ブロミド(169g、0.55mol)とクロロホルム(100mL)との混合溶液を加えた後、NaOH(50g)を溶かした100mLの水溶液を反応温度が10℃以下になるように冷却しながら滴下した。
【0110】
滴下終了後、反応液のクロロホルム層を分離し、その層を0.5Nの塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水によってこの順に洗った後、硫酸マグネシウムによって乾燥した。この溶液を減圧下に濃縮し、N−メトキシ−2,4−ジブロモ酪酸アミドを含むオイル(130g)を得た。これを特に精製することなく次の反応に用いた。
【0111】
得られたN−メトキシ−2,4−ジブロモ酪酸アミドを含むオイル(130g)をベンゼン(500mL)に溶解させた後、冷却を行いながら15℃〜20℃で水素化ナトリウム(12g)をゆっくりと添加した。添加終了後の反応液に氷を入れて、過剰の水素化ナトリウムを分解し、その溶液を飽和食塩水で洗った後、硫酸マグネシウムによって乾燥した。この溶液を減圧下に濃縮し、次いでシリカゲル−アセトン/ベンゼン系カラムクロマ
トグラフィーで精製を行い、N−メトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(39g、0.2mol、2,4−ジブロモ酪酸ブロミドからの収率36%)を得た。
【0112】
(2)N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの替わりにN−メトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(39g、0.2mol)を使用した以外は、実施例6に準じて、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム(23.8g、0.16mol、収率81%)を合成した。なお、N−メトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタム滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.5〜8.9の範囲内であった。
【0113】
[実施例10]
N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
(1)N−エトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの合成
実施例6に記載の方法により得られた2,4−ジブロモ酪酸ブロミド(169g、0.55mol)を使用し、O−メチルヒドロキシアミン塩酸塩のかわりにO−エチルヒドロキシアミン塩酸塩(61g、0.62mol、和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は、実施例9に従って、N−エトキシ−2,4−ジブロモ酪酸アミドを含むオイル(137g)を得た。これを特に精製することなく次の反応に用いた。
【0114】
得られたN−エトキシ−2,4−ジブロモ酪酸アミドを含むオイル(137g)をベンゼン(500mL)に溶解させた後、冷却を行いながら15℃〜20℃で水素化ナトリウム(12g)をゆっくりと添加した。添加終了後の反応液に氷を入れて、過剰の水素化ナトリウムを分解し、その溶液を飽和食塩水で洗った後、硫酸マグネシウムによって乾燥した。この溶液を減圧下にて濃縮し、次いでシリカゲル−アセトン/ベンゼン系カラムクロ
マトグラフィーで精製を行い、N−エトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(42g、0.20mol、2,4−ジブロモ酪酸ブロミドからの収率37%)を得た。
【0115】
(2)N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタムの合成
N−メチル−2−ブロモ−4−ブチロラクタムの替わりにN−エトキシ−2−ブロモ−4−ブチロラクタム(42g、0.2mol)を使用した以外は、実施例6に準じてN−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム(24.8g、0.15mol、収率77%)を合成した。なお、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.6〜8.9の範囲内であった。
【0116】
[実施例11〜15]
事前に調整する水硫化ナトリウム溶液のpH値を、表1に従い変化させて反応を行ったほかは、実施例1に記載の方法に準じて2−メルカプト−4−ブチロラクトンを合成した。その結果を表1に示す。なお、表1中の転化率、SH選択率、MS選択率、DS選択率は、いずれもHPLCの測定結果から算出した。
【0117】
[比較例1〜2]
事前に調整する水硫化ナトリウム溶液のpH値をpH6.5、13.0の2点に変化させて反応を行ったほかは、実施例1に記載の方法に準じて2−メルカプト−4−ブチロラクトンを合成した。その結果を表1の比較例1〜2に示す。なお、表1中の転化率、SH選択率、MS選択率、DS選択率は、いずれもHPLCの測定結果から算出した。
【0118】
[比較例3]
塩酸によるpH調整をせずに実施例1に記載の方法に準じて水硫化ナトリウム溶液を用
意すると、本溶液のpHは14.0であった。本溶液を使用し実施例1に記載の方法に準じて2−メルカプト−4−ブチロラクトンを合成した。その結果を表1の比較例3に示す。なお、表1中の転化率、SH選択率、MS選択率、DS選択率は、いずれもHPLCの測定結果から算出した。
【0119】
【表1】

【0120】
【化7】

【0121】
[実施例16〜21]
反応前の水硫化ナトリウム溶液のpHを8.5に調整し、使用する硫化金属または水硫化金属と2−ブロモ−4−ブチロラクトンとの当量比を、表2に従い変化させたほかは、実施例1で記載した方法に準じて反応を行い、2−メルカプト−4−ブチロラクトンを合成した。その結果を表2に示す。なお、表2中の転化率、SH選択率、MS選択率、DS選択率は、いずれもHPLCの測定結果から算出した。2−ブロモ−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHはいずれの実施例でも7.0〜11.0の範囲内であった。
【0122】
【表2】

【0123】
[実施例22〜32]
溶媒のスクリーニングの為、実施例22〜32を行った。これらの実施例では、溶媒間の効果の差を明確にする為、水硫化ナトリウムと2−ブロモ−4−ブチロラクトンとの当量比を1:1、反応直前の水硫化ナトリウム溶液のpHを11.0とした。具体的には以下の手順で行った。
【0124】
70%水硫化ナトリウム(18g、0.22mol、純正化学株式会社製)を、表3に記載の各種有機溶媒(68g、純正化学株式会社製、特級)、または精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、68g)、または各種有機溶媒(34g、純正化学株式会社製、特級)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、34g)との混合溶媒に、室温にて添加し溶解させた。
【0125】
得られた溶液に氷冷、常圧条件下(10℃以下、約0.10MPa)、撹拌しながら塩酸を加えることで、反応直前の該溶液のpHを11.0に調整した後、溶液の温度を氷冷下にて10℃以下まで冷却した。
【0126】
ついで、溶液の温度が10℃以下を維持するように冷却しながら、2−ブロモ−4−ブチロラクトン(34g、0.2mol、東京化成株式会社製)を約20分かけて滴下した。2−ブロモ−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、いずれの場合も7.0〜11.0の範囲内であった。
【0127】
使用した溶媒を変えた結果を表3に示す。なお、表3中のSH選択率、MS選択率は、いずれもHPLCの測定結果から算出した。
【0128】
【表3】

【0129】
[実施例33〜36]
反応中の反応液の温度を、表4に従い変化させたほかは、実施例1で記載した方法に準じて反応を行い、2−メルカプト−4−ブチロラクトンを合成した。その結果を表4に示す。ただし、表4中のSH反応収率は、pHを4.0に調整した時点の溶液をサンプリングし、そのHPLCの測定結果から算出したものである。
【0130】
【表4】

【0131】
[実施例37〜41]
実施例1で記載した2−メルカプト−4−ブチロラクトンの合成方法において、反応後の反応液のpH調整時のpH値を、表5に従い変えた溶液を、25℃あるいは50℃で3時間放置した場合のSH(2−メルカプト−4−ブチロラクトン)保存安定性を評価した。なお、SH保存安定性は、反応後の反応液のpH調整直後のSH濃度と放置後のSH濃度をHPLCにて測定し、pH調整直後のSH濃度を100%としたときの相対値(%)で示した。
【0132】
その結果を表5に示す。
【0133】
【表5】

【0134】
表5より、反応後にpH2.0〜6.0に調整した溶液中では、SHの分解反応が抑制されていることがわかる。
[実施例42]
2−メルカプト−4−ブチロラクトンの製造 (Na2S使用)
硫化ナトリウム・9水和物(144g、0.6mol、純正化学株式会社製)を1,2−ジメトキシエタン(34g、純正化学株式会社製、特級)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、34g))との混合溶媒に室温にて溶解した。当溶液を氷冷、常圧条件下(10℃以下、約0.10MPa)、撹拌しながら塩酸(79g、純正化学株式会社製、特級35%〜37%)を加え、pH8.9に調整した。溶液の温度が10℃以下を維持するように冷却しながら、2−ブロモ−4−ブチロラクトン(34g、0.2mol、東京化成株式会社製)を約20分かけて滴下した。滴下完了後の反応液を2分間撹拌した。なお、2−ブロモ−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.5〜8.9の範囲内であった。
【0135】
その後、溶液の温度が10℃以下になるように冷却しながら、塩酸(24g)を約5分かけて加え、溶液のpHを4.0に調整した。溶液中に析出した無機塩を吸引濾過により除去した後、濾液側に酢酸エチル(20g、純正化学株式会社製、特級)を加えて有機相を抽出した。得られた水相を酢酸エチル(34g)で再抽出した。これらの抽出した有機相を合わせて、減圧下に濃縮、蒸留精製することで2−メルカプト−4−ブチロラクトン(17g、bp.94℃/0.3kPa、収率72%)を得た。
【0136】
[実施例43]
2−メルカプト−4−ブチロラクトンの製造 (CaS使用)
硫化カルシウム(43.3g、0.6mol、Aldrich製)を1,2−ジメトキシエタン(34g、純正化学株式会社製、特級)と精製水(蒸留後にイオン交換フィルターを通した水、34g)との混合溶媒に室温にて溶解した。当溶液を氷冷、常圧条件下(10℃以下、約0.10MPa)、撹拌しながら塩酸(78g、純正化学株式会社製、特級35%〜37%)を加え、pH8.9に調整した。溶液の温度が10℃以下を維持するように冷却しながら、2−ブロモ−4−ブチロラクトン(34g、0.2mol、東京化成株式会社製)を約20分かけて滴下した。滴下完了後の反応液を2分間撹拌した。なお、2−ブロモ−4−ブチロラクトン滴下開始〜滴下完了後の撹拌までの間の反応液のpHは、7.5〜8.9の範囲内であった。
【0137】
その後、溶液の温度が10℃以下になるように冷却しながら、塩酸(24g)を約5分かけて加え、溶液のpHを4.0に調整した。溶液中に析出した無機塩を吸引濾過により除去した後、濾液側に酢酸エチル(20g、純正化学株式会社製、特級)を加えて有機相を抽出した。得られた水相を酢酸エチル(34g)で再抽出した。これらの抽出した有機相を合わせて、減圧下に濃縮、蒸留精製することで2−メルカプト−4−ブチロラクトン(15g、bp.94℃/0.3kPa、収率63%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(Xは−O−、−S−、−NH−、−NR1−のいずれかの構造を示す。R1は炭素数1〜6の、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基を示す。Yは酸素原子、硫黄原子またはNR2を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Z1
少なくとも1つのメルカプト基を有する二価の有機残基を示す。)
で表されるメルカプト複素環化合物の製造方法であって、
硫化金属または水硫化金属と、下記式(2)
【化2】

(XおよびYは上記式(1)と同義であり、Z2は少なくとも1つのハロゲン基を有する
二価の有機残基を示す。)で表される化合物とを、溶媒の存在下、pH7.0〜11.0の条件下で反応させることを特徴とするメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項2】
前記式(1)中のZ1が1個のメルカプト基を有する二価の有機残基であり、かつ該メ
ルカプト基が前記メルカプト複素環化合物の2位の炭素原子に直接結合しており、
前記式(2)中のZ2が1個のハロゲン基を有する二価の有機残基であり、かつ該ハロゲ
ン基が前記式(2)で表される化合物の2位の炭素原子に直接結合していることを特徴とする請求項1に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(1)で表されるメルカプト複素環化合物が、2−メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタムおよび2−メルカプト−6−ヘキサノラクタムからなる群より選ばれるメルカプト複素環化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項4】
前記硫化金属が、硫化アルカリ金属、硫化アルカリ土類金属、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項5】
前記硫化金属が、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウムおよび硫化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項6】
前記水硫化金属が、水硫化ナトリウムまたは水硫化カリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒として、水と有機溶媒との重量比が1:0.1〜10である混合溶媒を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、メタノール、N−メチルピロリドン、アセトン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンおよびN,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種または2種以上の溶媒であることを特徴とする請求項7に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項9】
前記反応開始から完了までの間に、無機酸または無機のアルカリを反応液に添加することによりpHを前記範囲内に調整することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項10】
前記反応を40℃以下で行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項11】
前記硫化金属または水硫化金属を溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液またはスラリーの温度を−20〜40℃に調整しながら、該溶液またはスラリーに、前記式(2)で表される化合物を添加することにより、前記反応を行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項12】
前記硫化金属または水硫化金属を溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液またはスラリーのpHを7.5〜11.0に調整した後、該溶液またはスラリーに、前記式(2)で表される化合物を添加することにより、前記反応を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項13】
前記硫化金属または水硫化金属の溶液またはスラリーの温度を40℃以下に調整しながら、該溶液またはスラリーに、無機酸を添加することにより該溶液またはスラリーのpHを前記範囲内に調整することを特徴とする請求項12に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項14】
前記反応のために使用される、式(2)で表される化合物と、硫化金属または水硫化金属との当量比が1:0.8〜5.0であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項15】
前記反応後の反応液のpHを2.0〜6.0に調整することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。
【請求項16】
前記反応後の反応液に無機酸を添加することにより、該反応後の反応液のpHを前記範
囲内に調整することを特徴とする請求項15に記載のメルカプト複素環化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−7501(P2008−7501A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137890(P2007−137890)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】