説明

メンテナンスフリーを特徴とした小規模緑地の構築

【課題】 本発明は、簡単な構造でありながら、都市の屋上やベランダに組み立て式のメンテナンスフリーの緑化方法を提供する。
【解決手段】 本発明の緑地形成方法は、緑地を形成する領域1−1において、組み立て式のメンテナンスフリーな育成箱を提供して、その領域1−1に貯水槽(1)に充填された竹炭や木炭等の保水能力を有する軽量な部材(2)に水分を吸収させ、屋上緑化等に保水帯を設けることで、メンテナンスフリーの軽量な屋上緑化等を達成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、屋上、ベランダ等のコンクリート床面にメンテナンスフリーの緑地を形成するための緑地形成に関する。
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0002】
地球温暖化が環境に深刻な影響を与え始めた現在、我々は一人一人が出来うる範囲で地球温暖化防止に貢献しなければならない。また、社会では少子高齢化が進行するなど、人々の心のケアーにも十分な注意が必要である。
近年、都市部では、高齢者をはじめとする心のケアーの一環として、ガーデニングや課程菜園等の園芸セラピーが注目されている。しかし、ガーデニングや家庭菜園等の園芸セラピーを必要とする都市部の生活者には、これをおこなう緑地がない。従って、屋上やベランダの僅かな空間に土を運び込み、これをおこなっている。
【0003】
従来、屋上、ベランダ等のコンクリート床面に緑地を形成する場合には、プランター等の容器に土を入れて保水を図るか、コンクリート床面に土を敷詰め、保水育成能力を高めて、菜園緑地を形成していた。しかし、コンクリートの上に緑地を形成するには多くの問題がある。
【0004】
まず、屋上においては、輻射熱やコンクリートの熱蓄積により夏には60℃以上の高温となる。また、屋上に過大な負荷を与えないように、土の量は最小限にする必要があり、植物の生育のためには灌水が欠かせない。しかし、灌水をおこなうと建物に雨漏り等の深刻な被害が生ずる。また、灌水のために菜園等の管理者が長期の旅行等に外出する際は、気軽に外出できない欠点があった。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物の過酷な環境に耐えうるための、十分な水の確保手段。
【0006】
漏水等の深刻な建物への被害を及ぼさない防水能力の高い緑地の形成方法。
【0007】
長期の旅行等で緑地管理者が不在であっても、灌水の心配がないメンテナンスフリーの緑地形成方法。
【0008】
屋上やベランダに過大な重量負荷を与えない軽量な緑地形成方法。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、緑地を形成する領域(1−1)において、防水能力の高い組み立て式緑地(1)を構築して、建物への漏水問題を解決する。
また、防水能力の高い組み立て式緑地(1)の内部には、貯水能力を高めるために、貯水用の仕切り板を用いて貯水槽を形成する仕切り板(7)を設置してもかまわない。
【0011】
組み立て式緑地の底部には、保水帯として保水能力の高い軽量多孔質部材(2)を敷きつめる。部材の材質は、竹炭や木炭が望ましいが、保水能力が高ければ、活性炭やゼオライトであってもかまわない。これにより、植物への灌水問題を解決すると共に、土の50倍の保水力を持たせることで、緑地全体の軽量化を図る。
【0012】
さらに、多孔質部材の上部には、発泡スチロールや発泡プラスチック等で製作した軽量化充填材(3)を設置する。これにより、土(4)の充填量は更に軽減されると共に、緑地の軽量化が達成される。軽量化充填材は、発泡スチロールや発泡プラスチック等だけに限定されるものではなく、木材やウレタン等の軽量であるものなら使用可能であり、上記部材に限定されるものではない。
【0013】
貯水槽内部の水位は排水溝(5)の位置によって自由に調整が可能で、設置する場所の環境条件によって設定が変化可能である。降雨が少ない地域では排水溝の位置を高く設定し、比較的降雨量の多い地域では排水溝の位置を低くする。
【0014】
植物の培地となる土(4)への水の供給は、貯水槽となる底部の軽量多孔質部材(2)から、植物の水分要求量に応じて徐々に供給されていく。また,炭や木炭等の保水能力を有する軽量多孔質部材にはバクテリアが生息しやすい微細な穴が無数に存在するため、常に水が浄化され植物が根腐れ等を起こすことがない。
【0015】
また、排水溝(5)からオーバーフローした水は、隣接する貯水槽(6)へ流入し,隣接する貯水槽に充填された竹炭や木炭等の保水能力を有する軽量な部材に吸収されていく。
【0016】
隣接する貯水槽(6)は、オーバーフローした水を貯留しているだけではなく、貯水槽底部にあけられた穴を通じて、軽量多孔質部材(2)へ常時供給される。貯水槽(6)には、肥料を溶かして、植物への養分補給をしても良い。
【発明の作用及び効果】
【0017】
本発明の実施例について、以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施例は、タイ国のピサヌローク(バンコックの北約500km)のタイ国国軍第3管区指令部のビルディング屋上である。ピサヌロークの気候は、12月〜3月が乾期で月降水量は10mm以下であるが、4月〜11月の雨期には、月降水量が50mm〜250mmとなる。特に7月〜10月は150mm〜250mmとなる。気温は月平均気温が25℃〜30℃であるが、乾期でやや低く、雨期で高い。昼夜の温度較差は乾期に大きく、雨期に小さい。実験期間は平成16年2月11日〜3月5日であった。この間の降水は数mmにとどまった。タイ王国ピサノロク陸軍第三基地講堂屋上での実施例である。
【0019】
まず、竹炭と発泡スチロールを敷き、その上から土壌をすべてのボックスに20kg被せた。その際、竹炭はその重量の半分は粉にして粒状のものと混合してボックスに敷いた。また、それぞれの土壌層下面に排水口を設置した。
【0020】
観測機器の設置:1)土壌水分計:すべてのボックスの土壌中に土壌水分計(TDR:C−CS−615、Climatec社)を設置し、30分間隔で測定を行い、記録した(TDR:C−TDR100、Ckimatec社)。2)土壌温度計:すべてのボックスの土壌表層と深さ5cmの土壌温度をデータロガ付きサーモセンサー(おんどとりHi:TR−81、T&D社)で30分間隔で測定した。3)熱流計(地中への熱移動量測定):発泡スチロール20%区の4つのボックスで、土壌表層における熱フラックス(移動量)を熱流計(MF−180、EKO社)で30分間隔で測定した。
4)長短波放射計:屋上コンクリート表面における上方と下方の長短波放射量を2月11日〜12日の晴天時に長短波放射計(MR−50、EKO社)で測定した。その際、2高度(地上30cmと200cm)で大気の温湿度も30分間隔で測定した。さらに、2月13日〜3月5日まで、竹炭10kg+発泡スチロール20%区の直上に長短波放射計を移動し、2高度の温湿度とともに同様に測定した。
【0021】
以上の実験開始時(2月11日)に、各ボックスには充分な灌水を行い、その後は全く灌水は行わなかった。
【0022】
結果
実験開始時から終盤の3月2日までの各ボックスの土壌湿度(最大容水量比、%)の推移が図3と図4に示されている。

これらから、初期には竹炭または発泡スチロールの全く含まない区(ボックス)が相対的に高い土壌湿度を保持していたが、その後約1カ月間、日中温度が35℃を上回る日々が続き、無灌水(無降水)状態が継続される中で、どの区も土壌湿度は低下し続けるが、竹炭や発泡スチロールが少ない区ほど、その減少率は大きく、それに対して竹炭20kg区や発泡スチロール30%区が比較的高い土壌湿度を保持し続けている傾向が見られる。そこで、竹炭20kg+発泡スチロール30%と竹炭0kg+発泡スチロール0%の土壌湿度の推移を比較すれば、その差異が明瞭となる(図5)。

【0023】
最適な竹炭重量と発泡スチロールの容積比の検討とこれらの土壌改良材の水、熱収支における効果の定量的評価
【0024】
今回の竹炭の重量と発泡スチロールの容積比の増大が、土壌水分保持と日中の温度上昇と夜間の温度低下の緩和をもたらしていることはほぼ明らかであるが、その効果は最大の竹炭量20kgと最大の発泡スチロール容積比30%で最も大きいく、今回の実験では上限値を見出せていない。すなわち、竹炭と発泡スチロールの最適値はさらにこれらの重量や容量を超えて存在すると考えられる。
【0025】
今回の実験から、少なくとも土壌と同量の竹炭量と土壌容積比の30%発泡スチロールを超えて最適値があることが示唆された。これらの最適値の検証は、実験室内ではじめて可能な詳細な実験によって求めるのが妥当と思われるので、今後野外実験と併用して、詳細な室内実験を行うべきであろう。
【0026】
このことは今回の実験の価値を低めるのではなく、竹炭と発泡スチロールの保水材として、また潜熱の飛躍的増加に示されるヒートアイランド抑制材として、予想を上回るほど大きい効果と可能性を秘めていることを意味する。
【0027】
すなわち、竹炭20kgと発泡スチロール30%によって、我が国の夏期の干ばつ時でも潅水せずに維持できることが示唆された。さらに、その際においても、潜熱効果はコンクリートの倍以上維持され、都市のヒートアイランド抑制効果の定量的評価も可能である。さらに、ビルディングの屋上の温度上昇は、屋上緑化下のコンクリート表面が30℃以下に抑制されている可能性があることからおおよそ40〜50℃近くも低減できることも判明した。
【0028】
本実施形態は、屋上を緑化する場合の一例示形態であり,それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における緑地断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑地を形成する領域において、
前記領域に防水能力を持った組み立て式の小規模緑地を構築できる工程と、
前記領域に貯水用の仕切り板を用いて貯水槽を形成する工程と、
前記貯水槽に排水用の溝を設け高さを調節して自由に貯水量の増減を管理できる工程と、
前記貯水槽に軽量の多孔質部材等を配置して緑地を形成する領域の重量を軽減する工程と、
前記貯水槽に竹炭や木炭等の保水能力を有する多孔質部材を含む物質を充填することによって保水帯を形成する工程と、
前記貯水槽に充填された竹炭や木炭等の保水能力を有する部材から適宜に水分を蒸散させ植物を活着させる水分伝達工程と、
を具備することを特徴とする緑地形成方法。
【請求項2】
緑地を形成する領域において、
前記領域に防水能力を持った組み立て式の小規模緑地を構築できる工程と、
前記領域に貯水用の仕切り板を用いて貯水槽を形成する工程と、
貯水槽に配置される多孔質材料からなる軽量部材と、
前記貯水槽に充填された竹炭や木炭等の保水能力を有する部材と、
を具備していることを特徴とする緑化部材。
【請求項3】
前記活着層に植え込まれる植物と、請求項1に記載の緑地形成方法を用いて、ユニット化することを特徴とする請求項2に記載の緑化部材。
【請求項4】
緑地を形成する領域において、請求項3に記載のユニット化された緑化部材を配置することを特徴とする緑地形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−75146(P2006−75146A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298223(P2004−298223)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(500362992)
【出願人】(504357093)
【出願人】(504357059)
【Fターム(参考)】