説明

メンテナンス方法及び液体噴射装置

【課題】所期のクリーニング動作を行うことが可能なメンテナンス方法及び液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体貯留部が交換された場合に、液体貯留部に貯留されている液体の量が所定量以上か否かを判定し、所定量以上であると判定した場合に、第1のクリーニングを実行したか否かを判定し、第1のクリーニングを実行したと判定した場合には第2のクリーニングを実行し、第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には第2のクリーニングに代えて第1のクリーニングを実行することとしたので、第1のクリーニングに用いられる液体が不足するのを回避することができる。これにより、所期のクリーニング動作を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス方法及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、噴射ヘッドのノズルから記録媒体にインクを噴射するインクジェット式記録装置が知られている。このようなインクジェット式記録装置では、時間の経過に伴ってノズルからのインクの噴射速度や噴射量が変化し、インクの噴射状態が変化する。このため、インクの噴射速度や噴射量を所望の範囲に維持するために、噴射ヘッドからインクを排出させる吸引動作やフラッシング動作などのクリーニング動作が所定期間経過する度に定期的に行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−320912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように定期的に行われるクリーニング動作では、一定量のインクを消費する。このため、クリーニング動作を行おうとするタイミングで、インクカートリッジに貯留されるインクの量が上記クリーニング動作におけるインクの消費量よりも少ない場合、インクが不足し、所期のクリーニング動作を行うことが困難となる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、所期のクリーニング動作を行うことが可能なメンテナンス方法及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るメンテナンス方法は、液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有し前記液体の供給源である液体貯留部が交換可能に取り付けられた液体噴射ヘッドと、前記ノズルから排出される前記液体を受容するキャップ部とを備えた液体噴射装置における前記液体噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス方法であって、前記ノズルから前記キャップ部に前記液体を排出する第1のクリーニングを実行するか否かを判定する第1クリーニング判定工程と、前記第1クリーニング判定工程において前記第1のクリーニングを実行すると判定した場合に、前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が所定量以上か否かを判定する第1液量判定工程と、前記第1液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行し、前記所定量未満であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行しない第1クリーニング工程と、前記第1クリーニング工程の後、前記液体貯留部が交換された場合に、前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が前記所定量以上か否かを判定する第2液量判定工程と、前記第2液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合に、前記第1クリーニング工程において前記第1のクリーニングを実行したか否かを判定する第2クリーニング判定工程と、前記第2クリーニング判定工程において、前記第1のクリーニングを実行したと判定した場合には前記第1の信号に基づき前記第2のクリーニングを実行し、前記第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には前記第2のクリーニングに代えて前記第1のクリーニングを実行する第2クリーニング工程とを備える。
【0007】
本発明によれば、液体貯留部が交換された場合に、液体貯留部に貯留されている液体の量が所定量以上か否かを判定し、所定量以上であると判定した場合に、第1のクリーニングを実行したか否かを判定し、第1のクリーニングを実行したと判定した場合には第2のクリーニングを実行し、第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には第2のクリーニングに代えて第1のクリーニングを実行することとしたので、第1のクリーニングに用いられる液体が不足するのを回避することができる。これにより、所期のクリーニング動作を行うことができる。
【0008】
上記のメンテナンス方法において、前記液体貯留部が交換されたタイミングにおいて、前回の前記第1のクリーニングから前記所定期間が経過していた場合、前記第2のクリーニングに代えて前記第1のクリーニングを行う第五ステップを更に備える。
本発明によれば、液体貯留部が交換されたタイミングにおいて、前回の第1のクリーニングから所定期間が経過していた場合、第2のクリーニングに代えて第1のクリーニングを行うこととしたので、液体が不足することなく十分なクリーニング動作を行うことができる。これにより、良好な噴射動作を行うことができる。
【0009】
上記のメンテナンス方法において、前記所定量は、前記第1のクリーニングによって排出される前記液体の量以上の量である。
本発明によれば、所定量が第1のクリーニングによって排出される液体の量以上の量であるため、第1のクリーニングに用いられる液体が不足するのをより確実に回避することができる。
【0010】
上記のメンテナンス方法において、前記キャップ部は、前記ノズル形成面を封止可能であり、前記第1のクリーニングは、前記キャップ部が前記ノズル形成面上の空間を封止した状態で当該封止された空間を吸引することを含む。
本発明によれば、キャップ部がノズル形成面を封止可能であり、第1のクリーニングではキャップ部がノズル形成面上の空間を封止した状態で当該封止された空間を吸引するので、ノズルからより確実に液体を排出させることができる。また、この場合において、排出動作における液体の消費量を十分に賄うことができる。
【0011】
上記のメンテナンス方法において、前記キャップ部は、前記ノズル形成面を封止可能であり、前記第2のクリーニングは、前記キャップ部が前記ノズル形成面上の空間を封止した状態で、当該封止された空間を吸引することと、前記キャップ部が前記ノズル形成面に対向して配置された状態で複数の前記ノズルから前記液体を排出させて前記キャップ部に受けさせることと、のうち少なくとも一方を含む。
本発明によれば、キャップ部がノズル形成面を封止可能であり、第2のクリーニングでは、キャップ部がノズル形成面上の空間を封止した状態で当該封止された空間を吸引することと、キャップ部がノズル形成面に対向して配置された状態で複数のノズルから液体を排出させてキャップ部に受けさせることと、のうち少なくとも一方を含む動作を行うことができるので、ノズルの噴射状況に応じて最適な排出動作を選択することができる。
【0012】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有し、前記液体の供給源である液体貯留部が交換可能に取り付けられた液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズルから排出される前記液体を受けるキャップ部と、前記ノズルから前記キャップ部に前記液体を排出する第1のクリーニングを実行するか否かを判定する第1クリーニング判定工程、前記第1クリーニング判定工程において前記第1のクリーニングを実行すると判定した場合に前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が所定量以上か否かを判定する第1液量判定工程、前記第1液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行し前記所定量未満であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行しない第1クリーニング工程、前記第1クリーニング工程の後に前記液体貯留部が交換された場合に前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が前記所定量以上か否かを判定する第2液量判定工程、前記第2液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合に前記第1クリーニング工程において前記第1のクリーニングを実行したか否かを判定する第2クリーニング判定工程、前記第2クリーニング判定工程において前記第1のクリーニングを実行したと判定した場合には前記第2のクリーニングを実行し前記第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には前記第2のクリーニングに代えて前記第1のクリーニングを実行する第2クリーニング工程、を行わせる制御部とを備える。
【0013】
本発明によれば、液体貯留部が交換された場合に、液体貯留部に貯留されている液体の量が所定量以上か否かを判定し、所定量以上であると判定した場合に、第1のクリーニングを実行したか否かを判定し、第1のクリーニングを実行したと判定した場合には第2のクリーニングを実行し、第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には第2のクリーニングに代えて第1のクリーニングを実行することとしたので、定期クリーニングに用いられる液体が不足するのを回避することができる。これにより、所期のクリーニング動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る印刷装置の制御装置の構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態に係る印刷装置の動作の様子を示す図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の動作の様子を示す図。
【図6】本実施形態に係る印刷装置の制御装置の動作を示すフローチャート。
【図7】本実施形態に係る印刷装置の制御装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明が適用された印刷装置PRTの主要部の構成を斜視図によって示したものである。同図に示すように、印刷装置PRTは、噴射機構IJ、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。
【0016】
噴射機構IJは、キャリッジ1、キャリッジモータ2、タイミングベルト3、ガイド部材4、プラテン5を有している。キャリッジ1は、タイミングベルト3に接続されている。キャリッジモータ2の駆動によりタイミングベルト3が往復するようになっている。ガイド部材4は、プラテン5の軸方向に沿って延在しており、キャリッジ1の往復移動を案内する。搬送機構CVは、例えば搬送ローラなどを有しており、記録用紙6をヘッドHの下方へ搬送させる。
【0017】
キャリッジ1の上側面には、インクを供給するブラックインクカートリッジ7、およびカラーインクカートリッジ8が着脱可能に装填されている。ブラックインクカートリッジ7及びカラーインクカートリッジ8に収容されているインクとしては、染料や顔料などの色素材料を溶媒に溶解又は分散させたインクが用いられている。
【0018】
キャリッジ1の図中下面には、ヘッドHが設けられている。ヘッドHのノズル形成面Haには、複数のノズルNZが形成されている。これらのノズルNZは、それぞれブラックインクカートリッジ7及びカラーインクカートリッジ8に接続されている。ヘッドHは、複数のノズルNZを介してインクを噴射する。
【0019】
以下、インクの出し方について、下記のような定義を行う。まず、印刷時、記録時などに記録用紙6に向けてインクを出す場合には「吐出」と表記する。また、ふちなし印刷や各種メンテナンス動作により記録用紙6とは異なる部分にインクを出す場合には「排出」と表記する。更に、「吐出」及び「排出」を含めてインクがヘッドHから出される場合を「噴射」と表記する。
【0020】
ブラックインクカートリッジ7及びカラーインクカートリッジ8を含むインクカートリッジICは、ヘッドHに対して交換可能に取り付けられている。従って、本実施形態に係る印刷装置PRTは、いわゆるオンキャリッジ型の印刷装置である。このオンキャリッジ型の構成においては、インクカートリッジICがヘッドHと一体的に移動可能となっている。各インクカートリッジICには、内部のインクの残量を検出可能なインク残量検出部90が設けられている。
【0021】
メンテナンス機構MNは、キャッピング機構CP、ポンプ機構SC、収容部11を有している。
図2は、キャッピング機構CP及びポンプ機構SCの構成を示す図である。図2は、ヘッドHがホームポジションに配置された場合(図中一点鎖線)を示している。
【0022】
図2に示すように、キャッピング機構CPは、キャップ部材51、吸収部材52及びカム機構53を有している。
キャップ部材51は、トレイ状に形成されており、収容部51a及び封止部51bを有している。収容部51aは、ヘッドHから排出されるインクを受ける部分である。封止部51bは、ヘッドHのノズル形成面Haに当接された状態で当該ノズル形成面Ha上の空間を封止する。
【0023】
吸収部材52は、キャップ部材51の収容部51aに配置されている。吸収部材52は、スポンジなどの多孔質材によって形成されている。吸収部材52は、収容部51aにおいて受けられたインクを吸収して保持する。カム機構53は、軸部材53a及び回転部材53bを有する偏心カム機構である。カム機構53は、回転部材53bのキャップ部材51に対する当接位置を調整することで、キャップ部材51とヘッドHとの距離を調整する。
【0024】
ポンプ機構SCは、接続管54を介してキャップ部材51の収容部51aに接続されている。ポンプ機構SCは、収容部51aを吸引する。ポンプ機構SCとしては、例えばチューブポンプ機構などを用いることができる。ポンプ機構SCは、制御装置CONTに接続されている。
【0025】
図3は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IPや、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶する記憶装置MRなどが接続されている。
【0026】
また、制御装置CONTには、上述した搬送機構CVや、ヘッドH、ヘッド移動機構AC、メンテナンス機構MNが接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス機構MNのうちキャッピング機構CPの移動や、ポンプ機構SCの駆動及びその切り替えのタイミング、インク残量検出部90の動作などを制御する。また、印刷装置PRTは、時間を測定する不図示のタイマーを有しており、制御装置CONTは当該タイマーに接続されている。
【0027】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。制御装置CONTは、印刷装置PRTの動作として、ヘッドHによる印刷動作や、メンテナンス機構MNによるヘッドHのクリーニング動作などを行わせる。
【0028】
まず、印刷動作について説明する。印刷装置PRTに所定の印刷開始信号が入力された場合、制御装置CONTは、搬送機構CVによって媒体MをヘッドHに対向する位置に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてヘッドHに駆動信号を入力する。ヘッドHに駆動信号が入力されると、ノズルNZからインクが吐出される。ノズルNZから吐出されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0029】
次に、クリーニング動作を行わせる場合を説明する。クリーニング動作は、ヘッドHの吐出特性を確保するために行われる。制御装置CONTは、上記クリーニング動作として、キャッピング機構CPを用いたフラッシング動作及び吸引動作を行わせる。クリーニング動作を行わせる際、制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションまで移動させ、キャップ部材51の収容部51aに対向させる。
【0030】
クリーニング動作のうちフラッシング動作を行わせる場合、制御装置CONTは、ヘッドHを収容部51aに対向させた後、制御装置CONTは、図4に示すように、ヘッドHから収容部51aへとインクDを排出する。排出されたインクDは、収容部51aに配置された吸収部材52によって吸収されて保持される。
【0031】
ヘッドHは、使用時間によってノズルNZのインクDの増粘、あるいはノズルNZ開口近傍へのゴミの付着によって吐出不良が生じてくるおそれがある。そのため、非記録処理時にノズルNZからインクを予備吐出させて増粘したインクやゴミ等を排出させるフラッシング動作を行うことで、ヘッドHの吐出特性を維持或いは回復させる。
【0032】
クリーニング動作のうち吸引動作を行わせる場合、制御装置CONTは、図5に示すように、キャップ部材51によってヘッドHのノズル形成面Ha上の空間Kを封止させ、ポンプ機構SCを作動させる。この動作により、空間Kが負圧になるため、ヘッドHの内外の圧力差により、ノズルNZからインクが収容部51aに排出される。
【0033】
なお、本実施形態では、負圧の大きさを調整することにより、吸引力を例えば二段階(強吸引力、弱吸引力)に調整可能である。以下、強吸引力による吸引動作を強吸引動作と表記し、弱吸引力による吸引動作を弱吸引動作と表記する。
【0034】
上記のクリーニング動作は、定期クリーニング(第1のクリーニング)、交換クリーニング(第2のクリーニング)及びマニュアルクリーニングの三種類に分別される。定期クリーニングは、前回のクリーニング動作から所定期間(例、半年間)経過する度に行われる。なお、当該所定期間については、単なる時間だけでなく、例えばヘッドからのインク噴射回数や、前回の定期クリーニングからの総印刷時間なども含まれる。定期クリーニングでは、強吸引動作が行われる。
【0035】
交換クリーニングは、インクカートリッジICを交換する場合に行われる。マニュアルクリーニングは、印刷装置PRTにマニュアルクリーニング開始信号(所定の信号)が入力された場合に行われる。交換クリーニング及びマニュアルクリーニングでは、フラッシング動作、弱吸引動作及び強吸引動作のうち少なくとも一つが行われる。
【0036】
このようなクリーニング動作では、フラッシング動作及び吸引動作のいずれの場合も一定量のインクを消費する。ここでは、インクの消費量は、フラッシング動作、弱吸引動作、強吸引動作の順に多くなるものとする。クリーニング動作において一定量のインクが消費されるため、当該クリーニング動作を行おうとするタイミングでインクカートリッジICに貯留されるインクの残量が上記クリーニング動作におけるインクの消費量よりも少ない場合、インクが不足し、所期のクリーニング動作を行うことが困難となる。
【0037】
これに対して、本実施形態では、制御装置CONTは、以下の動作を行う。
図6は、本実施形態に係るクリーニング動作に関するフローチャートである。
図6に示すように、まず、制御装置CONTは、上記の印刷開始信号が入力された場合(ステップ601のYES)、定期クリーニングの要否を判断する(ステップ602)。
【0038】
この動作において、制御装置CONTは、前回の定期クリーニングが行われてから所定期間が経過したか否かを確認する。所定期間を経過していた場合、新たに定期クリーニング動作を行う必要があると判断する。所定期間が経過していなかった場合、定期クリーニングを行う必要は無いと判断する。定期クリーニングを行う必要が無いと判断した場合(ステップ602のNO)、制御装置CONTは、メンテナンス機構MNに印刷動作を行わせる(ステップ606)。
【0039】
定期クリーニングを行う必要があると判断した場合(ステップ602のYES)、制御装置CONTは、インク残量検出部90にインクカートリッジICのインク残量を検出させる(ステップ603)。検出の結果、インク残量が所定量(一例として、定期クリーニングでのインク消費量)以上の場合(ステップ604のYES)、制御装置CONTは、メンテナンス機構MNを駆動させることで定期クリーニングを行わせ(ステップ605)、当該定期クリーニングの後にヘッドHや搬送機構CV、ヘッド移動機構AC等を駆動させ、印刷動作を行わせる(ステップ606)。
【0040】
一方、検出の結果、インク残量が上記所定量よりも少ない場合(ステップ604のNO)、制御装置CONTは定期クリーニングを行わせることなく、印刷動作を実施させる(ステップ606)。このとき制御装置CONTは、定期クリーニングが未実施である旨を記憶装置MRに記憶させる(ステップ607)。以下、定期クリーニングが未実施である旨が記憶された状態を、未実施フラグが立った状態と表記する。
【0041】
図7は、本実施形態に係るクリーニング動作に関するフローチャートである。
制御装置CONTは、図6に示す動作の後、以下図7に示す動作を行う。制御装置CONTは、インクカートリッジICの交換が行われたか否かを確認する(ステップ700)。インクカートリッジICの交換が行われた後(ステップ700のYES)、制御装置CONTは、インクカートリッジのインク残量を検出する。検出の結果、所定量未満の場合(ステップ701のNO)には、例えばエラー信号を出力する。検出の結果、所定量以上の場合(ステップ701のYES)、制御装置CONTは、上記の未実施フラグが立っているか否かを確認する。
【0042】
未実施フラグが立っている場合(ステップ702のYES)、制御装置CONTは、交換クリーニングに代えて定期クリーニングを行わせる(ステップ703)。したがって、制御装置CONTは、交換クリーニングにおける動作内容がフラッシング動作あるいは弱吸引動作を指示するものであっても、強吸引動作を行わせる。なお、上記の定期クリーニングの後、未実施フラグをリセットする。
【0043】
未実施フラグが立っていない場合(ステップ702のNO)、制御装置CONTは、上記同様の手法で定期クリーニングの要否を判断する。すなわち、インクカートリッジICの交換時において、前回の定期クリーニングから所定期間経過していた場合には定期クリーニングが必要であると判断し、所定期間経過していない場合には定期クリーニングが不要であると判断する。
【0044】
定期クリーニングが必要であると判断した場合(ステップ704のYES)、制御装置CONTは、交換クリーニングに代えて定期クリーニングを行わせる(ステップ703)。したがって、制御装置CONTは、未実施フラグがある場合と同様、交換クリーニングにおける動作内容がフラッシング動作あるいは弱吸引動作を指示するものであっても、強吸引動作を行わせる。
【0045】
一方、制御装置CONTは、定期クリーニングが不要であると判断した場合(ステップ704のNO)、通常の交換クリーニングを行わせる(ステップ705)。定期クリーニング又は交換クリーニングを行わせた後、印刷開始信号が入力された場合には(ステップ706のYES)、印刷動作を行わせる(ステップ707)。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、前回の定期クリーニングから所定期間が経過したタイミングでインクカートリッジICに残留されたインクの量が所定量よりも少ない場合には定期クリーニングを行わず、インクカートリッジICが交換された場合に、交換クリーニングに代えて定期クリーニングを行うこととしたので、定期クリーニングに用いられるインクが不足するのを回避することができる。これにより、所期のクリーニング動作を行うことができる。定期クリーニングが必要な場合には、ノズル内のインクが増粘していたり、気泡が混入していたりする場合がある。したがって、そうした状態を改善でき、良好な噴射動作を行なうことができる。
【0047】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、ステップ604の判断でインク残量と比較する所定量の一例として、定期クリーニングでのインク消費量を挙げて説明したが、これに限られることは無く、定期クリーニングでのインク消費量以上の量であれば、他の値であっても良い。
【0048】
また、上記実施形態においては、吸引動作として強吸引動作及び弱吸引動作の二段階の態様がある場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば吸引力の強さが三段階以上設けられている態様であっても良いし、吸引力の強さが一定であっても良い。
【0049】
また、上記実施形態においては、定期クリーニングにおいて、強吸引動作を行う構成としたが、これに限られることは無く、例えば弱吸引動作や、他の吸引力による吸引動作、フラッシング動作のうち少なくとも1つを行う態様であっても構わない。勿論、定期クリーニングにおいて、上記の動作のうち複数の動作を組み合わせて行っても良い。
【0050】
所定量のインクを確保するためには、カートリッジ交換だけでなく、本体に装着されるインクを貯留するインク貯留部にインクを補充したり、使用済みのインクカートリッジICにインクを再充填したりすることでインクを補う構成でも良い。なお、上記実施形態において、インクカートリッジICの「交換」については、単に新旧のインクカートリッジICを交換するだけでなく、上記のインクの補充や再充填する場合など、インクカートリッジICのインクを補う動作が含まれる。
【0051】
上記実施形態では、印刷方式としてインクジェット方式を採用した印刷装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の方式の印刷装置に変更することもできる。また、印刷装置に限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等、他の記録装置であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0052】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0053】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
PRT…印刷装置 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 H…ヘッド Ha…ノズル形成面 CP…キャッピング機構 SC…ポンプ機構 WP…ワイピング機構 IC…インクカートリッジ TB…供給チューブ MR…記憶装置 NZ…ノズル D…インク K…空間 2…サブタンク 4…キャリッジ 51…キャップ部材 90…インク残量検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有し前記液体の供給源である液体貯留部が交換可能に取り付けられた液体噴射ヘッドと、前記ノズルから排出される前記液体を受容するキャップ部とを備えた液体噴射装置における前記液体噴射ヘッドをメンテナンスするメンテナンス方法であって、
前記ノズルから前記キャップ部に前記液体を排出する第1のクリーニングを実行するか否かを判定する第1クリーニング判定工程と、
前記第1クリーニング判定工程において前記第1のクリーニングを実行すると判定した場合に、前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が所定量以上か否かを判定する第1液量判定工程と、
前記第1液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行し、前記所定量未満であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行しない第1クリーニング工程と、
前記第1クリーニング工程の後、前記液体貯留部が交換された場合に、前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が前記所定量以上か否かを判定する第2液量判定工程と、
前記第2液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合に、前記第1クリーニング工程において前記第1のクリーニングを実行したか否かを判定する第2クリーニング判定工程と、
前記第2クリーニング判定工程において、前記第1のクリーニングを実行したと判定した場合には前記第2のクリーニングを実行し、前記第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には前記第2のクリーニングに代えて前記第1のクリーニングを実行する第2クリーニング工程と
を備えるメンテナンス方法。
【請求項2】
前記所定量は、前記第1のクリーニングによって排出される前記液体の量以上の量である
請求項1に記載のメンテナンス方法。
【請求項3】
前記キャップ部は、前記ノズル形成面を封止可能であり、
前記第1のクリーニングは、前記キャップ部が前記ノズル形成面上の空間を封止した状態で当該封止された空間を吸引することを含む
請求項1又は請求項2に記載のメンテナンス方法。
【請求項4】
前記キャップ部は、前記ノズル形成面を封止可能であり、
前記第2のクリーニングは、前記キャップ部が前記ノズル形成面上の空間を封止した状態で、当該封止された空間を吸引することと、前記キャップ部が前記ノズル形成面に対向して配置された状態で複数の前記ノズルから前記液体を排出させて前記キャップ部に受けさせることと、のうち少なくとも一方を含む
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のメンテナンス方法。
【請求項5】
液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有し、前記液体の供給源である液体貯留部が交換可能に取り付けられた液体噴射ヘッドと、
複数の前記ノズルから排出される前記液体を受けるキャップ部と、
前記ノズルから前記キャップ部に前記液体を排出する第1のクリーニングを実行するか否かを判定する第1クリーニング判定工程、前記第1クリーニング判定工程において前記第1のクリーニングを実行すると判定した場合に前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が所定量以上か否かを判定する第1液量判定工程、前記第1液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行し前記所定量未満であると判定した場合には前記第1のクリーニングを実行しない第1クリーニング工程、前記第1クリーニング工程の後に前記液体貯留部が交換された場合に前記液体貯留部に貯留されている前記液体の量が前記所定量以上か否かを判定する第2液量判定工程、前記第2液量判定工程において前記所定量以上であると判定した場合に前記第1クリーニング工程において前記第1のクリーニングを実行したか否かを判定する第2クリーニング判定工程、前記第2クリーニング判定工程において前記第1のクリーニングを実行したと判定した場合には前記第2のクリーニングを実行し前記第1のクリーニングを実行していないと判定した場合には前記第2のクリーニングに代えて前記第1のクリーニングを実行する第2クリーニング工程、を行わせる制御部と
を備える液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179781(P2012−179781A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43601(P2011−43601)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】