説明

メーキャップ化粧料の製造方法及びメーキャップ化粧料

【課題】 本発明はレーザ光を用いて固形化粧料の表面に文字、図形、模様等(加飾模様)の加飾を行うメーキャップ化粧料の製造方法及びメーキャップ化粧料に関し、加飾模様をシャープで鮮明に形成することを課題とする。
【解決手段】 固形化粧料本体32の表面に加飾層31を形成し、この加飾層31に対してレーザ光40を用いて加飾処理を行うメーキャップ化粧料の製造方法であって、パール剤10にマイカ系粉末11を混合することにより粉末パーツ15を生成する工程S1と、粉末パーツ15に結合剤16及び溶剤17を添加しこれをスラリー化して加飾剤を生成する工程S2と、加飾剤21を固形化粧料本体32の表面に吹き付け処理することにより加飾層31を形成する工程S3と、この加飾層31に対してレーザ光40により加飾処理を行う工程S4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメーキャップ化粧料の製造方法及びメーキャップ化粧料に係り、特にレーザ光を用いて固形化粧料の表面に文字、図形、模様等の加飾を行うメーキャップ化粧料の製造方法及びメーキャップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファンデーションに代表されるような固形化粧料では、その表面に文字、図形、模様等(以下、これらを加飾模様という)の加飾を行うことが行われている。この固形化粧料の表面に加飾を行う方法としては、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、エンボス加工においては、固形化粧料の表面に加飾しようとする加飾模様をプレス型に予め形成しておき、このプレス型を固形化粧料の表面にプレスすることにより加飾処理を行う。しかしながら、この方法では、生産性は良好であるが、プレスであるためにどうしても加飾模様の外周縁においては丸みをおびるラインになり、シャープな加飾模様を表現することができないという問題点があった。
【0004】
そこで、近年ではこの問題点を解決する方法として、例えば特許文献1に示されるような、レーザ光を用いて固形化粧料の表面に加飾を行う方法(以下、レーザ加飾法という)が提案されている。特許文献1に示されるような、従来のレーザ加飾法は、固形化粧料の表面に直接レーザ光を照射し、よって固形化粧料の表面に直接レーザ光により加飾模様を形成する方法とされていた。
【特許文献1】特開2002−192770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように固形化粧料の表面に直接レーザ光により加飾模様を形成した場合には、レーザ光の照射により加飾模様を形成した部位も、レーザ光の照射を実施しなかった部位も共に同一の固形化粧料の表面であるため、両者は同一色で加飾模様を明確に視認することができず、加飾効果が十分ではないという問題点があった。
【0006】
また、上記した従来のレーザ加飾法では、固形化粧料の表面に直接レーザ光により加飾模様を形成する方法であったため、表面にパール剤等を吹きつける加飾を行った場合に、レーザ光の照射により吹き付け加飾部が必要以上に飛散してしまい、シャープな加飾模様を表現することができないという問題点があった。この固形化粧料の飛散はレーザの出力を調整することによりある程度は調整可能であるが、シャープな加飾模様を実現できるほどの調整はできない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、固形化粧料の表面吹き付け形成された加飾層に文字、図形、模様等の加飾模様を、レーザ光を用いてシャープに形成することを可能としたメーキャップ化粧料の製造方法及びメーキャップ化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項1記載の発明は、
固形化粧料の表面に加飾層を形成し、該加飾層に対してレーザ光を用いて加飾処理を行うメーキャップ化粧料の製造方法であって、
加飾に用いる粉末と結合剤と溶媒とからなる加飾剤を、前記固形化粧料の表面に吹き付け処理することにより前記加飾層を形成することを特徴とするものである。
【0010】
上記発明によれば、レーザ光が照射された場合、加飾層の飛散を抑制できる。また、レーザ光が照射された場合に必要以上に加飾層が飛散及びはがれるのを抑制でき、加飾層に対しシャープな加飾処理を行うことができる。更に、加飾剤を固形化粧料の表面に吹き付け処理することにより加飾層を形成したため、固形化粧料の表面に加飾層を形成する処理を容易に生産性を持って行うことができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記加飾剤に、更に油分を添加したことを特徴とするものである。
【0012】
上記発明によれば、加飾層に更に油分を添加したことにより、この油分によりレーザ光の照射時にパール剤が必要以上に飛散することを防止できる。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記結合剤はヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とするものである。
【0014】
上記発明によれば、ヒドロキシプロピルセルロースはパール剤を固形化粧料の表面に付着(結合)させる機能を奏するため、レーザ光の照射時にパール剤が必要以上に飛散することを防止できる。
【0015】
また、請求項4記載の発明は、
請求項3記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記加飾剤に対する前記ヒドロキシプロピルセルロースの添加量を0.01%以上0.2%以下としたことを特徴とするものである。
【0016】
上記発明によれば、パール剤を固形化粧料の表面によりケーキングがなく、有効に付着(結合)させることができる。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記溶剤としてエタノールを用いたことを特徴とするものである。
【0018】
上記発明によれば、加飾剤に対して良好な加飾処理を行うことができる。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、
固形化粧料と、
該固形化粧料の表面に設けられ、レーザ光を用いて加飾処理が行なわれてなる加飾層とを具備するメーキャップ化粧料であって、
該加飾層が、パール剤と、マイカ系粉末と、結合剤とを含んでなることを特徴とするものである。
【0020】
上記発明によれば、パール剤の特徴を生かしたままパール剤の飛散を抑制でき、よって加飾層に形成された加飾模様(文字、図形、模様等)を長期にわたり維持させることができる。
【0021】
また、請求項7記載の発明は、
請求項6記載のメーキャップ化粧料において、
前記加飾層に、更に油分を添加したことを特徴とするものである。
【0022】
上記発明によれば、この油分によりレーザ光の照射時にパール剤が必要以上の飛散が抑制されるため、鮮明な加飾を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
上述の如く本発明によれば、レーザ光の照射時にパール剤単体で粉末パーツを生成した場合に比べてパール剤の飛散を抑制でき、また粉末パーツの必要以上の飛散及びはがれを抑制できるため、加飾層に対しシャープな加飾処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施例であるメーキャップ化粧料の製造方法を示す工程図である。尚、本実施例では、メーキャップ化粧料としてパウダリータイプのファンデーションを例にあげて説明するものとする。しかしながら、本発明の適用はパウダリータイプのファンデーションに限定されるものではなく、他のメーキャップ化粧料(例えば、アイシャドー、おしろい、頬紅、口紅等)の製造方法に対しても適用できるものである。
【0026】
本実施例に係るメーキャップ化粧料の製造方法は、大略すると第1の工程(図中、S1で示す)〜第4の工程(図中、S4で示す)を有している。第1の工程S1では、パール剤10,他の粉末11,油分12を混合して粉末パーツ15を生成する処理が行われる。
加飾に用いる粉末としては、パール剤、色剤等が挙げられる。パール剤としては、例えば雲母チタン系複合材料、雲母酸化鉄系複合材料、ビスマスオキシクロライド、グアニンや、更に、酸化窒化チタンおよび/または低次酸化チタンを含有するチタン化合物で被覆された雲母等が挙げられる。雲母チタン系複合材料のチタンについては二酸化チタン、低次酸化チタン、酸化窒化チタンのいずれでもよい。また雲母チタン系複合材料またはビスマスオキシクロライドに、例えば酸化鉄、紺青、酸化クロム、カーボンブラック、カーミンあるいは群青等を更に混合したものであってもかまわない。また、これらをシリコーン処理、フッソ処理、脂肪酸処理等の表面処理したものも使用できる。
パール剤10は、特にその材料を限定されるものではなく、1種を用いてもよいし2種以上を用いてもよい。本実施例では、パール剤10として酸化鉄・二酸化チタン被覆雲母を用いている。
【0027】
他の粉末11は、後述するように、レーザ光40の照射時にパール剤10が必要以上に飛散するのを抑制するために添加される。この他の粉末11の材質としては、種々の粉末が考えられるが、後述するように加飾層31のツヤやパール感を良好とするためにはマイカを用いることが望ましい。
【0028】
ここで言うマイカとは、白雲母、金雲母、合成雲母(フッ素金雲母、カリ四ケイ素雲母等)、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、絹雲母等を薄く剥離したものが挙げられる。鉱石を粗粉砕した後に微粉砕を行う。粗粉砕機としては、圧縮破砕機、剪断断粗砕機、衝撃破砕機、ロール式、スタンプ式の粗砕機が使用できる。微粉砕機としては、ボール媒体ミル、攪拌式媒体ミル、ジェット粉砕機、湿式高速回転ミル、石臼式ミル等が使用できるが、特にこれらに限定されない。
【0029】
また、粉砕後は分級を行い、適宜粒度を揃えても良い。分級は、自然沈降法、サイクロン法等により行えばよい。分級前、もしくは、分級後に酸処理、熱処理等の処理を行ってもよい。
【0030】
マイカの他には、板状であるものならばよく、例えば金属酸化物、金属の硫酸塩等がある。酸化物には、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、酸化鉄、酸化セリウム、等の金属酸化物、上記酸化物の金属の複合化物等があげられる。これらの酸化物あるいは、複合酸化物の製法は、例えば金属アルコキシド水溶液を平滑な表面に塗布し、乾燥後かき取り、焼成して得ることができる。これらの粉末は必要に応じて、シリコーン処理、フッ素処理、金属石鹸処理、脂肪酸処理、界面活性剤処理、アミノ酸処理、デキストリン脂肪酸処理、あるいは、酸、アルカリ、無機塩類、更にはこれらの複合処理を行ってもよい。
【0031】
油分12は、必ずしも添加する必要はないものである。しかしながら、油分12を添加することにより、後述するようにレーザ光40の照射時にパール剤10の飛散が抑制されることが確認されている。この油分12の種類としては、種々のものが考えられるが、本実施例では経時的に固形化粧料本体32との間で油分の移動が発生することを考慮して、固形化粧料本体32の油分と同じものを用いている。しかしながら、その種類は配合される原料の数、種類、配合量を含め限定されるものではない。
【0032】
尚、ここで固形化粧料本体32とは、パウダリータイプのファンデーションそのものをいう。以下の説明では、このファンデーションそのものである固形化粧料本体32と、この固形化粧料本体32上に吹き付け形成される加飾層31との双方を含めたものを固形化粧料30というものとする。
【0033】
上記したパール剤10,他の粉末11,及び油分12は、混合機13に入れられて混合処理が行われる。尚、混合機13の種類は、粉末のみ或は粉末と油分を混合できるものであれば、特に種類は限定されない。
【0034】
この混合機13により混合されたパール剤10,他の粉末11,及び油分12を、以下の説明では粉末パーツ15というものとする。本実施例では、パール剤10を42.25%、他の粉末11を42.25%、油分12を5.5%の組成で添加する構成としている。
【0035】
但し、パール剤10,他の粉末11,及び油分12の組成はこれに限定されるものではなく、パール剤10の添加量は、可変することが可能である。また、他の粉末11の添加量も、パール剤の量に応じて可変することが可能である。
【0036】
上記した第1の工程S1において粉末パーツ15が生成されると、続いて第2の工程S2が実施される。この第2の工程S2では、粉末パーツ15,結合剤16,溶剤17をスラリー化して加飾剤を生成する。
【0037】
結合剤16は粘性を有しており、スラリー化したパール剤10や他の粉末11を固形化粧料本体32の表面に付着させる機能を奏する。この結合剤16は、水溶性樹脂、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースガム等の水溶性セルロース誘導体、グルコース、マルトース等の多糖類、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸オクチルアミド−アクリル酸ヒドロキシプロピル−メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体等の水溶性有機高分子、モンモリロナイト等の粘土鉱物類、アラビアゴム、デンプン糊、マルメロ抽出物等の天然水溶性高分子等が挙げられる。但し、一般の化粧品に適用できる成分であればよく、上記の成分に限定されるものではない。
この結合剤16を添加することにより、加飾層31を形成した後における加飾層31の剥離防止を図れると共に、レーザ光40の照射時にパール剤10が必要以上に飛散するのを防止できる。
【0038】
本実施例では、結合剤16として生理的に無害であると共に所定の粘性を有するヒドロキシプロピルセルロースを用いている。このヒドロキシプロピルセルロースは、ファンデーション等のペーパサンプルで用いられるフィルムコーティング剤として化粧品について実績があり、高い安全性が実証されているものである。
【0039】
また、溶剤17としてはシリコーン油,炭化水素等も考えられるが、本実施例では揮発性を有するエタノールを用いている。しかしながら、溶剤17のアルコール濃度は99度(99%)に限定されるものではない。また、揮発性溶剤であれば、特に種類を限定されるものではない。
【0040】
上記した粉末パーツ15,結合剤16,及び溶剤17は、スラリーミキサ18によりスラリー化され、加飾剤が生成される。この際、本実施例では、粉末パーツ15を10.00%、結合剤16を0.01%〜0.10%、溶剤17を89.90%〜89.99%の組成で添加する構成としている。但し、粉末パーツ15,結合剤16,溶剤17の組成は、本実施例の値に限定されものではなく、製造機の能力に応じて可変であり、添加順序についてもこれに限定されるものではなく、スラリー中に粉末パーツ15,結合剤16,および溶剤17を混合できる工程であれば良い。
【0041】
上記した第2の工程S2において加飾剤が生成されると、続いて第3の工程S3が実施される。
【0042】
この第3の工程S3では、噴霧機22を用いて第2の工程S2で生成された加飾剤を固形化粧料本体32の表面に吹き付け、加飾層31を形成する処理を行う。本実施例では、ポンプ21を用いてスラリーミキサ18内の加飾剤を噴霧機22に圧送すると共に、噴霧機22から固形化粧料本体32に向け吹き付け処理を行う構成としている。
【0043】
ここで、固形化粧料本体32は前記したようにパウダリータイプのファンデーションであり、周知の方法により予めレフィル33に装填されている。本実施例では、加飾剤の色は、固形化粧料本体32の色よりも若干濃い色が選定されている。これにより、後述するようにレーザ光40で加飾層31に対し加飾処理を行った際、コントラストが明確になり、固形化粧料30に対し良好な加飾を行うことができる。但し、ファンデーションの色と、パール剤の色の組み合わせは限定されるものではない。
【0044】
ところで、固形化粧料本体32の表面に加飾層31(薄膜)を形成する方法としては、本実施例で適用している吹き付け方法の他にも種々の方法が考えられる。具体的には、メッシュ及びスキージを用いてスクリーン印刷を行うスクリーン印刷法等が考えられる。しかしながら本発明者の実験では、スクリーン印刷では粒径の大きなパール剤やマイカを用いた場合にはメッシュに加飾剤中のパール剤10が目詰まりしてしまい、良好な結果が得られなかった。
【0045】
これに対し、本実施例で採用している吹き付け方法では、特に問題点は発生せず、加飾層31を良好に形成することができた。また、吹き付け法を用いることにより、上記の他の形成方法に比べ加飾層31容易に生産性を持って形成することができる。
【0046】
上記した第3の工程S3において固形化粧料本体32上に加飾層31が形成されると、続いて第4の工程S4が実施される。この第4の工程S4では、加飾層31に対してレーザ光40により加飾模様(文字、図形、模様等)が形成される。
【0047】
レーザ光40を発生するレーザ加工装置41は、駆動装置42により駆動されることによりレーザ光40を加飾層31に向け照射する。また、レーザ加工装置41は、移動装置43により移動可能となっており、これにより加飾層31に任意の加飾模様を形成することができる。このレーザ加工装置41としては、例えばYAG型レーザ加工装置を用いることができる。
【0048】
上記のよう第1の工程S1〜第3の工程S3を実施することにより固形化粧料本体32の表面に加飾層31を形成し、続いて第4の工程S4においてレーザ光40を加飾層31に向け照射して加飾処理を行うことにより、図3に示されるような加飾模様が形成される。本実施例では、各工程で用いられる材料及び処理条件を適宜選定することにより、加飾層31に対してシャープで鮮明な加飾処理を実現することができた。
【0049】
以下、各工程で使用した材料及びその条件等について、図2を参照しつつ説明する。各図において、「5」は非常に良好を示し、「4」はやや良好を示し、「3」は問題ないレベルの下限を示し、「2」はやや不良を示し、「1」は不良を示している。この評価は、4人の化粧品技術者による判定から求めたものである。
【0050】
先ず、同図の比較例1に示すようにパール剤10と溶剤のみで吹き付けを行った場合は、レーザ加工におけるパール剤の飛び及びはがれが不良で、良好な加飾処理を行うことができないことが判る。
【0051】
これに対し、比較例2に示すようにパール剤10に他の粉末11を添加した場合には、レーザ加工におけるパール剤の飛び及びはがれがやや不良と改善されることが判る。本実施例では、他の粉末11として、吹きつけ後におけるパール剤原体の再現性が良好であるマイカを他の粉末11として用いた。但し、配合される粉末はこれに限定されるものではない。
【0052】
また、実施例1のように油分12を添加した(図示される例では、0.5%)場合、比較例1に比べてレーザ加飾の値においてパール剤の飛びやはがれを改善することができた。よって、本実施例では第1の工程S1において、油分12を添加する構成としている。
【0053】
尚、この油分12の種類としては、経時的に固形化粧料本体32との間で油分の移動が発生することを防止するため、また図2に示される実施例7が他の実施例に比べてケーキングが発生しないことにより、固形化粧料本体32の油分と同じものを用いることとした。但し、配合される油分はこれにより限定されるものではなく、通常化粧料に用いられる油分であればその配合数、配合量等は問わない。
【0054】
続いて、第2の工程S2で使用される結合剤16について考察する。尚、同図では結合剤16として、前記したように化粧品に添加する結合剤として特性の良好であるヒドロキシプロピルセルロースを用いた例を示している。図2の実施例2〜9に示すように、結合剤16を加えたサンプルはいずれの実施例においてもレーザ加飾の値においてパール剤の飛びやはがれを改善することができた。
【0055】
また、実施例6〜9は、加飾剤に対する結合剤16の添加量を変化させた場合における作用効果を示している。加飾剤に対する結合剤16の添加量が0.01%〜0.2%である場合、加飾剤(パール剤)を固形化粧料本体32上に吹きつけた後における、ケーキングの発生を抑制し、レーザ加工におけるパール剤10の不要な飛びの発生を抑制でき、かつレーザ加工後におけるパール剤10の固形化粧料本体32からのはがれを抑制することができる。
【0056】
具体的には、加飾剤に対する結合剤16の添加量が0.01%未満である比較例1,2及び実施例1の場合、レーザ加飾後におけるパール剤10のとびやはがれが問題ない水準の下限以下であったのに対し、加飾剤に対する結合剤16の添加量が0.01%以上である実施例6〜9では、レーザ加飾後におけるパール剤10のとびやはがれはやや良好或は非常に良好であった。
【0057】
一方、ケーキングについては、更に、レーザ加工後におけるパール剤10の固形粉末化粧料本体32からのはがれについては、加飾剤に対する結合剤16の添加量が0.2%を超えると、はがれが発生してしまうことは想像できる。よって、パール剤10(加飾層31)のはがれを抑制する点からは、結合剤16の添加量は0.2%未満であることが望ましい。
【0058】
以上の特性を総合的に判断すると、結合剤16の添加量は、0.01%以上0.2%以下とすることにより、ケーキングの発生を抑制し、レーザ加飾後におけるパール剤10の不要な飛びやはがれの発生を抑制でききる。
【0059】
続いて、第2の工程S2で使用される溶剤17について考察する。図2に示すように、溶剤17として揮発性を有するエタノール、或いは軽質イソパラフィンを用いた場合には、ケーキング特性はやや良好であった。
【0060】
更に、実施例6のようにエタノールのアルコール濃度を99%としても、また実施例4のようにイオン交換水を加えることによりアルコール濃度を約50%としても、ケーキング特性をやや良好とすることができた。よって、エタノールのアルコール濃度を変化させても、上記の良好な結果を得ることが実証された。
【0061】
上記したように、第1の工程S1〜第4の工程S4を実施することにより固形化粧料30に加飾を行うことにより、加飾層31に対しシャープで、かつ加飾後にパール剤のとびやはがれの少ない良好な加飾処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の一実施例であるメーキャップ化粧料の製造方法の工程図である。
【図2】図2は、本発明に係るメーキャップ化粧料の各実施例の組成及び特性を比較例と比較しつつ示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例であるメーキャップ化粧料の製造方法により製造された加飾された固形化粧料を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 パール剤
11 他の粉末
12 油分
15 粉末パーツ
16 結合剤
17 溶剤
18 スラリーミキサ
21 ポンプ
22 噴霧機
30 固形化粧料
31 加飾層
32 固形化粧料本体
40 レーザ光
41 レーザ光照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形化粧料の表面に加飾層を形成し、該加飾層に対してレーザ光を用いて加飾処理を行うメーキャップ化粧料の製造方法であって、
加飾に用いる粉末と結合剤と溶媒とからなる加飾剤を、前記固形化粧料の表面に吹き付け処理することにより前記加飾層を形成することを特徴とするメーキャップ化粧料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記加飾剤に、更に油分を添加したことを特徴とするメーキャップ化粧料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記結合剤はヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とするメーキャップ化粧料の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記加飾剤に対する前記ヒドロキシプロピルセルロースの添加量を0.01%以上0.2%以下としたことを特徴とするメーキャップ化粧料の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメーキャップ化粧料の製造方法において、
前記溶剤としてエタノールを用いたことを特徴とするメーキャップ化粧料の製造方法。
【請求項6】
固形化粧料と、
該固形化粧料の表面に設けられ、レーザ光を用いて加飾処理が行なわれてなる加飾層とを具備するメーキャップ化粧料であって、
該加飾層が、パール剤と、マイカ系粉末と、結合剤とを含んでなることを特徴とするメーキャップ化粧料。
【請求項7】
請求項6記載のメーキャップ化粧料において、
前記加飾層に、更に油分を添加したことを特徴とするメーキャップ化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−62980(P2006−62980A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244251(P2004−244251)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】