説明

モジュラープラグ

【課題】引き抜き方向に一定の力が加わるとロック状態を解除可能であり、且つ導線圧着部等へ損傷を与える可能性を低減できるモジュラープラグを提供する。
【解決手段】モジュラージャック200に挿抜可能なモジュラープラグ100は、モジュラープラグ本体110と、モジュラープラグ本体110の後端部111に設けられた支持部120と、モジュラープラグ本体110との間に間隔をおいて支持部120から挿入方向に延び、支持部120を支点として弾性的に変形可能なレバー130と、レバー130に設けられ、支持部120よりも挿入方向側に位置し、モジュラージャック200のノッチ220に係合する係合突起131とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラー式コネクタに関し、特に、モジュラージャックに挿入されるモジュラープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話機やLAN(ローカルエリアネットワーク)装置等の機器とケーブルとの接続には、モジュラー式コネクタが広く用いられている。モジュラー式コネクタは、機器に設けられたモジュラージャックと、ケーブルの端部に連結されたモジュラープラグとによって構成される。
【0003】
モジュラープラグは、モジュラープラグ本体と、モジュラープラグ本体の前端部から上斜め後方に向けて延びるレバーとを具備する。なお、モジュラープラグの挿入方向を「前方」、モジュラープラグの引き抜き方向を「後方」、レバーが設けられる側を「上方」、レバーが設けられない側(端子が設けられる側)を「下方」とする。
【0004】
レバーには、モジュラージャックのノッチに係合する固定用爪が設けられる。このような構造によって、レバーの押下によってワンタッチ操作で簡便に接続・切り離しができ、しかも接続時には確実にロックすることができる。
【0005】
しかしながら、確実にロックされることから、次のような不具合が生じる。具体的には、ケーブルが機器と接続されている際に使用者がケーブルに足を引っ掛けると、機器を引きずって机上等から転落させたり、モジュラープラグ内の導線圧着部(すなわちケーブルとモジュラープラグとの接合部分)等へ損傷を与えることがある。
【0006】
このような状況に鑑みて、モジュラープラグの引き抜き方向に一定の力が加わると、ロック状態を解除可能に構成されたモジュラープラグ構造が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の構造では、レバーに代えて、モジュラージャックのノッチに弾性的に係合可能な弾性体をモジュラープラグに設けている。当該弾性体は、板ばねを用いて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−151200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のモジュラープラグ構造では、モジュラープラグをモジュラージャックから意図的に引き抜く際には、使用者がケーブルを持ってモジュラープラグを引き抜くことになる。このような作業を繰り返し行った場合、モジュラープラグ内の導線圧着部等へ損傷を与える可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、引き抜き方向に一定の力が加わるとロック状態を解除可能であり、且つ導線圧着部等へ損傷を与える可能性を低減できるモジュラープラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明に係るモジュラープラグの特徴は、モジュラージャック(モジュラージャック200)に挿抜可能なモジュラープラグ(モジュラープラグ100)であって、モジュラープラグ本体(モジュラープラグ本体110)と、前記モジュラープラグ本体における引き抜き方向側の端部(後端部111)に設けられた支持部(支持部120)と、前記モジュラープラグ本体との間に間隔をおいて前記支持部から挿入方向に延び、前記支持部を支点として弾性的に変形可能なレバー(レバー130)と、前記レバーに設けられ、前記支持部よりも挿入方向側に位置し、前記モジュラージャックのノッチ(ノッチ220)に係合する係合突起(係合突起131)とを具備することを要旨とする。
【0011】
このような特徴によれば、係合突起が設けられたレバーは、モジュラープラグ本体の引き抜き方向側の端部(後端部)に設けられた支持部を支点として弾性的に変形可能である。このため、モジュラープラグの引き抜き方向に一定の力が加わったことに応じてレバーが自動的に押し下げられ、ロック状態を解除できる。また、モジュラープラグをモジュラージャックから意図的に引き抜く際には、レバーを使用者が押下することによってロック状態を解除することもできる。
【0012】
したがって、本発明に係るモジュラープラグは、引き抜き方向に一定の力が加わるとロック状態を解除可能であり、且つ導線圧着部等へ損傷を与える可能性を低減できる。
【0013】
本発明に係るモジュラープラグの他の特徴は、上記の特徴に係るモジュラープラグにおいて、前記レバーに設けられ、前記係合突起よりも引き抜き方向側に位置する押下用突起(押下用突起132)をさらに具備することを要旨とする。
【0014】
このような特徴によれば、レバーによって押下される押下用突起をレバーに設けることによって、使用者がロック状態を解除する際の作業性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係るモジュラープラグの他の特徴は、上記の特徴に係るモジュラープラグにおいて、前記係合突起は、側面視において円弧状の形状を有することを要旨とする。
【0016】
このような特徴によれば、モジュラープラグの引き抜き方向に一定の力が加わった際に係合突起とノッチとの係合を解くことが容易になる。
【0017】
本発明に係るモジュラープラグの他の特徴は、上記の特徴に係るモジュラープラグにおいて、前記モジュラープラグ本体、前記支持部、前記レバー及び前記係合突起は、一体的に形成されることを要旨とする。
【0018】
このような特徴によれば、特許文献1に記載のモジュラープラグ構造のような板ばね(弾性体)を設けていないため、モジュラープラグの製造コストを低減することができる。
【0019】
本発明に係るモジュラープラグの他の特徴は、上記の特徴に係るモジュラープラグにおいて、前記モジュラープラグ本体の上面に設けられ、挿入方向に向かうにつれて低くなる傾斜部分を有することを要旨とする。
【0020】
このような特徴によれば、係合突起がノッチの下方を通過する際にレバーがモジュラープラグ本体に干渉することを回避できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、引き抜き方向に一定の力が加わるとロック状態を解除可能であり、且つ導線圧着部等へ損傷を与える可能性を低減できるモジュラープラグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るモジュラー式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るモジュラープラグの挿抜時の使用状態を説明するための側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るモジュラープラグの第1変形例を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るモジュラープラグの第2変形例を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るモジュラープラグの第3変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0024】
(1)モジュラー式コネクタの全体構成
図1は、本実施形態に係るモジュラー式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係るモジュラー式コネクタは、モジュラージャック200と、モジュラージャック200に挿入されるモジュラープラグ100とによって構成される。
【0026】
モジュラージャック200は、電話機やLAN装置等の機器に設けられる。モジュラージャック200は、モジュラープラグ100が挿入される開口部210を有する。開口部210の下部には、モジュラープラグ100の端子113(図2(a)参照)と電気的に接続される端子230が設けられる。開口部210の上部には、ノッチ220が設けられる。なお、本実施形態では、モジュラージャック200は、一般的な構造であり、既存のモジュラージャックが使用できる。
【0027】
モジュラープラグ100は、モジュラー式コネクタは、機器に設けられたモジュラージャックと、ケーブルの端部に連結されたモジュラープラグとによって構成される。モジュラープラグ100は、複数の導線を被覆して形成されたケーブル300の端部に連結される。ケーブル300の端部の周囲は、ブーツ140によって被覆される。モジュラープラグ100は、モジュラージャック200に挿入されることで、モジュラージャック200とケーブル300とを電気的に接続する。以下において、モジュラープラグ100の構成について説明する。
【0028】
(2)モジュラープラグの構成
図1に示すように、モジュラープラグ100は、モジュラープラグ本体110と、モジュラープラグ本体110における後端部111に設けられた支持部120と、モジュラープラグ本体110との間に間隔をおいて支持部120から前方(挿入方向)に延び、支持部120を支点として弾性的に変形可能なレバー130と、レバー130に設けられ、支持部120よりも前方(挿入方向側)に位置し、モジュラージャック200のノッチ220に係合する係合突起131とを具備する。また、モジュラープラグ100は、レバー130に設けられ、係合突起131よりも後方(引き抜き方向側)に位置する押下用突起132をさらに具備する。モジュラープラグ本体110、支持部120、レバー130、係合突起131、及び押下用突起132は、弾性力を有する材料(弾性材料)によって一体的に形成される。
【0029】
モジュラープラグ本体110は、略直方体形状を有しており、ケーブル300からの導線を収納する収納空間が内部に形成される。モジュラープラグ本体110の前下部には、導線と接続される端子113が設けられる(図2(a)参照)。
【0030】
支持部120は、モジュラープラグ本体110の後端部111の上面から上方に突出する。レバー130は、支持部120の上端部から前方に向けて、モジュラープラグ本体110の前端付近まで延びる。レバー130の幅は、モジュラープラグ本体110の幅よりも狭く、具体的には、ノッチ220の幅と略一致する。レバー130とモジュラープラグ本体110との間には、一定の間隔が設けられる。レバー130の前端部133は、下方に屈曲する。
【0031】
係合突起131は、レバー130の幅方向に延び、側面視において円弧状の形状を有する(図2参照)。係合突起131の高さは、レバー130とモジュラープラグ本体110との間の間隔と略一致する(図2(a)参照)。
【0032】
押下用突起132は、係合突起131よりも後方であって、支持部120よりも前方に位置する。押下用突起132の上面には、押下時において滑り止めの機能を果たす凹凸が形成される。
【0033】
(3)挿抜時の使用状態
次に、図2を用いて、モジュラープラグ100の挿抜時の使用状態について説明する。図2は、モジュラープラグ100の挿抜時の使用状態を説明するための側面図である。図2では、モジュラージャック200については、ノッチ220を通る縦方向断面を図示している。
【0034】
第1に、モジュラープラグ100の挿入時の使用状態について説明する。図2(a)に示すように、モジュラープラグ100は、前端からモジュラージャック200の開口部210に挿入される。図2(b)に示すように、係合突起131がノッチ220の下方を通過する際、係合突起131の湾曲状の上面がノッチ220に当接し、レバー130が下方に押し下げられる。ここで、押下用突起132は、使用者によって押下されなくてもよい。図2(c)に示すように、係合突起131がノッチ220の下方を通過すると、レバー130は、弾性力によって上方に戻る。また、レバー130の前端部133は、開口部210の奥壁に当接する。
【0035】
第2に、モジュラープラグ100の引き抜き時の使用状態について説明する。ここでは、使用者がモジュラープラグ100を意図的にモジュラージャック200から引き抜くケースを説明する。引き抜き時には、図2(c)、図2(b)、及び図2(a)の順で使用状態が遷移する。使用者はモジュラープラグ100の上下を保持しつつ、モジュラープラグ100を後方に引き抜く。その際、押下用突起132が押下されることによってレバー130が押し下げられ、係合突起131とノッチ220との係合を解くことができる。
【0036】
なお、使用者がモジュラープラグ100を意図的にモジュラージャック200から引き抜くケースに限らず、使用者等がケーブル300に足を引っ掛けるといったケースでは、モジュラープラグ100の引き抜き方向に一定の力が加わったことに応じてレバー130が自動的に押し下げられ、ロック状態を解除できる。
【0037】
(4)作用・効果
以上説明したように、本実施形態に係るモジュラープラグ100において、係合突起131が設けられたレバー130は、モジュラープラグ本体110の後端部111に設けられた支持部120を支点として弾性的に変形可能である。
【0038】
このため、モジュラープラグ100の引き抜き方向に一定の力が加わったことに応じてレバー130が自動的に押し下げられ、ロック状態を解除できる。
【0039】
また、モジュラープラグ100をモジュラージャック200から意図的に引き抜く際には、レバー130を使用者が押下することによってロック状態を解除することもできる。
【0040】
したがって、本実施形態に係るモジュラープラグ100は、引き抜き方向に一定の力が加わるとロック状態を解除可能であり、且つ導線圧着部等へ損傷を与える可能性を低減できる。
【0041】
また、本実施形態では、レバー130によって押下される押下用突起132をレバー130に設けることによって、使用者がロック状態を解除する際の作業性を向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、係合突起131は、側面視において円弧状の形状を有するため、モジュラープラグ100の引き抜き方向に一定の力が加わった際に係合突起131とノッチ220との係合を解くことが容易になる。
【0043】
本実施形態では、モジュラープラグ本体110、支持部120、レバー130及び係合突起131は、一体的に形成されるため、モジュラープラグ100の製造コストを低減することができる。
【0044】
(5)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0045】
図3は、上述した実施形態に係るモジュラープラグ100の第1変形例を示す側面図である。図3に示すように、第1変形例では、押下用突起132aは、後方に傾斜する形状を有する。モジュラープラグ100をモジュラージャック200から意図的に引き抜く際には、使用者は押下用突起132aの後端部を前方に押下することによって、レバー130が押し下げられる。
【0046】
図4は、上述した実施形態に係るモジュラープラグ100の第2変形例を示す側面図である。図4に示すように、第2変形例では、支持部120aの一部は、押下用突起132の一部と重複する。このように支持部120aを構成することによって、レバー130を支持する強度を高めることができる。
【0047】
図5は、上述した実施形態に係るモジュラープラグ100の第3変形例を示す側面図である。図5に示すように、第3変形例では、モジュラープラグ本体110の前部上面に、前方に向かうにつれて低くなる傾斜部分110aを設けている。このような傾斜部分110aを設けることによって、係合突起131がノッチ220の下方を通過する際にレバー130がモジュラープラグ本体110に干渉することを回避できる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、押下用突起132を設けていたが、必ずしも押下用突起132を設ける必要はなく、押下用突起132を省略した構成としてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、係合突起131は、側面視において円弧状の形状を有していたが、必ずしも円弧状の形状とする必要はなく、側面視において三角形状を有する係合突起131としてもよい。
【0050】
さらに、上述した実施形態では、モジュラープラグ本体110、支持部120、レバー130、係合突起131、及び押下用突起132を一体的に形成していたが、これらの部材のうち一部を別体として構成してもよい。
【0051】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0052】
100…モジュラープラグ、110…モジュラープラグ本体、110a…傾斜部分、111…後端部、113…端子、120,120a…支持部、130…レバー、131…係合突起、132,132a…押下用突起、133…前端部、140…ブーツ、200…モジュラージャック、210…開口部、220…ノッチ、230…端子、300…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュラージャックに挿抜可能なモジュラープラグであって、
モジュラープラグ本体と、
前記モジュラープラグ本体における引き抜き方向側の端部に設けられた支持部と、
前記モジュラープラグ本体との間に間隔をおいて前記支持部から挿入方向に延び、前記支持部を支点として弾性的に変形可能なレバーと、
前記レバーに設けられ、前記支持部よりも挿入方向側に位置し、前記モジュラージャックのノッチに係合する係合突起と
を具備することを特徴とするモジュラープラグ。
【請求項2】
前記レバーに設けられ、前記係合突起よりも引き抜き方向側に位置する押下用突起をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のモジュラープラグ。
【請求項3】
前記係合突起は、側面視において円弧状の形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のモジュラープラグ。
【請求項4】
前記モジュラープラグ本体、前記支持部、前記レバー及び前記係合突起は、一体的に形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のモジュラープラグ。
【請求項5】
前記モジュラープラグ本体の上面に設けられ、挿入方向に向かうにつれて低くなる傾斜部分を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のモジュラープラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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