説明

モジュール式生体吸収性又は生物医学用生物活性超分子材料

本発明は、(i)少なくとも2個の4H単位を含むポリマー、及び(ii)生物活性化合物を含む、モジュール式超分子生体吸収性又は生物医学用材料に関する。前記超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、その特性(機械的特性及び生体吸収性)を調整するための第三の成分として生体吸収性又は生物医学用ポリマーを含んでいてもよい。前記超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、薬剤の放出制御、組織工学用材料、人工器官又はインプラント製造用材料、医療用画像化技術などの生物医学的応用に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性を有する新規超分子生体吸収性又は生物医学用材料に関するものであり、また、可逆的超分子相互作用を利用して、材料特性、生体吸収性及び/又は生物活性を容易に微調整できる材料を得るために、前記生体吸収性又は生物医学用材料を、超分子及び/又はモジュール式の形態で調製する方法にも関するものである。より具体的には、こうした可逆的超分子相互作用を利用して、外観、機械的強度、弾性、生体吸収性及び生物活性を調整する。本発明の新規材料は、生物医学用コーティング組成物をはじめとする、前記特性により恩恵を受ける各種の生物医学的応用に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
主として脂肪族ポリエステル類を主成分とした、多種多様な生体吸収性又は生物医学用材料が知られている(Uhrich et al. Chem. Rev. 99, 3181-3198, 1999)。現在の生体吸収性又は生物医学用材料の機械的特性は、一般に100kDaを超える高分子量、これらのポリマーにおける化学架橋の存在、及び結晶性ドメインの存在と強く関連している。結晶性ドメインは、材料の機械的特性(強度及び弾性)にとっては有益であるが、材料の生分解プロセスに強い影響を与えるものである。というのは、結晶性ドメインの生分解は一般に極めて緩慢であり、結晶性ドメインによって免疫学的応答が引き起こされる場合があるためである。また、所望の材料特性を得るために高分子量のポリマーを求めるということは、通常、高い処理温度が必要となることを示唆するものであり、高い処理温度は、特に生物活性種を用いる場合には、熱分解プロセスが起こりやすくなることから好ましくない。
【0003】
生物医学的用途のための、ポリマーに共有結合した生物活性種の例もいくつかある。特に、RGD配列などのオリゴペプチド系細胞接着プロモーターは、この点でかなりの注目を集めている。生物活性ポリノルボルネンを得るために、RGD含有モノマーを共重合することで、RGDペプチドを合成ポリマーに共有結合させている(Grubbs et al., J. Am. Chem. Soc. 123, 1275, 2001)。残念なことに、この方法では非生体吸収性ポリマーである生物活性ポリノルボルネンが得られるに過ぎず、特定の生体機能性を変化させるには、煩雑な化学的処置を必要とする。結果として、生物活性分子の量及び(組合せの)選択肢が限られることになる。したがって、このアプローチにはポリマー及び生物活性の選択という点で自由度が欠けている。
【0004】
生物活性RGD配列についても、天然に存在する多糖類であるアルギン酸に共有結合させている(Mooney et al., Biomaterials 20, 45, 1999)。結果として得られたヒドロゲル材料により、筋芽細胞の増殖増大が示されている。しかし、生物活性を導入するには特定のカルボジイミドの化学的性質が必要となり、使用できるのはアルギン酸系材料のみとなるため、結果として得られる材料の機械的特性及び生体吸収性又は生物医学的特性が限定される。また、多糖類などの天然源由来のポリマーは、一般にコストがかかり、異なるバッチを比較すると品質が異なる場合がある。合成ポリマーの製造はより制御されているため、一定の品質が確保できることから合成ポリマーが好ましい。
【0005】
さらに当該技術において周知のものに、医療機器の生体適合性の向上に用いられる生物医学用コーティングがある。例えば、血栓症を低減するためにステントにコーティングしてもよく(例えば、参照により組み込まれる米国特許第6702850号明細書と比較のこと)、拒絶反応の危険を低減するためにインプラントにコーティングしてもよい。生物医学用コーティングは、制御された方式で放出される生物活性剤をさらに含んでいてもよい。生物活性剤とポリマーコーティング製剤とを混合することにより、かかる生物医学用コーティングを調製してもよい。
【0006】
生物医学用コーティングのために数種のポリマーに共有結合させた生物活性剤として、ヘパリン誘導体がある。例えば、ポリスチレン及びポリ(エチレングリコール)系においてヘパリンの共重合が行われており(Feijen et al., J. Mater. Sci. Mat. Med. 4, 353, 1997)、又は、国際公開第98/23307号パンフレットに開示されているように、ヘパリンをポリウレタンに共有結合させている。これらのヘパリン−ポリマー複合体は、生体内に導入する構造物用の抗血栓性コーティングとして使用される。どちらの場合も、その毒性生分解プロフィールで知られる芳香族ジイソシアネートが使用され、コーティング表面で利用可能なヘパリンは比較的少量となり、結果として抗血栓性は低いものになる。
【0007】
強い細胞接着又は長期に及ぶ生物活性を保証するためには、生物活性分子がポリマー骨格に強く固着していることが好ましいが、生物活性分子がポリマーと混合されているだけでポリマー鎖に共有結合していない材料もある。結果として、生物活性分子はそのような材料から漏出するため、そのような材料の用途が見つかるのは、薬剤送達に応用する場合のみとなる。その例としては、ヒドロゲル及びマイクロカプセルがある。残念なことに、ヒドロゲルでは薬剤送達速度の調整が困難であり、さらに、ヒドロゲル系には一般に材料特性の面で劣るという欠点がある。加えて、ヒドロゲルの構造内にある化学架橋により、ヒドロゲルの生分解挙動が制限される。一方、マイクロカプセルは、高いガラス転移温度又は融解温度をもつポリマーから調製され、それによって、その機械的性能が制限されている。また、マイクロカプセルは、その加工の際に生体不適合性有機溶媒を頻繁に必要とする。
【0008】
非共有結合している生物活性分子の別の例としては、例えば米国特許第4229838号明細書に開示されているように、分子中のカルボン酸及びスルホン酸の存在により発生したヘパリンに固有の負の電荷によってカチオン性コーティングにイオン結合したヘパリンがある。しかし、この方法は、イオン結合強度が比較的弱いために生物活性化合物が時の経過とともに表面から溶出することから、やや限定されたものである。
【0009】
あるいは、疎水性相互作用を用いて、アルキル鎖を有する末端基官能基化ヘパリンにより、ヘパリンをポリマー表面に非共有結合させている(Matsuda et al., Biomacromolecules, 2, 1169, 2001)。しかし、かかる疎水性相互作用はいくぶん弱いものであり、結果として、ヘパリンがポリマー表面から漏出することによる活性の急速な低下がもたらされる。
【0010】
一般に、「超分子化学」とは、非共有結合性相互作用、配向相互作用、多重(少なくとも2つ)相互作用、協調的相互作用の化学であると理解されている。例えば、「超分子ポリマー」は、異なる分子間の特異的で強力な二次相互作用のため、――例えば、そのレオロジー挙動に関して――ポリマー特性を備えた有機化合物である。これらの非共有結合性超分子相互作用は、結果として得られる材料の特性に大きく貢献している。
【0011】
水素結合単位を有する(高)分子を含む超分子ポリマーは、分子間のH架橋のため、バルク中及び溶液中でポリマー特性を有することができる。Sijbesma et al.(国際公開第98/14504号パンフレット及びScience 278, 1601, 1997を参照のこと)は、自己相補的な四重水素単位(4H単位)を用いる場合、分子間の物理的相互作用が非常に強くなるため、材料特性がはるかに優れたポリマーの調製が可能であることを示している。
【0012】
Folmer, B.J.B. et al., Adv. Mater. 12, 874, 2000において、及びHirschberg et al., Macromolecules 32, 2696, 1999において公開されているように、これまでに数種類のテレケリック(telechelic)ポリマーが4H単位で修飾されている。しかし、これらのポリマーが含有しているのは、ポリマー鎖の末端に結合した4H単位のみである。したがって、高分子内の4H単位の数は末端基の量により2つに限られ、官能性単位は常にポリマーの周縁部に位置している。これにより、結果として得られる材料の機械的特性が制限されている。
【0013】
国際公開第02/034312号パンフレットは、ヘパリンが官能基を介して共有結合しているポリマーを開示している。
【0014】
国際公開第02/46260号パンフレットは、末端に導入された4H結合単位を備え、さらに別の4H結合単位がグラフトされていてもよいポリウレタン系ポリマーを開示している。開示されたポリマーは、ホットメルト接着剤又はTPUフォームとして使用できる。国際公開第02/98377号パンフレットは、生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも3つの水素架橋により他の官能基に結合可能な官能基を有するポリマーを有効量含んでいる、ケラチン物質の手入れ用及び/又はトリートメント用及び/又はメークアップ用の化粧品組成物を開示している。国際公開第02/98377号パンフレットは、国際公開第98/14504号パンフレットに明示的に言及しており、国際公開第98/14504号パンフレットで開示されているポリマーの化粧品への使用については、上記書類中で開示されていない、と述べている。国際公開第02/46260号パンフレット及び国際公開第02/98377号パンフレットは、Folmer et al.及びHirschberg et al.において記載されたものと同等又は同一の化学作用を利用している。
【0015】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/016598号パンフレットは、グラフトされた四重H結合単位を有するポリマーを獲得するための化学作用について開示している。例えば、グラフトされた4H単位を有するポリアクリレート及びポリメタクリレートが、異なる種類の重合法を利用して製造されている。国際公開第2004/016598号パンフレットはさらに、これらのポリマーが、パーソナルケア、表面コーティング、画像化技術、並びに、例えば、薬剤の放出制御用材料並びに組織工学用及び錠剤成形用材料、接着用及び封止用組成物、並びに増粘剤及びバインダーなどの生物医学的用途に関連する用途に適していると開示している。
【0016】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/052963号パンフレットは、ポリマー骨格中に4H単位を含むポリシロキサンを開示している。より正確には、(a)ポリマー骨格中に直接組み込まれている4H単位、又は(b)ポリマー骨格から垂下している4H単位であって、シリコン−炭素結合により1つのリンカーを介して共有結合している4H単位を有するポリシロキサンが開示されている。しかし、開示されているポリマーは、生体吸収性ではない。
【0017】
末端に4H単位を導入した、低分子量のテレケリックポリカプロラクトンが、Dankers et al.(Abstracts of Papers, 225th ACS National Meeting, New Orleans, LA, United States, March 23-27, 2003;PMSE, 88, 52, 2003を参照のこと)によって記載されている。この物質のフィルムについては、線維芽細胞のフィルムへの接着が観察されたことに基づいて、フィルムが生体適合性であることがわかっている。このポリマーの生分解性に関する研究で、生体吸収にとっては好ましくない微結晶の存在が示されている。また、ten Cate et al.(Abstracts of Papers, 225th ACS National Meeting, New Orleans, LA, United States, March 23-27, 2003;Polymer Preprints, 2003, 44(1), 618を参照のこと)による論文では、130%を超える伸びが不可能であることから、この物質の弾性はいくぶん貧弱なものであることが示されている。
【0018】
こうしたことから、優秀で調整可能な機械的特性及び/又は調整可能な生体機能性を有する、多目的に使える超分子生体吸収性又は生物医学用材料へのニーズが存在している。また、こうした材料の生分解性挙動を調整できることが望ましい。さらに、それらを容易に調製及び加工できることが望ましい。本発明は、超分子モジュール式のアプローチを導入することにより、こうしたニーズに取り組むものである。かかるアプローチにおいては、異なる原材料(又はモジュール又は成分)を混ぜ合わせて――各モジュールは、その特異的な特徴(すなわち、機械的性能、生体吸収性、生物活性など)に貢献している――、複合的な特徴を示す材料を製造する。このモジュール式アプローチは、通常は容易にできるものではないが、この場合は可能となる。なぜなら、用いられるモジュールの少なくとも1つに四重水素結合単位(4H単位)が使用される結果、最終材料においてモジュール同士が接触するためである。提示されたアプローチでは、各種モジュールを用いた混合実験を利用して最終材料の特性を微調整できるため、大規模な共有結合型合成が不要となる。また、すべてのモジュールを制御下にて調製でき、これにより、構造が明瞭なものとなり、結果として管理可能な高い品質を有する製品がもたらされる。
【特許文献1】米国特許第6702850号明細書
【特許文献2】国際公開第98/23307号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4229838号明細書
【特許文献4】国際公開第98/14504号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/034312号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/46260号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/98377号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2004/016598号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2004/052963号パンフレット
【非特許文献1】Uhrich et al. Chem. Rev. 99, 3181-3198, 1999
【非特許文献2】Grubbs et al., J. Am. Chem. Soc. 123, 1275, 2001
【非特許文献3】Mooney et al., Biomaterials 20, 45, 1999
【非特許文献4】Feijen et al., J. Mater. Sci. Mat. Med. 4, 353, 1997
【非特許文献5】Matsuda et al., Biomacromolecules, 2, 1169, 2001
【非特許文献6】Sijbesma et al., Science 278, 1601, 1997
【非特許文献7】Folmer, B.J.B. et al., Adv. Mater. 12, 874, 2000
【非特許文献8】Hirschberg et al., Macromolecules 32, 2696, 1999
【非特許文献9】Dankers et al., Abstracts of Papers, 225th ACS National Meeting, New Orleans, LA, United States, March 23-27, 2003; PMSE, 88, 52, 2003
【非特許文献10】ten Cate et al., Abstracts of Papers, 225th ACS National Meeting, New Orleans, LA, United States, March 23-27, 2003; Polymer Preprints, 2003, 44(1), 618
【発明の開示】
【0019】
本発明の課題は、新規超分子生体吸収性又は生物医学用材料、及び、先行技術のものよりも優れた特徴を備える生物医学用材料の入手を目的とする前記材料の調製方法を提供することにある。具体的には、前記超分子生物医学用材料は、超分子コーティング組成物である。
【0020】
本発明の別の課題は、その特徴(例えば、機械的特性、生体吸収、生物活性など)が容易に微調整されるという付加的な特徴を有する超分子生体吸収性又は生物医学用材料を提供することにある。したがって本発明は、以下の成分を含む超分子生体吸収性又は生物医学用材料:
(a)少なくとも2個の4H単位を含むポリマー;及び
(b)生物活性化合物;
であって、
前記4H単位が、一般式(1)又は(2)
【0021】
【化1】




【0022】
(式中、C−X及びC−Y結合は、それぞれ一重又は二重結合を表し、nは4又はそれ以上であり、Xは、それらに結合した対応する一般的形態(2)を含有するH架橋形成モノマー単位と水素架橋を形成するドナー又はアクセプタを表し、Xがドナーを表す場合はYはアクセプタを表し、逆にXがアクセプタを表す場合はYはドナーを表す)で表されることを特徴とする超分子生体吸収性又は生物医学用材料に関する。これら4H単位の構造は、参照により明示的に組み込まれる国際公開第98/14505号パンフレットにおいて、詳しく開示されている。
【0023】
超分子材料が生体吸収性である場合、成分(a)は生体吸収性であることが好ましく、本発明によると、「生体吸収性の(bioresorbable)」及び「生体吸収(bioresorption)」との用語は、当業者であればわかるように、超分子生体吸収性ポリマーの細胞媒介性分解、酵素分解及び/若しくは加水分解、並びに/又は超分子生体吸収性ポリマーの生体組織からの除去などのプロセスを包含するものである。
【0024】
また、生物活性化合物は、哺乳動物に生物学的又は生化学的な影響を誘導することが可能な、美容上及び/又は医薬上の活性を有する化合物と理解されるべきであるが、細胞及び細胞小器官のような生体系を含むものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
四重水素結合単位(4H単位)を含む超分子ポリマーを調べてみたところ、驚くべきことに、4H単位で修飾されていてもよい異なるポリマーを混ぜ合わせることにより、混合物の機械的特性だけではなく、その生分解挙動も改変され改善されることがわかった。また、4H単位で修飾されていてもよい生物活性化合物をこれらの材料に添加することができる。そのため、所望の生物活性化合物に混合することで、生体吸収性又は生物医学用材料に生物活性又は生化学的活性をもたせることになる。したがって、本発明によると、機械的特性が改善された生物活性又は生化学的活性材料の使用が可能になるとともに、かかる材料の生分解速度及び生物活性を別個に調整することができる。このように、超分子モジュール式のアプローチを用いることによって、新規生物活性、生体吸収性又は生物医学用材料の簡便化された設計方法及び調製方法が導入されるため、本発明は、生物医学用材料の従来の技術水準を超えるものである。
【0026】
成分(a)
したがって、成分(a)は、ポリマー鎖に共有結合している少なくとも2個の4H単位、好ましくは2〜50個の、より好ましくは3〜50個の、さらに好ましくは3〜20個の、最も好ましくは4〜15個の4H単位を含むポリマーである。4H単位の結合位置は、ポリマー鎖の末端でもよく、ポリマー鎖の骨格でも、又はその両方でもよい。本発明の超分子生体吸収性又は生物医学用材料が、例えば、異なる化学的性質のポリマー、異なる分子量のポリマー、及び/又は異なる数の4H単位をもつポリマーなど、成分(a)を2個以上含んでいてもよいのは、明らかである。成分(a)が、異なる化学的性質及び/又は異なる分子量の成分から構成されていることも可能である。
【0027】
成分(a)は、生体吸収性ポリマーであることが好ましい。しかし、超分子生物医学用材料が超分子生物医学用コーティング組成物である場合は、成分(a)は、生体吸収性ではないほうがより好ましい場合がある。
【0028】
成分(a)は、いかなる種類のポリマーでもよい。すなわち、キトサン、コラーゲン、線維素、又はプロテオグリカンなど、合成物由来のポリマーでも天然物由来のポリマーでもよい。しかし、成分(a)は、ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、(水素化)ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリオルソエステル、多糖類、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリビニルピロリドン、及び(好ましくは、部分的にエステル化された)ポリビニルアルコール、又はポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーなどの、これらのポリマーに由来するコポリマーからなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
本発明のより好ましい実施形態によると、成分(a)は、ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリシロキサン及びポリオルソエステルからなる群から選択される。さらに好ましくは、成分(a)は、ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及びポリカーボネートからなる群から選択される。最も好ましくは、成分(a)は脂肪族ポリエステルである。
【0030】
本発明のより好ましい別の実施形態では、成分(a)は、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、又は、これらのポリマーのコポリマーからなる群から選択される。
【0031】
成分(a)の数平均分子量Mは、100〜100000ダルトンの範囲内であることが好ましく、100〜60000ダルトンであることがより好ましく、800〜40000ダルトンであることがさらに好ましく、2000〜35000ダルトンであることが最も好ましい。
【0032】
成分(a)は、2個のヒドロキシ末端基、第一級アミノ末端基、又はそれらの組合せを有する比較的低分子量のポリマーから調製されることが好ましい。成分(a)は、2個のヒドロキシル末端基を有する比較的低分子量のポリマーから調製されることがより好ましい。2個のヒドロキシ末端基を有する比較的低分子量のポリマーの例として、以下のものが挙げられる:
(i)ポリオキシアルキレン構造及びOH末端基を有するポリエーテルジオール;
(ii)OH末端基を有するポリエステル及びコポリエステル;
(iii)OH末端基を有するポリカーボネート及びコポリカーボネート;
(iv)OH末端基を有するポリオルソエステル;
(v)(水素化)ポリオレフィンジオール;及び
(vi)これらの好ましいポリマー(i)〜(v)の組合せを主成分とするポリマー及びコポリマー。
【0033】
ポリマー(i)の適切な例としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコール(ランダム又はブロック)、ポリテトラメチレングリコールなどの、ポリオキシアルキレン構造及びOH末端基を有するポリエーテルジオール類が挙げられる。ポリマー(ii)の例としては、例えばアジピン酸などのジカルボン酸類、及び1,6−ヘキサンジオール若しくはグリコールなどのジオール類の重縮合によって、又は、例えば乳酸などのヒドロキシ酸類の重縮合によって作られるポリエステル及びコポリエステルがあり;例えばε−カプロラクトン、グリコリド、ラクチド、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、オキセパン−2,7−ジオンなどの開環重合によって作られるポリエステル及びコポリエステルなどがある。ポリマー(iii)の例としては、例えば1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリカーボネート及びコポリカーボネート、例えば、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキセパン−2−オン、1,3−ジオキサノン−2−オン、1,3,8,10−テトラオキサシクロテトラデカン−2,9−ジオンなどの開環重合によって作られるポリカーボネート及びコポリカーボネートがある。ポリマー(iv)の一例としては、例えば3,9−ジエチレン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを主成分とするポリオルソエステルがある。ポリマー(v)の例としては、OH官能基化ポリブタジエン及びOH官能基化ポリ(エチレン−ブチレン)がある。ポリマー(vi)の一例としては、ポリカプロラクトンとポリエチレングリコールのOH官能基化ブロックコポリマーがある。
【0034】
2個のアミノ末端基を有する比較的低分子量のポリマーの例としては、Jeffamines(登録商標)(Huntsman社が製造及び販売するポリオキシアルキレンアミン)又はその他のポリエーテル、脂肪族ポリアミド若しくはポリシロキサンがある。
【0035】
かかるポリマーは、2個のヒドロキシル末端基、第一級アミン末端基、又はそれらの組合せを有していること、及びその数平均分子量Mが500〜10000であることが好ましく、750〜7000であることがより好ましい。
【0036】
本発明の第一の好ましい実施形態によると、超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、成分(c)が存在しない場合(下記参照)、50.0〜99.99重量%の成分(a)及び0.01〜50.0重量%の成分(b)を含んでいる。より好ましくは、超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、70.00〜99.99重量%の成分(a)及び0.01〜30.00重量%の成分(b)を含んでいる。最も好ましくは、超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、90.00〜99.95重量%の成分(a)及び0.05〜10重量%の成分(b)を含んでいる。これらの重量範囲はすべて、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の総重量に対してのものである。
【0037】
成分(a)は、例えば、線状(コ)ポリマーであって、4H単位が末端基として結合しているもの、及び/又はポリマー骨格中に結合しているもの、及び/又はポリマー鎖にグラフトされているもの;星形(コ)ポリマーであって、4H単位が、何らかの形で、好ましくは末端基として、共有結合しているもの;樹状構造であって、4H単位が末端基として結合しているもの、及び/又は樹状アーム中に結合しているもの;又は、(多官能性)分岐又は超分岐構造であって、4H単位が末端基として結合しているもの、及び/又は分岐中に結合しているものなど、あらゆる種類の異なる構造を有していてもよい。(コ)ポリマーは、例えばランダム構造、ブロック構造、セグメント構造又はランダムセグメント構造などの微細構造であって、4H単位が、例えば末端に導入されている、ポリマー鎖に組み込まれている、又は骨格からグラフトされているなど、どのような形であれこのコポリマーに結合しているものなどの、あらゆる種類の微細構造を有していてもよい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態においては、成分(a)は、(部分的に)4H単位で末端が官能基化された星形ポリマーを含み、又は成分(a)は、いくつかの4H単位がグラフトされた線状ポリマーを含み、又は成分(a)は、4H単位が末端基として結合している、及びポリマー骨格中に結合している線状(コ)ポリマーを含んでいる。4H単位数の範囲としては、先に開示したものが好ましい。
【0039】
成分(a)は、4H単位が末端基として結合している、及びポリマー骨格中に結合している線状(コ)ポリマーを含んでいることがより好ましい。成分(a)は、4H単位がポリマー骨格中に結合している線状(コ)ポリマーを含んでいることが最も好ましい。
【0040】
好ましくは200℃未満、より好ましくは150℃未満、最も好ましくは100℃未満の温度で、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の溶融加工を行えるようにするために、又は、10重量%を超える、好ましくは15重量%を超える濃度の溶液から上記材料を加工するために、数平均分子量Mが比較的少ない、好ましくは100〜100000の範囲内、より好ましくは、100〜60000、さらに好ましくは800〜40000、最も好ましくは2000〜35000の成分(a)を用いることがさらに好ましい。
【0041】
材料の親水性を高め、それにより超分子生体吸収性又は生物医学用材料の水溶性又は水分膨潤性(すなわちゲル化)を促進するために、必要に応じ、イオン基又はイオノゲン基を成分(a)に組み込んでもよい。イオノゲン基としては、N−メチル−ジエタノールアミン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−ピリジン及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸が好ましい。
【0042】
また、成分(a)は、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の水溶性又は水分膨潤性(すなわちゲル化)を促進するために、1以上の親水性ポリマーブロックをそのポリマー鎖内に含んでいてもよい。こうした親水性ポリマーブロックは、数平均分子量Mが好ましくは200〜50000の、より好ましくは500〜6000のポリエチレングリコールポリマーに由来することが好ましい。
【0043】
特に、成分(a)を用いて、本発明の超分子生体吸収性材料の機械的特性を調整することができる。本発明の好ましい実施形態においては、成分(a)の破断点伸びは、少なくとも140%である。本発明の別の好ましい実施形態においては、成分(a)は、Eモジュール>35MPaである。
【0044】
成分(b)が有する4H単位が2個未満の場合に成分(b)との釣り合いをとるために、成分(a)は平均して少なくとも3個の4H単位を含んでいることが好ましい。成分(b)が有する4H単位は、必要に応じ超分子鎖ストッパーとして作用する。
【0045】
4H単位
4H単位が、X...X及びY...Yという配列で4個のドナー又はアクセプタを含むように、式(1)及び(2)においては、n=4であることが好ましい。4H単位は、自己相補的(すなわち、2個の水素結合単位が、ドナー及びアクセプタについて同等の配列を有する)であってもよく、非自己相補的(すなわち、2個の水素結合単位が、ドナー及びアクセプタについて2つの異なる配列を有する)であってもよい。4H単位は、2個の連続したドナーの後に2個の連続したアクセプタを含んでいることが好ましい。すなわち、X及びXがドナーで、X及びXがアクセプタであることが好ましい。かかるドナー及びアクセプタは、O、S、及びN原子であることが好ましい。4H単位は、参照により明示的に組み込まれる国際公開第98/14505号パンフレット及び米国特許第6320018号明細書にて、詳しく開示されている。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によると、4H単位は、一般式(3)又は(4)、及びその互変異性体を有し
【0047】
【化2】




【0048】
[式中、Xは、置換基Rを備えた窒素原子又は炭素原子、好ましくは窒素原子であり、R、R、R及びRは、以下の(a)〜(i)からなる群から独立して選択される:
(a)水素;
(b)C〜C20アルキル;
(c)C〜C12アリール;
(d)C〜C12アルカリル;
(e)C〜C12アルキルアリール;
(f)式(5)を有するポリエステル基
【0049】
【化3】



(5)

【0050】
(式中、R及びYは、水素及びC〜C直鎖又は分岐アルキルからなる群から独立して選択され、nは、1〜6であり、mは、10〜100である。);
(g)式(6)記載の1〜4個のウレイド基で置換されたC〜C10アルキル基

−NH−C(O)−NH−
(6)

(式中、Rは、水素及びC〜C直鎖又は分岐アルキルからなる群から選択される。);
(h)式(7)を有するポリエーテル基
【0051】
【化4】



(7)

【0052】
(式中、R、R及びYは、水素及びC〜C直鎖又は分岐アルキルからなる群から独立して選択され、oは、10〜100である。);
(i)1〜50個、好ましくは1〜10個のアミノ酸の配列からなるオリゴペプチド基。]、
前記4H単位は、R、R及び/又はRを介して(R、R又はRが直接結合を表すように)、(a)〜(h)に記載の側鎖を独立して表している他のR基と共にポリマー骨格に結合している。
【0053】
本発明によると、R、R、R及びRは、先に開示した(a)〜(h)の基からなる群から独立して選択されることが好ましい。
【0054】
第一の好ましい実施形態においては、4H単位が、Rを介して(Rが直接結合を構成するように)ポリマー骨格に結合している一方で、R及びRは独立して、先に定義した(a)〜(i)の基のいずれかであり、好ましくは(b)の基であり、より好ましくは2−エチルペンチル又はメチルであり、最も好ましくはメチルである。最も好ましくは、4H単位が、Rを介してポリマー骨格に結合している一方で、Rは先に定義した(a)〜(h)の基のいずれかであり、より好ましくは(b)の基であり、さらに好ましくは2−エチルペンチル又はメチルであり、最も好ましくはメチルであり、Rは水素である。
【0055】
第二の好ましい実施形態においては、4H単位が、R及びRを介して(R及びRが直接結合を構成するように)ポリマー骨格に結合している一方で、Rは先に定義した(a)〜(i)の基のいずれかであり、好ましくは(a)又は(b)の基であり、より好ましくは(a)の基である。
【0056】
第三の好ましい実施形態においては、4H単位が、R及びRを介して(R及びRが直接結合を構成するように)ポリマー骨格に結合している一方で、Rは先に定義した(a)〜(i)の基のいずれかであり、好ましくは(b)の基であり、より好ましくは2−エチルペンチル又はメチルであり、最も好ましくはメチルである。この第三の好ましい実施形態は、第一及び第二の好ましい実施形態よりも好ましい。
【0057】
当業者にとっては明らかなことだが、先に定義した(b)〜(i)の基は、必要に応じて直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。
【0058】
成分(b)
さらに、本発明の超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、生物活性化合物を成分(b)として含んでいる。成分(b)は、少なくとも1個から多くとも10個まで、好ましくは1〜4個、最も好ましくは2〜4個の4H単位を備えた生物活性化合物からなる群から選択されることが好ましい。これらの4H単位は、かかる生物活性化合物に共有結合している。
【0059】
先に開示した通り、成分(c)が存在しない場合(下記参照)、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の総重量に対する成分(b)の量は0.01〜50.00重量%であり、成分(a)の量は50.00〜99.99重量%である。本実施形態によると、成分(a)の重量範囲は70.00〜99.99重量%であることが好ましく、90.00〜99.95重量%であることがさらに好ましいのに対し、成分(b)の重量範囲は0.01〜30重量%であることが好ましく、0.05〜10.00重量%であることがさらに好ましい。これらの重量範囲はすべて、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の総重量に対してのものである。また、成分(b)は、1以上の異なる生物活性化合物を含んでいてもよい。
【0060】
生物活性化合物は、先に開示したように生物活性を示すものであれば、どのような化合物でもよい。本明細書で使用する「生物活性化合物」は、生物医学的に関連のある化合物を含むものである。そうした化合物はさらに、治療上、診断上、美容上、医薬上、及び予防上の効果を提供し、組織増殖、細胞増殖、細胞分化、細胞シグナリング、細胞ホーミング、タンパク質吸収に作用する又は関与する化合物、すなわち、生物学的作用を引き起こせる可能性、又は1以上の生物学的プロセスにおいて他の何らかの役割を果たせる可能性のある化合物を提供する。そのような化合物としては、抗菌剤(抗細菌剤及び抗真菌剤を含む)、抗ウィルス剤、抗腫瘍剤、抗血栓剤、抗凝固剤、平滑剤、造影剤(imaging agents)、薬剤、医薬品、ホルモン、免疫原性薬剤、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、(蛍光)染色剤、造影剤(contrast agents)、例えば一本鎖又は二本鎖DNA及び一本鎖又は二本鎖RNAなどの核酸、脂質、リポ多糖類、(多)糖類、ビタミン、並びに一般的なペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、生物学的に関連する分子を標的としたビオチン化化合物その他の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明に記載の成分(b)として使用可能な、非制限的で、好ましく、重要な種の群は、ペプチド、多糖類及びタンパク質によって形成されている。当業者には周知のことであるように、ペプチドには、オリゴペプチド及びポリペプチドに加えて、ジペプチド、トリペプチド及びテトラペプチドも含まれる。
【0062】
好ましい実施形態においては、成分(b)は、成長因子、抗菌剤、トロンビン阻害剤、又は抗血栓剤を含んでいる。成長因子は、生細胞の成長、増殖及び/又は分化に対して有益な効果を及ぼすタンパク質又はペプチドと定義されている。本発明のより好ましい実施形態によると、超分子生体吸収性材料は、成長因子がポリマーに非共有結合している組織工学用の骨格として有利に用いられる。
【0063】
成長因子の好適な例としては、骨形成タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)などの上皮成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、神経成長因子(NGF)、骨由来成長因子(BDGF)などの線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子−ベータ1(TGF−ベータ1)などの形質転換成長因子、及びヒト成長ホルモン(hGH)が挙げられる。
【0064】
超分子材料が超分子生物医学用材料である場合、別の好ましい実施形態によると、かかる材料は、抗血栓剤がポリマーに非共有結合している生物医学用コーティング組成物として用いられる。好ましい抗血栓剤の例としては、ヘパリン、ヘパリン類似体、ヘパリン複合体、及び硫酸化グリコサミノグリカン部分を含む分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、抗血栓剤は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第02/34312号パンフレットに開示されている、1以上のポリマーに共有結合しているヘパリンであってもよい。好ましい抗血栓剤のクラスは、ヘパリン、ヘパリン類似体、ヘパリン複合体、硫酸化グリコサミノグリカン部分を含む分子、及び国際公開第02/34312号パンフレットに開示されているヘパリン化ポリマーからなるものである。
【0065】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料に含まれていると有利な場合があるペプチド又はタンパク質の別の例として、例えば、毒素、ウィルス表面抗原又はウィルスの一部、細菌表面抗原又は細菌の一部、疾患を引き起こす寄生生物の表面抗原又は寄生生物の部分、イムノグロブリン、抗毒素、抗原などの免疫原性ペプチド又は免疫原性タンパク質が挙げられる。
【0066】
ペプチド、多糖類及びタンパク質の熱不安定性を考慮すると、本発明の方法は、ペプチド、多糖類及びタンパク質をロード(load)した材料の調製に特に有用なものであるが、超分子生体吸収性又は生物医学用材料にペプチド、多糖類及びタンパク質以外の物質をロードすることも可能であることは、明らかである。組み込まれる可能性のあるそのような生物活性剤としては、非ペプチド性薬剤、非多糖類性薬剤及び非タンパク質性薬剤、並びに無機化合物がある。本発明の範囲内において、ポリマー性質を有する薬剤を組み込むことは可能であるが、1500未満、又は500未満という比較的少ない分子量の薬剤又はビタミンを組み込むことも可能である。
【0067】
組み込まれる可能性のある非ペプチド性薬剤、非多糖類性薬剤又は非タンパク質性薬剤の例として、以下のものが挙げられる:抗腫瘍剤、抗生物質又は血液療法剤などの抗菌剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、抗痛風薬、中枢性鎮痛剤、局所麻酔剤、中枢性筋肉弛緩剤、ホルモン及びホルモン拮抗薬、ミネラルコルチコステロイド又はグルココルチコステロイドなどのコルチコステロイド、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲスチン。
【0068】
組み込まれる可能性のある無機化合物の例としては、活性酸素捕捉剤、又はアパタイト若しくはヒドロキシアパタイトなどの骨抽出物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
成分(b)をそれ自体として用いること、又は、1以上の4H単位で化学修飾することができる。この化学修飾は、例えば、スクシンイミドエステル、スルフヒドリル反応性薬剤、アジド、(チオ)イソシアネート、カルボジイミド、アルデヒド、若しくはCu(I)触媒Huisgen[2+3]型双極子環化付加反応などを用いた結合方法として、通常の有機合成手順により行うことが可能であり、又は、当業者に周知の通常の固体合成手順により行うことが可能である。また、ペプチド及びタンパク質の場合は、C末端チオエステルと、N末端システインを備えた4H単位とを含むペプチド又はタンパク質を用いたネイティブ化学ライゲーションを利用して、こうした化学修飾を行うことができる。ネイティブ化学ライゲーションは、当業者に周知である。
【0070】
必要に応じ、インビボで開裂可能な(生)分解性リンカーを介して4H単位を成分(b)に結合させることができる。そのような方法で、例えば、治療効果を増大させるために、ネイティブ成分(b)を材料から徐々に放出させる。開裂可能なリンカーの例としては、システインプロテアーゼによるペプチドGly−Phe−Leu−Glyの開裂のように、酵素活性により開裂するエステル又はオリゴペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
また、超分子生体吸収性又は生物医学用材料には、2以上の異なる成分(b)が存在していてもよい。このことは、生物活性が多価相互作用及び/又は相乗的相互作用に基づいている場合、特に有益である。そのような相互作用の例としては、RGDペプチドとPHSRNペプチドの組合せにより有利に媒介される細胞接着が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0072】
成分(c)
本発明の超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、第三の成分(c)も含んでいることが好ましく、かかる第三の成分(c)とは、生体吸収性ポリマーである。
【0073】
この生体吸収性ポリマーが、1個から多くとも50個まで、好ましくは1〜30個、より好ましくは2〜20個、最も好ましくは4〜20個の4H単位を含んでいることが好ましい。これらの4H単位は、ポリマー鎖に共有結合している。本発明の超分子生体吸収性又は生物医学用材料が、例えば異なる化学的性質及び/又は異なる分子量をもつ、異なる種類の成分(c)を含むことは明らかに可能であり、異なる数の4H単位を包含することも可能である。また、これらのポリマーが、異なる化学的性質及び/又は異なる分子量をもつ元素から構成されていることも明らかに可能である。
【0074】
成分(c)は、どのような生体吸収性ポリマーであってもよい。しかし、成分(c)は、ポリエーテル(好ましくは脂肪族)、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアミド(好ましくは脂肪族;例えば、ポリペプチド)、ポリカーボネート(好ましくは脂肪族)、ポリオルソエステル、多糖類、(好ましくは部分的にエステル化された)ポリビニルアルコールからなる群から選択されることが好ましい。成分(c)は、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリオルソエステル、多糖類、及び部分的にエステル化されたポリビニルアルコールからなる群から選択されることがさらに好ましい。
【0075】
本発明の別の実施形態においては、成分(c)は、例えば先に開示した好ましいポリマー群の組合せなど、ポリマーの種類のいかなる組合せも含むものである。本発明の好ましい実施形態によると、ポリマー骨格は、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン又はテトラヒドロフランを主成分とする多糖類、ポリエーテル及びコポリエーテル;例えば、アジピン酸、グリコールなどのジオール類、又は乳酸などのヒドロキシ酸類を主成分とする重縮合により作られるポリエステル及びコポリエステル;例えば、ε−カプロラクトン、グリコリド、ラクチド、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、オキセパン−2,7−ジオンを主成分とする開環重合により作られるポリエステル及びコポリエステル;例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートを主成分とするポリカーボネート及びコポリカーボネート;例えば、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキセパン−2−オン、1,3−ジオキサノン−2−オン、1,3,8,10−テトラオキサシクロテトラデカン−2,9−ジオンを主成分とする開環重合により作られるポリカーボネート及びコポリカーボネート;例えば、3,9−ジエチレン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを主成分とするポリオルソエステル;これらの好ましいポリマーの組合せを主成分とするポリマー及びコポリマーからなる群から選択される。また、これらの好ましいポリマーの異なる組合せも、成分(c)中に存在可能である。
【0076】
成分(c)の数平均分子量Mは、100〜100000ダルトンの範囲内であることが好ましく、100〜60000ダルトンであることがより好ましく、800〜40000ダルトンであることがさらに好ましく、2000〜35000ダルトンであることが最も好ましい。
【0077】
成分(c)は、線状(コ)ポリマーであって、4H単位が末端基として結合しているもの、及び/又はポリマー骨格中に結合しているもの、及び/又はポリマー鎖にグラフトされているもの;星形(コ)ポリマーであって、4H単位が、何らかの形で、好ましくは末端基として、共有結合しているもの;樹状構造であって、4H単位が末端基として結合しているもの、及び/又は樹状アーム中に結合しているもの;又は、(多官能性)分岐又は超分岐構造であって、4H単位が末端基として結合しているもの、及び/又は分岐中に結合しているもの、好ましくは末端基として結合しているものなど、あらゆる種類の異なる構造を有することができる。コポリマーは、例えばランダム構造、ブロック構造、セグメント構造又はランダムセグメント構造などの微細構造であって、4H単位が、例えば末端に導入されている、ポリマー鎖に組み込まれている、又は骨格からグラフトされているなど、どのような形であれこのコポリマーに結合しているものなどの、あらゆる種類の微細構造を有することができる。
【0078】
成分(c)は、(部分的に)4H単位で末端が官能基化された星形ポリマー、いくつかの4H単位がグラフトされた線状ポリマー、又は4H単位が末端基として結合している、及びポリマー骨格中に結合している線状(コ)ポリマーを含んでいることが好ましい。成分(c)は、4H単位が末端基として結合している、及びポリマー骨格中に結合している線状(コ)ポリマーを含んでいることがより好ましい。成分(c)は、4H単位がポリマー骨格中に結合している線状(コ)ポリマーを含んでいることが最も好ましい。
【0079】
成分(a)のように、材料の親水性を高め、それにより材料の水溶性又は水分膨潤性(すなわちゲル化)を促進するために、必要に応じ、イオン基又はイオノゲン基を成分(c)に組み込んでもよい。好ましいイオノゲン基が、成分(a)用に開示されている。また、成分(c)は、材料の水溶性又は水分膨潤性(すなわちゲル化)を促進するために、1以上の親水性ポリマーブロックをそのポリマー鎖内に含んでいてもよい。こうした親水性ポリマーブロックは、数平均分子量Mが好ましくは200〜50000の、より好ましくは500〜6000のポリエチレングリコールポリマーに由来することが好ましい。
【0080】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料の調製方法
本発明は、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の調製方法も提供する。この方法は、主に超分子生体吸収性又は生物医学用材料の機械的強度の成因となる成分(a)と、主に超分子生体吸収性又は生物医学用材料の生物活性の成因となる成分(b)とを混ぜ合わせるものである。本発明の好ましい実施形態によると、この方法は、成分(a)、成分(b)及び成分(c)を混ぜ合わせるものであって、後者は、主に超分子生体吸収性又は生物医学用材料の生体吸収を改変する及び/又は生体吸収の成因となる。成分(a)、(b)及び(c)を混ぜ合わせることにより、所望の材料特性を備えた超分子生体吸収性又は生物医学用材料がもたらされる。特に、全成分が4H単位を含む場合には、それらはすべて、混合物中の異なる成分間の強い物理的相互作用に強力に貢献することになる。それゆえに本発明によると、これら3つの成分(a)〜(c)のすべてが少なくとも1個の4H単位を有していることが特に好ましい。全成分の混合は、従来のプロセス、すなわち、溶液加工若しくは溶融加工、又は両者の組合せにより、行うことができる。
【0081】
異なる成分の超分子混合という概念は、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の生分解挙動の調整をも可能にするものである。というのは、この挙動は、添加した全成分の分解挙動によって決定するためである。
【0082】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料の調製及び加工
超分子モジュール式アプローチによると、異なる3つの方法により超分子生体吸収性又は生物医学用材料を入手することができる:方法(i)は、異なる成分(a)、(b)及び必要に応じ(c)を互いに混ぜ合わせ、その際に、これらの成分が溶解又は分散している、好ましくは溶解している、1以上の溶媒からなる培地を共に混ぜ合わせるものである。この第一の方法(i)に続いて、当該技術で周知の溶解ポリマー用のプロセスを行うことが好ましい。
【0083】
第二の方法(ii)は、高温の、好ましくは40℃〜150℃(下記参照)のバルク中で異なる成分(a)、(b)及び必要に応じ(c)を互いに混ぜ合わせるものである。この第二の方法(ii)に続いて、当該技術で周知のポリマー用の無溶媒プロセスを行うことが好ましい。
【0084】
第三の方法(iii)は、方法(i)と方法(ii)とを組み合わせたものである。したがって、方法(iii)は、例えば、先に方法(i)にしたがって成分(b)と成分(c)とを混ぜ合わせ、続いて方法(ii)にしたがって成分(a)と、成分(b)と(c)との混合物とを混ぜ合わせるものである。あるいは、方法(iii)は、先に方法(i)にしたがって成分(a)と成分(b)とを混ぜ合わせ、続いて方法(ii)にしたがって成分(c)と、成分(a)と(b)との混合物とを混ぜ合わせるものである。他の代替案については、当業者であれば明白なことであろう。
【0085】
本発明の特に好ましい実施形態によると、方法(i)及び(ii)は、成分(a)及び/又は(c)のインサイチュでの調製を含むものである。
【0086】
方法(i)による加工は、異なる成分の溶解度に応じて、有機溶媒又は水性培地から行うことができる。水、アセトン、メチルエチルケトン、THF、DMSO、NMP、超臨界CO、又はエタノールなどの脂肪族アルコール類などの、生物医学的用途に許容可能な溶媒又は溶媒の混合物を用いることが好ましい。溶媒キャスティング、ディップコーティング、凍結乾燥、析出キャスティング(precipitation casting)、スプレーコーティング、塗装、ロールコーティング、起泡、溶媒紡糸、湿式紡糸、電気紡糸、ミクロ接触印刷、インクジェット印刷、微粒子溶出法、相分離法又は乳化などのプロセスにより、超分子生体吸収性又は生物医学用材料を入手することが好ましい。
【0087】
超分子材料が生物医学用コーティング組成物の場合、コーティングプロセス用の溶液について所望の粘度が得られるように、溶媒の選択を行うべきであり、好ましくは、極性溶媒を用いてポリマー間の水素結合を減少させるべきである。また、コーティング後の溶媒からの除去を容易にするために、溶媒は沸点が低いことが好ましく、溶媒(又は溶媒混合物)は、限定的な毒性しかもたないことが好ましい。したがって、超分子材料の乾燥がコーティングプロセス後に必要となり、乾燥後は、水又はpH緩衝液を含む水で徹底的に洗浄することが好ましい。
【0088】
当業者には周知のように、超分子材料をコーティングとしてこの基質に塗布する場合、基質表面を清浄にするには特別な注意を払う必要がある。クロム酸、水酸化ナトリウム水溶液及び発煙硫酸の使用などの液体エッチング技術、又はプラズマエッチング技術により、基質の湿潤性を高めることができる。
【0089】
方法(ii)による加工は、成分を加工できるほど十分に高い温度ではあるが、異なる成分、特に成分(b)の分解を妨げるほどには高すぎない温度で行われる。加工温度は、40℃〜150℃であることが好ましく、50℃〜120℃であることが最も好ましい。押出、反応押出、マイクロ押出、溶融堆積、モデリング、成形、ラミネート加工、フィルムブローイング、反応射出成形(RIM)、紡糸技術、ラピッドプロトタイピング、又はコーティングの熱若しくは光硬化により、超分子生体吸収性又は生物医学用材料を入手することが好ましい。
【0090】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料中の成分(a)の量は、成分(c)が存在しない場合、50.00〜99.99重量%であることが好ましい。この実施形態によると、成分(a)の存在量が70.00〜99.99重量%であることがより好ましく、90.00〜90.95重量%であることが最も好ましい。
【0091】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料中の成分(b)の量は、成分(c)が存在しない場合、0.01〜50.00重量%であることが好ましい。この実施形態によると、成分(b)の存在量が0.01〜30.00重量%であることがより好ましく、0.05〜10.00重量%であることが最も好ましい。
【0092】
成分(a)
本発明の超分子生体吸収性又は生物医学用材料に成分(c)が存在する場合、成分(a)〜(c)の好ましい重量比は以下の通りである:(a)が20〜59.99重量%、(b)が0.01〜40.00重量%、及び(c)が0.01〜40.00重量%。より好ましくは、成分(a)〜(c)の好ましい重量比は、(a)が40.00〜69.99重量%、(b)が0.01〜30.00重量%、及び(c)が0.01〜30.00重量%である。超分子生体吸収性又は生物医学用材料に関して本明細書に組み入れた重量パーセンテージはすべて、超分子生体吸収性又は生物医学用材料の総重量に対してのものである。
【0093】
凍結乾燥、例えば塩又は糖を用いた微粒子溶出、及び電子紡糸などの当該技術で周知の技法により、本発明の超分子生体吸収性材料から、高度に多孔質の構造を得ることが可能である。高度に多孔質の(相互連結)構造又は不織布は、細胞接着又は増殖にとって有益であり、骨格内での組織の成長を可能にするものである。こうした構造は、例えば、人工器官又はインプラントとして、組織工学に用いる多孔質骨格として使用できる。
【0094】
必要に応じ、超分子生体吸収性又は生物医学用材料を用いて、ヒドロゲル、すなわち、その内部の液体が水であるゲルを調製することができる。当業者は、製剤中の成分(a)及び必要に応じ(c)における親水性及び疎水性成分の比率のバランスを取ることにより、ヒドロゲルを得ることが可能である。ヒドロゲル材料は水分含有量が高く、そのため、組織内の細胞外マトリックスの異なる役割を模倣する可能性がある。結果的に、制御下での薬剤送達、送達マトリックスとして、又はコーティングとしてなど、ヒドロゲルは、生物医学的応用において多く利用されている。
【0095】
本発明によると、(a)、(b)又は必要に応じ(c)以外の付加的原材料、例えば抗酸化剤及びpH緩衝剤といった当該技術で周知の賦形剤などを、材料に添加してもよい。
【0096】
応用
本発明の超分子生体吸収性又は生物医学用材料は、生物医学的応用に関連した応用に適していることが好ましい。特に超分子生体吸収性材料は、薬剤の放出制御又は医療用画像化技術(例えばMRI)に有用であるだけではなく、化粧品への応用、並びに除草剤及び害虫駆除などの農業への応用にも有用である。
【0097】
一方、生物医学用材料は、組織工学用材料、人工器官又はインプラント製造用材料として、特に適している。超分子生物医学用材料は、薬剤の放出制御を行う場合の生物医学用コーティング、抗血栓作用又は抗菌作用を有する生物医学用コーティング、平滑性に優れた生物医学用コーティングに有用であることが、より好ましい。生物医学用コーティングを、人工器官、インプラント、ステント、カテーテル、又はその他の、生体組織と接触する医療器具に塗布することができる。より好ましい別の応用によると、超分子生物医学用材料は、美容整形及び形成手術用の充填材として有用である。
【0098】
実施例
以下の非限定的実施例により、本発明の好ましい実施形態についてさらに説明する。特に記載のない場合、化学品はAldrich社より入手している。
【実施例1】
【0099】
実施例1:UPy1の調製
1,6−ヘキシルジイソシアネート(650g)及びメチルイソシトシン(又は2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチル−ピリミジン、65.1g)を、容量2リットルのフラスコ内で懸濁した。混合液を、アルゴン雰囲気下、100℃にて一晩攪拌した。室温まで冷却した後、攪拌を続けながら、1リットルのペンタンを懸濁液に添加した。生成物を濾過し、ペンタンで数回洗浄して、真空乾燥を行った。白色粉末を得た。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H)、11.8(1H)、10.1(1H)、5.8(1H)、3.3(4H)、2.1(3H)、1.6(4H)、1.4(4H)。FT−IR(ニート):ν(cm−1)。2935、2281、1698、1668、1582、1524、1256。
【実施例2】
【0100】
実施例2:UPy2の調製
2−アミノ−4−ヒドロキシ−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−メチル−ピリミジン(12グラム)を、IPDI(150mL)中に懸濁し、アルゴン雰囲気下、90℃にて一晩攪拌した。透明な溶液となった。かかる溶液を冷却し、ヘキサン中で沈殿させた。固形物を濾過し、別のヘキサン中で攪拌した後、濾過、ヘキサンでの洗浄、及び残渣の乾燥により、生成物を単離した。収率:98%。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H)、11.9(1H)、10.2(1H)、4.8〜4.5(1H)、4.2(2H)、4.0〜3.2(3H)、3.1〜2.9(3H)、2.7(2H)、2.3(3H)、1.9〜1.6(4H)、1.4〜0.8(26H)。FT−IR(ニート):ν(cm−1)。2954、2254、1690、1664、1637、1590、1532、1461、1364、1307、1257、1034、791。MALDI−TOF−MS、[M]=614、[M+Na]=636。
【実施例3】
【0101】
実施例3:UPy3の調製
メチルイソシトシン(10g)とカルボジイミダゾール(20.7g)との混合物を含む無水(dried)DMSO(50mL)を加熱し、アルゴン雰囲気下、100℃にて2時間攪拌した。結果として得られた固形物を濾過し、フィルター中に白色粉末が残るまで、無水(dry)アセトンで洗浄した。その後、かかる粉末に真空乾燥を行い、Pで保存した。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3174、1701、1644、1600、1479、1375、1320、1276。
【実施例4】
【0102】
実施例4:UPy4の調製
5mLのクロロホルムに、6−(2−エチルペンチル)イソシトシン(0.42g)を溶解させた。この透明な溶液に、1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI)(0.71g)を添加した。反応混合液を室温で3時間攪拌した。混合液全体に対し、塩水での抽出を3回行った。水層を結合させ、クロロホルムで抽出した。結合させたクロロホルム層をNaSOで乾燥させ、濾過した。残った有機層を減圧下で乾燥させ、収率66%にて淡黄色の粉末を得た。H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.8(1H)、7.6(1H)、7.1(1H)、5.8(1H)、2.5(1H)、1.7(4H)、1.3(4H)、1.0(3H)、0.9(3H)。
【実施例5】
【0103】
実施例5:UPy5の調製
15mLのTHF中で、UPy3(0.9g)と1,6−ジアミノヘキサン(0.54g;1.1等量)を室温で72時間攪拌した。かかる混合液を、アルゴン下に置いておいた。エタノール(25mL)を添加し、懸濁液を30分間攪拌した。固形物を濾過し、10mLのエタノールで数回洗浄し、乾燥させた。結果として0.86gの2(6−アミノヘキシルアミノカルボニルアミノ)−6−メチル−4[1H]ピリミジノンを得た。H−NMR(400MHz、1滴のCHCOOHを含むDO):δ=5.9(1H)、3.2(2H)、2.9(2H)、2.2(3H)、1.7−1.2(8H)。
【実施例6】
【0104】
実施例6:UPy6の調製
メチルイソシトシン(5.2グラム)をイソホロンジイソシアネート(IPDI、50mL)に添加した後、アルゴン雰囲気下、90℃にて3日間攪拌した。結果として得られた透明な溶液を、ヘプタン中で沈殿させた。白色の粘性物質を回収し、150mLのヘプタン中で加熱して、氷上で冷却し、濾過した。白色の残渣について同じ手順をもう1回繰り返し、1単位のIPDIを有するウレイドピリミジノンからなる白色粉末を得た。この生成物(10.22g)をクロロホルム(20mL)に溶解させ、その後、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、3.6mL)及び1滴のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。混合液を、オイルバス温度65℃にて4時間攪拌し、その後、冷却して濾過した。濾過物を濃縮して過剰のジエチルエーテル中に滴下した。沈殿物を濾過により回収し、ジエチルエーテルで洗浄した。真空乾燥を行い、固形生成物を得た。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.1(1H)、11.7〜12.0(1H)、9.8−10.0(1H)、6.4(1H)、6.2(1H)、5.8(2H)、5.2(1H)、4.3(4H)、4.1〜3.6(1H)、3.1〜2.9(2H)、2.1(3H)、2.0(3H)、1.8〜1.5(2H)、1.4〜0.8(13H)1.9(3H)、1.7〜1.2(8H)。FT−IR(ニート):ν3212、2954、1697、1660、1572、1520、1242、1165。
【実施例7】
【0105】
実施例7:4H単位を備えたポリマーI
テレケリックヒドロキシ末端PEO−6000(10.20g)を、三つ口フラスコ内において真空中で120分間、120℃に加熱し、その後、80℃に冷却した。UPy2(1.25g)及び2滴のジブチル錫ジラウレートを溶解させたトルエン(40mL)をポリマー融液に添加し、アルゴン下、80℃にて、溶液を一晩攪拌した。反応混合液を40mLのTHFで希釈し、ジエチルエーテル中に沈殿させた。物質は白色(半結晶状)で、弾性及び頑強性がある。H−NMR(300MHz、CDCl/CDOD):δ4.1、3.6、2.8、2.2、1.8〜1.4、1.2〜0.8。
【実施例8】
【0106】
実施例8:4H単位を備えたポリマーII
分子量が1250Dのテレケリックヒドロキシ末端ポリカプロラクトン(25.9g、真空乾燥)、UPy2(10.9g)及び2滴のジブチル錫ジラウレートを無水酢酸エチル(130mL)に溶解させ、オイルバス温度70℃にて一晩攪拌した。翌日、酢酸エチル(70mL)及びエタノール(50mL)を反応混合液に添加し、その後、エタノール中で沈殿させた。沈殿物の乾燥後、ポリマーを単離し、弾性物質を得た。H−NMR(300MHz、CDCl):δ13.1、12.0、10.1、4.5〜3.8、3.0、2.6〜2.2、2.0〜0.8。SEC(THF、PS標準):M=8.8kD、D=2。
【実施例9】
【0107】
実施例9:4H単位を備えたポリマーIII
テレケリックヒドロキシ末端PEO−3000(12.78g)を、三つ口フラスコ内において真空中で30分間、120℃に加熱し、続いて、5滴のジブチル錫ジラウレート及びUPy1(2.51g)を添加した。その後、この不均一反応混合液をアルゴン雰囲気下において機械式攪拌装置で攪拌し、140℃に加熱した。140℃で10分間攪拌した後、透明で均一な粘液を得た。冷却後、この液体を単離して、硬質で脆弱な白色物質を得た。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.1、11.9、10.1、5.8、5.0、4.2、3.8〜3.3、3.2、3.1、2.1、1.6〜1.2。FT−IR(ニート):ν(cm−1)2882、1698、1663、1588、1527、1466、1342、1100、962、841。SEC(THF、PS標準):M=2.9kD、D=1.2。
【実施例10】
【0108】
実施例10:4H単位を備えたポリマーIV
粘度が100〜120cStであって、ビス(アミノプロピル)で末端が封鎖されたポリシロキサンDMS−A21を、Gelest社より入手した。DMS−A21(14.7g)を含むテトラヒドロフラン(200mL)の溶液に、UPy3(1.5g)を添加した。その後、この混合液をオイルバス温度80℃に加熱し、この温度にて、アルゴン雰囲気下で16時間攪拌した。反応混合液にクロロホルム(200mL)を添加し、その後、反応混合液をシリカで濾過した。透明な濾過液を塩化ナトリウム飽和水溶液で2回洗浄した。有機画分をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空乾燥を行い、オフホワイトで透明感のある弾性物質を得た。分子量(Mn)は5.0kg/モル;ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン標準)で確認した分子量分布は1.8である。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.1、11.9、10.2、5.9、3.3、2.3、1.6、0.6、0.4〜−0.1。FT−IR(ニート):ν(cm−1)2961、1698、1659、1587、1527、1258、1010、780。SEC(THF、PS標準):M=8.1kD。
【実施例11】
【0109】
実施例11:4H単位を備えたポリマーV
Kraton Polymers社製のクラトンL−2203(平均分子量M=3400、10g)を、無水トルエン(100mL)中に溶解させた。この混合液に、UPy1(1.75g)及び2滴のジブチル錫ジラウレートを添加し、その後、混濁混合液を、アルゴン雰囲気下にて80℃で12時間攪拌した。試料を採取して、H−NMR(3.6ppmにて多重線消失(disappearance multiplet))で反応の完全性について調べてみた。粘性反応混合液を、攪拌しながら70℃に冷却し、0.3mLの水を添加した。反応混合液をさらに1時間攪拌し、続いてメタノール中に沈殿させた(エタノールをより多く添加することにより、反応混合液の粘度を下げることができる)。白色の粘性物質を回収し、真空乾燥を行い、やや黄色味を帯びた透明なゴムを得た。収率:94%;H−NMR(CDCl):d13.1、11.9、10.1、5.8、4.9、4.6、4.1、3.8、3.3、3.2、2.2、1.6〜1.1、0.8。
【実施例12】
【0110】
実施例12:4H単位を備えたポリマーVI
テレケリックポリ(2−メチル−1,3−アジピン酸プロピレン)(平均分子量M=2.0kD、ヒドロキシ末端基、5.55g)に対し、トルエンで3回ストリッピングを行い、UPy2(1.31g)及び数滴のジブチル錫ジラウレートと共にトルエン(25mL)に溶解させた。混合液を80℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で16時間攪拌した。その後、イソシアネート機能が消失したかどうかについてFT−IRで確認し、クロロホルム/メタノール溶液からエーテル中への沈殿、及び固形物の乾燥によりポリマーを単離した。H−NMR(300MHz、CDCl):δ13.1、12.0〜11.8、10.1〜9.8、5.0〜4.6、4.3〜3.8、3.4〜2.8、2.5〜2.0、1.9〜1.6、1.4〜0.8。SEC(THF、PS標準):M=15.5kD、D=1.7。
【実施例13】
【0111】
実施例13:4H単位を備えたポリマーVII
平均分子量が2.0kDのテレケリックヒドロキシ末端ポリ(2−メチル−1,3−アジピン酸プロピレン)(2.39g)と平均分子量が2.0kDのテレケリックヒドロキシ末端ポリカプロラクトン(2.39g)との混合物に対し、トルエンで3回ストリッピングを行い、モノマーUPy2(1.18g)及び数滴のジブチル錫ジラウレートと共にクロロホルム(25mL)に溶解させた。混合液を60℃で一晩攪拌し、続いて、イソシアネート機能が存在しないことをFT−IR分光法で確認し、UPy3(0.35g)を添加して、溶液を20mLのクロロホルムで希釈し、もう一晩還流した。再度、イソシアネート機能が消失したかどうかについてFT−IRで確認し、クロロホルム/メタノール溶液からヘキサン中への沈殿、及び固形物の乾燥によりポリマーを単離した。H−NMR(300MHz、CDCl):δ13.2〜12.8、12.1〜11.8、10.2〜9.8、5.8、5.2〜4.5、4.4〜3.6、3.4〜2.6、2.6〜2.0、2.0〜0.6。SEC(THF、PS標準):M=12.2kD、D=2.0。
【実施例14】
【0112】
実施例14:4H単位を備えたポリマーVIII
ヒドロキシ末端ポリカプロラクトンジオール(M=2.1kg/モル;ジエチレングリコールで開始した開環重合により入手;Acros社より購入)をトルエンに溶解させた後、トルエンを減圧下で除去して水を同時蒸発させた。この手順を2回繰り返した。このプレポリマー(25.0g;12.5mmol)を無水クロロホルム(750mL)に溶解させ、その後、UPy1(8.8g)を添加した。ジブチル錫ジラウレートを2滴添加した後、溶液を16時間還流した。OH末端基の有無についてH−NMR及び13C−NMRを行い、反応の完全性を確認した。その後、5グラムのシリカキーゼルゲル60及び2滴のジブチル錫ジラウレートを添加し、混合液を16時間還流した。溶液中にUPy1が存在しないことを、IRで確認した。クロロホルムで混合液を希釈した後、ハイフローを用いた濾過により、シリカを除去した。溶液を減圧下で濃縮した。クロロホルム(500mL)を含むヘキサン(4.0L)中で物質を沈殿させ、濾過した。結果として得られた物質に24時間の真空乾燥を行い、白色綿毛状の物質として、24.4gの4H単位含有テレケリックポリカプロラクトンを得た。H−NMR(CDCl):δ13.1、11.9、10.1、5.9、4.9、4.2、4.1、3.7、3.2、2.3、2.2、1.6、1.5、1.4。FT−IR:ν=2941、2865、1729、1699、1669、1587、1527、1461、1418、1359、1251、1162、1105cm−1
【実施例15】
【0113】
実施例15:4H単位を備えたポリマーIX
平均分子量が1250ダルトンのテレケリックヒドロキシ末端ポリカプロラクトン(10.94g)を、三つ口フラスコ内において真空中で30分間、120℃に加熱し、続いて、8滴のジブチル錫ジラウレート及びUPy1(5.13g)を添加した。その後、この不均一反応混合液を、アルゴン雰囲気下にて機械式攪拌装置で攪拌し、145℃に加熱した。145℃で50分間攪拌した後、均一な粘性ペーストを得た。冷却後、ペーストを単離して硬質白色物質を得た。IR分光法により、かかる生成物がもはやイソシアネートを含有していないことを確認した。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.2、11.9、10.2、5.8、4.9、4.3、4.1、3.7、3.4〜3.1、2.4〜2.2、3.1、1.8〜1.2。FT−IR(ニート):ν(cm−1)2882、1698、1663、1588、1527、1466、1342、1100、962、841。SEC(THF、PS標準):M=2.1kD、D=1.4。
【実施例16】
【0114】
実施例16:4H単位を備えたポリマーX
分子量が2.0kDのテレケリックヒドロキシ末端ポリカプロラクトン(9.73g)、UPy2(2.5g)及び数滴のジブチル錫ジラウレートをクロロホルム(100mL)に溶解させ、オイルバス温度60℃にて一晩攪拌した。翌日、クロロホルムを蒸発させ、2回目のUPy2(0.5g)と共にトルエン(100mL)及びピリジン(20mL)を添加した。かかる混合液を、オイルバス温度120℃にてさらに一晩加熱し、ピリジン蒸発、クロロホルム/メタノール(10:1)からメタノール中への沈殿、及び固形物の乾燥によりポリマー生成物を単離した。その物質を置いておくと、白色(半結晶状)の弾性ポリマーとなる。H−NMR(300MHz、CDCl):δ13.1、12.0、10.1、4.5〜3.8、3.0、2.6〜2.2、2.0〜0.8。SEC(THF、PS標準):M=38.5kD、D=2.0。
【実施例17】
【0115】
実施例17:4H単位を備えたポリマーXI
テレケリックPEO−1500(5.83g)に対し、トルエンで3回ストリッピングを行った後、トルエン(30mL)に溶解させた。UPy2(2.39g)を含むトルエン(14mL)を数滴のジブチル錫ジラウレートと共に添加し、溶液をアルゴン下で一晩加熱した(オイルバス温度は120℃)。ジエチルエーテル中への沈殿によってポリマーを単離した。物質は白色(半結晶状)で、弾性及び強度がある。H−NMR(300MHz、CDCl/CDOD):δ4.1、3.6、2.8、2.2、1.8〜1.4、1.2〜0.8。SEC(THF、PS標準):M=7.0kD。
【0116】
生物活性成分(b)の実施例
【実施例18】
【0117】
実施例18:UPy−GRGDS
標準的なFmocカップリング化学反応を利用した従来の固相ペプチド合成(SPPS)法により、Wang樹脂上でGRGDSペプチドを合成した(Wang樹脂へのFmoc−Ser(tBu)−OHの負荷量は、0.63mmol/gであった;Bachem社製)。いずれの場合も、20%のピペリジンを含むDMFでFmoc保護基を脱保護した。(必要に応じて)保護したアミノ酸(3等量;(Fmoc−Asp(OtBu)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Arg(Pmc)−OH及びFmoc−Gly−OH;Bachem社製))をDMFに溶解させた。カップリング試薬として、DMF中の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.6等量)及びジイソプロピルカルボジイミド(3.3等量)を使用した。4H単位と、保護されたGRGDSペプチドの最後のアミノ酸(Gly)の遊離アミンとのカップリングを、UPy3(5等量)を含む無水DMF(分子ふるい上で無水化)を使用し、固相支持体上で、アルゴン雰囲気下、50℃にて16時間行った。これにより、保護されたUPy−GRGDSを樹脂上に得た。過剰のUPy3を酸性水により洗い流した。ペプチドを脱保護し、95%のトリフルオロ酢酸(TFA)及び5%の水で、固相支持体から切り出した。これを(冷)ジエチルエーテル中に沈殿させ、遠沈を行い、ジエチルエーテルで3回洗浄した。その後、10〜20%のアセトニトリルを含む水からペプチドを3回凍結乾燥し、白色綿毛状の粉末を得た。必要に応じて、分取逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)を利用してUPy−GRGDSを精製した。NMR技術、IR、RPLC、及び質量分析法により、化合物の特徴付けを行った。H−NMR(DO/ACN−d3):δ5.98(1H)、4.78(1H)、4.48(1H)、4.32(1H)、3.98〜3.84(2H)、3.15(2H)、2.90〜2.78(2H)、2.23(3H)、1.85〜1.61(4H)。H−NMRのスペクトルのアサインメントを、二次元H,H−COSY分光法により確認した。内部標準としてヘキサフルオロリン酸カリウムを用いた19F−NMR(DO/ACN−d3)により、試料には0.1重量%未満のTFAが含まれることがわかった。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3280、3182、3073、2948、2542、1701、1642、1528、1413、1224、1180、1135、1076、1046。RPLC−MS:クロマトグラム中に1本のピーク、m/z:計算値、641.3g/モル。測定値、[M+H]=642.2g/モル及び[M+H]2+=321.7g/モル。
【実施例19】
【0118】
実施例19:UPy−PHSRN
標準的なFmocカップリング化学反応を利用した従来の固相ペプチド合成(SPPS)法により、Wang樹脂上でPHSRNペプチドを合成した(Wang樹脂へのFmoc−Asn(Trt)−OHの負荷量は、0.43mmol/gであった;Bachem社製)。いずれの場合も、20%のピペリジンを含むDMFでFmoc保護基を脱保護した。(必要に応じて)保護したアミノ酸(3等量;(PHSRN用の、Fmoc−Arg(Pmc)−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−His(Trt)−OH及びFmoc−Pro−OH;Bachem社製))をDMFに溶解させた。カップリング試薬として、DMF中の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.6等量)及びジイソプロピルカルボジイミド(3.3等量)を使用した。4H単位と、保護されたPHSRNペプチドの最後のアミノ酸(Pro)の遊離アミンとのカップリングを、UPy1(8等量)を含む無水クロロホルム(分子ふるい)を使用し、固相支持体上で、21℃にて16時間行った。これにより、保護されたUPy−PHSRNを樹脂上に得た。過剰のUPy1を酸性水により洗い流した。ペプチドを脱保護し、95%のトリフルオロ酢酸(TFA)及び5%の水で、固相支持体から切り出した。これを(冷)ジエチルエーテル中に沈殿させ、遠沈を行い、ジエチルエーテルで3回洗浄した。その後、10〜20%のアセトニトリルを含む水からペプチドを3回凍結乾燥し、白色綿毛状の粉末を得た。必要に応じて、分取逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)を利用してUPy−PHSRNを精製した。H−NMR(DO/ACN−d3):δ8.58(1H)、7.27(1H)、5.92(1H)、4.73(1H)、4.66(1H)、4.36(1H)、4.15(1H)、3.86(2H)、3.40〜3.05(2H)、2.82〜2.73(2H)、2.21(3H)、2.15(1H)、2.03〜2.00(3H)、1.94〜1.62(4H)、1.54〜1.46(4H)、1.34〜1.27(8H)。H−NMRのスペクトルのアサインメントを、二次元H,H−COSY分光法により確認した。内部標準としてヘキサフルオロリン酸カリウムを用いた19F−NMR(DO/ACN−d3)により、試料には1重量%未満のTFAが含まれることがわかった。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3263、2943、1657、1542、1441、1361、1317、1252、1201、1133、1078。RPLC−MS:クロマトグラム中に1本のピーク、m/z:計算値、902.4g/モル。測定値、[M+H]=903.3g/モル、[M+H]2+=452.3g/モル及び[M+H]3+=301.9g/モル。
【実施例20】
【0119】
実施例20:UPy−フルオレセイン
室温にて、ヘキサンジアミン(2.03g)を含むクロロホルム溶液に、UPy4(0.51g)を添加した。混合液を一晩攪拌した。この混合液に、塩基性水(5gのNaOHを含む20mLの水)を添加し、遠心分離(4300rpmで5分間)後、透明な水層が分離し、その後、それを単離した。3MのHClを含む水で、塩基性水層のpHを6にした。アミノ官能性4H単位が単離されて白色沈殿物が形成され、それをクロロホルムで抽出した。クロロホルム層をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。H−NMR(CDCl):δ13.25(1H)、11.91(1H)、10.21(1H)、5.82(1H)、3.27(2H)、2.66(2H)、2.31(1H)、1.69〜1.28(16H)、0.90(6H)。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3064;2956;2856;2927;2856;1939;1664;1594;1558;1520;1428;1265;1178;1117;1073;950;840;814;773;756;728;697。元素分析:C61.34、H9.64;N19.82、計算値(C61.51、H9.46、N19.92)。RPLC−MS:[M+H]=352.2(計算値:351.41)g/モル;[イソシトシン+H]=210.2(計算値:209.29)g/モル;[UPy−C−UPy+H]=587.3(計算値:586.78)g/モル。
【0120】
フルオレセインイソチオシアネート(132mg)を含む、メタノールとクロロホルムが2:1の混合液に、このアミノ官能性4H単位(123mg)を添加して、室温で2日間攪拌した。減圧下で、溶媒を除去した。残った橙色沈殿物を、0.2MのNaOH溶液5mLに溶解させた。1MのHCl溶液を1.5mL添加すると、濁った橙色の沈殿物が生じた。これを遠心分離で単離した。その後、黄色の透明な水層を取り除いた。セファデックスLH20カラム(ジクロロメタン:メタノール=1:1)を用いて生成物を精製した。生成物をTHF:水(1:1)に溶解させ、小型のシリカカラムに流した。その後、凍結乾燥を行った。H−NMR(DMSO):δ8.19(1H)、7.91(1H)、6.89(1H)、6.81(1H)、6.58(4H)、6.46(2H)、5.72(1H)、3.51(2H)、3.18(2H)、2.18(1H)、1.57〜1.10(16H)、0.74(6H)。LC−MS(直接注入):[M+H]=741.2(計算値:740.30)g/モル;[2M+H]=1481.1g/モル;[Mフラグメント+H]=210.2g/モル;[Mフラグメント+H]=352.3g/モル;[Mフラグメント+H]=390.3g/モル;[Mフラグメント+H]=707.3g/モル。
【実施例21】
【0121】
実施例21:UPy−ビオチン
N−(+)−ビオチニル−3−アミノプロピルアンモニウムトリフルオロ酢酸(165mg、Sigma-Aldrich社より入手)を含むDMF(1.0mL)の溶液に、UPy4(124mg)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA;133mg)を添加した。混合液を60℃にて7時間攪拌した。減圧下でDMFを除去し、すべてをクロロホルムに溶解させた。以下の抽出を行った;塩水で3回、1MのHClで3回。結合した有機層をNaSOで乾燥させ、1.5mLに濃縮した。これを冷アセトン中で沈殿させ、遠心分離にかけた。アセトンを取り除き、生成物を減圧下で40℃にて2時間乾燥させた。これにより、収率65%で白色粉末を得た。H−NMR(400MHz、CDCl):δ13.32(1H)、11.82(1H)、10.07(1H)、5.92(1H)、4.51(1H)、4.36(1H)、3.37(4H)、3.13(1H)、2.90(1H)、2.73(1H)、2.39(1H)、2.23(2H)、1.81〜1.19(16H)、0.89(6H)。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3217;3038;2929;2860;1699;1641;1583;1526;1460;1439;1381;1306;1251;1145;1075;1009;951;850;796;763;739;686。MALDI−TOF:536.14g/モル(計算値535.71g/モル)、301.07g/モル、334.23g/モル。
【実施例22】
【0122】
実施例22:UPy−Gd(III)−DTPA複合体
UPy4(0.376g、1.24mmol)を含むジクロロメタン(5mL)の無色の溶液に、t−ブチル−6−アミノ−2−{{ビス{2−[ビス−(t−ブトキシカルボニルメチル)アミノ]−エチル}−アミノ}}ヘキサノエート(0.713g、Anelli, P.L. et al. Bioconjugate Chem. 1999, 10, p. 137, compound 7に記載の通りに得られる化合物)の溶液を、ゆっくりと添加した。かかる溶液を、20℃で12時間、激しく攪拌した。黄色味を帯びた溶液を、1MのKHSO(水溶液)pH1.95(2×10mL)で洗浄した。その後、有機層を1MのKCO(水溶液)pH10(3×10mL)及び塩水(3×10mL)で洗浄した。結合した水層をDCM(2×10mL)で乾燥させ、有機層をMgSOで乾燥させた。反応混合液を減圧下で濃縮し、黄色味を帯びた液体(0.84g)を得た。EtOAcを用いたカラムクロマトグラフィーで粗生成物(0.730g)を精製し、保護されたSupraB含有DTPA類似体を0.51g得た(R=0.5(EtOAc))。H−NMR(CDCl):δ13.3(1H)、11.9(1H)、10.2(1H)、5.8(1H)、3.5(8H)、3.3−3.2(3H)、3.0−2.6(8H)、2.3(1H)、2.0−1.2(14H)、0.94(6H)。H−NMRのスペクトルのアサインメントを、H,H−COSYにより確認した。FT−IR(ニート):ν(cm−1)2975、2932、1724、1698、1658、1646、1586、1526、1367、1253、1219、1148。ESI−QTOF−MS:m/z[C508912+H]、計算値980.67Da、測定値980.71Da;[C508912+Na]、計算値1002.65Da、測定値1002.65Da。
【0123】
その後、この保護されたUPy含有DTPA類似体をジクロロメタン(0.39g)に溶解させ、TFA(2mL)を添加し、続いて、反応混合液を室温で16時間攪拌した。溶媒の蒸発後、2回目のTFA(2mL)及び無水ジクロロメタン(5mL)を添加して、攪拌を一晩続けた。溶液を真空中で濃縮したところ、脱保護した生成物のTFA塩が得られ、60℃での透析(MWCOが100Daの膜)によりそれをさらに精製し、続いて凍結乾燥を行い、白色吸湿性粉末(0.266g)としてペンタ酸(penta-acid)を得た。H−NMR(DO、348K):δ6.2(1H)、4.1(8H)、3.6(1H)、3.4(4H)、3.3〜3.1(6H)、2.6(1H)、2.0〜1.2(14H)、0.79(6H)。H−NMRのスペクトルのアサインメントを、H,H−COSYにより確認した。−75.6ppmにおけるシグナルが存在しないことにより、TFAが首尾よく除去されたことを、19F−NMR分光法で確認した。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3215、2933、2531、1700、1630、1551、1431、1389、1333、1202。ESI−QTOF−MS:m/z[C304912+H]、計算値700.35Da、測定値700.40Da;[C304912+Na]、計算値722.33Da、測定値722.40Da。
【0124】
pH5.8の0.3mのクエン酸緩衝液中にペンタ酸(9.16mg)が含まれている溶液に、化学量論的量のGdCl・6HO(4.97mg)を含む脱塩水(3mL)を添加することにより、所望のGd(III)複合体を調製した。緩衝液を、室温で2時間、激しく攪拌した。水溶液に対して大規模な透析(MWCOが100Daの膜)及び凍結乾燥を行った。結果的にGd(III)複合体を白色吸湿性粉末(10.7mg)として得た。FT−IR(ニート):ν(cm−1)3384、2932、1696、1579、1407、1183、1135、1083。ESI−MS:m/z[C304612Gd+H]、計算値855.25Da、測定値855.27Da;[C304512NaGd+H]、計算値877.23Da、測定値877.27Da。[C304412NaGd+H]、計算値899.22Da、測定値899.27Da。ICP−AES(Gd(III):計算値50.0μm、測定値33.9μm。
【実施例23】
【0125】
実施例23:UPy−システイン
標準的なFmocカップリング化学反応を利用した従来の固相ペプチド合成(SPPS)法により、Wang樹脂上でCGGKGペプチドを合成した(Wang樹脂へのFmoc−Gly−OHの負荷量は、0.75mmol/gであった;Bachem社製)。いずれの場合も、20%のピペリジンを含むDMFでFmoc保護基を脱保護した。(必要に応じて)保護したアミノ酸(3等量;(Fmoc−Lys(Mtt)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Gly−OH及びFmoc−Cys(Trt)−OH;Bachem社製))をDMFに溶解させた。カップリング試薬として、DMF中の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.6等量)及びジイソプロピルカルボジイミド(3.3等量)を使用した。
【0126】
Cysがまだ保護されているときに、4H単位を樹脂上のLysに結合させた。90%のDCM/5%のTFA/5%のトリイソプロピルシランからなる混合液中で15分間、まずLysを選択的に脱保護した。樹脂をDCMで2回、及び5%のDIPEAを補充したDCMで4回洗浄した。Lysで結果的に生じた遊離アミンへの4H単位のカップリングを、振動台の、UPy1(8等量)を含む無水クロロホルム(分子ふるい上で無水化)を用いた固相支持体上で、21℃にて行った。これにより、保護されたCGGK(UPy)Gペプチドを樹脂上に得た。過剰のUPy1を酸性水により洗い流した。20%のピペリジンを含むDMFで、Cys上のFmoc保護基を除去した。ペプチドを脱保護し、95%のトリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%の水及び2.5%のTisで、固相支持体から切り出した。これを(冷)ジエチルエーテル中に沈殿させ、遠沈を行い、ジエチルエーテルで3回洗浄した。その後、10〜20%のアセトニトリルを含む水からペプチドを3回凍結乾燥し、白色綿毛状の粉末を得た。H−NMR及び質量分析法により、化合物の特徴付けを行った。RPLC−MS:クロマトグラム中に1本のピーク、m/z:計算値713.8g/モル。測定値[M+H]=714.3g/モル及び不純度(impurity)[M+H]=820.3g/モル及び[M+H]2+=410.8g/モル。H−NMR(400MHz、DO/ACN−d3):δ6.34(1H)、4.79(1H)、4.74(1H)、4.41(2H)、4.32(4H)、3.60(2H)、3.44(6H)、2.62(3H)、2.31〜2.04(2H)、1.92〜1.84〜1.72(12H)。
【実施例24】
【0127】
実施例24:UPy−ヘパリン
ヘパリンナトリウム塩(1.0g、M=12000、活性=195IU/mg、ブタ腸粘膜、ドイツ国、Merck Biosciences社より入手)を水に溶解させ、ダウエックス50X8(H+)カラムに通し、続いて水での透析(分画分子量=12000〜14000)及び凍結乾燥を行って、ヘパリン(0.95g)を得た。2重量%の凍結ヘパリンの溶液を含む、0.05Mの2−モルホリノエタン硫酸緩衝液(MES緩衝液、pH=5.60)に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を、NHS:EDC:ヘパリン−COH=0.24:0.40:1.0というモル比で添加することにより、ヘパリンのカルボン酸基を活性化した。10分間の前活性化の後、UPy5(64mg)をMES緩衝液(3mL、pH=5.60)に溶解させ、NHS/EDC活性化ヘパリン溶液(25mL)に添加し、結果として6:1(UPy5:ヘパリン)というモル比になった。3時間後、反応混合液をMES緩衝液(pH=5.60)で1回透析し、続いて水で大規模な透析を行った後に凍結乾燥を行って、約6個の4H単位で官能基化したヘパリンを得た。
【実施例25】
【0128】
実施例25:UPy−ヘパリン
ヘパリンナトリウム塩(1.0g、M=12000、活性=195IU/mg、ブタ腸粘膜、ドイツ国、Merck Biosciences社より入手)を水に溶解させ、ダウエックス50X8(H+)カラムに通し、続いて水での透析(分画分子量=12000〜14000)及び凍結乾燥を行って、ヘパリン(0.95g)を得た。ヨウ化物(0.2g)を含む20%のメタノール水溶液(25mL)で、ヘパリンの還元末端を室温で6時間酸化した。4重量%の水酸化カリウムを含むメタノール(50mL)に、反応液を添加した。結果として生じた白色沈殿物を濾過し、水に溶解させて透析(分画分子量=12000〜14000)した。凍結乾燥後、酸化ヘパリンを得た。その後酸化ヘパリンを水に溶解させ、ダウエックス50X8(H+)カラムに通し、続いて凍結乾燥を行ってラクトン−ヘパリン(0.74g)を得た。10倍モル過剰のUPy5(45mg)をDMF(2mL)に溶解させた後、DMF(10mL)に溶解させたラクトン−ヘパリン(200mg)に添加した。反応物を80℃にて16時間攪拌した。反応混合液を真空中で濃縮し、続いて水に溶解させた。その後、希釈した反応混合液をダウエックス50X8(H+)カラムに通した。溶出液を水で大々的に透析し、続いて凍結乾燥を行った。その結果、末端が4H単位で官能基化されたヘパリンを得た。
【0129】
生体吸収性超分子材料の加工に関する実施例
【実施例26】
【0130】
さまざまな技法により、組織工学用に配布可能な数種類の骨格へと実施例14のポリマーを加工した。THF溶液から溶媒キャスト法により、又は(溶融温度よりも約20℃高い温度での)圧縮成形によりフィルムを作製した。(90℃での)溶融紡糸及び(クロロホルム溶液からの)電気紡糸を利用して、繊維及び網を作製した。溶融堆積モデリング(FDM)により、繊維幅を約220μmにまで抑えたグリッドを75℃直下の温度で製造した。
【実施例27】
【0131】
実施例7のポリマー(4.3g)及び実施例14のポリマー(1.0g)をTHF(70mL)に溶解させ、続いて、攪拌したポリマー溶液に82mLの脱イオン水を穏やかに添加することにより、生物活性ヒドロゲルを得た。この混合液に、ローダミンB(100mg)を添加した。この混合液を、THFがすべて除去されるまで回転式蒸発器で濃縮し、橙色の蛍光を示すピンク色の濁ったヒドロゲルを得た。結果として得られたヒドロゲルは弾性を有しており、粘弾性挙動を示した。
【実施例28】
【0132】
(a)4モル%の実施例18のオリゴペプチド、(b)4モル%の実施例19のオリゴペプチド、及び(c)実施例18及び19のオリゴペプチドの両方(各ペプチドにつき4モル%)を、10〜30%の水を含むTHFに溶解させて3つの異なるペプチド溶液を作製することにより、生物活性物質を得た。その後、実施例8のポリマーをTHFに溶解させた。ペプチド溶液とポリマー溶液とを混合することにより、生物活性混合物を製造した。結果として得られた混合液を用いてガラス製カバーガラス(直径=1.5cm;カバーガラス1枚につき、4モル%のペプチドの場合は1・10−4mmolのペプチド、及び2.4・10−3mmolのポリマー)上でドロップキャスティングを行い、オリゴペプチドを負荷した3つの異なるフィルム、28a、28b、及び28cを得た。ほとんどの時間、わずかな沈殿物が認められた。ガラス製カバーガラス上の混合液を、真空中で2〜3日間、35〜40℃にて乾燥させた。これにより、生物活性フィルムを得た。
【実施例29】
【0133】
実施例14のポリマーに、まずガラス製カバーガラス(直径=1.5cm)上でTHFからのドロップキャスティングを行うことにより、生物活性物質を得た。その後、(a)実施例18のオリゴペプチド、(b)実施例19のオリゴペプチド、及び(c)実施例18及び19のオリゴペプチドの両方を、10〜30%の水を含むTHFに溶解させることで、3つの異なる溶液を作製した。使用したペプチド濃度は、1モル%、2モル%、4モル%又は8モル%であった。これらの溶液を用いて、乾燥ポリマーフィルム上にてドロップキャスティングを行った。ほとんどの時間、わずかな沈殿物が認められた。一般的には、カバーガラス1枚につき、4モル%のペプチドの場合は1・10−4mmolのペプチド、及び2.4・10−3mmolのポリマーが負荷された。ガラス製カバーガラス上の混合物を、真空中で2〜3日間、35〜40℃にて乾燥させ、オリゴペプチドを負荷した3つの異なるフィルム、29a、29b、及び29cを得た。これらはすべて、オリゴペプチドの負荷量が異なっていた。インビトロでの細胞接着及び拡散実験、又は抽出実験での使用に先立って、試料をUV下で少なくとも3時間滅菌した。
【実施例30】
【0134】
以下の方法により、実施例14のポリマー及び実施例21のUPy−ビオチンからなる生物活性材料を作製した。実施例8のポリマー(0.80g)をTHF(2mL)に溶解させた。実施例21で得た白色粉末(34mg)をTHF溶液に添加し、その後、数分間振盪し、洗浄したガラス製カバーガラス(直径=1.5〜2.2cm)上へのスピンコーティング(3500rpm、15秒間)又はドロップキャスティングを行った。試料を真空中で、室温にて1時間乾燥させた。これにより、UPy−ビオチン含有生物活性フィルムを得た。
【実施例31】
【0135】
4H単位を備えたポリエチレングリコールを実施例9に記載の通りに調製した(12g)が、140℃で10分間攪拌した後に、混合液を攪拌しながらL−アスコルビン酸(0.66g)をポリマー融液に添加した。140℃で5分間攪拌した後、ポリマー融液を型に流し込み、室温に冷却した。結果として生じたアスコルビン酸含有超分子ポリエチレングリコールは、硬質白色物質として得られ、HEPES(50mM)で緩衝化したpH=7.2の水の中に浸漬すると、この物質は、ゆっくりとアスコルビン酸を放出した。
【実施例32】
【0136】
分子量が1250Dのテレケリックヒドロキシ末端ポリカプロラクトン(3.04g)及びテレケリックヒドロキシ末端PEO−3000(5.67g)を、共に三つ口フラスコ内において、真空中で30分間、120℃に加熱し、続いて、5滴のジブチル錫ジラウレート及びUPy1(2.54g)を添加した。その後、この不均一反応混合液を、アルゴン雰囲気下にて機械式攪拌装置で攪拌し、150℃に加熱した。150℃で20分間攪拌した後、微粉砕した4−アセトアミノフェノール(309mg)を添加し、140℃で5分間攪拌を続けた。冷却後、2.7質量%の生物活性4−アセトアミノフェニオールを含む、硬質で半屈曲性の白色物質を得た。HEPES(50mM)で緩衝化したpH=7.2の水の中にこの物質を浸漬すると、生物活性化合物がゆっくりと放出されていった。
【0137】
生体吸収性超分子材料の生体適合性、生分解性及び生物活性に関する実施例
【実施例33】
【0138】
インビトロでの細胞培養:HamのF−12培地とDulbecco改変Eagle培地を1:1に混合した培地に10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したもので、3T3マウス線維芽細胞を培養した。加湿したインキュベーター内で、37℃、5%のCOにて、それらを培養した。前記物質上に細胞を播種する前に、PBS溶液で細胞を2回洗浄した。その後、トリプシン−EDTA溶液(細胞の処理をトリプシン−EDTAで行ったか又はEDTA溶液で行ったかには関係なく、αβインテグリンが細胞中に含まれていることを、FACS測定により確認した)で細胞のトリプシン処理を行い、PBSで洗浄し、トリパンブルー染色後、ノイバウエル血球計算盤で計数した。フィルム上の培養培地(FBS含有か又は非含有かについては、表示の通り)に細胞を播種した。細胞の継代数は常に10〜80であり、細胞の生存率は常に97%超であった。
【0139】
細胞接着及び細胞拡散実験:ポリスチレン製培養皿の底部、200μLの培地(FBS含有か又は非含有かについては、表示の通り)中のガラス上の、実施例29の超分子生物活性材料(29a、29b及び29c)を備えたカバーガラス、及び実施例14のポリマーを備えたカバーガラス上に、3T3マウス線維芽細胞(5〜10個/cm)を播種した。それらを室温で5分間インキュベートした後、1mLの培地(FBS含有か又は非含有かについては、表示の通り)を添加した。加湿したインキュベーター内で、37℃、5%のCOでの1〜2日間の培養中に、それらの細胞を光学顕微鏡法により調べてみた。
【0140】
異なる生物活性混合物(29a、29b及び29c;いずれの場合も、フィルムの調製に先立って4モル%のペプチドをポリマー溶液と混合した)、及び実施例14のポリマー上で、2日間、吸収した血清タンパク質を介した細胞接着を防止するためにFBS(ウシ胎仔血清)の非存在下でマウス3T3線維芽細胞を培養したところ、すべての試料について、すでに3時間後には特異的な接着が認められたが、細胞拡散はほとんど認められなかった。しかし1日後には、混合物29cに播種した細胞について、さらなる細胞拡散及び最高レベルの細胞接着が認められており、このことは、2つのUPyペプチドの相乗効果という可能性を示唆するものである。フィルム29a上では、1日後にはある程度の細胞が接着及び拡散していたが、混合物29cにおけるものほど効率的ではなかった。また、混合物29bでは、1日後の時点で拡散した細胞は、さらに少なかった。これは、PHSRNが相乗作用を引き起こす(synergistic)配列であるという事実によるものではないか、と提起されている。図1に示すように、異なるフィルムに関するこうした知見は、2日後も変わらなかった。
【実施例34】
【0141】
比較研究としての阻害実験:3T3マウス線維芽細胞(4〜10個/mL、FBS非含有培地)を、可溶性GRGDSペプチド(FBS非含有培地中に0.3mM)と共に室温で15分間インキュベートした。このインキュベーションステップ後、250μLのFBS非含有培地中の生物活性材料28c(各ペプチドを4モル%含む)に、細胞(6〜10個/cm)を播種した。コントロールの場合は、細胞(6〜10個/cm)をこうした可溶性GRGDSペプチドで前インキュベートしなかった。細胞播種後、室温で5分間細胞をインキュベートした。その後、FBS非含有培地を1mL添加した。加湿したインキュベーター内で、37℃、5%のCOにて1日間培養した後、それらを光学顕微鏡法で調べてみたところ、可溶性GRGDSペプチドで細胞をインキュベートしなかった場合は、フィルム28c上で1日後に細胞が接着及び拡散していた。しかし、可溶性GRGDSペプチドで細胞をインキュベートした後は、細胞の接着及び拡散は、1日後のフィルム24c上でほとんど検出できなかった。これは、細胞結合がインテグリン媒介性のものだという可能性を示すものである。
【実施例35】
【0142】
細胞結合強度及び細胞拡散可逆性実験:FBS無添加のフィルム28c(各ペプチドを4モル%含む)、FBSが存在するフィルム28c(同じく、各ペプチドを4モル%含む)、及びFBS(PS+FBS)が存在するポリスチレン製培養皿の底部という3つの異なる状況で、3T3マウス線維芽細胞(5〜10個/cm)を37℃、5%のCOにて1日間培養した後、トリプシン実験を行った。それらの細胞を、いずれもトリプシン−EDTA溶液中で室温にて30秒間及び30分間インキュベートした。トリプシン−EDTA溶液の除去後、細胞をPBS溶液で2回洗浄した。洗浄後に残った細胞を、加湿したインキュベーター内で、37℃、5%のCOにて、FBS非含有細胞培養培地中で1日間、再度インキュベートした。全プロセスにわたって、細胞をその都度光学顕微鏡法で調べた。
【0143】
FBS非含有の混合物28cで培養した細胞は、インキュベーションの1日後、FBSが存在する混合物28c又はポリスチレン(PS)製培養皿の底部で培養した細胞と外観が類似していた。こうした結果は、FBS中に存在する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質と同様の方式で、ペプチドが細胞接着及び拡散を促進したことを示すものである。しかし、トリプシン−EDTAを用いた細胞結合強度実験では、相違点が認められている。トリプシン−EDTAと共に30秒間インキュベートした後、FBS含有混合物28c上の細胞及びFBS含有PS上の細胞は、完全に分離した。これらの細胞をその後プレートから洗い流したところ、浮遊単細胞が多少残った。これに対し、トリプシン−EDTAと共に30分間インキュベートした後でさえ、FBSが存在しない混合物28c上の細胞は、依然として接着しており、浮遊細胞はほとんど観察されなかった。トリプシン−EDTAを除去し、線維芽細胞を洗浄した後、さらに1日インキュベートした場合には、再び細胞がFBS非含有の混合物28c上で拡散できるようになった。このことは、UPyペプチドが可逆的に作用可能であることを示唆している。こうしたトリプシン実験は、新規超分子材料のアプローチが強力な結合を可能にすること、しかし、その結合機序は、競合的ECMタンパク質にとって影響を受けやすいものであることを示している。
【実施例36】
【0144】
インビボでの移植:以下の4つの異なる溶液キャストフィルムを調製した:実施例18のペプチドを4モル%及び実施例14のポリマーを含む生物活性フィルム(すなわち、実施例36a)、実施例18のペプチドを4モル%、実施例19のペプチドを4モル%、及び実施例14のポリマーを含む生物活性フィルム(すなわち、実施例36b)、実施例14のポリマーからなるベア(bare)ポリマーフィルム(すなわち、実施例36c)、並びに実施例8のポリマーからなるベアポリマーフィルム(すなわち、実施例36d)。この場合は、カバーガラス上ではなくペトリ皿上で、フィルムのドロップキャスティングを行った。結果として生じたポリマーフィルムは、直径が6mmで、厚さは約0.4mmであった。それらをすべて雄のAlbino Oxford(AO)ラットにデュプリケートで皮下移植した。移植から2日後、5日後、10日後、21日後、及び42日後に、インプラントを周辺組織ごと取り出して、プラスチック(テクノビット7100、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を主成分とする低温硬化樹脂、Kulzer Histo-Technik社製)に包埋した。光学顕微鏡法での組織学的検査のため、トルイジンブルーで試料を染色した。
【0145】
インビボ移植後に観察された、両超分子材料間の相違点は、著しいものだった。5日目の時点で、実施例14及び8のポリマーの細胞浸潤は非常におだやかなものであり、小型の線維性被膜が形成され、これらの材料の不活性及び接着性を反映していた。しかし、混合物36a及び36bの場合は、脈管化及びマクロファージの浸潤が観察されており、これはインテグリン結合を介して細胞を動員することができるペプチドの存在によるものではないかと考えられている。他の顕著な相違点として、混合物36a及び36bの場合は、すでに5日後に大型の巨細胞が境界面から材料中に出てきているという事実がある。これは、UPy−GRGDS及びおそらくUPy−PHSRNペプチドが、マクロファージのシグナリング及び浸潤だけではなく、それらの巨細胞への融合においても、ある役割を担っている可能性を示している。
【0146】
巨細胞は、ベアポリマー中では検出されず、その細胞性応答は、42日目まではごくわずかなものであった。しかし、生物活性混合物36a及び36bの両方に対する組織性応答は、10日目以降にさらに活発なものとなり、ポリマーの分解が、周辺組織中に存在する巨細胞の食作用性活性によって示された。境界面の巨細胞は、42日目までは依然として食作用性活性をまったく示さなかったが、42日目以降は、進行中の分解が観察された。移植から21日後における結果を、図2で見ることができる。生物活性混合物とベアポリマーとの間の相違点は、明らかである。実施例8及び14のベアポリマーも、異なる挙動を示している。42日後、実施例8のポリマーは分解されており、動物内で再び見つけることはほとんど不可能であった。これは、ほとんど分解されていなかった実施例14のポリマーとは対照的である。実施例8のポリマーの線維性被膜は、実施例14のポリマーのものよりもかなり薄いものであった。
【実施例37】
【0147】
インビトロでの分解研究:試料を水で3回すすぎ、40℃で1.5時間乾燥させた後、質量測定法(試料の乾燥質量をザルトリウス微量天秤で測定した)、示差走査熱量測定法(DSC)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、リパーゼ酵素の存在下の緩衝液における実施例14のポリマーのフィルムの分解挙動について研究した。
【0148】
クロロホルム溶液からのドロップキャスティングによって実施例14のポリマーのフィルムを作製し、使用に先立って、真空中で35〜40℃にて2〜3日間乾燥させた。アジ化ナトリウム(0.05%)を補充したPBS溶液で1000倍に希釈したリパーゼ(Thermomyces lanuginosus由来、Aldrich社製)含有溶液中で、試料を37℃にて23日間振盪した。実施例14のポリマーをThermomyces lanuginosus由来のリパーゼで酵素分解している間に、ゲル浸透クロマトグラフィー法によって、鎖の切断が実証された。15日後には、すでに90%の質量放出が認められた。
【実施例38】
【0149】
実施例18のペプチド、及びUPy単位をもたないペプチドGRGDSの、実施例29aのフィルムからの抽出について、LC−MS測定で調べてみた。どちらの場合も、ポリマー材料に混合されたペプチドの量は4モル%である。異なる濃度のペプチドを用いた、ペプチドの親イオン(MS)の1個のフラグメントの定量により、キャリブレーションを行った。ICISアルゴリズムを用いて、対応するピーク(全イオン数における)の表面積を計算した。抽出実験を以下のように行った:1mLの水の中で、フィルムを37℃にて5分間インキュベートし、その後、水を除去して、ペプチド濃度を前記LC−MS手順(時点:5分)で測定した;別の水1mLをフィルムに添加して、その後、再度フィルムを37℃にて5分間インキュベートし、続いて水を除去してLC−MS法(時点:10分)で分析した;別の水1mLをフィルムに添加して、試料を37℃にて10分間インキュベートし、続いて水を除去してLC−MS法(時点:20分)で分析した;別の水1mL中で37℃にて20分間インキュベートし、続いて水を除去してLC−MS法(時点:40分)で分析した;及び、別の水1mL中で37℃にて40分間インキュベートし、続いて水を除去してLC−MS法(時点:80分)で分析した。
【0150】
これらの抽出実験は、UPy部分をもたないGRGDSの溶解が、37℃の水においては極めて急速に進行すること;5分以内に、ほとんどすべてのペプチドが溶解することを示している(表1)。総量が5mLの水中で、37℃でのインキュベーションを80分行った後では、GRGDSペプチドの全量(105%)が溶解している。4モル%のGRGDSを有するフィルムを、1mLの水中で37℃にて2時間インキュベートした場合も、GRGDSペプチドの全量(101%)が溶解している。実施例29aのフィルムからの、水を用いたUPy−GRGDSの抽出は、さらに遅々としたプロセスである。4モル%のUPy−GRGDSを含む実施例29aのフィルムを、総量が5mLの水中で37℃で80分間インキュベートした後では、最終的には76%のUPyペプチドが溶解している(表1)。しかし、4モル%のUPy−GRGDSを有するこのフィルムを、1mLの水中で37℃にて2時間インキュベートした場合は、64%のUPy−GRGDSが溶解している。これは、ペプチドのポリマーに対する調整可能ではあるが動的な結合にとって、UPy単位が重要であることを示すものである。
【0151】
[表1]UPy−GRGDSを有する実施例14のポリマーのフィルム(フィルム29a)又はGRGDSを有する実施例14のポリマーのフィルムに対する抽出実験:水中でのGRGDSペプチドの抽出は、UPy−GRGDSペプチドの抽出よりも、かなり急速なものである。
【表1】



【実施例39】
【0152】
生物活性材料mに対する安定性テスト:培地における実施例29a、29b及び29cの生物活性フィルムの安定性をテストするため、実施例33の細胞接着及び細胞拡散実験をすべて繰り返したが、今回は、細胞をポリマーに播種する前に、加湿したインキュベーター内で、37℃、5%のCOにて3時間、試料をFBS非含有培地(1mL)中でインキュベートした。このインキュベーションステップの後、試料をPBS溶液で2回洗浄し、加湿したインキュベーター内で、37℃、5%のCOにて1日間、細胞をこれらのフィルム上のFBS非含有培地中で培養した。細胞を光学顕微鏡法で調べてみた。その結果、以前に認められたものと類似した接着及び拡散パターンが認められた(図面、実施例33と比較のこと)。
【実施例40】
【0153】
実施例40:ヘパリン含有超分子ヒドロゲル
アクリルアミド水溶液(1.3mL;水に対して40%w/v)とビスアクリルアミド水溶液(0.6mL;水に対して2%w/v)とを混合した。この混合液を、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(トリス、1.2mL;0.4Mのトリス−HCl、pH8.8)及び水(1.5mL)で希釈し、続いて、実施例25の4H単位官能基化ヘパリン(123mg)を添加した。この混合液を80℃に加熱し、その後、アクリルアミド(0.20mL)に溶解させたUPy6(48mg)を添加した。過硫酸アンモニウム(50μL;最終濃度0.1%)及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED、2.5μL;最終濃度0.1%)を添加した後、混合液を重合した。その結果、4H単位で官能基化された部分を含み、実施例24の生物活性成分を2重量%含む、12%のアクリルアミドゲルを得た。
【実施例41】
【0154】
実施例41:UV硬化性超分子コーティング
ポリマーXI(2.5g)及びUPy6(1.5g)を、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA、1.0g)、Irgacure 907TM(150mg、スイス国、Ciba社より入手)と共に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、10g)に80℃で溶解させた。その後、ガラス製の基質上に100μmのフィルムを機械的に引き延ばし、照射時間0.3秒に相当するベルト速度10.4m/分にてFusion F600 D-bulb(I=5W/cm)を用いて、窒素雰囲気下でUV硬化させた。すぐれた機械的特性を備えた透明なコーティングを得た。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、インビトロでの細胞の接着及び拡散を示すものである。FBSの非存在下で細胞を2日間培養した後の、異なるドロップキャストフィルム(図1a:実施例29a、図1b:実施例29b、図1c:実施例29c、及び図1d:実施例14)上での、線維芽細胞(5〜10個/cm)の接着及び細胞拡散。いずれの場合も、4モル%のペプチドを実施例14のポリマーと混合した。光学顕微鏡法により、細胞をポリマーフィルム上で視覚化した;スケールバーは、100μmを表す。
【図2】図2は、超分子生物活性材料のインビボでの挙動を示すものである:実施例36a(図2a)及び36c(図2b)の溶液キャスト超分子生物活性フィルム、並びに実施例14(図2c)及び8(図2d)のベアポリマーを、雄のAOラットに皮下移植した。移植から21日後のフィルム及び周辺組織を示す。組織学的検査のため、試料をトルイジンブルーで染色した。拡大倍率は、200倍である。材料をmで示す。線維性被膜をcで示す。血管をvで示す。境界面から材料中へと出てきている巨細胞を、アスタリスク(*)で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含む超分子生体吸収性又は生物医学用材料:
(a)少なくとも2個の4H単位を含むポリマーであり、前記超分子材料が生体吸収性の場合は生体吸収性であるポリマー;及び
(b)生物活性化合物;
であって、
前記4H単位が、一般式(1)又は(2)
【化1】


[式中、C−X及びC−Y結合は、それぞれ一重又は二重結合を表し、nは4又はそれ以上であり、Xは、それらに結合した対応する一般的形態(2)を含有するH架橋形成モノマー単位と水素架橋を形成するドナー又はアクセプタを表し、Xがドナーを表す場合はYはアクセプタを表し、逆にXがアクセプタを表す場合はYはドナーを表す。]で表されることを特徴とする超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項2】
成分(a)が、3〜50個の4H単位を含むことを特徴とする請求項1記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項3】
成分(a)のMが、100〜100.000であることを特徴とする請求項1又は2記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項4】
成分(a)が、2個の末端ヒドロキシ基又は2個の末端第一級アミノ基を有するポリマーに由来することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項5】
2個の末端ヒドロキシ基又は2個の末端第一級アミノ基を有するポリマーのMが、500〜10000であることを特徴とする請求項4記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項6】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料が、第三の成分(c)を含み、該第三の成分(c)が、生体吸収性又は生物医学用ポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項7】
(c)が、1〜50個の4H単位を含むことを特徴とする請求項6記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項8】
成分(b)が、1〜4個の4H単位を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項9】
成分(b)が、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗腫瘍剤、抗血栓剤、ホルモン、免疫原性薬剤、成長因子、(蛍光)染色剤、造影剤、核酸、脂質、リポ多糖類、(多)糖類、ビタミン、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項10】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料が、該超分子生体吸収性又は生物医学用材料の総重量に対して50.00〜99.99重量%の成分(a)及び0.01〜50.00重量%の成分(b)を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項11】
超分子生体吸収性又は生物医学用材料が、該超分子生体吸収性又は生物医学用材料の総重量に対して20.00〜59.99重量%の成分(a)、0.01〜40.0重量%の成分(b)及び0.01〜40.00重量%の成分(c)を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の超分子生体吸収性又は生物医学用材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載の超分子生物医学用材料の、インプラント及び生物医学用コーティング組成物における使用、並びに薬剤の放出制御を目的とした使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか記載の超分子生物医学用材料を含む、生物医学用コーティング組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−539859(P2008−539859A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509958(P2008−509958)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050107
【国際公開番号】WO2006/118461
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505218096)スープラポリックス ビー.ブイ. (5)
【Fターム(参考)】