説明

モジュール構造物

【課題】内部構造物の取り付けを簡単に行うことができ、プラント運転時においてモジュール構成要素に発生する荷重を支持できるモジュール構造物を提供する。
【解決手段】モジュール構造物1は、互いに連結される四つの側壁部材10を下端部で床部材16に、上端部で天井部材33を取り付けている。床部材16は、アンカー部材20を裏面に設置した床鋼板19を、フレーム梁17,18の上面に接合している。側壁部材10は、モジュールスキッド11の内面に設置された壁鋼板12を有する。アンカー部材13が壁鋼板12の裏面に設けられる。内部空間に配置された機器27は、据付けボルト24をアンカー部材13に、据付けボルト25をアンカー部材20に結合させて取り外し可能に据付けられる。埋込金物31Aがモジュールスキッド11に直接取り付けられる。
配管34の支持部材33が埋込金物31Aに取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,モジュール構造物に係り、特に、原子力発電プラントの建屋、例えば原子炉建屋の建設に適用するのに好適なモジュール構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラント、例えば、原子力発電プラントの建設において、原子力発電プラントの建設期間を短縮するために、構造物をモジュール化することが行われている。このモジュール化された構造物を用いた原子力発電プラントの建設の例を以下に説明する。
【0003】
特開平4−293864号公報は、ビルディングモジュールを用いた原子力発電所建屋の建設方法を記載している。このビルディングモジュールは、多数の鉄骨架構にて、床部、複数の柱及び天井部の枠組みを構成し、この枠組みの内側に床、壁及び天井となる鉄板を貼り付けて構成される。ビルディングモジュールは、内部に、機器、配管、トレイ、ダクト及びサポート等の機械要素が予め据付けられている。並べて配置された複数のビルディングモジュールの相互間及びそれらの天井部分にコンクリートが打設される。壁及び天井の鉄板はコンクリート打設時に型枠として使用される。
【0004】
特開平10−266602号公報に記載されたモジュール構造物は、2つの側壁部及びこれらの側壁部に取り付けられた天井部を有し、原子力発電プラントの部屋を構成する。側壁部は、鉄骨柱の両面に型枠となる鉄板を取り付けて構成される。天井部は、複数の天井梁の上にデッキプレート(または天井鋼板型枠)を取り付けており、デッキプレート(または天井鋼板型枠)の上に鉄筋が配置され、天井梁には配管及びダクトが取り付けられている。隣り合うモジュール構造物の側壁部間、デッキプレート(または天井鋼板型枠)の上、及び側壁部の鉄板の間に、それぞれ、コンクリートが打設される。
【0005】
原子力発電プラントの制御棒駆動系水圧制御ユニット室(HCU)モジュールが、特開2003−66177号公報に説明されている。このHCUモジュールは、縦横に配置された複数の鉄骨構造物によってモジュールフレームを構成している。縦横に配置された複数のモジュールスキッドが各鉄骨構造物に取り付けられる。側壁を構成する鉄板補強材が鉄骨構造物及びモジュールスキッドに取り付けられる。HCUモジュールはHCU、ケーブルダクト及び配管を設置している。このHCUモジュールは床に配置されてレベルを微調整できる多数の回転伸縮型モジュール受支柱上に設置される。鉄板補強材は型枠として利用される。
【0006】
特開2003−13621号公報は、発電プラントに用いるモジュール構造物を記述している。このモジュール構造物は、複数の鉄骨柱及び複数の鉄骨梁でフレームを構成し、上部にデッキプレート(または天井鋼板型枠)を、内部に配管及びケーブルトレイをそれぞれ配置している。鉄骨梁の周囲に鉄筋が配置されてコンクリートが打設され、コンクリート壁が形成される。
【0007】
特開平7−198885号公報は、壁用鋼板ブロックを記載している(図12参照)。
この壁用鋼板ブロックは、H型鋼に配管の支持部材を取り付けている。さらに、特開平7−198885号公報は、H型鋼の間に配置された鋼板をH型鋼に取り付け、空調ダクトを形成する一枚の側板をH型鋼に取り付けて他の側板を鋼板に散りつける天井部の構造を、図6に記載している。
【0008】
【特許文献1】特開平4−293864号公報
【特許文献2】特開平10−266602号公報
【特許文献3】特開2003−66177号公報
【特許文献4】特開2003−13621号公報
【特許文献5】特開平7−198885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発電プラントの建屋内で床面に設置する機器は、床に埋設される支持構造物に設置されている。この支持構造物は、床のコンクリート打設時にコンクリート内に埋設する必要がある。このため、建屋の部屋内の各構造物を一体化して搬入するモジュール工法を採用する場合には、建屋の躯体との取合いの構造上、支持構造物のモジュールへの組込みが困難であった。
【0010】
据付け後に保守点検等分解を必要とする機器及び配管等の発電所内設備と建屋との取合いに関して、以下の事項が課題となる。
【0011】
発電プラントの設備及びプラント構造物を床及び壁の少なくとも一方の建屋躯体(以下、単に躯体という)に据付ける場合、基礎ボルト等の固定部材を先に躯体に埋設した後,設備及びプラント構造物をその固定部材に据付けることが考えられる。しかしながら、この据付け方法では、躯体側の基礎ボルト(支持構造物)と設備及びプラント構造物の固定用ボルト孔は、それぞれの製作精度が異なるため位置合わせが困難である。床だけであれば、躯体側の基礎ボルトの周囲をスリーブ等で取り囲み,設備及びプラント構造物の据付け後にそのスリーブと基礎ボルトの間にコンクリート又はモルタルを充填する調整方法が存在する。しかしながら、壁との取合いがある場合には,横方向にコンクリート(又はモルタル)を充填しようとすると、設備及びプラント構造物自体がコンクリート(またはモルタル)充填の阻害要因となる。したがって、コンクリート(又はモルタル)の充填作業が困難となる。この課題を解決するためには、壁側の基礎ボルトを設備及びプラント構造物と同時に据付けた後に、躯体となるコンクリートを打設する必要がある。しかしながら、通常の撤去される型枠を使用する場合では、設備及びプラント構造物自体が障害となり、型枠の設置及び撤去が困難になる。機器の、型枠と壁の取合い構造が成立しなくなる。また、設備及びプラント構造物によっては,点検時及び交換時には躯体から取り外す必要がある。しかしながら、特に、設備及び構造物が床及び壁の二面以上に据付けられる場合には、二方向以上で基礎ボルトとの取合いが生じるため、設備及びプラント構造物の取り外し及び取り付けができなくなる。
【0012】
床にコンクリート基礎台及び支持構造物を設けて設置する設備及びプラント構造物をモジュール構造物に組込むためには,その設備及びプラント構造物を支える鋼製のモジュールフレームを、設備及びプラント構造物よりも下方に設置する必要がある。この場合には、コンクリート基礎台とモジュールフレームが相互に干渉するため、モジュール構造物の据付ができなくなる。また、コンクリート基礎台を、鋼製として鋼製モジュールフレーム上に設置してモジュール構造物に組込んだ場合は、モジュールフレームが躯体から露出してしまう。これでは、通路性が非常に悪化すると共に、モジュールフレームにより床面上に区切られた空間が出来てしまうので排水性が確保されなくなる。特に、放射性物質を含む排水が発生する原子力発電プラント等の放射性物質取り扱い施設では、除染性が確保されなくなる。
【0013】
モジュール構造物の床部材及び壁部材のそれぞれに基礎ボルトを設置し、これらの基礎ボルトとナットを用いて、上記したように、設備及びプラント構造物を床部材及び壁部材の二面に取り付けることが考えられる。しかし、これでは、設備及びプラント構造物に形成された床部材側のボルト孔及び壁部材側のボルト孔に、床部材に設けられた基礎ボルト及び壁部材に設けられた基礎ボルトを挿入することができない。
【0014】
特開平10−266602号公報及び特開2003−13621号公報に記載されたモジュール構造物は、側壁部及び天井部を有し、内部に配管及びダクト(またはトレイ)を設置しており、機器の設置については言及していない。また、特開平4−293864号公報及び特開2003−66177号公報に記述されたモジュール構造物は、特開平10−266602号公報及び特開2003−13621号公報に記載された構造物以外に、機器を設置している。しかしながら、特開平4−293864号公報及び特開2003−66177号公報は機器の据付け構造を具体的には記述してはいない。
【0015】
本発明の第1の目的は、プラント運転時においてプラント構造物に加わる荷重を支持することができるモジュール構造物を提供することにある。
【0016】
本発明の第2の目的は、内部空間に配置されるプラント構造物の取り付けを簡単に行うことができ、プラント運転時において他のプラント構造物に加わる荷重を支持することができるモジュール構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した第1の目的を達成する発明の特徴は、型枠と、この型枠の一面に取り付けられた複数のフレーム部材と、フレーム部材に直接取り付けられた、第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物とを備え、
埋込金物の、フレーム部材に取り付けられていない一面が、型枠の他の面が向いている方向を向いていることにある。
【0018】
第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物が、フレーム部材に直接取り付けられているので、コンクリート打設により埋込金物のアンカー部が埋設されることとあいまってプラントの運転時に第1プラント構造物に加わる荷重(例えば、地震による荷重)を支持することができる。
【0019】
上記した第2の目的を達成するために、好ましくは、型枠の、フレーム部材が取り付けられた第1面とは反対側の第2面から突出していないアンカー部材が、型枠の第1面に取り付けられており、
アンカー部材には、第2面に第2プラント構造物を取り付ける着脱可能な締め付け装置が結合されることが望ましい。
【0020】
アンカー部材が、型枠の第1面に取り付けられ型枠の、第1面の反対側の第2面から突出していないので、第2プラント構造物を据付ける際、この第2プラント構造物を型枠の第2面に沿って移動させるとき、その第2プラント構造物が、第2プラント構造物の据付けに用いる締付け装置を結合するアンカー部材に衝突してその移動が阻害されることはなくなる。このため、第2プラント構造物のモジュール構造物への設置を、アンカー部材及びその締め付け装置を用いて簡単に行うことができる。
【0021】
上記した第1の目的は、床部材、床部材に取り付けられた複数の側壁部材、及びこれらの側壁部材に取り付けられた天井部材を備え、床部材、複数の側壁部材及び天井部材が、これらによって囲まれた内部空間を形成し、複数の側壁部材が内部空間に面する第1型枠をそれぞれ有し、床部材が内部空間に面する第2型枠を有し、天井部材が内部空間に面する第3型枠を有し、側壁部材が第1型枠よりも外側に配置されて第1型枠が取り付けられる第1フレーム部材を有し、床部材が第2型枠よりも外側に配置されて第2型枠が取り付けられる第2フレーム部材を有し、天井部材が第3型枠よりも外側に配置されて第3型枠に取り付けられる第3フレーム部材を有し、内部空間に配置された第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物が、第1フレーム部材、第2フレーム部材及び第3フレーム部材のうちの少なくとも1つに直接取り付けられていることによっても達成することができる。
【0022】
第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物が、第1フレーム部材及び第3フレーム部材のうちの少なくとも1つに直接取り付けられているので、プラントの運転時に第1プラント構造物に加わる荷重(例えば、地震による荷重)を支持することができる。
【0023】
上記した第2の目的を達成するために、好ましくは、アンカー部材が、第1型枠、第2型枠及び第3型枠のうち少なくとも一つの型枠の外側に配置されて少なくとも一つの型枠に取り付けられており、着脱可能な締め付け装置が内部空間側からアンカー部材に結合された状態で、内部空間に配置される第2プラント構造物が、アンカー部材を取り付けた型枠に設置されていることが望ましい。
【0024】
アンカー部材が型枠の外側に配置されて少なくとの一つの型枠に取り付けられているため、第2プラント構造物を据付ける際にこの第2プラント構造物を型枠の内面に沿って移動させるとき、その第2プラント構造物が、第2プラント構造物の据付けに用いる締付け装置を結合するアンカー部材に衝突してその移動が阻害されることはなくなる。このため、第2プラント構造物のモジュール構造物への設置を、アンカー部材及びその締め付け装置を用いて簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、プラント運転時において第1プラント構造物に加わる荷重をフレーム部材に直接取り付けられた埋込金物によって支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施例を、図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の好適な一実施例である実施例1のプラント用モジュール構造物を、図1〜図6を用いて説明する。本実施例のプラント用モジュール構造物(以下、単にモジュール構造物という)1は、1つの部屋を対象にしたモジュールであり、原子力発電プラントの原子炉建屋に用いられる。このモジュール構造物1は、図2に示すように、鉛直方向に伸びる複数の支柱鉄骨2、支柱鉄骨2の上端部にそれぞれ取り付けられて水平方向である一方向に伸びる複数の第1天井鉄骨3、及び両端部が対向する支柱鉄骨2の上端部に取り付けられて第1天井鉄骨3と直交して水平方向に伸びる複数の第2天井鉄骨4を備えている。モジュール構造物1は、さらに、モジュール構造物1の輸送用に用いられる複数の第1床鉄骨5及び複数の第2床鉄骨6を備えている。第1床鉄骨5は、第1天井鉄骨3と平行に配置されている。第2床鉄骨6は、その第1床鉄骨5と直交し、第2天井鉄骨4と平行に配置されている。第1天井鉄骨3の他端部は、後述のH型鋼であるモジュールスキッド(フレーム柱)11によって支えられる。各支柱鉄骨2は第1床鉄骨5の上に設置される。各第2床鉄骨6は対向して配置されている2つの第1床鉄骨5の間に配置され、各第2床鉄骨6の両端部はそれぞれの第1床鉄骨5に取り付けられている。支柱鉄骨2、第1天井鉄骨3及び第2天井鉄骨4は、原子炉建屋の強度部材である。
【0028】
モジュール構造物1は、さらに、複数の側壁部材10、床部材16及び天井部材21を備えている。互いに連結される四つの側壁部材10が四方に配置され、これらの側壁部材10の下端部に床部材16が取り付けられる。天井部材21はそれらの側壁部材10の上端部に取り付けられる。モジュール構造物1は、それらの側壁部材10、床部材16及び天井部材21に取り囲まれた内部空間である部屋26を形成している。少なくとも一つの側壁部材10には、部屋26内に出入りできる扉(図示せず)が設けられている。モジュール構造物1は、部屋(内部空間)26内に配置された機器(例えば、タンク等)27を設けている。部屋26内に配置された機器27は、プラント構造物(第2プラント構造物)である。モジュール構造物1は、第2プラント構造物及び後述の第1プラント構造物を有するルームモジュールである。機器27は、側壁部材10に対向する据付けフレーム28及び床部材16に対向する据付けフレーム29をそれぞれ有する。据付けフレーム28が据付けボルト24によって側壁部材10に取り付けられ、据付けフレーム29が据付けボルト25によって床部材16に取り付けられる。側壁部材10、床部材16及び天井部材21のそれぞれを構成する構成要素(例えば、フレーム梁、フレーム柱等)は、鋼製である。
【0029】
床部材16は、複数のフレーム梁(フレーム部材)17、複数のフレーム梁18、床鋼板19及び複数のアンカー部材20を有する。各フレーム梁17は第1床鉄骨5と平行に配置され、各フレーム梁18はフレーム梁17と直交する方向、すなわち、第2床鉄骨18と平行に配置される。各フレーム梁17と各フレーム梁18は、互いに溶接されて格子を形成している。フレーム梁17は第1床鉄骨5の上に設置される。床鋼板19が各フレーム梁17,18の上面に溶接にて取り付けられる。複数のアンカー部材20が所定の位置で床鋼板19の裏面に取り付けられている。これらのアンカー部材20は、床鋼板19に対して垂直になっており、部屋26内に突出していない。床部材16の中央部には、床鋼板19が設置されていない。フレーム梁17,18はH型鋼である。
【0030】
側壁部材10は、フレーム柱である複数のモジュールスキッド(フレーム部材)11、壁鋼板12及び複数のアンカー部材13を有する。各モジュールスキッド11は、相互に所定の間隔をもって水平方向に並んで配置され、フレーム梁17の上面に溶接にて接合されている。各モジュールスキッド11の上端は、第1天井鉄骨3の下面に溶接にて接合されている。壁鋼板12が、モジュールスキッド11に取り付けられ、モジュールスキッド1よりも内側に位置している。壁鋼板12はモジュール構造物1内に形成される部屋26に面している。複数のアンカー部材13が所定の位置で壁鋼板12の裏面に取り付けられている。これらのアンカー部材13は、壁鋼板12に対して垂直に配置され、部屋26内に突出していない。
【0031】
天井部材21は、複数のフレーム梁22及びデッキプレート23を有する。各フレーム梁22は平行に配置されて隣り合う第1天井鉄骨3に取り付けられる。デッキプレート23はフレーム梁22の上面に設置される。デッキプレート23の替りに天井鋼板型枠を用いてもよい。壁鋼板12の上端部はフレーム梁22に溶接されている。フレーム梁22はH型鋼である。
【0032】
アンカー部材13,20の詳細な構成を、図3を用いて説明する。アンカー部材13及び20は同じ構造を有しているため、アンカー部材13を例にとって説明する。アンカー部材13は円筒状の連結部材15及びアンカーボルト14を有する。連結部材15は内側にネジが形成されている。アンカーボルト14は連結部材15のネジと噛み合うネジ部を有する。アンカーボルト14は連結部材15の一端から連結部材15内に挿入され、それぞれのネジが噛み合わされる。連結部材15の長さの約半分まで、アンカーボルト14が挿入される。この状態で、アンカーボルト14は連結部材15に固定される。連結部材15とアンカーボルト14が一体化されたアンカー部材13は、所定の位置で壁鋼板12の裏面に固定される。すなわち、連結部材15の他端(アンカーボルト14が挿入されていない端)が壁鋼板12の裏面を向いた状態で、連結部材15が壁鋼板12の裏面に取り付けられている。開口部35が、連結部材15の中心線の延長線上で、壁鋼板12に形成される。開口部35は、アンカー部材13ごとに設けられ、連結部材15のネジ孔と対向している。アンカー部材13は壁鋼板12よりも部屋26側に突出していない。
【0033】
アンカー部材20も、アンカー部材13と同様に、連結部材15にアンカーボルト14を噛み合わせることによって構成される。アンカー部材13の連結部材15の一端が床鋼板19の裏面を向いた状態で、その連結部材20が床鋼板19の裏面の所定位置に固定されている。開口部35が、連結部材15の中心線の延長線上で、床鋼板19にも形成される。床鋼板19の開口部35は、アンカー部材20ごとに設けられ、その連結部材15のネジ孔と対向している。
【0034】
アンカー部材13,20は、連結部材15とアンカーボルト14を組み合わせて構成したが、同じ構成を一つの部材を用いて構成することも可能である。
【0035】
これらのアンカー部材13,20の、壁鋼板12及び床鋼板19への取り付け方法を、図4を用いて説明する。アンカー部材13の取り付けを例にとって説明する。アンカー部材13の取り付け位置及びその個数は、機器27の据付けフレーム28に形成された、据付けボルト24の挿入用の貫通孔の位置及びその貫通孔の個数によって決まる。アンカー部材13を壁鋼板12に取り付けるために、図4に示す位置決め用冶具42を用いる。位置決め用冶具42には、据付けフレーム28に形成された上記貫通孔の位置及び個数に対応して所定個数のアンカー部材13を配置する位置が定められている。上記貫通孔の個数と同じ数の開口部35が、壁鋼板12に既に形成されている。所定個数のアンカー部材13をそれぞれの所定位置に保持した位置決め用冶具42を、壁鋼板12の裏面の所定位置に置き、各アンカー部材13の連結部材15を壁鋼板12の裏面に順次取り付ける。位置決め用冶具42を用いることによって、アンカー部材13,20の、壁鋼板12、床鋼板19への位置決め精度が向上し、アンカー部材13,20の取り付け精度が向上する。各アンカー部材20はフレーム梁17,18と干渉しない位置に取り付けられる。
【0036】
アンカー部材13の取り付け位置及びその個数は、機器27の据付けフレーム28に形成された、据付けボルト24の挿入用の貫通孔の位置及びその貫通孔の個数によって決まる。所定個数のアンカー部材13が、位置決め用冶具42を用いることによって壁鋼板12の裏面に順次取り付ける。各アンカー部材13は据付け時に他の部材と干渉しない位置に取り付けられる。
【0037】
機器27は、二面に据付けられる設備であって、本実施例では前述したように床部材16及び一つの側壁部材10にサポート30によって据付けられている。この据付けは、以下のようにして行われる。機器27の据付けフレーム29は、これに設けられた上記の貫通孔が床鋼板19の開口部35に一致するように、床部材16上に置かれる。また、機器27の据付けフレーム28も、これに設けられた上記の貫通孔が壁鋼板12の開口部35に一致させられる。この状態で、所定個数の据付けボルト(締め付け装置)24のそれぞれが、据付けフレーム29に形成された各貫通孔及び該当する開口部35を通って各アンカー部材20の連結部材15のネジ孔内に挿入される。据付けボルト25を回すことによって据付けボルト25のネジが連結部材15のネジと噛み合い、据付けフレーム29が床部材16に着脱可能に固定される。また、所定個数の据付けボルト(締め付け装置)24のそれぞれが、据付けフレーム28に形成された各貫通孔及び該当する開口部35を通って各アンカー部材13の連結部材15のネジ孔内に挿入される。据付けボルト24のネジをアンカー部材13の連結部材15のネジと噛み合わされることによって、据付けフレーム28が側壁部材10に着脱可能に固定される。
【0038】
モジュール構造物1は、さらに、部屋26内に配管(またはダクト)34を配置している。この配管34は、原子力発電プラントの配管であって、支持部材33に取り付けられる。配管34内には、水(例えば、制御棒駆動機構の駆動水)が流れる。支持部材33の設置構造を、図1、図5及び図6を用いて詳細に説明する。部屋26内に設置された配管(またはダクト)34は管路部材である。埋込金物31Aがモジュールスキッド11の一面に溶接により接合されている。複数のアンカーボルト32Aが埋込金物31Aの裏面に設置される。支持部材33は埋込金物31Aの表面に溶接にて取り付けられている。埋込金物31Aのモジュールスキッド11への取り付け箇所において、壁鋼板12は、図5に示すように、切り欠きを形成しているので、埋込金物31Aをモジュールスキッド11に、直接、溶接することができる。側壁部材10の隣り合う壁鋼板12は、これらの相互間に隙間G(図7参照)が形成されるように、モジュールスキッド11の一面に溶接される。このような隙間Gは、床部材16の隣り合う床鋼板19のフレーム梁17,18への溶接による接合箇所においても形成される。モジュールスキッド11の一面に溶接された他の埋込金物31Aに取り付けられる他の支持部材33に、ケーブルを収納するトレイ(図示せず)を設置することも可能である。モジュール構造物1に設けられる配管、ダクト(例えば、排気ダクト)及びトレイも、プラント構造物であり、第1プラント構造物と称する。
【0039】
複数の中間床支持部材43が、部屋26内で高さ方向における中間の位置に配置される。中間床支持部材43の両端部がそれぞれ溶接される埋込金物31Bが、埋込金物31Aと同様に、モジュールスキッド11の一面に溶接にて接合される。埋込金物31Bの裏面にも複数のアンカーボルト32Bが取り付けられている。それらの中間床支持部材43の上面に、操作床となるグレーチング38が設置される。支持部材37A,37Bの各下端部が中間床支持部材43に取り付けられ、支持部材37A,37Bの各上端部が別々のフレーム梁22に溶接にて接合される。支持部材37A,37Bには、水平方向に伸びる複数の支持部材39がそれぞれ取り付けられる。複数の配管40が支持部材39に取り付けられる。フレーム梁22に取り付けられる支持部材41も、配管40を支持する。
【0040】
機器27及び配管34が設置さられたモジュール構造物1を用いた原子炉建屋の建設方法を例にとって、建屋の建設方法を以下に説明する。モジュール構造物1は、工場で組み立てられて原子炉建屋の建設現場まで搬送される。モジュール構造物1が大きくなって工場からの搬送が困難な場合には、必要な各部品は工場で製造し、原子力発電所の敷地内、例えばその建設現場付近で、それらの部品を用いてモジュール構造物1を組み立てても良い。
【0041】
モジュール構造物1が置かれる、原子炉建屋となる部分の所定位置まで、コンクリートが打設されている。モジュール構造物1は、床部材16を下側にした状態で、クレーンを用いて原子炉建屋となる部分の所定位置に置かれる。その際、モジュール構造物1の輸送用に用いられた第1床鉄骨5及び第2床鉄骨6が、モジュール構造物1から取り外される。支柱鉄骨2の下端部は、この支柱鉄骨2の下方に位置して上端部を除いてコンクリートに埋設されている他の支柱鉄骨の上端部に結合される。
【0042】
天井部材21の上方、すなわち、デッキプレート23の上方には、図示されていないが鉄筋が配置されている。さらに、四方に位置する各側壁部材10の外側で、各壁鋼板12にそれぞれ対向して4つの木製型枠36が配置される。図1は、これらの木製型枠36のうち1つの木製型枠36のみを示している。木製型枠36はモジュール構造物1に設置されていない。この木製型枠36は、モジュール構造物1を原子炉建屋となる部分の所定位置に置いた後、コンクリート打設前に設置される。壁鋼板12と木製型枠36の間隔は、所定の寸法に設定されている。コンクリートが、天井部材21の上方、及び各側壁部材10の外側に打設される。側壁部材10の外側へのコンクリートの打設は、壁鋼板12と木製型枠36の間にコンクリートを注入することにより行われる。床にコンクリートが打設されると、フレーム梁17,18及びアンカー部材20がコンクリート内に埋設されてしまう。モジュールスキッド11、壁鋼板12に取り付けられたアンカー部材13、及び支柱鉄骨2も、壁鋼板12と木製型枠36の間に打設されたコンクリート内に埋設される。デッキプレート23よりも上方に所定厚みのコンクリートが打設される。第1床鉄骨5及び第2床鉄骨6も打設されたコンクリート内に埋設される。壁鋼板12、デッキプレート23及び床鋼板19は、コンクリート打設のための型枠として使用される。デッキプレート23の替りに天井鋼板型枠を用いた場合には、天井鋼板型枠が天井部分の型枠として使用される。
【0043】
打設したコンクリートが固まった後、アンカー部材20は、床鋼板19のアンカーとしての機能、及び据付けボルト25と共に機器27を据付ける機能を発揮する。アンカー部材13も、壁鋼板12のアンカーとしての機能、及び据付けボルト24と共に機器27を据付ける機能を発揮する。
【0044】
本実施例は、配管34等の第1プラント構造物を、支持部材33を介して、モジュールスキッド11に直接取り付けられた埋込金物31Aに支持しているので、モジュール構造物1の搬送時には、第1プラント構造物の荷重をモジュールスキッド11で保持することができる。また、モジュール構造物1を用いた原子炉建屋が完成した状態では、モジュールスキッド11に直接取り付けられた埋込金物31Aのアンカーボルト32A及びこのモジュールスキッド11が固まったコンクリート中に埋設されている。このため、原子力発電プラントの運転時において、アンカー部材が型枠の外面に取り付けられているため、第2プラント構造物を据付ける際にこの第2プラント構造物を型枠の内面に沿って移動させるとき、その第2プラント構造物が、第2プラント構造物の据付けに用いる締付け装置を結合するアンカー部材に衝突してその移動が阻害されることはなくなる。このため、第2プラント構造物のモジュール構造物への設置を、アンカー部材及びその締め付け装置を用いて簡単に行うことができる。さらに、第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物が、第1フレーム部材及び第3フレーム部材のうちの少なくとも1つに直接取り付けられているので、プラントの運転時に第1プラント構造物に加わる荷重を支持することができる。
【0045】
本実施例は、アンカー部材13が壁鋼板12の裏面に、アンカー部材20が床鋼板19の裏面にそれぞれ設置され、各アンカー部材が各鋼板の表面に突出していないため、側壁部材10、床部材16及び天井部材21のうち少なくとも二つの部材に据付ける必要のある内部構造物、具体的には機器27のモジュール構造物1への据付けが簡単に行える。具体的に説明すると、機器27の据付けフレーム29の下面を、例えば床鋼板19の上面近傍で水平方向に移動させて、据付けフレーム29に形成された、据付けボルト25を挿入する各貫通孔を床鋼板19に形成された開口部35に合わせることができる。据付けフレーム29の下面が床鋼板19の上面に接触した状態で、各貫通孔が各開口部35の位置からずれている場合には、据付けフレーム29を床鋼板19に接触させた状態で機器27を動かすことにより、その貫通孔と開口部35の位置合せが簡単に行える。この状態で、据付けフレーム28の側面を壁鋼板12に直接接触させることができ、据付けフレーム28に形成された、据付けボルト24を挿入する各貫通孔を壁鋼板12の開口部39に簡単に合せることができる。そして、前述したように、据付けボルト25がアンカー部材20の連結部材15に、据付けボルト24がアンカー部材13の連結部材15にそれぞれ簡単に噛み合わされるので、機器27のモジュール構造物1の二面への据付けが簡単に行える。本実施例では、機器27を据付け位置に合わせる際に、アンカー部材13が壁鋼板12より内側に突出していなく、アンカー部材20が床鋼板19より内側に突出していないので、機器27がアンカー部材13,20に衝突して機器27の移動が阻害されるという問題は発生しない。したがって、上記したように、機器27のモジュール構造物1の二面への据付けを簡単に行うことができる。
【0046】
本実施例は、モジュール構造物の床部材及び壁部材のそれぞれに基礎ボルトを設置し、これらの基礎ボルトとナットを用いた従来例のプラント設備の据付けの際における問題点を解消できる。
【0047】
また、モジュール構造物1の据付け後の、原子力発電プラントの定期検査時において、機器27の保守点検を行う場合には、据付けボルト24,25を取り外す。これにより、機器27の搬送が可能になり、機器27の保守点検を簡単に行うことができる。保守点検が終了した機器27のモジュール構造物1への据付けも、前述したように簡単に行える。据付けボルト24,25の締め付け力は、アンカー部材13,20を介してコンクリートに伝えることができる。
【0048】
天井部材21は、各支柱鉄骨2、各第1天井鉄骨3及び各モジュールスキッド11、及びによって支持されているので、これらの部材が、コンクリート打設時においてデッキプレート23の上方に打設されたコンクリートの荷重を支えることができる。このため、デッキプレート23上方へのコンクリート打設、及び各側壁部材10外側へのコンクリート打設を並行して行うことができ、原子力発電プラントの建設期間を短縮することができる。特に、従来必要とした、天井部へのコンクリート打設前における、打設された壁コンクリートの養生期間が不要になる。
【0049】
本実施例は、複数のアンカーボルト(アンカー部材)32Aが取り付けられた埋込金物31Aをモジュールスキッド11の表面に、直接、取り付けており、この埋込金物31Aに取り付けられた支持部材33によって配管(またはダクト)34等の第1プラント構造物を支持している。このため、モジュール構造物1の搬送時には、第1プラント構造物の荷重をモジュールスキッド11で保持することができる。また、原子力発電プラントの運転時において配管34に発生する配管34の熱膨張、及び内部を流れる流体の重さ等によって、配管34に加わる荷重は、モジュール構造物1の輸送時において配管34に加わる荷重よりも極めて大きくなる。プラント運転時において地震が発生した場合には、配管(またはダクト)34及びトレイに極めて大きな荷重が加わる。しかしながら、本実施例は、モジュール構造物1を用いた原子炉建屋が完成した状態では、モジュールスキッド11に直接取り付けられた埋込金物31Aのアンカーボルト32A及びこのモジュールスキッド11が固まったコンクリート中に埋設される。したがって、本実施例は、埋込金物31Aを含むそのような配管(またはダクト)及びトレイの支持構造を採用することによって、プラント運転時において大きな荷重が加わる配管(またはダクト)34及びトレイ等の第1プラント構造物を容易に支持することができる。プラント運転時において第1プラント構造物、例えば配管34に加わる大きな荷重は、支持部材33を介して埋込金物31Aに伝えられ、さらに、コンクリートに埋設しているモジュールスキッド11及びアンカーボルト32Aに伝えられる。このようにモジュールスキッド11及びアンカーボルト32Aに荷重が伝えられるので、プラント運転時に大きな荷重を発生する配管34の支持が可能になる。壁鋼板12の補強材の設置が著しく低減される。
【0050】
プラント運転時に発生する荷重が小さい配管等に対しては、この配管の支持構造物を、埋込金物を用いずにモジュールスキッド11の表面に直接取り付けることも可能である。
【0051】
本実施例は、隣り合う壁鋼板12を相互間に隙間Gを形成するようにモジュールスキッド11の表面に取り付けているので、モジュール構造物1の製造時において、これらの壁鋼板12の位置調整を容易に行うことができる。この隙間Gは床鋼板19をフレーム梁17,18に取り付ける際にも形成されるので、床鋼板19の位置調整が容易になる。したがって、壁鋼板12のモジュールスキッド11への接合に要する時間、及び床鋼板19のフレーム梁17,18への接合に要する時間を著しく短縮することができる。これは、モジュール構造物1の製造時間を短縮させることに貢献する。
【0052】
本実施例は、モジュールスキッド11を壁鋼板12の外側に配置して原子炉建屋のコンクリート壁内に埋設することができるので、内部に形成される部屋26を広くすることができる。
【0053】
本実施例は、各支柱鉄骨2を、第1床鉄骨5によってそれぞれ床部材16、具体的には、フレーム梁17等に取り付けている。このため、支柱鉄骨2の下端部を床部材16に結合させて固定できるので、モジュール構造物1の移送が容易になる。本実施例では、側壁部材10の外側等へのコンクリートの打設前でモジュール構造物1を原子炉建屋となる部分の所定位置に置くときに、第1床鉄骨5及び第2床鉄骨6をモジュール構造物1から取り外している。しかしながら、第1床鉄骨5及び第2床鉄骨6を取り外さないで、床部材16と共にコンクリート内に埋設することも可能である。この場合には、第1床鉄骨5及び第2床鉄骨6を取り外さないので、コンクリートの打設開始を早めることができ、原子炉建屋の建設期間を短縮することができる。
【0054】
第1プラント構造物は、天井部材に取り付けられる場合もある(図8参照)。天井部材21Aは、フレーム部材46、天井鋼板型枠45及び埋込金物31Cを有する。第1プラント構造物の天井部材21Aへの取り付けは、以下のように行われる。デッキプレートの替りに天井鋼板型枠45が用いられる。フレーム梁22と直交する方向に伸びる複数のフレーム部材46がフレーム梁22の上に設置される。このフレーム部材46とフレーム梁22の間に配置された複数の天井鋼板型枠45が、側壁部材10の壁鋼板12と同様に、フレーム部材46に接合される。上方に向って伸びるアンカーボルト32Cが取り付けられた埋込金物31Cが、フレーム部材46の下面に直接接合される。この埋込金物31Cの下面に支持部材48を設置し、この支持部材48に配管、ダクト及びトレイの少なくとも1つを取り付ける。図8は、支持部材48に配管(第1プラント構造物)49を取り付けた状態を示している。天井鋼板型枠45は、図7に示すように、相互間に隙間Gが形成されるように、そのフレーム部材46の下面に接合される。このような支持構造を採用することによって、プラント運転時において大きな荷重が加わる、天井部材21Aに支持される第1プラント構造物を支持することができる。コンクリートは、天井鋼板型枠45の上に打設される。天井部材21の替りに天井部材21Aを用いる場合には、そのような埋込金物は、第1プラント構造物の配置に応じて側壁部材10、床部材16及び天井部材21に設けられた各フレーム部材のうち少なくとも1つに直接取り付けることが可能である。なお、図8に示すモジュール構造物において、天井鋼板型枠45を、図1に示すデッキプレート23に変更することも可能である。デッキプレート23を用いた場合でも、埋込金物31Cは、フレーム部材46の下面に直接接合される。
【実施例2】
【0055】
本発明の他の実施例である実施例2のプラント用モジュール構造物を、図9を用いて説明する。本実施例のモジュール構造物1Aは、実施例1のモジュール構造物にさらに埋込金物31D,31Eを取り付けた構造を有する。埋込金物31D,31Eはそれぞれ床部材16のフレーム梁17の上面に直接接合されている。支持部材50が埋込金物31D,31Eに設置される。第1プラント構造物である配管51が支持部材50に取り付けられる。配管51は機器27の前方に配置されている。モジュール構造物1Aの他の構造は、モジュール構造物1と同じ構造である。
【0056】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0057】
デッキプレート23を有する天井部材21を用いる場合には、埋込金物31A,31B,31Dまたは31Eを第1プラント構造物の配置に応じて側壁部材10または床部材16に設けられたフレーム梁に直接取り付けることも可能である。アンカー部材13は、第2プラント構造物の配置に応じて側壁部材10、床部材16及び天井部材21のうちの少なくとも一つに設けることが可能である。
【0058】
部屋26内に第2プラント構造物が配置されなく第1プラント構造物が配置される場合には、モジュール構造物1Aの側壁部材10、床部材16及び天井部材21に、アンカー部材13及び20が設置されない(例えば、図10及び図11を参照)。埋込金物は、部屋26内での第1プラント構造物の設置する位置に応じて、該当する側壁部材10、床部材16及び天井部材21のモジュールスキッド及びフレーム梁に直接取り付けられる。
【実施例3】
【0059】
実施例1及び2の各モジュール構造物は、原子炉建屋内の1つの部屋を対象にしたルームモジュールである。しかしながら、原子炉建屋においては、部屋の1つの側壁部材10、1つの床部材16及び1つの天井部材21をそれぞれモジュール構造物とし、これらのモジュール構造物を別々に使用する場合もある。
【0060】
本発明の他の実施例である実施例3のプラント用モジュール構造物を、図10を用いて説明する。本実施例のモジュール構造物1Bは、1つの側壁部材10のモジュール構造物である。モジュール構造物1Bは、実施例1のモジュール構造物1の側壁部材10を単体でモジュール構造物にしたものである。モジュール構造物1Bは、第2プラント構造物を配置しない部屋26Aの1つの側壁の位置に配置して使用される。このため、モジュール構造物1Bは、モジュール構造物1の側壁部材10に設けられたアンカー部材13が設置されていない。
【0061】
モジュール構造物1Bを用いた、原子炉建屋内の部屋の構築について説明する。モジュール構造物1Bは、クレーンを用いて、該当する部屋26Aの1つの側面に配置される。その部屋26Aの床の部分までは既にコンクリートが打設されている。モジュール構造物1Bはこのコンクリート床の上に配置される。壁鋼板12の外側でこの壁鋼板12と対向して1つの木製型枠が配置される。壁鋼板12と木製型枠の間の間隔は、所定の壁の厚みになるように設定されている。部屋26Aの他の3つの側壁53の位置には、それぞれ対になった木製型枠が配置される。天井54の位置にも木製型枠が配置される。これらの木製型枠と共に鉄筋も配置される。1つの側壁53の位置に配置された壁鋼板12と木製型枠の間、他の3つの側壁53のそれぞれの位置に配置された対になった木製型枠の間、及び天井54の木製型枠の上方に、それぞれコンクリートが打設される。埋込金物31Aに取り付けられたアンカーボルト32Aは、コンクリートに埋設される。
【0062】
打設されたコンクリートが固まった後、壁鋼板12以外の全ての木製型枠が取り外される。このようにして、床52、4つの側壁53及び天井54によって取り囲まれた部屋26Aが形成される。モジュール構造物1Bの支持部材33に配管(またはダクト)34が取り付けられる。支持部材33は埋込金物31Aに取り付けられている。配管(またはダクト)34は、モジュール構造物1Bの構成要素として、予め支持部材33に取り付けてもよい。木製型枠の替りに鋼板型枠を用いてもよい。特に、天井部は型枠となるデッキプレートを用いることが望ましい。
【0063】
本実施例のモジュール構造物1Bは、実施例1で得られる効果、すなわち、プラント運転時において大きな荷重が加わる配管(またはダクト)34及びトレイ等の第1プラント構造物を容易に支持することができるという効果を得ることができる。
【0064】
部屋26Aを取り囲む4つの側壁53の少なくとも1つの側壁53において、この側壁の、部屋26Aに面する側面にモジュール構造物1Bを配置することができる。配置されるこのモジュール構造物1Bの個数は、部屋26A内における第1プラント構造物の配置に応じて決定される。
【0065】
モジュール構造物1Bの支持部材33に配管(またはダクト)34が予め取り付けられている場合には、型枠に用いている壁鋼鈑12に直接荷重を伝達することなくモジュール構造物1Bの輸送中において配管(またはダクト)34等の第1プラント構造物をモジュールスキッド11で直接支持することが可能である。したがって、第1プラント構造物を取り付けたモジュール構造物1Bの輸送が容易になる。
【0066】
部屋26A内に第2プラント構造物が配置される場合には、モジュール構造物1Bの壁鋼板12の裏面に、実施例1と同様に、アンカー部材13を取り付けるとよい。
【実施例4】
【0067】
本発明の他の実施例である実施例4のプラント用モジュール構造物を、図11を用いて説明する。本実施例のモジュール構造物1Cは、床部材16のモジュール構造物である。モジュール構造物1Cは、実施例2のモジュール構造物1Aの床部材16を単体でモジュール構造物にしたものである。モジュール構造物1Cは、第2プラント構造物を配置しない部屋26Bの床の位置に配置して使用される。このため、モジュール構造物1Cは、モジュール構造物1Aの床部材16に設けられたアンカー部材20が設置されていない。
【0068】
モジュール構造物1Cを用いた、原子炉建屋内の部屋の構築について説明する。モジュール構造物1Cは、クレーンを用いて、該当する部屋26Bの床部分に配置される。モジュール構造物1Cの床鋼板19の下方にコンクリートが打設される。埋込金物31D,31Eに取り付けられたアンカーボルト32D,32Eは、コンクリートに埋設される。床へのコンクリートの打設が終了した後、部屋26Bを取り囲む4つの側壁に位置に、向かい合って配置される対の木製型枠がそれぞれ配置され、木製型枠間には鉄筋が配置されている。これらの木製型枠間にコンクリートが打設される。その後、部屋26Bの天井54の位置に木製型枠及び鉄筋が配置され、この木製型枠の上にコンクリートが打設される。このようにして、床52、4つの側壁53及び天井54によって取り囲まれた部屋26Bが形成される。モジュール構造物1Cの支持部材50に配管(またはダクト)51が取り付けられる。支持部材50は埋込金物31D,31Eに取り付けられている。配管51は、モジュール構造物1Cの構成要素として、予め支持部材50に取り付けてもよい。木製型枠の替りに鋼板型枠を用いてもよい。特に、天井部は型枠となるデッキプレートを用いることが望ましい。
【0069】
本実施例のモジュール構造物1Cは、実施例2で得られる効果、すなわち、プラント運転時において大きな荷重が加わる配管(またはダクト)51及びトレイ等の第1プラント構造物を容易に支持することができるという効果を得ることができる。
【0070】
部屋26Bを取り囲む4つの側壁53の少なくとも1つの側壁53において、この側壁の、部屋26Aに面する側面に実施例3のモジュール構造物1Bを配置することができる。配置されるこのモジュール構造物1Bの個数は、部屋26B内における第1プラント構造物の配置に応じて決定される。
【0071】
部屋26B内に第2プラント構造物が配置される場合には、モジュール構造物1Cの床鋼板19の裏面に、実施例1と同様に、アンカー部材13を取り付けるとよい。
【0072】
図8に示す天井部材21Aを単体でモジュール構造物にすることもできる。このモジュール構造物は、実施例3及び4で述べた部屋26Aまたは26Bの天井54に配置してコンクリートを打設することができる。その際、このモジュール構造物は、モジュール構造物1B及び1Cの少なくとも1つと組み合わせて用いることができる。天井部材21A単体のモジュール構造物は、単体で使用することもできる。天井部材21A単体のモジュール構造物が面する部屋内に第2プラント構造物が配置され、このモジュール構造物にその第2プラント構造物を据付ける必要がある場合には、このモジュール構造物の天井鋼板型枠45の裏面に、実施例1の側壁部材10と同様に、アンカー部材13を取り付けるとよい。
【0073】
上記の各実施例はモジュール構造物1を原子炉建屋に適用したものであるが、モジュール構造物1は原子力発電プラントのタービン建屋及び放射性廃棄物建屋に用いることができる。さらに、モジュール構造物1は、火力発電プラントの建屋にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のプラント用モジュール構造物の構成を示し、図2のI−I断面図である。
【図2】図1に示すプラント用モジュール構造物の斜視図である。
【図3】図1に示すアンカー部材の詳細構成図である。
【図4】位置決め用冶具を用いてのアンカー部材を取り付ける方法を示す説明図である。
【図5】図1に示す埋込金物付近のV−V矢視図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図6のVII部の拡大図である。
【図8】図1に示す天井部材の他の構造例を示す縦断面図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例2のプラント用モジュール構造物を示す断面図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例3のプラント用モジュール構造物を示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例4のプラント用モジュール構造物を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1,1A,1B,1C…モジュール構造物、2…支柱鉄筋、3…第1天井鉄筋、10…側壁部材、11…モジュールスキッド(フレーム柱)、12…壁鋼板、13,20…アンカー部材、14,32A,32B,32C,32D,32E…アンカーボルト、15…連結部材、16…床部材、17,18,22…フレーム梁、19…床鋼板、21,21A…天井部材、23…デッキプレート、24,25…据付けボルト、26,26A,26B…部屋、27…機器、28,29…据付けフレーム、31A,31B,31C,31D,31E…埋込金物、33,37A,37B,39,48,50…支持部材、34,39,49…配管、45…天井型枠鋼板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠と、前記型枠の一面に取り付けられた複数のフレーム部材と、前記フレーム部材に直接取り付けられた、第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物とを備え、
前記埋込金物の、前記フレーム部材に取り付けられていない一面が、前記型枠の他の面が向いている方向を向いていることを特徴とするモジュール構造物。
【請求項2】
前記埋込金物が、前記フレーム部材の、前記型枠が取り付けられた面に直接取り付けられている請求項1に記載のモジュール構造物。
【請求項3】
前記型枠の、前記フレーム部材が取り付けられた第1面とは反対側の第2面から突出していないアンカー部材が、前記型枠の前記第1面に取り付けられており、
前記アンカー部材には、前記第2面に第2プラント構造物を取り付ける着脱可能な締め付け装置が結合される請求項1または2に記載のモジュール構造物。
【請求項4】
前記モジュール構造物が床部材、側壁部材及び天井部材のいずれか1つのモジュール構造物である請求項1ないし3のいずれか1つに記載のモジュール構造物。
【請求項5】
床部材、前記床部材に取り付けられた複数の側壁部材、及びこれらの側壁部材に取り付けられた天井部材を備え、前記床部材、前記複数の側壁部材及び前記天井部材が、これらによって囲まれた内部空間を形成し、
前記複数の側壁部材が前記内部空間に面する第1型枠をそれぞれ有し、前記床部材が前記内部空間に面する第2型枠を有し、前記天井部材が前記内部空間に面する第3型枠を有し、
前記側壁部材が前記第1型枠よりも外側に配置されて前記第1型枠が取り付けられる第1フレーム部材を有し、
前記床部材が前記第2型枠よりも外側に配置されて前記第2型枠が取り付けられる第2フレーム部材を有し、
前記天井部材が前記第3型枠よりも外側に配置されて前記第3型枠が取り付けられる第3フレーム部材を有し、
前記内部空間に配置された第1プラント構造物を支持する支持部材が取り付けられる埋込金物が、前記第1フレーム部材、前記第2フレーム部材及び前記第3フレーム部材のうちの少なくとも1つに直接取り付けられていることを特徴とするモジュール構造物。
【請求項6】
アンカー部材が、前記第1型枠、前記第2型枠及び前記第3型枠のうち少なくとも一つの型枠の外側に配置されて前記少なくとも一つの型枠に取り付けられており、
着脱可能な締め付け装置が前記内部空間側から前記アンカー部材に結合された状態で、前記内部空間に配置される第2プラント構造物が、前記アンカー部材を取り付けた前記型枠に設置されている請求項5に記載のモジュール構造物。
【請求項7】
前記第1フレーム部材が前記第2フレーム部材に取り付けられた請求項5または6に記載のモジュール構造物。
【請求項8】
前記第1型枠が複数の金属板であり、隣り合う前記金属板が、相互間に隙間を形成して前記第1フレーム部材の一面に取り付けられている請求項5または6に記載のモジュール構造物。
【請求項9】
前記第2型枠が複数の金属板であり、隣り合うこの金属板が、相互間に隙間を形成して前記第2フレーム部材の一面に取り付けられている請求項5または6に記載のモジュール構造物。
【請求項10】
前記第3型枠が複数の金属板であり、隣り合うこの金属板が、相互間に隙間を形成して前記第3フレーム部材の一面に取り付けられている請求5または6に記載のモジュール構造物。
【請求項11】
前記第1プラント構造物は内部に流体が流れる管路部材、及びトレイのうちの1つである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のモジュール構造物。
【請求項12】
打設されるコンクリート内に埋設される複数の強度部材を備えている請求項5または6に記載のモジュール構造物。
【請求項13】
前記強度部材は、鉛直方向に伸びる第1強度部材、及び前記第1強度部材に取り付けられて水平方向に伸びており、前記第3フレーム部材が取り付けられる第2強度部材を含んでいる請求項12に記載のモジュール構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−52393(P2009−52393A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191693(P2008−191693)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】