説明

モズク抽出の高分子フコイダンの低分子化法

【課題】モズクに含まれる多糖類の高分子フコイダンから低分子フコイダンを得る製造方法の提供。
【解決手段】モズクに含まれる高分子のフコイダンを、モロミ酢若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の溶液を加えて低分子フコイダンを得る製造方法、および、モズクの粉末を煮沸攪拌して溶解し、フコイダンを含有した溶液に加工して、この溶液に泡盛残渣から製造したモロミ酢溶液若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の溶液を加え、モロミ酢や柑橘類に含有されているクエン酸や酢酸の加水分解作用を利用して高分子のフコイダンを低分化フコイダンに分解させる
製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモズクから低分子フコイダンを得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻類の中でモズクは主に食用として利用されているが、このモズクを乾燥するとモズクの用途は大きく広がり、食品以外の用途に有効な利用方法が広がってくる。
【0003】
モズクには人体に有益な成分である食物繊維が多く含まれ、この食物繊維の中には動植物の成長を促がし、不要物を除去する作用の成分が数多く含まれている。
【0004】
モズクの含有成分は、モズクの収穫する季節や生産地によって多少異なるが、一般に(1)炭水化物40〜60%、(2)灰分15〜20%、(3)繊維類と蛋白5〜10%、(4)脂肪3〜5%、(5)カリウム2〜3%、(6)窒素0.5〜1.5%,(7)リン酸(0.1〜0.2%)の順で含有が高く、微量成分である硫黄やナトリウム類も含有されている。
【0005】
モズクの炭水化物には、食物繊維や多糖類のフコイダン.アルギン酸、その他の糖分も含有されている。
【0006】
モズクには食物繊維の他に多糖類の総称であるフコイダンを含有し、このフコイダンには各種微生物への抗菌作用がある事が分かっている。
【0007】
多糖類の総称であるフコイダンは植物の成長を促がすだけでなく、人では胃に寄生してガン細胞を発生させる恐れのある「ピロリ菌」を排除する作用や、抗腫瘍作用、免疫賦活作用、抗血液凝固作用等の効果があると言われている。
【0008】
フコイダンには癌細胞を「アポート−シス.自然死」させる作用があり、大学の研究機関で研究中にシャーレにある癌細胞がフコイダンに接触すると消滅すると言う報告もある。この現象は、一例としてオタマジャクシが蛙になる段階で尻尾が消えていく現象や、母体内において胎児の指にある水掻きが自然と無くなる様な現象を指している。
【0009】
フコイダンの化学成分は、(1)L−フコースが33%、(2)D−ガラクトースとD−グルコースが7.8%、(3)D−マンノースが4.3%、(4)D−キシロースが2.9%、(5)D−グルクロン酸が14.9%、(6)硫酸が28.0%含有しているが、これらの成分にそれぞれ硫酸基が含有されている。
【0010】
モズクに含有されているフコイダンは高分子多糖類の総称で、比較的含有量が多いフコイダンには、単糖のフコースが30,000〜50,000個繋がっており、この単糖は分子の結合は消化管内では切れ難いため、胃や腸で消化吸収されずにそのまま体外に排出されると一般的に言われている。
【0011】
近年、高分子のフコイダンが腸管から吸収され、血液に取り入れられていることを群馬大学農学部が研究し発表している。
【0012】
本発明者は、モズクの食物繊維に含有されている多糖類の高分子フコイダンに着目し、この高分子フコダンを低分子フコイダンに加水分解することで胃や腸で消化吸収が容易になることに着目した。
【0013】
特許文献1に記載されている公知の乾燥モズクの製造方法により加工したモズクを粉末に加工し、この粉末を財団法人沖縄県環境科学分析センターと、財団法人日本食品分析センターに分析を依頼した。
【0014】
非特許文献4によれば、モズクの粉末には100グラム中24.2グラムのフコースを含有している。
【0015】
非特許文献5によれば、モズクの粉末には100グラム中34.4グラムの食物繊維を含有している事が証明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3735839号公報 乾燥モズクの製造方法
【特許文献2】特開第2003−380608号公報 モズクの粉末よりフコイダンを抽出する濃縮液の製造方法
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】第18回糖質シンポジウム、学会報告文献その1、フコイダン(フコース硫酸含有多糖)及び、その酵素分解物により誘導されたヒトがん細胞株のアポトーシス
【非特許文献2】日本農芸化学会大会講演要旨集、p.67,2003、モズク由来フコイダンのヒト胃細胞に対する効果
【非特許文献3】財団法人日本食品分析センター、分析試験成績書、平成14年12月20日第402120117−001号
【非特許文献4】財団法人沖縄県環境化学分析センター、分析試験成績書、平成15年12月20日第402120117−001号
【非特許文献5】財団法人沖縄県環境化学分析センター、分析試験成績書 平成17年6月21日第2005−B00921−01号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
モズクの粉末から抽出したフコイダンは、フコースという単体の糖が繋がった多糖類の高分子フコイダンで、食物繊維と同様に体内で消化吸収されず、大部分のフコイダンはそのまま体外に排泄される。
【0019】
高分子のフコイダンのほとんどは、胃や腸で消化されず体外に排泄されるが、一部は高分子のまま腸管から血液中に吸収され、フコイダンが各種の腫瘍に作用していると言われている。
【0020】
高分子のフコイダンは、フコイダンの一種であるフコースの単糖が、30,000〜50,000個と繋がっている。本発明者はこの高分子フコイダンをモロミ酢のクエン酸若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の酸溶液を混合して煮沸攪拌すると、クエン酸や酢酸の作用でフコースが2〜1,000個結合した分子に切断され、胃や腸で消化吸収され易い低分子化フコイダンに加水分解されることを見出した。
【0021】
加水分解された低分子フコイダンは、フコースが直鎖状に2〜1,000個結合したもので、腸管を通して容易に血中に吸収することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
モズクの粉末を煮沸攪拌すると高分子のフコイダン溶液が抽出されるが、この高分子フコイダンの溶液に泡盛の絞り粕から製造されたモロミ酢の溶液若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)溶液を混合して煮沸攪拌すると、モロミ酢の溶液や柑橘類溶液に含有しているクエン酸や酢酸の作用で、高分子のフコイダンに含有されているフコースの単糖が加水分解され、低分子のフコイダンに分解されることが実験の結果判明した。
【発明の効果】
【0023】
高分子のフコイダンには長い紐のように繋がっている単糖のフコースを、他の溶液で500〜1000個に短く切断し、低分子にフコイダンに加水分解しているが、モロミ酢若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)に含有されているクエン酸や酢酸の作用で、低分子のフコイダンに変換することができ、更に低分子フコイダンに含有されている多糖類がブドウ糖に変換され、人体での消化吸収が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例や製造工程を説明する為のフローチャートで、乾燥したモズクを粉末に加工し、この粉末を煮沸攪拌して溶液を製造するが。更にこの溶液にモロミ酢の溶液若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の溶液を加え煮沸攪拌する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
モズクを粉末に加工するが、モズクの粉末100グラム中には高分子のフコイダンが60〜70グラムも含有しており、この粉末を煮沸攪拌してモズクの溶液を抽出する。更にこの溶液にモロミ酢若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の溶液を混合して煮沸攪拌すると高分子のフコイダンが低分子のフコイダンに加水分解される。
【実施例】
【0026】
本発明の活用例を図1に基づいて説明する。
図1は、生モズクを乾燥し粉末に加工するが、この粉末を煮沸攪拌し高分子フコイダンを抽出する。この煮沸攪拌したモズクの溶液に、モロミ酢の溶液若しくは柑橘類(シークヮサー)の溶液を混合して加水分解すると低分子化フコイダンが形成される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
海藻類のモズクは食品としての利用価値だけでなく、乾燥したモズクを煮沸攪拌すると医薬品に匹敵するフコイダンが抽出され、このフコイダンは癌細胞を発生させる恐れがあると言われている「ピロリ菌」を排除し、また抗腫瘍作用.免疫賦活作用.抗血液凝固作用等の効果を有する抗ガン作用を持つ、今までにない飲料を世界に向けて提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
図1のaは、生モズクを乾燥する。
図1のbは、乾燥したモズクを粉末に加工する。
図1のcは、粉末に加工したモズクを煮沸攪拌し高分子フコイダンを抽出する。
図1のdは、煮沸攪拌したモズクの溶液に、モロミ酢の溶液若しくは柑橘類のシークヮサーの溶液を混合する。
図1のeは、混合した溶液を煮沸攪拌して加水分解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モズクに含有する高分子のフコイダンを、モロミ酢若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の溶液を加え、低分子化フコイダンを得る。
【請求項2】
モズクの粉末を煮沸攪拌して溶解し、フコイダンを含有した溶液に加工して、この溶液に泡盛残渣から製造したモロミ酢溶液若しくは柑橘類(シークヮサー、カーブチー、オートー、タロガヨ、タンカン)の溶液を加え、モロミ酢や柑橘類に含有されているクエン酸や酢酸の加水分解作用を利用して高分子のフコイダンを低分化フコイダンに分解させる。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1704(P2012−1704A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153407(P2010−153407)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(302044395)有限会社ハマショク (9)
【Fターム(参考)】