説明

モニタ機能内蔵型光スイッチ

【課題】従来の光スイッチは、光信号をモニタリングする機能はなかった。従って、従来の光スイッチにモニタ機能を付け加える場合には、光スイッチに光カプラを接続し、更に、光カプラにフォトダイオード(PD)モジュールを接続しなければならない。このように個別構成となっているために、どうしても部品点数や各デバイスを接続するための工数が増加してしまい、高価格で、実装スペースが大きくなってしまうという課題があった。
【解決手段】コリメータからの平行光を任意の割合で信号光とモニタ光に分岐する光学フィルタと前記分岐されたモニタ光をモニタするためのフォトダイオード(PD)を光スイッチ内部に設置したモニタ機能内蔵型光スイッチであるので、部品点数やアセンブリ工数を少なくすることができ、光スイッチシステムの低価格と省スペース化により小型化をはかったモニタ機能内蔵型光スイッチを提供することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号のモニタ機能を内蔵化させることにより、部品点数やアセンブリ工数を少なくすることができ、光スイッチシステムの低価格と省スペース化により小型化が可能なモニタ機能内蔵型光スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光スイッチは、光出力を切り替える機能のみを有したものであり、従来の光スイッチには、光信号をモニタリングする機能はなかった。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】特開2004−287125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来の光スイッチにモニタ機能を付け加える場合には、光スイッチに光カプラを接続し、更に、光カプラにフォトダイオード(PD)モジュールを接続しなければならない。このように個別構成となっているために、どうしても部品点数や各デバイスを接続するための工数が増加してしまい、高価格で、実装スペースが大きくなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するために、鋭意検討した結果、
第1に、1個ないし複数個の入力コリメータから出射された光を光スイッチ内部に設置した光学フィルタによって一定の割合で透過光と反射光に分岐させ、前記分岐された一定の透過光ないし反射光は、光路平行移動素子に搭載された駆動装置を移動させて、光路平行移動素子を通過させ、または光路平行移動素子を通過させずに素通りさせて切り替えた後、信号光として出力コリメータに出力され、他方、前記分岐された残りの反射光ないし透過光は、モニタ光として光スイッチ内部に設置したフォトダイオード(PD)で受光させることによって光信号を電気信号に変換し、モニタすることが可能な構造で、
第2に、第1において、光の出力を切り替えるための可動部の位置を識別するための非接触センサを光スイッチ内部に搭載することにより、出力の切り替え状態を把握することが可能な構造で、
第3に、第1もしくは2において、光学フィルタの片面に一定割合を反射する反射コートとその裏側に反射防止(AR)コートを施したものを使用し、かつ光学フィルタに入射する光路の入射角度が1°以上10°以下になるように設置した構造で、
第4に、第1、2もしくは3において、光路平行移動素子が、平行四辺形型プリズムであるモニタ機能内蔵型光スイッチである。
【発明の効果】
【0006】
光スイッチにモニタ機能を内蔵していることから、光スイッチをシステムに組み込む際の部品点数やアセンブリ工数を少なくすることができ、低価格化と省スペースにより小型化をはかったモニタ機能内蔵型光スイッチを提供することが可能になる。
という優れた効果があるので、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のモニタ機能内蔵型光スイッチ1の実施例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
第1実施例は、図1(イ)において、非接触センサ9を除いた構成である。図から明らかなように、2つの入力コリメータ4と4′、1つの出力コリメータ5、2つの光学フィルタ6、光学フィルタ6によって反射された光をモニタするモニタ用PD7、信号光を平行移動するための平行移動素子の代表例として、平行四辺形型プリズム3、平行四辺形型プリズム3を搭載する可動部8、可動部8を動かすための駆動装置10からなるものである。
図1(ロ)に示すように、プリズム3を含む可動部8が駆動装置10によって上方に移動したときは入力コリメータ4′から出射した光が平行四辺形型プリズム3によって出力コリメータ5に出力される。
他方、図1(ハ)に示すように、可動部8が駆動装置10によって下方に移動したときは入力コリメータ光4から出射した平行光が平行四辺形型プリズム3を通過せず、上を素通りした場合で、出力コリメータ5に出力される。
例えば、具体例を述べると、入力コリメータ4と4′から出射した平行光2が光学フィルタ6によって、1%反射し、モニタ光としてモニタ用PD7にそれぞれ入力され、電気信号に変換されモニタされる。一方、光学フィルタ6を透過した99%の光は信号光として出力コリメータ5に出力される。
【実施例2】
【0009】
第2実施例は、図1(イ)に示すように、非接触センサ9を加えた構成からなる。図において、2つの入力コリメータ4と4′、1つの出力コリメータ5、2つの光学フィルタ6、光学フィルタ6によって反射された光をモニタするモニタ用PD7、光を切り替えるための1つの平行四辺形型プリズム3、平行四辺形型プリズム3を搭載する可動部8、可動部8を動かすための駆動装置10、可動部8の状態つまりプリズム3の位置を検出するセンサーとして非接触センサ9からなる。光をモニタおよびスイッチする働きは第1実施例と同じであるが、異なる点は非接触センサ9によって切り替え状態、つまり、入力コリメータ4と4´の何れかの信号光が、出力コリメータ5に出力されるかを検出することができる点である。
【実施例3】
【0010】
第3実施例は、図1(ロ)、(ハ)に示すように、第1及び第2の実施例の光学フィルタ6は、厚さ2mmの板状で、その片面に一定割合を反射する反射コート12を施し、その反対側の面にARコート13を設けたものを用い、更に、光学フィルタ6に入射するときの光の入射角度は、入力コリメータ4と4′からの平行光の入射角11を1°以上10°以下になるようにしたものである。この場合、光学フィルタの厚さを2mmにしたが、1mm以上あれば構わない。また、入射角度の好ましい角度は、8°であった。ここで、ARコートは、通過した一部の光が反射してしまうのを防止する役目を果たしている。
次に、本発明の第3実施例のモニタ機能内蔵型光スイッチ1を使用し、光学フィルタ6への光の入射角度と反射光強度の偏波依存性(PDL)についての評価試験結果を下記の表1に示す。
【0011】

【表1】

【0012】
この試験結果から、光学フィルタ6への光の入射角を10°以下の場合が最適範囲であることがわかる。このように、光学フィルタ6への光の入射角を10°以下にすることによって、偏波による反射光の変動を0.4dB以下、つまり90%以下に抑えることができる。
更に、光学フィルタ6への入射角を10°に設定し、1mm厚の光学フィルタに両面反射コートをした場合と本発明の片面に反射コート、その裏面にARコートを施した場合の光学フィルタ6の反射光強度についての波長特性比較評価試験結果を下記の表2に示す。
【0013】

【表2】

【0014】
表2において、両面反射コートの光学フィルタは、両面での反射が干渉し波長により反射光の強度が大きく変化するのに対して、本発明の片面反射コート、その裏面にARコートを施した場合は、90%程度に抑えられる。また、光学フィルタ厚が厚いほど干渉は小さくなる。
【0015】
今迄、本発明のモニタ機能内蔵型光スイッチ1の実施例について光学フィルタ6での透過光を信号光、反射光をモニタ光で説明したが、変形例として、2つの光学フィルタ6は1枚で代用しても良い。また、反射光を信号光、透過光をモニタ光にした逆の構造でも構わないし、モニタする信号はアナログ信号、デジタル信号を問わなし、モニタする情報は信号内容、信号強度などの種類を問わない。更に、光路平行移動素子として平行四辺形型プリズム3を用いたが、例えばミラーを2枚向き合せたもの等、光路を平行に移動できれば良い。更に、駆動装置10としては、上下機構のアクチュエータを用いたが、モータ等でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
光出力を切り替えるために用いる光スイッチに光をPDにてモニタする機能を内蔵することにより、光スイッチシステムの低価格化と小型化が実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(イ)は、本発明モニタ機能内蔵型光スイッチ1の光路2が、平行四辺形型プリズム3を通過させた場合で、上からみた構成図で、(ロ)は、本発明モニタ機能内蔵型光スイッチ1の光路2が、平行四辺形型プリズム3に通過させた場合で、横からみた構成図で、(ハ)は、本発明モニタ機能内蔵型光スイッチ1の光路2が、平行四辺形型プリズム3に通過させずに、上を素通りした場合で、横からみた構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 本発明のモニタ機能内蔵型光スイッチ
2 光路
3 平行四辺形型プリズム
4、4′入力コリメータ
5 出力コリメータ
6 光学フィルタ
7 モニタ用PD
8 可動部
9 非接触センサ
10 駆動装置
12 反射コート
13 ARコート
14 入射角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個ないし複数個の入力コリメータから出射された光を光スイッチ内部に設置した光学フィルタによって一定の割合で透過光と反射光に分岐させ、前記分岐された一定の透過光ないし反射光は、光路平行移動素子に搭載された駆動装置を移動させて、光路平行移動素子を通過させ、または光路平行移動素子を通過させずに素通りさせて切り替えた後、信号光として出力コリメータに出力され、他方、前記分岐された残りの反射光ないし透過光は、モニタ光として光スイッチ内部に設置したフォトダイオード(PD)で受光させることによって光信号を電気信号に変換し、モニタすることが可能になることを特徴とするモニタ機能内蔵型光スイッチ。
【請求項2】
請求項1において、光の出力を切り替えるための可動部の位置を識別するための非接触センサを光スイッチ内部に搭載することにより、出力の切り替え状態を把握することが可能になることを特徴とするモニタ機能内蔵型光スイッチ。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、光学フィルタの片面に一定割合を反射する反射コートとその裏側に反射防止(AR)コートを施したものを使用し、かつ光学フィルタに入射する光路の入射角度が1°以上10°以下になるように設置したことを特徴とするモニタ機能内蔵型光スイッチ。
【請求項4】
請求項1、2もしくは3において、光路平行移動素子が、平行四辺形型プリズムであることを特徴とするモニタ機能内蔵型光スイッチ。

【図1】
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